説明

排水装置

【課題】ピット内に設けられた水道管の排水設備において、そのピット内に収容できる発電装置とする。
【解決手段】ピットP内に設置され、水道管1から引き出された排水管2と、その排水管2を開閉する弁装置3とを備え、水道管1内の滞留水を排水管2を通じて外部へ排出する機能を有する排水設備において、ピットP内に上下方向に筒状のケーシング10を配設し、そのケーシング10内には、上下方向の軸心周りに回転自在のタービンTと、そのタービンTの上部に配置された発電機23とを備えた。排水管2は、タービンTの側方でケーシング10に連通して、排水管2からの水がタービンTを回転させる。その水はケーシング10の下端に設けた排出口12を通じて外部へ排出される。この構成によれば、排水時の水力エネルギーを有効に利用するための水力発電装置の導入において、地中に掘削されたピット(弁室)Pレベルの狭隘なスペースにおいても、充分に収容できる装置を実現し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、水道管路における水質等維持管理対策として、管内の水を管外に排出するために設置される排水装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、水道水のさらなる水質改善に対するニーズが高まっている。各事業体やその他各種機関では、水道ユーザーにおいしい水を提供すべく、残留塩素濃度の適正化等に向けた水質等維持管理対策の取り組みがなされている。
【0003】
このような水質等維持管理対策の一つとして、水道管内に生じる滞留域等における水の入れ換えを目的とした排水が行われている。一般的に、常に一定量の排水を行う常時排水方式、作業員の操作による定期排水方式、及び、一定の要件で自動排水を行う自動排水方式等が挙げられる(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0004】
これらの排水方式による水質等維持管理対策では、常に排水に対するコストの問題が生じる。すなわち、常時排水方式では大量の水が無駄になり、定期排水方式では作業員の確保等の問題がある。さらに、自動排水方式では、施設の維持、特に電力量に係る費用が嵩むという問題がある。このため、さらに効率的な排水方法の確立が求められている。
【0005】
ところで、効率的な排水方法として、次の二つのアプローチが考えられる。一つは、より少ない排水量で効果的な水の置換効果を得る方法であり、具体的には、管路における排水量と水の入れ換わりのメカニズムを解明することである。
しかし、実管路においては、様々な計算条件(異形管、バルブ数、内面状況等)がファクターとして存在するため、このアプローチにより精度よく効率的な排水を実現することは難しい。
【0006】
二つ目のアプローチとしては、一つ目のアプローチとは逆に多くの量の排水を行うことで、確実な水の置換を行う方法が挙げられる。
しかし、単純に必要以上の排水を行うだけでは、前述したコスト負担の点で効率的な排水方法とはならない。
【0007】
そこで、水の置換効果に対し必要以上の排水を行うものの、この排水の際に発生する水力エネルギーを回収し有効利用することにより、排水作業の効率化をエネルギー面で改善する方法を検討することができる。
【0008】
一般的に、排水の際に発生する水力エネルギーを回収する技術としては、例えば、水流によって発電する機能を有する発電機を備えた吐出口ヘッドを、水道の蛇口に取付け及び取外し可能とし、排水に伴う水力エネルギーを電力として回収する技術や、あるいは、そのような発電機と、それに接続される充電池、安定器等を、給水塔から引き出された配水管や水道の蛇口に取付ける技術が開示されている(例えば、特許文献3、特許文献4参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2007−198033号公報
【特許文献2】特開2006−257662号公報
【特許文献3】特開2002−38563号公報
【特許文献4】特開2003−64743号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
このような排水設備は、例えば、前記滞留域に係る水道管が私道埋設である場合、あるいは、近隣に私有地がある場合は、地上に設置スペースを確保することが比較的容易である。
【0011】
