説明

排水処理装置

【課題】廃液中の物質を効率よく酸化することができる排水処理装置を提供する。
【解決手段】処理液体Lに含まれる物質を酸化する装置であって、処理液体Lを収容する酸化槽2と、酸化槽2内に配設された撹拌手段10と、を備えており、撹拌手段10は、先端部が酸化槽2内の処理液体Lに浸漬され、基端部が処理液体Lの液面よりも上方に位置するように配設された筒状部材11と、筒状部材11の内部に配設された回転軸12と、回転軸12における筒状部材11の先端部側の端部に取り付けられた撹拌部材15と、と、筒状部材11の内部に空気を導入し得る吸気通路11cと、を備えており、撹拌部材15は、回転軸12が回転すると、筒状部材11の内部に、筒状部材11の基端から先端に向かう流動を形成し得る形状に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水処理装置に関する。さらに詳しくは、廃液中に含まれる、COD(化学的酸素要求量)値を上昇させる成分を減少させる排水処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
二酸化硫黄ガス(SO2)の大気中への放出は法により厳しく規制されているため、二酸化硫黄の生成を伴う工程では、排出ガスから二酸化硫黄ガスを除去する排煙脱硫が行われる。この排煙脱硫においては、アルカリ吸収法があり、吸収剤として水酸化ナトリウム溶液、亜硫酸ナトリウム溶液、アンモニア水などを用い、これらに二酸化硫黄(SO)を吸収させ、亜硫酸ナトリウム、硫黄、硫酸、液体SO、硫酸アンモニウムなどの状態で回収することが行われる。
【0003】
吸収塔において二酸化硫黄ガスを除去する方法として、液体の吸収剤によって二酸化硫黄ガスを吸収する方法が採用されている。例えば、吸収剤として水酸化ナトリウム(NaOH)水溶液を使用した場合には、二酸化硫黄ガスが水酸化ナトリウム水溶液と接触して反応し、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウム、硫酸ナトリウムとなって水溶液(以下、廃液という)中に回収される。
【0004】
しかるに、二酸化硫黄ガスと水酸化ナトリウム水溶液との反応によって生成される亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムは、廃液のCOD(化学的酸素要求量)値を上昇させる要因となる。このため、吸収塔から出た廃液は、亜硫酸ナトリウムを結晶として回収する。あるいは、一旦排水処理装置において亜硫酸ナトリウムを硫酸ナトリウムに酸化し、法定基準のCOD値以下となってから、廃液は公共用水域に排水される。つまり、二酸化硫黄の生成を伴う工程を有する設備では、排煙脱硫装置に加えて亜硫酸ナトリウム等を製品として回収する装置か、あるいは、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸化して廃液中から除去あるいは低減する装置が必要となるのである。
【0005】
上記のように廃液を酸化処理する排水処理装置として、廃液が収容される容器と、この容器内に配設された散気筒・散気板等の微細気泡散気装置、ノズルを通して強制的に微細化された気泡を吹き込む機構、廃液と空気をノズルで混合し噴出させる機構を備えた装置などが開発されている(例えば、特許文献1、非特許文献1)。
【0006】
しかるに、従来の排水処理装置の場合、強制的に空気を吹き込む構成であるので、ブロアなどの送風機器が必要になり、装置が大型化する。しかも、ノズルなどで形成される気泡では、廃液中の亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムなどとの反応性があまり良くないので、酸化効率が低く廃液の処理効率が低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平8−117551号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】マイクロバブル nanoplanet.co.jp ナノプラネット研究所 大成 Journal of MMJ Vol23、p.90-93(2007)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は上記事情に鑑み、廃液中の物質を効率よく酸化することができる排水処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
