説明

排泄補助具およびクッションパッドならびに排泄物処理システム

【課題】排泄補助具着用カバーの製造コストの上昇をもたらすことなく、寝たきりの被介護者の床ずれを従来のものよりも軽減し得る排泄補助具およびクッションパッドの提供。
【解決手段】排泄補助具100は、着用者の股間部にあてがわれて排泄物を受け入れる前後に細長い開口部140と、会陰部と対向する本体部110と、この本体部110の前端部分から延在して下腹部に当接する前カップ部120と、本体部110の後端部分から延在して臀部に当接する臀部支持部130とを具え、前後に細長い開口部140は、前カップ部120から本体部110に亙って尿管口および肛門を囲むように形成され、臀部支持部130は、その表面の少なくとも一部に露出するクッション層131を有し、仙骨部が位置するクッション層131の部分に窪み部132が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被介護者の股間部を洗浄して排泄物を吸引排除するための排泄物処理システムおよびこのシステムに用いられる排泄補助具ならびにクッションパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
寝たきりの被介護者の排泄物を自動的に外部に吸引排出する排泄物処理システムとして、特許文献1や特許文献2に開示されたものが知られている。このような排泄物処理システムにおいては、おむつなどの頻繁な交換を伴わずに排泄物を自動処理し、被介護者および介護人双方の負担を軽減させることができるように配慮している。
【0003】
通常、上述したような排泄物処理システムは、被介護者の股間部にあてがわれて排泄物を受け入れる前後に細長い開口部が形成された排泄補助具と、この排泄補助具の開口部に結合される前後に細長い開口部が形成された股下領域ならびに前身頃領域および後身頃領域を有し、この排泄補助具を包むように被介護者に装着される排泄補助具着用カバーと、排泄補助具に連結されて洗浄液および温風の供給ならびに排泄物を洗浄液と共に吸引回収する排泄物処理ユニットとを一般的に具えている。排泄物処理ユニットは、排泄補助具から配管を介して排泄物などを吸引回収すると共に温水および温風を排泄補助具内に供給する機能を有する。また、排泄補助具着用カバーは、排泄補助具の開口部から排泄物などが漏れた場合にこれを受ける機能も有する。
【0004】
【特許文献1】特開平8−322868号公報
【特許文献2】特開2001−190583号公報
【特許文献3】特開2006−141590号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
排泄補助具を寝たきりの被介護者の股間部にあてがった場合、被介護者の臀部に硬質の排泄補助具の後端部が当った状態となり、床ずれの大きな原因となる可能性が高い。しかしながら、従来の自動排泄処理装置はこれに関して特別な配慮がなされておらず、改善の余地があった。
【0006】
特許文献3は、排泄補助具と被介護者の臀部との間にクッション性の高い排泄補助具着用カバーを介在させることにより、床ずれの発生を抑制することに成功している。しかしながら、クッション性の高い排泄補助具着用カバーは、その製造コストが嵩むため、交換頻度の高い排泄補助具着用カバーに関する利用者の負担が増大してしまうという問題があった。
【0007】
本発明の目的は、排泄補助具着用カバーの製造コストの上昇をもたらすことなく、寝たきりの被介護者の床ずれを従来のものよりも軽減し得る排泄補助具およびクッションパッドを提供することにある。また、このような排泄補助具およびクッションパッドを用いた排泄物処理システムを提供することも本発明の目的に含まれる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の形態は、股間部を洗浄して排泄物を吸引排除するための排泄物処理システムにおいて用いられ、股間部にあてがわれて排泄物を受け入れる前後に細長い開口部が形成された排泄補助具であって、会陰部と対向する本体部と、この本体部の前端部分から延在して下腹部に当接する前カップ部と、前記本体部の後端部分から延在して臀部に当接する臀部支持部とを具え、前記前後に細長い開口部は、前記前カップ部から前記本体部に亙って尿管口および肛門を囲むように形成され、前記臀部支持部は、その表面の少なくとも一部に露出するクッション層を有し、仙骨部が位置する前記クッション層の部分に窪み部が形成されていることを特徴とするものである。