しかし、水道管の多くは公道に埋設されており、排水設備は、その公道に掘られたピット(弁室)内に配置される場合が多い。これらのピットは、一般的にその断面(平面視における断面)が小さく、内部の空間が狭隘であることが多い。このため、そのピット内において、排水に必要な弁装置に併設して、発電に係る設備を収容することが困難である場合が多い。
【0012】
特に、給水塔の配水管等に採用される発電機としては、小型のマイクロ水力発電機等が挙げられるが、これらの発電機は出力が100kw程度で出力が過大である。排水設備の水流は、概ね100Wに満たない消費電力機器の電源充電に利用できる発電量に相当するものだからである。
また、前記マイクロ水力発電機等は、その装置の外形寸法が大きく、既存の排水設備用のピットに収まるものが見あたらないのが現状である。
【0013】
そこで、この発明は、ピット内に設けられる水道管の排水設備において、そのピット内に収容できる発電装置とすることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記の課題を解決するために、この発明は、地中に掘削されたピット内に設置され、水道管から引き出された排水管と、その排水管を開閉する弁装置とを備え、前記水道管内の滞留水を前記排水管を通じて外部へ排出する機能を有する排水設備において、前記ピット内に筒状のケーシングをその筒軸方向が上下方向になるように配設し、前記ケーシング内には、上下方向の軸心周りに回転自在のタービンと、そのタービンの上部に配置された発電機とを備え、前記発電機は、前記タービンの回転によって発電する機能を有しており、前記排水管は、前記タービンの側方で前記ケーシングの内外を貫通して設けられた接続口を介して前記ケーシング内の空間に連通して、前記排水管から前記ケーシング内に入った水が前記タービンを回転させ、その水は前記ケーシングの下端に設けた排出口を通じて外部へ排出されることを特徴とする排水設備を採用した。
【0015】
この構成によれば、発電機を収容するスペースとして上下方向に伸びる筒状のケーシングを採用したことから、水道水質維持管理対策の一つである、残留塩素濃度の適正化を目的とした排水設備、その他水質維持管理対策を目的とする排水設備において、排水時の水力エネルギーを有効に利用するための水力発電装置の導入において、地中に掘削されたピット(弁室)レベルの狭隘なスペースにおいても、充分に収容できる装置を実現し得る。
この構成により、例えば、山間部等の作業員の往来が不便な箇所の設置だけでなく、都市部等の水力発電機の設置スペースが得られにくかった場所においても、ピット(弁室)を利用することにより、水力発電機の設置が可能となり、水質維持管理上の排水のみならず、様々な排水場所での利用が可能となる。
【0016】
また、これらの各構成において、前記排出口は下向きに開口しており、その排出口に屈曲管を取付けることにより、その屈曲管を通じて水が横向きに排出される構成を採用することができる。
【0017】
下向きに開口するケーシングの排出口に、このような屈曲管が取付けられることにより、その屈曲管を通じて水が横向きに排出され、ピット外へ通じる配管の設置が容易となる。通常は、排水によるピット内の設備の水没を防止するため、排水は、そのピットの壁部を貫通する誘導管を通じて、近くの下水道や側溝、集水桝等の排水先に放流される場合が多いから、このような屈曲管の採用が便利である。
【0018】
さらに、これらの各構成において、前記ケーシングの外壁に、外側へ突出する鍔部を設け、前記鍔部に、前記ピットの底から立ち上がるフレームを固定して、そのフレームを介して前記ケーシングを前記ピット内に保持した構成を採用することができる。
ケーシングに設けた鍔部にフレームを固定できるから、水道管でケーシングを支える必要がなく、現場に応じた方法で発電機及びケーシングの固定を行うことができる。
【0019】
また、このように、フレームでケーシングを保持した構成において、前記フレームは、前記鍔部の上面に当接する保持部材を備え、前記保持部材が備える上下方向の孔に挿通されたボルトが、前記鍔部の上面から下方に向かってねじ込まれることにより、前記ケーシングと前記フレームとが固定される構成を採用することができる。
【0020】
この構成によれば、ねじ込み方向が上下であるから、ピット内に作業者が入り込まずとも作業が可能であり、また、その作業に使用するドライバー等の工具が、ピットの内壁に支障しにくい。このため、狭隘なピット内での作業が容易となる。
【0021】
