説明

排水弁駆動ユニット

【課題】操作レバーの設計上の制約を緩和することができ、ユニット交換の際に外観が変化しない、排水弁駆動ユニットを提供する。
【解決手段】本実施形態の排水弁駆動ユニット10は、水洗便器へ供給するための洗浄水Wを貯留する貯水タンク11に設置され、貯水タンク11内に設けられた排水弁12を開放するための作動軸13と、後述する駆動軸14および増速機構15などを介して作動軸13を回転駆動するため貯水タンク11の側面に設けられた操作レバー16と、を備えている。この排水弁駆動ユニット10には、貯水タンク11の壁体11aに開設された取付孔11bに操作レバー16を回転可能に保持した状態で取り付けられた操作ユニット10Xと、操作レバー16と連動する作動軸13を有し貯水タンク11内において操作ユニット10Xに着脱可能に連結された作動ユニット10Yと、が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水洗トイレ内に配置された貯水タンク内の洗浄水を手動操作または自動操作により水洗便器へ供給する機能を有する排水弁駆動ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水洗トイレには、水洗便器と、この水洗便器へ供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクとが配置されている。そして、貯水タンクに設けられた操作レバーを手動操作によって所定角度回転させると、貯水タンク内の排水弁が開いて、タンク内の洗浄水が水洗便器内へ供給されるようになっている。操作レバーの位置は特に決まっていないので、貯水タンクの正面に配置されたもの、あるいは貯水タンクの側面に配置されたものなどがある(例えば、特許文献1参照。)。また、トイレ使用者が水洗便器から離れたり、所定のボタン操作をしたりすると、操作レバーが自動的に操作されるものもある(例えば、特許文献2参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開平7−324362号公報
【特許文献2】特開2005−36634号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1,2に記載された排水弁駆動ユニットにおいては、操作レバーの回転操作によって回転する駆動軸が、貯水タンクの壁体に開設された取付孔に取り付けられ、その先端部は貯水タンク外面に突出している。このため、駆動軸に係止される操作レバーの回転中心部分は大径にならざるを得ず、設計上の制約となっている(特許文献1の図1、特許文献2の図17参照。)。
【0005】
また、特許文献1,2に記載された排水弁駆動ユニットは、操作レバーの回転力を駆動軸を経て作動軸に伝達するまで機構が一体化された構造であるため、手動式の排水弁ユニットと電動式の排水弁ユニットとの間で交換を行う場合、操作レバー部分を含むユニット全体を交換しなければならない。このため、操作レバー部分の外観が大きく変化し、違和感が生じることがある。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、操作レバーの設計上の制約を緩和することができ、ユニット交換の際に外観が変化しない、排水弁駆動ユニットを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の排水弁駆動ユニットは、水洗便器へ供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクに設置され、前記貯水タンク内に設けられた排水弁を開放するための作動軸と、前記作動軸を回転駆動するため前記貯水タンクの外面に配置された操作レバーと、を備えた排水弁駆動ユニットにおいて、
前記貯水タンクの壁体に開設された取付孔に前記操作レバーを回転可能に保持した状態で取り付けられた操作ユニットと、前記操作レバーと連動する前記作動軸を有し前記貯水タンク内において前記操作ユニットに着脱可能に連結された作動ユニットと、を設けたことを特徴とする。
【0008】
