排水シート及びその壁面構造
【課題】本発明は十分な排水能力を有し、且つ製造が容易な排水シートを提供すること。
【解決手段】水を誘導し、排水するための導水部10と、該導水部10を壁面に取り付けるための取り付け部20とよりなる排水シートAであって、導水部10は底面板11と該底面板11より起立形成された多数本の導水リブ12とよりなり、前記導水部10及び前記取り付け部20が不透水性の合成樹脂で形成されている排水シートA。そして取り付け部20が底面板11と同一平面上に形成されている排水シートA。
【解決手段】水を誘導し、排水するための導水部10と、該導水部10を壁面に取り付けるための取り付け部20とよりなる排水シートAであって、導水部10は底面板11と該底面板11より起立形成された多数本の導水リブ12とよりなり、前記導水部10及び前記取り付け部20が不透水性の合成樹脂で形成されている排水シートA。そして取り付け部20が底面板11と同一平面上に形成されている排水シートA。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面から湧き出た湧き水を逃がすための排水シート及びその壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事の中には、作業工程に山肌を掘削するという作業が必要となるものがある。
その代表例がトンネルの建設工事である。
ところで、トンネルを建設するために山を掘削すると、掘削して形成された周囲の壁面から湧き水が出てくることがある。
掘削面から湧き出る湧き水は抗内に置かれた資材を濡らしたり、抗内の作業環境を悪化させたりするため、トンネルを作る際には、湧き水対策が非常に重要なものとなる。
現在、湧き水対策として採用されている方法の一つが、排水シートの利用である。
【0003】
排水シートは掘削面に打設された一次覆工コンクリートの上に取り付けられ、取り付けられた導水シートの上からは、防水シートが設置され、二次覆工コンクリートが打設される。
このように、壁面に排水シートが取り付けられることにより、湧き水は排水シートを伝い、壁の足元へと誘導される。
【0004】
現在、排水シートは様々な形状のものが開発されており、例えば特許文献1に示すような、多数の線状体が相互に交差しながら水平方向、並びに厚み方向に不規則に方向を変えて一方から他方に延び、これらの線状体が各々交差点の一部で相互に接着されて形成されたシート状網状体が、接着用薄層シートを介して、不透水性のシートの一方の面の中間部に長さ方向に沿って積層されてなる導水シートがある。
【0005】
また、別の形状の排水シートとして、特許文献2に示すように、帯状に形成されたシート本体の一面側に、通水性を有する弾性部材がシート本体の長手方向に沿って配置固定され、且つシート本体の側端縁に取り付けベルトがシート本体の長手方向に沿って一体に設けられた導水シートも開発されている。
【特許文献1】特開2001−59399号公報
【特許文献2】特開2002−54396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した排水シートの排水能力は必ずしも十分なものであるとは言えず、単位時間当たりの漏水量が排水シートの排水能力を超えることが多発している。
また、上述した排水シートは複数の部材を組み合わせて製造されるため、製造工程が複雑になり製造コストが増加するという問題もある。
【0007】
本発明は以上の課題を解決すべく開発されたものである。すなわち、本発明は十分な排水能力を有し、且つ製造が容易な排水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以上のような課題背景をもとに鋭意研究を重ねた結果、底面板に多数の導水リブを起立形成することで上記の課題を解決できることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち本発明は、(1)、水を誘導し、排水するための導水部と、該導水部を壁面に取り付けるための取り付け部とよりなる排水シートであって、導水部は底面板と該底面板より起立形成された多数本の導水リブとよりなり、前記導水部及び前記取り付け部が不透水性の合成樹脂で形成されている排水シートに存する。
【0010】
また本発明は、(2)、取り付け部が底面板と同一平面上に形成されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0011】
また本発明は、(3)、隣接する導水リブの間に形成される導水路同士が、導水リブに形成された切り欠きによって連通している上記(1)記載の排水シートに存する。
【0012】
また本発明は、(4)、各導水リブに形成された切り欠きが、該導水リブ方向に対して直角方向に一直線に並んでいる上記(3)記載の排水シートに存する。
【0013】
また本発明は、(5)、前記底面板が半透明又は透明な合成樹脂で形成されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0014】
また本発明は、(6)、取り付け部に長手方向に補強用の繊維ベルトを取り付けたものである上記(1)記載の排水シートに存する。
【0015】
また本発明は、(7)、取り付け部の一部が長手方向に肉厚となっている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0016】
また本発明は、(8)、取り付け部の一部に長手方向に繊維糸が挿入されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0017】
また本発明は、(9)、両側に隣接するカーブ状の導水リブによって、断面円弧状の導水路が形成されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0018】
また本発明は、(10)、請求項1〜9のいずれか一項に記載の排水シートの導水リブの先端が、曲面状の壁面に沿って当接するようにして取り付けられている壁面構造に存する。
【0019】
なお、本発明の目的に添ったものであれば上記の発明を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、水を誘導し、排水するための導水部と、該導水部を壁面に取り付けるための取り付け部とよりなる不透水製の排水用合成樹脂シートであって、導水部は底面板と該底面板より起立形成された多数本の導水リブとよりなるものである。
