説明

排泄物処理装置

【課題】排泄物処理装置において、排泄物検知センサの感度を安定させて排尿を確実に検
知して排尿処理できるようにすること。
【解決手段】排泄物処理装置100は排泄物レシーバ1と装置本体2とを備える。排泄物
レシーバ1は、排泄物を受け止めるレシーバ本体10と、排泄物を検知する排泄物検知セ
ンサ20とを備える。装置本体2は、尿を溜める尿タンク51と、レシーバ本体10に受
け止められた尿を尿タンク51へ吸引する真空真空ポンプ52と、制御装置53とを備える。排泄物検知センサ20はレシーバ本体10に受け止められた尿を検出する一対の尿検知用の電極21,22を備える。制御装置52は尿検知用の電極電極間に間欠的に電圧を付加させるように制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、排泄物処理装置に係り、特に、排泄を検知するセンサを備えた排泄物レシーバを人に装着して排泄物を処理する排泄物処理装置に好適なものである。
【背景技術】
【0002】
自力歩行が困難な人、入院患者、身障者などに排泄物レシーバを装着して排尿を処理する排泄物処理装置が案出されている。
【0003】
従来の排泄物処理装置としては、例えば特開2005-102979号公報(特許文献1)に示されたものがある。
【0004】
この特許文献1の排泄物処理装置は、人に装着される尿レシーバと、尿を溜める尿タンクと、尿レシーバから尿タンクに尿を導く導尿チューブと、尿レシーバから導尿チューブを通して尿を吸引して尿タンクに溜める真空ポンプと、この真空ポンプを制御する制御装置と、を備えて構成されている。
【0005】
前記尿レシーバは、表面シートと吸尿シートとの間に漏斗形状孔が穿設された尿戻り抑制シートを配置し、表面シートと尿戻り抑制シートとの間に尿検知センサを配置して構成されている。この尿検知センサは、一対の電極を電極支持シートに平行に接着して配置し、その電極に信号線を接続して構成されている。この信号線は制御装置に接続されている。
【0006】
そして、特許文献1の排泄物処理装置において、一対の電極の間に尿が蓄えられると、一対の電極の導通面同士が通電して排尿を検知する。この尿検知信号が信号線を介して制御装置に加えられ、制御装置が真空ポンプを駆動する。この真空ポンプの駆動により尿タンク内の空気圧が低下して尿レシーバの導尿口に負圧が生じ、この負圧による吸引力により導尿チューブに尿が吸引されて尿タンクに導かれ蓄えられる。
【0007】
また、従来の別の排泄物処理装置としては、例えば特開2008-8791号公報(特許文献2)に示されたものがある。
【0008】
この特許文献2の排泄物処理装置は、人に装着される排泄物レシーバと、尿を溜めるタンクと、排泄物レシーバに設けられている受け皿からタンクに尿を導くチューブと、排泄物レシーバからチューブを通して尿を吸引してタンクに溜める真空ポンプと、この真空ポンプを制御する制御装置と、を備えて構成されている。
【0009】
前記排泄物レシーバに設けられる排泄物検知センサは、並んで延びる二対の導線(電極)を防水性及び絶縁性のある支持体と被覆体との間に挟み込んで構成されている。この排泄物検知センサは排泄物レシーバにおける各種積層シートの間に挟みこまれて設置されている。排泄物レシーバにおける尿を受ける部分に排泄物検知センサの尿導入孔が設けられ、便を受ける部分に排泄物検知センサの便導入孔が設けられている。また、排泄物レシーバ内の尿を受ける部分における排泄物検知センサよりも下方に尿の受け皿が設けられている。この受け皿はチューブを介して真空ポンプに接続されている。
【0010】
そして、特許文献2の排泄物処理装置において、排泄物レシーバを装着した人が尿を排出すると、その尿は排泄物レシーバの尿を受ける部分に染み込み、さらには排泄物検知センサ側へと染み透り、排泄物検知センサの表面に接触して尿導入孔内に侵入し、一方の一対の導線間を短絡させる。これにより、排泄物検知センサから制御装置へと排尿発生の信号が送られ、制御装置はこの信号を受けて真空ポンプを作動させ、尿を受け皿からタンクへ送る。
