説明

排水用構造シート

【課題】 本発明の目的は、通水部における屈曲性の向上と通水性の向上との相矛盾する事項を同時に解決できる排水用構造シートを提供すること。
【解決手段】 複数本の通水性パイプ材2と、該通水性パイプ材2を挿入保持するためのシート材3と、を有する排水用構造シート。
またシート材3は、不通水性を有する第1支持シート4と、該第1支持シートより幅狭の通水性を有する第2支持シート5と、を有し、前記第1支持シートと前記第2支持シートとは、間隔を置いて接合されることにより複数の中空部6が形成され、該中空部に通水性パイプ材2が挿入されている。
更に、幅方向に相対する一対のラインマークLが通水性パイプ材2の長手方向に沿って一定間隔を置いて複数形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、湧水を逃がすためにトンネル壁面に埋設される排水用構造シートに関する。
特に、強度、可撓性及び通水性に優れ現場作業員の作業性を向上させた排水用構造シートに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水用構造シートとして図8に記載のものが知られている(特許文献1参照)。
この排水用構造シート、すなわち湧水処理シート材は、処理シート材100を有している。
この処理シート材100は、ポリプロピレン樹脂又は塩化ビニル樹脂からなり、非通水性であって帯状に形成されている。
この処理シート材100の幅方向中央付近には凹溝100aが形成され、この凹溝100aには弾性部材101が充填されている。
【0003】
弾性部材101は多数のモノフィラメントをランダムなループ形状にして平板状に堆積させることにより高い弾性と強度が備わったもので耐久性にも優れる。
この弾性部材101の材質としては、アルカリ性及びコンクリート、モルタルに対して長期的に安定し、しかも極性がなく遊離石灰も付着させないとの観点からポリプロピレン樹脂が使われている。
そして、処理シート材100の凹溝100aに充填された弾性部材101を保持するために、その上は不織布102で覆われている。
一方、処理シート材100の両側端側には保持筒部が設けられ、この中に軟弾性材の取付けベルト103が挿通されている。
また処理シート材100には図示しない横断テープと番号が貼着表示されており、施工進捗度合いを確認できるものである。
【0004】
【特許文献1】特開2002−54396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述した湧水処理シート材では、弾性部材101が一定の面積を有する平板状として充填されているため、この通水領域の屈曲性が悪く、そのため、例えば、トンネル壁面にこの湧水処理シート材を敷設する際、壁面の曲面に沿って排水用構造シートがフィットしなくなり施工性が悪い。
そのためには、モノフィラメントの充填量を上げて空隙率を大きくし、屈曲性を良くなるようしなければならない。
しかし空隙率を大きくすると、結果的にこの通水領域の強度が低下してしまって相矛盾することとなる。
【0006】
本発明は、かかる背景技術をもとになされたもので、上記の背景技術の相矛盾する問題点を克服するためになされたものである。
すなわち、本発明は、通水部における屈曲性の向上と通水性の向上との相矛盾する事項を同時に解決できる排水用構造シートを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
かくして、本発明者は、このような課題背景に対して鋭意研究を重ねた結果、複数本の通水性パイプを間隔を置いてシート材に保持させることにより、上記の問題点を解決することができることを見出し、この知見に基づいて本発明を完成させたものである。
【0008】
すなわち、本発明は、(1)、複数本の通水性パイプ材と、該通水性パイプ材を挿入保持するためのシート材と、を有する排水用構造シートに存する。
【0009】
また、本発明は、(2)、前記シート材は、不通水性を有する第1支持シートと、該通水性を有する第2支持シートと、を有し、前記第1支持シートと前記第2支持シートとは、間隔を置いて接合されることにより複数の中空部が形成され、該中空部に通水性パイプ材が挿入されている上記(1)に記載の排水用構造シートに存する。
【0010】
また、本発明は、(3)、前記シート材において、第2支持シートは第1支持シートより幅狭である上記(2)に記載の排水用構造シートに存する。
【0011】
また、本発明は、(4)、前記第1支持シートと前記第2支持シートとの接合は、縫着によりなされている上記(2)に記載の排水用構造シートに存する。
【0012】
