説明

排気装置

【課題】排気対象空間の気体を速やかに外部に排出することができる排気装置を提供する。
【解決手段】加熱装置の上方に設置される排気装置であって、前記加熱装置に対向し、吸引流が流入する吸引口と、前記吸引口の少なくとも一部分の水平方向外側に設けられ、第1の吐出流を吐出する第1の吐出口と、前記吸引口と前記第1の吐出口との間に設けられ、第2の吐出流を吐出する第2の吐出口と、を備え、前記第1の吐出流は、排気対象空間と外部空間との間の気体の移動を遮断する遮断流を形成し、前記第2の吐出流は、前記加熱装置の近傍の気体を前記吸引口の方向に誘導する誘導流を形成することを特徴とする排気装置を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の態様は、一般的に、排気装置に関し、具体的にはエアカーテンを形成させることができる排気装置に関する。
【背景技術】
【0002】
臭気などを吸引捕集し、外部へ排気する排気装置がある。例えば、キッチンに設置されたレンジ等の調理器具の上方に排気装置を設置し、調理器具から立ちのぼる油煙や臭気などを吸引捕集することが行われている。一方、最近では、調理器具が壁に沿って設置される従来型キッチンだけでなく、調理器具が壁から離れたところに設置される、いわゆる、アイランド型キッチンやペニンシュラ型キッチンが普及し始めている。
【0003】
従来型のキッチンでは、消防法の規制に基づいて排気装置と調理器具との間の距離を800mm以上に離したとしても、壁があるため油煙や臭気などが拡散しにくく、油煙や臭気などを比較的簡単に捕集することができた。しかし、アイランド型キッチンやペニンシュラ型キッチンでは、その周囲が開放しているため、油煙や臭気などが拡散しやすく、油煙や臭気などを捕集しにくい。そのため、アイランド型キッチンやペニンシュラ型キッチンでは、従来よりも高い捕集性能を有する排気装置が要求される。また、従来型のキッチンでも、外乱風(横風)などがある場合には、油煙や臭気などが拡散しやすく、油煙や臭気などを捕集しにくくなる場合もある。
【0004】
これに対して、排気装置から吹き出される気体流によって形成されるエアカーテンにより、調理器具などから立ち上る油煙や臭気などの拡散を遮断しつつ、その油煙や臭気などを捕集および排気させる装置が提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2、及び特許文献3)。
【0005】
また、加熱調理器の上方に配置されるレンジフードであって、加熱調理器に対向して配置され且つ空気を吸引するための吸引口と、前記吸引口の少なくとも一部分の周りを周方向に延び、加熱調理器側に向かうエアカーテンを形成する空気が吐出される吐出口と、を有し、加熱調理器近傍までエアカーテンを遮断するように到達させ、吸引口から吸引する風量に応じて吸引気流から影響を受けないような状態に前記エアカーテンを形成する空気を制御する吐出状態制御手段を有することを特徴とするレンジフードが提案されている(特許文献4)。
【0006】
ここで、汚染空気の外部への漏洩をさらに抑制することが求められている。
【特許文献1】特開平11−337072号公報
【特許文献2】特開2007−100978号公報
【特許文献3】特開2005−214584号公報
【特許文献4】特開2008−70049号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の態様は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、排気対象空間の気体を速やかに外部に排出することができる排気装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様によれば、加熱装置の上方に設置される排気装置であって、前記加熱装置に対向し、吸引流が流入する吸引口と、前記吸引口の少なくとも一部分の水平方向外側に設けられ、第1の吐出流を吐出する第1の吐出口と、前記吸引口と前記第1の吐出口との間に設けられ、第2の吐出流を吐出する第2の吐出口と、を備え、前記第1の吐出流は、排気対象空間と外部空間との間の気体の移動を遮断する遮断流を形成し、前記第2の吐出流は、前記加熱装置の近傍の気体を前記吸引口の方向に誘導する誘導流を形成することを特徴とする排気装置が提供される。
【発明の効果】
【0009】
本発明の態様によれば、排気対象空間の気体を速やかに外部に排出することができる排気装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
