説明

排泄物処理システムおよびオムツ

【課題】 誤作動を起こすことなく、排泄水や排泄物の吸引を自動で開始できる排泄物処理システムおよびこの排泄物処理システムに使用されるオムツを提供する。
【解決手段】 使用者の臀部3aに対向する面40aが平坦面に形成され、この平坦面に水分検知センサ217が配置されたトレイ部40を備え、水分検知センサ217により水分が検出された場合に、このトレイ部40に排泄された排泄物を吸引する排泄物処理装置が接続自在に構成されるオムツ12において、トレイ部40における水分検知センサ217の近傍に所定量の水分が溜まる汚水溜まり部50を設け、水分検知センサ217が汚水溜まり部50からあふれる程度の水分量が存在する場合に水分を検出するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄された排泄水や排泄物の吸引を自動で行う排泄物処理システムおよびオムツに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、使用者の腰臀部にあてがわれるオムツにホースを接続し、このホースを介してオムツ内に排泄された排泄物を吸引するようにした排泄物処理システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。この種の排泄物処理システムにあっては、使用者の臀部に対向する面が平坦面に形成され、この平坦面に水分検知センサが配置されたトレイ部を備えるオムツを備え、この水分検知センサによって水分が検出された場合に、排泄物の吸引を開始するものが知られている。
【特許文献1】特開2002−153498号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の構成では、水分検知センサが前回洗浄時の残りの水等の少量の水分も検出する場合があり、この水分に反応して吸引を開始するといった誤動作を起こす問題があった。
【0004】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、誤作動を起こすことなく、排泄水や排泄物の吸引を自動で開始できる排泄物処理システムおよびこの排泄物処理システムに使用されるオムツを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述課題を解決するため、本発明は、使用者の臀部に装着され、前記使用者の臀部に対向する面が平坦面に形成されたトレイ部を備えるオムツと、このオムツにホースを介して接続される排泄物処理装置とから構成され、前記オムツのトレイ部に水分検知手段を設けて、この水分検知手段により水分が検出された場合に、前記ホースを介して前記オムツ内に排泄された排泄物の吸引を行う排泄物処理システムにおいて、前記トレイ部は、前記水分検知手段を構成する水分検知センサの近傍に、所定量の水分が溜まる溜まり部を備えることを特徴とする。この発明によれば、トレイ部は、水分検知手段を構成する水分検知センサの近傍に、所定量の水分が溜まる溜まり部を備えるため、水分検知センサが溜まり部に溜まる程度の水分量以下のときに水分を検出する場合を回避し、かかる水分量の場合に吸引を開始することを回避できる。
【0006】
上記発明において、前記水分検知手段は、間隔を空けて配置される複数の導通検出端子を有し、前記溜まり部が前記導通検出端子の間の領域に設けられるようにしてもよい。また、上記発明において、前記複数の導通検出端子が前記溜まり部を挟んで対向する位置に配置されるようにしてもよい。
【0007】