このような構成とすれば、貯水タンクの壁体の取付孔に取り付けられた操作ユニットと、貯水タンク内において前記操作ユニットに取り付けられた作動ユニットとによって構成された排水弁駆動ユニットとなる。このため、操作ユニットは操作レバーを回転可能に保持できれば良いものとなり、操作レバーの設計上の制約を緩和することができる。また、手動式の作動ユニットと電動式の作動ユニットとの間で交換を行う場合、操作ユニットはそのままで、作動ユニットのみを交換することが可能となるため、作動ユニット交換の際に外観も変化しない。
【0009】
ここで、前記操作ユニットは、前記貯水タンク外側から前記取付孔に挿入され先端部を貯水タンク内へ突出した状態で配置されたフランジ付きのブッシュと、前記フランジとの間に前記壁体を挟持するため前記ブッシュの外周に形成された雄ねじ部に螺合されたナットと、その軸部を前記ブッシュ内に挿入した状態で前記フランジ側に配置された操作レバーと、を備えたものとすることが望ましい。このような構成とすれば、従来の貯水タンクの取付孔を変更することなく、操作ユニットを貯水タンクの壁体に確実に取り付けることができ、取付作業も容易である。
【0010】
この場合、前記作動ユニットは、前記作動軸を前記操作レバーに連動させるための駆動軸と、前記駆動軸を包囲する軸受け部と、前記ブッシュ外周の雄ネジ部に螺合することにより前記軸受け部を前記ブッシュに連結するため前記軸受け部に回転可能に環装された袋ナットと、前記軸受け部からの前記袋ナットの脱落を防止するための袋ナット脱落防止部材と、を備えたものとすることが望ましい。ここで、環装とは、環状に取り付けることをいう。このような構成とすれば、袋ナットという簡素な部材で作動ユニットを操作ユニットに確実に取り付けることができ、着脱作業も容易である。
【0011】
ここで、袋ナット脱落防止部材は容易に組立・分解できるように、前記軸受け部に螺合可能な単一のストッパで構成することも可能であるが、そうすると、袋ナットを締め付けるときの回転摩擦力がストッパに伝わり、ストッパが緩むおそれがある。
【0012】
そこで、前記袋ナット脱落防止部材は、前記袋ナットの内側に係合し且つ前記軸受け部に対して回転不能に係止されるストッパと、前記ストッパの脱落を防止し且つ前記軸受け部と螺合可能な止めナットと、を備えたものとすることが望ましい。このような構成とすれば、袋ナットを締め付けるとき、袋ナットの回転摩擦力は前記軸受け部に対して回転不能に係止されたストッパによって遮断されるので、前記袋ナットは緩むことがなく、作動ユニットの取付状態を安定化することができる。
【0013】
また、前記操作レバーの回転操作によって前記作動ユニットに加わる回転反力を前記ブッシュに伝達するため、前記軸受け部と前記ブッシュとを係合する係合手段を設けることもできる。このような構成とすれば、操作レバーの回転操作時に作動ユニットに加わる回転反力は、貯水タンクの壁体の取付孔に取り付けられたブッシュに伝達され、貯水タンク全体に分散されるため、前記回転反力が作動ユニットと操作ユニットとの連結部分などの特定箇所に集中するのを回避することができ、前記回転反力による部材の損傷を無くすことができる。
【0014】
さらに、前記操作レバーの回転角度を一定角度に設定するための規制手段を前記操作レバーと前記ブッシュとの間に着脱可能に設けることもできる。このような構成とすれば、作動ユニットの交換により、操作ハンドルの操作角度が変化したような場合、規制手段の着脱によって対応することが可能となるため、汎用性が高まる。
【発明の効果】
【0015】
本発明により、操作レバーの設計上の制約を緩和することができ、ユニット交換の際に外観が変化しない、排水弁駆動ユニットを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面に基づいて、本発明の実施の形態について説明する。図1は本発明の実施の形態である排水弁駆動ユニットを組み込んだ貯水タンク内部を示す平面図、図2は図1におけるA−A線断面図、図3は図1におけるB−B線断面図、図4は図3の一部拡大図、図5は図4に示す作動ユニットの分解斜視図、図6は図3に示す排水弁駆動ユニットから作動ユニットを取り外した状態を示す断面図、図7は図3に示す排水弁駆動ユニットから操作レバーを取り外した状態を示す断面図、図8は図7において矢印C方向から見た図、図9は図1に示す排水弁駆動ユニットを構成する操作レバーの斜視図である。