また、これらの各構成において、前記ケーシング内の空間を上室と下室とに区画する隔壁を設け、前記発電機は前記上室に配置され、前記タービンは前記下室に配置される構成を採用することができる。
【0022】
その上室と下室とを備えた構成において、前記タービンは、上下方向に伸びる筒状の回転軸と、その回転軸から外側に伸びる羽根部材とを備え、前記回転軸の内側に、前記発電機が備える発電機軸が入り込んでその回転軸と前記発電機軸とは一体に回転するようになっており、前記回転軸は、前記隔壁に設けた上下方向の挿通孔に挿通されて、前記回転軸の外面と前記挿通孔の内面との間を液密に閉じるオイルシールを備えたことで、前記発電機軸に前記下室内の水が触れないようにした構成を採用することができる。
【0023】
これらの構成によれば、水に触れることが好ましくない発電機と、水に触れることを前提とするタービンとを、隔壁を介して別室に配置することができる。また、発電機軸をタービンの回転軸で覆えば、腐食の原因となる水との接触を防ぐ上で有効である。
【発明の効果】
【0024】
この発明は、ピット内に設けられる水道管の排水設備において、そのピット内に収容できる発電装置とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】一実施形態の斜視図
【図2】(a)(b)は、排水設備を配置するピットの形状を示す平面図
【図3】発電機及び弁装置を動作させるための装置の構成図
【図4】ケーシングとフレームとの詳細を示す斜視図
【図5】ケーシングと発電機とを示す分解斜視図
【図6】タービンの斜視図
【図7】ケーシングの要部断面図
【図8】地上(地表面)へ排水する際の状況を示す説明図
【図9】(a)(b)は、ケーシングと排水用配管とを示す詳細図
【図10】排水設備及びピットを構築する際の工程を示す斜視図
【図11】排水設備及びピットを構築する際の工程を示す斜視図
【図12】(a)(b)は、排水用配管と誘導管との接続部の詳細図
【発明を実施するための形態】
【0026】
この発明の実施形態を図面に基づいて説明する。この実施形態は、地中に掘削されたピットP内に設置される水質等維持管理対策用の排水設備である。この排水設備は、水道管1の滞留水が発生しやすい箇所に設けられている。
【0027】
図1に示すように、水道管1から引き出された排水管(ドレン管)2が上方へ伸びている。また、その排水管2の途中には、その排水管2を開閉する弁装置3が備えられている。この実施形態では、弁装置3として電動弁を採用しているが、電磁弁を用いてもよい。この弁装置3の開閉により、水道管内の滞留水が排水管2を通じて外部へ排出される。
【0028】
この排水設備は、図1に示すように、地表から下方に向かって掘削されたピット(弁室)P内に配置されている。ピットPは、図2(a)に示すように、平面視四角形の内部空間を有する場合もあるし、図2(b)に示すように、平面視円形の内部空間を有する場合もあり、その形状は限定されない。
【0029】
この排水設備には、水力発電機20が備えられる。水力発電機20の構成は、図3に示すように、水流を電気エネルギーに変換する機能を有する発電機23と、その発電された電力を充電により蓄えるバッテリー24を備える。また、バッテリー24と発電機23との間には、整流回路25aや充電電圧調整回路25b等からなる調整装置25が介在している。
【0030】
また、弁装置3は、そのバッテリー24から供給される電力により、その開閉動作が行われるようになっている。この動作を行うために、バッテリー24と弁装置3との間には、インバータ26aや開閉タイマー26b等からなる制御装置26が介在している。なお、この電源として直流電源を用いてもよい。
【0031】
ピットP内には、図1に示すように、ケーシング10が配設されている。ケーシング10は筒状を成し、その筒軸方向が鉛直方向を向くように、そのピットP内にフレーム30で固定されている(フレーム30は、図4を参照。図1では、フレーム30を図示省略している。)。なお、この実施形態では、ケーシング10は円筒状であるが、これを角筒状としてもよい。
【0032】
ケーシング10内には、図7に示すように、上下方向の回転軸22とその回転軸22の周囲に設けられた羽根部材21とからなるタービンTと、そのタービンTの上部に配置された発電機23が備えられている。
【0033】
図6は、そのタービンTの詳細図である。回転軸22は筒状を成し、その内部に発電機23の発電機軸(入力軸)23aが挿入されている。この発電機軸23aとタービンTとは、シールワッシャ28を介してフランジボルト29で固定されて、その筒状の回転軸22内の底が液密に閉じられるとともに、一体に軸周り回転可能となっている。