第1発明の排水処理装置は、液体に含まれる物質を酸化する装置であって、液体を収容する酸化槽と、該酸化槽内に配設された撹拌手段と、を備えており、該撹拌手段は、先端部が前記酸化槽内の前記液体に浸漬され、基端部が前記液体の液面よりも上方に位置するように配設された筒状部材と、該筒状部材の内部に配設された回転軸と、該回転軸における前記筒状部材の先端部側の端部に取り付けられた撹拌部材と、前記筒状部材の内部に空気を導入し得る吸気通路と、を備えており、前記撹拌部材は、前記回転軸が回転すると、前記筒状部材の内部に、該筒状部材の基端から先端に向かう旋回流を形成し得る形状に形成されていることを特徴とする。
第2発明の排水処理装置は、第1発明において、前記筒状部材の先端部外面には、フランジ状の微細化プレートが設けられており、該微細化プレートは、該プレートを貫通する貫通孔が形成されており、前記撹拌部材は、外端が前記貫通孔の位置まで延びた撹拌翼を備えていることを特徴とする。
第3発明の排水処理装置は、第1または第2発明において、前記筒状部材の内部に、前記酸化槽外から前記液体を供給する液体供給通路を備えていることを特徴とする。
第4発明の排水処理装置は、第1、第2または第3発明において、前記撹拌手段が設けられた前記酸化槽を複数備えており、該複数の酸化槽は、上流側に位置する酸化槽において処理された液体が、順次、下流側の酸化槽に供給されるように配設されており、上流側に位置する酸化槽において処理された液体を、下流側の酸化槽における前記撹拌手段の撹拌部材近傍に供給する連絡通路を備えている
ことを特徴とする。
第5発明の排水処理装置は、第1、第2、第3または第4発明において、前記液体のpHを調整するpH調整手段を備えており、該pH調整手段は、前記液体のpHを、7より大きく10未満に調整するものであることを特徴とする。
第6発明の排水処理装置は、第1、第2、第3、第4または第5発明において、液体を希釈する希釈手段を備えていることを特徴とする。
第7発明の排水処理装置は、第1、第2、第3、第4、第5または第6発明において、前記液体が、亜硫酸ナトリウムおよび/または重亜硫酸ナトリウムを含有する液体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
第1発明によれば、回転軸が回転すると、筒状部材の内部に、筒状部材の基端から先端に向かう旋回流が形成されるので、筒状部材の先端から筒状部材の内部の液体が排出される。すると、筒状部材の内部の圧力が低下し、吸気通路を通って筒状部材の内部に空気が導入されるので、液体中の物質、例えば、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムなどと酸素とを効率よく接触させることができるから、物質を効率よく酸化させることができる。しかも、強制的に空気を吹き込む手段、例えばコンプレッサ等の手段が不要であるので、装置をコンパクトにすることができる。
第2発明によれば、微細化プレートと撹拌翼16との干渉によって気泡が微細化でき、気泡が微細化プレートの貫通孔を通過する際には気泡が撹拌翼によってせん断され気泡の微細化がより促進されるので、処理液体Lと空気との界面をさらに大きくすることができる。
第3発明によれば、筒状部材の内部に、液体供給通路を通して酸化処理する液体を直接供給できる。すると、筒状部材内の吸入空気と導入直後の液体とを効率よく接触させることができるので、物質を迅速に酸化処理することができる。
第4発明によれば、各酸化槽において、上流側の酸化槽から供給された液体が、そのまま下流側の酸化槽の撹拌部材近傍に供給されるので、各酸化槽において物質を確実に酸化させることができる。そして、上流側の酸化槽から供給された液体を、気泡を多く含む液体と効率よく接触させることができるので、物質の酸化処理を確実に進行させることができる。
第5発明によれば、物質の酸化処理効率を向上させることができる。
第6発明によれば、物質の酸化処理効率を向上させることができる。
第7発明によれば、亜硫酸ナトリウムおよび/または重亜硫酸ナトリウムを、硫酸ナトリウムに変換できるので、液体を公共用水域等に流しても、COD値が悪化することを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】(A)は本実施形態の排水処理装置1の概略説明図であり、(B)は(A)のB−B断面における撹拌部材10の要部拡大図であり、(C)は撹拌部材10の要部拡大図である。
【図2】(A)は他の実施形態の排水処理装置1の概略説明図であり、(B)は要部拡大図である。
【図3】他の実施形態の排水処理装置1の概略説明図である。
【図4】他の実施形態の排水処理装置1の概略説明図である。
【図5】他の実施形態の排水処理装置1の概略説明図である。
【図6】実施例1の実験結果を示した図である。
【図7】実施例2の実験結果を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
つぎに、本発明の実施形態を図面に基づき説明する。
本発明の排水処理装置は、COD(化学的酸素要求量)値を上昇させる成分を含有する液体(処理液体)において、かかる成分を酸化して、処理液体のCOD値を減少させることができるものである。
