説明

排水汚泥乾燥装置

【課題】排水汚泥の乾燥処理に必要なエネルギ消費量を低減することができる排水汚泥乾燥装置を提供すること。
【解決手段】排水汚泥乾燥装置1は、排水汚泥2を収容及び排出可能に構成される収容室3と、収容室3に収容された排水汚泥2にマイクロ波4を照射して排水汚泥2を加熱するマイクロ波照射手段5,3cと、排水汚泥2から発生する水蒸気6を収容室3の外部に排出する水蒸気排出部7と、水蒸気排出部7に接続され、水蒸気6の熱を排水汚泥2に供給する熱供給手段8と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火力発電所等の発電設備の排水処理設備から排出される排水汚泥を乾燥する排水汚泥乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、火力発電所には、所内の各設備から排出される排水を一括処理する排水処理設備が設けられている。この排水処理設備は、通常、凝集沈殿方式により排水中の不純物(有害物)を濾過して除去し、不純物が除去された水を中和してから発電所の外部に排出する。
【0003】
ところで、除去した不純物(以下、排水汚泥という)は、多量の水分を含んでいる。排水汚泥を廃棄物として処理する場合、重量が増加するほど処理費用も増大する。そのため、排水汚泥は、通常、所定の含水率まで脱水処理され、重量が低減された後、廃棄物として埋め立て処理されていた。
【0004】
このような排水汚泥を乾燥させる従来技術として、マイクロ波を用いた排水汚泥乾燥装置が知られている(例えば、特許文献1,2,3参照)。これらの排水汚泥乾燥装置によれば、マイクロ波が排水汚泥の内部の水分に直接作用する。そのため、排水汚泥から水分が蒸発し易く、加熱効率がよい、とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−31500号公報
【特許文献2】特開平11−94463号公報
【特許文献3】実開平6−11900号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献に記載の技術においては、排水汚泥の加熱によって排水汚泥から発生する水蒸気の熱エネルギは、回収されずに廃棄されていた。そのため、排水汚泥から発生する水蒸気の熱エネルギを回収し、これを排水汚泥を加熱する際に再利用することにより、排水汚泥の乾燥処理に必要なエネルギ消費量を低減することができる排水汚泥乾燥装置の提供が望まれていた。
【0007】
本発明は、排水汚泥の乾燥処理に必要なエネルギ消費量を低減することができる排水汚泥乾燥装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、排水処理設備から排出される排水汚泥を収容及び排出可能に構成される収容室と、前記収容室に収容された前記排水汚泥にマイクロ波を照射して該排水汚泥を加熱するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波の照射による加熱によって前記排水汚泥から発生する水蒸気を前記収容室の外部に排出する水蒸気排出部と、前記水蒸気排出部に接続され、前記水蒸気の熱を前記排水汚泥に供給する熱供給手段と、を備える排水汚泥乾燥装置に関する。
【0009】
また、本発明は、排水処理設備から排出される排水汚泥を収容及び排出可能に構成される収容室と、前記収容室に収容された前記排水汚泥にマイクロ波を照射して該排水汚泥を加熱するマイクロ波照射手段と、前記マイクロ波の照射による加熱によって前記排水汚泥から発生する水蒸気を前記収容室の外部に排出する水蒸気排出部と、前記収容室に連通して設けられ、該収容室に収容される前の前記排水汚泥を予め加熱する予備加熱室と、前記水蒸気排出部に接続され、前記水蒸気の熱を前記予備加熱室の前記排水汚泥に供給する熱供給手段と、前記排水汚泥を前記予備加熱室及び前記収容室の順に搬入及び搬出する搬送手段と、を備える排水汚泥乾燥装置に関する。
【0010】
また、前記排水汚泥は、無機汚泥であることが好ましい。
【0011】
また、前記マイクロ波照射手段は、前記排水汚泥の上方から該排水汚泥に前記マイクロ波を照射することが好ましい。
【0012】
また、前記マイクロ波照射手段から照射される前記マイクロ波を吸収して発熱するマイクロ波発熱体を更に備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、排水汚泥の乾燥処理に必要なエネルギ消費量を低減することができる排水汚泥乾燥装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1を模式的に示す断面図である。