【0009】
本発明における排泄補助具を被介護者などが着用した場合、被介護者の臀部が臀部支持部のクッション層に押し当たり、クッション層の弾性変形によって面圧の分布がより均一化されることとなる。また、着用者の仙骨部は臀部支持部のクッション層の窪み部に位置しており、クッション層と仙骨部との接触圧も低下して周囲の面圧とほぼ等しくなる。
【0010】
本発明の第1の形態による排泄補助具において、クッション層のショア硬さがHSC20以下であることが好ましく、HSC20を越えると床ずれ防止の効果をほとんど期待できなくなる。
【0011】
本体部の前端部分に前カップ部の後端部分につながる可撓接続部を有するものであってよい。
【0012】
本体部は、洗浄液が供給される洗浄液供給ポートと、温風が供給される温風供給ポートと、排泄物を洗浄液と共に本体部の外に吸引除去するための排泄ポートとをさらに有することができる。
【0013】
本発明の第2の形態は、股間部を洗浄して排泄物を吸引排除するための排泄物処理システムにおいて、本発明の第1の形態による排泄補助具と共に用いられ、左右の臀部を受けるクッションパッドであって、排泄補助具の臀部支持部が載置されるベースシートと、このベースシートの左右両側に前記臀部支持部を挟むように配される一対のクッションブロックと、これらベースシートおよび少なくとも一方のクッションブロックに配されて前記ベースシートに対する少なくとも一方のクッションブロックの固定位置を変更し得る面ファスナとを具えたことを特徴とするものである。
【0014】
本発明において、被介護者などが排泄補助具を着用した状態においては、被介護者の臀部が臀部支持部のクッション層に押し当たり、さらに左右の臀部の両側部がクッションパッドのクッションブロックに保持されることとなる。被介護者の臀部の大きさに応じてベースシートに対するクッションブロックの固定位置を変更することにより、一対のクッションブロックの間隔を調整し、被介護者の臀部を安定状態で保持する。
【0015】
本発明の第2の形態によるクッションパッドにおいて、クッションブロックが、クッション材と、このクッション材を取り外し可能に包むと共に面ファスナが接合されたカバーシートとを有するものであってよい。この場合、床ずれ防止の観点からクッション材の反発弾性率が30%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明の第3の形態は、洗浄液が供給される洗浄液供給ポートと、温風が供給される温風供給ポートと、排泄物を洗浄液と共に本体部の外に吸引除去するための排泄ポートとを本体部が有する本発明の第1の形態による排泄補助具と、この排泄補助具の開口部に結合される前後に細長い開口部が形成された股下領域ならびに前身頃領域および後身頃領域を有し、この排泄補助具を包むように装着される排泄補助具着用カバーと、本発明の第2の形態によるクッションパッドと、排泄補助具に連結されて洗浄液および温風の供給ならびに排泄物を洗浄液と共に吸引回収する排泄物処理ユニットとを具えたことを特徴とする排泄物処理システムにある。
【0017】
本発明においては、被介護者などの臀部が臀部支持部のクッション層に押し当たり、さらに左右の臀部の両側部がクッションパッドのクッションブロックに保持されることとなる。洗浄液供給ポートから供給される洗浄液により、排泄補助具および被介護者の会陰部の洗浄が行われ、排泄物は、洗浄液と共に排泄補助具の排泄ポートから排泄物処理ユニットへと吸引排除される。また、温風供給ポートから供給される温風により、排泄補助具および被介護者の会陰部の乾燥が行われる。
【発明の効果】
【0018】
股間部にあてがわれて排泄物を受け入れる前後に細長い開口部が形成された本発明の排泄補助具によると、前カップ部から本体部に亙って尿管口および肛門を囲むように前後に細長い開口部が形成され、本体部の後端部分から延在して臀部に当接する臀部支持部が、その表面の少なくとも一部に露出するクッション層を有し、仙骨部が位置するクッション層の部分に窪み部を形成したので、着用者の仙骨部がクッション層の窪み部に位置することとなり、仙骨部がクッション層に強く押し当たらず、着用者の床ずれを大幅に抑制することができる。
【0019】
クッション層のショア硬さがHSC20以下の場合、クッション層に対する着用者の臀部の面圧をより均一化させることが可能となり、使用者の床ずれをさらに少なくすることができる。
【0020】