【0014】
本発明の排水処理装置において処理される処理液体は、例えば、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)、硫酸ナトリウム(Na2SO4)などを含む液体であるが、処理液体はとくに限定されない。つまり、処理液体は、COD(化学的酸素要求量)値を上昇させる成分(以下、COD成分という)を含む液体であって、COD成分を酸化処理することによってCOD値を減少させることができる液体であればとくに限定されない。
【0015】
例えば、二酸化硫黄ガスの生成を伴う工程を有する設備では、排出ガスから二酸化硫黄ガスを除去するために吸収剤として水酸化ナトリウム溶液を用い二酸化硫黄ガスを吸収塔において水溶液中に回収する。この二酸化硫黄ガスを回収した水溶液中(吸収塔の廃液中)には、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)や重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)が含有される。かかる吸収塔の廃液は、本発明の排水処理装置において処理される処理液体に該当する。
【0016】
以下では、本発明の排水処理装置によって、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)および/または重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)を含有する処理液体を処理する場合を代表として説明する。
【0017】
(本実施形態の排水処理装置1の説明)
図1に示すように、本実施形態の排水処理装置1は、処理液体Lを収容する酸化槽2と、この酸化槽2内に配設された撹拌手段10とを、を備えている。
【0018】
(酸化槽2について)
図1に示すように、酸化槽2は、内部に中空な処理液体Lを収容する収容空間2hを有する容器であり、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)や重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)などの処理液体Lに対する耐性が高い素材によって形成されている。
【0019】
(撹拌手段10について)
図1に示すように、この酸化槽2の上端には、撹拌手段保持部3が設けられており、この撹拌手段保持部3の架台によって、撹拌手段10が、筒状部材11の先端が酸化槽2内に位置するように配設されている。
なお、筒状部材11の先端を配設する高さはとくに限定されないが、処理液体を処理する作業の間、筒状部材11の先端が処理液体Lに浸漬された状態を維持できる高さであればよい。
【0020】
(筒状部材11)
筒状部材11は、その先端と基端との間を連通する貫通孔を有する中空な管状部材である。この筒状部材11の基端部11aは、筒状部材11がその軸方向や半径方向に移動したり軸周りに回転したりしないように、撹拌手段保持部3の架台に取り付けられている。
また、筒状部材11には、筒状部材11の先端部11b内と外部との間を連通する吸気通路11cが設けられている。この吸気通路11cは、中空な管状部材であり、外気を筒状部材11の先端部11b内に導入し得るように設けられている。
【0021】
(回転軸12)
この筒状部材11の内部には、回転軸12が挿通されている。この回転軸12は、その長さが筒状部材11の軸方向の長さよりも長いものであり、その両端部が筒状部材11の両端部の外方に位置するように設けられている。
この回転軸12の基端部は、筒状部材11に対して軸方向および半径方向には移動できないが、その軸周りには回転できるように、筒状部材11に取り付けられている。具体的には、筒状部材11の基端部11a内に設けられた一対のベアリングによって、回転軸12の基端部における上部と下部とが保持されている。
【0022】
回転軸12は、中心軸周りに回転させる軸回転機構に連結されている。具体的には、回転軸12の基端部には、従動側プーリ12pが設けられており、この従動側プーリ12pは、モータの主軸に取り付けられた駆動側プーリとベルトによって連結されている。このため、モータを作動させれば、駆動側プーリ→ベルト→従動側プーリ12pの順で駆動力が伝達され、回転軸12を回転させることができる。
なお、回転軸12を回転させる駆動機構は、回転軸12を回転させることができる構造であればとくに限定されない。例えば、回転軸12の基端を、モータの主軸に直接連結してもよい。
【0023】
(撹拌部材15)
一方、回転軸12の先端(図1では下端、以下、回転軸12の下端という)には、撹拌部材15が設けられている。
【0024】
撹拌部材15は、略平板状の部材であるプレート17を備えている。このプレート17は、平面視で円形であって、その中心が回転軸12の中心軸上に位置しかつその上面が回転軸12の中心軸と直交するように、回転軸12の下端に取り付けられている。