【図2】(a)〜(d)は、排水汚泥2の乾燥過程を示す模式図である。
【図3】本発明の第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aを模式的に示す断面図である。
【図4】本発明の第3実施形態の排水汚泥乾燥装置1Bを模式的に示す断面図である。
【図5】本発明の第4実施形態の排水汚泥乾燥装置1Cを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
〔第1実施形態〕
以下に、本発明の第1実施形態について図1を参照しながら説明する。図1は、本発明の第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1を模式的に示す断面図である。
本発明の第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1は、例えば、火力発電所の排水処理設備から排出される排水汚泥を乾燥するものである。
【0016】
先ず、排水汚泥乾燥装置1が適用される火力発電所の排水処理設備の概略について説明する。図示を省略するが、この排水処理装置は、例えば、凝集沈殿方式により排水中の汚泥を濾過して除去する凝集沈殿槽と、排水汚泥が除去された水を中和する中和槽と、沈殿した排水汚泥を濃縮する濃縮槽と、濃縮された排水汚泥を所定の含水率(例えば、約80重量%)になるまで脱水する脱水機と、所定の含水率まで脱水された排水汚泥を貯留する汚泥ケーキホッパと、これらの構成要素を接続する配管と、これらの配管の流路を開閉するバルブと、排水や排水汚泥を送出するポンプと、を主体として備える。排水汚泥乾燥装置1には、上記汚泥ケーキホッパから排水汚泥が供給される。
【0017】
次に、排水汚泥乾燥装置1について図1を参照しながら説明する。図1に示すように、排水汚泥乾燥装置1は、排水汚泥2を収容する収容室3と、マイクロ波4を発生するマイクロ波発生装置(マイクロ波照射手段)5と、排水汚泥2から発生する水蒸気6を収容室3の外部に排出する水蒸気排出部7と、排水汚泥2に水蒸気6の熱を供給する伝熱管(熱供給手段)8と、を主体として備える。
【0018】
排水汚泥2は、例えば、酸化アルミニウムやシリカ等を主成分とし、無機成分を多く含む無機汚泥である。以下の図においては、説明の便宜上、排水汚泥2を、加熱(乾燥)前等における含水率が高い「含水汚泥2a(例えば、含水率が約80重量%)」と、加熱によって発熱している「発熱中の含水汚泥2b」と、加熱により乾燥した「乾燥汚泥2c(例えば、含水率が約60重量%)」とに区別して模式的に示す。
【0019】
収容室3は、上記排水処理設備から供給される排水汚泥2を収容及び排出可能に構成される。収容室3は、例えば、金属により構成され、排水汚泥2を収容する本体部3aと、本体部3aに設けられる蓋部3bと、を備える。
本体部3aは、底部10を有して箱状に構成され、上部が開口される。蓋部3bは、本体部3aの開口に対して開閉(密閉)自在に設けられる。蓋部3bは、マイクロ波4を収容室3の内部に導入する導波部3cを有する。この導波部3cは、収容室3の内部と連通する。
【0020】
マイクロ波発生装置5は、所定出力(例えば、50kW)のマイクロ波4を発生する。マイクロ波発生装置5は、公知技術により構成される。マイクロ波発生装置5は、マイクロ波4の照射量を調節可能に構成される。
【0021】
水蒸気排出部7は、収容室3の内部と連通するように蓋部3bに設けられる。水蒸気排出部7は、マイクロ波4の照射による加熱によって排水汚泥2から発生する水蒸気6を、収容室3の外部に排出する。水蒸気排出部7には、水蒸気6の流量を制御するバルブ(図示せず)が、必要に応じて設けられる。
【0022】
伝熱管8は、排水汚泥2から発生する水蒸気6が流通可能に構成され、水蒸気排出部7に接続される。伝熱管8は、熱伝導性の良好な金属製(例えば、銅やアルミニウム等)の管である。伝熱管8は、収容室3の本体部3aの周囲に、本体部3aの上部から底部10側に向けて巻き付けられる。
【0023】
伝熱管8は、伝熱管8に流通する水蒸気6の熱(凝縮熱)を、本体部3aを介して、本体部3aの内部の排水汚泥2に供給する熱交換器として機能する。伝熱管8の終端部8aは、凝縮水(ドレン水)を排出する。伝熱管8が設けられた収容室3の外面は、断熱材(図示せず)で覆われることが好ましい。
【0024】
次に、排水汚泥乾燥装置1の作用について図2を参照しながら説明する。図2は、排水汚泥の乾燥過程を示す模式図である。図2(a)は、乾燥前の含水汚泥2aを示す。図2(b)は、乾燥初期における含水汚泥2a及び発熱中の含水汚泥2bを示す。図2(c)は、乾燥中期における、含水汚泥2a、発熱中の含水汚泥2b及び乾燥汚泥2cを示す。図2(d)は、乾燥終期における発熱中の含水汚泥2b及び乾燥汚泥2cを示す。