【0017】
図1〜図3に示すように、本実施形態の排水弁駆動ユニット10は、水洗便器(図示せず)へ供給するための洗浄水Wを貯留する貯水タンク11に設置され、貯水タンク11内に設けられた排水弁12を開放するための作動軸13と、後述する駆動軸14および増速機構15などを介して作動軸13を回転駆動するため貯水タンク11の側面に設けられた操作レバー16と、を備えている。この排水弁駆動ユニット10には、貯水タンク11の壁体11aに開設された取付孔11bに操作レバー16を回転可能に保持した状態で取り付けられた操作ユニット10Xと、操作レバー16と連動する作動軸13を有し貯水タンク11内において操作ユニット10Xに着脱可能に連結された作動ユニット10Yと、が設けられている。
【0018】
操作ユニット10Xは、貯水タンク11の外側から取付孔11bに挿入され先端部を貯水タンク11内へ突出した状態で配置されたフランジ24b付きのブッシュ24と、フランジ24bとの間に壁体11aを挟持するためブッシュ24の外周に形成された雄ねじ部24aに螺合された六角ナット28と、その筒状軸部16aをブッシュ24内に挿入した状態でフランジ24b側に配置された操作レバー16と、を備えている。
【0019】
作動ユニット10Yは、作動軸13を操作レバー16の筒状軸部16aに連動させるための駆動軸14と、駆動軸14を包囲する軸受け部15aと、ブッシュ24外周の雄ネジ部24aに螺合することにより軸受け部15aをブッシュ24に連結するため軸受け部15aに回転可能に環装された袋ナット25と、袋ナット25が軸受け部15aから脱落するのを防止するためのストッパ30と、ストッパ30を固定する止めナット29と、を備えている。図4に示すように、袋ナット25は、大口径部25aと小口径部25bとを有している。また、図5に示すように、ストッパ30は略円筒形状をしており、その一方の端部に鍔部30bが設けられ、内周部にはリブ30aが設けられている。そして、軸受け部15aの外面には溝15cが設けられ、ストッパ30を軸受け部15aに装着したとき、リブ30aが溝15cに嵌合されて軸受け部15aとストッパ30とが相対的に回転しないように係止される。
【0020】
また、軸受け部15aの外周面には雄ネジ部(図示せず)が形成されており、止めナット29を、連結部14a側から前記雄ネジ部に螺合させストッパ30を増速機構15側に移動するように押圧することによってストッパ30が固定される。図4に示すように、ストッパ30および止めナット29は袋ナット25の内側に収容された状態で軸受け部15aに装着されている。そして、袋ナット25の小口径部25bの連結部14a側への移動がストッパ30の鍔部30bで規制されることにより、軸受け部15aからの袋ナット25の脱落を防止している。袋ナット25は、図4に示す状態から増速機構15に当接するまでの範囲で移動可能となっている。また、ブッシュ24内部への水浸入を防止するため、止めナット29とブッシュ24との間にはワッシャ31およびパッキン32が介在されている。
【0021】
一方、操作レバー16と作動軸13との間には増速機構15が配置され、この増速機構15は、操作レバー16の回転角度よりも作動軸13の回転角度を増大させる機能を有している。作動軸13の先端には、当該作動軸13とともに回転するアーム20が取り付けられ、アーム20と排水弁12とが玉鎖21によって連係されている。排水弁12は支軸22を中心に起立・倒伏することによって排水口23を開閉する。
【0022】
図3,図4に示すように、排水弁駆動ユニット10においては、増速機構15に突設された軸受け部15aに対してブッシュ24が係合され、軸受け部15aに環装された袋ナット25をブッシュ24外周の雄ネジ部24aに螺着させることによって、軸受け部15aとブッシュ24とが着脱可能に接続されている。また、ブッシュ24の先端側から差し込んだ操作レバー16の筒状軸部16aが駆動軸14の端部に着脱可能に係合され、筒状軸部16a内に挿入した固定ネジ26を駆動軸14の端部に螺着することによって操作レバー16と筒状軸部16aと駆動軸14とが着脱可能に連結されている。