本体部の前端部分に前カップ部の後端部分につながる可撓接続部を有する場合、着用者の体格の相違などに拘らず、着用者の会陰部に対する本体部の前端部分の追従性を向上させることができ、漏れをより確実に防止することができる。
【0021】
洗浄液が供給される洗浄液供給ポートと、温風が供給される温風供給ポートと、排泄物を洗浄液と共に本体部の外に吸引除去するための排泄ポートとを本体部が有する場合、洗浄液供給ポートや温風供給ポートが排泄物によって汚れてしまうような不具合を低減させることができる。
【0022】
本発明による排泄補助具と共に用いられる本発明のクッションパッドによると、排泄補助具の臀部支持部が載置されるベースシートと、このベースシートの左右両側に臀部支持部を挟むように配される一対のクッションブロックと、これらベースシートおよび少なくとも一方のクッションブロックに配されてベースシートに対する少なくとも一方の緩衝ブロックの固定位置を変更し得る面ファスナとを具えているので、利用者の体格に合わせて一対のクッションブロックの間隔を容易かつ迅速に変更することができ、しかもその位置ずれを確実に防止することができる。
【0023】
クッション材と、このクッション材を取り外し可能に包むと共に面ファスナが接合されたカバーシートとをクッションブロックが有する場合、カバーシートを洗濯することによってクッションブロックを常に清潔に保つことができる。特に、クッション材の反発弾性率が30%以下の場合、クッションブロックに対する利用者の臀部の面圧をより均一化させることが可能となり、利用者の床ずれをさらに少なくすることができる。
【0024】
本発明の排泄物処理システムによると、本発明の第1の形態による排泄補助具と、この排泄補助具の開口部に結合される前後に細長い開口部が形成された股下領域ならびに前身頃領域および後身頃領域を有し、この排泄補助具を包むように装着される排泄補助具着用カバーと、本発明の第2の形態によるクッションパッドと、排泄補助具に連結されて洗浄液および温風の供給ならびに排泄物を洗浄液と共に吸引回収する排泄物処理ユニットとを具えているので、排泄物の処理を自動的に行うことが可能であり、しかも被介護者の床ずれの発生を従来のものよりも大幅に抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
本発明による排泄物処理システムの一実施形態について、図1〜図10を参照しながら詳細に説明する。本発明はこのような実施形態のみに限らず、特許請求の範囲に記載された本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が可能であり、従って本発明の精神に帰属する他の任意の技術にも当然応用することができる。
【0026】
本実施形態における排泄物処理システムの使用状況を図1に模式的に示す。この排泄物処理システムは、その利用者、つまりベッドなどに寝たきりの被介護者などの股間部にあてがわれる排泄補助具100と、この排泄補助具100を包むように利用者に装着される排泄補助具着用カバー200と、排泄補助具100と共に利用者の左右の臀部を受けるクッションパッド300と、排泄補助具100に可撓性の配管400を介して連結されて洗浄液および温風の供給ならびに排泄物を洗浄液と共に吸引回収する排泄物処理ユニット500とを具えている。
【0027】
排泄補助具100に排泄補助具着用カバー200を取り付けた状態の外観を図2に模式的に示し、これらを分離した状態の外観を図3に模式的に示し、排泄補助具100の外観を図4に示し、その前後方向に沿った中央部の断面構造を図5に示す。本実施形態における排泄補助具100は、着用者の会陰部と対向する本体部110と、この本体部110の前端部分から延在して着用者の下腹部が当接する前カップ部120と、本体部110の後端部分から延在して着用者の臀部が当接する臀部支持部130とを具えている。
【0028】
本体部110は、その前端部分に前カップ部120の後端部分につながる可撓接続部111を有する。湾曲した樋状をなす可撓接続部111は、ゴムや樹脂などの弾性部材を成形したものであり、多少の伸縮性も具えており、後述する開口部140全体を着用者に密着させることができるように配慮している。可撓接続部111の前端に連結される前カップ部120は、可撓接続部111を介して尿を本体部110側に導く機能を有する。排泄物を受け入れる本体部110の底部には、洗浄液を本体部110内に導くための洗浄液供給ポート112と、温風を本体内に導くための温風供給ポート113と、排泄物を洗浄液と共に本体部110の外に吸引除去するための排泄ポート114とが形成され、さらに本体部110に組み込まれた各種センサ、例えば液滴検出センサなどの接続端子115が突設されている。