本発明の排水シートは、導水部に流れ込んだ湧き水を、導水リブによって区画された個々の導水路に沿って流す。
その結果、本発明の排水シートに入った湧き水は、導水リブに沿って誘導されるように、真っ直ぐに流れて、水の流れ道が整理され、水同士の衝突が起きない。
その結果、排水能力が大きく高まることとなる。
【0021】
本発明の排水シートは合成樹脂を材料としているので、シート全体を一体に成形することができ、製造工程が簡略化されると共に製造コストも低減する。
【0022】
取り付け部が底面板と同一平面上に形成されていることで、排水シートAを壁面に取り付ける際に、取り付け部が壁面に押し付けられると分力が作用し導水リブ12の先端部が壁面に圧接される。
【0023】
本発明の排水シートが半透明または透明な材質で形成されることで、排水シートの排水状況を容易に視認できる。
【0024】
排水シートの両側の長手方向に補強用の繊維ベルトを取り付けることで、釘Nを打ち込んだ場合、合成樹脂で形成された排水シートAに割れが生じたり、或いは、釘頭が排水シートAを突き抜けてしまったりすることがない。
【0025】
取り付け部の一部に長手方向に繊維糸が挿入されていることで、釘を打ち込んだ場合、繊維が釘頭を受け止めて釘が排水シートAを突き抜けるようなことが防止される。
【0026】
両側に隣接するカーブ状の導水リブによって、断面円弧状の導水路が形成されていることで、施工時に壁面を導水リブ12が弾圧的に押圧するためより壁面と導水リブとの密着性が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔実施の形態〕
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の排水シートを示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の排水シートAは、水を誘導し、排水するための導水部10と、該導水部1の両端に設けられた排水シートAを壁面に取り付けるための二つの取り付け部20とよりなる。
そして、導水部10は底面板11と、底面板11から垂直に起立形成された多数本の導水リブ12とを備える。
【0028】
一対の導水リブ12の間には水が流れる導水路14が形成され、水は導水リブ12によりその長さ方向に導かれ案内される。
導水リブ12の高さ及び導水リブ12同士の間隔は特に限定されるものではなく、実際の作業現場における湧き水の単位時間当たりの湧き出し量、湧き出し箇所の周囲の環境等に応じて必要とするものを適宜選択することが好ましい。
【0029】
例えば、本実施形態の排水シートAの場合、導水リブ12の高さは5〜15mm、導水リブ12同士の間隔は5〜20mmが採用される。
なお、排水シートAの排水能力を上げる場合には、底面板11と導水リブ12とに撥水処理加工を施すことが好ましい。
【0030】
排水シートAは合成樹脂で形成されているため、押出し成形等による一体製造が可能であり、簡単に且つ大量に製造される。
また、製造された排水シートAは、合成樹脂特有の屈曲性を有し且つ導水リブ12を備えたことによりいわゆる腰があるので、施工対象となる壁面の形状(例えば、トンネル壁面の曲率面形状)に沿って容易に取り付けられる。
すなわち排水シートAの一方の端部を把持すると他方の端部が下がって全体が適度なアーチ状となる。
【0031】
また、排水シートAは不透水性の合成樹脂で形成されているため、湧き水は排水シートAを通して作業現場へ染み出さず、湧き水が作業現場の環境に悪影響を与えることがない。
【0032】
底面板11や導水リブを12を形成する材質には、半透明または透明な合成樹脂を用いることが特に好ましい。
少なくとも底面板11を半透明または透明な材質で形成することで、導水部10を流れる湧き水の排水状況を視認できるようになり、施工時或いは施工後における排水シートAの管理が簡便になる。
また、排水シートAが遊離石灰の析出が発生し易い施工場所に取り付けられた場合には、導水部10の目詰まりを一見して確認できるので、能率的な保守作業やメンテナンスが可能になる。
以上の観点から、導水部10及び取り付け部20を形成する材料として好適な材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン等である。
【0033】
図2は、本実施形態の排水シートの断面図である。
図2に示すように、取り付け部20は板状の部材で、導水部10の左右両側に設けられている。
取り付け部20と底面板11とは一体になっており、さらに、取り付け部20は底面板11から外方に延長するように形成されている。
そして、取り付け部20は底面板11と同一平面上に形成される。
【0034】
取り付け部20がこのような形状に形成されていると、排水シートAを壁面に取り付ける際に(施工は、導水リブ12側を壁面に対向させて取り付ける)、取り付け部20が壁面に押し付けられると、分力が作用し導水リブ12の先端部を壁面に効率良く圧接できるため、極めて的確に取り付けることができる。
【0035】
さらに、底面板11と取り付け部20とが一体に形成されることで、両者が非常に強固に結合して、破損等がし難くなる。
【0036】
ところで、排水シートAが取り付けられた壁面から湧き出る湧き水は両側に隣接する導水リブ12によって区画される導水路14に流れ込み、該導水リブ12を伝って下方に排水される。
すなわち排水シートに入った水は、導水リブに誘導されるように、個々の導水路に沿って真っ直ぐに流れるため、水の流れ道が整理され、水流同士の衝突が起きない。
その結果、水の排水能力が大きく高まることとなる。
【0037】
因みに、前述した従来例の湧水処理シートや導水シートにおいては、ループ状にしたモノフィラメントの弾性部材やシート状網体を別体で組み込んでいるので、水流同士の衝突が起き、方向性のある流線が得られず流路抵抗も大きいため排水能力が悪い。
【0038】
一方、本発明では排水シートAの排水能力を分散させるため、導水リブ12に切り欠き13を形成して、隣接する導水路14同士を連通させることが好ましい。
図3は、切り欠きが形成された導水路に多量の水が流れ込んだ際の状態を模式的に示す説明図である。
図中、矢印は湧き水が流れや分岐した流れを表わす。
【0039】
