説明

排水蓋

【課題】排水蓋の裏面の空気の滞留を抑制すると共に、水切れを向上させる。
【解決手段】床102Aに形成された排水枡106へ裏面14Dに設けた脚部12が載置されて排水枡106の開口面を覆うと共に、外周部から排水枡106内へ排水を流入させる導水部が形成された蓋体14と、蓋体14の裏面に形成された傾斜面と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排水蓋に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、排水口が異物によって詰まるのを防止するため、浴室等の床に形成された排水枡の開口面は排水蓋で覆われる。また、このような排水蓋では、裏面に複数の補強リブが設けられている(例えば、特許文献1)。
【0003】
しかしながら、複数の補強リブによって囲まれた空間に空気が滞留すると、排水枡へ排水が流されたとき、滞留した空気が排出されずに排水蓋が浮き上がる。また、補強リブの周辺は水切れが悪く、排水蓋が汚れやすい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−8435
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記事項を考慮し、排水蓋の水切れを向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の排水蓋は、床に形成された排水枡へ裏面に設けた脚部が載置されて前記排水枡の開口面を覆うと共に、外周部から排水枡内へ排水を流入させる導水部が形成された蓋体と、前記蓋体の裏面に形成された傾斜面と、を有する。
【0007】
請求項1に記載の排水蓋では、蓋体の裏面に傾斜面が形成されているので、排水が蓋体の外周部から排水枡内へ流入したとき、排水蓋の裏面に付着した排水は、斜面部に沿って排水蓋の裏面の一箇所に集められるので、排水蓋の水切れを向上させ、排水蓋を清潔に保つことができる。
【0008】
また、排水枡内の空気は、蓋体の裏面に滞留することなく傾斜面に沿って外へ排出される。これにより、排水蓋が浮き上がるのを抑制できる。
【0009】
請求項2に記載の排水蓋は、前記蓋体は矩形状であり、隣り合う前記傾斜面が稜線を形成する。
【0010】
請求項2に記載の排水蓋では、傾斜面に付着した排水が稜線に集まり、稜線を伝って蓋体の裏面の一箇所に集められるので、排水蓋の水切れが向上する。
【0011】
請求項3に記載の排水蓋は、前記傾斜面は、前記蓋体の中心部に向かって傾斜する下り傾斜面である。
【0012】
請求項3に記載の排水蓋では、蓋体の裏面に形成された傾斜面が蓋体の中心部に向かって傾斜しているので、排水蓋の裏面に付着した排水を効率よく集めることができる。
【0013】
請求項4に記載の排水蓋は、前記稜線は、前記蓋体の対角線上にある。
【0014】
請求項4に記載の排水蓋では、対角線上に稜線が形成されているので、排水蓋の剛性が向上する。
【0015】
請求項5に記載の排水蓋は、前記蓋体の裏面に形成され、中心部から外周部へ向かって下り傾斜するリブと、前記リブの端部に設けられ、前記排水枡に載置される補助脚部と、をさらに有する。
【0016】
請求項5に記載の排水蓋では、リブが蓋本体の中心部から外周部へ向かって下り傾斜しているので、裏面の稜線を伝って排水蓋の裏面の中心部へ集められた排水は、リブに沿って蓋体の外周部へ流れ、さらにリブの端部に設けられた補助脚部を伝って排水枡へ流れる。これにより、落水させるより排水蓋の水切れが向上し、排水蓋を清潔に保つことができる。
【0017】
請求項6に記載の排水蓋は、前記リブは矩形状の前記蓋体の各辺の中心部へ延びる十字形状である。
【0018】
請求項6に記載の排水蓋では、リブは十字形状であるため、蓋体の裏面の空気がリブに遮られることなく、排水枡の外へ排出される。また、リブは蓋体の各辺の中心部へ延びているので、排水蓋の剛性が向上する。
【0019】
請求項7に記載の排水蓋は、前記リブの外周面は弧状となっている。
【0020】
請求項7に記載の排水蓋では、リブの外周面は弧状となっており、リブに付着した排水が留まりにくく、また、清掃しやすい。
【0021】
請求項8に記載の排水蓋は、前記蓋体の上面には、中心部から外周部に向かって下り傾斜面が形成されている。
【0022】
請求項8に記載の排水蓋では、排水蓋の上面に付着した排水は、下り傾斜面を流れて蓋体の裏面に回り込み、排水蓋の裏面の中心部に集められるので、排水蓋の上面の水切れが向上する。
