説明

排水管路用圧力開放蓋

【課題】排水管路内の圧力の上昇が比較的小さな場合でも、確実に圧力を開放することができ、また、圧力の開放時に砂や土などが浸入しても、原状に復帰させ、雨水の浸入を防止することができる排水管路用圧力開放蓋を提供する。
【解決手段】蓋枠内に嵌込まれ上下方向に貫通する貫通孔5が設けられた蓋本体4と、貫通孔5を閉鎖する下限位置、及び蓋本体4から浮上し貫通孔5を開放する上限位置、の間で上下方向に移動可能な可動開閉蓋6と、その移動方向を上下方向に規制する案内部7と、可動開閉蓋6の外周面に装着され貫通孔5への雨水の浸入を阻止する環状のパッキン8とを備える。特に、貫通孔5の内周面は、下側ほど開口面積が小さくなるテーパー状の傾斜内周面17を有し、可動開閉蓋6は、傾斜内周面17に合致する傾斜外周面19を有し、パッキン8は、貫通孔5の傾斜内周面17に圧接する位置に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水管路用圧力開放蓋に関し、特に、排水枡やマンホールなど立管の上端開口部に取付けられ、排水管路内の圧力を開放することが可能な排水管路用圧力開放蓋に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図3に示すように、住宅内の流し台や浴槽等の各設備50には排水管路51(枝管)が接続されており、この排水管路51と、地中に埋設された排水本管52との接続箇所には、排水枡53が設置されている。排水枡53には、地表面まで延出された掃除管54が立設され、その上端開口が掃除蓋55によって閉鎖されている。掃除蓋55は、一般に、掃除管54の上端部分に固定された円筒状の蓋枠56と、蓋枠56内に着脱可能に嵌込まれた円盤状の蓋本体57とから構成されている。
【0003】
ところで、蓋本体57は、掃除管54内に雨水が浸入しないように、蓋枠56に対して密接した状態で嵌込まれている。このため、例えば集中豪雨により多量の雨水が排水本管52に流れ込んだ場合には、排水本管52側から発生する圧力により、排水枡53及び排水管路51内の圧力(内圧)が過大となり、ひいては排水枡53や排水管路51を破損したり、住宅内の各設備50の封水を飛散させたりする虞があった。
【0004】
この不具合を解消する掃除蓋として、図4(a)に示す圧力開放蓋60が提案されている(特許文献1参照)。この圧力開放蓋60は、円盤状の蓋体61及び円筒状の蓋枠62から構成され、蓋体61には、裏面から垂下されたガイド部材64と、蓋体61の上下動を規制するロック部材65とが備えられ、蓋枠62には、蓋体61を着脱可能に支持する受口部66と、ロック部材65のフック部65aに係合可能な環状の突起部67とが備えられている。また、蓋体61が蓋枠62に装着された状態、すなわち蓋枠62の開口部62aが閉鎖された状態では、ロック部材65のフック部65aが突起部67よりも下方に離間して配置されている。これによれば、蓋体61の下面に過大な圧力がかかったとき、ロック部材65のフック部65aと突起部67とが係合するまで蓋体61を押し上げ(図4(a)に示す状態)、蓋枠62の開口部62aを通して圧力を開放することが可能になっている。また、ロック部材65及び突起部67を備えることにより、たとえ内圧の上昇に伴って蓋体61が大きく押し上げられても、蓋体61が蓋枠62から外れないようになっている。
【0005】
また、別の掃除蓋として、図4(b)に示すものが提案されている(特許文献2参照)。この圧力開放蓋70は、略円筒状の蓋枠71と、蓋枠71内に着脱可能に嵌込まれ上下方向に貫通する複数の貫通孔72を有する蓋本体73と、蓋本体73の上面に重ねられ複数の貫通孔72を閉鎖する覆部材74とから構成されている。また、覆部材74は、中心に配置された支持部材75によって上下方向に移動可能な状態で支持されるとともに、その上限位置が規制されている。これによれば、排水枡53内の内圧が高くなると、貫通孔72を介して覆部材74に圧力が加わり、覆部材74を押し上げることで貫通孔72を開放し、圧力を逃すことが可能になっている。また、内圧が低下すると、覆部材74が自重によって降下し、貫通孔72を自然に閉鎖するようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、図4(a)に示した圧力開放蓋60によれば、蓋体61自体を内圧によって押し上げる構成であるため、可動部分の重量が大きくなり、例えば内圧の上昇が比較的小さい場合には、蓋体61を押し上げることが困難となったり、蓋体61の動きが不安定となったりしていた。