図3に示すように、導水路14aに導水路14aが有する排水能力以上の流量で湧き水が流れ込むと〔(A)参照〕、流れ込んだ湧き水の一部は切り欠き13を通過して導水路14aに隣接する導水路14bに流れ込んで分散される〔(B)参照〕。
この場合も、全体的には方向性のある流線が確保される。
【0040】
このように、一部の導水路に湧き水が過度に流れ込んだ場合、湧き水の排水を、複数本の導水路で分担して行うことで、排水に寄与しない導水路の本数を減らし、効率の良い排水が可能となる。
【0041】
また、本発明の排水シートAは、長手方向に巻回して保管し或いは運搬するが、このような切り欠き13があることで巻回がし易くなる。
なお、形成される切り欠き13の数、及び切り欠き13が形成される位置等は特に限定されるものではない。
【0042】
例えば、図4に示すように、切り欠き13を各導水リブ方向に対して直角方向に一直線に並ぶように形成する場合には、切り欠き13を介して過度の量の湧き水が各導水路14に一挙に広く分散することができる。
【0043】
また、一直線に並ぶ切り欠き13は、押し出し成形で製造する場合、押し出された後、加熱直線刃で切り込み加工すれば簡単に付与することができる。
【0044】
次に図5は、本実施形態の排水シートの取り付け施工例を概略的に示す説明図である。
図5に示すように、本実施形態の排水シートAは、導水リブ12が曲面状の壁面(例えばトンネルの掘削面に吹き付けられたコンクリート面)の内周に沿うように取り付けられる。
そして、その上に覆工コンクリートが打たれる。
排水シートAがこのようにアーチ状の壁面に沿って取り付けられることにより、湧き水が矢印の方向に誘導され、トンネル壁の根元方向に流し落とされる。
【0045】
図6は、図5における概略断面を示す図であり、図6(A)はX−X断面を示すものである。
この施工例の場合においては、トンネルの吹き付けコンクリート面K1の上に本発明の排水シートAが取り付けられ、該排水シートAの上に覆工コンクリートK2が打たれた構造となっている。
なお排水シートAは、固着具である打ち込みピン等を使って固定される。
図6(B)は、図6(A)の排水シートの上に更に防水シートA1を備えた施工例を示す。
すなわち、トンネルの吹き付けコンクリート面K1の上に排水シートAが取り付けられ、更にこの上に、防水シートA1が取り付けられ、該防水シートA1の上に覆工コンクリートK2が打たれた構造となっている。
排水シートAは、個々の導水リブ12の先端が曲面状の壁面に均等に当接するため施工後に導水路が潰れて狭くなるようなことがない。
【0046】
また、排水シートAが取り付け覆工された後、その取り付けられた排水シートAの上に更に覆工された多段式排水構造とすることも可能である。
なお、排水シートAが取り付けられた後の覆工面における覆工の方法は、特に限定されるものではなく、壁面の状態等を考慮して、状況に最も適した覆工を行うこととなる。
【0047】
上記のような壁面構造を例えばトンネルの掘削面に形成することで、掘削面から湧き出る湧き水を効率的に排出することができる。
また、掘削面から土粒子の流出が起こる可能性が懸念される場合は、不織布等の通水性を有するフィルター材料を掘削面に配置してから、排水シートAを取り付ける。
このことにより、土粒子が導水部10へ落下し、目詰まりを引き起こす可能性を極力排除することができる。
ところで排水シートAは、合成樹脂で押出し成形された長尺のものであることから、図7に示すように、巻回状態で運搬が可能であり、また保管も容易である。
特に、導水リブに切り欠きがあることで、より容易に巻回することが可能である
【0048】
〔第2の実施の形態〕
排水シートAは、壁面に取り付ける場合に、釘N等の固定具を打ち込んで取り付ける。
しかし、釘Nを打ち込むことで、合成樹脂で形成された排水シートAに割れが生じたり、或いは、釘頭が排水シートAを突き抜けてしまったりする可能性がある。
図8は、このような現象が生じないように、排水シートAの取り付け部20に補強用の繊維ベルトFを取り付けたものである。
この場合、繊維ベルトFは導水リブ12が形成された面とは反対側に取り付けることが好ましい。
この取り付けは、例えば、接着が好ましいが、繊維ベルトFの材質によっては溶着も可能である。
また繊維ベルトFの取り付け領域は、排水シートAの両側の長手方向に一定の幅とすることが好ましい。
なお、繊維ベルトFの形態としては、織地や編地が採用されるが、これらは織地目や編地目を有しており、釘を打ち込んだ場合、それらの目が締まることにより釘がより強く固定される利点がある。
【0049】
〔第3の実施の形態〕
図9は、排水シートAの取り付け部20の一部を肉厚にしたものである。肉厚にすることで、強度が高まる。この場合、排水シートAは、押し出し成形により製造できるので、取り付け部20の一部を肉厚にすることが容易に可能である。
この場合、導水リブ12が形成された面側に肉厚とすると、排水シートAを壁面に取り付けた場合、この取り付け部20の領域に広い面積の導水路が形成されることとなる。
【0050】
〔第4の実施の形態〕
図10は、排水シートAの取り付け部20に補強用の繊維F1を複数本埋め込んだ状態にしたもので、この部分の強度が大きく増加する。
上述したように、釘を打ち込んだ場合、繊維F1が釘頭を受け止めて釘が排水シートAを突き抜けるようなことが防止される。
埋め込む繊維としては、マルチフィラメント繊維或いはモノフィラメント繊維が採用される。
強度の観点から、天然繊維より合成繊維が有用である。
本発明の排水シートAは、押し出し成形で長手方向に連続的に押し出して成形されるので、このような繊維を連続的に埋め込んでいくことは容易に行える。
【0051】
〔第5の実施の形態〕
この実施の形態は、両側に隣接する導水リブ12によって第1の実施の形態とは異なる断面形状の導水路14が形成されていることである。
図11は、導水リブ12により断面円弧状の導水路が形成された排水シートAを示し、図12はその断面を示す。
第1の実施の形態では導水部10は、両側に隣接する導水リブ12によって、断面コ字状の導水路14が形成されているが、ここでの実施の形態は、両側に隣接するカーブ状の導水リブ12によって、断面円弧状の導水路14が形成されている。
この排水シートを使用すると、施工時に壁面を導水リブ12が弾圧的に押圧するため、より壁面と導水リブ12との密着性が良くなる。
【0052】
〔第6の実施の形態〕
