説明

排気弁付き袋

【課題】密封包装用の袋について、封緘後の排気を道具なしで簡便に行えるようにし、なおかつ、安価な排気弁を用いてコスト上昇を抑えることを課題としている。
【解決手段】密着して重ねた第1,第2樹脂シート6a、6bの弁出口側の一側縁と他側縁をそれぞれに気密に連結して両シート間に気体通路8を形成した排気弁5を密封包装用の袋に具備させ、その排気弁5の第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bを第3、第4融着部において袋本体の一面側フィルムと他面側フィルの周縁部にそれぞれ熱融着させ、第3、第4融着部を除く位置で前記一面側フィルムと他面側フィルムを気密に熱融着し、第1樹脂シートの弁入口側を袋本体2の一面側フィルムの内面に、第2樹脂シートの弁入口側を他面側フィルムの内面にそれぞれ熱融着して排気弁付き袋1を構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、密封して用いられる樹脂フィルムで形成された袋、詳しくは、安価に製造できる排気弁を備えさせて空気抜きなどを簡便に行えるようにした排気弁付き袋に関する。
【背景技術】
【0002】
樹脂フィルムで形成された密封用の袋で簡易で安価な構造の逆止弁を有するものが例えば下記特許文献1に開示されている。その特許文献1の袋は布団などの圧縮保存用であり、排気用の逆止弁が、袋の内部に配置される内弁部と、袋の外部に配置される外弁部とで構成されている。
【0003】
内弁部と外弁部は、樹脂フィルムで形成された一連のチューブを扁平に潰したようなものであり、構造が単純で材料費や製造コストが少なくて済む。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第2743329号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
密封袋は、生鮮食料品などの包装に多用されている。包装形態は、収納物を袋詰めするときに流入した空気を排出せずに封口するありきたりの一般的な包装形態のほかに、所謂真空パックや、収納物の鮮度維持のためのガス封入、クッション性確保のための空気封入などが採用されている。
【0006】
これ等のうち、一般的な包装形態では、袋の内部に閉じ込められた空気を十分に排出することが要求されることがある。また、空気やガスを封入する包装形態では、袋が膨らみすぎると箱詰めの効率が悪くなるので、空気やガスの封入量を封入後に調整することが要求されることがある。
【0007】
この要求に対し、前記特許文献1が開示しているような逆止弁を備えている袋であれば、逆止弁を開弁させて空気やガスの封入量を調整することが可能である。しかしながら、この方法は、封緘後の逆止弁の開弁を、ノズルを挿入して行う必要があり、簡便な排気が行えない。
【0008】
また、既存の排気弁の中には、ばねの力で閉弁させた弁体を外部から操作して開弁位置に動かし得る弁もあるが、この弁は、複雑、高価で、袋のコストを上昇させ、袋の体裁や取り扱い性も悪化させる。
【0009】
そこで、密封包装用の袋について、封緘後の排気を道具なしで簡便に行えるようにし、なおかつ、安価な排気弁を用いてコスト上昇を抑える要求が生じている。この発明は、その要求に応えることを課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、この発明においては、密着して重ねた第1,第2樹脂シートの弁出口側の一側縁と他側縁をそれぞれに気密に連結して両シート間に袋の内外を連通させる気体通路が形成されるようにした排気弁を、樹脂フィルムで形成された密封包装用の袋に具備させ、
その排気弁の前記第1樹脂シートを第3融着部において袋本体の一面側フィルムの周縁部に、前記第2樹脂シートを前記第3融着部と重なる第4融着部において袋本体の他面側フィルムの周縁部にそれぞれシートの全幅に渡って熱融着させ、その第3、第4融着部を除く位置で前記袋本体の一面側フィルムと他面側フィルムを気密に熱融着し、さらに、前記第1樹脂シートの弁入口側を前記袋本体の一面側フィルムの内面に、前記第2樹脂シートの弁入口側を前記袋本体の他面側フィルムの内面にそれぞれ第5、第6融着部において熱融着して排気弁付き袋を構成した。
