説明

排水ソケット

【課題】既存の住宅側排水管の配設位置を変えずにリフォームモデルの洋式便器に簡単に付け替え可能で他の機器の排水管に関して好ましくない自己サイフォン作用を生じさせない排水ソケットを提供する。
【解決手段】水洗大便器の排水路に接続されるソケット流入口をその上端に備え下方に延びる環状管路10と、環状管路の少なくとも排水側の一部を全周に亘って所定間隔隔てて囲む外周部20と、環状管路の下流側に配設された横管路40とを備え、環状管路と外周部との間に緩衝室30が形成されると共に、他の機器の排水路に接続される緩衝室入口31が外周部の一部に形成され、水洗大便器の排水管からの排水に他の機器の排水路からの緩衝室内への排水を合流させて横管路に導く緩衝室の合流出口32が、外周部よりも内側か又は横管路上方に形成され、緩衝室の底面は合流出口に向かって広くなっている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、洋式便器の改修工事の際に用いる排水ソケットに関する。
【背景技術】
【0002】
現在、洋式便器は日本国内で広く普及している。この洋式便器の普及により利用者は腰かけて用便することが一般的となり、特に高齢者にとって体に負担をあまりかけずに洋式便器を利用できるようになっている。しかし、これら洋式便器は排水の際に多くの水量が必要であったり、用便の際に溜水の水量が不足したりして清掃性が悪いなどの問題があった。しかしながら、近年の技術水準の進歩により現在ではこれらの問題を解決し、排水量が少なく清掃性に優れた洋式便器が入手可能となっている。
【0003】
そのため、このような優れた性能を有する洋式便器をリフォームモデルとして既存の洋式便器と取り替える改修工事が広く行われるようになっている。
【0004】
一方、建築物の住宅側排水管の立ち上げ位置等は、基本的に改修工事前に取付けられていた洋式便器の形態に合わせて決められている。そのため、上述した改修工事において洋式便器をリフォームモデルの洋式便器に取り換える際には、住宅側排水管の配設位置を変更するような面倒な工事を避けるべく住宅側排水管自体はそのままとし、この住宅側排水管の立ち上げ位置と新たに設置する様式便器の排水部との位置ずれを解消する方策がとられている。そして、この位置ずれを解消する方策の一例として、長さの調整可能な横引接続管を使用することが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開2005−48402号公報(3頁、図2)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述のように、リフォームモデルの洋式便器に付け替える際、住宅側排水管をそのまま使用するために、便器は広範囲に配設された住宅側排水管の位置に対応することが求められる。また、便器排水管を利用して手洗い等の排水を行う際には、トイレ内の見栄えを向上させる意匠上の観点から、他の排水管と便器排水管の接続を便器背後で行うことが望ましい。しかし、排水ソケットに他の排水と合流部を設けると共に横引接続管の長さを調整することで住宅側排水管との接続を図る特許文献1に記載の構造では、住宅側排水管がトイレ奥壁近傍に設けられた場合であって他の排水管と便器排水管の接続を便器背後で行うリフォームモデルの後付け設置に対応することがその寸法上の制約から難しい。
【0006】
そこで、排水ソケット内の便器排水路の中心を排水ソケット上部の便器接続部の中心より便器後方にずらすことで、トイレ奥壁近傍に既設された住宅側排水管に対応することが考えられる。
【0007】
一方、トイレ用の美観を保つ意匠上の観点から、他の排水管と便器排水管の接続は便器背後で行うことが望ましいが、他の排水管を便器背後で接続するためには、便器をトイレブースの前方へ設置しなければならなくなり、限られたスペースを有するトイレブース内での用便を行い難くする恐れがある。
【0008】
そのため、便器を奥側へ設置するため、他の排水管と排水ソケットとの接続部を極力便器に近い位置に設ける必要がある。
【0009】