第1の発明は、加熱装置の上方に設置される排気装置であって、前記加熱装置に対向し、吸引流が流入する吸引口と、前記吸引口の少なくとも一部分の水平方向外側に設けられ、第1の吐出流を吐出する第1の吐出口と、前記吸引口と前記第1の吐出口との間に設けられ、第2の吐出流を吐出する第2の吐出口と、を備え、前記第1の吐出流は、排気対象空間と外部空間との間の気体の移動を遮断する遮断流を形成し、前記第2の吐出流は、前記加熱装置の近傍の気体を前記吸引口の方向に誘導する誘導流を形成することを特徴とする排気装置である。
この排気装置によれば、遮断流によって外乱流(外部空間に存在する空調等の気流)の影響が遮断されるとともに、誘導流によって油煙等が速やかに吸引口の方向に誘導される。これにより、油煙等が良好に排気される。
【0011】
また、第2の発明は、第1の発明において、前記第1の吐出流は、斜め下方且つ前記第2の吐出流と干渉しない方向に、前記第1の吐出口から吐出されることを特徴とする記載の排気装置である。
この排気装置によれば、遮断流と誘導流とが相互に干渉しないため、遮断流及び誘導流のそれぞれにおいて、適切な流量、流速、及び方向が確保される。
【0012】
また、第3の発明は、第1または第2の発明において、前記第2の吐出流は、前記加熱装置の上面の位置まで達することを特徴とする排気装置である。
この排気装置によれば、第2の吐出流は、加熱装置の高さの位置で、排気装置の吸引力により生じた低圧領域(比較的気圧の低い領域)のうち、加熱装置の近傍領域の影響により、加熱装置の方向に引き寄せられる。この結果、第2の吐出流は、その後加熱装置の加熱に起因する上昇気流と相まって、排気対象空間の気体を吸引口の方向に良好に導くことができる。
【0013】
また、第4の発明は、第1〜第3のいずれか1つの発明において、前記第2の吐出口は、前記加熱装置よりも水平方向外側に設けられたことを特徴とする排気装置である。
この排気装置によれば、第2の吐出流は、加熱装置の水平方向周辺にある低圧領域に達することができる。これにより、第1の発明に関して前述した機構により、第2の吐出流は、排気対象空間の気体を吸引口の方向に良好に導く誘導流を形成することができる。
【0014】
また、第5の発明は、第1〜第4のいずれか1つの発明において、前記第1の吐出流は、流量及び流速の少なくともいずれかにおいて、前記第2の吐出流を上回ることを特徴とする排気装置である。
この排気装置によれば、第1の吐出流により外乱を遮断する強固なエアカーテンを形成しつつ、第2の吐出流により排気対象空間に適度な吸引気流が形成されるように気流を調整することができる。
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ説明する。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は適宜省略する。
図1は、本発明の実施の形態に係る排気装置が設置されたキッチンを例示する模式側面図である。
また、図2は、本具体例に係る排気装置の底面図である。
また、図3は、本具体例に係る排気装置を斜め上方から見た模式図である。
また、図4は、本具体例に係る排気装置を斜め下方から見た模式図である。
【0016】
本実施形態に係る排気装置10aは、加熱調理器などの加熱装置の上方に設置される。排気装置10aは、ケーシング12と、排気ファン34と、吐出ファン36と、を備えている。ケーシング12は、略矩形状のケーシング下部12aと、ケーシング下部12aから上方に狭まるように延在するケーシング中間部12bと、ケーシング中間部12bの上方に配置されたケーシング上部12cと、を有している。吐出ファン36は、ケーシング下部12aからケーシング中間部12bにかけてケーシング12の内部に設けられ、ケーシング12の下方に向けて空気を吐出している。吐出ファン36としては、例えばクロスフローファンを用いることができる。また、排気ファン34は、ケーシング上部12cの内部に設けられ、ケーシング12の下方の空気を吸引して外部に排出している。
【0017】
なお、ケーシング12はケーシング中間部12bを有しているが、これだけに限定されず、図14に関して後述するように、ケーシング12はケーシング中間部12bを有していなくともよい。この場合には、ケーシング下部12aとケーシング上部12cとが連結される。そして、吐出ファン36は、ケーシング下部12aの内部に設けられる。
【0018】
ケーシング12には、吸引口20と、吸引流路22と、排気口24と、吸気口26と、吐出流路28と、遮断流吐出口30aと、誘導流吐出口30bと、が設けられている。吸引口20は、ケーシング下部12aの下端部に、加熱装置に対向するように設けられ、上昇してくる気体(吸引流)を流入させている。また、吸引流路22は、ケーシング下部12a及びケーシング上部12cの内部に設けられ、吸引口20から吸引された気体を排気ファン34へ導いている。排気口24は、排気ファン34の上方部に設けられている。排気ファン34から排出された気体は、この排気口24を通過し、外部へ排気される。
