説明

排水管路における掃除口用蓋

【課題】歩行者の安全性を高めるとともに、大雨の場合でも雨水の流入を効果的に防止することが可能な排水管路における掃除口用蓋を提供する。
【解決手段】掃除口用蓋1は、上面が地表面に露出される枠状の蓋枠2と、蓋枠2内に着脱可能に嵌込まれ上下方向に貫通する貫通孔14が中央に設けられた蓋本体3と、貫通孔14に装着されたスリーブ4に嵌挿され上限位置及び下限位置の間で上下方向に移動可能に支持されるとともに、上端近傍において水平方向に開口した上側通気口23、下面において下向きに開口した下側通気口24、及び上側通気口23と下側通気口24とを連通する連通孔25、が内部に形成された可動空気抜き部材5と、スリーブ4の貫通孔17と可動空気抜き部材5の軸部20との間に介装された環状のパッキン6とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管路における掃除口用蓋に関し、特に、排水管路に接続された掃除管の開口を閉鎖する掃除口用蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図4(a)に示すように、水を排出する住宅内の各設備50(例えば流し台、及び浴槽)に接続された排水管路51(枝管)には、S字形のトラップ52が設けられており、排水管路51内の臭気が設備50側に逆流しないように構成されている。また、各排水管路51と地中に埋設された排水本管(図示しない)との接続箇所には、排水枡54が設置されているが、この排水枡54には、排水本管から屋内(排水管路51側)に臭気が流込まないようにU字形のトラップ55が設けられる場合がある。なお、排水枡54のトラップ55には掃除管56が接続されており、掃除管56は、地表面まで延出されるとともに上端開口が掃除口用蓋57によって閉鎖されている。
【0003】
ところで、屋内の設備50、及び屋外の排水枡54に、それぞれトラップ52,55が設けられた場合、いわゆる二重トラップとなり、両トラップ52,55間に空気が封止された状態となる。このため、建物内の設備50から水が排出されると、両トラップ52,55間の空気が圧縮され、排水枡54側のトラップ55による封水が破壊されたり、排水が流れ難くなったりするという問題が生じていた。また、水が流出した後は、両トラップ52,55間の排水管路51が負圧となることから、屋内のトラップ52による封水が破壊されたり、負圧に起因する異音が発生したりするという問題も生じていた。
【0004】
なお、掃除口用蓋57に通気孔を設けるようにすれば、両トラップ52,55間の空気圧の変動を抑制することが可能になるが、これによれば、通気孔を通して排水管路51と地表面Aとが連通することから、地表面Aの雨水が掃除管56を通して排水枡54に流入し、ひいては下水として処理すべき水量が増加することとなる。
【0005】
そこで、例えば図4(b)(特許文献1参照)に示すように、通気孔から雨水が流入することを抑制できる空気抜き装置61が提案されている。詳しく説明すると、掃除口用蓋60の蓋体62に上下方向に貫通する嵌挿孔63を設けるとともに、内部にT字形の通気路64を有する空気抜き体65を、嵌挿孔63を通して配設したものである。特に空気抜き体65は、偏平状の本体部66と、本体部66の中心から下方に突設する筒状の空気通路管部67とを備えて構成されており、本体部66の通気路64を、周面に向かって下方に傾斜させることで雨水が通気路64に流入することを抑制している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記の掃除口用蓋60によれば、地表面Aから突出する空気抜き体65の本体部66は偏平な形状であり、しかも本体部66の通気路64は周面に開口しているため、通気路64を越える高さまで冠水する可能性が高く、冠水した際には通気路64内に雨水が大量に流入するという欠点を有していた。なお、本体部66の高さを大きくし通気路64の位置を高くすれば、雨水が流入する可能性を低くすることができるが、このように構成すると、本体部66が地表面Aから大きく突出し、歩行者が躓きやすくなるという新たな問題が生じる。
【0007】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、歩行者の安全性を高めるとともに、大雨の場合でも雨水の流入を効果的に防止できる排水管路における掃除口用蓋を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の排水管路における掃除口用蓋は、
「地中の排水管路に接続され上方に延出された掃除管の上端開口部に取付けられる掃除口用蓋であって、