【0034】
また、ケーシング10内の空間は、横方向の隔壁16によって、上室Aと下室Bの2室に区画されている。発電機23は、その隔壁16上の上室Aに、ブッシュ23b等を介してボルト23c等により固定される(図5参照)。なお、ケーシング10の上部は、蓋10aで閉じられている。
【0035】
さらに、その隔壁16には、上下方向の挿通孔17が設けられている。挿通孔17は隔壁16を上下に貫通している。この挿通孔17に、羽根部材21の回転軸22がオイルシール27を介して挿通されている。このオイルシール27を介して、回転軸22は、隔壁16に軸周り回転自在に支持され、また、その回転軸22の外面と挿通孔17の内面との間が液密に閉じられている。
【0036】
そのケーシング10には、図4及び図5に示すように、その外壁に、外側へ突出する鍔部14が設けられている。このケーシング10の鍔部14の介在する部分は、ケーシング10の鍔部14以外の部分よりも肉厚に形成されている。また、隔壁16は、この鍔部14の位置よりも上方に設けられている。発電機23は、その隔壁16上に配置される。
【0037】
また、ケーシング10内に配置された発電機23からの配線は、ケーシング10の上室Aにおいて、すなわち、前記鍔部14よりも上に設けた内外を貫通する貫通孔11を通じて、ケーシング10内からケーシング10外へ引き出されるようになっている。貫通孔11には、配線用アダプタ11aが取付けられて、配線できるようになっている(図5参照)。
【0038】
一方、水道管1から引き出された排水管2は、ケーシング10の下室Bにおいて、そのケーシング10の内外を貫通するように設けた接続孔15に連通するように接続される。
【0039】
この接続孔15は、ケーシング10(下室B)内には、タービンTの羽根部材21の側方に開口するとともに、ケーシング10外には、前記鍔部14の側面において、そのケーシング10の外壁に開口している。
【0040】
排水管2は、この接続口15を介してケーシング10内の空間に連通する。すなわち、排水管2は、羽根部材21の側方に設けられた接続孔15を介してケーシング10内の空間に連通している。排水管2は、接続孔15に設けたプラグノズル18、ノズルアダプタ19等を介して、その接続孔15に連通するようにケーシング10に接続される。
【0041】
このため、排水管2からケーシング10(下室B)内に入った水は、その水流の勢いでタービンTを、すなわち羽根部材21を回転軸22の軸周りに回転させる。このタービンTの回転により発電機軸23aも回転し,発電機23は所定の発電を行う。発電された電気は、調整装置25を通じてバッテリー24に充電される(図3参照)。
【0042】
このとき、回転軸22は、オイルシール27を介して挿通孔17に挿通されているので、上室Aと下室Bとの間の水密が維持されている。このため、下室B内の水が、上室Aに入り込むことが阻止されている。
【0043】
ケーシング10(下室B)内に入った水は、その後、ケーシング10(下室B)内を下方に落下し、そのケーシング10の下端に設けた排出口12を通じて外部へ排出される。排出口12は筒状を成すケーシング10の下端側開口である。
【0044】
この排出口12は、ケーシング10外に向かって下向きに開口しており、その排出口12に、排水用配管Eとして屈曲管13が取付けられることにより、その屈曲管13を通じて水が横向きに排出されるようになっている。また、その屈曲管13の先は、図1に示すように、ピットPの壁部を貫通する誘導管5に接続されており、排水はその誘導管5を通じて近くの下水道や側溝、集水桝等の排水先に放流される。
【0045】
なお、ケーシング10は、この実施形態では、ピットPの底の地盤から立ち上がるフレーム30を介して、そのピットP内に保持されている。
【0046】
そのフレーム30は、図4に示すように、地盤から立ち上がる断面L字状を成す主材32を4本備えており、その4本の主材32は、横梁35で結ばれている。この主材32の上部に、断面L字状の保持部材31が、ねじ34又はボルト・ナットで固定されている。
【0047】