また、本発明は、(5)、前記第1支持シートと前記第2支持シートとの接合は、接着によりなされている上記(2)に記載の排水用構造シートに存する。
【0013】
また、本発明は、(6)、前記第1支持シートの長さ方向の端部には取付用繊維ベルトが取り付けられている上記(2)に記載の排水用構造シートに存する。
【0014】
また、本発明は、(7)、幅方向に相対する一対のラインマークが通水性パイプ材の長手方向に沿って一定間隔を置いて複数形成されている上記(2)に記載の排水用構造シートに存する。
【0015】
また、本発明は、(8)、前記第2支持シートはメッシュシートである上記(2)に記載の排水用構造シートに存する。
【0016】
なお、本発明の目的に添ったものであれば、上記(1)から(8)を適宜組み合わせた構成も採用可能である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、複数本の通水性パイプ材が設けられ、強度及び通水性が確保されると共に、これらの通水性パイプ材が間隔を置いて設けられるので、通水性パイプ材間に存在するシート材が容易に屈曲でき通水領域の屈曲性が良くなる。
排水用構造シート全体の屈曲性も良くなり、施工性も向上する。
また通水性パイプ材はその形状により十分な強度を確保できる。
第1支持シートの長さ方向の端部には取付用繊維ベルトが取り付けられていることにより、施工時に止め具により確実に固定できる。
また幅方向に相対する一対のラインマークが通水性パイプ材の長手方向に沿って一定間隔を置いて複数形成したことにより、敷設長さを正確に確認することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面(概略図)に基づいて説明する。
図1は、本発明の排水用構造シートの一実施形態を示す説明図であり、(a)はその全体、(b)はその通水性パイプ材を拡大して示す。
この排水用構造シート1は、強度及び通水性を確保するための通水性パイプ材2と、該通水性パイプ材2を挿入保持するためのシート材3とを有している。
この例で示す通水性パイプ材2は、3本平行に配置されている。
【0019】
またこの通水性パイプ材2は、例えばメッシュ状のシートを筒状にすることやモノフィラメントを編み込んでチューブ状にすることで形成されており、断面円形状であるために中空であるにもかかわらず強度が高いものとなっており、しかも通水性が高い。
なお、この排水用構造シート1は、長尺であって一定の長さを有するものであるが、図1はその長手方向の一部を示す(以下説明する図面も同じ)。
また通水性パイプ材2の配設された長手方向と垂直な方向を排水用構造シート1の幅方向として説明する。
【0020】
シート材3は、非通水性である第1支持シート4と、この第1支持シート4に接合され通水性を有する第2支持シート5と、を有している。
ここで示す第2支持シート5は、通常、第1支持シート4より幅狭となっている。
第1支持シート4の材質としては、合成樹脂材、例えば、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、塩化ビニル樹脂等を採用することができる。
第2支持シート5としては、やはり合成樹脂材が使われ、形態として好ましくはメッシュシートが採用され、十分、通水性が得られるようになっている。
このメッシュ目は、通水性が確保できる限り、角形、矩形、円形等の種々の目を採りえる。
【0021】
第1支持シート4と第2支持シート5とは、間隔を置いて接合されることにより複数の中空部6が形成される結果、該中空部6に通水性パイプ材2が挿入可能となっている。
ここで第1支持シート4と第2支持シート5との接合は、材質に応じ縫着、接着等によって行われている。
【0022】
第1支持シート4の幅方向端部には、第2支持シート5が縫着された側と反対側の面(施工対応面という)の耳部に取付け用の繊維ベルト7が設けられている。
この取付け用の繊維ベルト7を第1支持シート4に固定するには、縫い込んだり、又は接着剤を用いて固定することができる。
この取付け用の繊維ベルト7により耳部の強度が大きく向上するが、それ以外にも、取り付け時に次に述べるような確実な固定力を発揮できる利点がある。
【0023】
この耳部にある取付け用の繊維ベルト7の形態としては、織地や編地が採用される。
例えば、編地であれば、線径320dtのポリエチレン製モノフィラメントをタテ密度14.5/吋で編成したものを用いることができる。
このような繊維ベルトは、織地や編地であるためにメッシュ目が存在しており、排水用構造シートを壁面に取り付ける際、止め具(例えば釘)をシート材3に打ち込んだ場合、そのメッシュ目が締まることにより釘が強く固定される。