また、本発明は、使用者の臀部に装着され、前記使用者の臀部に対向する面が平坦面に形成されたトレイ部を備え、このトレイ部に水分検知手段が設けられ、この水分検知手段により水分が検出された場合に、このトレイ部に排泄された排泄物を吸引する排泄物処理装置が接続自在に構成されたオムツにおいて、前記トレイ部は、前記水分検知手段を構成する水分検知センサの近傍に、所定量の水分が溜まる溜まり部を備えることを特徴とする。この発明によれば、トレイ部は、水分検知手段を構成する水分検知センサの近傍に、所定量の水分が溜まる溜まり部を備えるため、水分検知センサが溜まり部に溜まる程度の水分量以下のときに水分を検出する場合を回避し、かかる水分量の場合に吸引を開始することを回避できる。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、使用者の臀部に対向する面が平坦面に形成され、この平坦面に水分検知センサが配置されたトレイ部を備えるオムツにおいて、このトレイ部における水分検知センサの近傍に所定量の水分が溜まる汚水溜まり部を設けることにより、水分検知センサが溜まり部に溜まる程度の水分量以下のときに水分を検出する場合を回避でき、かかる水分量の場合に吸引動作が開始されるのを回避できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、図面を参照して本発明の実施形態を詳述する。図1は、本発明の実施形態にかかる排泄物処理システム1の構成を示す図である。この排泄物処理システム1は、使用者3が歩行不能な病人または寝たきりの老人等であるため、使用者3がマット10に横たわった状態で使用される。
【0010】
図1に示すように、排泄物処理システム1は、使用者3の腰臀部に装着されるオムツ12と、オムツ12内部に排泄された排泄水や排泄物を吸引し蓄積する排泄物処理装置14とを備えている。
【0011】
図2はオムツ12の外観構成を示す斜視図であり、図3はオムツ12の展開図である。オムツ12は、使用者3に装着された状態では、股下が短く膝上丈の、いわゆるショーツ(ショートパンツ)を摸した外観をなしており、股間および臀部にあてがわれる汚物収集トレイ120と、下腹部にあてがわれるカップ部121とを備えている。
【0012】
汚物収集トレイ(排泄物収集トレイ)120には、上記カップ部121が取り付けられた漏れ防止材120aが取り付けられ、この漏れ防止材120aには、カップ部121の周囲に延在して使用者3の臍下付近を覆う腹当て部12aと、汚物収集トレイ120の周囲に延在して使用者3の臀部を覆う背当て部12bとが取り付けられている。
【0013】
この背当て部12bの左側部12bLと右側部12bR等には、止着部126が設けられ、これら止着部126には、ベルクロワファスナー(いわゆる、マジックテープ(登録商標))が貼着されている。また、腹当て部12aの左側部12aLと右側部12aRにも、ベルクロワファスナーが貼着された複数の止着部126aが設けられている。
【0014】
使用者3にオムツ12を装着する場合、汚物収集トレイ120を股間および臀部にあてがうと共にカップ部121を下腹部にあてがい、従来のオシメをはかすのと同様に、背当て部12bを臀部にあてがい、背当て部12bを腰および大腿部に巻き付けて、その両側部12bL、12bRに設けられた止着部126を背当て部12bの裏面に止着させ、その後、腹当て部12aを臍下付近にあてがい、腹当て部12aに設けられた止着部126aを背当て部12bに止着させる。
【0015】
上記カップ部121は、湾曲形状に形成され、オムツ12が使用者3に装着された場合に下腹部を覆うものである。上記カップ部121、漏れ防止材120a、腹当て部12aおよび背当て部12bの素材には、通気性がよく、なおかつ、水分を通さない素材(例えばPTFE:ポリテトラフロロエチレン)が適用され、使用者3が長時間装着し続けても、発汗によるムレを低減できるようになっている。
【0016】
また、漏れ防止材120aの縁部120bには、クッション材(例えば、低反発ウレタンフォーム等)120c(図5)が設けられ、このクッション材120cによって使用者3とオムツ12との間の間隙が無くなり、使用者3から排泄された排泄水や排泄物がオムツ12から漏れ出ないようになっている。
【0017】
図4はオムツ12の側面図であり、図5はオムツ12の断面図である。なお、図4は腹当て部12aと背当て部12bとを省略して示している。
【0018】
汚物収集トレイ120は、股間および臀部にあてがわれる外ケース部30と、この外ケース部30の内側に固定される略L字断面形状のトレイ部40とを備えている。
【0019】