【0011】
この袋の入口の封鎖は、ヒートシールによってもよいし、凹部と凸部をかみ合わせる開閉式のファスナーを設けて行ってもよい。この袋の好ましい形態を以下に列挙する。
(1)前記排気弁を、その弁の入口側において前記第1,第2樹脂シートの一側縁が互いに連結されたものにする。
(2)前記排気弁を袋本体のコーナ部に設ける。
(3)前記排気弁の全域を袋本体の内部に配置する。
(4)前記排気弁の入口側を袋本体の内部に、出口側を袋本体の外部に配置する。
(5)前記排気弁の出口側に、前記第1樹脂シートと第2樹脂シートを互いに熱融着させる第7融着部を設け、その第7融着部を仕切りにして前記気体通路を幅方向に複数に分割する。
(6)前記排気弁の第1,第2樹脂シートに、それらのシートの他側縁の連結部の弁入口側端部から一側縁の弁出口側端部付近に向けて斜めに横切る互いの位置が対応したヒンジ部を形成し、この排気弁を袋本体のコーナ部に、前記第1,第2樹脂シートの一側縁が袋本体の周縁に沿い、かつ、前記ヒンジ部の全域が袋本体の内部に配置される状態にして設ける。
(7)前記排気弁の第1樹脂シートと第2樹脂シート間に、粉粒体の通過を阻止するフィルタを、扁平に折りたたんで、かつ、そのフィルタの一端を前記第1樹脂シートに、他端を第2樹脂シートにそれぞれ接合して設ける。
(8)前記排気弁の第1樹脂シートと第2樹脂シート間に、粉粒体の通過を阻止するフィルタを第1、第2樹脂シートと平行配置にして設け、そのフィルタの一端と他端を、前記排気弁の入口側と出口側との間に互いに離間させて設ける第8,第9融着部により前記第1樹脂シートと第2樹脂シートに個別に熱融着する。
(9)前記第5,第6融着部による袋本体の一面側フィルムと他面側フィルムに対する前記第1,第2樹脂シートの熱融着を、第1,第2樹脂シートの一端の縁又は他側縁のみについて行なう。
(10)ノズルを差し込んで開弁させて袋本体の内部に気体を導入する逆止弁を具備させる。
【発明の効果】
【0012】
この発明の排気弁付き袋は、内圧がある値に達するまでは、排気弁の閉弁状態が保持される。その閉弁状態では、袋の内部に入り込んだ気体が外部に放出されること及び外部の空気が袋の内部に流入することが共に防止される。
【0013】
一方、密封された袋を手で押さえつけるなどして内圧を高めると、袋本体の一面側フィルムと他面側フィルムの離反量が大きくなる。それに伴い、第5、第6融着部においてその一面側フィルムと他面側フィルムに融着された排気弁の第1,第2樹脂シートが互いに引き離されて両シートの離反領域が次第に広がる。そして、内圧がある値を超えたところで排気弁が開弁し、袋内の気体が外部に放出される。
【0014】
このために、収納物を袋詰めするときに袋の内部に自然に流入した空気を、袋の密封後に道具なしで簡単に抜き取ることが可能になる。
【0015】
また、クッション効果を得るための空気、魚介類を生かすための酸素、収納物の鮮度維持のための不活性ガスなどを収納物と一緒に封入することが要求される用途では、気体封入後の封入量調整を、吸引装置を使用せずに行うことが可能になる。
【0016】
さらに、排気弁は、折り重ねた樹脂シートや2枚重ねの樹脂シート、或いは、扁平に潰して片方の側縁を部分的に切り離した樹脂チューブを素材にし、材料費負担の少ないその素材の必要箇所を熱融着させて簡単に安価に作ることができるため、袋のコスト上昇も抑制される。
【0017】
なお、上記において好ましいとした形態の作用、効果は、発明を実施するための形態の項で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】この発明の排気弁付き袋の第1形態を示す平面図
【図2】図1のA−A線に沿った断面図
【図3】図1のB−B線に沿った断面図
【図4】図1のC−C線に沿った断面図
【図5】図1の袋に設けた排気弁の斜視図
【図6】図5のD−D線に沿った断面図
【図7】図5のE−E線に沿った断面図
【図8】図5の排気弁の入口側が開いた状態を示す断面図
【図9】この発明の排気弁付き袋の第2形態を示す平面図
【図10】図9の袋に設けた排気弁の斜視図