枠状の蓋枠と、
該蓋枠内に着脱可能に嵌込まれ、上下方向に貫通する貫通孔が中央に設けられた蓋本体と、
該蓋本体の前記貫通孔に挿入され上限位置及び下限位置の間で上下方向に移動可能に支持されるとともに、上端近傍に開口した上側通気口、下面に開口した下側通気口、及び前記上側通気口と前記下側通気口とを連通する連通孔、が内部に形成された可動空気抜き部材と、
該可動空気抜き部材を少なくとも前記上限位置及び前記下限位置で支持する支持部材と
を具備する」
ことを特徴とするものである。
【0009】
ここで、「排水管路」には、排水枡に接続されたU字形のトラップが含まれる。また、「蓋本体」は、上面の高さを蓋枠の上面の高さに一致させることが好ましい。また、「可動空気抜き部材」には、移動範囲を上限位置と下限位置との間に規制するためのストッパーを備えることが好ましい。なお、「貫通孔に挿入」には、貫通孔に直接挿入される場合、または貫通孔に筒状のスリーブを備え、そのスリーブ内に挿入される場合が含まれる。また、「支持部材」としては、蓋本体の貫通孔と可動空気抜き部材との間に介装された環状のパッキン(Oリング等)を挙げることができる。なお、この場合、「パッキン」は、蓋本体の貫通孔の内周面(スリーブを備えるものはスリーブの内周面)に取付けられ可動空気抜き部材の外周面に対して摺接するように配置してもよく、可動空気抜き部材の外周面(上側通気口の部分を除く)に取付けられ、貫通孔の内周面(またはスリーブの内周面)に対して摺接するように配置してもよい。また、上側通気口は、雨水が流入しないような向きに開口していればよく、水平方向、外側に向かって下り勾配、及び下向き、のいずれの方向に開口していてもよい。なお、上側通気口が形成される「上端近傍」としては、水平方向へ向かって開口可能な可動空気抜き部材の外周面上端が好ましいが、上端よりも2〜3mm低い位置としてもよい。
【0010】
本発明の掃除口用蓋によれば、蓋枠に嵌込まれた蓋本体には、中央に貫通孔が設けられ、この貫通孔内に、可動空気抜き部材が挿入されている。可動空気抜き部材には、上端近傍に開口した上側通気口と、下面に開口した下側通気口と、上側通気口及び下側通気口を連通する連通孔とが形成されている。このため、上側通気口が蓋本体の上面よりも突出した状態では、掃除管の内部空間が、下側通気口、連通孔、及び上側通気口を通して掃除管の外部(すなわち地上部分)に連通し、排水管路内における空気圧の変動を抑制することができる。
【0011】
また、可動空気抜き部材は、上限位置と下限位置との間で上下方向に移動可能に支持されている。可動空気抜き部材を下限位置に移動させると、可動空気抜き部材の地表面からの突出量を小さく抑えることができ、ひいては歩行者が可動空気抜き部材に躓くことを極力防止することが可能になる。なお、この場合、上側通気口の高さが低くなるが、上側通気口を略水平方向または下向きに開口させることにより、雨が降っていない場合は勿論、雨が降っていても冠水に至っていない場合(すなわち通常の使用状態)には、雨水の流入を防止することができる。一方、大雨等により、上側通気口の高さよりも高い位置まで冠水する虞がある場合には、可動空気抜き部材を上方に移動させればよい。これによれば、上側通気口の位置が高くなり、上側通気口に雨水が流入する可能性を大幅に低くすることができる。
【0012】
また、支持部材を備えているため、可動空気抜き部材を上限位置または下限位置で保持することが可能となる。なお、支持部材として環状のパッキンを介装した場合には、貫通孔の内周面(スリーブを備える場合にはその内周面)と可動空気抜き部材の外周面との間の水密性を高め、可動空気抜き部材の周りから掃除管の内部に雨水が浸入することを阻止できるとともに、可動空気抜き部材の摺動抵抗を高めることが可能となる。
【0013】
また、本発明の排水管路における掃除口用蓋において、
「前記可動空気抜き部材は、
可動位置に拘わらず前記上側通気口が前記蓋本体よりも上方に位置するように配置され、
前記上側通気口の下側の外周面から径方向外側に張出して設けられるとともに、上面が外側に向かって下り勾配に形成された傘形状の張出部をさらに備える」
ことを特徴とするものである。
【0014】
本発明の排水管路における掃除口用蓋によれば、可動空気抜き部材は、下限位置に移動した場合でも、上側通気口が蓋本体よりも上方に位置するように配置される。このため、水平方向に開口した上側通気口に土等が入り込むことを抑制できるとともに、可動空気抜き部材の上端部分を摘んだり工具を引っ掛けたりすることが可能となり、可動空気抜き部材の引上操作が容易になる。なお、この際、可動空気抜き部材は、常に蓋本体の上面から突出した状態で配置されることとなるが、下限位置における可動空気抜き部材の位置を最小限の高さに設定することで、歩行者の躓きを抑制することが可能となる。