【0025】
図2(a)に示すように、先ず、上記排水処理設備の上記汚泥ケーキホッパ(図示せず)から含水汚泥2a(排水汚泥2)を、排水汚泥乾燥装置1の本体部3aに収容し、本体部3aの開口を蓋部3bによって密閉する。これにより、含水汚泥2aが収容室3に収容される。
【0026】
次に、マイクロ波発生装置5を作動させ、所定出力のマイクロ波4を発生させる。マイクロ波発生装置5の動作に必要な電力は、火力発電所で発電される電力によって賄うことができる。
マイクロ波4は、導波部3cを介して収容室3の内部に導入される。含水汚泥2a(排水汚泥2)は、マイクロ波4を上方から照射され、含水汚泥2aの内部から加熱される。含水汚泥2aは、マイクロ波4をよく吸収する水分を多量に含んでいるからである。含水汚泥2aの加熱温度は、マイクロ波4の出力を制御(例えば、PID制御、オンオフ制御等)することによって調整される。
【0027】
本実施形態の収容室3に収容される含水汚泥2aの高さ(容量)は、マイクロ波4の浸透深度と比べて大きい。そのため、マイクロ波4のエネルギは、含水汚泥2aの深さ方向において奥深くまでは届かないと考えられる。従って、図2(b)に示すように、乾燥初期の加熱においては、マイクロ波4のエネルギは、含水汚泥2aの上部で吸収され、この含水汚泥2aの上部が発熱する(発熱中の含水汚泥2bになる)と考えられる。発熱中の含水汚泥2bからは、水分が水蒸気6となって蒸発する。
【0028】
ここで、被乾燥物に対するマイクロ波の浸透深度とは、マイクロ波のエネルギ密度が、初期値の約37%まで減少する深さをいい、この浸透深度が大きいほどマイクロ波をよく吸収することが知られている。無機汚泥である乾燥汚泥2cは、例えば、陶器に比べて見掛け密度が小さい(緻密でない)。そのため、乾燥汚泥2cに対するマイクロ波4の浸透深度は、陶器に対するマイクロ波の浸透深度(例えば、56cm)よりも大きいと考えられる。
【0029】
図2(b)に示すように、発熱中の含水汚泥2bから蒸発した水蒸気6は、水蒸気排出部7を通り、伝熱管8の内部を流通する。伝熱管8の内部の水蒸気6は、本体部3aを介して、本体部3aの内部の排水汚泥2と熱交換し、凝縮水となって伝熱管8の終端部8aから排出される。つまり、水蒸気6の凝縮熱が回収されて、排水汚泥2を加熱するエネルギの一部として再利用される。
【0030】
そして、図2(c)に示すように、マイクロ波4による加熱を継続することによって、含水汚泥2bから水分が蒸発し、含水汚泥2bの上部(表面層)が、含水率の低い乾燥汚泥2cの層に変化すると考えられる。この乾燥汚泥2cの層は、含水汚泥2aの層や発熱中の含水汚泥2bの層に比べて、水分の通路となり得る空洞が形成され易くなると考えられる。そのため、発熱中の含水汚泥2bの上部に乾燥汚泥2cの層が形成されると、発熱中の含水汚泥2bの水分が上方へ流れ易くなり、蒸発作用が促進される。
【0031】
また、乾燥汚泥2cの層においては、マイクロ波4の浸透深度が大きくなると考えられる。そのため、マイクロ波4のエネルギは、乾燥汚泥2cの層を通過し、乾燥汚泥2cの下方の未乾燥の汚泥(含水汚泥2a)の上部に吸収される。これにより、含水汚泥2aの上部が発熱して、発熱中の含水汚泥2bとなり、その水分が蒸発することにより乾燥汚泥2cとなる。
【0032】
このような加熱過程が繰り返されることによって排水汚泥2の乾燥が進み、図2(d)に示すように、排水汚泥2中の乾燥汚泥2cの量(割合)が次第に多くなっていく。そして、発熱中の含水汚泥2bの水分蒸発が終了することにより、収容室3の排水汚泥2が、すべて乾燥汚泥2cとなる。これにより、排水汚泥2の乾燥過程が終了する。
その後、乾燥汚泥2cは、収容室3から取り出され、所定の産業廃棄物として処理される。
【0033】
以上に説明した第1実施形態の排水汚泥乾燥装置によれば、以下に示す各効果が奏される。
第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1は、排水汚泥2を収容及び排出可能に構成される収容室3と、収容室3に収容された排水汚泥2にマイクロ波4を照射して排水汚泥2を加熱するマイクロ波発生装置5と、排水汚泥2から発生する水蒸気6を収容室3の外部に排出する水蒸気排出部7と、水蒸気排出部7に接続され、水蒸気6の熱を排水汚泥2に供給する伝熱管8と、を備える。
【0034】
そのため、排水汚泥2から発生する水蒸気6の熱を伝熱管8によって排水汚泥2に供給することができ、排水汚泥2を加熱する際のエネルギの一部として利用することができる。従って、排水汚泥2を乾燥処理するのに必要なエネルギ消費量を低減することができる。また、マイクロ波発生装置5に要求されるマイクロ波4の出力レベルを低減することができる。そのため、マイクロ波発生装置5のコストを低減することができる。