図5に示すように、このトレイ部40の臀部3aと対向するトレイ面40aは、略平面に形成され、外ケース部30における漏れ防止材120aの取付面30aよりも低い位置とされている。これによれば、トレイ部40の周囲に外ケース部30が立設し、トレイ面40a上に排泄された尿等の排泄水や排泄物が、汚物収集トレイ120から外に漏れ出ないようになっている。このトレイ面40aの端部には、このトレイ部40と外ケース部30との間の間隙32と連通する洗浄口134aが設けられている。
【0020】
トレイ部40の股間と対向する面40bには、洗浄口130a,130bおよび汚物吸引口130cが設けられている。外ケース部30の外側面30bには、接続部125が設けられ、この接続部125には、上記汚物吸引口130cと連通する汚物吸引ホース接続口122、上記洗浄口130a,130bと連通する洗浄水ホース接続口123、上記洗浄口134aと連通する送風ホース接続口124および接続端子127が設けられている。
【0021】
この接続部125には、図2および図3に示すように、汚物吸引ホース16、洗浄水ホース17、送風ホース18および電気配線128の一端が接続された接続部材19が着脱自在に装着される。この接続部材19を接続部125に装着した場合、汚物吸引ホース接続口122に汚物吸引ホース16が接続され、洗浄水ホース接続口123に洗浄水ホース17が接続され、送風ホース接続口124に送風ホース18が接続され、接続端子127に電気配線128が接続されるようになっている。
【0022】
上記洗浄口130a,130bには、上記洗浄水ホース17を介して排泄物処理装置14から洗浄水が供給される。この洗浄口130aは、使用者3の肛門に向けて洗浄水を噴射する位置に設けられ、使用者3の肛門の洗浄に用いられる。また、洗浄口130bは、女性使用者3の陰部に向けて洗浄水を噴射する位置に設けられ、女性使用者3の陰部の洗浄に用いられる。これら洗浄口130a,130bは、複数の小孔形状の開口(図示せず)によって構成され、各洗浄口130a,130bに供給された洗浄水を比較的広い範囲に噴射する。
【0023】
また、汚物吸引口130cは、トレイ部40のトレイ面40aと略同じ高さに設けられ、このトレイ面40a上の排泄水および排泄物の吸引に用いられる。
【0024】
また、洗浄口134aは、臀部3aの肛門より腰側、例えば、尾てい骨近辺と対向する位置に設けられており、送風ホース接続口124から供給された空気(洗浄水が混合された空気を含む)を尾てい骨近辺に向けて放出する。これによれば、放出空気が、臀部3aとトレイ面40aとの間の隙間を、肛門近辺を経由して汚物吸引口130cに向かう方向(図中X方向)に流れる。
【0025】
また、トレイ面40aには、所定量の水分が溜まる汚水溜まり部50が設けられている。この汚水溜まり部50は、使用者3の臀部3aと対向する位置、より具体的には、上記洗浄口134aと汚物吸引口130cの間の領域であって、排泄された尿等の排泄水が溜まりやすい位置、例えば、肛門近傍に対向する位置に設けられている。例えば、この汚水溜まり部50は、排泄物に含まれる水分(尿等)の想定量以下の水分が溜まる容積、言い換えれば、前回洗浄時に残った水や使用者3の汗等の少量の水分が溜まった程度ではあふれない程度の容積を持つ窪み形状に形成されている。
【0026】
この汚水溜まり部50の周囲には、水分検知手段を構成する水分検知センサ217が配置されており、この水分検知センサ217は、複数の導通検出端子217a,217b,217c,217dを備え、これら導通検出端子217a〜217dの各2端子間の抵抗値が、各端子間が水分を介して導通したときに低くなることを利用して、端子間の抵抗値から水分の有無を検出可能に構成されている。これら導通検出端子217a〜217dは、図6に上面図を示すように、汚水溜まり部50を挟んで夫々対向する位置に配置されている。なお、導通検出端子の数は、2個以上であれば任意の数でよく、また、各導通検出端子の位置は対向位置に限定されず、汚水溜まり部50の周囲に間隔を空けて配置する範囲で任意の位置にしてもよい。
【0027】