【0007】
また、圧力開放蓋60の近傍に何らかの障害物が設置され、その障害物が蓋体61の上面に食み出した状態で載置されている場合には、蓋体61を押し上げることができなくなり、ひいては圧力開放蓋として機能させることができなくなっていた。
【0008】
また、排水枡53の掃除やメンテナンスを行うにあたり、蓋体61を蓋枠62から取り外す場合には、ロック部材65による係合状態を解除すること、具体的にはロック部材65を回転操作することが必要となり、作業性が悪くなっていた。
【0009】
さらに、圧力開放蓋60の蓋枠62には、蓋体61を着脱可能に受ける受口部66が形成されているが、この受口部66は、水平な平面で形成されているため、例えば蓋体61が押し上げられたとき、蓋枠62内に、砂、土またはゴミなどの流入物が浸入すると、それらの流入物が受口部66上に残留しやすくなっていた。そして、蓋体61と受口部66との間に流入物が残留した場合には、蓋体61を原状に復帰させることができなくなり、ひいては蓋体61の周囲から雨水が浸入しやすくなるという問題が生じていた。さらに、圧力開放蓋60の定期的な清掃が必要となり、メンテナンスのための負担も大きくなっていた。
【0010】
一方、図4(b)に示した圧力開放蓋70によれば、蓋本体73の貫通孔72を塞ぐための覆部材74が、蓋本体73の上面に重ねられ、且つ蓋本体73の上面が平面となっているため、覆部材74が押し上げられたとき、蓋本体73と覆部材74との間に、砂、土またはゴミなどの流入物が浸入すると、蓋本体73上の貫通孔72以外の平面部分に流入物が残留しやすくなっていた。そして、流入物が残留した場合には、覆部材74を原状に復帰させることができなくなっていた。
【0011】
また、圧力開放蓋70によれば、蓋本体73の上面に覆部材74が重ねられているため、歩行者が覆部材74に躓きやすいという不具合を有していた。特に、蓋本体73と覆部材74との間に流入物が浸入した場合には、覆部材74が大きく突出したままとなり、躓きやすさが助長されていた。
【0012】
そこで、本発明は、上記の実状に鑑み、排水管路内の圧力の上昇が比較的小さな場合でも、確実に圧力を開放することができ、また、圧力の開放時に砂や土などが浸入しても、原状に復帰させ、雨水の浸入を防止することができる排水管路用圧力開放蓋を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明にかかる排水管路用圧力開放蓋は、
「地中の排水管路に接続され上方に延出された立管の上端開口部に取付けられる排水管路用圧力開放蓋であって、
枠状の蓋枠と、
該蓋枠内に着脱可能に嵌込まれ、上下方向に貫通する貫通孔が設けられた蓋本体と、
該蓋本体の前記貫通孔に嵌挿され該貫通孔を閉鎖する下限位置、及び前記蓋本体から浮上し前記貫通孔を開放する上限位置、の間で上下方向に移動可能な可動開閉蓋と、
該可動開閉蓋の下面から垂下され、前記可動開閉蓋の移動方向を上下方向に規制する案内部と、
前記可動開閉蓋の外周面に装着され、前記可動開閉蓋が前記下限位置に移動した際、前記蓋本体に接触し、前記貫通孔への雨水の浸入を阻止する環状のパッキンと
を備え、
前記貫通孔の内周面は、下側ほど開口面積が小さくなるテーパー状の傾斜内周面を有し、
前記可動開閉蓋は、前記貫通孔の前記傾斜内周面に合致する傾斜外周面を有し、
前記パッキンは、前記貫通孔の前記傾斜内周面に接触可能な位置に配設されている」
ことを特徴とするものである。
【0014】