【0025】
プレート17の上面には、複数枚の撹拌翼16が設けられている。この複数枚の撹拌翼16は、プレート17上面に立設された板状の部材であり、プレート17上に円周方向に沿って間隔を空けて取り付けられている。具体的には、撹拌翼16は、回転軸12が回転すると、回転軸12周りの旋回流が形成されるような形状および配置に設けられている。
【0026】
一方、筒状部材11の先端には、微細化プレート11dが設けられている。この微細化プレート11dは、環状に形成されたプレートであって、その中心が筒状部材11の中心軸上に位置するように設けられている。この微細化プレート11dは、その下面が撹拌翼16の上端との間に狭い隙間(数mm程度)が形成されるように配設されている。
また、微細化プレート11dは、その外径は筒状部材11の外径よりも大きくなるように形成されている。つまり、微細化プレート11dが取り付けられたことによって、筒状部材11がその先端にフランジを有する形状となるように形成されているのである。また、微細化プレート11dは、その中央の孔に回転軸12を挿通できるように、中央の孔の内径は回転軸12の軸径よりも大きくなるように形成されている。
そして、微細化プレート11dには、その外周縁に沿って複数の貫通孔が形成されている。この複数の貫通孔は、回転軸12が回転したときに、撹拌翼16が通過する位置の上方に設けられている。
なお、この微細化プレート11dが設けられている理由は後述する。
【0027】
撹拌部材15がかかる構成を有しているので、回転軸12が回転すると、酸化槽2内には、回転軸12から酸化槽2の内側面に向かう流れを伴った回転軸12周りの旋回流を形成することができる。言い換えれば、回転軸12が回転すると、筒状部材11の先端近傍の処理液体Lを、回転軸12の中心軸周りに回転させながら、筒状部材11の先端から酸化槽2の内側面に向かって流すように形成されているのである。
【0028】
一方、筒状部材11の先端近傍に上記のごとき処理液体Lの流動が形成されると、この流動に伴って、筒状部材11内部の処理液体Lは、回転軸12の中心軸の周囲を旋回しながら、筒状部材11の先端に向かって流動する。つまり、撹拌部材15の複数枚の撹拌翼16は、回転軸12が回転すると、筒状部材11の内部にも、筒状部材11の基端から先端に向かう旋回流を形成することができるのである。
【0029】
なお、撹拌部材15の上記のごとき形状に限定されず、回転軸12が回転すると、回転軸12から酸化槽2の内側面に向かう流れを伴った回転軸12周りの旋回流を形成することができる形状であればよい。例えば、液体を撹拌する際に使用される一般的な撹拌部材(例えば、インペラ等)のような形状でもよく、とくに限定されない。
【0030】
(本実施形態の排水処理装置1による酸化処理)
本実施形態の排水処理装置1は、上述したような構造を有しているので、以下のようにすれば、処理液体L中のCOD成分を酸化して、処理液体LのCOD値を低減させることができる。
【0031】
まず、酸化槽2内に、処理液体Lを入れる。このとき、処理液体Lは、その液面が筒状部材11の先端よりも上方に位置するように供給する。具体的には、撹拌部材15が回転して酸化槽2内に回転軸12周りの旋回流が形成されても、撹拌部材15が液面から露出しない程度の量を酸化槽2内に供給する。
【0032】
ついで、軸回転機構を作動させて、回転軸12を回転させる。すると、回転軸12の先端に取り付けられた撹拌部材15が回転して、酸化槽2内には、酸化槽2の内側面に向かう方向の流れを伴う旋回流が発生する。
【0033】
このとき、筒状部材11の内部には、筒状部材11の基端から先端に向かう旋回流が形成されるので、筒状部材11の内部の処理液体Lが筒状部材11の先端から流出する。すると、筒状部材11の先端部11b内部(液面より上方の部分)が大気圧に比べて負圧になる。このため、吸気通路11cを通って空気が筒状部材11の先端部11b内に流入し、この流入した空気が処理液体Lと接触する。
【0034】
すると、空気との界面において、処理液体L中のCOD成分である亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムなどを酸素と接触反応させることができるので、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸化して硫酸ナトリウム(Na2SO4)とすることができる。
【0035】
また、筒状部材11の内部には、筒状部材11の基端から先端に向かう旋回流が形成されるので、この旋回流の影響により、筒状部材11の内部に流入した空気は、処理液体Lに混合流入したりする。すると、処理液体Lと空気との界面が大きくなる。