【0011】
また、排泄物レシーバを装着した人が便を排出すると、その便の水分は排泄物レシーバの便を受ける部分を排泄物検知センサ側へと染み透り、排泄物検知センサの表面に接触して便導入孔内に侵入し、他方の一対の導線間を短絡させる。これにより、排泄物検知センサから制御装置へと排便発生の信号が送られ、制御装置は排便が生じた旨を知らせる警報器を作動させる。
【0012】
【特許文献1】特開2005-102979号公報
【特許文献2】特開2008-8791号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1の排泄物処理装置では、一対の電極の導通面に尿中の不純物が堆積して尿検知センサの感度が鈍くなり、排尿があっても直ちに尿検知センサで検知できず、排尿処理ができなくなってしまう、という課題があった。なお、特許文献1の排泄物尿処理装置では、排出された便の検出については開示されていない。
【0014】
一方、上述した特許文献2の排泄物処理装置でも、二対の導線の導通面に尿または便の水分中の不純物が堆積して排泄物検知センサの感度が鈍くなり、排尿や排便があっても排泄物検知センサで検知できなくなり、これによって排尿処理ができなくなってしまう。
【0015】
さらに、特許文献2の排泄物処理装置では、排出された尿が尿導入孔と便導入孔の両方に侵入して尿検知側の導体と便検知側の導体とにまたがって付着した場合や、排出された便が便導入孔と尿導入孔の両方へ進入して便検知側の導体と尿検知側の導体とにまたがって付着した場合には、排尿と排便を区別して検知することができない、という課題があった。
【0016】
本発明の目的は、排泄物検知センサの感度を安定させて排尿を直ちに、かつ確実に検知して排尿処理できる排泄物処理装置を提供することにある。
【0017】
本発明の別の目的は、排尿と排便を確実に区別して処理できる排泄物処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
前述の目的を達成するための本発明の第1の態様は、人に装着される排泄物レシーバと、前記排泄物レシーバを着脱可能に接続した装置本体とを備え、前記排泄物レシーバは、着用者から排泄される排泄物を受け止めるレシーバ本体と、この排泄された排泄物を検知する排泄物検知センサとを備え、前記装置本体は、尿を溜める尿タンクと、前記レシーバ本体に受け止められた尿を前記尿タンクへ吸引する真空ポンプと、この真空ポンプを制御する制御装置とを備え、前記排泄物検知センサは前記レシーバ本体に受け止められた尿を検出する一対の尿検知用の電極を備えてなる排泄物尿処理装置であって、前記制御装置は前記尿検知用の電極の極性を所定間隔で反転させるように制御することにある。
【0019】
係る本発明の第1の態様におけるより好ましい具体的構成例は次の通りである。
(1)前記尿検知用の電極は防水性及び絶縁性のある帯状の支持体と防水性及び絶縁性のある帯状の被覆体との間に挟み込まれて並んで帯状に延びるように形成され、前記被覆体は前記尿検知用の電極の各電極に対応して少なくとも一対の尿導入部を形成し、前記排泄物検知センサは前記レシーバ本体に受け止められた尿が前記一対の尿導入部に侵入して前記尿検知用の電極間が短絡されることにより排尿を検出すること。
(2)前記装置本体は、直流電源装置と、この直流電源装置から延びる電気配線に接続されたコネクタとを備え、前記尿検知用の電極は前記コネクタ及び前記電気配線を介して前記直流電源装置に接続されること。
(3)前記(2)に加えて、前記装置本体は前記電気配線の極性を反転させる極性反転回路を備え、前記制御装置は前記極性反転回路を制御して前記電気配線の極性を反転することにより前記尿検知用の電極の極性を反転すること。
(4)前記(2)に加えて、前記装置本体は前記電気配線間の抵抗値を検出する検出手段を備え、前記制御装置は前記検出手段の検出結果に基づいて前記真空ポンプを制御すること。