【0015】
また、可動空気抜き部材における上側通気口の下側には、径方向外側に張出した張出部が設けられている。このため、下限位置では、貫通孔の周囲を覆うように、張出部の下面と蓋本体の上面とが接した状態となり、ひいては貫通孔側への雨水の浸入を防ぐとともに、通常の使用位置である下限位置において可動空気抜き部材を安定して支持することができる。さらに、上側から見て可動空気抜き部材の外形を大きく見せることができ、可動空気抜き部材の存在及びその状態を容易に認識させることができる。
【0016】
また、張出部の上面は外側に向かって下り勾配に形成されているため、可動空気抜き部材の上面に降った雨水を外側に向かって案内し、上側通気口に対する雨水の流入を一層効果的に防止することができる。また、可動空気抜き部材の外縁部分が薄くなるため、歩行者の躓きを一層抑制することが可能になる。
【0017】
本発明の排水管路における掃除口用蓋において、
「前記可動空気抜き部材は、前記上側通気口を含む上端近傍から径方向外側に突出したフランジ部をさらに備え、
前記蓋本体には、
前記可動空気抜き部材が前記下限位置の際、前記フランジ部を収容するとともに、前記可動空気抜き部材の上面の高さが前記蓋本体の上面の高さに一致するように前記フランジ部を支持する径大の凹部が形成され、該凹部の内周面と前記上側通気口との間に通気用の隙間が設けられている」
ようにしてもよい。
【0018】
これによれば、貫通孔の上端には、貫通孔よりも径の大きな凹部が形成されており、可動空気抜き部材が下限位置に移動した際、可動空気抜き部材の上端近傍に形成されたフランジ部が収容され、可動空気抜き部材の上面の高さが蓋本体の上面の高さに一致するようになっている。このため、通常の使用時には、可動空気抜き部材を蓋本体から突出させることなく設置することが可能になり、歩行者が可動空気抜き部材に躓くことを確実に防止することができる。また、凹部の内周面と可動空気抜き部材における上側通気口との間には、通気用の隙間が設けられているため、フランジ部が凹部内に収容された状態でも、水平方向に開口した上側通気口を蓋本体の外部に連通させることができる。
【発明の効果】
【0019】
このように、本発明によれば、通常の使用状態では、可動空気抜き部材を下限位置に移動させることで、可動空気抜き部材の突出量を小さく抑えることができ、歩行者が可動空気抜き部材に躓くことを極力防止することができる。また、大雨等により、下限位置における上側通気口の高さよりも高い位置まで冠水する虞がある場合には、可動空気抜き部材を上方に移動させることにより、上側通気口の位置を高くし、上側通気口に雨水が流入する可能性を大幅に低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本実施形態の掃除口用蓋の構成を示す分解斜視図である。
【図2】掃除口用蓋の構成、及び可動空気抜き部材の動作を示す断面図である。
【図3】他の例の掃除口用蓋の構成、及び可動空気抜き部材の動作を示す断面図である。
【図4】(a)は排水システムの全体構成を示す概念図であり、(b)は従来の掃除口用蓋を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の第一実施形態である掃除口用蓋について、図1及び図2に基づき説明する。掃除口用蓋1は、掃除管56(図4(a)参照)の上端開口部56aに取付けられるものであり、掃除管56の上端開口部56aに固定される蓋枠2と、蓋枠2内に着脱可能に嵌込まれるとともに中央に貫通孔14が設けられた蓋本体3と、貫通孔14に嵌挿されて接着された略円筒状のスリーブ4と、スリーブ4の貫通孔17に挿入され掃除管56の内部空間を地上部分に連通することで、掃除管56内の圧力変動を抑制する可動空気抜き部材5と、スリーブ4の貫通孔17及び可動空気抜き部材5の間に介装されたパッキン6と、を備えて構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。
【0022】
蓋枠2は、略円筒状の形状を呈した合成樹脂製の部材であり、その上部側には、外側に向かって張出した肉厚部8が形成されている。また、蓋枠2の内周面上端には、蓋本体3の円板部11(後述する)を収容した状態で支持する環状溝部9が形成されている。なお、蓋枠2は、上面の高さが地表面A(図4(a)参照)に一致するように取付けられる。
【0023】