【発明の効果】
【0023】
本発明は、上記の構成としたので、排水蓋の水切れが向上する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】第1実施形態に係る排水蓋と浴室に形成された排水枡との関係を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態に係る排水蓋が排水枡に載置された状態を示す一部断面図である。
【図3】第1実施形態に係る排水蓋の斜視図である。
【図4】第1実施形態に係る排水蓋の裏面側から見た斜視図である。
【図5】第1実施形態に係る排水蓋から排水枡へ流入した排水の流れを示す説明図である。
【図6】第1実施形態に係る排水蓋が排水枡に載置された状態を示す図4のA−A断面図である。
【図7】第1実施形態に係る排水蓋が排水枡に載置された状態を示す図4のB−B断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の第1実施形態に係る排水蓋10について説明する。図1に示すように、浴室100は、洗い場102と浴槽104で構成されており、洗い場102の床面は床102Aで形成されている。床102Aには、浴槽104と洗い場102との境界近傍に凹状の排水枡106が形成されている。
【0026】
排水枡106の底部の中心部には、排水口108が形成されており、床102Aから排水枡106内に流れ込んだ排水は、排水口108から図示しない排水管を通って下水へ流される。また、排水口108に形成された段差部108Aには、毛髪等を捕集するヘアキャッチャー110が支持されている(図2参照)。
【0027】
排水枡106の底部には、排水枡106の開口面を覆うように排水蓋10が載置される。このとき、排水蓋10の蓋体14の裏面に形成された複数の脚部12及び補助脚部22が排水枡106の底部に載置される。
【0028】
また、排水枡106の浴槽104側の側壁の上部には、床102Aの上面から略半円柱状に凹んだ指掛け部112が形成されており、指掛け部112に指を掛けて排水枡106の底部に載置された排水蓋10が取外される。
【0029】
図2に示すように、排水枡106の底部は排水口108に向かって緩やかに下り傾斜になっている。排水口108の周辺には段差部108Aが形成されている。段差部108Aには、ヘアキャッチャー110の外周部に形成されたフランジ部110Aが載せられ、ヘアキャッチャー110の上面と排水口108の開口縁部が同一高さとなっている。また、ヘアキャッチャー110には排水を通水させる多数の通水孔116が形成されている。
【0030】
さらに、蓋体14の上面の外周部と床102Aとは同じ高さとなっており、蓋体14の上面の中心部は、床102Aより高く形成され、中心部から外周部へ向かって矢印方向に下り傾斜面が形成されている。また、蓋体14の外形は、蓋体14と排水枡106の開口縁部106Aとの間に隙間が生じる大きさとされている。
【0031】
さらに蓋体14をさらに詳しく説明すると、図3に示すように、蓋体14は長方形の平板部材であり、ABS樹脂等の合成樹脂で形成されている。これにより、蓋体14の表面は、撥水特性を備え、付着した排水が水滴となりやすくなっている。蓋体14の上面の中心部には、蓋体14の4つの角部から中心部に向かう4本の溝18Aによって菱形の領域14Aが形成されており、領域14Aの蓋体14の短辺の中心線CL上には、稜線15が形成されている。領域14Aは、稜線15を頂部として下り傾斜面となっている。
【0032】
また、蓋体14の上面の短辺側には、上述した溝18Aと蓋体14の短辺によって三角形の領域14Bが形成されている。さらに、蓋体14の上面の長辺側には、上述した溝18A及び、長辺の中心部から領域14Aに向かって形成された溝18Bによって、台形状の領域14Cがそれぞれの長辺側に2つずつ形成されている。領域14B及び14Cは、蓋体14の外周部へ向かって下り傾斜面となっている。
【0033】
図4に示すように、蓋体14の裏面14Dは、蓋体14の外周部から中心部に向かって下り傾斜している(図6参照)。また、対角線上には稜線26が形成されている。さらに、この稜線26を境にしてそれぞれの傾斜面が蓋体14の外周部に向かって下り傾斜している。
【0034】
蓋体14の裏面14Dの角部には、円柱状の脚部12が下方へ突出して形成されている。また、それぞれの脚部12の外周部には、蓋体14へ連結される脚部補強リブ12Aが形成されている。