保持部材31は、鍔部14の上面に当接し、その保持部材31が備える上下方向の孔に挿通されたボルト33が、鍔部14の上面に開口する穴36に対して、上面から下方に向かってねじ込まれることにより、ケーシング10とフレーム30とが固定される。ピットP内が狭隘であるから、ボルト33を上方からねじ込むことができるメリットが大きい。ねじ込み方向が上下であるから、ピットP内に作業者が入り込まずとも作業が可能であり、また、その作業に使用するドライバー等の工具が、ピットPの内壁に支障しにくい。
【0048】
この実施形態で用いられる発電機23は、例えば、定格出力0.6KVA相当の小型の三相交流発電機にタービンT(前記回転軸22を備えた羽根部材21)を直接取付けた構造となっている。発電機23とタービンTとを直接取付けることにより回転伝達機構(Vベルト等)は不要であり、その装置の外形寸法を小さくできる。
【0049】
ところで、このように発電機23とタービンTとを直接取付けた場合、そのタービンTを回転させる際の排水(前記プラグノズル18からのジェット水流)が、そのタービンTの羽根部材21に当たって周囲に飛散する。
【0050】
そこで、この実施形態では、図7に示すように、タービンTの回転軸22を筒状を成す発電機軸遮水部とし、その内部に発電機23の発電機軸23aを挿入している。また、その発電機軸遮水部の下室B側は、シールワッシャ28とフランジボルト29で液密に塞がれている。
【0051】
すなわち、発電機軸23aはタービンTを構成する部材で覆われて、下室B側に露出しないから、この発電機軸23aへの飛散水の付着が防止される。このため、発電機軸23aが例えば鉄製であっても、腐食の発生が抑えられる(図7参照)。
【0052】
また、この実施形態のタービンTは、いわゆる衝動水車であり、水道管1及び排水管2からの圧力水を、ケーシング10の接続孔15に設けたプラグノズル18でジェット水流とすることによって、そのタービンTの高速回転を実現している。
【0053】
このように、水道管1の圧力水頭をノズル噴射によって流速水頭に変換することで、そのエネルギーの多くをタービンTの動力エネルギーとして利用できる。また、そのケーシング10内では、高速回転するタービンTにジェット水流が衝突することで、その水は、遠心力を受けてケーシング10内で飛散する。さらに、タービンTへ噴射された水は、勢いを失って水位水頭のみを有する状態となる。
【0054】
したがって、タービンTへ噴射された後の水は、自然流下により排水先(前記下水道等)へ導く必要がある。しかし、このとき、タービンTへ噴射された後の水の排水が円滑でないと、その水がタービンTの回転に影響を与え、回転効率が低下してしまう。
【0055】
一般的な発電機の設置条件下においては、タービンTへ噴射された後の水は、そのまま下方に捨てることができて、水捌けについて特段考慮する必要はないが、この発明では、狭隘なピットP内での設置を目的としているため、上記のような筒状のケーシング10を用いている。このため、タービンTへ噴射された後の水を、円滑に下方に排出することが重要な課題となる。
【0056】
この点、例えば、図8に示す地上(地表面)Gにおける排水方法と同様の手法で、ピットP内で排水を行った場合には、ピットP内が排水により水没し、タービンTの回転に悪影響を及ぼす場合も考えられる。したがって、タービンTに噴射された後の水は、ピットP内に落とし込むことなく、ピットP外の前記排水先へ導くことが望ましい。
【0057】
そこで、この実施形態では、図9に示すように、ピットP内への設置を前提とした筒状のケーシング10を用意し、そのケーシング10の下方に設けた排出口12に、排水用配管Eを接続できる構成としている。このとき、ケーシング10に接続される排水用配管Eの口径は、水抜きを円滑にするためにできるだけ大きいことが望ましいが、この実施形態では、ケーシング10の外径と同径の、あるいはそれよりもやや小さい径の排水用配管Eを接続可能としている。
【0058】
また、この排水用配管Eは、自然流下の排水に対して抵抗が比較的少ない(粗度係数が低い)管として、塩ビ標準サイズの管を取付け可能としている。
【0059】
この排水用配管Eの接続構造として、ケーシング10下端の排出口12の形状を、例えば、VU125Aソケット準拠の塩ビ管受口寸法の設計(実施形態は125Aを想定)とすることができ、これにより、排出口12において、例えば、塩ビ直管(VU)をケーシング10に直接接合可能とできる。
【0060】
また、この実施形態では、図9(a)(b)に示すように、その排水用配管Eとしての直管の下方に、同じく塩ビ管からなる90度の屈曲管(エルボ管)13を接合可能としている。
【0061】