【0029】
排泄物を受け入れる前後に細長い開口部140は、前カップ部120から本体部110に亙って着用者の尿管口および肛門を囲むように形成され、この開口部140の内周縁部には、後述する排泄補助具着用カバー200の開口部210が剥離可能に接合される。
【0030】
被介護者の臀部が載せられる臀部支持部130は、本体部110の後端側の開口部140を囲むように本体部110と一体的に形成されている。この臀部支持部130は、被介護者の床ずれを軽減するためにその表面の少なくとも一部に露出するクッション層131を有する。また、着用者の仙骨部が位置するクッション層131の部分には窪み部132が形成されており、着用者の仙骨部がクッション層131に強く押し当たらないように配慮している。高分子ゲルやエラストマーなどで形成されるクッション層131のショア硬さは、HSC20以下、特にHSC5以下であることが好ましく、これによって着用者の臀部の面圧をより均一に保持し、先の窪み部132を形成したことと相俟って床ずれの発生を抑制することができる。
【0031】
本実施形態における排泄補助具着用カバー200は、特許文献3などに開示されたものと基本的に同じものを利用することができ、着用者に対する排泄補助具100の位置ずれを防止すると共に排泄補助具100の開口部140から排泄物などが漏れた場合にこれを受ける機能を併せ持つ。この排泄補助具着用カバー200を展開した状態の内側および外側の平面形状を図6および図7にそれぞれ示す。本実施形態における排泄補助具着用カバー200は、着用者の皮膚に触れる液透過性のトップシート220と、液不透過性のバックシート230とを相互に重ね合わせて接合したものであり、前身頃領域201と股下領域202と後身頃領域203とを有する。前身頃領域201および後身頃領域203には被介護者の腰周りを覆う前後一対のサイドフラップ204が形成されている。股下領域202の中央部には、排泄補助具100の開口部140に対応した輪郭形状の開口部210が前身頃領域201から後身頃領域203に亙って形成されている。
【0032】
排泄補助具着用カバー200の外側に面するバックシート230側の開口部210の周囲には、上述した排泄補助具100の開口部140の内周縁部に対して剥離可能に接合し得る図示しない粘着剤層が形成されている。なお、この粘着剤層には剥離紙231が接合されており、この排泄補助具着用カバー200を使用する際に剥離紙231を剥がして粘着剤層を露出させ、排泄補助具100の開口部140の内周縁部に接合するようにしている。
【0033】
排泄補助具着用カバー200の股下領域202に位置する左右両側のトップシート220とバックシート230との間には、脚周りギャザーを形成するための左右一対の弾性部材205が接合されている。同様に、ウエスト周りギャザーを形成するための図示しない弾性部材が伸長状態で後身頃領域203のトップシート220とバックシート230との間に接合されている。この後身頃領域203のサイドフラップ204の部分には、前身頃領域201のバックシート230に接合された面ファスナ240に剥離可能に接合される左右2組の面ファスナタブ206がバックシート230とトップシート220との間に挟まれた状態で接合されている。従って、前後一対のサイドフラップ204の端縁部を相互に接合または重ね合わせることによって、ウエスト周り開口部と一対の脚周り開口部とを形成することができ、この排泄補助具着用カバー200を被介護者に対してしっかりと着用させることができる。
【0034】
バックシート230の前身頃領域201には、排泄補助具100の可撓接続部111を抱き込むように保持するための左右一対の保持シート250の外側縁部が接合されている。相互に重なり合うこれら一対の保持シート250の内側縁部には、これらを相互に剥離可能に接合するための面ファスナ251,252が設けられている。また、バックシート230の後身頃領域203には、排泄補助具100の臀部支持部130を連結するためのポケットシート232の少なくとも左右両側縁部が接合されており、このポケットシート232とバックシート230との間に排泄補助具100の臀部支持部130を差し込むことにより、先の保持シート250と相俟って排泄補助具100と排泄補助具着用カバー200との一体性を持たせ、これらの位置ずれが起こりにくくなるように配慮している。