この実施の形態は上述した実施の形態の導水リブ12の高さが均一なのに対して、高さが異なっていることである。
図13は、導水リブの高さが不揃いな排水シートAを示し、図14はその断面を示す。
この場合、導水リブ12は1つおきに高さが等しくている。
高い導水リブ12Aの間に挟まれた低い導水リブ12Bが導水路を開放するため、水路幅が広くなる。
なお、低い導水リブ12Bでも水の案内機能は十分に達成可能である。
以上述べた、排水シートは、巻回された状態から引き出し、現場の状況に応じて横方向に一定の長さに切断して使用される。
そのため、その切断の目印として一定間隔で色線を形成する。
【0053】
〔第7の実施の形態〕
図15の排水シートAは、第1の実施の形態における排水シートAの幅方向にラインマークを付与した例を示す。
この場合、幅方向に互いに平行な一対のラインマークL(L1、L2)が、長手方向に一定間隔で形成されている〔図15(A)参照〕。
このラインマークLを目印として、間を切断すると〔図15(B)参照〕、切り離された排水シートAの端部には、必ずラインマークL(L1、L2)が残る。
そのため、そのラインマークL(L1、L2)の敷設長さを確認することができる。
因みに、ラインマークが一対でないと切断した一方の端部に残るだけである。
【0054】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく種々の変形例が可能である。
例えば、取り付け部20が、底板面11から延長しているのではなく、導水リブ12の先端から外方へ延長することも可能である。
【0055】
図16は、その導水リブ12の先端から外方へ延長している取り付け部20を有する排水シートAを示し、図17は、図16の排水シートAの断面図である。
取り付け部20は、導水リブ12の先端の位置と面一となっている(すなわち導水リブ12の高さと一致している)。
各排水シートの取り付け部20を重ね合わせては排水シートAを連結していく場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本実施形態の排水シートを示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態の排水シートの断面図である。
【図3】図3は、切り欠きが形成された導水路に多量の水が流れ込んだ際の状態を模式的に示す説明図であり、(A)は湧き水が流れ込んだ状態、(B)は流れ込んだ湧き水が分散されていく状態を示す図である。
【図4】図4は、導水路に流れ込んだ湧き水が分散されていく状態を模式的に示す別の説明図である。
【図5】図5は、本実施形態の排水シートの取り付け施工例を概略的に示す説明図である。
【図6】図6は、図5における概略断面図であり、(A)はX−X断面図、(B)は別の施工例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態の排水シートが巻回された状態を示す説明図である。
【図8】図8は、本発明の排水シートの別の実施形態を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(取り付け部の一部を肉厚にしたもの)を示す説明図である。
【図10】図10は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(補強用の繊維を複数本埋め込んだもの)を示す説明図である。
【図11】図11は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(導水リブにより断面円弧状の導水路が形成されたもの)を示す斜視図である。
【図12】図12は、図11の排水シートの断面図である。
【図13】図13は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(導水リブの高さが異なるもの)を示す斜視図である。
【図14】図14は、図13の排水シートの断面図である。
【図15】図15は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(ラインマークを付与したもの)を示す図である。
【図16】図16は、本発明の排水シートの変形例を示す斜視図である。
【図17】図17は、図16の排水シートの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10・・・導水部
11・・・底面板
12・・・導水リブ
12A・・・高い導水リブ
12B・・・低い導水リブ
13・・・切り欠き
14・・・導水路
14a・・・導水路
14b・・・導水路
20・・・取り付け部
A・・・排水シート
A1・・・防水シート
F・・・繊維ベルト
K1・・・コンクリート面
K2・・・覆工コンクリート
L(L1、L2)・・・ラインマーク
N・・・釘
【技術分野】
【0001】
本発明は、壁面から湧き出た湧き水を逃がすための排水シート及びその壁面構造に関する。
【背景技術】
【0002】
土木工事の中には、作業工程に山肌を掘削するという作業が必要となるものがある。
その代表例がトンネルの建設工事である。
ところで、トンネルを建設するために山を掘削すると、掘削して形成された周囲の壁面から湧き水が出てくることがある。
掘削面から湧き出る湧き水は抗内に置かれた資材を濡らしたり、抗内の作業環境を悪化させたりするため、トンネルを作る際には、湧き水対策が非常に重要なものとなる。
現在、湧き水対策として採用されている方法の一つが、排水シートの利用である。
【0003】
排水シートは掘削面に打設された一次覆工コンクリートの上に取り付けられ、取り付けられた導水シートの上からは、防水シートが設置され、二次覆工コンクリートが打設される。
このように、壁面に排水シートが取り付けられることにより、湧き水は排水シートを伝い、壁の足元へと誘導される。
【0004】
現在、排水シートは様々な形状のものが開発されており、例えば特許文献1に示すような、多数の線状体が相互に交差しながら水平方向、並びに厚み方向に不規則に方向を変えて一方から他方に延び、これらの線状体が各々交差点の一部で相互に接着されて形成されたシート状網状体が、接着用薄層シートを介して、不透水性のシートの一方の面の中間部に長さ方向に沿って積層されてなる導水シートがある。
【0005】