【0035】
また、第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1によれば、マイクロ波発生装置5の動作に必要な電力は、火力発電所で発電される電力によって賄われる。そのため、マイクロ波発生装置5に対する送電ロスをほぼなくすことができ、排水汚泥乾燥装置1のエネルギ効率を高めることができる。
【0036】
また、排水汚泥乾燥装置1によって乾燥される排水汚泥2は、無機汚泥である。そのため、有機成分を含む有機汚泥の場合と異なり、排水汚泥2の搬送時及び乾燥時等において、臭気漏れを防止するための装置の密閉対策(悪臭対策)が不要である。従って、装置を簡易に構成することができ、製造コストを低減することができる。
【0037】
また、第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1によれば、マイクロ波発生装置5及び導波部3cは、排水汚泥2の上方から排水汚泥2にマイクロ波4を照射する。そのため、主に含水汚泥2aの上部(表面層)が加熱されて乾燥汚泥2cの層が形成され、水分の通路(空洞)が形成され易くなる。従って、発熱中の含水汚泥2bの水分が、乾燥汚泥2cの層を通って上方へ流れ易くなり、蒸発作用を促進することができる。これにより、排水汚泥2の乾燥時間を短縮することができる。
【0038】
次に、本発明の他の実施形態について説明する。他の実施形態については、主として、第1実施形態とは異なる点を中心に説明し、第1実施形態と同様の構成については、同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。他の実施形態において特に説明しない点は、第1実施形態についての説明が適宜適用又は援用される。
【0039】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態について図3を参照しながら説明する。図3は、本発明の第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aを模式的に示す断面図である。
図3に示すように、第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aは、排水汚泥2を収容する収容室3Aと、マイクロ波発生装置5と、水蒸気排出部7と、収容室3に隣接して設けられる予備加熱室15と、収容室3Aと予備加熱室15とを接続する接続部16と、水蒸気6の熱を予備加熱室15の排水汚泥2に供給する伝熱管8と、排水汚泥2を搬送する搬送ベルト(搬送手段)20と、を主体として備える。
【0040】
収容室3Aは、排水汚泥2を収容及び排出可能に構成される。収容室3Aは、例えば、金属により構成される。収容室3Aは、導波部3cと、水蒸気排出部7と、底部10と、搬出用開口部12と、を備える。導波部3c及び水蒸気排出部7は、前記第1実施形態の場合とほぼ同様に構成され、収容室3Aの上部に設けられる。底部10は、収容室3Aの底を構成する共に、接続部16及び予備加熱室15の側にも延びて接続部16の底及び予備加熱室15の底を構成する。
【0041】
搬出用開口部12は、収容室3Aの一端側(図3において左側)の側部に開口される。接続部16は、収容室3Aと予備加熱室15とが連通するように、収容室3Aと予備加熱室15とを接続する。
【0042】
予備加熱室15は、接続部16を介して収容室3Aに連通して設けられる。予備加熱室15は、収容室3Aに収容される前の排水汚泥2(含水汚泥2a)を収容し、伝熱管8(後述)から供給される熱によって排水汚泥2を予め加熱する。予備加熱室15は、一端側(図3において右側)の側部に搬入用開口部17を備える。
【0043】
伝熱管8は、排水汚泥2から発生する水蒸気6が流通可能に構成され、水蒸気排出部7に接続される。伝熱管8は、排水汚泥2の搬送方向における下流側から上流側に向けて予備加熱室15の外周囲に巻き付けられる。伝熱管8は、伝熱管8に流通する水蒸気6の熱(凝縮熱)を、予備加熱室15の内部の排水汚泥2に供給する熱交換器として機能する。
【0044】
搬送ベルト20は、排水汚泥2を載置可能に構成される無端状のベルトである。搬送ベルト20は、底部10の上面側に配置される。搬送ベルト20は、予備加熱室15の搬入用開口部17から予備加熱室15に導入され、接続部16及び収容室3Aの内部を通って収容室3Aの搬出用開口部12から外部へ延びている。搬送ベルト20は、電気モータ等の駆動装置(図示せず)によって駆動される。搬送ベルト20は、排水汚泥2を予備加熱室15及び収容室3Aの順に搬入及び搬出するように構成される。