【図11】図9のF−F線に沿った断面図
【図12】この発明の排気弁付き袋の第3形態を示す平面図
【図13】この発明の排気弁付き袋の第4形態を示す平面図
【図14】図13の袋に設けた排気弁の斜視図
【図15】図14の排気弁の入口側が開いた状態を示す斜視図
【図16】フィルタも設けた排気弁の他の例を示す部分破断斜視図
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、添付図面の図1〜図16に基づいて、この発明の排気弁付き袋の実施の形態を説明する。
【0020】
図1〜図7は、この発明の排気弁付き袋の第1形態を示している。この第1形態の排気弁付き袋1は、袋本体2のコーナ部に排気弁5を設けてなる。
【0021】
袋本体2は、ヒートシールが可能なポリエチレンなどの樹脂フィルムで形成されている。筒状に加工された樹脂フィルム3を扁平に潰して所定長さに切断し、一端の口を切断縁に沿った熱融着封緘部4を設けて塞いでいる。
【0022】
熱融着封緘部4は、袋本体の重なり合った一面側フィルム3aと他面側フィルム3b(図2参照)を互いに気密に接合するものであって、排気弁5の設置点では、一面側フィルム3aと他面側フィルム3bは融着されていない。代わりに、排気弁5を構成する樹脂シートがその一面側フィルム3aと他面側フィルム3bに融着される。
【0023】
排気弁5は、方形に裁断された素材樹脂シートを、図5に示すように、幅方向中間点で折り返して第1樹脂シート6a(折り返し部)を第2樹脂シート6b(非折り返し部)上に重ねている。そして、両樹脂シートの一側縁(折り目線に沿った縁)と弁出口側の他側縁をそれぞれ第1融着部7−1と第2融着部7−2を設けて熱融着させており、第1、第2樹脂シート6a,6bが離間したときに、両樹脂シート間に袋の内外を連通させる気体通路8(図6参照)が形成される。
【0024】
第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bは密着しているが、図は、両シートと融着部の位置関係などを理解しやすくするために、両シートが離れている状態にして表している(以下も同様とする)。
【0025】
この排気弁5を構成する素材は、2枚の樹脂シートや樹脂チューブであってもよい。樹脂チューブは、扁平に潰して片方の側縁を部分的に切り離せばよい。2つ折りした素材樹脂シートは、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの自由端を連結するために第2融着部7−2を必要とするが、第1融着部7−1は省略しても構わない。
【0026】
扁平に潰した樹脂チューブは、第1融着部7−1も省略することができる。ただし、第1融着部7−1や第2融着部7−2を必要としない排気弁も、その第1融着部7−1と第2融着部7−2を設けることで、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの密着性をより高めることができる。
【0027】
第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの弁入口側(第3、第4融着部7−3,7−4よりも気体通路8の入口側にある部分)は、袋本体の一面側フィルム3aと他面側フィルム3bの離反動作を利用して図7に鎖線で示すように、互いに引き離すことができる。
【0028】
弁入口側の第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bを最大限に引き離した状態でも、弁出口側では袋の内圧が所定値以下であると、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの密着状態が保持され、袋の内圧が所定値を超えるとその保持が解かれて気体通路8が開放されるようになっている。
【0029】