ここで、排水ソケット内の便器排水路の中心を便器接続部の中心より便器後方にずらすことと、他の排水管と排水ソケットとの接続部を便器に近い位置へ設けることを同時に行うと、緩衝室入口近傍の緩衝室内の流路が狭くなり、他の排水管からの排水が緩衝室内の緩衝室入口近傍や他の排水管の緩衝室入口近傍で詰まって他の排水の望まない自己サイフォン作用を起こす恐れがある。そして、この自己サイフォン作用により他の排水管の封水部の水がなくなってしまい、他の排水管を介して異臭がトイレ内に漂う恐れがある。
【0010】
本発明の目的は、既存の住宅側排水管の配設位置を変えることなく使い勝手の良いリフォームモデルの洋式便器に簡単な改修工事で付け替えることができ、かつ他の機器の排水管に関して好ましくない自己サイフォン作用生じさせることのない排水ソケットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成するために、本発明にかかる排水ソケットは、
水洗大便器の排水路と他の機器の排水路を合流させこれらの排水路を床面に設けられた排水配管に連通させる水洗大便器の排水ソケットにおいて、
前記水洗大便器の排水路に接続されるソケット流入口をその上端に備えかつ下方に延びる環状管路と、
前記環状管路の少なくとも排水側の一部を全周にわたって所定間隔隔てて囲む外周部と、
前記環状管路の下流側に配設された横管路とを備え、
前記環状管路と前記外周部との間に緩衝室が形成されると共に、前記他の機器の排水路に接続される緩衝室入口が前記外周部の一部に形成され、
前記水洗大便器の排水管からの排水に前記他の機器の排水路からの前記緩衝室内への排水を合流させて前記横管路に導く前記緩衝室の合流出口が、前記外周部よりも内側か又は前記横管路上方に形成され、かつ前記緩衝室の底面は前記合流出口に向かって広くなっていることを特徴としている。
【0012】
排水ソケットがこのような構造を有することによって、緩衝室内での排水を速やかに行なうことができ、緩衝室入口付近の緩衝室内での他の機器からの排水の詰まりをなくし、自己サイフォン作用によって他の排水管の封水用の水がなくなって異臭が漂うのを防止できる。また、便器排水時に生じる負圧によって、緩衝室及び他の排水管内の空気が合流出口を通って住宅側排水管の方へ吸引されようとする場合にも、排水ソケットがこのような構造を有することによって、管路損失及び空気のエネルギー損失が大きくなるため、空気が吸引されにくくなり、誘導サイフォン作用が起きるのを防止でき、他の排水管の封水用の水がなくなって異臭が漂うのを防止できる。これによって、既存の住宅側排水管の配設位置を変えることなく使い勝手の良いリフォームモデルの洋式便器に簡単な改修工事で付け替えることができる。
【0013】
また、本発明の請求項2に記載の排水ソケットは、請求項1に記載の排水ソケットにおいて、
前記緩衝室の流路底面は前記合流出口に向かって下側に傾斜していることを特徴としている。
【0014】
排水ソケットがこのような構造を有することで、便器排水が逆流した場合でもトイレットペーパーや汚物等が緩衝室に残留し難い。また、トイレットペーパーや汚物等が緩衝室に仮に残留した場合でも、他の機器の排水時にトイレットペーパーや汚物を速やかに排出させることができ、他の機器の排水管が詰まるのを防止できる。
【0015】
また、本発明の請求項3に記載の排水ソケットは、請求項1又は請求項2に記載の排水ソケットにおいて、
前記横管路は前記外周部よりも内側に前記環状管路との接続部を備えていることを特徴としている。
【0016】
排水ソケットがこのような構造を有することで、横管路の環状管路との接続部を環状管路の大便器接続部前方端よりも後方に配置させることができ、よりトイレ奥壁近傍に設けられた住宅側排水管にリフォームモデルの洋式便器を後付け設置できる。
【0017】
また、本発明の請求項4に記載の排水ソケットは、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の排水ソケットにおいて、
前記合流出口に逆流防止手段を設けていることを特徴としている。
【0018】
