説明

排水トラップ装置

【課題】洗面器の排水口と床排水部とを連絡する排水トラップ装置の縦管ピッチを短くして、狭い配管スペースでも容易に設置できるようにする。
【解決手段】排水トラップ装置Tはトラップ形成管10・V字形連結管20・排水導出管30から成り、排水導出管30は接続部J3において回転させ二次側管路部分33を鉛直方向にも水平方向にもできる。排水導出管30の一次側管路部分31の管中心線C3の位置を、V字形連結管20の二次側管路部分23における折り曲げ部側管部23aの管中心線C2に対し、一次側管路部分21の方へ接近させたので、縦管ピッチPの寸法が短くなる。その結果、小回りが利くようになると共に、排水導出管30を床排水部に合致させるためにトラップ形成管10及びV字形連結管20を回転させる角度を小さくできるから、狭い配管スペース内でも排水トラップ装置Tの設置作業を容易に行える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
洗面器・手洗器等の排水口と、床又は壁に設けられた排水部とを連絡する排水配管の途中には、通常、水封を形成するためのトラップが設けられる。本発明は、このトラップの構造に関し、詳しくは、同一の部材で床排水部にも壁排水部にも接続が可能であり、床排水部の位置に変動が有った場合でも、配管接続作業を容易且つ確実に行える排水トラップ装置の提供を目的とする。
【背景技術】
【0002】
一般に、洗面器の排水口と床又は壁に設けられた排水部とを連絡する排水配管の途中には、水封を形成するためのトラップが設けられる。床排水の場合、排水部とトラップとの間の配管は鉛直方向となるので、二つのU字形管を組み合わせて成るS形トラップが使用される。壁排水の場合、排水部とトラップとの間の配管は水平方向となるので、U字形管に90度のエルボ管を組み合わせて成るP形トラップが使用される。このように普通は、床排水用と壁排水用とで排水トラップ装置の構成部材が異なっており、それだけ用意すべき部材点数が多くなるという欠点があった。
【0003】
そこで一種類の装置で床排水にも壁排水にも対応できるようにすることが考えられ、そのような排水トラップ装置が、例えば特許文献1などで提案されている。図3は、この種の排水トラップ装置tを例示するものであって、洗面化粧台K等に備えられる洗面器Sの排水口1に、接続器具2を介して排水案内管3が接続され、この排水案内管3に、トラップ4aを形成するU字状パイプ4が接続される。そして、U字状パイプ4の二次側管路部分に、45度に折り曲げたV字形の連結パイプ5を接続し、この連結パイプ5に、一次側管端部付近を135度に折曲した排水パイプ6を接続して成るものである。かかる排水トラップ装置tは、排水パイプ6を連結パイプ5に対し接続する際の姿勢を180度回転させることにより、二次側管路部分を鉛直方向にも水平方向にもできるので、同一の部材で床排水と壁排水との双方に対応することが可能である。
【特許文献1】昭和56年実用新案出願公告第51099号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記従来の排水トラップ装置tは、上に述べた如く、床排水と壁排水の両方に適用できるようにするため、U字状パイプ4と排水パイプ6との間に折曲角度が45度のV字形連結パイプ5を配設し、この連結パイプ5に接続する排水パイプ6には角度が135度の折曲部分を形成するという構造を採用している。そのため、当該排水トラップ装置tを床排水部7に接続するときに、U字状パイプ4における二次側管路部分の鉛直方向の管中心線から、排水パイプ6における二次側管路部分の鉛直方向の管中心線までの距離P(以下、「縦管ピッチP」と言う)が、従前の二つのU字形管を接続して成るS形トラップの縦管ピッチより大きくならざるを得なかった。縦管ピッチPが大きいと次のような問題が生じる。
【0005】
前記排水トラップ装置tで洗面器排水口1と床排水部7とを連絡するにあたり、施工状況により床排水部7の位置が変わることがあるが、このような場合、図3(B)に示すように、排水案内管3に対しU字状パイプ4を接続部において回転させると共に、U字状パイプ4に対し連結パイプ5を接続部において回転させることにより、排水パイプ6を床排水部7と接続できる位置へ移動させる。ところで洗面化粧台Kにおいて、洗面器Sの下方空間に仕切り板Mを設け、仕切り板Mの前方を車椅子等に座った使用者の脚や膝を収納できるニースペースNとし、仕切り板Mの後方側を配管スペースLとすることがある。この配管スペースLは奥行き寸法が非常に狭くなることが多い。従って、前記排水トラップ装置tにより洗面器排水口1と床排水部7とを接続するに際し、排水パイプ6を床排水部7の位置へ移動させるため連結パイプ5をU字状パイプ4に対し回転させようとしても、上述した如くU字状パイプ4と排水パイプ6との縦管ピッチPが大きいと、連結パイプ5の回転半径が大きいために、上記のような狭い配管スペースL内では、連結パイプ5の回転作業が困難になる可能性があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明が前記問題を解決するために採用した排水トラップ装置の特徴とするところは、トラップを形成するための折り返し部を有するトラップ形成管の二次側管路部分に、45度の折り曲げ部を有するV字形連結管の一次側管路部分が接続され、このV字形連結管の二次側管路部分に、135度の緩曲部を有する排水導出管の一次側管路部分が接続された排水トラップ装置であって、前記V字形連結管の二次側管路部分における折り曲げ部側管部に対し、当該二次側管路部分における接続側管部が、前記V字形連結管の一次側管路部分に接近する方向へ偏芯して設けられていることである。なお上記において、45度及び135度の数値は設計上求められる理想値であり、実施に際しては、製作上の誤差を含むことが許容される。