(5)前記排泄物検知センサは前記レシーバ本体に受け止められた便を検出する一対の排便用の電極を備えたこと。
(6)前記(5)に加えて、前記制御装置は前記排便用の電極の極性を所定間隔で反転させるように制御すること。
(7)前記(5)に加えて、前記制御装置は、前記尿検知用の電極による尿の検出と、前記排便用の電極による便の検出とを切替えて行うように制御すること。
(8)前記(6)に加えて、前記制御装置は、前記尿検知用の電極による尿の検出と前記排便用の電極による便の検出との切替えと、前記尿検知用の電極の極性の反転と前記排便用の電極の極性の反転との切替えとを交互に行うように制御すること。
(9)前記(6)に加えて、前記尿検知用の電極及び前記排便用の電極のそれぞれの極性を反転させる所定間隔を0.1〜1秒の範囲内に設定したこと。
(10)前記(5)に加えて、前記尿検知用の電極間または前記排便用の電極間に印加する電圧を1〜10Vの範囲内に設定したこと。
【0020】
また、前述の目的を達成するための本発明の第2の態様は、人に装着される排泄物レシーバと、前記排泄物レシーバを着脱可能に接続した装置本体とを備え、前記排泄物レシーバは、着用者から排泄される排泄物を受け止めるレシーバ本体と、この排泄された排泄物を検知する排泄物検知センサとを備え、前記装置本体は、尿を溜める尿タンクと、前記レシーバ本体に受け止められた尿を前記尿タンクへ吸引する真空ポンプと、この真空ポンプを制御する制御装置とを備え、前記排泄物検知センサは前記レシーバ本体に受け止められた尿を検出する一対の尿検知用の電極を備えてなる排泄物尿処理装置であって、前記制御装置は前記尿検知用の電極間に間欠的に電圧を付加させるように制御することにある。
【0021】
また、前述の別の目的を達成するための本発明の第3の態様は、人に装着される排泄物レシーバと、前記排泄物レシーバを着脱可能に接続した装置本体とを備え、前記排泄物レシーバは、着用者から排泄される排泄物を受け止めるレシーバ本体と、この排泄された排泄物を検知する排泄物検知センサとを備え、前記装置本体は、尿を溜める尿タンクと、前記レシーバ本体に受け止められた尿を前記尿タンクへ吸引する真空ポンプと、この真空ポンプを制御する制御装置とを備え、前記排泄物検知センサは、前記レシーバ本体に受け止められた尿を検出する一対の尿検知用の電極と、前記レシーバ本体に受け止められた便を検出する一対の排便用の電極とを備えてなる排泄物尿処理装置であって、前記制御装置は前記尿検知用の電極による検出と前記排便用の電極による検出とを切替えて行うように制御することにある。
【発明の効果】
【0022】
係る本発明の第1の態様の排泄物処理装置によれば、排泄物検知センサの感度を安定させて排尿を確実に検知して排尿処理できる。
【0023】
また、係る本発明の第2の態様の排泄物処理装置によれば、排泄物検知センサの感度を安定させて排尿を確実に検知して排尿処理できる。
【0024】
さらに、係る本発明の第3の態様の排泄物処理装置によれば、排尿と排便を確実に区別して処理できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の一実施形態の排泄物処理装置について図1から図8を用いて説明する。
【0026】
図1に示すように、排泄物処理装置100は、排泄物レシーバ1と装置本体2とを備えて構成されている。排泄物レシーバ1と装置本体2とは、導尿チューブ30、電気配線61,62、コネクタ42を介して着脱可能に接続されている。なお、図1は本実施形態の排泄物処理装置100の全体構成図である。
【0027】
排泄物レシーバ1は、図1及び図2に示すように、自力歩行が困難な人、入院患者、身障者などの股間に装着されて、着用者から排泄される尿及び便を受け止めるレシーバ本体10と、排泄された尿及び便を検知する排泄物検知センサ20と、排泄された尿をレシーバ本体10から尿タンク51に導尿チューブ30とを備えて構成されている。この排泄物レシーバ1は柔軟性を有する材料で形成されている。図2は図1の排泄物レシーバ1の拡大断面図であり、図2では、理解しやすいように、上述した各部材が離隔した状態で表現されているが、実際には、一体となっている。