【0019】
一方、吸気口26は、吐出ファン36の上方部に設けられている。ケーシング中間部12bの上方部にある空気は、この吸気口26を通過して、吐出ファン36に取り入れられる。この空気は、吐出ファン36によって矢印Aに表したように吐出流路28の方向に吹き出される。吐出流路28は、吸引流路22と隔離されて設けられている。
【0020】
吐出ファン36から吹き出された空気は、吐出流路28を通り、その後分岐して、遮断流吐出流路28a及び誘導流吐出流路28bを通る。その後、遮断流吐出流路28aを通った空気は、矢印Bに表したように遮断流吐出口30a(第1の吐出口)から吐出される。また、誘導流吐出流路28bを通った空気は、矢印Cに表したように誘導流吐出口30b(第2の吐出口)から吐出される。
【0021】
遮断流吐出口30aは、吸引口20の少なくとも一部分の水平方向外側に設けられ、第1の吐出流を吐出する。ここで、「水平方向外側」とは、吸引口20の中心を基準として、水平面上で吸引口20の中心から遠い側のことをいう。逆に、吸引口20の中心を基準として、水平面上で吸引口20の中心に近い側のことを、「水平方向内側」という。以下において同じである。第1の吐出流は、後に詳述するように、排気対象空間と外部空間との間の気体の移動を遮断する遮断流を形成する。すなわち、外乱流(外部空間に存在する空調等の気流)を遮断するエアカーテンの役割を果たす。遮断流吐出口30aは、図1に表したようにケーシング下部12aの下面に設けられてよく、あるいは、ケーシング下部12aの外周面12dや、図12に関して後述する斜面12eに設けられてもよい。
【0022】
また、誘導流吐出口30bは、吸引口20と遮断流吐出口30aとの間に設けられ、第2の吐出流を吐出する。第2の吐出流は、後に詳述するように、加熱装置の近傍の気体を吸引口20の方向に誘導する誘導流を吐出する。誘導流吐出口30bは、図1に表したようにケーシング下部12aの下面に設けられてよく、あるいは、ケーシング下部12aの外周面12dや、図12に関して後述する斜面12eに設けられてもよい。
【0023】
本実施形態に係る排気装置10aには、図2に表したように、ケーシング12の内部であって調理者が立つ側(前方)の左右側方及び背面側(後方)に、吐出ファン36が1個ずつ、計3個設けられている。また、ケーシング下部12aの下面であって左右側方及び後方の外周面12dに接する領域またはその近傍に、遮断流吐出口30aが1個ずつ、計3個設けられている。また、遮断流吐出口30aの水平面内側に、誘導流吐出口30bが1個ずつ、計3個設けられている。遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bは、略矩形の形状を有している。各エアカーテン吐出口30a及び誘導流吐出口30bは、同じ側に設けられた各吐出ファン36に対応している。
【0024】
なお、吐出ファン36、遮断流吐出口30a、及び誘導流吐出口30bは、前方側には設けられないのが好ましい。これは、吐出口30から吐出された気体(吐出流)が作業者や調理者に直接当たると、当該者に不快感を与えるおそれがあるためである。しかし、作業目的や作業形態などに応じて、前方側にも吐出ファン36、遮断流吐出口30a、及び誘導流吐出口30bが設けられる構成にしてもよい。
【0025】
また、図5または図6に表したような構成にしてもよい。図5及び図6は、遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bの他の構成を例示する模式底面図である。
図5に表したように、左右何れかの側方に壁が設けられ、他の側方及び後方に吐出ファン36、遮断流吐出口30a、及び誘導流吐出口30bが1個ずつ、計2個設けられる構成にしてもよい。あるいは、図示しないが、左右何れかの側方及び後方に壁が設けられ、他の側方に吐出ファン36、遮断流吐出口30a、及び誘導流吐出口30bが1個設けられる構成にしてもよい。あるいは、作業目的や作業形態などに応じて、壁の有無に関わらず、吐出ファン36、遮断流吐出口30a、及び誘導流吐出口30bは任意の位置に設けてよい。
【0026】
また、遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bは、図6に表したように、外周面12dの複数面(図6では、左右側方及び後方の3面)に亘って連続した構成にしてもよい。
【0027】