【発明の効果】
【0007】
前記構成に基づく本発明に係る排水トラップ装置は、床排水に適用したときに、V字形連結管に接続した排水導出管の二次側管路部分が、V字形連結管の一次側管路部分に接近する。つまり、V字形連結管が接続されるトラップ形成管の二次側管路部分と、排水導出管の二次側管路部分との距離が縮まるから、縦管ピッチを短くできる。すなわち、床排水にも壁排水にも対応可能でありながら、縦管ピッチについては、2個のU字形管を組み合わせた従来のS形トラップと同等の短さである製品を提供できる。縦管ピッチが短くなった結果、V字形連結管をトラップ形成管に対し回転させるときの回転半径が短くなり、いわゆる小回りの利く状態となるから、狭い配管スペース内でも、排水導出管を床排水部の位置に合致させる作業が容易になる。しかも本発明の排水トラップ装置は、V字形連結管についてのみ改良を施せばよく、トラップ形成管及び排水導出管については従来のものをそのまま利用できるので、実施のためのコストを低く抑えられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
図1に、本発明に係る排水トラップ装置Tの一例を示す。この排水トラップ装置Tは、
一次側管路部分11と二次側管路部分13との間に180度に湾曲させた折り返し部12を有するほぼU字状のトラップ形成管10と、一次側管路部分21と二次側管路部分23との間に折曲角度α=45度の折り曲げ部22を有するV字形連結管20と、一次側管端部aの近くに折曲角度β=135度の緩曲部32を有し全体がほぼへ字状を成す排水導出管30とから構成される。なおα,βの値は、排水トラップ装置に、施工上及び機能上の問題(例えば、壁排水時に逆勾配となる問題)を生じさせない範囲の誤差を許容するものである。
【0009】
トラップ形成管10は、一次側管路部分11に比べて二次側管路部分13の管路長が短く設定され、折り返し部12の下端位置には、パッキン15を介し蓋部材16が着脱可能に装着された水抜き孔14が設けられている。一次側管端の開口部10aには、洗面器等の排水口と連絡する排水案内管3がナット8及びパッキン9によって接続されている。二次側管端の開口部10bには、V字形連結管20の一次側管路部分21が挿入され、ナット8及びパッキン9によって接続されている。トラップ形成管10は排水案内管3と接続するに際し、接続部J1において軸周りに回転角度を変更可能であり、V字形連結管20はトラップ形成管10に接続するに際し、接続部J2において軸周りに回転角度を変更可能である。なおトラップ形成管10における折り返し部12の形状は、図示するような半円形のほか、V字形なども可能であり、下向きに凸の形状であればよい。
【0010】
V字形連結管20の二次側管路部分23における接続側管部23bは、排水導出管30の一次側管路部分31を挿入可能に設けられ、排水導出管30がナット8及びパッキン9によって接続される。排水導出管30は、V字形連結管20に接続するに際し、接続部J3において軸周りに回転角度を調節可能である。従って、床排水に適用する場合には二次側管路部分33が鉛直方向となるように調節し、壁排水に適用する場合には、接続部J3で180度回転させることにより、二次側管路部分33を水平方向に位置させることができる。
【0011】
前記排水トラップ装置Tは、床排水に適用するに際し、管どうしの接続部J1,J2において軸周りの回転角度を調節することにより、排水導出管30を床排水部(図3参照)の位置に合致させることができる。図2(A)に示す如く、トラップ形成管10・V字形連結管20・排水導出管30がほぼ一直線上に並んだ状態のとき、トラップ形成管10の一次側管路部分11から排水導出管30の二次側管路部分33までの平面視した距離(以下、水平距離と言う)が最長W1である。トラップ形成管10の一次側管路部分11から床排水部までの水平距離がこれより短いときは、同図(B)に示す如く、トラップ形成管10の一次側管路部分11と排水案内管(図3参照)との接続部J1において、トラップ形成管10を軸周りに適宜回転させる。同時に、V字形連結管20の一次側管路部分21とトラップ形成管10の二次側管路部分13との接続部J2において、V字形連結管20を軸周りに適宜回転させる。これにより、トラップ形成管10の一次側管路部分11から排水導出管30の二次側管路部分33までの水平距離W2を、W1より短くすることができる。従って、2箇所の接続部J1,J2において、トラップ形成管10及びV字形連結管20それぞれの回転角度θ1,θ2を適宜設定することにより、水平距離がW1以内であれば、床排水部がどの位置にあっても、排水導出管30を確実に合致する位置へ移動させることが可能である。