第1融着部7−1は、第2融着部7−2と違って弁入口側(排気弁の入口側。図1では上側、図5では右側)に延長して設けられている。弁入口側では、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの一側縁も他側縁と同様に互いに分離されていても構わないが、弁入口側で第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの一側縁が互いに連結されていると、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bを引き寄せる力が発生して両樹脂シートの密着性がよくなる。
【0030】
第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bは、袋本体の形成材料と同じ樹脂フィルムで形成することができる。例示の排気弁付き袋1は、袋本体2と排気弁5を、共に厚み100μmのポリエチレンフィルムで形成したが、素材の材質は熱融着可能のフィルムであればよく、ポリエチレンに限定されない。
【0031】
ポリエチレンは、帯電性があり、静電気による吸着力が第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bの密着性を高める。従って、少なくとも第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bは互いの合わせ面がポリエチレンで形成されたものが好ましい。素材の厚みは袋の用途に応じて適当な値を選択することができる。
【0032】
排気弁5は、袋の体裁や排気弁の機能安定性を考えると、袋本体2のコーナ部に設置するのがよい(本体2のコーナ部から離れた位置に設置することも可能)。その設置は、第1樹脂シート6aを第3融着部7−3において袋本体の一面側フィルム3aの周縁部に、第2樹脂シート6bを第3融着部7−3と重なる第4融着部7−4において袋本体の他面側フィルム3bの周縁部にそれぞれ全幅に渡って融着させる(図1、図3参照)。
【0033】
その第3、第4融着部7−3,7−4を除く位置に熱融着封緘部4(図1参照)を設けて袋本体の片側の開口を閉鎖する。そしてさらに、第1樹脂シート6aの弁入口側を袋本体2の一面側フィルム3aの内面に、第2樹脂シート6bの弁入口側を袋本体の他面側フィルム3bの内面にそれぞれ第5、第6融着部7−5,7−6において熱融着させる(図2参照)。
【0034】
第5、第6融着部7−5,7−6による融着は、第1,第2樹脂シート6a、6bの一端の縁又は他側縁のみについて行なうと、袋の強度低下が抑制される。ただし、第5、第6融着部7−5,7−6における融着を、第1,第2樹脂シート6a、6bの一端の縁と他側縁の双方について行なっても排気弁5の機能は維持される。
【0035】
図1、図5の7−7は、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bを互いに融着させる第7融着部である。第1形態の排気弁付き袋1は、排気弁5の入口側を袋本体2の内部に、出口側を袋本体2の外部に配置し、袋本体の外部に置かれる部位に上記第7融着部7−7を設け、その第7融着部7−7を仕切りにして気体通路8を幅方向に2つに分けている。
【0036】
その第7融着部7−7は、幅方向に位置をずらして複数設けることができる。この第7融着部7−7を設けると、排気弁5の幅を大きくして排気を早めることができる。第7融着部7−7を設けずに排気弁5の幅を大きくすると、排気弁5の開弁圧が低下して袋に気体を封入する用途では袋の内圧を要求範囲に維持するのが難しくなることが考えられる。
【0037】
このように構成した第1形態の排気弁付き袋1は、排気弁5を設置していない側の開口から袋本体2の内部に収納物を挿入し、その後、開口を熱融着させて気密に封緘する。そして、内部に閉じ込められた空気を排出することが要求される場合には、袋を手などで軽く押えつける。
【0038】
その操作によって、袋の内圧が上昇して排気弁5の設置部が図8のように膨らむ。これにより、袋本体の一面側フィルム6aと他面側フィルム6bの離反量が大きくなり、弁入口側で第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bが引き離される。このとき、内圧がある値を超えるまでは、第3,第4融着部7−3,7−4の位置から出口までの間で第1、第2樹脂シート6a,6bの密着状態が維持されて排気弁5の閉弁状態が保持される。そして、内圧が所定値を超えた時点で第1、第2樹脂シート6a,6bが押し離され、排気弁5が開弁して袋内の空気が外部に放出される。