また、図2では、3台の吐出ファン36を設けて、それぞれに対応した遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bから空気を吹き出す場合を説明しているが、本実施形態はかかる構成に限定されない。吐出ファン36の数を減らして(例えば、一台の吐出ファンとして)風路を分岐させて、遮断流及び誘導流をそれぞれの遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bから吐出するようにしてもよい。このようにすることで、部品点数を減少させることができる。
【0028】
排気装置10aの下方には、図1に表したように、例えば調理器具70(加熱装置)が設けられ、調理器具70上には鍋(図示せず)などが載置される。鍋などから発生した油煙や水蒸気など(以下、「油煙等」という)は、排気ファン34に吸い込まれるようにして、矢印Dに表したように吸引口20から吸引流路22へ流入する。吸引口20から吸い込まれた吸引流は、吸引流路22を通って、排気ファン34に吸い込まれる。その後、排気ファン34は、吸い込んだ吸引流を排気口24から矢印Eに表したように外部へ排気する。
【0029】
なお、図1に表したように、吸引口20には、整流板48が設けられている。整流板48は、図4に表したように、吸引口20の面積よりも小さい面積を有する略矩形状をしており、吸引口20の略中央部に設けられている。また、整流板48は、図1に表したように、整流板48の下面がケーシング下部12aの下面よりも上方に位置するように設けられている。
【0030】
図7は、整流板48の効果を説明するための模式側面図である。
排気装置10aは、整流板48を備えているため、吸引流は整流板48と吸引流路22の側面22aとの間の狭い隙間22bから吸引される。隙間22bは、整流板48の周縁に沿って存在している。隙間22bの面積は、吸引口20の面積よりも十分に狭いため、鍋などから発生した油煙等を含む吸引流は、より速い流速で隙間22bに流入する。そのため、矢印Dに表したように、整流板48に当たった吸引流であっても、隙間22bの方へ吸い寄せられ、捕集性能を向上させることができる。
【0031】
一方、整流板48に当たった吸引流が隙間22bに吸い寄せられたときに、隙間22bに流入することができなかった吸引流は、側面22aに当たることになる。そのため、吸引流が、誘導流吐出口30bの方向に流れる可能性は少なく、吸引流(矢印D)と誘導流吐出口30bから吐出される第2の吐出流62(矢印C)との干渉を防止しつつ、捕集性能を向上させることができる。
【0032】
なお、吸引流の多くは、まず整流板48に当たるため、鍋などから発生した油などは、排気装置10aの中で整流板48に付着することが多い。そのため、整流板48を清掃すれば足りることが多く、排気装置10aの清掃の容易性を向上させる効果も得られる。
【0033】
また、整流板48の下面と、ケーシング下部12aの下面と、は略同一面であってもよい。この場合、整流板48の清掃が容易になる。
【0034】
次に、本実施形態の効果について、図8を参照しつつ説明する。
図8は、本実施形態の効果を説明するための模式側面図である。図8に表したように、調理器具70の上には、鍋72が載置されている。鍋72は加熱され、この結果鍋72の上方には、矢印Fで表した上昇気流64が形成されている。
【0035】
まず、遮断流吐出口30aから吐出される空気について説明する。遮断流吐出口30aから吐出された空気は、いわゆるエアカーテンを形成する。
【0036】
図8の矢印Bに表したように、遮断流吐出口30aから吐出された空気(第1の吐出流60)により、除去したい油煙等が比較的多く存在する空間(排気対象空間50。一般に、排気装置10aの下方及びその近傍空間)と、その外側の空間(外部空間52)と、が区分され、排気対象空間50と外部空間52との間の気体の移動が遮断される。すなわち、第1の吐出流60は、排気対象空間50にある油煙等が外部空間52に流出することを防ぐとともに、外部空間52に存在する空調等の気流(外乱流66、矢印W)が排気対象空間50に進入することを防ぐ遮断流(エアカーテン)の役割を果たす。この結果、油煙等は良好に吸引口20に導かれ、適切に排気される。以下、第1の吐出流60を、「遮断流60」と呼ぶこととする。
【0037】
なお、遮断流吐出流路28aの形状を適宜選択することにより、遮断流60の流量、流速、及び方向を調節することができる。
【0038】
例えば、図8に表したように、遮断流吐出流路28aの断面積は、誘導流吐出流路28bの断面積に比べて大きくすることができる。これにより、遮断流60は比較的大きい流量を有し、比較的強固なエアカーテンが形成される。
【0039】
また、遮断流吐出流路28aは、遮断流吐出口30aに向かって狭まる形態(いわゆるテーパ形状)にすることができる。これにより、遮断流吐出口30aから吐出される遮断流60は比較的速くなり、比較的強固なエアカーテンが形成される。遮断流60の速度としては、例えば、遮断流吐出口30a近傍で1.5〜5m/秒、調理器具70の上面の位置で風速の鉛直下向き成分が0.5m/秒以上であってよい。