しかも、処理液体L中に混合した空気が筒状部材11の下端から流出すると、この空気は気泡となって上方に向かって浮きあがろうとするが、微細化プレート11dの下面と撹拌翼16の上端との間の隙間が狭くしかも撹拌翼16が回転しているので、この気泡は、微細化プレート11dの下面および撹拌翼16の上端と干渉して微細化される。とくに、気泡が、微細化プレート11dの貫通孔を通って上方に浮き上がろうとするときには、気泡が撹拌翼16によってせん断されるので、気泡の微細化が促進される。つまり、処理液体Lと空気との界面はさらに大きくなる。
【0036】
以上のように、本実施形態の排水処理装置1では、筒状部材11内における旋回流の形成や、処理液体L中の気泡の微細化などによって、処理液体L中と空気との界面が大幅に増大するので、処理液体L中の亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸素と効率よく接触させることができる。したがって、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを効率よく酸化して、硫酸ナトリウムに変換することができる。
【0037】
そして、回転軸12を回転させるだけで、処理液体L中と空気との界面を増加させているので、処理液体Lに気泡を供給する場合のように処理液体Lに強制的に空気を吹き込むコンプレッサなどの装置が不要となるから、排水処理装置1をコンパクトにすることができるし、省エネルギー化することも可能となる。
【0038】
なお、筒状部材11の下端が、その下端開口に行くに従って広がるような形状(つまり、ラッパ状)に形成されていれば、筒状部材11から外部に処理液体Lをスムースに流すことができるので、筒状部材11内の旋回流を強くすることができるという利点が得られる。
また、微細化プレート11dの中央の孔の孔径はとくに限定されず、筒状部材11の内径と同程度でもよいし、筒状部材11の内径よりも小さくてもよい。しかし、筒状部材11の内径よりも小さい場合には、中央の孔を通過する際の処理液体Lの流速が速くなるので、処理液体Lに気体を混入させやすくなると推定される(図1(C)参照)。
さらに、微細化プレート11dは必ずしも設けなくてもよいが、微細化プレート11dを設ければ、上述したように気泡の微細化を促進できるという利点が得られる。
【0039】
(連続処理可能な装置)
また、本実施形態の排水処理装置1は、酸化槽2内に溜めた状態の処理液体Lを撹拌手段10によって撹拌して酸化処理を行い、処理終了後、処理済みの液体を排出し、次の処理液体Lを酸化槽2に供給する構成、つまり、処理液体Lをバッチ処理するような構造でもよい。
しかし、処理液体Lの処理効率を向上させる上では、本実施形態の排水処理装置1は、処理液体Lを連続処理できる構造を有していることが好ましい。
【0040】
例えば、酸化槽2内に処理液体Lを供給する液体供給通路と、酸化槽2から処理液体Lを排出する排出通路22(図2(A)参照)を設ける。そして、排出通路22の酸化槽2側の開口(処理液体排出口)を、処理液体Lの液面とほぼ同じ高さに設ける。具体的には、処理液体排出口を、液体供給通路から処理液体Lを酸化槽2に供給しておらずしかも撹拌手段10を作動させていない状態における処理液体Lの液面(以下、基準液面という)とほぼ同じ高さよりも若干高い位置(例えば、100〜200mm程度上方)に配設する。すると、酸化槽2に液体供給通路から処理液体Lを供給すれば、液体供給通路から供給される量に相当する量を、処理液体排出口から排出通路22に流出させることができるので、処理液体Lを連続処理することができる。
【0041】
かかる構成を採用する場合には、液体供給通路を、図2に示すような構造とすることが好ましい。
【0042】
図2に示すように、液体供給通路21は、撹拌手段10の筒状部材11と連通されている。つまり、液体供給通路21は、その基端が酸化槽2外に配置され、その先端が筒状部材11に接続されている。
かかる構造とすれば、筒状部材11の内部に、液体供給通路21を通して処理液体Lを直接供給することができるので、筒状部材11内において、処理液体Lに混合流入した気体と導入直後の処理液体Lとを確実に接触混合させることができる。すると、処理液体L中の亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸化して硫酸ナトリウムに変換する効率をさらに高くすることができる。
なお、上記のごとき構成を採用する場合には、液体供給通路21から流入する処理液体Lが筒状部材11内における旋回流の形成を阻害することを防ぐために、筒状部材11に拡径部11eを設けて、液体供給通路21が接続される部分の内部の容積を大きくしておくことが好ましい(図2(B)参照)。
【0043】