これによれば、導通検出端子217a〜271d間の領域に汚水溜まり部50が設けられているため、導通検出端子217a〜271dが汚水だまり部50の底部50aより高い位置にあり、汚水溜まり部50に水分が満杯に溜まっていなければ、導通検出端子217a〜271d間のいずれも導通せず、この水分検知センサ217によっては水分が検出されない。このため、前回洗浄時に残った水や使用者3が汗をかいた程度の少量の水分量では、この水分検知センサ217によっては水分が検出されず、使用者3から尿等の溜まり部50からあふれる程度の水分量が存在する場合にだけ、この水分検知センサ217によって水分が検出される。
【0028】
上記導通検出端子217a〜271dは、接続部125に設けられた接続端子127と電気配線(図示せず)を介して接続され、この接続端子127は、上記したように、電気配線128と接続される。この電気配線128は、排泄物処理装置14の抵抗測定部240(図8)に接続され、この抵抗測定部240が、導通検出端子217a〜271dの中の2端子の全ての組み合わせについて端子間の抵抗値を測定するように構成されている。
【0029】
次に、排泄物処理装置14について説明する。
【0030】
図7は排泄物処理装置14の外観を示す斜視図であり、図8は排泄物処理装置14の構成をオムツ12と共に示す図である。
【0031】
排泄物処理装置14は、上方が開口した箱形状の筐体15を備え、この筐体15には、排泄タンク200および除臭・殺菌器207を収納する収納部15aが設けられ、この収納部15aの上方には、開閉自在な蓋体15bが設けられている。また、この筐体15の収納部15a以外の内部空間には、制御部220を含む電気部品、洗浄水タンク210およびウォータポンプ215等が収納され、この上方にも蓋体15cが設けられている。
【0032】
排泄タンク200には、汚物吸引ホース16が接続され、この汚物吸引ホース16を介して吸引されたオムツ12内に排泄された排泄物および汚水(洗浄水を含む)が貯留される。この排泄タンク200は、上方にハンドル200aを備え、このハンドル200aにより排泄タンク200を筐体15から簡易に取り出し自在となっている。
【0033】
また、排泄タンク200は、図8に示すように、液面センサ201とセパレータ202とを備え、液面センサ201は、排泄タンク200内に貯留された汚物および排泄物の液面位置を検出する。セパレータ202は、液体を除去して気体のみを通過させるものであり、空気管140、脱臭・殺菌器207、空気管141を経て送風ブロワ205の吸込口に接続され、排泄タンク200内の空気だけを通過させる。
【0034】
送風ブロワ205の吐出口は、空気管143、分岐管144および空気管145を介して送風ホース18と接続され、送風ブロワ205は、排泄タンク200内の空気を吸い出して、この空気を送風ホース18を介してオムツ12内に供給する。脱臭・殺菌器207は、排泄タンク200から吸い出された空気を脱臭・除菌し、脱臭・除菌後の空気をオムツ12内に供給させるものである。
【0035】
上記空気管143と空気管145との間には、分岐管144が接続され、この分岐管144は、空気管150、二方弁218、空気管151および分岐管170を介して二方向に分岐され、一方が、水管149、ウォータポンプ215および水管148を介して洗浄水タンク210に接続され、他方が水管152を介して洗浄水ホース17に接続される。
【0036】
洗浄水タンク210は、オムツ12内に供給する洗浄水が貯留されるタンクであり、温水ヒータ211、サーミスタ212およびフロートセンサ(水位計)213を備えている。温水ヒータ211は、洗浄水タンク210内の洗浄水を暖めるものであり、サーミスタ212は、洗浄水の温度を検出するものであり、フロートセンサ(水位計)213は、洗浄水タンク210内の洗浄水の量を検出するためのものである。また、この洗浄水タンク210の底部には、水管147が接続され、この水管147の途中に設けられた水抜コック(活栓)214が開かれると、洗浄水タンク210内の洗浄水が外に排出される。
【0037】
