説明

排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア、並びに排気型のクリーン環境対応作業衣

【課題】排気装置が作り出す減圧下において十分な通気性を保持し、顔部、手首部、足首部等の末端開口部から空気を均一に吸入し且つクリーン環境対応作業衣内部を環境に対して陰圧に保つので、着用者から発生する塵埃及び/又は水分を除塵ユニット及び/又は除湿ユニットを備える排気装置で捕捉してクリーン環境対応作業衣外に放出させることが少ない排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア、並びに当該インナーウェアを含む排気型のクリーン環境対応作業衣を提供すること。
【解決手段】下記(i)及び(ii)を満たす素材から成ることを特徴とする、排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア;(i)200Paの圧力が加えられた場合に、少なくとも初期厚みの70%を保持すること:及び(ii)上記素材の厚み方向及び当該厚みと垂直方向に、上記素材の外部へと連絡する連続する空隙を有し、且つ上記素材の空隙率が85%以上であること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア、並びに当該インナーウェア、アウターウェア及び排気装置を含む排気型のクリーン環境対応作業衣、特に防塵衣及び/又は防湿衣に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体産業における集積回路の集積度の増大等、クリーンルームを使用する産業分野の著しい進展に伴い、さらに高い清浄度を有するクリーンルームが必要とされている。クリーンルーム内で作業する場合、作業者は、「防塵衣」と称される衣服の着用が必要になる。高清浄度クリーンルームでは、作業者の体表面や着用物に起因して着用者から発せられる塵埃をより少なくすることが求められている。
【0003】
着用者に起因する塵埃をより少なくするために、種々の検討が行われている。例えば、作業者が着用する防塵衣の機密性を高める検討が行われている。また、特許文献1には、帽子部の目開部及びワンピース部の首まわり部を、弾力性および伸縮性を有する樹脂で構成し、上記目開部及び上記首まわり部に固定部を設けたことを特徴とする防塵衣が開示されている。
【0004】
しかし、上記防塵衣においては、着用者の運動に伴う衣服内外の圧力差により、逃げ場のなくなった衣服内の空気が、首周り又は袖口等のような開口部から排出される問題点を有する。さらに、防塵衣の機密性を高めることにより、衣服内の空気の移動が少なくなり、着用者が蒸し暑さを感じる問題点もあった。このような問題点を解消するために、布地等に改良が加えられた防塵衣では、現在のところ十分な効果を上げていないのが実状であり、着用者が防塵衣から出す塵埃を確実に防止し、着用者の不快感を軽減することのできる防塵衣が求められている。
【0005】
高い清浄度のクリーンルームに適する防塵衣が求められるようになり、防塵衣内の空気をフィルター付き排気装置により吸引してクリーンルームより減圧状態で保持するようにして、防塵衣内の塵埃を含む空気の放散を防止するようにすることが提案されている。しかし、フィルター付き排気装置を備えるのみの防塵衣には、空気の吸引部の周辺の空気のみが排除され、吸引部周辺の防塵衣が減圧状態になり人体に張り付き、吸引の効果が全身に及ばないという根本的な問題点がある。
上記問題点を解決するため、例えば、特許文献2には、集塵装置により衣服本体内部の空気を複数の「吸気ホース」を通して吸引するようにした防塵衣が開示されている。しかし、ここで提案されている防塵衣内に多数の吸引口を開設した吸引ホースを張り巡らしてこの吸引ホースの一端をエアクリーナに連結し、防塵衣内の空気を吸引濾過し塵埃のない空気をクリーンルームに放出させるようにした防塵衣は、防塵衣内部に装着する吸引部分の構造が複雑で大きいため、長時間にわたって着用する作業者にとって違和感が大きく快適性に欠け、着脱も煩雑であり、製品化の課題も多い。
【0006】
また、特許文献3等に示されるように、複雑で大きい吸引ホースを用いることなく、防塵衣の形状に改良を加えることにより上記問題点を解決する方策も探索されているが、解決には至っていない。
【0007】
また、半導体デバイスやリチウム電池等の製造が行われるドライルームでは、−50℃以下の低露点の乾燥空気からなる雰囲気が必要とされているが、着用者の防湿衣から排出される水分が環境の湿度を変動させる大きな要因となっており、着用者に起因する水分を環境中に放出させないことが求められている。そのため、特許文献4に示すような、排気装置を有する防湿衣が開示されているが、上記防塵衣と同様の問題点が存在する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平5−5203号明細書
【特許文献2】特公平6−11923号明細書
【特許文献3】特開平10−168620号公報