因みに上述した従来の湧水処理シート材においては、取付けベルトが軟弾性材料であるために、釘等が突き抜けてしまったりするが、本発明ではこのようなことはない。
【0024】
図2は、排水用構造シート1を撓ませた状態を示している。
図に示すように、通水性パイプ材2間に存在するシート材3は、容易に幅方向に屈曲して、排水用構造シート全体を撓ませることができる。
すなわち、通水性パイプ材2間に存在するシート材3の部分が屈曲するので、従来の図8に示したような湧水処理シート材と異なって、比較的小さな力で排水用構造シート1を屈曲することができる。
【0025】
さて図3は、排水用構造シート1を第1支持シート4側から見た状態を示している。
第1支持シート4の上下端には、その幅方向にラインマークLが形成されている。
この線は、例えば比較的目立つ色のラインが好ましく、その付与方法としては、第1支持シート4の製造時と同時に付与したり、製造後に色料を塗布したりすることによって容易に付与可能である。
第1支持シート4の端部の耳部には取付け用の繊維ベルト7が設けられているが、この取付け用の繊維ベルト7の上にも連続してラインを適宜方法で付与すると、排水用構造シート全体にラインが表示されてより好ましい。
【0026】
図4は、排水用構造シート1の敷設方法を示す説明図であり、(a)は壁面が曲面である場合の敷設方法、及び(b)は壁面が平面である場合の敷設方法を示す。
この排水用構造シート1は、例えば、トンネルの内壁等に相当する壁面Tに対して、上方から止め具(例えば釘8)を打ち込むことにより敷設固定される。
【0027】
なお、第1支持シート4上にコンクリート等を吹き付けることで、排水用構造シート1はトンネル壁面に埋設されることになる。
第1支持シート4は非通水性の薄い樹脂シートであるため、施工時、止め具を第1支持シート4に直接打ち込んで壁面Tに固定しようとしても、止め具が第1支持シート4を突き抜けてしまって固定力を発揮できない。
【0028】
しかし、この取付け用の繊維ベルトが設けてあることにより、そのような問題は生じなく、確りと第1支持シート4を含む排水用構造シート1を固定することができる(なお、この理由は上述したとおりである)。
図4(A)によれば、通水性パイプ材2を含む通水領域が屈曲して壁面に沿ってフィットしていることが理解できる。
【0029】
さて図5は、ラインマークLが形成された側の第1支持シート4を示している。
図5に示すように、第1支持シート4には、幅方向に相対する一対のラインマークLがシート材3の長手方向に沿って形成されている。
しかも、この一対のラインマークLは、一定間隔を置いて複数(図中、2箇所)形成されている。
施工時においては、相対するラインマークL間を切断すると、切り離されたシート材3の両方の端部に1本ずつラインマークLが残ることとなる。
そのため、製品の横断方向の切断箇所(ラインマークLが残っている)を基準として敷設長さを正確に確認することができる。
【0030】
因みに、上述した従来の湧水処理シート材では、切断した後、切り離されたシートの一方の端部にしかテープが残らず、切断箇所を基準にできないため敷設長さを確認しにくい。
以上、本発明の排水用構造シート1においては、通水性パイプ材2を含む通水領域は十分な強度及び通水性が確保できる。
【0031】
これらの通水性パイプ材2が間隔を置いて設けられているので、通水性パイプ材2間に存在するシート材3を屈曲させると、比較的容易に排水用構造シート全体を屈曲することができる。
また第1支持シートの長さ方向の端部には取付用繊維ベルトが取り付けられていることにより、施工時に止め具により確実に固定できる。
また幅方向に相対する一対のラインマークが通水性パイプ材の長手方向に沿って一定間隔を置いて複数形成したことにより、敷設長さを正確に確認することができる。
【0032】
以上、本発明を説明してきたが、本発明は上述した実施形態にのみ限定されるものではなく、その本質を逸脱しない範囲で、他の種々の変形が可能であることはいうまでもない。
例えば、上述した実施形態では、3本の通水性パイプ材2を用いた例について説明したが、図6に示すように、多数本形成しても良い。
すなわち、屈曲性については本数は然程問題とならず、通水性パイプ材2間にシート材3の接合部が存在さえすれば、容易に排水用構造シート1を撓ませ得るようになる。
【0033】
また、上述した実施形態では、第1支持シート4と第2支持シート5との接合を線状に縫着又は接着により行った例について説明したが、その接合形態は図7に示すような種々の形がある。
これらの方法は、接合部の面積が広いために、第1支持シート4に対して第2支持シート5を接着により固定する場合が好ましい。
図7(a)に示す排水用構造シートでは、第1支持シート4は平面状に広げられており、第2支持シート5は通水性パイプ材2の周りの殆どを囲んだ状態となっている。