【0012】
本発明の排水トラップ装置Tは、V字形連結管20の二次側管路部分23において、排水導出管30の一次側管路部分31が挿入される接続側管部23bを、折り曲げ部側管部23aに対し、V字形連結管20の一次側管路部分21に接近する方向へ偏芯(通常は平行移動)させたところを特色としている。これにより、排水導出管30における一次側管路部分31の管中心線C3の位置が、V字形連結管20の二次側管路部分23における折り曲げ部側管部23aの管中心線C2より、V字形連結管20の一次側管路部分21の方へ接近することになる。V字形連結管20と排水導出管30との偏芯量、つまり二つの管中心線C2,C3の距離は要求流量と管径とで決定され、本例の場合1〜13mmの範囲で設定可能であり、好ましくは、流量を確保するため、排水導出管30の肉厚と同程度(約2mm)に設定する。かかる設定の結果、V字形連結管20における一次側管路部分21の管中心線C1(トラップ形成管10における二次側管路部分13の管中心線に同じ)から、排水導出管30における二次側管路部分33の管中心線C4までの距離、すなわち縦管ピッチPの寸法が短くなる。
【0013】
縦管ピッチPが短いと、トラップ形成管10及びV字形連結管20を接続部J1,J2で回転させて、排水導出管30を床排水部に合致させる作業が容易となる。図2(B)に示すように、排水トラップ装置Tにおけるトラップ形成管10の一次側管路部分11から排水導出管30の二次側管路部分33までの水平距離を縮めてW2とする場合に、縦管ピッチPが大きいときは、トラップ形成管10の回転角度θ1及びV字形連結管20の回転角度θ2を共に大きくしなくてはならない。すると、排水トラップ装置Tの奥行き寸法Dも必然的に大きくならざるを得ない。これは、狭い配管スペースで排水トラップ装置Tの設置作業を行う場合に不利である。しかるに本発明によれば、縦管ピッチPが短いので、V字形連結管20の小回りが利くようになると共に、水平距離を縮めるためにトラップ形成管10及びV字形連結管20を回転させる回転角度θ1,θ2を小さくできるから、排水トラップ装置Tの奥行き寸法Dがあまり大きくならない。よって、狭い配管スペース内でも排水トラップ装置Tの設置作業を容易に行える。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に係る排水トラップ装置の一実施形態を示す正面断面図である。
【図2】本発明に係る排水トラップ装置の一実施形態を示すものであって、図(A)は水平距離が最長の状態の平面図、図(B)はトラップ形成管及びV字形連結管を接続部で回転させて水平距離を縮めた状態の平面図である。
【図3】従来の排水トラップ装置に関するものであって、図(A)は洗面器の排水口と床排水部とを連絡している状態を示す正面図、図(B)はその平面図であり、いずれも洗面化粧台については仮想線で示してある。
【符号の説明】
【0015】
K…洗面化粧台 L…配管スペース M…仕切り板 N…ニースペース S…洗面器 T…排水トラップ装置 10…トラップ形成管 10a…トラップ形成管の一次側開口部 10b…トラップ形成管の二次側開口部 11…トラップ形成管の一次側管路部分 12…トラップ形成管の折り返し部 13…トラップ形成管の二次側管路部分 20…V字形連結管 21…V字形連結管の一次側管路部分 22…V字形連結管の折り曲げ部 23…V字形連結管の二次側管路部分 23a…V字形連結管の二次側管路部分における折り曲げ部側管部 23b…V字形連結管の二次側管路部分における接続側管部 30…排水導出管 31…排水導出管の一次側管路部分 32…排水導出管の緩曲部 33…排水導出管の二次側管路部分 C1,C2,C3.C4…管中心線 J1,J2,J3…接続部 P…縦管ピッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トラップを形成するための折り返し部を有するトラップ形成管の二次側管路部分に、45度の折り曲げ部を有するV字形連結管の一次側管路部分が接続され、このV字形連結管の二次側管路部分に、135度の緩曲部を有する排水導出管の一次側管路部分が接続された排水トラップ装置であって、前記V字形連結管の二次側管路部分における折り曲げ部側管部に対し、当該二次側管路部分における接続側管部が、前記V字形連結管の一次側管路部分に接近する方向へ偏芯して設けられていることを特徴とする排水トラップ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2007−191958(P2007−191958A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−12248(P2006−12248)
【出願日】平成18年1月20日(2006.1.20)
【出願人】(000000479)株式会社INAX (1,429)
【出願人】(000157212)丸一株式会社 (158)
【Fターム(参考)】