【0040】
また、遮断流吐出流路28aの水平方向内側の面が、遮断流吐出口30aに向かって水平方向外側に、且つ斜め下方に傾斜する形態にすることができる。この結果、遮断流60は、斜め下方且つ第2の吐出流62(誘導流62、矢印C)と干渉しない方向に吐出される。これにより、遮断流60と誘導流62とが相互に干渉しないため、遮断流60及び誘導流62のそれぞれにおいて、適切な流量、流速、及び方向が確保される。
【0041】
しかし、遮断流吐出流路28aの形状はこれに限定されず、作業状況等に応じて広い範囲から選択することができる。例えば、外乱流66の強さによっては、遮断流吐出流路28aの断面積をさらに大きくしたり、逆に小さくしたり、あるいは別のテーパ形状にしたり、逆に断面積を均一にするなどして、遮断流60の流量や流速を別の値になるようにしてもよい。また、例えば外乱流66の存在位置によっては、誘導流62と干渉しない範囲において遮断流吐出流路28aの方向を水平方向等の別の方向にして、遮断流60が別の方向に吐出されるようにしてもよい。
【0042】
次に、誘導流吐出口30bから吐出される空気について説明する。誘導流吐出口30bから吐出された空気は、排気対象空間50にある油煙等を吸引口20に誘導する機能を果たす。
【0043】
まず、このような誘導流を形成する意義について説明する。
上記のように、遮断流60を設けることにより、排気対象空間50と外部空間52との間の気体移動は遮断される。しかし、遮断流60は排気対象空間50を完全に封止するように形成されるとは限らない。前述したように、一般に、作業者や調理者が位置する領域には、良好な作業環境や調理環境の確保の観点から、気流が存在しない方が好ましいと考えられる。このため、かかる領域には遮断流60が設けられず、排気対象空間50は封止されない可能性がある。
【0044】
また、遮断流60が複数の遮断流吐出口30aによって形成される場合には、複数の遮断流60の間に隙間が生じる可能性がある。
【0045】
また、遮断流60が排気対象空間50の周囲を覆うように形成された場合でも、外乱流66の性質(流速や流量など)によって、外乱流66が遮断流60を通過して排気対象空間50に進入してくる可能性もある。
【0046】
また、遮断流60の通過領域に器物や人が存在する場合には、これら器物や人は遮断流60の流れを遮ることになる。作業や調理の状況によっては、一時的に作業道具や調理器具、あるいは作業者や調理者が遮断流60の通過領域に存在することが考えられる。この場合、その下方領域には遮断流60は存在しないことになる。
【0047】
これらから、一般に、遮断流60が排気対象空間50を完全に封止する構造にすることは困難であり、排気対象空間50と外部空間52との間で何らかの気体移動が生じると考えられる。すなわち、油煙等の一部は外部空間52に流出する可能性がある。
【0048】
このため、油煙等を速やかに吸引口20の方向に誘導することが望ましい。従って、本実施形態では、誘導流吐出口30bから第2の吐出流62を吐出させ、誘導流を形成している。
【0049】
次に、誘導流の形成過程及び作用について説明する。
図8の矢印Cに表したように、誘導流吐出口30bから吐出された空気(第2の吐出流62)は、排気装置10aの下方に流れる。この時、上昇気流64により、調理器具70の水平方向周辺(鍋72の側面近傍)の気圧は比較的低くなっていると考えられる。
【0050】
ここで、第2の吐出流62は、調理器具70(加熱装置)の上面の位置まで達するような構成にすることができる。また、誘導流吐出口30bを調理器具70より水平方向外側に配置するなどして、第2の吐出流62が調理器具70の水平方向周辺に達するような構成にすることができる。
【0051】
これにより、第2の吐出流62は、調理器具70の高さの位置で、調理器具70の水平方向周辺に生じた低圧領域(比較的気圧の低い領域)の影響により、調理器具70の方向に引き寄せられると考えられる。この結果、第2の吐出流62は、その後調理器具70の加熱に起因する上昇気流の作用によって、矢印Dに表したように、排気対象空間50の油煙等を吸引口20の方向に良好に導くことができる。すなわち、誘導流が形成される。以下、第2の吐出流62を、「誘導流62」と呼ぶこととする。その後、誘導流62及び油煙等は、吸引口20から吸引流路22へ流入し、前述した機構によって外部へ排気される。
【0052】
なお、誘導流吐出流路28bの形状を適宜選択することにより、誘導流62の流量、流速、及び方向を調節することができる。誘導流62の流量や流速は、遮断流60の流量や流速よりも低くすることが望ましい。遮断流60は外乱を遮断するための強固なエアカーテンを形成する作用を有するのに対して、誘導流62は排気対象空間50に適度な吸引気流が形成されるように気流を調整できればよいからである。