また、別の形状の排水シートとして、特許文献2に示すように、帯状に形成されたシート本体の一面側に、通水性を有する弾性部材がシート本体の長手方向に沿って配置固定され、且つシート本体の側端縁に取り付けベルトがシート本体の長手方向に沿って一体に設けられた導水シートも開発されている。
【特許文献1】特開2001−59399号公報
【特許文献2】特開2002−54396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述した排水シートの排水能力は必ずしも十分なものであるとは言えず、単位時間当たりの漏水量が排水シートの排水能力を超えることが多発している。
また、上述した排水シートは複数の部材を組み合わせて製造されるため、製造工程が複雑になり製造コストが増加するという問題もある。
【0007】
本発明は以上の課題を解決すべく開発されたものである。すなわち、本発明は十分な排水能力を有し、且つ製造が容易な排水シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、以上のような課題背景をもとに鋭意研究を重ねた結果、底面板に多数の導水リブを起立形成することで上記の課題を解決できることを見出し、その知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0009】
すなわち本発明は、(1)、水を誘導し、排水するための導水部と、該導水部を壁面に取り付けるための取り付け部とよりなる排水シートであって、導水部は底面板と該底面板より起立形成された多数本の導水リブとよりなり、前記導水部及び前記取り付け部が不透水性の合成樹脂で形成されている排水シートに存する。
【0010】
また本発明は、(2)、取り付け部が底面板と同一平面上に形成されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0011】
また本発明は、(3)、隣接する導水リブの間に形成される導水路同士が、導水リブに形成された切り欠きによって連通している上記(1)記載の排水シートに存する。
【0012】
また本発明は、(4)、各導水リブに形成された切り欠きが、該導水リブ方向に対して直角方向に一直線に並んでいる上記(3)記載の排水シートに存する。
【0013】
また本発明は、(5)、前記底面板が半透明又は透明な合成樹脂で形成されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0014】
また本発明は、(6)、取り付け部に長手方向に補強用の繊維ベルトを取り付けたものである上記(1)記載の排水シートに存する。
【0015】
また本発明は、(7)、取り付け部の一部が長手方向に肉厚となっている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0016】
また本発明は、(8)、取り付け部の一部に長手方向に繊維糸が挿入されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0017】
また本発明は、(9)、両側に隣接するカーブ状の導水リブによって、断面円弧状の導水路が形成されている上記(1)記載の排水シートに存する。
【0018】
また本発明は、(10)、請求項1〜9のいずれか一項に記載の排水シートの導水リブの先端が、曲面状の壁面に沿って当接するようにして取り付けられている壁面構造に存する。
【0019】
なお、本発明の目的に添ったものであれば上記の発明を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、水を誘導し、排水するための導水部と、該導水部を壁面に取り付けるための取り付け部とよりなる不透水製の排水用合成樹脂シートであって、導水部は底面板と該底面板より起立形成された多数本の導水リブとよりなるものである。
本発明の排水シートは、導水部に流れ込んだ湧き水を、導水リブによって区画された個々の導水路に沿って流す。
その結果、本発明の排水シートに入った湧き水は、導水リブに沿って誘導されるように、真っ直ぐに流れて、水の流れ道が整理され、水同士の衝突が起きない。
その結果、排水能力が大きく高まることとなる。
【0021】
本発明の排水シートは合成樹脂を材料としているので、シート全体を一体に成形することができ、製造工程が簡略化されると共に製造コストも低減する。
【0022】
取り付け部が底面板と同一平面上に形成されていることで、排水シートAを壁面に取り付ける際に、取り付け部が壁面に押し付けられると分力が作用し導水リブ12の先端部が壁面に圧接される。
【0023】
本発明の排水シートが半透明または透明な材質で形成されることで、排水シートの排水状況を容易に視認できる。
【0024】
排水シートの両側の長手方向に補強用の繊維ベルトを取り付けることで、釘Nを打ち込んだ場合、合成樹脂で形成された排水シートAに割れが生じたり、或いは、釘頭が排水シートAを突き抜けてしまったりすることがない。
【0025】
取り付け部の一部に長手方向に繊維糸が挿入されていることで、釘を打ち込んだ場合、繊維が釘頭を受け止めて釘が排水シートAを突き抜けるようなことが防止される。
【0026】
両側に隣接するカーブ状の導水リブによって、断面円弧状の導水路が形成されていることで、施工時に壁面を導水リブ12が弾圧的に押圧するためより壁面と導水リブとの密着性が良くなる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
〔実施の形態〕
本発明の一実施形態を、図面を用いて説明する。
図1は、本実施形態の排水シートを示す斜視図である。
図1に示すように、本実施形態の排水シートAは、水を誘導し、排水するための導水部10と、該導水部1の両端に設けられた排水シートAを壁面に取り付けるための二つの取り付け部20とよりなる。
そして、導水部10は底面板11と、底面板11から垂直に起立形成された多数本の導水リブ12とを備える。
【0028】
一対の導水リブ12の間には水が流れる導水路14が形成され、水は導水リブ12によりその長さ方向に導かれ案内される。
導水リブ12の高さ及び導水リブ12同士の間隔は特に限定されるものではなく、実際の作業現場における湧き水の単位時間当たりの湧き出し量、湧き出し箇所の周囲の環境等に応じて必要とするものを適宜選択することが好ましい。
【0029】
例えば、本実施形態の排水シートAの場合、導水リブ12の高さは5〜15mm、導水リブ12同士の間隔は5〜20mmが採用される。