蓋本体3は、蓋枠2と同様、合成樹脂製であり、円板形状の円板部11と、円板部11の底面から下方に垂設された略円筒状の垂下筒部12とを備えている。なお、円板部11の厚みは、蓋枠2における環状溝部9の深さに等しく、蓋本体3が蓋枠2の環状溝部9に嵌込まれた際、蓋枠2の上面の高さが蓋本体3の上面の高さに一致するようになっている。また、蓋本体3の上面16における外周縁には、互いに対向する位置に一対の切欠部15が形成されており、ドライバー等の工具を切欠部15に差込むことで、蓋本体3を蓋枠2から取外すことが可能になっている。また、蓋本体3の中心には上下方向に貫通する貫通孔14が設けられている。
【0024】
スリーブ4は、内部に貫通孔17を有する円筒形の部材であり、上端に鍔状の掛止部18が形成されている。また、スリーブ4の上部内周面には中心に向かって突設した円環状の突起部19が形成されている。
【0025】
可動空気抜き部材5は、合成樹脂製であり、蓋本体3を貫通するように、スリーブ4の貫通孔17に挿入され、下限位置(図2(a)参照)と上限位置(図2(b)参照)との間で上下方向に移動可能に支持されている。この可動空気抜き部材5は、略円柱状の軸部20を備えており、軸部20の上端近傍には水平方向に開口した一対の上側通気口23が形成され、軸部20の下面には下向きに開口した下側通気口24が形成され、軸部20の内部には上側通気口23と下側通気口24とを連通する連通孔25が形成されている。つまり、軸部20には、略T字形の通路が形成されており、蓋本体3の上側と下側とが連通するように構成されている。
【0026】
また、上側通気口23の下側の軸部20には、傘状の張出部21が径方向外側に張出して設けられている。張出部21の直径は貫通孔17の内径よりも大きくなっており、可動空気抜き部材5の下限位置を規制する上側ストッパーとして作用している。また、張出部21の上面は外側に向かって下り勾配に形成され、張出部21の上面に降った雨水が外側に向かって案内されるようになっている。
【0027】
また、軸部20の下端部分には、フランジ状の下部ストッパー22が形成されている。下部ストッパー22の直径は、スリーブ4の貫通孔17の内径と略等しくなっており、可動空気抜き部材5を上方に移動させた際に、スリーブ4における突起部19の底面に当接する(正確にはパッキン6を介して接触)ことで、上限位置を規制するようになっている。
【0028】
ところで、可動空気抜き部材5の張出部21はスリーブ4の貫通孔17よりも大きく形成され、可動空気抜き部材5の下部ストッパー22は突起部19の内径よりも大きく形成されているため、仮に可動空気抜き部材5を一体成形したものでは、貫通孔17に嵌挿させることができなくなる。そこで本例の可動空気抜き部材5は、張出部21よりも上側の上側部品5aと、その下側に位置する円筒状の下側部品5bとに分割されており、ネジ部26によって螺合される構成となっている。
【0029】
パッキン6は、Oリングからなり、可動空気抜き部材5における軸部20の外周面(特に下部ストッパー22の真上)に装着されるとともに、スリーブ4における貫通孔17の内周面に摺接した状態で設けられている。これにより、貫通孔17の内周面と軸部20の外周面との間の水密性が高められ、軸部20の周りから蓋本体3の内部に雨水が浸入することが阻止されるようになっている。また、パッキン6を介装することにより、スリーブ4の貫通孔17に対する可動空気抜き部材5の摺動抵抗が高められ、可動空気抜き部材5を任意の高さで保持することが可能となっている。
【0030】
次に、本実施形態の掃除口用蓋1の作用について説明する。スリーブ4に嵌挿された可動空気抜き部材5には、上端近傍において水平方向に開口した上側通気口23と、下面において下向きに開口した下側通気口24と、上側通気口23及び下側通気口24を連通する連通孔25とが形成されているため、掃除管56の内部空間が外部に連通し、排水管路51内における空気圧の変動が抑制される。また、上側通気口23は、下限位置に移動した場合でも蓋本体3よりも上方に位置するように配置され、しかも水平方向に開口しているため、上側通気口23から雨水や土等が入込むことが抑制される。
【0031】