【0039】
次に、空気の放出が十分になされたら押圧を解除する。これにより、袋の内圧が排気弁5の開弁圧以下に低下し、排気弁5が閉弁してその後の外部からの排気弁5を通っての空気の流入が阻止される。
【0040】
また、エアークッション効果を生じさせる目的や収納物の鮮度維持を目的として袋の内部に空気、酸素、不活性ガスなどを封入するときには、排気弁5の出口にノズルを差し込んで要求される気体を充填することができる。そのときの充填量は、充填後に過剰分を排気弁5経由で放出して任意に調整することができる。
【0041】
図9〜図11は、この発明の排気弁付き袋の第2形態である。この第2形態の排気弁付き袋1は、排気弁5の全域を袋本体の内部に配置している。
【0042】
この第2形態に採用した排気弁5は、図10及び図11に示すように、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6b間に粉粒体の通過を阻止して気体のみを通すフィルタ9を設けている。そのフィルタ9は、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bと平行に配置し、第3、第4融着部7−3,7−4よりも弁入口側に互いに離間して設けた第8,第9融着部7−8,7−9によって一端と他端を第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bに個別に熱融着させている。
【0043】
そのフィルタ9があると、澱粉などの粉粒体を収納する用途にも袋を使用することができる。フィルタ9は、不織布で構成したものや、微細な孔を多数設けたフィルムなどでよい。
【0044】
この第2形態の排気弁付き袋1も、内圧が所定値を越えると、袋本体の一面側フィルム3aと他面側フィルム3bの離反量が増加し、弁入口側で第1、第2樹脂シート6a、6bが引き離されて排気弁5が開弁する。従って、袋内の気体の放出、袋に対する気体充填量の調整を簡単に行うことができる。
【0045】
なお、第2形態の袋に採用した排気弁5のその他の構成は、第1形態の袋と同じであるので、説明を省く。
【0046】
図12は、この発明の排気弁付き袋の第3形態である。この第3形態の排気弁付き袋1は、気体充填用の逆止弁10を追設したものである。逆止弁10は、2枚の短冊状樹脂シートを密着させて重ね、その樹脂シートの両側部を熱融着させて融着部間に2枚の樹脂シートが離反したときに袋の内外を連通させる気体通路が形成されるようにした前掲の特許文献1などに開示される周知の逆止弁である。
【0047】
図12の排気弁付き袋1は、袋本体2の排気弁5を設けた側とは反対側のコーナ部に設けられている。この箇所では、袋本体の一面側フィルム3aと他面側フィルム3bは逆止弁10に接合され、排気弁設置部と同様に、両フィルムの相互融着はなされていない。
【0048】
図12の袋に設けた逆止弁10は、排気弁5と似ているが、その逆止弁10は、弁入口側で樹脂シートが袋本体の一面側フィルムと他面側フィルムに固定されていない。そのために、袋の内圧が高まるにつれて閉弁力が大きくなり、袋の外部からノズルなどを差し込まないと開弁しない。これが排気弁5との機能上の相違点となっている。
【0049】
逆止弁10は、気体充填が要求されない袋には不要である。気体充填は、排気弁5の気体通路に外部から吹込みノズルを挿入して行うことができるので、気体充填が要求される用途でも、逆止弁10はなくてもよい。
【0050】
図13,図14は、この発明の排気弁付き袋の第4形態である。この第4形態の排気弁付き袋1は、第2形態と同様に排気弁5の全体を袋本体の内部に設置している。第2形態との相違点は、逆止弁10を追設した点と、排気弁5の構造にある。
【0051】
第4形態の排気弁付き袋1に採用した排気弁5には、第1,第2樹脂シート6a、6bに、それらのシートを他側縁の連結部の弁入口側端部Q1から一側縁の弁出口側端部Q2付近に向けて斜めに横切る互いの位置が対応したヒンジ部11を形成している。
【0052】
