説明

排水リサイクル装置

【課題】 排水量が一定しないような水処理用として適している排水リサイクル装置の提供。
【解決手段】 原水タンク1、膜モジュール3を備え、原水タンク1と膜モジュール3がポンプ5を備えた取水管12により接続されており、原水タンク1内には、原水タンク1の水量に応じて、ポンプ5を停止又は作動させることで、取水管12による取水を停止したり、開始したりするための液面センサーが設置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水量が不安定な排水処理用として適している排水リサイクル装置に関する。
【背景技術】
【0002】
小規模の調理施設や工場等では、水洗により発生する排水量が安定せず、時間や曜日等によって増減することが多い。また、複数の洗浄ラインを有しており、順番に異なる洗浄ラインを使用する場合もある。
【0003】
特許文献1〜4には、野菜や果物を水洗したときの排水処理に関する発明が記載されているが、このような野菜や果物の水洗では、排水量が一定せず、複数の水洗ラインを順に使用していくことが多い。
【特許文献1】特開2007−181772号公報
【特許文献2】特開2007−181773号公報
【特許文献3】特開2007−330924号公報
【特許文献4】特開2007−330925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、排水量が不安定で、特に小規模施設の排水処理用として適している排水リサイクル装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、課題の解決手段として、
少なくとも原水タンクと膜モジュールを備え、前記原水タンクと前記膜モジュールが、ポンプを備えた取水管により接続されており、
更に前記原水タンク内には、前記原水タンクの水量に応じて、前記ポンプを停止又は作動させることで、取水管による取水を停止したり、開始したりするために使用される液面センサーが設置されている、排水リサイクル装置を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明の排水リサイクル装置は、排水量が一定しないような排水発生源から生じる排水の処理に適用した場合でも、安定した処理をすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
図1により、本発明の排水リサイクル装置の実施形態を説明する。図1は、排水リサイクル装置の概念図、図2は、図1の部分拡大図である。
【0008】
原水タンク1に排水管11が接続されており、水洗により生じた排水は原水タンク1内に流入して貯水される。原水タンク1の容量は処理施設に応じて異なるが、200リットル以下にすることができる。原水タンク1は本発明の装置に含まれるものであるが、既設のタンクを原水タンク1として利用することもできる。
【0009】
原水タンク1と膜モジュール3は取水管12で接続されており、それらの間には、ポンプ5とプレフィルター2が設置されている。
【0010】
膜モジュール3は、公知の中空糸膜モジュール、チューブモジュール、スパイラルモジュール、平膜モジュール等を用いることができる。具体的には、特開2003−103146号公報、特開平11−319500号公報、特許第3735451号公報に記載の中空糸膜モジュールを挙げることができる。
【0011】
膜モジュール3には、透過水管13と濃縮排水管14が取り付けられている。透過水管13の他端は、透過水を貯水するための貯水タンク4に接続されている。貯水タンク4には、ポンプ6と共に、透過水を再利用するための給水管15が接続されている。
【0012】
取水管12の先端部を含む一部12aは、原水タンク1内に位置しており、取水口12bは底面1aと間隔をおいて、かつ底面1aに正対している。
【0013】
取水管12の先端部には筒部材17が取り付けられており、筒部材17の内部には液面センサー15が存在しており、導体16により、ポンプ15の制御盤(図示していない)に接続されている。液面センサー15は、原水タンク1の内壁面に取り付けられていてもよい。
【0014】
液面センサー15の位置は、適宜設定することができるが、原水タンク1の原水残存量が満水量に対して20%以下の量になったことを検知できることが好ましく、10%以下の量になったことを検知できることがより好ましい。
【0015】
原水タンク1、プレフィルター2、膜モジュール3、貯水タンク4を含む排水リサイクル装置全体は、1つの台座上に設置されていることが好ましく、更には全体が箱状容器(蓋に相当する面は、必要に応じて設けることができる)内に収容されていることが好ましい。このような箱状容器内に収容する場合には、例えば、特開2006−116488号公報等に記載された洗車排水の処理装置を参考にすることができる。
【0016】
また排水リサイクル装置全体を1つの台座上に設置した場合や箱状容器内に収容した場合には、底面に滑車を取り付けたり、床面に設置したレール上を移動できるような構造にしたりすることで、装置全体を可動式にすることができる。このような可動式にすることで、排水リサイクル装置を移動させることができるため、時間差をおいて使用される複数の洗浄ラインから生じる排水を一つの装置で処理できるようになる。
【0017】
次に、カット野菜の洗浄ラインから生じた排水処理用として、本発明の排水リサイクル装置を使用した場合の処理方法を説明する。