【0023】
ブッシュ24の操作レバー16側の端部にはフランジ24bが形成され、ブッシュ24の雄ネジ部24aには傾斜ワッシャ27が環装されるとともに六角ナット28が螺合されている。また、増速機構15の軸受け部15a反対側には作動側歯車18の回転軸18aが突設され、この回転軸18aに作動軸13の基端部が着脱可能に連結されている。
【0024】
排水弁駆動ユニット10は、貯水タンク11の側壁11aに開設された取付孔11bに対し、貯水タンク11外側からブッシュ24の雄ネジ部24aを挿入し、貯水タンク11の内側から雄ネジ部24aに傾斜ワッシャ27を環装し、六角ナット28を締め付け、フランジ24bと六角ナット28との間に側壁11aを狭持することによって固定されている。
【0025】
図4,図5および図8に示すように、作動ユニット10Yの軸受け部15aから突出する駆動軸14の先端には四角柱状の連結部14aが突設され、連結部14aの先端面には軸心方向のネジ孔14bが開設されている。また、図6,図9に示すように、操作レバー16の筒状軸部16a内の先端寄りの部分にはネジ孔16cを有する隔壁16bが設けられ、この隔壁16bから先には駆動軸14の連結部14aが嵌入可能な四角形の連結孔16dが設けられている。従って、図3に示すように、操作レバー16の筒状軸部16aの先端にある連結孔16d内に、駆動軸14の連結部14aを嵌入し、操作レバー16の筒状軸部16aの基端側から固定ネジ26を差し込み、隔壁16bのネジ孔16cを貫通させ、駆動軸の連結部14aのネジ孔14bに螺着すれば、操作レバー16の筒状軸部16aと、駆動軸14とが一体的に連結される。なお、固定ネジ26を螺着した後、筒状軸部16aの基端開口は着脱可能な蓋16fによって閉塞される。
【0026】
また、図8に示すように、操作レバー16の回転操作によって作動ユニット10Yに加わる回転反力をブッシュ24に伝達するために、軸受け部15aとブッシュ24とを係合する係合手段として、軸受け部15aの先端の一部に軸心方向に突設された係止片15bと、ブッシュ24の内周面から軸心に向かって突設された二つの係止片24cとを設けている。操作ユニット10Xに作動ユニット10Yを連結したとき、軸受け部15aの係止片15bが、ブッシュ24の内周面の二つの係止片24cの間に狭持されるため、操作レバー16の回転操作によって作動ユニット10Yに加わる回転反力がブッシュ24に伝達される。
【0027】
さらに、排水弁駆動ユニット10の操作レバー16の回転角度を一定角度(本実施形態では45度)に設定するための規制手段として、図8に示すように、ブッシュ24の内周面に軸心方向に突出したストッパ24dを設けるとともに、図9に示すように操作レバー16の筒状軸部16aの外周にセグメント形状のアダプタ16eを着脱可能に取り付けている。ブッシュ24内に配置された筒状軸部16aは、その外周のアダプタ16eがブッシュ24の内周面のストッパ24dに当接する位置まで回転可能である。
【0028】
本実施形態の排水弁駆動ユニット10は、貯水タンク11の壁体11aの取付孔11bに取り付けられた操作ユニット10Xと、貯水タンク11内において操作ユニット10Xに取り付けられた作動ユニット10Yとによって構成されている。このため、操作ユニット10Xは操作レバー16を回転可能に保持できれば良いものとなり、操作レバー16の設計上の制約を大幅に緩和することができる。
【0029】
また、操作ユニット10Xは、貯水タンク11の取付孔11bを変更することなく、その壁体11に確実に取り付けることができ、取付作業も容易である。この場合、袋ナット25という簡素な部材で作動ユニット10Yを操作ユニット10Xに確実に取り付けることができ、着脱作業も容易である。
【0030】