【特許文献4】国際公開第2008/114334号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に基づいてなされたものであり、本発明は、排気装置が作り出す減圧下において十分な通気性を保持し、顔部、手首部、足首部等の末端開口部から空気を均一に吸入し、クリーン環境対応作業衣内部を環境に対して陰圧に保ち、着用者から発生する塵埃及び/又は水分を除塵ユニット及び/又は除湿ユニットを備える排気装置で捕捉してクリーン環境対応作業衣外に放出させにくい排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア、並びに当該インナーウェアを含む排気型のクリーン環境対応作業衣を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、下記(i)及び(ii)を満たす素材から成ることを特徴とする、排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア;
(i)200Paの圧力が加えられた場合に、少なくとも初期厚みの70%を保持すること;及び
(ii)上記素材の厚み方向及び当該厚みと垂直方向に、上記素材の外部へと連絡する連続する空隙を有し、且つ上記素材の空隙率が85%以上であること:
により、上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0011】
具体的には、本発明は以下の態様に関する。
[態様1]
下記(i)及び(ii)を満たす素材から成ることを特徴とする、排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア;
(i)200Paの圧力が加えられた場合に、少なくとも初期厚みの70%を保持すること:及び
(ii)上記素材の厚み方向及び当該厚みと垂直方向に、上記素材の外部へと連絡する連続する空隙を有し、且つ上記素材の空隙率が85%以上であること。
[態様2]
上記素材が、下記(iii)をさらに満たす、態様1に記載のインナーウェア:
(iii)圧縮残留歪が30%以下であること。
【0012】
[態様3]
上記素材が、下記(iv)をさらに満たす、態様2に記載のインナーウェア:
(iv)3mm〜10mmの厚さを有すること。
[態様4]
上記素材が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル及びナイロンから成る群から選択される素材を含む、態様1〜3のいずれか一つに記載のインナーウェア。
【0013】
[態様5]
態様1〜4のいずれか一つに記載のインナーウェア、アウターウェア及び排気装置を含む排気型のクリーン環境対応作業衣。
[態様6]
上記アウターウェアの素材が、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリエチレン、ポリオレフィンから成る群から選択される、態様5に記載の排気型のクリーン環境対応作業衣。
【0014】
[態様7]
上記排気装置が、除塵ユニット及び/又は除湿ユニットを含む、態様5又は6に記載のクリーン環境対応作業衣。
[態様8]
上記インナーウェア及びアウターウェアが一体化されている、態様5〜7のいずれか一つに記載の排気型のクリーン環境対応作業衣。
【0015】
[態様9]
上記インナーウェア及びアウターウェアが分離されている、態様5〜7のいずれか一つに記載の排気型のクリーン環境対応作業衣。
[態様10]
防塵及び/又は防湿用である、態様5〜9のいずれか一つに記載のクリーン環境対応作業衣。
【発明の効果】
【0016】
本発明のインナーウェアは、排気装置が作り出す減圧下において十分な通気性を保持し、例えば、顔部、手首部、足首部等の末端開口部から空気を均一に吸入し且つクリーン環境対応作業衣を環境に対して陰圧に保つので、着用者から発生する塵埃及び/又は水分を除塵ユニット及び/又は除湿ユニットを備える排気装置で捕捉してクリーン環境対応作業衣外に放出させることが少ない。さらに、本発明のインナーウェアは、クリーン環境対応作業衣内部の空気を効率よく循環させることができるので、着用者が暑さ及び/又は蒸れを感じることが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、本発明のインナーウェアの上衣部分の正面図である。
【図2】図2は、本発明のインナーウェアの上衣部分の背面図である。
【図3】図3は、本発明のインナーウェアの下衣部分の正面図である。
【図4】図4は、本発明のインナーウェアの下衣部分の背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア、並びに当該インナーウェアを含む排気型のクリーン環境対応作業衣について詳細に説明する。
[インナーウェア]
本発明のインナーウェアは、後述の排気型のクリーン環境対応作業衣の内側に位置し、人体とクリーン環境対応作業衣との間の空気を排気装置に導く「空気の流路」の機能を果たし、且つクリーン環境対応作業衣内の任意の箇所において空気を取り込み、クリーン環境対応作業衣内部を陰圧に保つための「吸気口」の機能をも果たす。