また、可動空気抜き部材5は、上下方向に移動可能に支持されており、雨が降っていない場合、または雨が降っていても冠水に至っていない場合(すなわち通常の使用状態)と、大雨等により上側通気口23の高さよりも高い位置まで冠水する虞がある場合(すなわ非常時)とで使用態様を変えることが可能である。詳しく説明すると、通常の使用状態では、上側通気口23の高さが低くても雨水が流入する虞がないため、可動空気抜き部材5を下限位置(図2(a)参照)に移動させることが好ましい。これによれば、可動空気抜き部材5の地表面Aからの突出量が小さくなり、歩行者が可動空気抜き部材5に躓くことを極力防止することができる。特に、可動空気抜き部材5における張出部21の上面は外側に向かって下り勾配に形成されているため、外周部分が一番低くなり、歩行者の安全性を一層高めることが可能になる。一方、上側通気口23の高さよりも高い位置まで冠水する虞がある場合には、可動空気抜き部材5を上限位置(図2(b)参照)に移動させることが好ましい。これによれば、上側通気口23の位置が高くなり、上側通気口23に雨水が流入する可能性が大幅に低くなる。なお、本例では、上側通気口23の高さは、可動空気抜き部材5が下限位置の場合に5.5mmとなり、上限位置の場合に15.5mmとなるように設定されている。つまり、地表面Aから15.5mmの高さまで冠水しても、上側通気口23に水が流入しないように構成されている。
【0032】
このように、第一実施形態の掃除口用蓋1によれば、通常使用時には、可動空気抜き部材5の突出量を小さくし、歩行者の安全性を高めることができる。一方、非常時には、可動空気抜き部材5を引上げることにより、雨水の流入を極力防止することができる。
【0033】
また、本例の掃除口用蓋1によれば、貫通孔17と可動空気抜き部材5の軸部20との間に、環状のパッキン6が介装されているため、軸部20の摺動抵抗を高め、可動空気抜き部材5を任意の高さで保持することができる。特に、複雑な保持機構を備えることなく、可動空気抜き部材5を保持するため、安価に構成できるとともに、土の浸入等による故障の発生を抑制することが可能になる。また、パッキン6の摩擦力で可動空気抜き部材5を保持することから、例えば可動空気抜き部材5を上限位置で使用しているときに、歩行者によって踏まれることがあっても、可動空気抜き部材5を自然に下限位置へ移動させることができ、ひいては荷重による可動空気抜き部材5の破損や破壊を抑制することができる。
【0034】
続いて、本発明の第二実施形態の掃除口用蓋30について、図3に基づき説明する。本例の掃除口用蓋30は、第一実施形態の掃除口用蓋1と同様の構成を有しており、円筒状の蓋枠31と、蓋枠31に嵌込まれ中央に貫通孔33が設けられた蓋本体32と、貫通孔33に挿入され接着されたスリーブ34と、スリーブ34に対して上下方向に摺動可能な可動空気抜き部材35と、可動空気抜き部材35の外周の水密性を高める環状のパッキン36とを備えて構成されている。
【0035】
ただし、可動空気抜き部材35には、傘状の張出部が設けられておらず、その代わりに、軸部43の径よりも僅かに大きな径のフランジ部44が軸部43の上端部分に形成されており、フランジ部44の周面に一対の上側通気口46が設けられている。なお、下側通気口47、連通孔48、及び下部ストッパー45の構成は、第一実施形態の可動空気抜き部材5の場合と同様である。
【0036】
一方、スリーブ34は、略円筒状であるが、上端には鍔状に形成された掛止部38が設けられており、貫通孔33の上端に形成された受部33aに掛止されるようになっている。また、スリーブ34の上部には、可動空気抜き部材35の上面が蓋本体32の上面の高さに一致するように、可動空気抜き部材35のフランジ部44を収容する凹部39が形成されている。なお、フランジ部44の直径と凹部39の内径とは略一致する大きさとなっているが、上側通気口46が形成されたフランジ部44の周面部分のみは上下方向に切欠かれた形状となっており、上側通気口46と凹部39の内周面との間に、上側が開放された通気用の隙間49が設けられている。
【0037】
このように、第二実施形態の掃除口用蓋30によれば、可動空気抜き部材35が下限位置に移動した際(図3(a)参照)、可動空気抜き部材35の上面の高さが蓋本体32の上面の高さに一致するため、通常の使用時には、可動空気抜き部材35を蓋本体32から突出させることなく使用することができ、ひいては歩行者が可動空気抜き部材35に躓くことを確実に防止することが可能になる。また、凹部39の内周面と上側通気口46との間には、通気用の隙間49が設けられているため、フランジ部44が凹部39内に収容された状態でも、水平方向に開口した上側通気口46を通して空気を流すことができる。一方、可動空気抜き部材35を上限位置(図3(b)参照)に移動した際には、上側通気口46の位置が高くなり、上側通気口46に雨水が流入する可能性を大幅に低くすることができる。
【0038】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0039】
