説明

排水暗渠形成装置

【課題】ガイド溝形成作業と排水暗渠形成作業が同一の装置で実施可能であり且つ掘削体がガイド溝に沿ってスムーズに進むことが可能な排水暗渠形成装置を提供する。
【解決手段】ガイド溝を形成した後に暗渠排水管を送り出しながら敷設される可撓性を有する暗渠排水管を疎水材で覆う暗渠排水形成装置において、暗渠排水管の上に疎水材を投入する疎水材疎水材投入シュート2と、土壌を切り開いて溝を形成する掘削体3が一体に設けられるとともに、掘削体3の後部に暗渠排水管を案内して溝内に繰り出す管状の暗渠排水管案内部13が設けられ、掘削体上部にバックホーのアームに取り付ける取付部材5が、掘削体3の向きを180度反対位置に回転可能な回転部6を介して接続されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圃場の排水暗渠形成予定位置にあらかじめガイド溝を形成し、その後、暗渠排水管を敷設しながら暗渠排水管の上に疎水材を被覆して排水暗渠を形成する排水暗渠形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
暗渠排水管敷設装置を使用して暗渠排水管を圃場の地中に敷設し、この暗渠排水管の上に疎水材を被覆して形成した暗渠排水を介して圃場からの排水を行ったり、圃場の地下水位を制御したりすることが行われている。
【0003】
暗渠排水管敷設装置として、例えば、特許文献1には、通水パイプ埋設溝の掘削部と、この掘削部で形成した通水パイプ埋設溝の底部に向けて通水パイプを送り出す通水パイプガイド部と、通水パイプガイド部から溝底部に送り出された通水パイプの上部に疎水材を投入する疎水材投入部とを備えた排水暗渠形成装置が記載されている。
【0004】
図7に示すように、排水暗渠形成装置を使用して排水暗渠を形成する前に、あらかじめ通水パイプ埋設溝の溝幅以下の溝幅を有するガイド溝21を形成する。ガイド溝21は、バックホー22に設けられているアーム23の先端にガイド溝形成用のブレードを備えた掘削具24を用いて形成する。排水暗渠形成予定位置の土中に含まれる石がガイド溝を形成するときにブレードによりガイド溝の左右いずれかに移動するので、ガイド溝に続く通水パイプ埋設溝の掘削形成を石に邪魔されずに容易に行えるとともに、土中の石を地表面に浮き上がらせることがないので、耕作作業に悪影響を与えることもない。
【0005】
その後、排水暗渠形成装置をガイド溝に沿って移動させて溝底部に通水パイプを送り出し、通水パイプの上に疎水材を投入して排水暗渠を形成する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−002400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
前記特許文献1に記載の方式においては、ガイド溝を形成するための掘削具を装着したバックホーと、排水暗渠を形成するための排水暗渠形成装置を装着したブルドーザーなどの牽引車を個別に用意する必要がある。あるいは、掘削具と排水暗渠形成装置を1台のバックホーのアームに装着して作業する場合、ガイド溝形成作業あるいは排水暗渠形成が終了した後に、掘削具あるいは排水暗渠形成装置を外して交換しなければならないため、作業に手間がかかるという欠点がある。
【0008】
また、ガイド溝に沿って排水暗渠形成装置を押していく場合、掘削具がガイド溝からずれると、掘削具が作業車に固定されているためにガイド溝に沿って進まなくなってたびたび作業が中断して作業能率が悪い、という問題があった。
【0009】
そこで、本発明は、ガイド溝形成作業と排水暗渠形成作業が同一の装置で実施可能であり且つ掘削体がガイド溝に沿ってスムーズに進むことが可能な排水暗渠形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の排水暗渠形成装置は、ガイド溝を形成した後に暗渠排水管を送り出しながら敷設される可撓性を有する暗渠排水管を疎水材で覆う暗渠排水形成装置において、暗渠排水管の上に疎水材を投入する疎水材投入シュートと、土壌を切り開いて溝を形成する掘削体が一体に設けられるとともに、掘削体の後部に暗渠排水管を案内して溝内に繰り出す管状の暗渠排水管案内部が設けられ、掘削体上部にバックホーのアームに取り付ける取付部材が、掘削体の向きを180度反対位置に回転可能な回転部を介して接続されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の暗渠排水形成装置は、単一の装置でガイド溝と暗渠排水を形成することができるので、ガイド溝形成装置と暗渠排水形成装置を個別に用意する必要がなく、あるいは、ガイド溝形成装置と暗渠排水形成装置を交換する作業もなくなる。
【0012】
また、本発明は、切削体がバックホーのアームに対して回転自在であるため、切削体が抵抗を受けてもガイド溝に沿って回動するので、スムーズに進むことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の暗渠排水形成装置の側面図である。
【図2】本発明の暗渠排水形成装置の正面図である。
【図3】本発明の暗渠排水形成装置の回転部分を示す図である。
【図4】本発明の暗渠排水形成装置の斜視図である。
【図5】本発明の暗渠排水形成装置でガイド溝を形成する状態を示す図である。
【図6】本発明の暗渠排水形成装置で疎水材を投入する状態を示す図である。
【図7】従来の掘削具でガイド溝を形成する状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例】
【0015】
図1〜図4において、暗渠排水形成装置1は、疎水材投入シュート2と切削体3を備え、これらが一体に形成されている。
【0016】
疎水材投入シュート2の上部には疎水材を貯留するホッパー4が形成されている。疎水材投入シュート2から、疎水材(例えば、もみ殻、木材チップ)が溝内に敷設された暗渠排水管の上に投入される。