また、連続処理を行う場合には、排水処理装置1に拌手段10を有する酸化槽2を複数設け、上流側に位置する酸化槽2において処理された処理液体Lが、順次、下流側の酸化槽2に供給されるように構成されていることが好ましい。かかる構成とすれば、処理液体Lを酸化処理する時間を十分にとることができるので、処理されずに排出される亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを少なくすることができる。
【0044】
例えば、図3に示すように、複数の酸化槽2を隣接するように並べて配置し、隣接する槽の間の壁面において、基準液面と同じ高さに両槽間を連通する開口を設けておく。すると、液体供給通路21から処理液体Lが供給されると、順次、上流側に位置する酸化槽2から下流側に位置する酸化槽2に処理液体Lを供給することができ、最終的に、最下流に位置する酸化槽2に設けられている処理液体排出口から排出通路22に処理液体Lを排出させることができる。
【0045】
この場合も、図2のように連絡通路23が、下流側の排水処理装置1における撹拌手段10の筒状部材11と連通した構造とすれば、筒状部材11内において、混入された気泡と導入直後の処理液体Lとを確実に接触混合させることができるので、処理液体L中の亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸化して硫酸ナトリウムに変換する効率をさらに高くすることができる。
【0046】
なお、連絡通路23は、必ずしも下流側の排水処理装置1における撹拌手段10の筒状部材11と連通した構造となっていなくてもよい。例えば、図4に示すように、一端が連通開口に接続され、他端が下流側の酸化槽2の下部に配置された配管を設ければ、この配管を連絡通路23として機能させることができる。
【0047】
また、図5に示すように、連通開口に代えて、隣接する槽の間の壁面における下方に位置する部分に開口を設け、この開口に一端が接続され、他端が上流側の酸化槽2の基準液面に位置するように配管を設置して連絡通路23としてもよい。この場合でも、酸化槽2内の処理液体Lの液面が基準液面よりも高くなれば、処理液体Lが連絡通路23の上端から連絡通路23内に流入し、流入した処理液体Lは、下流側の酸化槽2の下部から下流側の酸化槽2内に流入させることができる。
【0048】
さらに、各酸化槽2は、処理液体Lの液面は全て同じ高さになるように設けてもよいが、下流側の酸化槽2になるにしたがって処理液体Lの液面低くなるようにしておけば、処理液体Lを処理する効率を向上させることできるので、好ましい。
【0049】
(処理液体Lの調整)
吸収塔などから排出された廃液を処理液体Lとする場合には、廃液をそのまま本実施形態の排水処理装置1に供給してもよいが、廃液を適切な状態に処理してから排水処理装置1に供給すれば、酸化処理の効率をさらに高めることができる。
【0050】
具体的には、液体供給通路21に、処理液体L中の亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムの濃度を低下させる濃度調整手段を設けたり、酸化槽2とは別に処理液体Lを希釈したりpHを調整する前処理槽を設けたりして、処理液体L中の亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムの濃度が所定の濃度以下となるように調整することが好ましい。かかる濃度調整手段において処理液体Lに水を添加して希釈すれば、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムの濃度が濃い場合に比べて、これらの物質を酸化処理する効率を向上させることができる。
【0051】
さらに、液体供給通路21に処理液体LのpHを調整するpH調整手段を設けたり、酸化槽2とはべつに処理液体LのpHを調整する調整槽を設けたりしてもよい。つまり、処理液体Lが、pHを所定の範囲に調整してから酸化槽2に供給されるようにしてもよい。この場合、処理液体LのpHが所定の範囲から外れている場合に比べて、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸化処理する効率を向上させることができる。
例えば、処理液体Lが、排気脱硫装置から排出される排ガスを処理する吸収塔から排出される廃液の場合であれば、処理液体LのpHを、7より大きく10未満、好ましくは、8以上9以下に調整すれば、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムを酸化処理する効率を向上させることができる。
【0052】
また、液体供給通路21に、処理液体Lを冷却する温度調整手段を設けて、処理液体Lを冷却してもよい。この場合でも、処理液体Lの温度が高い場合に比べて、亜硫酸ナトリウムや重亜硫酸ナトリウムなどの物質を酸化処理する効率を向上させることができる。
【0053】
もちろん、処理液体Lを希釈したり、pH調整や温度調整したりしなくても、上記状態になっているのであれば、濃度調整手段やpH調整手段、温度調整手段は設けなくてもよい。