【0034】
一方、図7(b)に示す排水用構造シートでは、第2支持シート5が平面状にされ、第1支持シート4が通水性パイプ材2の周りを殆どを囲んだ形となっている。
第2支持シート5側が施工面側になるため、第1支持シート4を平坦にした図7(a)の場合に比べて、施工性の点で優れている。
【0035】
更に、上述した実施の形態では、第2支持シート5は第1支持シート4より幅狭となっているが、それを両者同じような幅とすることも当然可能であり、その場合は、全体的な強度がより高まることとなる。
更に、上述した実施形態では、ラインマークLは、連続線であったが、破線、鎖線、装飾ライン等であっても当然可能である。
【0036】
また、上述した実施形態では、第2支持シート5をメッシュシートとした例について説明したが、メッシュシートでなく、例えば通水性のある不織布も採用可能である。
例えば、メッシュシートのメッシュ目が1〜5mm程度のものを採用して、土粒子が入り込み易い場合は、不織布(通常、1mm以下)が使われる。
更にまた、排水用構造シート全体の強度を必要とする場合は、第2支持シートと第1支持シートとが同幅のものを採用することもできる。
更にまた、取付け用の繊維ベルトは、第1支持シート4の施工対応面又はその反対面のどちらかの面、或いは両面に設けてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】図1は、本発明の排水用構造シートの一実施形態を示す説明図であり、(a)はその全体、(b)は通水性パイプ材を示す。
【図2】図2は、図1の排水用構造シート1を撓ませた状態を示す説明図である。
【図3】図3は、図1の排水用構造シートを第1支持シート側から見た状態を示す説明図である。
【図4】図4は、排水用構造シート1の敷設方法を示す説明図であり、(a)は壁面が曲面である場合の敷設方法、及び(b)は壁面が平面である場合の敷設方法を示す。
【図5】図5は、ラインマークが形成された側の第1支持シートを示す説明図である。
【図6】図6は、図1の排水性構造シートの通水性パイプ材2の本数を増やした場合の状態を示す説明図である。
【図7】図7は、第1支持シートと第2支持シートとを接着により接合して形成された排水用構造シートを示す説明図である。
【図8】図8は、従来の排水用構造シートを示す説明図である。
【符号の説明】
【0038】
1 排水用構造シート
2 通水性パイプ材
3 シート材
4 第1支持シート
5 第2支持シート
6 中空部
7 繊維ベルト
8 釘
100 処理シート材
100a 凹溝
101 弾性部材
102 不織布
L ラインマーク
T 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の通水性パイプ材と、
該通水性パイプ材を挿入保持するためのシート材と、
を有することを特徴とする排水用構造シート。
【請求項2】
前記シート材は、
不通水性を有する第1支持シートと、
該通水性を有する第2支持シートと、
を有し、
前記第1支持シートと前記第2支持シートとは、間隔を置いて接合されることにより複数の中空部が形成され、
該中空部に通水性パイプ材が挿入されていることを特徴とする請求項1に記載の排水用構造シート。
【請求項3】
前記シート材において、第2支持シートは第1支持シートより幅狭であることを特徴とする請求項2に記載の排水用構造シート。
【請求項4】
前記第1支持シートと前記第2支持シートとの接合は、縫着によりなされていることを特徴とする請求項2に記載の排水用構造シート。
【請求項5】
前記第1支持シートと前記第2支持シートとの接合は、接着によりなされていることを特徴とする請求項2に記載の排水用構造シート。
【請求項6】
前記第1支持シートの長さ方向の端部には取付用繊維ベルトが取り付けられていることを特徴とする請求項2に記載の排水用構造シート。
【請求項7】
幅方向に相対する一対のラインマークが通水性パイプ材の長手方向に沿って一定間隔を置いて複数形成されていることを特徴とする請求項2に記載の排水用構造シート。
【請求項8】
前記第2支持シートはメッシュシートであることを特徴とする請求項2に記載の排水用構造シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−132267(P2006−132267A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−325291(P2004−325291)
【出願日】平成16年11月9日(2004.11.9)
【出願人】(000201490)前田工繊株式会社 (118)
【Fターム(参考)】