【0017】
土を掘削して溝を形成する切削体3の上部にバックホー17のアーム18(図5)に取り付ける取付部材5が設けられている。取付部材5と切削体4は回転可能に接続されている。取付部材5はリンク機構を介してバックホーのアームに接続され、リンク機構を作動させて暗渠排水管形成装置1を所定のレベルに保持して所定の掘削深さを維持する。
【0018】
取付部材5と切削体3は回転機構6を介して回転可能に接続される。回転機構は、例えば、回転部6の下部を切削体3に固定し、回転部6の上部に形成した凸部7に摺動板8を固定する。取付部材5には凸部7が入る凹部9が形成され、この凹部9の内周に形成した摺動溝10内に摺動板8を摺動可能に支持することにより取付部材5と切削体3を回転可能に接続することができる。切削体3は、ガイド溝を形成する際には、ボルトなどの留め具で固定して回転できないようにする。
【0019】
掘削体3は、前縁に掘削刃11が形成され、その下端部に掘進部材12が取付けられている。掘削体3の前進により掘進部材12が掘進するとともに、掘削刃11により土壌が切り開かれてガイド溝19(図5)が形成されていく。
【0020】
掘削体3の後部には、可撓性を有する暗渠排水管16(図6)を、掘削体3により形成された溝の底に連続的に繰り出して敷設していくために、暗渠排水管を案内する湾曲した管状の暗渠排水管案内部13が上下方向に形成されている。暗渠排水管案内部13に暗渠排水管がリールから巻き戻されて導入される。
【0021】
暗渠排水管案内部13の下端には、縦溝内に繰り出される暗渠排水管を上から押さえて縦溝の底部に圧着するために、管押さえローラ14が配置されている。管押さえローラ14は、暗渠排水管の径の大小に応じて昇降させてレベルの調整が可能となっている。
【0022】
暗渠排水管形成装置1にはレーザ受光器用マスト15が立設されており、圃場内のレーザ発行器から発するレーザによりレベルが測定され、暗渠排水管形成装置1が一定レベルに保持されるようにリンク機構を作動させて地中貫入深さが制御される。
【0023】
本発明の暗渠排水形成装置の使用方法について説明する。
【0024】
図5に示すように、バックホー17のアーム18に暗渠排水管形成装置1の取付部材5を装着する。ガイド溝19を形成するため、掘削体3の掘削刃をバックホー側に回転させて固定する。その後、排水暗渠形成予定位置に暗渠排水管形成装置1を降ろし、バックホーで17牽引して掘削体3でガイド溝19を形成する。土中に含まれる石はガイド溝19を形成するときにガイド溝の左右いずれかに移動するので、ガイド溝に続く通水パイプ埋設溝の掘削形成を石に邪魔されずに容易に行えるとともに、土中の石を地表面に排出することがないので、耕作作業に影響を与えることもなくない。
【0025】
図6に示すように、掘削体3でガイド溝19を形成した後に、留め具を外して掘削体3と疎水材投入シュートを180度回転させることにより掘削体3をバックホー17の反対側に向ける。
【0026】
疎水材投入シュート2のホッパーに疎水材20を貯留した後、バックホー17で暗渠排水管形成装置1を押していく。掘削体3はガイド溝19に沿って前進する。
【0027】
掘削体3の前進により掘進部材12が掘進するとともに、掘削刃11によりガイド溝19が切り開かれていく。これとともに、可撓性を有する暗渠排水管16が管状の暗渠排水管案内部13に導入されて溝の底に連続的に繰り出して敷設していく。さらに疎水材投入シュート2から疎水材20が投入されて暗渠排水管16の上を被覆していく。暗渠排水形成装置1を押していく際に、暗渠排水管形成装置1は、バックホー17に対して回転自在の状態になっているので、ガイド溝19に倣ってスムーズに進行して作業が中断することもないので、効率よく暗渠排水を形成することが可能となる。
【符号の説明】
【0028】
1:暗渠排水形成装置
2:疎水材投入シュート
3:切削体
4:ホッパー
5:取付部材
6:回転部
7:凸部
8:摺動板
9:凹部
10:摺動溝
11:掘削刃
12:掘進部材
13:暗渠排水管案内部
14:管押さえローラ
15:レーザ受光器用マスト
16:暗渠排水管
17:バックホー
18:アーム
19:ガイド溝
20:疎水材
21:ガイド溝
22:バックホー
23:アーム
24:掘削具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガイド溝を形成した後に暗渠排水管を送り出しながら敷設される可撓性を有する暗渠排水管を疎水材で覆う暗渠排水形成装置において、
暗渠排水管の上に疎水材を投入する疎水材投入シュートと、土壌を切り開いて溝を形成する掘削体が一体に設けられるとともに、掘削体の後部に暗渠排水管を案内して溝内に繰り出す管状の暗渠排水管案内部が設けられ、
掘削体上部にバックホーのアームに取り付ける取付部材が、掘削体の向きを180度反対位置に回転可能な回転部を介して接続されていることを特徴とする暗渠排水形成装置。
【請求項2】
回転部が回転部材の上部に形成した凸部が入る凹部が取付部材に形成され、凹部の内周に形成した摺動溝内に凸部に設けた摺動板が摺動可能に支持されていることを特徴とする請求項1記載の暗渠排水形成装置。
【請求項3】
ガイド溝を形成する際に、切削体の回転を阻止する留め具を備えたことを特徴とする請求項1又は2記載の暗渠排水形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−174339(P2011−174339A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−40810(P2010−40810)
【出願日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【出願人】(508320941)キャタピラー九州株式会社 (8)
【出願人】(596029085)株式会社パディ研究所 (28)