【実施例1】
【0054】
本発明の排水処理装置による酸化処理の有効性を実験により確認した。
【0055】
実験は、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)を含有する処理液体を本発明の排水処理装置で処理する場合において、pHおよび温度が酸化処理に与える影響を確認した。
実験では、排水処理装置から排出される処理液体について、この処理液体に含まれる亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)および/または重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)の量を確認した。
【0056】
実験に使用した処理液体中の、硫酸ナトリウム(Na2SO4)、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)および重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)の濃度は、以下のとおりである。
硫酸ナトリウム(Na2SO4) :93g/L
亜硫酸ナトリウム(Na2SO3) :120g/L
重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3) :26g/L
【0057】
実験条件は、以下のとおりである。
(pH変動試験)
処理液体の温度:室温(25℃)
滞留時間:1時間
(温度変動試験)
処理液体のpH:pH9
滞留時間:1時間
【0058】
なお、硫酸ナトリウムおよび亜硫酸ナトリウムの量は、それぞれ以下の方法で測定した。
硫酸ナトリウム:沈澱重量法・・・A
亜硫酸ナトリウム:チオ硫酸ナトリウム逆滴定法・・・B
また、重亜硫酸ナトリウムは、以下の式で算出される硫黄の量Sを重亜硫酸ナトリウムに換算して算出した。
S=(ICP法で求めたTotal−硫黄の量)−(Aの硫黄の量+Bの硫黄の量)
【0059】
なお、Totalとは、ICP法(エスアイアイ・ナノテクノロジー社製ICP発光分光分析装置SPS3100)によって測定される、硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウムおよび重亜硫酸ナトリウムの硫黄量の総量である。
また、pHは、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(東亜電波工業製:HM-20J)、温度は、ガラス棒温度計によって測定した。
【0060】
実験結果を図6(A)、(B)に示す。
図6(A)に示すように、pHが7より大きく10未満の場合には、亜硫酸ナトリウムと重亜硫酸ナトリウムの両方を十分に減少させることができている。
一方、pHが7の場合には、両方の成分をほとんど減少させることができていない。
また、pHが10の場合には、重亜硫酸ナトリウムは減少させることができているものの、亜硫酸ナトリウムはほとんど減少させることができていない。
以上の結果より、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)を含有する処理液体を本発明の排水処理装置で処理する場合には、pHは、7より大きく10未満が好ましいことが確認できる。
【0061】
また、図6(B)に示すように、処理液体の温度が低くなるほど、亜硫酸ナトリウムを大きく減少させることができることが確認できる。
以上の結果より、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)を含有する処理液体を本発明の排水処理装置で処理する場合には、温度が低い方が好ましいことが確認できる。
【実施例2】
【0062】
実験は、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)、重亜硫酸ナトリウム(NaHSO3)を含有する処理液体を本発明の排水処理装置で処理する場合において、処理液体中の成分の濃度が酸化処理に与える影響を確認した。
実験では、処理後の処理液体について、この処理液体に含まれる亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の量を確認した。
【0063】
実験には、酸化槽を3つ有し、処理液体を連続処理することができる排水処理装置を使用した(図3〜5参照)。この排水処理装置では、上流側に位置する酸化槽(処理液体が外部から供給される酸化槽)がN0.1酸化槽(図2では左側の槽)であり、酸化処理後の液体を外部に排出する酸化槽がN0.3酸化槽(図2では右側の槽)であり、両者の間に配設される酸化槽がN0.2酸化槽(図2では真ん中の槽)である。
【0064】