一方、袋ナット25は止めナット29およびストッパ30により作動ユニット10Yに係合されており、袋ナット25を操作ユニット10Xに螺合させる場合、袋ナット25の回転摩擦力は、回転不能なストッパ30により遮断されるため、止めナット29が緩むことはない。
【0031】
また、操作レバー16の回転操作時に作動ユニット10Yに加わる回転反力は、係止片15b,24cを介して、貯水タンク11の壁体11aの取付孔11bに取り付けられたブッシュに伝達され、貯水タンク11全体に分散されるため、前記回転反力が作動ユニット10Yと操作ユニット10Xとの連結部分などの特定箇所に集中するのを回避することができ、前記回転反力による部材の損傷を無くすことができる。
【0032】
実際に排水弁駆動ユニット10を貯水タンク11に取り付ける場合は、分解して単独状態にあるブッシュ24の雄ネジ部24aを貯水タンク11の外側から取付孔11bに差し込み、内側から雄ネジ部24aに傾斜ワッシャ27を環装するとともに六角ナット28を締め付けることによってブッシュ24を側壁11aの取付孔11bに固定する。そして、袋ナット25を介して増速機構15をブッシュ24に連結した後、貯水タンク11の外からブッシュ24内に操作レバー16の筒状軸部16aを差し込み、筒状軸部16a内に挿入した固定ネジ26を駆動軸14の端部に螺着する。
【0033】
増速機構15は、操作レバー16と連結された駆動軸14と連動回転する駆動側歯車17と、駆動側歯車17と歯合した状態で作動軸13に連設された作動側歯車18とで構成され、作動側歯車18の歯数は駆動側歯車17の歯数より少なく設定されている。作動側歯車18と駆動側歯車17との歯数比は特に限定するものではないが、本実施形態では、この歯数比を1:2としているため、操作レバー16を回転操作したとき、操作レバー16の回転角度に対して作動軸13はその2倍の角度回転することとなる。また、作動側歯車18および駆動側歯車17はいずれも平歯車を用いている。
【0034】
また、手動操作により操作レバー16に加えた回転力を解除したときに、操作レバー16を元の姿勢に復帰させる自動復帰手段として、増速機構15内に、操作レバー16を復帰させる回転方向に駆動側歯車17を付勢するコイルスプリング19を設けている。待機状態において、操作レバー16は水平姿勢を保っており、この操作レバー16を押し下げる方向に回転させると、その回転が駆動軸14および増速機構15を介して作動軸13に伝達される。そして、作動軸13の先端に固定されたアーム20が回転して玉鎖21が引き上げられ、これによって排水弁12が起立方向へ回転して排水口23が開放され、貯水タンク11内の洗浄水Wが水洗便器(図示せず)に向かって供給される。
【0035】
アーム20を回転させて玉鎖21を引き上げることによって排水弁12を開放するためには、アーム20が固定されている作動軸13を約90度回転させる必要があるが、本実施形態では、作動軸13と駆動軸14との間に、2倍の増速機能を有する増速機構15を設けているため、駆動軸14を45度回転させれば作動軸13が90度回転し、排水弁12を開放することができる。従って、操作レバー16の操作範囲を水平姿勢から垂下方向へ45度回転させるだけで十分な洗浄水を供給可能となり、前記操作範囲を水平姿勢から垂下姿勢の範囲内に収めることができる。
【0036】
本実施形態の排水弁駆動ユニット10は、操作レバー16を回転操作したとき、増速機構15の働きにより、操作レバーの回転角度より大きな回転角度で作動軸を回転させることが可能となる。即ち、操作レバー16を小さく回転操作するだけで作動軸は大きく回転し、従来通り、洗浄水の開放弁を開放することができるため、操作レバー16の操作性は良好である。また、操作レバー16が必要とする操作範囲(回転角度)を縮小することができるので、操作レバー16に関する設計上の制約も軽減することができる。
【0037】
このように、増速機構15は極めてシンプルな構造であるため、占有スペースの増大を回避することができ、耐久性も良好である。また、駆動側歯車17と作動側歯車18との歯数比を変更することで増速比率を任意に設定することができるため、設計上の自由度も確保することができる。
【0038】