【0019】
本発明のインナーウェアは、主として、着用者の上半身を覆う上衣部分若しくは着用者の下半身部分を覆う下衣部分であることができ、又は上衣部分及び下衣部分から成る2パーツタイプであることができ、あるいは上衣部分と下衣部分とが一体化した1パーツタイプであることができる。
【0020】
次に、本発明のインナーウェアを、図面に基づいて説明する。図1〜図4は、本発明の態様の一部を示すものであって、本発明を限定することを意図するものではない。
図1は、本発明のインナーウェアの上衣部分(1)の正面図である。図2は、上衣部分(1)の背面図である。当該上衣部分は、頭部分(3)を備えているので、塵埃の発生源の一つである着用者の顔付近の空気を効果的に吸引及び排出することができ、さらに着用者の首前部を覆う首部分(4)を備えているので、着用者の呼気を効果的に吸引及び排出することができる。
【0021】
上述のように、本発明のインナーウェアは、空気の流路としての機能のみならず、全体が空気吸気口としての機能も有するため、積極的に吸気したい場所に適用することができる。なお、首部分(4)は、後述の、着用者の呼気から排出される水分が問題となりうるドライルームで用いられる排気型の防湿衣に用いられるのが好ましい。
なお、頭部分(3)及び首部分(4)は、着脱可能であり、作業環境に応じて取り付けることができる。
また、図1及び図2に示すように、排気装置の吸気口とインナーウェアとの連結部に、必要に応じて、ポケット様部分を設けることができる。当該必要に応じて設けられるポケット様部分は、インナーウェア本体部分よりも厚さを厚くし、当該連結部での圧力損失を小さくことを目的とする。当該ポケット様部分は、吸引力の大きい排気装置を用いる場合に特に好適である。
【0022】
図3は、本発明のインナーウェアの下衣部分(2)の正面図である。図4は、本発明のインナーウェアの下衣部分(2)の背面図である。図3及び図4に示す下衣部分において、股部は、開口していることが、作業性の観点から好ましい。
【0023】
本発明のインナーウェアに用いられる素材は、200Paの圧力が加えられた場合に、少なくとも初期厚みの70%、好ましくは80%、より好ましくは90%を保持する。200Paの圧力は、本来、排気装置の能力にもよって変化する値ではあるが、排気型のクリーン環境対応作業衣に通常用いられている排気装置によりクリーン環境対応作業衣内を減圧した場合に、減圧下のクリーン環境対応作業衣に加わる圧力の最大値でありうる。
空気の流路としての機能を確保するためには、厚みの保持率の値は、より大きい方が好ましい。
【0024】
本発明のインナーウェアに用いられる素材は、上記素材の厚み方向及び当該厚みと垂直方向に、上記素材の外部へと連絡する連続する空隙を有し、且つ上記素材の空隙率が85%以上、好ましくは88%以上、より好ましくは90%以上である。
ここで、空隙率は、素材の全容積に対する、その中に含まれる空間の容積の割合を意味する。
【0025】
空隙率が小さくなると、空気の流路としての容積が小さくなり、且つ抵抗が大きくなる傾向があり、一方、空隙率があまり大きくなると、構造を保つために硬い部材で形成される必要が生じ、着心地が悪くなる場合がある。
【0026】
素材の厚み方向の、上記素材の外部へと連絡する連続する空隙は、主に、クリーン環境対応作業衣内部を減圧状態に保つための「吸気口」としての機能を果たす。
素材の厚みの垂直方向の、上記素材の外部へと連絡する連続する空隙は、主に、人体とクリーン環境対応作業衣との間の空気を排気装置に導く「空気の流路」の機能を果たす。
【0027】
また、本発明のインナーウェアに用いられる素材は、繰り返し着用することが想定される場合には、好ましくは30%以下、より好ましくは20%以下、さらに好ましくは10%以下の圧縮残留歪を有する。
ここで、圧縮残留歪とは、JIS−K6400 A法に準拠し、試験片の厚さの50%まで圧縮して22時間固定し、開放後30分経過後の厚みを測定することにより計算される値である。
30%以上の圧縮残留歪は、着用及び洗濯のサイクルを繰り返すごとに、「空気の流路」が狭くなる観点から望ましくない。
【0028】
なお、使い捨てタイプの場合には、必ずしも、上記圧縮残留歪の値を満足する必要はない。
【0029】
さらに、本発明のインナーウェアに用いられる素材の厚さは、本発明の効果を有する範囲内であれば特に制限されず、素材の種類によっても異なるものであるが、好ましくは3mm〜10mm、より好ましくは4〜8mmである。厚みがより薄くなると、空気の流路としての容積が小さくなり、周囲環境に対してクリーン環境対応作業衣の陰圧が保てなくなり、塵埃が環境に放出される好ましくない傾向が生じ、一方、厚みがより厚くなると、空気の流路としての容積は大きくなるが、着用者が、ゴワゴワ感、動きにくさ、重さ等の不快さを感じ、好ましくない傾向が生ずる。
【0030】