【0035】
さらに、蓋体14の裏面14Dには、蓋体14の中心部から蓋体14の各辺の中心部へ延びた十字形状の蓋体補強リブ24が形成されている。蓋体補強リブ24は、蓋体14の中心部から各辺の中心部に向かって下り傾斜しており、蓋体補強リブ24の外周面は弧状となっており、清掃しやすくなっている。また、蓋体補強リブ24の外周面が弧状となっているので、蓋体補強リブ24に付着した排水は、蓋体補強リブ24の最下点へ集まり、水滴になりやすい。このため、角を面取りしただけのリブよりも排水が滞留しにくい。
【0036】
また、蓋体補強リブ24の端部には、円柱状の補助脚部22が形成されている。補助脚部22は、脚部12と同じ高さであり、補助脚部22の外周部には、蓋体14へ連結される補助脚部補強リブ22Aが形成されている。
【0037】
図3及び図4示すように、蓋体14の外周部は角が取られて丸みを帯びており、4辺には蓋体14の外周部を内側へ凹ませた導水部としての凹部20が形成されている。
【0038】
凹部20は、蓋体14の中心線CLより右側にのみ形成されており、各辺の半分よりやや短い長さとされている。また、凹部20の凹み量は、図5に示すように、排水蓋10を排水枡106へ載置した際に、蓋体14と排水枡106の開口縁部106Aとの間に指が入らない程度に設定されている。
【0039】
なお、凹部20は、蓋体14の中心線CLより右側に形成されていれば、中心線CLから辺の端部まで連続して凹んでいなくてもよく、断続的に複数の凹部20が形成されていてもよい。また、中心線CLを越えて凹部20を形成しても、凹部20へ流入した排水の主流の中心が排水枡106の中心部より右側を流れれば旋回流が発生する。
【0040】
また、本実施形態では、蓋体14は矩形状であったが、他の形状でもよい。例えば、蓋体14が三角形の場合、蓋体14の各辺の中心部より右側を内側に凹ませて凹部20を形成し、凹部20へ流入した排水の主流の中心が排水枡106の中心部より右側を流れるようにすることで、旋回流が発生する。
【0041】
次に、本実施形態に係る排水蓋10の作用について説明する。
【0042】
図5に示すように、蓋体14の4辺を凹ませて形成された凹部20と排水枡106の開口縁部106Aとの間に隙間28が形成されている。また、凹部20を除いた蓋体14の外形は、蓋体14の外周部と排水枡106の開口縁部106Aとの間に補助導水口としての隙間30が生じる大きさに形成されている。なお、排水が隙間28から流入する流入面積は、隙間30から流入する流入面積よりも大きくなるように凹部20が形成されている。
【0043】
ここで、浴槽104(図1参照)、又は図示しないシャワーから洗い場102へ排水が流されると、排水は床102Aを流れて排水枡106の開口縁部106Aへ到達し、隙間28及び隙間30から排水枡106内に流入する。
【0044】
このとき、排水枡106内の空気は、排水が排水枡106内へ流入するのと同時に、排水蓋10の裏面14Dに沿って隙間28及び隙間30から排水枡106の外へ図4の矢印の方向へ排出される。ここで、蓋体補強リブ24は十字形状に形成されているので、空気が蓋体補強リブ24に遮られて蓋体14の裏面14Dに滞留することがない。このため、排水の流入によって排水蓋10が浮き上がることもない。
【0045】
図5に示すように、隙間28から排水枡106内に流入した排水の主流の中心は、蓋体14の中心線に対して右側に導水され、矢印Aの方向に流れる。また、排水枡106の底部は傾斜面となっているので、排水は排水枡106の中心部の周りに左旋回する。
【0046】
同様にして4辺の隙間28から排水枡106へ流入した排水の主流の中心が矢印Aの方向へ流れることで、排水枡106の中心部の周りに左旋回する旋回流Cが発生する。旋回流Cは、ヘアキャッチャー110上を左旋回しながら通水孔116を通って排水口108へ排水される。
【0047】
また、隙間30から排水枡106内に導水された排水は、矢印Bの方向に流れるが、隙間28から流入した排水より排水量が少ないため、矢印Aの方向に流れる主流に合流して旋回流Cとなる。ここで、排水に混じっている毛髪等は、旋回流Cによって排水枡106の中心部の周りに左旋回しながらヘアキャッチャー110上にまとまって捕集される。
【0048】
次に、多量の排水が排水枡106へ流入したとき、蓋体14の裏面14D及び蓋体14の上面には、排水の一部が残水として付着する。この残水のうち、蓋体14の上面に付着した残水は、領域14A、14B又は14Cの下り傾斜面を伝って、或いは溝18A、18Bを流れて蓋体14の外周部へ到達する(図3参照)。