排水ソケットがこのような構造を有することで、横管路から緩衝室への排水の逆流を防止できる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によると、既存の住宅側排水管の配設位置を変えることなく使い勝手の良いリフォームモデルの洋式便器に簡単な改修工事で付け替えることができる。また、これに加えて、緩衝室内での排水を速やかに行うことができるので、自己サイフォン作用によって他の機器の排水管の封水の水がなくなりトイレ内での異臭が発生するのを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態に係る排水ソケットを図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る排水ソケット1を、タンク式の水洗大便器80及び手洗い器(ここでは図示せず)に接続した状態を示す側方断面図である。また、図2は、図1に示した排水ソケット1の外周部20の平面図である。また、図3は、図1に示した排水ソケット1の入れ子構造をなす環状管路10(図3(a))と外周部20(図3(b))を上下に分離して示した側方断面図である。また、図4は、図1に示した排水ソケット1を一部破断して示す側面図である。
【0021】
本実施形態にかかる排水ソケットは、図1に示すように水洗大便器80の排水路81と、本実施形態では他の機器の排水路としての手洗い器(図示せず)の手洗い器用排水管91に接続され、それらの排水を合流させて床面に設けられた住宅側排水路(図示せず)に排出するようになっている。
【0022】
排水ソケット1は、水洗大便器80の排水路81に接続される環状管路10と、この環状管路10の下端からエルボー部21を介してほぼ水平方向に延びる横管路40と、環状管路10の排水側の周囲を全周に亘って所定間隔隔てて囲む外周部20と、環状管路10と外周部20及びこれらを繋ぐ上壁35と底壁36(図3参照)によって画成される緩衝室30とを有している。
【0023】
環状管路10は、上方に開口したソケット流入口11から下方に延びている。ソケット流入口11にはパッキン12が被せられ、水洗大便器80の排水路81とソケット流入口11との間の水密性及び気密性が確保されている。また、環状管路10の下端には外周部内に設けられたエルボー部21が連結され、流路がほぼ直角をなして便器前方に向かうようになっており、このエルボー部21の下流側端部に横管路40の上流側端部が接続されている。
【0024】
図3に示す環状管路10はその下側が窄まって上側よりも小径となり、かつその中心軸線が便器への取付け状態で便器後方に偏倚している。また、環状管路10の長手方向略中央部にはフランジ部15が形成され、外周部20の上端縁20aに密着状態で当接して後述する緩衝室30の上壁35を形成するようになっている。
【0025】
図1に示す横管路40は、上述した外周部内のエルボー部21の下流側端部に接続され、僅かな長さを有して略水平に延びている。そして、横管路40の下流端にはベンド部50が設けられ、ベンド部50を介して横管路40からの排水を床面の住宅側排水管に流すようになっている。なお、ベンド部50の住宅側排水管側の端部には、床接続用フランジ60が形成され、ベンド部50の下流側端部をトイレ床面に適当なシール材を介して固定するようになっている。
【0026】
一方、環状管路10の下流側の長手方向周囲に亘って形成された外周部20は、上述の通り環状管路10と外周部20及びこれらを連結する上壁35と底壁36(図3(b)参照)によって画成される緩衝室30を形成すると共に、外周部20の内部下側にエルボー部21を備え、かつ下端に支持部としての張り出し部26(図2参照)を有している。なお、外周部20の横管路40と径方向反対側には他の機器としての手洗い器からの排水を緩衝室30に流入させる緩衝室入口31(図3(b)参照)が形成されている。なお、緩衝室30の底面36aは後述する合流出口32(図2及び図3(b)参照)に向かって広くなっている。
【0027】
環状管路10は、上部が大便器排水側と略同芯をなすように形成されると共に、長手方向略中央部から下端に亘って緩衝室入口31と反対側の周壁が緩衝室入口側に引っ込んで前方凹み部25(図3(b)参照)を形成している。また、緩衝室入口31の下側近傍にはエルボー部21の外周面と外周部20の内周面とを連結する底壁36が形成されている。また、外周部20の下端には、上述の通り水洗便器80に対して両側方に向かうようにそれぞれ張り出し部26が形成され、張り出し部26の端部には、排水ソケット1を床に固定するための例えば木ネジ貫通用の取付け孔26aがそれぞれ2つずつ設けられると共に、その取付け孔間に排水ソケット1に便器を固定するための六角ボルトの頭部収容部26bが形成されている。