【0045】
次に、排水汚泥乾燥装置1Aの作用について図3を参照しながら説明する。先ず、上記排水処理設備の上記汚泥ケーキホッパ(図示せず)から、搬送ベルト20上に含水汚泥2a(排水汚泥2)が所定高さとなるように供給(載置)される。ここで、含水汚泥2aの所定高さとは、排水汚泥乾燥装置1Aによって含水汚泥2aを最も効率よく乾燥することができる高さであり、マイクロ波4の浸透深度よりも小さく設定される。
【0046】
搬送ベルト20が駆動されると、排水汚泥2が予備加熱室15及び収容室3Aの順に導入される。搬送ベルト20によって収容室3Aに導入された含水汚泥2a(排水汚泥2)は、マイクロ波4を上方から照射されることにより加熱される。
【0047】
前述したように、含水汚泥2aの高さは、マイクロ波4の浸透深度よりも小さく設定されている。そのため、マイクロ波4のエネルギが、含水汚泥2aに確実に届き、含水汚泥2aが効率よく加熱される。従って、含水汚泥2aは、迅速に加熱され、発熱中の含水汚泥2bを経て乾燥汚泥2cとなる。なお、搬送ベルト20は、排水汚泥2へのマイクロ波4の照射中に、適宜、駆動を停止されてもよく、又は所定の速度で駆動されていてもよい。
【0048】
収容室3Aにおいて、発熱中の含水汚泥2bから蒸発した水蒸気6は、水蒸気排出部7を通り、伝熱管8の内部を流通する。伝熱管8の内部の水蒸気6は、予備加熱室15を介して、予備加熱室15の内部の含水汚泥2aと熱交換し、凝縮水となって伝熱管8の終端部8aから排出される。つまり、予備加熱室15において水蒸気6の凝縮熱が回収され、含水汚泥2aを加熱するエネルギの一部として再利用される。
【0049】
収容室3Aの内部の乾燥汚泥2cは、搬送ベルト20によって搬出用開口部12から収容室3Aの外部に搬出される。このように第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aは、排水汚泥2の乾燥処理を連続的に行う。収容室3Aから搬出された乾燥汚泥2cは、所定の産業廃棄物として処理される。
【0050】
以上に説明した第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aによれば、以下に示す各効果が奏される。
第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aは、収容室3Aと、マイクロ波発生装置5と、水蒸気排出部7と、予備加熱室15と、水蒸気6の熱を予備加熱室15の排水汚泥2に供給する伝熱管8と、排水汚泥2を搬送する搬送ベルト20と、を備える。
そのため、第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aによれば、排水汚泥2の乾燥処理を連続的に行うことができる。従って、排水汚泥乾燥装置1Aは、火力発電所の排水処理設備における最終工程において特に好適に使用される。
【0051】
また、第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aによれば、予備加熱室15において水蒸気6の凝縮熱を含水汚泥2aの予熱に利用することができる。そのため、排水汚泥2を加熱するのに必要なエネルギ消費量を低減することができる。
【0052】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態について図4を参照しながら説明する。図4は、本発明の第3実施形態の排水汚泥乾燥装置1Bを模式的に示す断面図である。
図4に示すように、第3実施形態の排水汚泥乾燥装置1Bは、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1(図1参照)の構成に加えて、マイクロ波発熱体22を備える。
【0053】
マイクロ波発熱体22は、マイクロ波発生装置5から照射されるマイクロ波4を吸収して発熱する板状部材である。このマイクロ波発熱体22は、種々の材料から構成することができるが、例えば、LiO−Al−SiO組成のリチア系セラミックからなるもの、耐熱性高分子材料中にフェライト材料を分散させたもの、金属化合物固体(例えば、含水ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、硫酸カルシウム等)を含むもの等を挙げることができる。マイクロ波発熱体22は、収容室3の底部10の上面に配設される。マイクロ波発熱体22の配設位置は、マイクロ波4のエネルギが、マイクロ波発熱体22に確実に届くように設定される。
その他の構成は、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0054】