すなわち、ピットP内での排水設備の設置であるため、そのピットP内における発電機23の地表面(路面)に対する設置高さは、水道管路敷設条件等の各種規定の制約を受ける。このため、ケーシング10の設置高さは、現場に応じてその都度調整できることが望ましい。ケーシング10の設置高さが変わると、下部の排出口12に接続すべき排水用配管Eの長さも変わる。ピットP外に通じる誘導管5の高さに合わせなければならないからである。
【0062】
そこで、この実施形態では、排水用配管Eの素材として、現場切管が容易(鋸等による切管が可能)な塩ビ管を用いることにより、その配管長さの調整を容易とした。すなわち、ケーシング10の設置高さに合わせて、排出口12に接続される排水用配管Eの長さを調整できるようにしたものである。このため、ケーシング10を現場に応じた高さに設置することが容易となる。
【0063】
また、このような排水設備を、水道管1に対して新たに設置する際の方法について説明すると、まず、排水管2の新設に際し、例えば、図10に示すように、サドル付き分水栓を用いることができる。この図10において、分水栓8は、円弧状を成す対のサドル部材4,4によって、水道管1の外周に締め付けて固定され、その分水栓8に排水管2が接続されている。
この種のサドル付き分水栓を用いれば、施工中の漏水を最小限に抑えることができ、既存の水道管1に対して排水管2を新設することが容易である。
【0064】
その水道管1から引き出される排水管2には、図10に示すように、装置類補修用のゲート弁6、前記弁装置3、及び流量調整弁7が取付けられる。また、その排水管2末端に、前記ケーシング10が接続される。
【0065】
なお、ピットP外の排水先に通じる誘導管5が整備されていない場合は、この誘導管5を挿通するために、そのピットPの壁部にコア抜きを行う。ピットPの壁部は、例えば、図示するように、基礎Cの上に円筒状のブロックを積み上げて構築することができる。壁部のコア抜きを行った後、そのコア抜きによって生じた孔に誘導管5を挿通する。誘導管5は、その下流側端を排水先へ通じる管路に接続し、上流側端は、前記ケーシング10の排出口12に対して、前記塩ビ管等の排水用配管Eで接続される。
また、コア抜き箇所は、誘導管5の外周に沿ってコーキング等を行い、ピットP内に地中からの水が混入することを防ぐ措置を施す(図11参照)。
【0066】
このとき、コア抜きや埋設条件により、ピットP外へ通じる誘導管5の管径が制約される場合がある。既に設けられているコアの径が小さい場合や、既に設けられている誘導管5の管軸の位置が、排水用配管Eの管軸の位置とずれている場合等である。このような場合は、例えば、図12(a)に示す塩ビ製のインクリーザ(片落管)5aや、図12(b)に示す偏心ブッシング5b等を用いることにより、適切な配管径で排水用配管Eを誘導管5に導くことが可能である。
【0067】
その後、図1に示すように、ピットP内のスペースに調整装置25,制御装置26等を設置する。ケーシング10内の発電機23からの配線は、貫通孔11を通じてケーシング10外に引き出され、そのピットP内に固定した調整装置25、制御装置26等に接続される。
【0068】
なお、この実施形態では、ピットP及び排水設備を新設する場合、あるいは、既設のピットP内において水道管1から排水管2を新たに引き出す場合を想定しているが、例えば、既設のピットP内に備えられた消火栓設備等を用いても、この発明の構成からなる排水設備を整備することができる。
【0069】
この場合、排水設備の設置方法としては、その消火栓設備等において、まず、水道管1から立ち上がる分岐管部に接続された既設の消火栓を撤去する。この撤去は、分岐管部上端のフランジ部と、消火栓下部のフランジ部とを締め付けるボルト・ナットを緩めることで、そのフランジ部間を切り離して行う。消火栓を取り外した後、その分岐管部上端のフランジ部に、排水管2を取り出すための開口を有するフランジ蓋をセットし、その開口に排水管2を接続する。排水管2の引き出しが完了した後の作業は、前述の新設の場合と同様である。
【0070】
なお、一般に、水力発電機は、交流発電機を含む比較的重量物であるため、設置時には、排水管2及び下方に設置された排水用配管E、誘導管5等に負荷がかからないように保護する必要がある。この発明では、ケーシング10は、その外周に設けた鍔部14の上面にボルト33をねじ込むための穴36を備えており、その穴36を通じてフレーム30でケーシング10を支持できるから、現場に応じた方法で発電機23及びケーシング10の固定を行うことができる。