また、排泄物処理装置14は、制御部220と、記憶部230と、抵抗測定部240とを備えており、制御部220は、排泄物処理装置14全体の制御を行うものであり、記憶部230は、フラッシュ・メモリ等のデータの書き換え可能なメモリが適用され、制御部220が読み出して実行するプログラムや各種データ等が記憶される。また、抵抗測定部240は、水分検知センサ217の導通検出端子217a〜217dと接続され、導通検出端子217a〜217dの各端子間の抵抗値を測定し、測定結果を制御部220に出力する。
【0038】
また、この排泄物処理装置14には、操作者(使用者3を含む)が操作して各種情報の報知を行う操作パネル300が設けられている。図9は操作パネル300の一例を示す図である。この操作パネル300において、電源スイッチ300aは、排泄物処理装置14の電源投入/切断を指示するための押下式スイッチであり、自動運転スイッチ300bは、操作者の操作に関係なく、オムツ12に配置された水分検知センサ217からの信号に基づいて、吸引工程、洗浄工程、水抜工程の一連の排泄物処理工程の自動実行を指示するための押下式スイッチである。動作モードランプ300eは、排泄物処理装置14の動作モードが、リモートコントローラ302の操作に応じて動作する手動モードであるか、あるいは、水分検知センサ217からの信号に基づいて動作する自動モードであるかを報知するための表示ランプである。
【0039】
温水設定スイッチ300cは、洗浄水タンク210に貯留されている洗浄水の温度を設定するための押下式スイッチである。表示パネル300fは、温水設定スイッチ300cの操作により、洗浄水の温水設定が行われている間は、その設定された温度を表示し、また、温水設定以外では、サーミスタ212の検出値に基づいて現在の洗浄水の温度を表示する。給水ランプ300gは、洗浄水タンク210に貯留されている洗浄水の水量が不足していることを報知するための表示ランプであり、温水ランプ300iは、洗浄水の水温が設定温度に達していないことを報知するための表示ランプである。また、満杯ランプ300hは、排泄タンク200に貯留されている排泄物および汚水の量が所定量を超えていることを報知するための表示ランプである。
【0040】
また、この排泄物処理装置14は、操作者(使用者3を含む)が排泄物処理装置14を手元操作するためのリモートコントローラ302を備えている。図10は、リモートコントローラ302の一例を示す図である。リモートコントローラ302は、吸引工程の開始指示する吸引ボタン302aと、洗浄工程の開始を指示する洗浄ボタン302bと、吸引工程および洗浄工程の終了を指示する停止ボタン302cとを備え、各操作ボタンの操作に応じて有線または無線により各種指示信号を排泄物処理装置14の制御部220に送信する。
【0041】
次に、この排泄物処理システム1の動作について説明する。上述したように、この排泄物処理システム1は、動作モードとして、リモートコントローラ302の操作に応じて動作する手動モードと、水分検知センサ217からの信号に基づいて動作する自動モードを有している。この動作モードは、操作パネル300bの自動運転スイッチ300bが押下されると、自動運転モードに移行し、自動運転モードの場合に自動運転スイッチ300bが再度押下されると、手動モードに移行する。
【0042】
また、排泄物処理装置14の制御部220は、排泄物処理装置14の電源が投入されている間は、排泄タンク200に設けられた液面センサ201と洗浄水タンク210に設けられたフロートセンサ(水位計)213により各タンクの貯留量をチェックし、排泄タンク200が満杯の場合は満杯ランプ300hを点灯制御し、洗浄水タンク210に洗浄水の補給が必要な場合は給水ランプ300gを点灯制御すると共に、洗浄水タンク210内の洗浄水の温度をサーミスタ212により検出し、洗浄水の温度が設定温度になるように温水ヒータ211の駆動を制御するチェック処理を適宜実行する。
【0043】
図11は、自動動作モード時の動作を示すフローチャートである。
【0044】
自動運転モードの場合、制御部220は、まず、抵抗測定部240により水分検知センサ217の導通検出端子217a〜217d間の抵抗値を測定させ、測定された抵抗値に基づいて、水分検知センサ217により水分が検出されたか否かを判定する(ステップS1)。より具体的には、制御部220は、導通検出端子217a〜217d間の抵抗値が、予め定めた設定範囲Z1内か否かを判定し、いずれかの抵抗値がこの設定範囲Z1内であれば、水分検知センサ217により水分が検出されたと判定する。