ここで、「立管」には、排水枡及びマンホールが含まれる。また、「蓋本体」は、蓋枠から突出しないように上面の高さを蓋枠の上面の高さに一致させることが好ましい。また、同様の理由により、「可動開閉蓋」が下限位置の場合、可動開閉蓋の上面の高さを蓋本体の上面の高さに一致させることが好ましい。
【0015】
また、蓋本体における「貫通孔」の位置は特に限定されるものではないが、他の障害物が蓋本体上にはみ出して載置された場合でも、その影響を最も受けにくい蓋本体の中央に設けることが好ましい。また、「環状のパッキン」としては、断面形状が円形のOリング、または断面形状が矩形の平パッキン等を例示することができる。
【0016】
本発明の排水管路用圧力開放蓋によれば、蓋枠に嵌込まれた蓋本体には、上下方向に貫通する貫通孔が設けられ、この貫通孔内に可動開閉蓋が嵌挿されている。可動開閉蓋の下面には案内部が垂下されており、案内部を貫通孔の周面に対して摺接させることで、可動開閉蓋は、下限位置及び上限位置の間で上下方向に案内される。可動開閉蓋が下限位置に移動すると、可動開閉蓋は、蓋本体の貫通孔に嵌挿され、その貫通孔を閉鎖する。一方、可動開閉蓋が上限位置に向かって移動すると、可動開閉蓋は蓋本体から浮上することとなり貫通孔を開放する。
【0017】
さらに詳しく説明すると、排水管路や立管内の圧力(以下、「内圧」という)が低い場合には、可動開閉蓋は下限位置に保持され、蓋本体との協働で立管の上端開口を閉鎖する。なお、可動開閉蓋の外周面には環状のパッキンが装着されており、可動開閉蓋が下限位置に移動すると、パッキンは蓋本体の貫通孔の内周面に接触する。したがって、可動開閉蓋の外周面と貫通孔の内周面とがパッキンを介して密接した状態となり、貫通孔内への雨水の浸入が阻止される。一方、内圧が高くなると、可動開閉蓋の下面に圧力が加えられ、可動開閉蓋は上限位置に向かって押し上げられる。この結果、可動開閉蓋の外周面及びパッキンが貫通孔の内周面から離れ、排水管路や立管内の圧力を開放する。そして、圧力の開放によって内圧が低下すると、可動開閉蓋を押し上げる力が消失することから、可動開閉蓋は自重により自然に下降し、下限位置(すなわち原状位置)に復帰する。
【0018】
ところで、貫通孔の内周面は、下側ほど開口面積が小さくなるテーパー状の傾斜内周面となっており、可動開閉蓋の外周面は、貫通孔の傾斜内周面に合致する傾斜外周面となっている。このため、下限位置では、貫通孔の内周面のみで可動開閉蓋を保持することができ、しかも、可動開閉蓋が原状に向かって復帰する際、貫通孔の内周面(すなわち傾斜内周面)に対して可動開閉蓋の外周面(すなわち傾斜外周面)が嵌挿されるため、内周面及び外周面を円滑にしかも容易に合致させることができる。また、蓋本体において、可動開閉蓋を受ける部分がテーパー状の傾斜内周面となっているため、たとえ、砂や土またはゴミ等の流入物が浸入しても、その流入物は傾斜内周面の傾斜に沿って貫通孔内に流れ落ち、傾斜内周面上、すなわち可動開閉蓋と蓋本体との間には残留しないようになる。したがって、可動開閉蓋を確実に下限位置まで復帰させることが可能となる。
【0019】
また、可動開閉蓋の外周面に装着されたパッキンは、可動開閉蓋が下限位置に移動した際、貫通孔の傾斜内周面に接触するため、可動開閉蓋の自重によってパッキンを傾斜内周面に圧接させることができ、水密状態を維持することが可能になる。また、内圧が高くなって可動開閉蓋に上向きの力が作用した際、パッキンは傾斜内周面に沿って摺接することとなるが、傾斜内周面は上側ほど開口面積が広がっていることから、パッキンに対する摩擦力が小さくなる。したがって、パッキンによる摺動抵抗を小さく抑えることができ、ひいては内圧の上昇が比較的小さな場合でも可動開閉蓋を容易に押し上げることが可能になる。
【0020】
また、本発明の排水管路用圧力開放蓋において、
「前記可動開閉蓋は、前記傾斜外周面に形成された環状の溝部をさらに有し、
前記パッキンは、前記溝部に収容されるとともに、一部分が前記溝部の外部にはみ出した状態で配置されている」
構成とすることができる。
【0021】