【符号の説明】
【0071】
1 水道管
2 排水管
3 弁装置
4 サドル部材
5 誘導管
6 ゲート弁
7 流量調整弁
8 分水栓
10 ケーシング
10a 蓋
11 貫通孔
11a 配線用アダプタ
12 排出口
13 屈曲管
14 鍔部
15 接続孔
16 隔壁
17 挿通孔
18 プラグノズル
19 ノズルアダプタ
20 水力発電機
21 羽根部材
22 回転軸
23 発電機
23a 発電機軸
24 バッテリー
25 調整装置
26 制御装置
27 オイルシール
28 シールワッシャ
29 フランジボルト
30 フレーム
31 保持部材
32 主材
33 ボルト
33a ナット
34 ねじ
35 横梁
36 穴
A 上室
B 下室
C 基礎
E 排水用配管
P ピット
T タービン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地中に掘削されたピット(P)内に設置され、水道管(1)から引き出された排水管(2)と、その排水管(2)を開閉する弁装置(3)とを備え、前記水道管(1)内の滞留水を前記排水管(2)を通じて外部へ排出する機能を有する排水設備において、
前記ピット(P)内に筒状のケーシング(10)をその筒軸方向が上下方向になるように配設し、前記ケーシング(10)内には、上下方向の軸心周りに回転自在のタービン(T)と、そのタービン(T)の上部に配置された発電機(23)とを備え、前記発電機(23)は、前記タービン(T)の回転によって発電する機能を有しており、前記排水管(2)は、前記タービン(T)の側方で前記ケーシング(10)の内外を貫通して設けられた接続口(15)を介して前記ケーシング(10)内の空間に連通して、前記排水管(2)から前記ケーシング(10)内に入った水が前記タービン(T)を回転させ、その水は前記ケーシング(10)の下端に設けた排出口(12)を通じて外部へ排出されることを特徴とする排水設備。
【請求項2】
前記排出口(12)は下向きに開口しており、その排出口(12)に屈曲管(13)を取付けることにより、その屈曲管(13)を通じて水が横向きに排出されることを特徴とする請求項1に記載の排水設備。
【請求項3】
前記ケーシング(10)の外壁に、外側へ突出する鍔部(14)を設け、前記鍔部(14)に、前記ピット(P)の底から立ち上がるフレーム(30)を固定して、そのフレーム(30)を介して前記ケーシング(10)を前記ピット(P)内に保持したことを特徴とする請求項1又は2に記載の排水設備。
【請求項4】
前記フレーム(30)は、前記鍔部(14)の上面に当接する保持部材(31)を備え、前記保持部材(31)が備える上下方向の孔に挿通されたボルト(33)が、前記鍔部(14)の上面から下方に向かってねじ込まれることにより、前記ケーシング(10)と前記フレーム(30)とが固定されることを特徴とする請求項3に記載の排水設備。
【請求項5】
前記ケーシング(10)内の空間を上室(A)と下室(B)とに区画する隔壁(16)を設け、前記発電機(23)は前記上室(A)に配置され、前記タービン(T)は前記下室(B)に配置されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一つに記載の排水設備。
【請求項6】
前記タービン(T)は、上下方向に伸びる筒状の回転軸(22)と、その回転軸(22)から外側に伸びる羽根部材(21)とを備え、前記回転軸(22)の内側に、前記発電機(23)が備える発電機軸(23a)が入り込んでその回転軸(22)と前記発電機軸(23a)とは一体に回転するようになっており、前記回転軸(22)は、前記隔壁(16)に設けた上下方向の挿通孔(17)に挿通されて、前記回転軸(22)の外面と前記挿通孔(17)の内面との間を液密に閉じるオイルシール(27)を備えたことで、前記発電機軸(23a)に前記下室(B)内の水が触れないようにしたことを特徴とする請求項5に記載の排水設備。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate


【公開番号】特開2011−196106(P2011−196106A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64552(P2010−64552)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000142595)株式会社栗本鐵工所 (566)