実験に使用した処理液体中の、亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の濃度は、以下のとおりである。
(1)亜硫酸ナトリウム(Na2SO3) :240g/L
(2)亜硫酸ナトリウム(Na2SO3) :150g/L
(3)亜硫酸ナトリウム(Na2SO3) :50g/L
なお、(3)は、亜硫酸ナトリウムを100g/L含有する処理液体を、2倍に希釈して、上記濃度の液体としたものである。
【0065】
実験条件は、以下のとおりである。
処理液体の温度:洗浄塔 50 ℃、酸化槽 50〜60℃
処理液体のpH:洗浄塔 pH8.0、酸化槽 pH8.5
【0066】
なお、亜硫酸ナトリウムの量は、チオ硫酸ナトリウム逆滴定法によって測定し、pHは、ガラス電極式水素イオン濃度指示計(東亜電波工業製:HM-20J)、温度は、ガラス棒温度計によって測定した。
【0067】
実験結果を図7に示す。なお、図7において、NO.1、NO.2およびNO.3は、それぞれ上述したNO.1〜NO.3の酸化槽に対応しており、各槽の亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の濃度は、各槽から排出される処理液体中の濃度である。
図7に示すように、供給される処理液体中の亜硫酸ナトリウム(Na2SO3)の濃度が低くなるほど、亜硫酸ナトリウムの減少量を大きくすることができ、しかも、短時間で処理することができることが確認できる。
したがって、本発明の排水処理装置で処理する前に、処理液体を希釈することが有効であることが確認できる。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の排水処理装置は、吸収塔などから排出されるCOD(化学的酸素要求量)値を上昇させる成分を含む液体を処理する装置に適している。
【符号の説明】
【0069】
1 排水処理装置
2 酸化槽
10 撹拌手段
11 筒状部材
11c 吸気通路
12 回転軸
13 撹拌部材
21 液体供給通路
22 排出通路
L 処理液体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
液体に含まれる物質を酸化する装置であって、
液体を収容する酸化槽と、
該酸化槽内に配設された撹拌手段と、を備えており、
該撹拌手段は、
先端部が前記酸化槽内の前記液体に浸漬され、基端部が前記液体の液面よりも上方に位置するように配設された筒状部材と、
該筒状部材の内部に配設された回転軸と、
該回転軸における前記筒状部材の先端部側の端部に取り付けられた撹拌部材と、
前記筒状部材の内部に空気を導入し得る吸気通路と、を備えており、
前記撹拌部材は、
前記回転軸が回転すると、前記筒状部材の内部に、該筒状部材の基端から先端に向かう旋回流を形成し得る形状に形成されている
ことを特徴とする排水処理装置。
【請求項2】
前記筒状部材の先端部外面には、フランジ状の微細化プレートが設けられており、
該微細化プレートは、
該プレートを貫通する貫通孔が形成されており、
前記撹拌部材は、
外端が前記貫通孔の位置まで延びた撹拌翼を備えている
ことを特徴とする請求項1記載の排水処理装置。
【請求項3】
前記筒状部材の内部に、前記酸化槽外から前記液体を供給する液体供給通路を備えている
ことを特徴とする請求項1または2記載の排水処理装置。
【請求項4】
前記撹拌手段が設けられた前記酸化槽を複数備えており、
該複数の酸化槽は、
上流側に位置する酸化槽において処理された液体が、順次、下流側の酸化槽に供給されるように配設されており、
上流側に位置する酸化槽において処理された液体を、下流側の酸化槽における前記撹拌手段の撹拌部材近傍に供給する連絡通路を備えている
ことを特徴とする請求項1、2または3記載の排水処理装置。
【請求項5】
前記液体のpHを調整するpH調整手段を備えており、
該pH調整手段は、
前記液体のpHを、7より大きく10未満に調整するものである
ことを特徴とする請求項1、2、3または4記載の排水処理装置。
【請求項6】
液体を希釈する希釈手段を備えている
ことを特徴とする請求項1、2、3、4または5記載の排水処理装置。
【請求項7】
前記液体が、亜硫酸ナトリウムおよび/または重亜硫酸ナトリウムを含有する液体である
ことを特徴とする請求項1、2、3、4、5または6記載の排水処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−240012(P2012−240012A)
【公開日】平成24年12月10日(2012.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−114533(P2011−114533)
【出願日】平成23年5月23日(2011.5.23)
【出願人】(000183303)住友金属鉱山株式会社 (2,015)
【Fターム(参考)】