【0028】
レシーバ本体10の尿を受ける部分10aに排泄物検知センサ20の尿導入部28が設定され、便を受ける部分10bに排泄物検知センサ20の便導入部29が設定されている。また、排泄物検知センサ20は、レシーバ本体10の積層シートの間に挟みこまれた状態で使用される。レシーバ本体10の尿を受ける部分10aにおける排泄物検知センサ20よりも下方には尿受け皿13が設けられている。この尿受け皿13は尿チューブ30を介して尿タンク51に接続されている。尿受け皿13内の尿は真空ポンプ52の吸引動作により尿タンク51内に送られる。なお、排泄物検知センサ20は尿導入部28と便導入部29とが複数個づつ交互に配置されるようにしてもよく、この場合には、より確実に排尿検知及び排便検知を行うことができる。
【0029】
レシーバ本体10は、図2に示すように、バックシート部12、尿受け皿13、表面材部14、表面シート部15及びギャザー部16を備え、これらが下から順に積層されて構成されている。
【0030】
尿受け皿13は、液透過性シート13a、この液透過性シート13aの着用者側の面に配置された防漏シート13b、これら液透過性シート13aと防漏シート13bとの間の空間に設けられた空間保持材13cを備えて構成されている。液透過性シート13aと防漏シート13bとの間の空間は閉鎖空間であり、この閉鎖空間に連通するように導尿チューブ30が接続されている。空間保持材13cは、球状であり、液透過性シート13aおよび防漏シート13bの間隔を保持する。
【0031】
表面材部14は、液透過性シート13aの反着用者側の面に設けられ、着用者から排泄された尿を一時的に受け止めるものである。表面シート部15は液透過性シート13aの着用者側の表面を覆っている。
【0032】
バックシート部12は、尿受け皿13から尿が漏れるのを防止するため、防漏シート13bの反着用者側の面を覆っている。これら表面シート部15およびバックシート部12は、ひょうたん形状であり、周縁で互いに密着するように接合されている。
【0033】
図3から図5に示すように、排泄物検知センサ20は、並んで延びる二対の電極21,22,23,24が、防水性及び絶縁性のある帯状の支持体26と防水性及び絶縁性のある帯状の被覆体27との間に挟み込まれている。なお、図3は図1の排泄物検知センサ20を2つに分割して示す平面図、図4は図3のA−A断面図、図5は図3のB−B断面図である。
【0034】
被覆体27には、一対の電極21,22同士を関連付ける尿導入部28が少なくとも一対形成されると共に、他の対の電極23,24同士を関連付ける便導入部29が一対形成されている。尿導入部28及び便導入部29は、図示例では四角の孔で形成されているが、被覆体27の両側の縁に形成した切欠きで構成されていてもよい。そして、関連付けられた尿導入部28内に尿Aが入ると、図4に示すように一対の電極21,22間が短絡される。関連付けられた便導入部29内に便Bが入ると、図5に示すように他の対の電極23,24間が短絡される。
【0035】
支持体26は、この排泄物検知センサ20の全体を支持するものであり、屈曲自在な帯状片として形成されている。この支持体26は、水分を通さないよう防水性を有し、電気を通さないよう絶縁性を有する。
【0036】
二対の電極21,22,23,24は、それぞれ支持体26である帯状片の両側縁に沿って平行に延びる。これらのうち、内側の一対の電極21,22は排尿検出に用いられ、外側の一対の電極23,24は排便検出に用いられる。二対の電極21,22,23,24におけるコネクタ42を連結する基端には、比較的大きな面積の端子部21a,22a,23a,24aがそれぞれ形成されている。また、排便検出用の電極23,24における反端子部側の末端には、拡張部23b,24bがそれぞれ形成されている。排便検出用の電極23,24の末端である拡張部23b,24bは支持体26の末端に設けられるが、排尿検出用の電極21,22の末端は排便検出用の電極23,24の拡張部3b,4bよりも基端側に寄った箇所で終わっている。すなわち、排尿検出用の電極21,22の末端およびその近傍と、排便検出用の電極23,24の拡張部23b,24bは、それぞれ尿を受ける部分10aと、便を受ける部分10bとにそれぞれ対応して位置されている。