次に、排水汚泥乾燥装置1Bの作用について図4を参照しながら説明する。排水汚泥2の乾燥前から乾燥中期(図2(a)〜図2(c)を参照)においては、排水汚泥乾燥装置1Bの作用は、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1の作用と同様である。排水汚泥乾燥装置1Bの作用は、排水汚泥2の乾燥終期において、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1の作用と異なる。
【0055】
排水汚泥2の乾燥終期(図2(d)参照)においては、排水汚泥2中の乾燥汚泥2cの割合が増え、排水汚泥2内の水分がほとんどなくなる。そのため、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1においては、排水汚泥2にマイクロ波4が照射されても、排水汚泥2が発熱しにくくなると考えられる。
【0056】
そこで、本実施形態においては、収容室3の底部10の上面にマイクロ波発熱体22を設けることにより、マイクロ波発熱体22を補助発熱源として使用できるようにした。排水汚泥2は、マイクロ波発熱体22の上面に接触した状態で収容室3に収容される。そのため、排水汚泥2の乾燥終期において、マイクロ波発熱体22がマイクロ波4を吸収して発熱すると、排水汚泥2がその熱により加熱される。従って、排水汚泥2の乾燥が促進される。その他の作用は、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1の場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0057】
以上に説明した第3実施形態の排水汚泥乾燥装置1Bによれば、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1と同様の効果が奏されると共に、以下に示す各効果が奏される。
第3実施形態の排水汚泥乾燥装置1Bにおいては、前記第1実施形態の排水汚泥乾燥装置1の構成に加えて、マイクロ波発熱体22を備える。そのため、排水汚泥2の乾燥終期においても、マイクロ波発熱体22の発熱により排水汚泥2の乾燥を促進することができる。従って、排水汚泥2の乾燥時間を更に短縮することができる。
【0058】
〔第4実施形態〕
次に、本発明の第4実施形態について図5を参照しながら説明する。図5は、本発明の第4実施形態の排水汚泥乾燥装置1Cを模式的に示す断面図である。
図5に示すように、第4実施形態の排水汚泥乾燥装置1Cは、前記第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1A(図3参照)の構成に加えて、マイクロ波発熱体22を備える。
【0059】
マイクロ波発熱体22は、収容室3Aの底部10の内部に配設される。マイクロ波発熱体22の配設位置は、マイクロ波4のエネルギが、マイクロ波発熱体22に確実に届くように設定される。
その他の構成は、前記第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aの場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0060】
次に、排水汚泥乾燥装置1Cの作用について図5を参照しながら説明する。マイクロ波発熱体22がマイクロ波4を吸収して発熱すると、その熱が、底部10及び搬送ベルト20を介して、搬送ベルト20上の排水汚泥2に伝達する。従って、排水汚泥2は、乾燥終期においても、マイクロ波発熱体22により加熱され、乾燥が促進される。
その他の作用は、前記第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aの場合と同様であるので、重複説明を省略する。
【0061】
以上に説明した第4実施形態の排水汚泥乾燥装置1Cによれば、前記第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aと同様の効果が奏されると共に、以下に示す各効果が奏される。
第4実施形態の排水汚泥乾燥装置1Cにおいては、前記第2実施形態の排水汚泥乾燥装置1Aの構成に加えて、マイクロ波発熱体22を備える。そのため、排水汚泥2の乾燥終期においても、マイクロ波発熱体22の発熱により排水汚泥2の乾燥を促進することができる。従って、排水汚泥2の乾燥時間を更に短縮することができる。
【0062】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、前述した実施形態に制限されるものではなく、適宜変更が可能である。