本発明のインナーウェアに用いられる素材そのものの構造は、人体とクリーン環境対応作業衣との間の空気を排気装置に導く「空気の流路」の機能を果たし、且つクリーン環境対応作業衣内の任意の箇所において空気を取り込み、クリーン環境対応作業衣内部を陰圧に保つための「吸気口」の機能をも果たすものであれば特に制限されないが、天然物としては、例えば、ヘチマの繊維、人工物としては、例えば、ネットフェンス様の物、波状の物、蜂の巣様の物、複数のコイルが並んだ形状の物、表地及び裏地を規則的又は不規則的に縫い合わせた物、3次元構造の編物、ワーレントラス、プラットトラス、ハウトラス、キングポストトラスから形成される構造体が挙げられる。
【0031】
本発明のインナーウェアに用いられる素材の材料としては、上記機能を果たすものであれば特に制限されないが、例えば、天然材料としては、例えば、ヘチマ繊維、人工材料としては、ポリマー、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル又はナイロンが挙げられる。
【0032】
上記素材としては、着用者の着心地、洗濯のしやすさ等を考慮すると、立体形状の編物が好ましい。当該立体形状の編物としては、特開平2−229247号明細書に記載されるもの、すなわち、表編地、裏編地とこれらを連結する30デニール〜500デニールのモノフィラメント連結糸からなり、連結糸が表、裏の編地の相対する編目を連結すると共に、相対する編目から2〜5個離れたウエール及びコースの編目をウエール又はコース方向の少なくとも1方向に相対する編目を連結する連結糸に対し30〜60度の角度で斜めに連結し、該連結糸の単位面積当たりの本数が特定の範囲で示される範囲であって、かつ相対する編目を連結する連結糸に対し30〜60度の角度で斜めに連結した連結糸が、5コースの間に少なくとも1つのクロス点を有していることを特徴とする二重編地を用いることができる。具体的には、旭化成せんい株式会社から市販される、フュージョン(登録商標)シリーズを用いることができる。
【0033】
[排気型のクリーン環境対応作業衣]
本明細書において、「クリーン環境対応作業衣」は、清浄環境が求められる場所で着用される衣服、例えば、防塵衣、防湿衣を意味する。「排気型のクリーン環境対応作業衣」とは、清浄環境が求められる場所で着用される衣服であって、クリーン環境対応作業衣の内部の空気を、排気装置等により吸引し、衣服内部を環境に対して陰圧にすることにより、衣服内の塵埃及び/又は水分等を含む空気を環境に放出させないようにする衣服を意味する。
【0034】
本明細書において、「防塵衣」は、IC、精密機械等の工場、手術室等に用いられる高度の防塵機能を備えた部屋(いわゆる、クリーンルーム)等で用いられる、衣服内の塵埃を含む空気を環境に放出させないための衣服を意味する。
【0035】
本明細書において、「防湿衣」は、半導体デバイス、リチウム電池等の製造に用いられるドライルームで用いられる、衣服内の水分を含む空気を環境に放出させないようにする衣服を意味する。
【0036】
本明細書において、「アウターウェア」は、クリーン環境対応作業衣内の周囲環境に暴露される衣服を意味し、防塵衣及び防湿衣として通常用いられている素材を用いることができる。例えば、上記アウターウェアの素材としては、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート等のポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。耐洗濯性、寸法安定性、形態保持性に優れることから、ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステルが好ましい。
【0037】
また、上記アウターウェアは、例えば、上記素材から成る織物、編物であることができる。さらに、本発明のクリーン環境対応作業衣では、インナーウェアにより空気の流路が確保されているため、上記アウターウェアは、通気性を有しないフィルム及び又はフィルム複合素材であることができる。当該フィルムの素材としては、例えば、4フッ化エチレン、2フッ化エチレン、ポリウレタン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル等が挙げられる。
また、クリーン環境対応作業衣への空気流入口は、顔部、手首部、足首部に限定されることが好ましい。
【0038】
本明細書において、「排気装置」は、クリーン環境対応作業衣の内部を環境に対して陰圧に保つための機器であり、除塵ユニット及び/又は除湿ユニットを含むことができる。
上記除塵ユニットとしては、例えば、除塵フィルターを挙げることができる。上記除湿ユニットとしては、例えば、吸着材を挙げることができる。
【0039】
さらに、上記排気装置は、さらにケミカルフィルターを含むこともできる。ケミカルフィルターを追加することにより、着用者から発生するアンモニア等の有害ガス状物質が周囲環境に放出することを抑えることができるので有用である。
【0040】