【0028】
そして、緩衝室30の底壁36の底面36aには、手洗い器からの排水を環状管路10のエルボー部内の排水に合流させる細長矩形状の合流出口32が外周部20の前方凹み部25の内側に隣接した位置に形成されている。即ち、合流出口32は本実施形態の場合、外周部20の前方内周面20bよりも内側に形成されている。また、エルボー部21の入口側開口部21aの中心は、外周部20の上端縁20aで形成される開口部の中心に対して緩衝室入口側に若干偏倚して配置されている(図2参照)。また、エルボー部21の入口側開口部に嵌合する環状管路10の出口側開口部10aの中心も外周部20の上端縁20aで形成される開口部の中心に対して緩衝室入口側に若干偏倚して配置されている。そして、外周部20に対して環状管路10が入れ子構造で収容されている。これによって、環状管路10と外周部20の双方の成型性を高めて製造コストの低減を図っている。
【0029】
緩衝室30の底壁36の底面36aは、図4に示すように緩衝室入口側即ち手洗い器側排水管近傍の傾斜がきつく形成され、合流出口付近で平坦になっている。
【0030】
続いて、上述した排水ソケット1の作用について説明する。水洗大便器80からの排水は、接続ソケットを介して環状管路内に沿って排水され、環状管路10及びエルボー部21並びに横管路40とベンド部50を介して既設の住宅側排水管に排水される。この際、水洗大便器80の構造上生じるサイフォン効果によって汚物を一気に既設の住宅側排水管に排水するようになっている。
【0031】
一方、手洗い器側からの排水は、手洗い器用排水管91を介して外周部20の水栓大便器80と反対側に設けられた緩衝室入口31を介して緩衝室30に流入する。そして、緩衝室30に流入した手洗い器からの排水は、緩衝室入口31の反対側に形成された合流出口32に向かって流れ、合流出口32から横管路40の手前、即ち外周部20の内側に形成された合流出口32からエルボー部21に流れ込んで、大便器側の排水と合流するようになっている。
【0032】
なお、上述したように緩衝室30の底面36aは、緩衝室入口側の傾斜がきつくなり、合流出口付近で平坦になっているので、合流出口付近で水がゆっくり流れることができ、髪の毛等の異物を合流出口から排出し易くなる。その結果、合流出口付近に異物が詰まることで手洗い器側の排水管が詰まるのを防止することができる。
【0033】
本実施形態にかかる排水ソケット1がこのような構成を有することで、床に取り付ける床接続用フランジ60をできるだけトイレ後壁近くに配置することができ、既設の住宅側排水管がトイレ後壁近傍に配設されているような住宅においても、使い勝手に優れたリフォームモデルの洋式便器にこの排水ソケットを介して付け替えることができる。
【0034】
特に本実施形態のようにトイレ内の見栄えを向上させるために手洗い器用排水管91を便器後方に隠れる状態で配置した場合などは、この部分のスペースを確保するために洋式便器自体をトイレ後壁からかなり前方に配置する必要がある。しかし、本実施形態における排水ソケット1を用いることで、横管路40に接続したベンド部50及びベンド部50の下流側に接続した床接続用フランジ60の位置をできるだけトイレ後壁近くに配置することができる。従って、このような手洗い器用排水管91の接続構造を有する場合であっても、リフォームモデルの水洗大便器80をトイレ後壁からあまり離さずに設置することができる。その結果、限られたトイレブース内のトイレ前方のスペースを確保することができ、居心地の良いトイレブースに変えることができる。
【0035】
また、緩衝室30の底面36aは合流出口32に向かって広くなっているので、緩衝室内での排水を速やかに行うことができ、緩衝室内の緩衝室入口近傍や手洗い器用排水管91の緩衝室入口近傍での手洗い器からの排水の詰まりをなくし、自己サイフォン作用によって手洗い器用排水管91の封水用の水がなくなってトイレ内に異臭が漂うのを防止できる。