【0035】
バックシート230の左右両側には、このバックシート230と共にサイドフラップ204を画成し、その内側縁に沿って弾性部材261を伸長状態で接合することにより、立体ギャザー260を形成する液不透過性の一対のサイドシート262の外側縁部が前身頃領域201から後身頃領域203に亙って接合されている。また、この立体ギャザー260の内側には、外側端部に弾性部材271を伸長状態で接合した液不透過性の左右一対の防漏バリヤ270の長手方向両端部および内側端部が開口部210を挟んでトップシート220に一体に接合されている。これら立体ギャザー260および防漏バリヤ270は被介護者の会陰部に当接し、被介護者の会陰部と排泄補助具100の開口部140との間の隙間をシールする機能を有する。
【0036】
被介護者が横たわるベッド、好ましくは低反発マットレス600の上に載置されて被介護者の左右の臀部を受けるクッションパッド300の外観を図8に示し、その分解状態を図9に示す。本実施形態におけるクッションパッド300は、排泄補助具100の臀部支持部130が載置されるベースシート310と、このベースシート310の左右両側に前記臀部支持部130を挟むように配される一対のクッションブロック320と、これらベースシート310およびクッションブロック320に配されてベースシート310に対するクッションブロック320の固定位置を変更し得る面ファスナ311,321とを具えている。左右一対のクッションブロック320の間隔は、面ファスナ311,321の接合位置をずらすことによって任意に変更可能であり、被介護者の体格や臀部の形状に応じてベースシート310に対するクッションブロック320の取り付け位置を調整することが好ましい。本実施形態におけるクッションブロック320は、クッション材322(図10参照)と、このクッション材322を取り外し可能に包むと共に面ファスナ321が接合されたカバーシート323とを有し、カバーシート323にはクッション材322を出し入れするためのスリット状をなす開口部324が形成されている。床ずれ防止の観点から、JIS K 6400にて規定される反発弾性率が30%以下、特に15%以下の発泡ポリウレタンや高分子ゲルまたはエラストマーなどで形成されたクッション材322を使用することが好ましいと言える。布帛などで形成されるカバーシート323やベースシート310が汚れた場合には、クッション材322を開口部324から取り除いた後、これらを洗濯することによって常に清潔に保つことができる。
【0037】
基端が排泄物処理ユニット500に連結される配管400の先端部には、排泄補助具100の本体部110に形成されたポート112〜114および接続端子115と対応した形状の図示しない配管コネクタおよび端子コネクタが組み込まれ、排泄補助具100の本体部110の底部に対して着脱可能に連結される。
【0038】
本実施形態における排泄物処理ユニット500は、家庭用電源などに接続して電力の供給を受け、排泄補助具100から配管400を介して排泄物などを吸引回収すると共に温水および温風を排泄補助具100内に供給する機能を有する。この排泄物処理ユニット500は、特許文献1〜3などに開示されたものをほぼそのまま利用することができるので、その詳細な構造などに関しては説明を省略する。
【0039】
低反発マットレス600は、上述したクッション層131やクッション材322などと同程度か、あるいるそれよりも多少硬めであることが有効であり、一般的には反発弾性率が30%以下、特に15%以下の発泡ポリウレタンなどで形成されたものを採用することが好ましい。
【0040】
上述した排泄補助具着用カバー200を排泄補助具100に装着する場合、排泄補助具100の臀部支持部130を排泄補助具着用カバー200のポケットシート232に差し込み、さらに保持シート250を用いて本体部110の可撓接続部111を抱き込む。この状態にて図示しない剥離紙を除去し、露出した粘着剤層231を排泄補助具100の開口部140の内周縁部に押し付けて両者を密着させる。このようにして排泄補助具着用カバー200の開口部210を排泄補助具100の開口部140に沿って接合し、一体化させた図2に示す状態の排泄補助具100および排泄補助具着用カバー200を被介護者に装着する。