また、増速機構15内には、駆動側歯車17を操作レバー16の復帰方向に付勢するためのコイルスプリング19を設けているため、操作レバー16を回転操作した後、そのまま手を離すだけで操作レバー16は元の位置(水平姿勢)に復帰するので、操作性に優れており、操作レバー16の戻し忘れ(不完全復帰)などによる、洗浄水Wの漏出も防止することができる。
【0039】
さらに、操作レバー16の操作範囲を水平姿勢から垂下方向へ約45度回転させるだけで排水弁12を開放することもできるため、操作レバー16に対して重力方向に軽く力を加えて少し回転させる、という人間の手にとって極めて容易な動きによって操作レバー16を操作可能であり、操作性は極めて良好である。
【0040】
次に、図10〜図12を参照して、その他の実施の形態について説明する。図10はその他の実施の形態である排水弁駆動ユニットを示す一部省略断面図、図11は図10に示す排水弁駆動ユニットを構成する作動ユニットを示す一部省略断面図、図12は図10に示す排水弁駆動ユニットを構成する操作レバーの斜視図である。なお、図10〜図12において図1〜図9に示す符号と同じ符号を付している部分は前述した排水弁駆動ユニット10の構成部分と同じ構造、機能を有する部分であるため説明を省略する。
【0041】
本実施形態の排水弁駆動ユニット50は、図1〜図9に示す排水弁駆動ユニット10を構成する手動式の作動ユニット10Yの代わりに電動式の作動ユニット10Zを操作ユニット10Xに取り付けたものである。通常、作動ユニット10Zを構成する電動機構35に内蔵されたモータ(図示せず)によって作動軸13が回転するため、操作レバー36を回転操作する必要はないが、停電などの緊急事態の際には、操作レバー36を手動操作で回転させれば、貯水タンク11内の開閉弁(図示せず)を開放することができる。
【0042】
本実施形態の場合、電動機構35内に増速機能は設けられていないため、操作レバー36の回転角度と作動軸13の回転角度とは同じである。従って、作動軸13を90度させるためには操作レバー36を90度回転させる必要がある。そこで、図12に示す本実施形態の操作レバー36は、図9で示した操作レバー16の筒状軸部16aの外周に装着されていたアダプタ16eを取り外した構造となっている。これにより、図9に示す操作レバー16では45度までに制限されていた回転角度が90度まで回転可能となるため、作動軸13を90度まで回転させることができる。
【0043】
このように、作動ユニット10Yを作動ユニット10Zに交換したことにより、操作レバー36の操作角度を変化させる必要がある場合、角度規制手段であるアダプタ16e(図9参照)の着脱によって対応可能であるため、汎用性に優れている。
【0044】
また、手動式の作動ユニット10Yと電動式の作動ユニット10Zとの間で交換を行う場合、操作ユニット10Xはそのままで、作動ユニット10Y,10Zのみを交換することができるため、作動ユニット交換の際に外観が変化しないという優れた特長がある。その他の部分の構造、機能などは前述した開閉弁駆動ユニット10と同様である。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明の排水弁駆動ユニットは、一般住宅の水洗トイレあるいは公共施設の水洗トイレなどにおいて広く利用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態である排水弁駆動ユニットを組み込んだ貯水タンク内部を示す平面図である。
【図2】図1におけるA−A線断面図である。
【図3】図1におけるB−B線断面図である。
【図4】図3に示す排水弁駆動ユニットを構成する作動ユニットの断面図である。
【図5】図4に示す作動ユニットの分解斜視図である。
【図6】図3に示す排水弁駆動ユニットから作動ユニットを取り外した状態を示す断面図である。
【図7】図3に示す排水弁駆動ユニットから操作レバーを取り外した状態を示す断面図である。
【図8】図7において矢印C方向から見た図である。
【図9】図1に示す排水弁駆動ユニットを構成する操作レバーの斜視図である。
【図10】その他の実施形態である排水弁駆動ユニットを示す一部省略断面図である。