【0053】
例えば、図8に表したように、誘導流吐出流路28bの断面積は、比較的小さくすることができる。また、誘導流吐出流路28bの断面積は、均一にすることができる。これらにより、誘導流62は適切な流量及び流速を有することになる。すなわち、誘導流62は、調理器具70が設置される面に衝突して大きな乱れを生じさせることなく良好にこの面近傍に達することができる。誘導流62の速度としては、例えば、調理器具70の高さ付近で風速の鉛直下向き成分が0.5m/秒以下であってよい。
【0054】
また、図8に表したように、誘導流吐出流路28bは鉛直に設けることができる。これにより、誘導流吐出口30bからは略鉛直下方に誘導流62が吐出されることになり、遮断流60(矢印B)と誘導流62(矢印C)とが干渉することが回避される。
【0055】
しかし、誘導流吐出流路28bの形状はこれに限定されず、作業状況等に応じて広い範囲から選択することができる。例えば、調理器具70の種類によっては、誘導流吐出流路28bの断面積をさらに大きくしたり、逆に小さくしたり、あるいはテーパ形状にしてもよい。例えば、調理器具70がIH調理器の場合は、上昇気流64が比較的少ないと考えられるため、誘導流吐出流路28bの断面積を多くしたり、誘導流吐出口30b側が細くなるようなテーパ形状にするなどして、誘導流62の流量及び流速が比較的大きくなるようにすることができる。
【0056】
また、誘導流吐出流路28bの方向についても、遮断流60(矢印B)と、誘導流62(矢印C)とが干渉しない限りにおいて、任意の形態にすることができる。例えば、図9に表した構成にしてもよい。
【0057】
図9は、誘導流吐出流路28bの他の構成を例示する模式断面図である。誘導流吐出流路28bは、図9(a)に表したように、誘導流吐出口30bに向かって水平方向外側に、且つ斜め下方に傾斜してもよく、あるいは、図9(b)に表したように、誘導流吐出口30bに向かって水平方向内側に、且つ斜め下方に傾斜してもよい。遮断流60と誘導流62とが干渉しないことにより、遮断流60及び誘導流62のそれぞれにおいて、適切な流量、流速、及び方向が確保される。
【0058】
このように、本実施形態によれば、遮断流60によって外乱流66の影響が遮断されるとともに、誘導流62によって油煙等が速やかに吸引口20の方向に誘導される。これにより、油煙等が良好に排気される。
【0059】
特に、調理器具70がIH調理器(電磁調理器)の場合は、上昇気流64が比較的少ないため、油煙等が吸引口20に到達するまでにかかる時間が比較的長く、油煙等が外部空間52に流出する可能性が高くなる。本実施形態の効果は、このような場合に特に有効に発揮される。
【0060】
(他の具体例)
次に、他の具体例について説明する。
図10は、本実施形態に係る他の具体例(排気装置10b)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。図10に表したように、排気装置10bは、図1〜図9に表した排気装置10aと基本的に同じ構造を有するが、整流板48を備えていない。このような場合も、矢印Dに表したように、誘導流62によって油煙等が速やかに吸引口20の方向に誘導される。
【0061】
また、吸引流路22の側面22aと、誘導流吐出口30bとは比較的離れている。これにより、下方に向かう誘導流62(矢印C)と、吸引口20に吸引される吸引流(矢印D)との干渉が抑制される。
【0062】
また、図11は、本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10c)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。図11に表したように、排気装置10cは、図1〜図9に表した排気装置10aと基本的に同じ構造を有するが、遮断流吐出口30aは、ケーシング下部12aの外周面12dに設けられている。また、遮断流吐出口30aの下端は、吸引口20よりも上方に配置されている。また、遮断流吐出流路28aは、遮断流吐出口30aに向かって水平方向外側に、且つ斜め下方に傾斜している。かかる形態にすることにより、遮断流60(矢印B)と、誘導流62(矢印C)との干渉がさらに抑制される。
【0063】
また、吸引流路22の側面22aと、誘導流吐出口30bとは比較的離れている。これにより、下方に向かう誘導流62(矢印C)と、吸引口20に吸引される吸引流(矢印D)との干渉が抑制される。
【0064】