そのヒンジ部11は、ヒートシール用の熱線を押し当てて素材シートの厚みを部分的に薄くするなどの方法で作り出すことができる。そのヒンジ部11を設けた排気弁5を、袋本体2のコーナ部に、第1,第2樹脂シート6a、6bの一側縁が袋本体の周縁に沿い、かつ、ヒンジ部11の全域が袋本体2の内部に配置される状態にして設けている。
【0053】
収納物と共に内部に気体を封入する用途では、袋本体2が大きく膨らむことが考えられる。排気弁5がコーナ部に設置された袋は、袋本体2が大きく膨らむと、弁入口側における第1,第2樹脂シート6a、6bが、図15に示すように、一側縁側の弁入口側端部Q3及び他側縁の連結部の弁入口側端部Q1よりも他側縁側の端部Q4の離反量が大となるように引き離される。
【0054】
このとき、第1,第2樹脂シート6a、6bがヒンジ部11の位置で屈曲し、それにより、排気弁5の出口側で第1,第2樹脂シート6a、6bの密着状態が保たれ易くなるため、ヒンジ部11の無いもの、ヒンジ部11が第1,第2樹脂シートを傾斜せずに横切って設けられたものに比べて排気弁5の開弁圧が高まり、その開弁圧の変動も起き難くなる。
【0055】
なお、前記フィルタ9は、基本構造の排気弁にも設けることができる。その例を図16に示す。同図の排気弁5は、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6b間に、粉粒体の通過を阻止するシート状の柔軟なフィルタ9を、扁平に折りたたんで設けている。そのフィルタ9は、一端が第1樹脂シート6aに、他端が第2樹脂シート6bにそれぞれ接合されており、第1樹脂シート6aと第2樹脂シート6bが袋の内圧で引き離されたときに展開して袋に収納された粉流体の流出を阻止する。
【0056】
この発明は、凹凸を嵌合させて嵌合部を気密にシールする構造のファスナーを設け、そのファスナーによって入口を開閉自在となした袋にも適用することができる。
【実施例1】
【0057】
袋本体と実施形態2で説明したフィルタ付き排気弁(幅が約50mm、長さが約90mm)を共に厚み100μmのポリエチレンで形成し、実施形態3の逆止弁を追設した構造の排気弁付き袋を試作した。そして、その袋に約2kgの澱粉を収納し、それを積み重ねた。その結果、澱粉収納時に袋の内部に入り込んだ空気が1日経過時点で、上積みした製品の重みで自然に押し出されて袋の内部に殆ど残存していなかった。また、収納した澱粉の排気弁からの漏れも確認されなかった。
【実施例2】
【0058】
上記実施形態1〜4の袋(排気弁は、幅が約50mm、長さが約90mm)を試作し、その袋に空気を封入した。そして、入口封緘後にその袋を手で押さえつけた。その結果、いずれの袋も、適度の圧力をかけたところで排気弁が開弁して封入した空気が外部に放出された。
【0059】
また、圧力をかけなかった袋は、数日経過後も空気の封入状態が維持された。なお、排気弁の開弁圧は、第4形態の袋が最も高く、これは、排気弁の開弁のために少し体重をかかるような押えつけを行う必要があった。
【符号の説明】
【0060】
1 排気弁付き袋
2 袋本体
3a 袋の一面側フィルム
3b 袋の他面側フィルム
4 熱融着封緘部
5 排気弁
6a 第1樹脂シート
6b 第2樹脂シート
−1〜7−9 第1融着部〜第9融着部
8 気体通路
9 フィルタ
10 逆止弁
11 ヒンジ部
Q1 第1,第2樹脂シートの他側縁の連結部の弁入口側端部
Q2 第1,第2樹脂シートの一側縁の弁出口側端部
Q3 第1,第2樹脂シートの一側縁の弁入口側端部
Q4 第1,第2樹脂シートの他側縁の弁入口側端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
密着させて重ねた第1,第2樹脂シート(6a、6b)の弁出口側の一側縁及び他側縁をそれぞれに気密に連結して両シート間に袋の内外を連通させる気体通路(8)が形成されるようにした排気弁(5)を、樹脂フィルムで形成された密封包装用の袋本体(2)に具備させ、