なお、排水シートAの排水能力を上げる場合には、底面板11と導水リブ12とに撥水処理加工を施すことが好ましい。
【0030】
排水シートAは合成樹脂で形成されているため、押出し成形等による一体製造が可能であり、簡単に且つ大量に製造される。
また、製造された排水シートAは、合成樹脂特有の屈曲性を有し且つ導水リブ12を備えたことによりいわゆる腰があるので、施工対象となる壁面の形状(例えば、トンネル壁面の曲率面形状)に沿って容易に取り付けられる。
すなわち排水シートAの一方の端部を把持すると他方の端部が下がって全体が適度なアーチ状となる。
【0031】
また、排水シートAは不透水性の合成樹脂で形成されているため、湧き水は排水シートAを通して作業現場へ染み出さず、湧き水が作業現場の環境に悪影響を与えることがない。
【0032】
底面板11や導水リブを12を形成する材質には、半透明または透明な合成樹脂を用いることが特に好ましい。
少なくとも底面板11を半透明または透明な材質で形成することで、導水部10を流れる湧き水の排水状況を視認できるようになり、施工時或いは施工後における排水シートAの管理が簡便になる。
また、排水シートAが遊離石灰の析出が発生し易い施工場所に取り付けられた場合には、導水部10の目詰まりを一見して確認できるので、能率的な保守作業やメンテナンスが可能になる。
以上の観点から、導水部10及び取り付け部20を形成する材料として好適な材質は、ポリプロピレン、ポリエチレン等である。
【0033】
図2は、本実施形態の排水シートの断面図である。
図2に示すように、取り付け部20は板状の部材で、導水部10の左右両側に設けられている。
取り付け部20と底面板11とは一体になっており、さらに、取り付け部20は底面板11から外方に延長するように形成されている。
そして、取り付け部20は底面板11と同一平面上に形成される。
【0034】
取り付け部20がこのような形状に形成されていると、排水シートAを壁面に取り付ける際に(施工は、導水リブ12側を壁面に対向させて取り付ける)、取り付け部20が壁面に押し付けられると、分力が作用し導水リブ12の先端部を壁面に効率良く圧接できるため、極めて的確に取り付けることができる。
【0035】
さらに、底面板11と取り付け部20とが一体に形成されることで、両者が非常に強固に結合して、破損等がし難くなる。
【0036】
ところで、排水シートAが取り付けられた壁面から湧き出る湧き水は両側に隣接する導水リブ12によって区画される導水路14に流れ込み、該導水リブ12を伝って下方に排水される。
すなわち排水シートに入った水は、導水リブに誘導されるように、個々の導水路に沿って真っ直ぐに流れるため、水の流れ道が整理され、水流同士の衝突が起きない。
その結果、水の排水能力が大きく高まることとなる。
【0037】
因みに、前述した従来例の湧水処理シートや導水シートにおいては、ループ状にしたモノフィラメントの弾性部材やシート状網体を別体で組み込んでいるので、水流同士の衝突が起き、方向性のある流線が得られず流路抵抗も大きいため排水能力が悪い。
【0038】
一方、本発明では排水シートAの排水能力を分散させるため、導水リブ12に切り欠き13を形成して、隣接する導水路14同士を連通させることが好ましい。
図3は、切り欠きが形成された導水路に多量の水が流れ込んだ際の状態を模式的に示す説明図である。
図中、矢印は湧き水が流れや分岐した流れを表わす。
【0039】
図3に示すように、導水路14aに導水路14aが有する排水能力以上の流量で湧き水が流れ込むと〔(A)参照〕、流れ込んだ湧き水の一部は切り欠き13を通過して導水路14aに隣接する導水路14bに流れ込んで分散される〔(B)参照〕。
この場合も、全体的には方向性のある流線が確保される。
【0040】
このように、一部の導水路に湧き水が過度に流れ込んだ場合、湧き水の排水を、複数本の導水路で分担して行うことで、排水に寄与しない導水路の本数を減らし、効率の良い排水が可能となる。
【0041】
また、本発明の排水シートAは、長手方向に巻回して保管し或いは運搬するが、このような切り欠き13があることで巻回がし易くなる。
なお、形成される切り欠き13の数、及び切り欠き13が形成される位置等は特に限定されるものではない。
【0042】
例えば、図4に示すように、切り欠き13を各導水リブ方向に対して直角方向に一直線に並ぶように形成する場合には、切り欠き13を介して過度の量の湧き水が各導水路14に一挙に広く分散することができる。
【0043】
また、一直線に並ぶ切り欠き13は、押し出し成形で製造する場合、押し出された後、加熱直線刃で切り込み加工すれば簡単に付与することができる。
【0044】
次に図5は、本実施形態の排水シートの取り付け施工例を概略的に示す説明図である。
図5に示すように、本実施形態の排水シートAは、導水リブ12が曲面状の壁面(例えばトンネルの掘削面に吹き付けられたコンクリート面)の内周に沿うように取り付けられる。
そして、その上に覆工コンクリートが打たれる。
排水シートAがこのようにアーチ状の壁面に沿って取り付けられることにより、湧き水が矢印の方向に誘導され、トンネル壁の根元方向に流し落とされる。
【0045】
図6は、図5における概略断面を示す図であり、図6(A)はX−X断面を示すものである。
この施工例の場合においては、トンネルの吹き付けコンクリート面K1の上に本発明の排水シートAが取り付けられ、該排水シートAの上に覆工コンクリートK2が打たれた構造となっている。
なお排水シートAは、固着具である打ち込みピン等を使って固定される。
図6(B)は、図6(A)の排水シートの上に更に防水シートA1を備えた施工例を示す。
すなわち、トンネルの吹き付けコンクリート面K1の上に排水シートAが取り付けられ、更にこの上に、防水シートA1が取り付けられ、該防水シートA1の上に覆工コンクリートK2が打たれた構造となっている。
排水シートAは、個々の導水リブ12の先端が曲面状の壁面に均等に当接するため施工後に導水路が潰れて狭くなるようなことがない。
【0046】
また、排水シートAが取り付け覆工された後、その取り付けられた排水シートAの上に更に覆工された多段式排水構造とすることも可能である。
なお、排水シートAが取り付けられた後の覆工面における覆工の方法は、特に限定されるものではなく、壁面の状態等を考慮して、状況に最も適した覆工を行うこととなる。
【0047】