また、図12は、本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10d)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。図12に表したように、排気装置10dは、図11に表した排気装置10cと基本的に同じ構造を有するが、排気装置10dのケーシング下部12aは、水平方向外側且つ斜め下方を臨む斜面12eを外周面12dの下方部に有し、遮断流吐出口30aは斜面12eに設けられている。ここで、水平方向外側且つ斜め下方を臨む斜面とは、その斜面に対する垂直方向(法線方向)が水平方向外側且つ斜め下方へ向かっている斜面を意味している。かかる形態にしても、遮断流60(矢印B)と、誘導流62(矢印C)との干渉が十分抑制される。
【0065】
また、吸引流路22の側面22aと、誘導流吐出口30bとは比較的離れている。これにより、下方に向かう誘導流62(矢印C)と、吸引口20に吸引される吸引流(矢印D)との干渉が抑制される。
【0066】
また、図13は、本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10e)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。図13に表したように、排気装置10eは、図12に表した排気装置10dと基本的に同じ構造を有するが、遮断流吐出流路28aは、遮断流吐出口30aに向かって狭まる形態になっている。かかる形態にすることにより、遮断流60(矢印B)と誘導流62(矢印C)との干渉が十分抑制される。また、遮断流60の流速が高くなり、より勢いのあるエアカーテンを形成することができる。これにより、鍋72などから発生した吸引流が、調理器具70の周辺に拡散することをより確実に遮断することができ、捕集性能を高めることができる。さらに、遮断流吐出口30aの開口面積は、比較的小さい。そのため、排気装置10e全体の構造をすっきりとしたデザインとすることができる。
【0067】
また、吸引流路22の側面22aと、誘導流吐出口30bとは比較的離れている。これにより、下方に向かう誘導流62(矢印C)と、吸引口20に吸引される吸引流(矢印D)との干渉が抑制される。
【0068】
また、図14は、本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10f)を例示する、左側面方向から見た模式断面図である。
【0069】
図14に表した排気装置10fは、図11に表した排気装置10cと基本的に同じ構造を有するが、吐出ファンが追加されている。すなわち、遮断流吐出流路28a及び誘導流吐出流路28bのそれぞれに対応して、遮断流吐出ファン36a及び誘導流吐出ファン36bが設けられている。また、必要に応じ、吸気口26についても、遮断流吐出ファン36a及び誘導流吐出ファン36bのそれぞれに対応して、遮断流用吸気口26a及び誘導流用吸気口26bが設けられている。ケーシング12は、ケーシング中間部12bを有さず、ケーシング下部12aとケーシング上部12cとが連結される。そして、遮断流吐出ファン36a、誘導流吐出ファン36b、遮断流用吸気口26a、及び誘導流用吸気口26bは、ケーシング下部12aの内部に設けられる。
【0070】
かかる形態にすることにより、遮断流60及び誘導流62の流量や流速の制御が容易になる。
また、吸引流路22の側面22aと、誘導流吐出口30bとは比較的離れている。これにより、下方に向かう誘導流62(矢印C)と、吸引口20に吸引される吸引流(矢印D)との干渉が抑制される。
【0071】
なお、図14に表した排気装置10fでは、遮断流吐出口30aは外周面12dに設けられているが、ケーシング下部12aの下面に設けられてもよい。また、図14に表した排気装置10fでは、誘導流吐出流路28bは誘導流吐出口30bに向かって水平方向外側に、且つ斜め下方に傾斜しているが、誘導流吐出口30bに向かって水平方向内側に、且つ斜め下方に傾斜してもよい。
【0072】
以上説明したように、本実施形態によれば、遮断流60によって外乱流66の影響が遮断されるとともに、誘導流62によって油煙等が速やかに吸引口20の方向に誘導され、もって油煙等が良好に排気される排気装置が提供される。
【0073】
以上、具体例を参照しつつ本発明の実施の形態について説明した。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。すなわち、これら具体例に、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、前述した各具体例が備える各要素およびその配置、材料、条件、形状、サイズなどは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施の形態が備える各要素は、技術的に可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施の形態に係る排気装置が設置されたキッチンを例示する模式側面図である。