これによれば、可動開閉蓋の傾斜外周面に環状の溝部が形成されており、その溝部に環状のパッキンが収容されている。また、パッキンは一部分が溝部の外部にはみ出しており、はみ出した部分が、蓋本体における貫通孔の傾斜内周面に接触するようになっている。このため、可動開閉蓋が下限位置に移動した際に、パッキンと傾斜内周面との間で摺動抵抗が発生しても、可動開閉蓋の傾斜外周面に対してパッキンがずれないようになる。また、傾斜外周面から外方に突出するのは、パッキンの一部分(はみ出した部分)のみであるため、可動開閉蓋の傾斜外周面と貫通孔の傾斜内周面との隙間を極力少なくすることができる。
【0022】
本発明の排水管路用圧力開放蓋において、
「前記案内部は、
前記可動開閉蓋の前記下面の周縁部から垂下されるとともに、周方向に所定の間隔で配置され、上端を支点として内方に弾性変形可能に設けられた複数本の脚部と、
夫々の該脚部の下端から外向きに突出して形成され、前記可動開閉蓋が前記上限位置に移動した際、前記蓋本体の下面に係止され前記可動開閉蓋の上方への移動を阻止する係止爪部と
を備える」
構成とすることができる。
【0023】
ここで、「脚部」の本数は特に限定されるものではないが、三本以上とすることにより、可動開閉蓋を安定して支持することが可能になる。
【0024】
これによれば、可動開閉蓋の移動方向を規制する案内部は、可動開閉蓋の下面周縁部から垂下され、周方向に所定の間隔で配置された複数本の脚部によって構成されているため、可動開閉蓋が蓋本体から浮上した際、脚部同士の間の空間を通して圧力を開放することが可能になる。特に、この空間の面積、すなわち開放面積は、可動開閉蓋の押し上げ位置が高くなるほど大きくなる。換言すれば、内圧の上昇が比較的小さい場合は、開放面積が小さく、内圧の上昇が大きいほど開放面積が大きくなる。したがって、内圧の上昇が比較的小さな場合でも確実に可動開閉蓋を押し上げることができ、一方、内圧の上昇が大きな場合でも可動開閉蓋に極めて大きな圧力がかかることを抑制し、可動開閉蓋の破壊等を防止することができる。
【0025】
また、夫々の脚部の下端には係止爪部が設けられ、可動開閉蓋が上限位置に移動した際、蓋本体の下面に係止されるようになっている。したがって、たとえ可動開閉蓋が大きく押し上げられた場合でも、蓋本体から可動開閉蓋が外れることを防止できる。なお、夫々の脚部は、上端を支点として内方に弾性変形可能であるため、脚部を内方に変形することにより、係止爪部を蓋本体の下面に係止させることなく、抜き取ることが可能になる。つまり、可動開閉蓋を交換したり蓋本体の貫通孔を掃除したりする場合の作業においても、作業者に負担をかけることなく、簡単に行わせることができる。
【発明の効果】
【0026】
このように、本発明によれば、排水管路内の圧力の上昇が比較的小さな場合でも、確実に圧力を開放することができる。また、圧力の開放時に砂や土などが浸入しても、可動開閉蓋を原状に復帰させ、雨水の浸入を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本実施形態の排水管路用圧力開放蓋の構成を示す分解斜視図である。
【図2】排水管路用圧力開放蓋の動作を示す断面図であり、(a)は可動開閉蓋が下限位置である状態を示し、(b)は可動開閉蓋が上限位置である状態を示す。
【図3】排水システムの全体構成を示す概略図である。
【図4】(a)は従来の圧力開放蓋を示す断面図であり、(b)は従来の他の圧力開放蓋を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施形態である排水管路用圧力開放蓋1(以下、「圧力開放蓋1」と称す)について、図1及び図2に基づき説明する。圧力開放蓋1は、掃除管54(図3参照)の上端開口部に取付けられるものであり、掃除管54の上端開口部に固定される蓋枠2(図1では省略)と、蓋枠2の開口部3内に着脱可能に嵌込まれる蓋本体4と、蓋本体4の外周面に装着されるパッキン9(図1では省略)と、蓋本体4の中央に設けられた貫通孔5に嵌挿される可動開閉蓋6と、可動開閉蓋6から垂下された案内部7と、可動開閉蓋6の外周面に装着されるパッキン8と、を備えて構成されている。以下、各構成について詳細に説明する。ここで、掃除管54が本発明の立管に相当する。