【図11】図10に示す排水弁駆動ユニットを構成する作動ユニットを示す一部省略断面図である。
【図12】図10に示す排水弁駆動ユニットを構成する操作レバーの斜視図である。
【符号の説明】
【0047】
10,50 排水弁駆動ユニット
10X 操作ユニット
10Y,10Z 作動ユニット
11 貯水タンク
11a 側壁
11b 取付孔
11c 上縁部
12 排水弁
13 作動軸
14 駆動軸
14a 連結部
14b,16c ネジ孔
15 増速機構
15a 軸受け部
15b,24c 係止片
16,36 操作レバー
16a 筒状軸部
16b 隔壁
16d 連結孔
16e アダプタ
16f 蓋
17 駆動側歯車
18 作動側歯車
18a 回転軸
19 コイルスプリング
20 アーム
21 玉鎖
22 支軸
23 排水口
24 ブッシュ
24a 雄ネジ部
24b フランジ
25 袋ナット
25a 大口径部
25b 小口径部
26 固定ネジ
27 傾斜ワッシャ
28 六角ナット
29 止めナット
30,24d ストッパ
30b 鍔部
31 ワッシャ
32 パッキン
35 電動機構
C 矢印
W 洗浄水

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水洗便器へ供給するための洗浄水を貯留する貯水タンクに設置され、前記貯水タンク内に設けられた排水弁を開放するための作動軸と、前記作動軸を回転駆動するため前記貯水タンクの外面に配置された操作レバーと、を備えた排水弁駆動ユニットにおいて、
前記貯水タンクの壁体に開設された取付孔に前記操作レバーを回転可能に保持した状態で取り付けられた操作ユニットと、前記操作レバーと連動する前記作動軸を有し前記貯水タンク内において前記操作ユニットに着脱可能に連結された作動ユニットと、を設けたことを特徴とする排水弁駆動ユニット。
【請求項2】
前記操作ユニットが、前記貯水タンク外側から前記取付孔に挿入され先端部を貯水タンク内へ突出した状態で配置されたフランジ付きのブッシュと、前記フランジとの間に前記壁体を挟持するため前記ブッシュの外周に形成された雄ねじ部に螺合されたナットと、その軸部を前記ブッシュ内に挿入した状態で前記フランジ側に配置された操作レバーと、を備えたことを特徴とする請求項1記載の排水弁駆動ユニット。
【請求項3】
前記作動ユニットが、前記作動軸を前記操作レバーに連動させるための駆動軸と、前記駆動軸を包囲する軸受け部と、前記ブッシュ外周の雄ネジ部に螺合することにより前記軸受け部を前記ブッシュに連結するため前記軸受け部に回転可能に環装された袋ナットと、前記軸受け部からの前記袋ナットの脱落を防止するための袋ナット脱落防止部材と、を備えたことを特徴とする請求項2記載の排水弁駆動ユニット。
【請求項4】
前記袋ナット脱落防止部材が、前記袋ナットの内側に係合し且つ前記軸受け部に対して回転不能に係止されるストッパと、前記ストッパの脱落を防止し且つ前記軸受け部と螺合可能な止めナットと、を備えたことを特徴とする請求項3記載の排水弁駆動ユニット。
【請求項5】
前記操作レバーの回転操作によって前記作動ユニットに加わる回転反力を前記ブッシュに伝達するため、前記軸受け部と前記ブッシュとを係合する係合手段を設けたことを特徴とする請求項2〜4のいずれかに記載の排水弁駆動ユニット。
【請求項6】
前記操作レバーの回転角度を一定角度に設定するための規制手段を前記操作レバーと前記ブッシュとの間に着脱可能に設けたことを特徴とする請求項2〜5のいずれかに記載の排水弁駆動ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2007−120260(P2007−120260A)
【公開日】平成19年5月17日(2007.5.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−317585(P2005−317585)
【出願日】平成17年10月31日(2005.10.31)
【出願人】(000010087)東陶機器株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】