【0045】
この設定範囲Z1は、導通検出端子217a〜217dの各端子間に尿等の水分が介在して導通状態の場合にとりうる抵抗値をカバーする範囲、例えば、導通状態の場合の抵抗値は、非導通状態の場合の抵抗値よりも低くなるため、導通状態の場合の抵抗値の最大値をY[Ω]すると、予め定めた範囲は、Y[Ω]以下の範囲とすればよい。
【0046】
制御部220は、水分が検出されない場合は、上記ステップS1の処理を水分が検出されるまで所定周期で繰り返す。一方、水分が検出されると、制御部220は、オムツ12内に排泄された尿等の排泄物を吸引する吸引工程を開始する(ステップS2)。
【0047】
詳述すると、制御部220は、送風ブロワ205を動作させると共に、二方弁28を開いて、排泄タンク200内の空気を吸い出して、この排泄タンク200に汚物吸引ホース16を介して接続されたオムツ12の内部を負圧に保ち、また、この排泄タンク200から吸い出された空気を、空気管143、分岐管144および空気管145を介して送風ホース18に供給し、オムツ12内の洗浄口134aからオムツ12内に送風する。これによって、オムツ12内に洗浄口134aから汚物吸引口130cに向かう空気の流れが形成される。
【0048】
さらに、制御部220は、ウォータポンプ215を所定時間だけ駆動し、洗浄水タンク210に貯留された洗浄水を水管148の位置まで供給し、洗浄水を、分岐管170、二方弁218を経て空気管145へ流入させ、空気管145を流れる空気と混合させて洗浄口134aからオムツ12内に放出させる。これは、本構成では、洗浄口130a、130bが複数の小孔形状の開口に形成される一方、洗浄口134aの開口面積が大きく形成されるため、洗浄口134aから分岐管170に至る管路の圧力損失が、洗浄口130a、130bから分岐管170に至る管路の圧力損失より低くなっており、この圧力損失差および空気管145に流れる空気による負圧によって、洗浄水が空気管145へ引き込まれるからである。
【0049】
洗浄水を混合した空気をオムツ12内に放出することにより、オムツ12内に排泄された排泄物が軟化されて流動し易くされ、この排泄物を、洗浄口134aから汚物吸引口130cに向かう図5中X方向の空気の流れによって確実に汚物吸引口130cに吸引させることができる。この汚物吸引口130cに吸引された排泄物は、汚物吸引ホース16を経て排泄タンク200に貯留される。
【0050】
本構成では、トレイ部40に設けられた水分検知センサ217の近傍に汚水溜まり部50が設けられているため、汚水溜まり部50に溜まる程度の少量の水分量では、水分検知センサ217が水分を検出せず、少量の水分に反応して吸引工程を開始してしまう誤作動が防止される。このため、使用者3が尿等の比較的大量の水分を排泄した場合にだけ吸引工程を開始することができる。
【0051】
吸引工程を開始した後、制御部220は、抵抗測定部240により水分検知センサ217の導通検出端子217a〜217d間の各抵抗値(以下、「抵抗値R」と表記する)を所定周期で測定させ、いずれかの抵抗値Rの変化量(例えば、測定周期間隔の変化率または差分値)が予め定めた設定範囲Z2内となったか否かを判定する(ステップS3)。
【0052】
ここで、図12は、排泄物(便や尿)排泄時の吸引工程における抵抗値Rの変化を示す特性曲線図である。この図に示すように、吸引開始時点t1から暫くの期間は、洗浄水に加えて排泄物が導通検出端子217a〜217d付近に存在するため、抵抗値Rは比較的高い値となり、時間tが経過して排泄物が吸引されていくに従って、抵抗値Rは徐々に下がり、排泄物が全て吸引された時間teに至ると、導通検出端子217a〜217d間には洗浄水だけが存在するため、抵抗値Rはほぼ一定値に収束することとなる。
【0053】
上記設定範囲Z2は、抵抗値Rの変化量がほとんどない状態の場合の値、例えば、抵抗値Rの変化量として変化率を適用する場合は、設定範囲Z2は1.0に近い値の前後範囲に設定される。そして、制御部220は、抵抗値Rの変化量が設定範囲Z2内になったと判定すると、二方弁218を閉じて吸引工程を終了する(ステップS4)。