【0029】
蓋枠2は、略円筒状の形状を呈した合成樹脂製の部材であり、その上部側には、外側に向かって張出した肉厚部10が形成されている。また、蓋枠2の内周面上端には、蓋本体4の円板部13(後述する)を収容した状態で支持する受口部11が形成されている。なお、蓋枠2は、上面の高さが地表面A(図3参照)に一致するように取付けられる。
【0030】
蓋本体4は、蓋枠2と同様、合成樹脂製であり、円板形状の円板部13と、円板部13の底面から下方に垂設された略円筒状の垂下筒部14とを備えている。なお、円板部13の厚みは、蓋枠2における受口部11の深さに等しく、蓋本体4が蓋枠2の受口部11に嵌込まれた際、蓋本体4の上面の高さが蓋枠2の上面の高さに一致するようになっている。また、蓋本体4の中心には上下方向に貫通する貫通孔5が設けられている。貫通孔5の内周面は、下側ほど開口面積が小さくなるテーパー状の傾斜内周面17となっている。この傾斜内周面17の傾斜角は、特に限定されるものではないが、30°〜60°とすることが好ましく、特に45°が最適である。なぜなら、この傾斜角度が60°よりも大きな場合(すなわち垂直に近い場合)には、貫通孔5における上部側の開口面積と下部側の開口面積との差が小さくなり、貫通孔5の内周面で可動開閉蓋6を支持しようとすると、貫通孔5と可動開閉蓋6との嵌合わせに自由度がなくなり、可動開閉蓋6を自然に復帰させることが困難となるからである。また、傾斜角度が30°よりも小さな場合には、傾斜内周面17に土や砂またはゴミなどが流入した際、滑り落ちることなく残留する可能性があるからである。なお、貫通孔5の内周面のうち下端部分のみは、垂直内周面18となっており、この垂直内周面18によって後述する脚部24との摺接面が確保されている。
【0031】
可動開閉蓋6は、蓋本体4と同様、合成樹脂製であり、略円板形状に形成されている。可動開閉蓋6の厚みは、蓋本体4における円板部13と略同一であり、蓋本体4の貫通孔5に嵌挿した状態では、可動開閉蓋6の上面の高さが蓋本体4の上面の高さに一致するようになっている。つまり、蓋枠2、蓋本体4、及び可動開閉蓋6の上面は、互いに連続する平面となっており、地表面Aから突出することなく配置されている。
【0032】
可動開閉蓋6の外周面には、下側ほど断面積が小さくなる傾斜外周面19が形成されており、可動開閉蓋6が貫通孔5に嵌挿された際、傾斜外周面19全体が貫通孔5の傾斜内周面17に合致するように構成されている。なお、可動開閉蓋6の傾斜外周面19には、環状の溝部20が形成され、パッキン8が一部をはみ出した状態で収容されているため、傾斜内周面17と傾斜外周面19との間には僅かな隙間が形成される。
【0033】
案内部7は、可動開閉蓋6の移動方向を上下方向に規制するものであり、可動開閉蓋6の下面22の周縁部から垂下され、周方向に120度間隔で配置された三本の脚部24を備えている。夫々の脚部24は、棒状の部材であり、蓋本体4における貫通孔5の垂直内周面18に対して内側から摺接することにより、可動開閉蓋6を水平に保ったまま上下方向に移動させることを可能にしている。また、脚部24の下端には外向きに突出した係止爪部25が形成されており、可動開閉蓋6が上方に移動した際、蓋本体4の下面に係止されることで、可動開閉蓋6の上限位置を規制している。なお、夫々の脚部24は互いに離間して配置され、また脚部24は上端を支点として弾性変形可能であるため、三本の脚部24を同時に内側に向かって変形させることにより、係止爪部25の係合状態を解除し、可動開閉蓋6及び案内部7を蓋本体4から取り外すことが可能である。
【0034】
次に、本実施形態の圧力開放蓋1の作用について、図2に基づき説明する。排水枡53(図3参照)の内圧が低い場合(通常の場合)には、図2(a)に示すように、可動開閉蓋6は下限位置に位置する。この下限位置では、可動開閉蓋6は、蓋本体4における貫通孔5の傾斜内周面17によって受止められ、貫通孔5を閉鎖する。また、可動開閉蓋6の外周面(傾斜外周面19)には環状のパッキン8が装着されており、下限位置ではパッキン8が貫通孔5の傾斜内周面17に接触する。これにより、可動開閉蓋6の傾斜外周面19と貫通孔5の傾斜内周面17とがパッキン8を介して密接した状態となる。