【図2】本具体例に係る排気装置の底面図である。
【図3】本具体例に係る排気装置を斜め上方から見た模式図である。
【図4】本具体例に係る排気装置を斜め下方から見た模式図である。
【図5】遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bの他の構成を例示する模式底面図である。
【図6】遮断流吐出口30a及び誘導流吐出口30bの他の構成を例示する模式底面図である。
【図7】整流板48の効果を説明するための模式側面図である。
【図8】本実施形態の効果を説明するための模式側面図である。
【図9】誘導流吐出流路28bの他の構成を例示する模式断面図である。
【図10】本実施形態に係る他の具体例(排気装置10b)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。
【図11】本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10c)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。
【図12】本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10d)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。
【図13】本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10e)を例示する、正面方向から見た模式断面図である。
【図14】本実施形態に係るさらに別の具体例(排気装置10f)を例示する、左側面方向から見た模式断面図である。
【符号の説明】
【0075】
10a 排気装置
10b 排気装置
10c 排気装置
10d 排気装置
10e 排気装置
10f 排気装置
12 ケーシング
12a ケーシング下部
12b ケーシング中間部
12c ケーシング上部
12d 外周面
20 吸引口
22 吸引流路
22a 側面
22b 隙間
24 排気口
26 吸気口
26a 遮断流用吸気口
26b 誘導流用吸気口
28 吐出流路
28a 遮断流吐出流路
28b 誘導流吐出流路
30a 遮断流吐出口
30b 誘導流吐出口
34 排気ファン
36 吐出ファン
36a 遮断流吐出ファン
36b 誘導流吐出ファン
48 整流板
50 排気対象空間
52 外部空間
60 第1の吐出流、遮断流
62 第2の吐出流、誘導流
64 上昇気流
66 外乱流
70 調理器具
72 鍋
A 矢印
B 矢印
C 矢印
D 矢印
E 矢印
F 矢印
W 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱装置の上方に設置される排気装置であって、
前記加熱装置に対向し、吸引流が流入する吸引口と、
前記吸引口の少なくとも一部分の水平方向外側に設けられ、第1の吐出流を吐出する第1の吐出口と、
前記吸引口と前記第1の吐出口との間に設けられ、第2の吐出流を吐出する第2の吐出口と、
を備え、
前記第1の吐出流は、排気対象空間と外部空間との間の気体の移動を遮断する遮断流を形成し、
前記第2の吐出流は、前記加熱装置の近傍の気体を前記吸引口の方向に誘導する誘導流を形成することを特徴とする排気装置。
【請求項2】
前記第1の吐出流は、斜め下方且つ前記第2の吐出流と干渉しない方向に、前記第1の吐出口から吐出されることを特徴とする請求項1記載の排気装置。
【請求項3】
前記第2の吐出流は、前記加熱装置の上面の近傍まで達することを特徴とする請求項1または2に記載の排気装置。
【請求項4】
前記第2の吐出口は、前記加熱装置よりも水平方向外側に設けられたことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の排気装置。
【請求項5】
前記第1の吐出流は、流量及び流速の少なくともいずれかにおいて、前記第2の吐出流を上回ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の排気装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2009−300026(P2009−300026A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−156258(P2008−156258)
【出願日】平成20年6月16日(2008.6.16)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【出願人】(000237374)富士工業株式会社 (112)
【Fターム(参考)】