すなわち、上記第一実施形態及び第二実施形態では、支持部材として環状のパッキン6,36を備え、パッキン6,36の摩擦抵抗に抗して、可動空気抜き部材5,35を上下方向に摺動させるものを示したが、可動空気抜き部材の外周面に雄ネジを形成するとともに、スリーブの内周面に雌ネジを形成し、可動空気抜き部材をスリーブに螺合させることにより、上下方向に移動させるようにしてもよい。なお、この場合、雄ネジと雌ネジの組合せが本発明の支持部材に相当することになり、パッキン6を省略することが可能になる。
【0040】
また、上記第一実施形態及び第二実施形態では、上側通気口23,46を夫々二つ設けるものを示したが、上側通気口23,46の数は特に限定されるものではなく、一つのみまたは三つ以上としてもよい。
【0041】
また、上記第一実施形態では、可動空気抜き部材5における張出部21の外径を蓋本体3の外径よりも小さくするものを示したが、蓋本体3の外径よりも大きく形成してもよい。これによれば、蓋本体3全体が張出部21によって覆われ、スリーブ4と可動空気抜き部材5との間へ向かう雨水の流入を一層防止することができる。
【0042】
また、上記第二実施形態では、可動空気抜き部材35の上面を平面とするものを示したが、上面に凹部を形成し、その凹部内につまみを設けるようにしてもよい。これによれば、つまみを持って可動空気抜き部材35を引き上げることが可能となり、操作が容易になる。なお、この場合、凹部内につまみを形成することから、つまみを地表面よりも突出させることなく形成することができる。
【0043】
さらに、上記第一実施形態及び第二実施形態では、蓋本体3,32にスリーブ4,34を装着し、スリーブ4,34の貫通孔17に可動空気抜き部材5,35を嵌挿させるものを示したが、スリーブを設けることなく、蓋本体3,32の貫通孔14,33に可動空気抜き部材5,35を直接嵌挿させるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0044】
1,30 掃除口用蓋
2,31 蓋枠
3,32 蓋本体
5,35 可動空気抜き部材
6,36 パッキン(支持部材)
14,17,33 貫通孔
16 上面
21 張出部
23,46 上側通気口
24,47 下側通気口
25,48 連通孔
39 凹部
44 フランジ部
49 隙間
51 排水管路
56 掃除管
【先行技術文献】
【特許文献】
【0045】
【特許文献1】特開平09−328793号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の排水管路に接続され上方に延出された掃除管の上端開口部に取付けられる掃除口用蓋であって、
枠状の蓋枠と、
該蓋枠内に着脱可能に嵌込まれ、上下方向に貫通する貫通孔が中央に設けられた蓋本体と、
該蓋本体の前記貫通孔に挿入され上限位置及び下限位置の間で上下方向に移動可能に支持されるとともに、上端近傍に開口した上側通気口、下面に開口した下側通気口、及び前記上側通気口と前記下側通気口とを連通する連通孔、が内部に形成された可動空気抜き部材と、
該可動空気抜き部材を少なくとも前記上限位置及び前記下限位置で支持する支持部材と
を具備することを特徴とする排水管路における掃除口用蓋。
【請求項2】
前記可動空気抜き部材は、
可動位置に拘わらず前記上側通気口が前記蓋本体よりも上方に位置するように配置され、
前記上側通気口の下側の外周面から径方向外側に張出して設けられるとともに、上面が外側に向かって下り勾配に形成された傘形状の張出部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の排水管路における掃除口用蓋。
【請求項3】
前記可動空気抜き部材は、前記上側通気口を含む上端近傍から径方向外側に突出したフランジ部をさらに備え、
前記蓋本体には、
前記可動空気抜き部材が前記下限位置の際、前記フランジ部を収容するとともに、前記可動空気抜き部材の上面の高さが前記蓋本体の上面の高さに一致するように前記フランジ部を支持する径大の凹部が形成され、該凹部の内周面と前記上側通気口との間に通気用の隙間が設けられている
ことを特徴とする請求項1に記載の排水管路における掃除口用蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−87467(P2012−87467A)
【公開日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−232488(P2010−232488)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【出願人】(591264382)東栄管機株式会社 (5)
【Fターム(参考)】