【0054】
ところで、図示の例では、排泄物が全て吸引された後は、抵抗値Rがほぼ一定値Raに収束するため、検出した抵抗値Rが、この値Raになったこと検出することで、排泄物が全て吸引されたことを検出可能なようにみえるが、この収束する値Raは、水分検知センサ217の個体差や劣化度に依存する検出感度のばらつきに応じてばらつく値であり、仮に検出した抵抗値Rがこの値Raになっても排泄物が残存している場合もあり得る。
【0055】
上記のように、本構成では、抵抗値Rの変化量に基づいて抵抗値Rがほぼ一定値に収束したタイミングを検出するため、排泄物がほぼ全て吸引されたタイミングを精度良く検出することができる。このため、このタイミングで吸引工程を終了することにより、排泄物が全て吸引されるとすぐに吸引工程を終了させることができ、例えば、吸引時間を一定値に設定した従来のものに比して、洗浄水や電気代の無駄を解消することが可能になる。
【0056】
そして、吸引工程を終了すると、制御部220は、使用者3の各部位を洗浄する洗浄工程を開始する(ステップS5)。洗浄工程にあっては、制御部220は、まず、送風ブロワ205を動作させて、オムツ12内に洗浄口134aから汚物吸引口130cに向かう空気の流れを形成させる。次いで、制御部220は、ウォータポンプ215の運転を開始し、洗浄水タンク210に貯留された洗浄水を、水管148、水管149、分岐管170および洗浄水ホース17を経てオムツ12の洗浄口130a、130bから噴射させる。この洗浄口130a、130bから噴射された洗浄水により、使用者3の各部位が洗浄され、洗浄後の洗浄水が汚物吸引口130cから吸引され、排泄タンク200に貯留される。この場合、洗浄水タンク210に貯留された洗浄水は、制御部220の制御の下、温水ヒータ211によって適温の温水に温度調整されているため、使用者3の不快感を招くことなく洗浄することができる。
【0057】
そして、制御部220は、洗浄工程を開始して予め設定された洗浄時間が経過すると、ウォータポンプ215を停止させて洗浄工程を終了し、洗浄水ホース17内に溜まった洗浄水を排出する水抜工程を開始する(ステップS6)。なお、この洗浄時間は、十分に洗浄できる時間、若しくは使用者3等に設定された任意の時間に設定される。
【0058】
この水抜工程にあっては、制御部220は、二方弁218を開き、送風ブロワ205を動作させることにより、送風ブロワ205の排出空気の一部を、分岐管144、空気管150、二方弁218、空気管151、分岐管170、水管152を経て洗浄水ホース17に供給し、洗浄水ホース17内に溜まった洗浄水を排出する。この排出された洗浄水は、汚物吸引口130cから吸引され、排泄タンク200に貯留される。これによって、次回の洗浄工程時に、洗浄水ホース17に溜まった低温の水が使用者3に向けて排出されるのを防止することができる。以上が自動運転モード時の動作である。なお、手動モード時の動作は、上記吸引工程、洗浄工程および水抜工程の開始または停止が、それぞれリモートコントローラ302に操作に応じて個別に実行される点だけが異なる。
【0059】
以上説明したように、この排泄物処理システム1においては、臀部3aと対向する面40aが平坦面に形成されたトレイ部40に配置される水分検知センサ217の近傍に、汚水溜まり部50を設けたことにより、水分検知センサ217が少量の水分を検出してしまう場合を回避でき、使用者3が排泄した尿等の比較的大量の水分だけを検出することが可能となる。これにより、水分検知センサ217が少量の水分に反応して吸引工程を開始してしまう誤動作を回避できる。このように、吸引工程の誤動作を回避することにより、電気代や洗浄水の節約を図ることができる。
【0060】