【0036】
更に、便器排水時に生じる負圧によって、緩衝室30及び手洗い器用排水管91内の空気が合流出口32を通ってエルボー部21や横管路40やベンド部50や図示しない住宅側排水管へ吸引されようとする場合にも、本実施形態のように緩衝室30の底面36aが合流出口32に向かって広くなっている形態では特許文献1のような一定の緩衝室流路と比べて大きな管路損失が生じるため、また、緩衝室入口31と便器排水の環状管路10との位置が近いために手洗い器用排水管91内の空気が緩衝室30内に吸引される途中で環状管路10にぶつかり空気のエネルギー損失が大きくなるため、緩衝室30及び手洗い器用排水管91内の空気が吸引されにくくなり、便器排水により手洗い器用排水管91の封水切れが誘発されることを防止できる。
【0037】
また、緩衝室30の底面36aは合流出口31に向かって下側に傾斜しているので、便器排水が逆流した場合でもトイレットペーパーや汚物などが緩衝室30に残留しにくい。また、便器排水が逆流してトイレットペーパーや汚物などが緩衝室30に仮に残留した場合でも、手洗い器の排水時にトイレットペーパーや汚物を速やかに排出することができ、手洗い器用排水管91が詰まるのを防止できる。
【0038】
以下、本実施形態の各種変形例について説明する。なお、上述の実施形態と同等の構成については、対応する符号を付してその詳細な説明を省略する。図5は、上述の実施形態の第1変形例にかかる排水ソケット100を一部破断して示す側面図である。同図から分かるように、緩衝室130の底壁136に沿った底面136aが、上述の実施形態と異なり緩衝室130の入口側から合流出口側に向かって連続して傾斜している。このような構造によっても、手洗い器側の排水を合流出口に効率良く導いて排水することが可能である。これによって上述した実施形態と同等の作用を発揮し得る。
【0039】
続いて、上述の実施形態の第2変形例及び第3変形例について説明する。図6は、上述の実施形態の第2変形例にかかる排水ソケット200の外周部220を示す平面図である。同図から分かるように、この変形例は上述の実施形態とは異なり、外周部内のエルボー部221の上端開口部221a、即ち環状管路の下側開口部の中心に対して外周部内の緩衝室230の中心が図中上方に偏倚している。
【0040】
一方、図7は、上述の実施形態の第3変形例にかかる排水ソケット300の外周部320を示す平面図である。同図から分かるように、この変形例も上述の実施形態とは異なり、外周部内のエルボー部321の上端開口部321a、即ち環状管路の下側開口部の中心に対して外周部内の緩衝室330の中心が図中下方に偏倚している。近年、水洗大便器にタンクを内蔵したり便器を高機能化したりすることで、部品点数の増加傾向が顕著となっているが、このように環状管路の下側部に対して緩衝室の中心を若干偏倚させることで、他の排水管と緩衝室との接続位置を任意の方向にずらして調整することができ、例えば便器内に内蔵されたタンクや局所洗浄便座の機構部やその他タンクポンプ等と緩衝室や他の排水管の干渉を防止することができる。
【0041】
続いて、上述の実施形態の第4変形例について説明する。図8は、上述の実施形態の第4変形例にかかる排水ソケット400の外周部420を示す平面図である。同図から分かるように、上述の実施形態とは異なり、外周部420の下側の前方凹み部425の輪郭が平面視で直線状ではなく、楕円状をなしている。このような構成によっても、緩衝室430の合流出口432を外周部420よりも内側で緩衝室入口側にかなりずらすことができ、上述した実施形態と同等の作用効果を発揮することができる。
【0042】
続いて、上述の実施形態の第5変形例について説明する。図9は、上述の実施形態の第5変形例にかかる排水ソケット500の外周部520を示す側面図である。同図から分かるように、外周部520の前方凹み部525を外周部520の外径よりもかなり小さな外径を有する円筒形状から構成し、かつ環状管路の出口側開口部と略同芯をなすように形成している。このような構成によっても緩衝室530の合流出口532を外周部520よりも内側で緩衝室入口側にかなりずらすことができ、上述した実施形態と同等の作用効果を発揮することができる。