上記排気装置としては、当技術分野で通常用いられているものを好適に用いることができ、例えば、登録実用新案第3040172号に開示される、減圧ベルト及び小型吸引ボックスからなる防塵衣用発塵防止装置を用いることができる。また、国際公開第2008/114334号パンフレットに記載される除湿ユニットを備える排気装置を用いることができる。
【0041】
上記インナーウェアは、上記アウターウェアと、独立して存在することができ、又は上記アウターウェアと一体化されていることもできる。
【実施例】
【0042】
以下、実施例により、本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[製造例1]
AKE64030(旭化成せんい社製)を加工し、図1に示すような上衣部分のインナーウェアを製造した。
【0043】
[製造例2]
SE1980(セーレン(株)社製)を用いて、一般的な形状のアウターウェアを作成し、1回、洗濯を行った。
【0044】
[例1−発塵試験]
綿のTシャツ及び綿のスウェットパンツを着用し、シューズ(ゴールドウイン(株)社製、PA9350)及び手袋(オカモト(株)社製、PA−N1582、ニトリル)を着用した被験者が、製造例1で製造されたインナーウェア及び製造例2で製造されたアウターウェアを着用し、排気装置(山本光学(株)社製)を接続した。
上記排気装置のスイッチをオンにし、着用者が、腕の上下(5分間)又は起立及び着席(3分間)を繰り返し、その間、被験者の前方20cm及び高さ40cmのところの空気をパーティクルカウンター(クライメット社製、CI−100)に導入し、塵埃の個数(粒径0.1μm以上)をカウントした。結果を表1に示す。
【0045】
[比較例1−発塵試験]
上記排気装置のスイッチをオフにした以外は、上記例1を繰り返し、塵埃の個数をカウントした。結果を表1に示す。
【0046】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0047】
本発明のインナーウェアは、排気装置が作り出す減圧下において十分な通気性を保持し、例えば、顔部、手首部、足首部等の末端開口部から空気を均一に吸入し且つクリーン環境対応作業衣を環境に対して陰圧に保つので、着用者から発生する塵埃及び/又は水分を排気装置で捕捉してクリーン環境対応作業衣外に放出させる事が少なく、さらにクリーン環境対応作業衣内部の空気を効率よく循環させることができるので、着用者が暑さ及び/又は蒸れを感じることが少ないので、産業上有用である。
【符号の説明】
【0048】
1 インナーウェアの上衣部分
2 インナーウェアの下衣部分
3 頭部分
4 首部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記(i)及び(ii)を満たす素材から成ることを特徴とする、排気型のクリーン環境対応作業衣用インナーウェア;
(i)200Paの圧力が加えられた場合に、少なくとも初期厚みの70%を保持すること:及び
(ii)前記素材の厚み方向及び当該厚みと垂直方向に、前記素材の外部へと連絡する連続する空隙を有し、且つ前記素材の空隙率が85%以上であること。
【請求項2】
前記素材が、下記(iii)をさらに満たす、請求項1に記載のインナーウェア:
(iii)圧縮残留歪が30%以下であること。
【請求項3】
前記素材が、下記(iv)をさらに満たす、請求項2に記載のインナーウェア:
(iv)3mm〜10mmの厚さを有すること。
【請求項4】
前記素材が、ポリエステル、ポリアミド、ポリアクリロニトリル及びナイロンから成る群から選択される素材を含む、請求項1〜3のいずれか一項に記載のインナーウェア。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載のインナーウェア、アウターウェア及び排気装置を含む排気型のクリーン環境対応作業衣。
【請求項6】
前記アウターウェアの素材が、ポリアミド、ポリエステル、ポリアクリルニトリル、ポリエチレン、ポリオレフィンから成る群から選択される、請求項5に記載の排気型のクリーン環境対応作業衣。
【請求項7】
前記排気装置が、除塵ユニット及び/又は除湿ユニットを含む、請求項5又は6に記載のクリーン環境対応作業衣。
【請求項8】
前記インナーウェア及びアウターウェアが一体化されている、請求項5〜7のいずれか一項に記載の排気型のクリーン環境対応作業衣。
【請求項9】
前記インナーウェア及びアウターウェアが分離されている、請求項5〜7のいずれか一項に記載の排気型のクリーン環境対応作業衣。
【請求項10】
防塵及び/又は防湿用である、請求項5〜9のいずれか一項に記載のクリーン環境対応作業衣。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−196183(P2010−196183A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−39914(P2009−39914)
【出願日】平成21年2月23日(2009.2.23)
【出願人】(594137960)株式会社ゴールドウイン (19)
【出願人】(000179926)山本光学株式会社 (49)
【Fターム(参考)】