【0037】
被覆体27は、電極21,22,23,24の上から、端子部21a,22a,23a,24aや導入部28,89の部分を除き、支持体26の略全面に積層される。被覆体27は、支持体26と共に電極21,22,23,24、拡張部23b、24bを外部から絶縁すると共に防水する。
【0038】
被覆体27には、排尿検出用の一対の電極21,22を局所的に露出させ、尿を導入する尿導入部28が形成されている。この尿導入部28は、排尿検出用の電極21,22の末端およびその近傍において、支持体26の長手方向中心線を対称軸として左右対称に複数個設けられている。図4に示すように、尿検知用の一対の電極21,22上の尿導入部28に跨るように尿Aが付着すると、電極21,22間を電流が短絡して流れることとなり、これにより尿Aの排出が検知される。この排尿検出用の電極21,22側を排尿検知センサと呼ぶこととする。
【0039】
また、被覆体27には、排便検出用の一対の電極23,24を局所的に露出させ、便を導入する便導入部29が形成されている。この便導入部29は、排便検出用の電極23,24の拡張部23b,24bにおいて、支持体26の長手方向中心線を対称軸として左右対称に一個ずつ設けられている。図5に示すように、一対の電極23,24上の便導入部29に跨るように便Bが付着すると、一対の電極23,24間を電流が短絡して流れることとなり、これにより便Bの付着が検知される。この排便検出用の電極23,24側を排便検知センサと呼ぶこととする。
【0040】
支持体26及び被覆体27には、その表裏間を貫通するように尿通過孔25が複数個形成されている。排出された尿が尿通過孔25から支持体26の裏側へと通り抜け、尿受け皿13に受け止められる。
【0041】
図1に示すように、装置本体2は、導尿チューブ30の一側端部を接続する尿タンク51と、尿タンク51に接続した真空ポンプ52と、真空ポンプ52、スイッチ回路56及び極性反転回路57を制御する制御装置53と、排泄物検知センサ10の電極21,22間または23,24間に電気配線61,62を通して電圧を加える直流電源装置54と、排泄物検知センサ10の出力(抵抗値)を検出する検出手段55と、排泄物検知センサ10の電極21,22,23,24への電気配線61,62をオンオフするスイッチ回路56と、排泄物検知センサ10の電極21,22,23,24への電気配線61,62の極性を反転させる極性反転回路57と、を備えて構成されている。ここで直流電源装置54は、例えばACアダプタやバッテリなどである。
【0042】
制御装置53は、直流電源装置54より電気配線64を通して電源が供給されると共に、真空ポンプ52、スイッチ回路56、極性反転回路57を制御する。制御装置53には、タイマーが内蔵されている。
【0043】
制御装置53は、検出手段55による尿検知用の一対の電極21,22間の抵抗値の検出結果に基づいて、真空ポンプ52を制御する。即ち、電極21,22間が短絡され、その電極21,22間の電気抵抗が所定値以下に減少したことを検出手段55を介して制御装置53で検出すると、制御装置53は排尿があったと判断して真空ポンプ52を起動する。この真空ポンプ52の駆動により、排泄物レシーバ1の尿が減少し、電極21,22間の電気抵抗が所定値以上に増大したことを検出手段55を介して制御装置53で検出すると、タイマーを起動させると共に、真空ポンプ52の運転を継続する。このタイマーが所定時間に達すると、制御装置52は真空ポンプ52を停止する。
【0044】