また、本実施形態では、排泄物の吸引動作を開始した場合に、オムツ12の臀部と対向するトレイ面40aに配置された導通検出端子217a〜217d間のいずれかの抵抗値の変化量が略一定となった際に、吸引動作を停止させることにより、排泄物を全て吸引し終わったタイミングで吸引動作を停止することができる。すなわち、この排泄物処理システム1は、排泄物の種類(便か尿か)や量に応じて吸引時間を変動させることができ、吸引し終わった適切なタイミングで吸引動作を停止することができる。従って、吸引し終わっても洗浄水を無駄に供給することが回避され、洗浄水の節水や電気代の節約を更に図ることができる。この場合、洗浄水タンク210への洗浄水の補充間隔を長くでき、使い勝手が向上すると共に、洗浄水タンク210を大型化しなくてもよいため、排泄物処理装置14の小型化を図ることができる。
【0061】
以上、本発明の一実施形態を説明したが、本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の範囲内で種々の設計変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】本発明の実施形態にかかる排泄物処理システムの構成を示す図である。
【図2】オムツの外観構成を示す斜視図である。
【図3】オムツの展開図である。
【図4】オムツの側面図である。
【図5】オムツの断面図である。
【図6】水分検知センサの説明に供する図である。
【図7】排泄物処理装置の外観を示す斜視図である。
【図8】排泄物処理装置の構成をオムツと共に示す図である。
【図9】操作パネルの一例を示す図である。
【図10】リモートコントローラの一例を示す図である。
【図11】自動動作モード時の動作を示すフローチャートである。
【図12】吸引工程における抵抗値の変化を示す特性曲線図である。
【符号の説明】
【0063】
1 排泄物処理システム
12 オムツ
14 排泄物処理装置
16 汚物吸引ホース
17 洗浄水ホース
18 送風ホース
19 接続部材
30 外ケース部
40 トレイ部
40a トレイ面
50 汚水溜まり部
120 汚物収集トレイ
130a,130b 洗浄口
130c 汚物吸引口
134a 洗浄口
217 水分検知センサ
217a,217b,217c,217d 導通検出端子
220 制御部
230 記憶部
240 抵抗値測定部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の臀部に装着され、前記使用者の臀部に対向する面が平坦面に形成されたトレイ部を備えるオムツと、このオムツにホースを介して接続される排泄物処理装置とから構成され、前記オムツのトレイ部に水分検知手段を設けて、この水分検知手段により水分が検出された場合に、前記ホースを介して前記オムツ内に排泄された排泄物の吸引を行う排泄物処理システムにおいて、
前記トレイ部は、前記水分検知手段を構成する水分検知センサの近傍に、所定量の水分が溜まる溜まり部を備えることを特徴とする排泄物処理システム。
【請求項2】
前記水分検知手段は、間隔を空けて配置される複数の導通検出端子を有し、
前記溜まり部は、前記導通検出端子の間の領域に設けられることを特徴とする請求項1記載の排泄物処理システム。
【請求項3】
前記複数の導通検出端子は、前記溜まり部を挟んで対向する位置に配置されていることを特徴とする請求項1又は2記載の排泄物処理システム。
【請求項4】
使用者の臀部に装着され、前記使用者の臀部に対向する面が平坦面に形成されたトレイ部を備え、このトレイ部に水分検知手段が設けられ、この水分検知手段により水分が検出された場合に、このトレイ部に排泄された排泄物を吸引する排泄物処理装置が接続自在に構成されたオムツにおいて、
前記トレイ部は、前記水分検知手段を構成する水分検知センサの近傍に、所定量の水分が溜まる溜まり部を備えることを特徴とするオムツ。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2006−20683(P2006−20683A)
【公開日】平成18年1月26日(2006.1.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−199028(P2004−199028)
【出願日】平成16年7月6日(2004.7.6)
【出願人】(000001889)三洋電機株式会社 (18,308)
【Fターム(参考)】