【0049】
蓋体14の外周部へ到達した残水の一部は、図6に示すように、表面張力によって蓋体14の裏面14Dへ回り込む。また、一部の残水は、蓋体14の外周部で水滴となって排水枡106の底部へ滴下し、ヘアキャッチャー110の通水孔116から排水される。
【0050】
蓋体14の上面から裏面14Dへ回り込んだ残水は、排水が排水枡106へ流入したときに蓋体14の裏面14Dに付着した残水と共に、表面張力によって蓋体14の裏面14Dの傾斜面を流れて稜線26へ集められ、稜線26を矢印Dの方向に伝って蓋体補強リブ24へ到達する。ここで、蓋体14の裏面14Dと蓋体補強リブ24との接合部は滑らかに湾曲しているので、残水は蓋体補強リブ24の外周面を伝って蓋体補強リブ24の中心部24Aに集められる。
【0051】
図7に示すように、蓋体補強リブ24の中心部へ集められた残水は、蓋体補強リブ24を伝って蓋体の各辺の中心部へ向かって流れ、補助脚部22へ到達する。その後、補助脚部22を伝って排水枡106の底部へと流れ、ヘアキャッチャー110の通水孔116から排水される。
【0052】
なお、本実施形態では、蓋体補強リブ24は十字形状であったが、蓋体14が撓みにくく、空気が滞留しない形状であれば、特に制限しない。例えば、蓋体14の中心部から各辺の中心部及び四隅へ8方向に延びていてもよい。この場合、蓋体14の対角線上に蓋体補強リブ24を形成するので、稜線26が形成できなくなる。このため、裏面14Dの傾斜角度を調整し、裏面14Dに付着した排水が確実に中心部へ流れるようにする。
【0053】
また、本実施形態では、蓋体14の裏面14Dの角部に4つの脚部12が形成されていたが、補助脚部22だけで耐荷重性が問題なければ脚部12は形成されていなくてもよい。この場合、排水枡106の底部と接しているのは補助脚部22だけなので、排水枡106へ流入する排水の流れを阻害しにくくなる。
【0054】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明はこうした実施形態に限定されるものでなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得ることは勿論である。例えば、蓋体補強リブ24の中心部24Aをヘアキャッチャー110の上面近傍まで突出させて、蓋体補強リブ24から直接ヘアキャッチャー110へ残水を流してもよい。
【符号の説明】
【0055】
10 排水蓋
12 脚部
14 蓋体
14D 裏面(傾斜面)
24 蓋体補強リブ(リブ)
26 稜線
20 凹部(導水部)
102A 床
106 排水枡

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床に形成された排水枡へ裏面に設けた脚部が載置されて前記排水枡の開口面を覆うと共に、外周部から排水枡内へ排水を流入させる導水部が形成された蓋体と、
前記蓋体の裏面に形成された傾斜面と、
を有する排水蓋。
【請求項2】
前記蓋体は矩形状であり、隣り合う前記傾斜面が稜線を形成する請求項1に記載の排水蓋。
【請求項3】
前記傾斜面は、前記蓋体の中心部に向かって傾斜する下り傾斜面である請求項1又は2に記載の排水蓋。
【請求項4】
前記稜線は、前記蓋体の対角線上にある請求項2又は3に記載の排水蓋。
【請求項5】
前記蓋体の裏面に形成され、中心部から外周部へ向かって下り傾斜するリブと、
前記リブの端部に設けられ、前記排水枡に載置される補助脚部と、
をさらに有する請求項1〜4の何れか1項に記載の排水蓋。
【請求項6】
前記リブは矩形状の前記蓋体の各辺の中心部へ延びる十字形状である請求項5に記載の排水蓋。
【請求項7】
前記リブの外周面は弧状となっている請求項5又は請求項6に記載の排水蓋。
【請求項8】
前記蓋体の上面には、中心部から外周部に向かって下り傾斜面が形成されている請求項1〜7の何れか1項に記載の排水蓋。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−83123(P2013−83123A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−225030(P2011−225030)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】