また、制御装置53は、検出手段55による便検知用の一対の電極23,24間の抵抗値の検出結果に基づいて、図示しない警報装置を動作する。即ち、即ち、電極23,24間が短絡され、その電極23,24間の電気抵抗が所定値以下に減少したことを検出手段55を介して制御装置53で検出すると、制御装置53は排便があったと判断して警報装置を動作してアラームを報知する。
【0045】
真空ポンプ52は、直流電源装置54より電気配線63を通して電源が供給され、尿タンク51内の空気を吸引することにより排泄物レシーバ1で受け止めた尿を導尿チューブ30を通して吸い出して、尿タンク51に溜める。
【0046】
電気配線61,62の末端にはコネクタ42が設けられている。このコネクタ42は排泄物検知センサ20の基端部に着脱自在に連結される。コネクタ42を排泄物検知センサ20の基端部に連結することにより、端子部21a,22aと電気配線61とが電気的に接続されると共に、端子部23a,24aと電気配線62とが電気的に接続される。
【0047】
図6に示すように、スイッチ回路56は、電極21,22への電気配線61をオンオフするスイッチ56aと、電極23,24への電気配線62をオンオフするスイッチ56bとからなっている。換言すれば、スイッチ回路56は、排尿検知センサをオンオフするスイッチ56aと、排便検知センサをオンオフするスイッチ56bとからなっている。なお、図6は図1の排泄物検知センサ20の電気系統を模式的に示す図である。
【0048】
極性反転回路57は、電極21,22への電気配線61の極性を反転させる極性反転回路57aと、電極23,24への電気配線62の極性を反転させる極性反転回路57bとからなっている。換言すれば、極性反転回路57は、排尿検知センサの極性を反転させる極性反転回路57aと、排便検知センサの極性を反転させる極性反転回路57bとからなっている。
【0049】
次に、排泄物処理装置100の制御動作について、図1及び図6〜図8を参照しながら説明する。図7は図6の排泄物検知センサ20の電気系統の状態の変化を示す図、図8は図7の状態変化に対応する電圧変化を示すタイムチャート図である。
【0050】
排泄物レシーバ1の着用者から排尿があり、尿検知用の電極21,22上の尿導入部28に跨るように尿Aが付着すると、電極21,22間が短絡されることとなり、これにより尿Aの排出が検知手段55により検知される。この検知手段55の排尿検出信号に基づいて、制御装置53は、真空ポンプ52を起動させ、排泄物レシーバ1から導尿チューブ30を通して尿の吸引を開始させると共に、内蔵タイマーを起動させる。
【0051】
ここで、人から排泄される尿の中に含まれる不純物には、電極21,22の+電極または/および−電極に吸引され、その導通面に堆積されて電極21,22間の電気的導通を妨害する物質が存在するので、電極21,22の極性が常に同じであると、排泄物検知センサ20の動作中に妨害物質が継続して+電極または/および−電極に吸引されて堆積されて行くこととなる。
【0052】
つまり、電極の導通面に尿中の不純物が堆積して尿検知センサの感度が鈍くなり、排尿があっても直ちに尿検知センサで検知できないが、これは人から排泄される尿の中に含まれる不純物には、排泄物検知センサの電極に吸引されその導通面に堆積されて電極間の電気的導通を妨害する物質(例えば、たんぱく質等の有機物や無機イオンなど)が存在し、尿検知センサの電極に電圧を加えて検知する際に、これら妨害物資が有する電気的な極性に応じて、+(プラス)の極性を有する妨害物質は−電極(マイナス電極)に、−(マイナス)の極性を有する妨害物質は+電極(プラス電極)に吸引されて堆積されて行くことが主な原因である。
【0053】
そこで、本実施形態では、制御装置52は、排泄物検知センサ20の動作中において常に、所定間隔で極性反転回路57aを動作させ、電気配線61の極性を反転させて排尿検出用の電極21、22の極性が反転するように制御している。これによって、各々の極に堆積していた妨害物質は、+極が−極に、−極が+極に反転されることで反発され、或いは吸引力が解除されることにより、導尿チューブ30へ吸引される尿と共に排出される。このように各々の電極の極性を所定間隔で反転し続けることによって、電極21、22の導通面が常にリフレッシュされることとなり、排泄物検知センサ20の感度を安定させて排尿を確実に検知して排尿処理できる。