その排気弁(5)の前記第1樹脂シート(6a)を第3融着部(7−3)において袋本体の一面側フィルム(3a)の周縁部に、前記第2樹脂シート(6b)を前記第3融着部(7−3)と重なる第4融着部(7−4)において袋本体の他面側フィルム(3b)の周縁部にそれぞれ全幅に渡って融着させ、その第3、第4融着部(7−3,7−4)を除く位置で前記袋本体(2)の片側の開口を熱融着させて封緘し、さらに、前記第1樹脂シート(6a)の弁入口側を前記袋本体の一面側フィルム(3a)の内面に、前記第2樹脂シート(6b)の弁入口側を前記袋本体の他面側フィルム(3b)の内面にそれぞれ第5、第6融着部(7−5,7−6)において熱融着して構成される排気弁付き袋。
【請求項2】
前記排気弁(5)を、その弁の入口側において前記第1,第2樹脂シート(6a,6b)の一側縁が互いに連結されたものにした請求項1に記載の排気弁付き袋。
【請求項3】
前記排気弁(5)を、袋本体(2)のコーナ部に設けた請求項1又は2に記載の排気弁付き袋。
【請求項4】
前記排気弁(5)の全域を袋本体(2)の内部に配置した請求項1〜3のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項5】
前記排気弁(5)の入口側を袋本体の内部に、出口側を袋本体の外部に配置した請求項1〜3のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項6】
前記排気弁(5)の出口側に、前記第1樹脂シート(6a)と第2樹脂シート(6b)を互いに融着させる第7融着部(7−7)を設け、その第7融着部(7−7)を仕切りにして前記気体通路(8)を幅方向に複数に分割した請求項1〜5のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項7】
前記排気弁(5)の第1,第2樹脂シート(6a、6b)に、それらのシートの他側縁の連結部の弁入口側端部(Q1)から一側縁の弁出口側端部(Q2)付近に向けて斜めに横切る互いの位置が対応したヒンジ部(11)を形成し、この排気弁(5)を袋本体(2)のコーナ部に、前記第1,第2樹脂シート(6a,6b)の一側縁が袋本体の周縁に沿い、かつ、前記ヒンジ部(11)の全域が袋本体(2)の内部に配置される状態にして設けた請求項1〜6のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項8】
前記排気弁(5)の第1樹脂シート(6a)と第2樹脂シート(6b)間に、粉粒体の通過を阻止するフィルタ(9)を、扁平に折りたたんで、かつ、そのフィルタの一端を前記第1樹脂シート(6a)に、他端を第2樹脂シート(6b)にそれぞれ接合して設けた請求項1〜7のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項9】
前記排気弁(5)の第1樹脂シート(6a)と第2樹脂シート(6b)間に、粉粒体の通過を阻止するフィルタ(9)を第1、第2樹脂シート(6a、6b)と平行配置にして設け、そのフィルタ(9)の一端と他端を、前記排気弁(5)の入口側と出口側との間に互いに離間させて設ける第8,第9融着部(7−8,7−9)により前記第1樹脂シート(6a)と第2樹脂シート(6b)に個別に熱融着した請求項1〜5のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項10】
前記第5,第6融着部(7−5,7−6)による袋本体の一面側フィルム(3a)と他面側フィルム(3b)に対する前記第1,第2樹脂シート(6a,6b)の熱融着を、第1,第2樹脂シート(6a,6b)の弁入口側の端縁又は他側縁のみについて行なった請求項1〜9のいずれかに記載の排気弁付き袋。
【請求項11】
ノズルを差し込んで開弁させて袋の内部に気体を導入する逆止弁(10)を具備させた請求項1〜10のいずれかに記載の排気弁付き袋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2012−131542(P2012−131542A)
【公開日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−285961(P2010−285961)
【出願日】平成22年12月22日(2010.12.22)
【出願人】(391022175)栄和特殊加工株式会社 (1)
【Fターム(参考)】