【0035】
一方、排水枡53の内圧が高くなると、可動開閉蓋6の下面に圧力が加えられ、可動開閉蓋6は上限位置(図2(b)参照)に向かって押し上げられる。なお、可動開閉蓋6の下面には、三本の脚部24が等間隔で配置されているため、可動開閉蓋6は、これらの脚部24が貫通孔5の垂直内周面18に摺接することにより、水平状態を保ったまま真直ぐ押し上げられる。そして、可動開閉蓋6が蓋本体4から浮上すると、可動開閉蓋6の傾斜外周面19及びパッキン8が貫通孔5の傾斜内周面17から離れ、脚部24同士の間の空間Sを通して圧力が開放される。なお、夫々の脚部24の下端には係止爪部25が設けられているため、可動開閉蓋6が上限位置に移動すると、係止爪部25が蓋本体4の下面に係止され、可動開閉蓋6が蓋本体4から外れることが防止される。
【0036】
また、上記の空間Sの面積、すなわち開放面積は、可動開閉蓋6の押し上げ位置が高くなるほど大きくなる。換言すれば、内圧の上昇が比較的小さい場合は、開放面積が小さく、内圧の上昇が大きいほど開放面積が大きくなる。したがって、内圧の上昇が比較的小さな場合でも確実に可動開閉蓋6を押し上げることができ、一方、内圧の上昇が大きな場合でも可動開閉蓋6に極めて大きな圧力がかかることを抑制し、可動開閉蓋6の破壊等を防止することができる。
【0037】
そして、圧力の開放によって内圧が低下すると、可動開閉蓋6を押し上げる力が消失するため、可動開閉蓋6は自重により自然に下降し、下限位置(すなわち原状位置)に復帰する。
【0038】
このように、本例の圧力開放蓋1によれば、内圧によって押し上げられる部分は、蓋本体4の貫通孔5に嵌挿された可動開閉蓋6及び案内部7のみであるため、可動部分の重量が軽くなる。また、蓋本体4の近傍に何らかの障害物が設置され、その障害物が蓋本体4の上面に食み出した状態で載置された場合でも、可動開閉蓋6は蓋本体4の中央に配置されているため、障害物による影響は受けにくい。また、パッキン8が接触するのは貫通孔5の傾斜内周面17であるため、パッキン8による摺動抵抗が小さくなる。さらに、内圧の上昇が小さな場合には、可動開閉蓋6の上昇が少なく、圧力が開放される空間Sの面積が小さくなる。以上の理由により、本例の圧力開放蓋1によれば、内圧の上昇が比較的小さな場合でも、可動開閉蓋6を確実に押し上げ圧力を開放することが可能となる。
【0039】
また、本例の圧力開放蓋1によれば、可動開閉蓋6が押し上げられたときに、可動開閉蓋6と蓋本体4との間に、砂や土またはゴミ等の流入物が浸入することがあっても、その流入物は傾斜内周面17の傾斜に沿って貫通孔5内に流れ落ち、傾斜内周面17上、すなわち可動開閉蓋6と蓋本体4との接合部分には残留しないようになる。また、可動開閉蓋6は脚部24によって案内されるため、圧力が開放された後、真直ぐ降下させることができる。また、貫通孔5の傾斜内周面17に対して可動開閉蓋6の傾斜外周面19が嵌挿されるため、貫通孔5に対して可動開閉蓋6を円滑にしかも容易に嵌挿させることができる。さらに、パッキン8が接触する内周面は、テーパー状の傾斜内周面17であるため、可動開閉蓋6の自重によってパッキン8を傾斜内周面17に圧接させることができる。以上の理由により、本例の圧力開放蓋1では、可動開閉蓋6を確実に下限位置まで復帰させることが可能となる。
【0040】
また、本例の圧力開放蓋1によれば、パッキン8は環状の溝部20に収容されているため、可動開閉蓋6の傾斜外周面19に対してパッキンがずれないように支持することができる。また、傾斜外周面19から外方に突出するのは、パッキン8の一部分(はみ出した部分)のみであるため、可動開閉蓋6の傾斜外周面19と貫通孔5の傾斜内周面17との隙間を極力少なくすることができる。
【0041】