【0018】
洗浄排水は、排水管11から原水タンク(カッと野菜の洗浄ラインに既設の排水タンクを利用した)1内に送られて、貯水される。例えば、原水タンク1内に排水が半分以上溜まった時点でポンプ5を作動させて、取水管12により排水を取水して、プレフィルター2を通した後、膜モジュール3に送って濾過処理する。
【0019】
膜モジュール3で得られた透過水は、透過水管13から貯水タンク4に送って貯水する。膜モジュール3内の濃縮水は、適宜、濃縮排水管14から排水する。
【0020】
貯水タンク4内の透過水は、ポンプ6を作動させて、給水管15から給水して、カット野菜の洗浄水又は洗浄用殺菌水の希釈水、設備の洗浄水として再利用する。
【0021】
このような排水処理運転を継続する過程で、洗浄排水量の減少により、原水タンク1内の水量が減少すると、液面センサー15からの情報が制御盤に送られて、ポンプ5を停止する。その結果、取水管12による取水が停止される。
【0022】
そして、洗浄排水が原水タンク1に流入して、排水量が増加したとき、再度、液面センサー15からの情報が制御盤に送られ、ポンプ5を作動させて、取水管12による取水が再開される。
【実施例】
【0023】
(純水透過能力)
作製したモジュールを、98kPa の圧力下で純水を内圧にてデッドエンド濾過し、単位時間、単位膜面積(内表面積換算)あたりに透過する純水量を測定した。更に、濾過液の水温を測定し、水温25℃の水の粘度を基準として、測定水温の粘度の比率を測定した純水量にかけて、純水透過能力とした。
【0024】
実施例1
図1に示す排水リサイクル装置により、濾過運転をした。排水リサイクル装置の詳細は、以下のとおりである。
【0025】
原水タンク1:縦30cm、横30cm、高さ30cm(満水時の容量27リットル)
取水管12:取水口12bと原水タンクの底面1aとの距離1cm、
液面センサー15:原水タンク1の原水残存量が満水量に対して7%以下の量になったことを検知できるようにしたもの
膜モジュール3:酢酸セルロース中空糸膜(FUC1582;内径0.8mm,外径1.3mm、分画分子量15万ダルトン)を2100本束ね、内径82mm、長さ32cmのモジュールケースに収納し、両端をウレタン接着剤で封止したモジュールを作製した。このモジュールの膜面積は、1.4mであった。このモジュールの純水透過能力を内圧全量濾過で測定したところ、601L/m・hr(25℃、98kPa換算)であった。
【0026】
原水タンク1内に、野菜汁を想定した野菜ジュース(商品名;野菜一日これ一本、カゴメ(株)製)を100ppm加えた水道水を10分ごとに量を増減させながら送水して、排水を処理した。送水条件は、次のとおりである。
【0027】
(原水タンク1への送水条件)
0〜10分間:1.0L/分
10〜20分間:0.5L/分
20〜30分間:3.0L/分
30〜40分間:0.5L/分
40〜50分間:3.5L/分
50〜60分間:1.0L/分
膜モジュール3による濾過運転は、原水タンク1への送水開始から10分経過後(原水タンク1の排水量10リットル)から開始した。濾過運転は、内圧30kPa以下で、部分濾過(濾過液80%、濃縮液20%)を行った。その結果、16〜20分の間の4分間、37〜40分の間の3分間、原水タンク1の排水量の低下により、ポンプ5の作動が停止した。その後、原水タンク1内の排水量の増加により、濾過運転が再開された。
【0028】
60分経過後の純水透過能力は、運転初期値の95%程度であった。なお、膜モジュール3の逆洗はしなかった。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の排水リサイクル装置の概念図。
【図2】図1の部分拡大図。
【符号の説明】
【0030】
1 原水タンク
2 プレフィルター
3 膜モジュール
4 貯水タンク
11 排水管
12 取水管
15 液面センサー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともと膜モジュールを備え、前記原水タンクと前記膜モジュールが、ポンプを備えた取水管により接続されており、
更に前記原水タンク内には、前記原水タンクの水量に応じて、前記ポンプを停止又は作動させることで、取水管による取水を停止したり、開始したりするために使用される液面センサーが設置されている、排水リサイクル装置。
【請求項2】
前記センサーが、原水タンクの残留原水量が満水量に対して20%以下の量になったことを検知できるものである、請求項1記載の排水リサイクル装置。
【請求項3】
前記排水リサイクル装置が、すくなとも台座上に設置されており、前記台座が移動手段を有している、請求項1又は2記載の排水リサイクル装置。
【請求項4】
原水タンクの満水時の容量が200リットル以下である、請求項1〜3のいずれか1項記載の排水リサイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−29823(P2010−29823A)
【公開日】平成22年2月12日(2010.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−197210(P2008−197210)
【出願日】平成20年7月31日(2008.7.31)
【出願人】(594152620)ダイセン・メンブレン・システムズ株式会社 (104)
【Fターム(参考)】