【0054】
また、制御装置52は、尿検知用の電極21,22間に間欠的に電圧を付加させるように制御する。これによって、尿検知用の電極21,22による尿の検知時に、周期的に電圧が付与されない時間帯が存在することとなり、この電圧が付与されていない時間帯に妨害物が尿と共に排出されるので、排泄物検知センサ20の感度を安定させて排尿を確実に検知して排尿処理できる。
【0055】
また、制御装置52は、その動作中において常に、所定間隔で、スイッチ56aのオン及びスイッチ56bのオフの状態(図7(a)または図7(c)の状態)と、スイッチ56aのオフ及びスイッチ56bのオンの状態(図7(b)または図7(d)の状態)と、を切替えるように制御する。換言すれば、制御装置52は、スイッチ56aがオンしている時にはスイッチ56bがオフし、スイッチ56aがオフしている時にはスイッチ56bがオンするように制御する。
【0056】
これによって、排出された尿が尿導入部28と便導入部29の両方へ進入してまたがって付着した場合でも、尿の検出時間帯t,tでは尿導入部28同士の短絡のみの検知を行うので、排便と区別して排尿を検知することができる。逆に、排出された便が便導入部29と尿導入部28の両方へ進入してまたがって付着した場合でも、便の検出時間帯t,tでは便導入部29同士の短絡のみの検知を行うので、排尿と区別して排便を検知することができる。従って、排尿と排便とを誤って検知し、排便時に真空ポンプ52を動作させたり、排尿時に警報装置をしたりすることがなく、使い勝手に優れた排泄物処理装置100とすることができる。
【0057】
制御装置53は、図7(a)→(b)→(c)→(d)及び図8のt→t→t→tの順に示すように、尿検知用の電極21,22による尿の検出と排便用の電極23,24による便の検出との切替えと、尿検知用の電極21,22の極性の反転と排便用の電極23,24の極性の反転との切替えとを交互に行うように制御する。これによって、排泄物検知センサ20の感度をより一層安定させることができる。
【0058】
ここで、尿検知用の電極21,22及び排便用の電極23,24のそれぞれの極性を反転させる所定間隔t+t,t+tを1秒以下、0.1秒以上としている。即ち、尿検知感度を安定化するには所定間隔t+t,t+tを短くするが望ましく、また、尿・便の2系統センサの場合は、他系統の計測中は検知できない時間が発生するので、検知の遅れを最小限にするためにも所定間隔t+t,t+tを短くすることが望ましい。しかし、あまり所定間隔t+t,t+tを短くすると、極性反転や検知のための回路が複雑で高価になってしまうので、0.1〜1秒が所定間隔t+t,t+tの最適範囲である。
【0059】
なお、本実施形態では、所定間隔における時間帯を全て同一時間としたが、異なる時間であってもよい。
【0060】
また、尿検知用の電極21,22間及び排便用の電極23,24間に印加する電圧を1〜10Vの範囲内に設定している。この電圧レベルが低過ぎると妨害物質の影響を受けやすくなり、1V以上のレベルにすることで、尿検知用の電極21,22及び排便用の電極23,24のそれぞれの極性を所定間隔で反転させる場合に、検知感度(見かけ上の電気抵抗)が特に安定することが分かった。ただし、排泄物レシーバ1は人体に装着して使用するため、この電圧レベルをむやみに高くするのは安全上好ましくないので、1〜10V以下の範囲内に設定するのが最適である。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の一実施形態の排泄物処理装置の全体構成図である。
【図2】図1の排泄物レシーバの拡大断面図である。
【図3】図1の排泄物検知センサを2つに分割して示す平面図である。
【図4】図3のA−A断面図である。