上記のような壁面構造を例えばトンネルの掘削面に形成することで、掘削面から湧き出る湧き水を効率的に排出することができる。
また、掘削面から土粒子の流出が起こる可能性が懸念される場合は、不織布等の通水性を有するフィルター材料を掘削面に配置してから、排水シートAを取り付ける。
このことにより、土粒子が導水部10へ落下し、目詰まりを引き起こす可能性を極力排除することができる。
ところで排水シートAは、合成樹脂で押出し成形された長尺のものであることから、図7に示すように、巻回状態で運搬が可能であり、また保管も容易である。
特に、導水リブに切り欠きがあることで、より容易に巻回することが可能である
【0048】
〔第2の実施の形態〕
排水シートAは、壁面に取り付ける場合に、釘N等の固定具を打ち込んで取り付ける。
しかし、釘Nを打ち込むことで、合成樹脂で形成された排水シートAに割れが生じたり、或いは、釘頭が排水シートAを突き抜けてしまったりする可能性がある。
図8は、このような現象が生じないように、排水シートAの取り付け部20に補強用の繊維ベルトFを取り付けたものである。
この場合、繊維ベルトFは導水リブ12が形成された面とは反対側に取り付けることが好ましい。
この取り付けは、例えば、接着が好ましいが、繊維ベルトFの材質によっては溶着も可能である。
また繊維ベルトFの取り付け領域は、排水シートAの両側の長手方向に一定の幅とすることが好ましい。
なお、繊維ベルトFの形態としては、織地や編地が採用されるが、これらは織地目や編地目を有しており、釘を打ち込んだ場合、それらの目が締まることにより釘がより強く固定される利点がある。
【0049】
〔第3の実施の形態〕
図9は、排水シートAの取り付け部20の一部を肉厚にしたものである。肉厚にすることで、強度が高まる。この場合、排水シートAは、押し出し成形により製造できるので、取り付け部20の一部を肉厚にすることが容易に可能である。
この場合、導水リブ12が形成された面側に肉厚とすると、排水シートAを壁面に取り付けた場合、この取り付け部20の領域に広い面積の導水路が形成されることとなる。
【0050】
〔第4の実施の形態〕
図10は、排水シートAの取り付け部20に補強用の繊維F1を複数本埋め込んだ状態にしたもので、この部分の強度が大きく増加する。
上述したように、釘を打ち込んだ場合、繊維F1が釘頭を受け止めて釘が排水シートAを突き抜けるようなことが防止される。
埋め込む繊維としては、マルチフィラメント繊維或いはモノフィラメント繊維が採用される。
強度の観点から、天然繊維より合成繊維が有用である。
本発明の排水シートAは、押し出し成形で長手方向に連続的に押し出して成形されるので、このような繊維を連続的に埋め込んでいくことは容易に行える。
【0051】
〔第5の実施の形態〕
この実施の形態は、両側に隣接する導水リブ12によって第1の実施の形態とは異なる断面形状の導水路14が形成されていることである。
図11は、導水リブ12により断面円弧状の導水路が形成された排水シートAを示し、図12はその断面を示す。
第1の実施の形態では導水部10は、両側に隣接する導水リブ12によって、断面コ字状の導水路14が形成されているが、ここでの実施の形態は、両側に隣接するカーブ状の導水リブ12によって、断面円弧状の導水路14が形成されている。
この排水シートを使用すると、施工時に壁面を導水リブ12が弾圧的に押圧するため、より壁面と導水リブ12との密着性が良くなる。
【0052】
〔第6の実施の形態〕
この実施の形態は上述した実施の形態の導水リブ12の高さが均一なのに対して、高さが異なっていることである。
図13は、導水リブの高さが不揃いな排水シートAを示し、図14はその断面を示す。
この場合、導水リブ12は1つおきに高さが等しくている。
高い導水リブ12Aの間に挟まれた低い導水リブ12Bが導水路を開放するため、水路幅が広くなる。
なお、低い導水リブ12Bでも水の案内機能は十分に達成可能である。
以上述べた、排水シートは、巻回された状態から引き出し、現場の状況に応じて横方向に一定の長さに切断して使用される。
そのため、その切断の目印として一定間隔で色線を形成する。
【0053】
〔第7の実施の形態〕
図15の排水シートAは、第1の実施の形態における排水シートAの幅方向にラインマークを付与した例を示す。
この場合、幅方向に互いに平行な一対のラインマークL(L1、L2)が、長手方向に一定間隔で形成されている〔図15(A)参照〕。
このラインマークLを目印として、間を切断すると〔図15(B)参照〕、切り離された排水シートAの端部には、必ずラインマークL(L1、L2)が残る。
そのため、そのラインマークL(L1、L2)の敷設長さを確認することができる。
因みに、ラインマークが一対でないと切断した一方の端部に残るだけである。
【0054】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施の形態に限定されることなく種々の変形例が可能である。
例えば、取り付け部20が、底板面11から延長しているのではなく、導水リブ12の先端から外方へ延長することも可能である。
【0055】
図16は、その導水リブ12の先端から外方へ延長している取り付け部20を有する排水シートAを示し、図17は、図16の排水シートAの断面図である。
取り付け部20は、導水リブ12の先端の位置と面一となっている(すなわち導水リブ12の高さと一致している)。
各排水シートの取り付け部20を重ね合わせては排水シートAを連結していく場合に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、本実施形態の排水シートを示す斜視図である。
【図2】図2は、本実施形態の排水シートの断面図である。
【図3】図3は、切り欠きが形成された導水路に多量の水が流れ込んだ際の状態を模式的に示す説明図であり、(A)は湧き水が流れ込んだ状態、(B)は流れ込んだ湧き水が分散されていく状態を示す図である。
【図4】図4は、導水路に流れ込んだ湧き水が分散されていく状態を模式的に示す別の説明図である。
【図5】図5は、本実施形態の排水シートの取り付け施工例を概略的に示す説明図である。
【図6】図6は、図5における概略断面図であり、(A)はX−X断面図、(B)は別の施工例を示す図である。
【図7】図7は、本実施形態の排水シートが巻回された状態を示す説明図である。
【図8】図8は、本発明の排水シートの別の実施形態を示す説明図である。