さらに、本例の圧力開放蓋1によれば、三つの脚部24を内方に変形することにより、可動開閉蓋6及び案内部7を蓋本体4から取り外すことが可能になるため、可動開閉蓋6を交換したり蓋本体4の貫通孔5を掃除したりする場合においても、作業者に負担をかけることなく、簡単に行わせることができる。
【0042】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明はこれらの実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0043】
すなわち、上記実施形態では、貫通孔5の内周面下部に、案内部7を摺接させるための垂直内周面18を形成するものを示したが、垂直内周面18を形成することなく、貫通孔5の内周面全体を傾斜させるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態では、蓋本体4に貫通孔5を一つのみ設けるものを示したが、貫通孔を複数設け、各貫通孔に対して夫々可動開閉蓋を嵌挿させるようにしてもよい。
【0045】
さらに、上記実施形態では、蓋本体4として、円板部13及び垂下筒部14から構成されたものを示したが、強度を高めるために、垂下筒部14の内側に格子状または放射状の補強部(図示しない)を設けるようにしてもよい。なお、この場合、補強部が貫通孔5の下方を通って横設されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1 排水管路用圧力開放蓋
2 蓋枠
4 蓋本体
5 貫通孔
6 可動開閉蓋
7 案内部
8 パッキン
17 傾斜内周面
19 傾斜外周面
20 溝部
22 下面
24 脚部
25 係止爪部
52 排水本管(排水管路)
54 掃除管(立管)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0047】
【特許文献1】特開2007−321535号公報
【特許文献2】実開平6−20585号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中の排水管路に接続され上方に延出された立管の上端開口部に取付けられる排水管路用圧力開放蓋であって、
枠状の蓋枠と、
該蓋枠内に着脱可能に嵌込まれ、上下方向に貫通する貫通孔が設けられた蓋本体と、
該蓋本体の前記貫通孔に嵌挿され該貫通孔を閉鎖する下限位置、及び前記蓋本体から浮上し前記貫通孔を開放する上限位置、の間で上下方向に移動可能な可動開閉蓋と、
該可動開閉蓋の下面から垂下され、前記可動開閉蓋の移動方向を上下方向に規制する案内部と、
前記可動開閉蓋の外周面に装着され、前記可動開閉蓋が前記下限位置に移動した際、前記蓋本体に接触し、前記貫通孔への雨水の浸入を阻止する環状のパッキンと
を備え、
前記貫通孔の内周面は、下側ほど開口面積が小さくなるテーパー状の傾斜内周面を有し、
前記可動開閉蓋は、前記貫通孔の前記傾斜内周面に合致する傾斜外周面を有し、
前記パッキンは、前記貫通孔の前記傾斜内周面に接触可能な位置に配設されている
ことを特徴とする排水管路用圧力開放蓋。
【請求項2】
前記可動開閉蓋は、前記傾斜外周面に形成された環状の溝部をさらに有し、
前記パッキンは、前記溝部に収容されるとともに、一部分が前記溝部の外部にはみ出した状態で配置されている
ことを特徴とする請求項1に記載の排水管路用圧力開放蓋。
【請求項3】
前記案内部は、
前記可動開閉蓋の前記下面の周縁部から垂下されるとともに、周方向に所定の間隔で配置され、上端を支点として内方に弾性変形可能に設けられた複数本の脚部と、
夫々の該脚部の下端から外向きに突出して形成され、前記可動開閉蓋が前記上限位置に移動した際、前記蓋本体の下面に係止され前記可動開閉蓋の上方への移動を阻止する係止爪部と
を備える
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排水管路用圧力開放蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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