例えば、前記第1実施形態及び前記第3実施形態においては、収容室3は、本体部3aの開口から排水汚泥2の収容及び排出を行うものとして説明したが、これに制限されない。例えば、収容室3の底部10を、本体部3aに対して開閉自在に構成し、この底部10から排水汚泥2を収容室3の外部に排出してもよい。また、図示しないフィーダーその他の排出装置を用いて、排水汚泥2を収容室3の外部に排出してもよい。
【0063】
また、前記第1実施形態から前記第4実施形態においては、排水汚泥乾燥装置1,1A,1B,1Cは、排水汚泥2の上方から排水汚泥2にマイクロ波4を照射するものとして説明したが、これに制限されない。例えば、排水汚泥2の側方又は下方から排水汚泥2にマイクロ波4を照射してもよい。また、排水汚泥2の上方、側方及び下方のうち、これらの方向を任意に組み合わせた方向から排水汚泥2にマイクロ波4を照射してもよい。
【0064】
また、前記第3実施形態においては、マイクロ波発熱体22は、収容室3の底部10の上面に配設されるものとして説明したが、これに制限されない。マイクロ波4のエネルギが、マイクロ波発熱体22に確実に届く位置であれば、マイクロ波発熱体22は、収容室3のいずれの位置に設けられてもよい。また、マイクロ波発熱体22は、底部10の内部に設けられてもよい。
【0065】
また、前記第4実施形態においては、マイクロ波発熱体22は、収容室3Aの底部10の内部に配設されるものとして説明したが、これに制限されない。例えば、マイクロ波発熱体22は、搬送ベルト20の延びる方向に沿って、搬送ベルト20の上面又は内部に設けられてもよい。この場合、マイクロ波発熱体22は、搬送ベルト20の可撓性を損なわないように設けられる。
【0066】
また、前記第1実施形態から前記第4実施形態においては、排水汚泥乾燥装置1,1A,1B,1Cは、火力発電所の排水処理設備に適用されるものとして説明したが、これに限定されず、火力発電所以外の排水処理設備や汚泥処理設備等に適用されてもよい。
【符号の説明】
【0067】
1,1A,1B,1C 排水汚泥乾燥装置
2 排水汚泥
3,3A 収容室
3c 導波部(マイクロ波照射手段)
4 マイクロ波
5 マイクロ波発生装置(マイクロ波照射手段)
6 水蒸気
7 水蒸気排出部
8 伝熱管(熱供給手段)
15 予備加熱室
20 搬送ベルト(搬送手段)
22 マイクロ波発熱体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水処理設備から排出される排水汚泥を収容及び排出可能に構成される収容室と、
前記収容室に収容された前記排水汚泥にマイクロ波を照射して該排水汚泥を加熱するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波の照射による加熱によって前記排水汚泥から発生する水蒸気を前記収容室の外部に排出する水蒸気排出部と、
前記水蒸気排出部に接続され、前記水蒸気の熱を前記排水汚泥に供給する熱供給手段と、
を備える排水汚泥乾燥装置。
【請求項2】
排水処理設備から排出される排水汚泥を収容及び排出可能に構成される収容室と、
前記収容室に収容された前記排水汚泥にマイクロ波を照射して該排水汚泥を加熱するマイクロ波照射手段と、
前記マイクロ波の照射による加熱によって前記排水汚泥から発生する水蒸気を前記収容室の外部に排出する水蒸気排出部と、
前記収容室に連通して設けられ、該収容室に収容される前の前記排水汚泥を予め加熱する予備加熱室と、
前記水蒸気排出部に接続され、前記水蒸気の熱を前記予備加熱室の前記排水汚泥に供給する熱供給手段と、
前記排水汚泥を前記予備加熱室及び前記収容室の順に搬入及び搬出する搬送手段と、
を備える排水汚泥乾燥装置。
【請求項3】
前記排水汚泥は、無機汚泥である請求項1又は2に記載の排水汚泥乾燥装置。
【請求項4】
前記マイクロ波照射手段は、前記排水汚泥の上方から該排水汚泥に前記マイクロ波を照射する請求項1から3のいずれか一つに記載の排水汚泥乾燥装置。
【請求項5】
前記マイクロ波照射手段から照射される前記マイクロ波を吸収して発熱するマイクロ波発熱体を更に備える請求項1から4のいずれか一つに記載の排水汚泥乾燥装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81426(P2012−81426A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−230447(P2010−230447)
【出願日】平成22年10月13日(2010.10.13)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【Fターム(参考)】