【図5】図3のB−B断面図である。
【図6】図1の排泄物検知センサの電気系統を模式的に示す図である。
【図7】図6の排泄物検知センサの電気系統の状態の変化を示す図である。
【図8】図7の状態変化に対応する電圧変化を示すタイムチャート図である。
【符号の説明】
【0062】
1…排泄物レシーバ、2…装置本体、10…レシーバ本体、10a…尿を受ける部分、10b…便を受ける部分、12…バックシート部、13…尿受け皿、14…表面材部、15…表面シート部、16…ギャザー部、20…排泄物検知センサ、21,22,23,24…電極、21a,22a,23a,24a…端子部、23b,24b…拡張部、25…尿通過孔、26…支持体、27…被覆体、28…尿導入部、29…便導入部、30…導尿チューブ、42…コネクタ、51…尿タンク、52…真空ポンプ、53…制御装置、54…直流電源装置、55…検出手段、56…スイッチ回路、57…極性反転回路、61〜64…電気配線、100…排泄物処理装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
人に装着される排泄物レシーバと、前記排泄物レシーバを着脱可能に接続した装置本体とを備え、
前記排泄物レシーバは、着用者から排泄される排泄物を受け止めるレシーバ本体と、この排泄された排泄物を検知する排泄物検知センサとを備え、
前記装置本体は、尿を溜める尿タンクと、前記レシーバ本体に受け止められた尿を前記尿タンクへ吸引する真空ポンプと、この真空ポンプを制御する制御装置とを備え、
前記排泄物検知センサは前記レシーバ本体に受け止められた尿を検出する一対の尿検知用の電極を備えてなる排泄物尿処理装置であって、
前記制御装置は前記尿検知用の電極間に間欠的に電圧を付加させるように制御する
ことを特徴とする排泄物処理装置。
【請求項2】
請求項1に記載のものにおいて、前記レシーバ本体に受け止められた便を検出する一対の排便用の電極とを備え、前記制御装置は前記尿検知用の電極による検出と前記排便用の電極による検出とを切替えて行うように制御することを特徴とする排泄物処理装置。
【請求項3】
請求項1に記載のものにおいて、前記制御装置は前記尿検知用の電極の極性を所定間隔で反転させるように制御することを特徴とする排泄物処理装置。
【請求項4】
請求項1に記載のものにおいて、前記尿検知用の電極は防水性及び絶縁性のある帯状の支持体と防水性及び絶縁性のある帯状の被覆体との間に挟み込まれて並んで帯状に延びるように形成され、前記被覆体は前記尿検知用の電極の各電極に対応して少なくとも一対の塚導入部を形成し、前記排泄物検知センサは前記レシーバ本体に受け止められた尿が前記一対の尿導入部に侵入して前記尿検知用の電極間が短絡されることにより排尿を検出することを特徴とする排泄物処理装置。
【請求項5】
請求項1に記載のものにおいて、前記レシーバ本体に受け止められた便を検出する一対の排便用の電極とを備え、尿検知用の電極による尿の検出、排便用の電極による便の検出、尿検知用の電極の極性反転、排便用の電極の極性反転の順に繰り返し行うことを特徴とする排泄物処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2009−240758(P2009−240758A)
【公開日】平成21年10月22日(2009.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−213130(P2008−213130)
【出願日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【分割の表示】特願2008−89697(P2008−89697)の分割
【原出願日】平成20年3月31日(2008.3.31)
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【出願人】(000115108)ユニ・チャーム株式会社 (1,219)
【Fターム(参考)】