【図9】図9は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(取り付け部の一部を肉厚にしたもの)を示す説明図である。
【図10】図10は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(補強用の繊維を複数本埋め込んだもの)を示す説明図である。
【図11】図11は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(導水リブにより断面円弧状の導水路が形成されたもの)を示す斜視図である。
【図12】図12は、図11の排水シートの断面図である。
【図13】図13は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(導水リブの高さが異なるもの)を示す斜視図である。
【図14】図14は、図13の排水シートの断面図である。
【図15】図15は、本発明の排水シートの更に別の実施形態(ラインマークを付与したもの)を示す図である。
【図16】図16は、本発明の排水シートの変形例を示す斜視図である。
【図17】図17は、図16の排水シートの断面図である。
【符号の説明】
【0057】
10・・・導水部
11・・・底面板
12・・・導水リブ
12A・・・高い導水リブ
12B・・・低い導水リブ
13・・・切り欠き
14・・・導水路
14a・・・導水路
14b・・・導水路
20・・・取り付け部
A・・・排水シート
A1・・・防水シート
F・・・繊維ベルト
K1・・・コンクリート面
K2・・・覆工コンクリート
L(L1、L2)・・・ラインマーク
N・・・釘
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を誘導し、排水するための導水部と、該導水部を壁面に取り付けるための取り付け部とよりなる排水シートであって、導水部は底面板と該底面板より起立形成された多数本の導水リブとよりなり、前記導水部及び前記取り付け部が不透水性の合成樹脂で形成されていることを特徴とする排水シート。
【請求項2】
取り付け部が底面板と同一平面上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項3】
隣接する導水リブの間に形成される導水路同士が、導水リブに形成された切り欠きによって連通していることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項4】
各導水リブに形成された切り欠きが、該導水リブ方向に対して直角方向に一直線に並んでいることを特徴とする請求項3記載の排水シート。
【請求項5】
前記底面板が半透明又は透明な合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項6】
取り付け部に長手方向に補強用の繊維ベルトを取り付けたものであることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項7】
取り付け部の一部が長手方向に肉厚となっていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項8】
取り付け部の一部に長手方向に繊維糸が挿入されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項9】
両側に隣接するカーブ状の導水リブによって、断面円弧状の導水路が形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の排水シートの導水リブの先端が、曲面状の壁面に沿って当接するようにして取り付けられていることを特徴とする壁面構造。
【請求項1】
水を誘導し、排水するための導水部と、該導水部を壁面に取り付けるための取り付け部とよりなる排水シートであって、導水部は底面板と該底面板より起立形成された多数本の導水リブとよりなり、前記導水部及び前記取り付け部が不透水性の合成樹脂で形成されていることを特徴とする排水シート。
【請求項2】
取り付け部が底面板と同一平面上に形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項3】
隣接する導水リブの間に形成される導水路同士が、導水リブに形成された切り欠きによって連通していることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項4】
各導水リブに形成された切り欠きが、該導水リブ方向に対して直角方向に一直線に並んでいることを特徴とする請求項3記載の排水シート。
【請求項5】
前記底面板が半透明又は透明な合成樹脂で形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項6】
取り付け部に長手方向に補強用の繊維ベルトを取り付けたものであることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項7】
取り付け部の一部が長手方向に肉厚となっていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項8】
取り付け部の一部に長手方向に繊維糸が挿入されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項9】
両側に隣接するカーブ状の導水リブによって、断面円弧状の導水路が形成されていることを特徴とする請求項1記載の排水シート。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか一項に記載の排水シートの導水リブの先端が、曲面状の壁面に沿って当接するようにして取り付けられていることを特徴とする壁面構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2009−52390(P2009−52390A)
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−130081(P2008−130081)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】
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