【0043】
しかしながら、図2に示す上述した実施形態の構成の方が、図8に示す第4変形例及び図9に示す第5変形例に比べて、合流出口の流路面積を最も大きく確保することができ、かつ合流出口付近の緩衝室底面も広くすることができるので、手洗い側からの排水を合流出口に澱みなく流し込んで大便器側排水に合流させることができる点で有利である。
【0044】
続いて、上述の実施形態の第6変形例について説明する。図10は、上述の実施形態の第6変形例にかかる排水ソケット600を示す図であり、排水ソケット600の中心軸線に沿った側方断面図である。同図から分かるように、この第6変形例においては、緩衝室630の合流出口632の下流に逆流防止弁635を設けている。この逆流防止弁635は、例えば、厚さ1mm程度の軟質性の塩ビ板を使用し、塩ビ板の一端を排水ソケット内側端部に固定すると共に、通常状態では図10に示すように合流出口側の下流側であってエルボー部側の連通部636を塞ぐようになっている。また、図11は、この第6変形例における手洗い器側の排水時の逆流防止弁635の状態を示したものである。同図から分かるように、手洗い器側の排水時には、逆流防止弁635が開いて手洗い器側の排水のみをエルボー部621及び横管路640に流すようになっている。第6変形例がこのような構成を有することで、便器排水時に汚物やトイレットペーパーが緩衝室630へ逆流するのを防止できる。
【0045】
続いて、上述の実施形態の第7変形例について説明する。図12は、上述の実施形態の第7変形例にかかる排水ソケット700の外周部720を示す平面図である。同図から分かるように、この第7変形例においては、緩衝室730の合流出口732に底壁736の厚みと同等の厚さを有する2つのリブ734,735が形成されている。このようなリブ734,735を合流出口732に設けることによって、便器排水中のトイレットペーパーや汚物が逆流して緩衝室730を通って手洗い側排水管に浸入するのを防止することができる。
【0046】
なお、上述した実施形態においては、外周部に前方凹み部を設けて緩衝室の底面であって前方凹み部の内側に合流出口を設けた。一方、このような前方凹み部を設けずに外周部の内側に合流出口を形成することも考えられるが、本実施形態及び各種変形例のように前方凹み部を積極的に設けることで、合流出口を排水ソケットの内側に偏倚させることができ、ベンド管及びこの下流側に接続されるフランジ部の位置をトイレ後壁側にずらすことが可能となる。そのため、このような前方凹み部を有することによって本発明の作用効果をより発揮することができる。
【0047】
なお、本実施形態及び各種変形例にかかる排水ソケットを図13に示すような態様で使用することも可能である。図13は、本実施形態にかかる排水ソケットに長さの長い延長管70を接続して便器前方付近の既設の住宅用排水管に排水する構造を示した側方断面図である。このように本実施形態及び各種変形例にかかる排水ソケットを長さの長い延長管70を組み合わせて、この延長管70の長さを適当な長さに切って使用することにより、様々な場所に配設された住宅側排水管の配設位置を変えることなく、使い勝手の良いリフォームモデルの洋式便器に付け替えることができる。
【0048】
なお、外周部の外径は、本実施形態とは異なり、環状管路の大便器接続側の部分の外径と同一であっても良い。
【0049】
また、上述の実施形態においては、他の機器の排水管として手洗い器の排水管を例示したが、必ずしもこれに限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本発明一の実施形態に係る排水ソケットを、タンク式の水洗大便器及び図示しない手洗い器に接続した状態を示す側方断面図である。
【図2】図1に示した排水ソケットの外周部の平面図である。
【図3】図1に示した排水ソケットの環状管路(図3(a))と外周部(図3(b))を上下に分離して示した側方断面図である。
【図4】図1に示した排水ソケットを一部破断して示す側面図である。
【図5】本発明の一実施形態の第1変形例にかかる排水ソケットを一部破断して示す側面図である。
【図6】本発明の一実施形態の第2変形例にかかる排水ソケットの外周部を示す平面図である。
【図7】本発明の一実施形態の第3変形例にかかる排水ソケットの外周部を示す平面図である。
【図8】本発明の一実施形態の第4変形例にかかる排水ソケットの外周部を示す平面図である。
【図9】本発明の一実施形態の第5変形例にかかる排水ソケットの外周部を示す平面図である。
【図10】本発明の一実施形態の第6変形例にかかる排水ソケットを示す側方断面図である。
【図11】図10に示した第6変形例における手洗い器側の排水時の逆流防止弁の状態を示す側方断面図である。
【図12】本発明の一実施形態の第7変形例にかかる排水ソケットの外周部を示す平面図である。
【図13】本実施形態にかかる排水ソケットに長さの長い延長管を接続して便器前方付近に既設された住宅用排水管に排水する構造を示した側方断面図である。
【符号の説明】
【0051】
1 排水ソケット
10 環状管路
10a 出口側開口部
11 ソケット流入口
12 パッキン
15 フランジ部
20 外周部
20a 上端縁
20b 前方内周面
21 エルボー部
21a 入口側開口部
25 前方凹み部
26 張り出し部
26a 取付け孔
26b 頭部収容部
30 緩衝室
31 緩衝室入口
32 合流出口
35 上壁
36 底壁
36a 底面
40 横管路
50 ベンド部
60 床接続用フランジ
70 延長管
80 水洗大便器
81 排水路
91 手洗い器用排水管
100 排水ソケット
130 緩衝室
136 底壁
136a 底面
200 排水ソケット
220 外周部
221 エルボー部
221a 上端開口部
230 緩衝室
300 排水ソケット
320 外周部
321 エルボー部
321a 上端開口部
330 緩衝室
400 排水ソケット
420 外周部
425 前方凹み部
430 緩衝室
432 合流出口
500 排水ソケット
520 外周部
525 前方凹み部
530 緩衝室
532 合流出口
600 排水ソケット
621 エルボー部
630 緩衝室
632 合流出口
635 逆流防止弁
636 連通部
640 横管路
700 排水ソケット
720 外周部
730 緩衝室
732 合流出口
734,735 リブ
736 底壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗大便器の排水路と他の機器の排水路を合流させこれらの排水路を床面に設けられた排水配管に連通させる水洗大便器の排水ソケットにおいて、
前記水洗大便器の排水路に接続されるソケット流入口をその上端に備えかつ下方に延びる環状管路と、
前記環状管路の少なくとも排水側の一部を全周にわたって所定間隔隔てて囲む外周部と、
前記環状管路の下流側に配設された横管路とを備え、
前記環状管路と前記外周部との間に緩衝室が形成されると共に、前記他の機器の排水路に接続される緩衝室入口が前記外周部の一部に形成され、
前記水洗大便器の排水管からの排水に前記他の機器の排水路からの前記緩衝室内への排水を合流させて前記横管路に導く前記緩衝室の合流出口が、前記外周部よりも内側か又は前記横管路上方に形成され、かつ前記緩衝室の底面は前記合流出口に向かって広くなっていることを特徴とする排水ソケット。
【請求項2】
前記緩衝室の流路底面は前記合流出口に向かって下側に傾斜していることを特徴とする、請求項1に記載の排水ソケット。
【請求項3】
前記横管路は前記外周部よりも内側に前記環状管路との接続部を備えていることを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の排水ソケット。
【請求項4】
前記合流出口に逆流防止手段を設けていることを特徴とする、請求項1乃至請求項3の何れかに記載の排水ソケット。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2009−30317(P2009−30317A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194959(P2007−194959)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】