より具体的には、低反発マットレス600の上に寝た状態の被介護者の臀部を持ち上げ、まずクッションパッド300のベースシート310を被介護者の臀部の直下に置き、左右のクッションブロック320を被介護者の臀部の位置に合わせてベースシート310の両側に面ファスナ311,321を利用して接合する。さらに、このクッションパッド300の左右のクッションブロック320の間の被介護者の臀部の直下に排泄補助具着用カバー200の後身頃領域203を排泄補助具100の臀部支持部130と共に潜り込ませ、排泄補助具100の開口部140を被介護者の股間部に押し当たるようにして排泄補助具着用カバー200の前身頃領域201を被介護者の下腹部にあてがう。最後に、前身頃領域201のサイドフラップ204を被介護者のウエスト部に沿わせ、この状態にて後身頃領域203のサイドフラップ204に取り付けられた面ファスナタブ206を前身頃領域201の面ファスナ240に接合する。
【0041】
この状態における被介護者の臀部と排泄補助具100の臀部支持部130およびクッションパッド300との位置関係を図10に模式的に示す。図中、二点鎖線で示す被介護者の臀部は、臀部支持部130のクッション層131およびクッションパッド300のクッションブロック320を介して低反発マットレス600上に保持される。また、クッション層131の窪み部132には被介護者の仙骨部が位置しており、被介護者の臀部全体の面圧がほぼ一定に保たれる結果、床ずれの発生を大幅に抑制することができる。この場合、被介護者の臀部とクッション層131およびクッションブロック320との間には、図示しない排泄補助具着用カバー200の後身頃領域203が介在した状態となることは言うまでもない。
【0042】
この状態において排泄補助具100の着用者1が排泄をすると、排泄補助具100内に組み込まれた図示しないセンサがこれを検知し、排泄物処理ユニット500が作動して排泄補助具100に介在する排泄物を配管400から排泄物処理ユニット500内に吸引する。これと同時に、排泄物処理ユニット500から配管400を介して排泄補助具100内に温水が供給され、排泄補助具100内およびこの排泄補助具100の開口部140で囲まれた使用者1の股間部の汚れが洗い落とされ、これらも排泄物と共に排泄物処理ユニット500内に吸引排除される。しかる後、排泄物処理ユニット500から配管400を介して温風が排泄補助具100内に供給され、排泄補助具100内およびこの排泄補助具100の開口部140で囲まれた使用者1の股間部を乾燥させる。このようにして、おむつなどの頻繁な交換を伴わずに排泄物を自動処理し、被介護者および介護人双方の負担を軽減させることができる。
【0043】
なお、本発明はその特許請求の範囲に記載された事項のみから解釈されるべきものであり、上述した実施形態においても、本発明の概念に包含されるあらゆる変更や修正が記載した事項以外に可能である。つまり、上述した実施形態におけるすべての事項は、本発明を限定するためのものではなく、本発明とは直接的に関係のないあらゆる構成を含め、その用途や目的などに応じて任意に変更し得るものである。
【図面の簡単な説明】
【0044】
【図1】本発明による排泄物処理システムの一実施形態における使用状況を模式的に表す概念図である。
【図2】図1に示した排泄物処理システムに用いられる排泄補助具と排泄補助具着用カバーとを組み合わせた状態の外観を表す立体投影図である。
【図3】図3に示した排泄補助具と排泄補助具着用カバーとを分離した状態の外観を模式的に表す立体投影図である。
【図4】図1に示した排泄物処理システムの一実施形態における排泄補助具の外観を拡大した立体投影図である。
【図5】図4に示した排泄補助具を前後方向に沿ってその中央部を切断した破断断面図である。
【図6】図1に示した排泄物処理システムに用いられる排泄補助具着用カバーを内面側から展開状態で見た平面図である。
【図7】図1に示した排泄物処理システムに用いられる排泄補助具着用カバーを外面側から展開状態で見た平面図である。
【図8】図1に示した排泄物処理システムに用いられるクッションパッドの外観を表す立体投影図である。
【図9】図8に示したクッションパッドのベースシートとクッションブロックとを分離した状態の外観を表す立体投影図である。
【図10】図1に示した排泄物処理システムにおいて、排泄補助具の臀部支持部およびクッションパッドを左右方向に沿って切断した破断断面図である。
【符号の説明】
【0045】
100 排泄補助具
110 本体部
111 可撓接続部
112 洗浄液供給ポート
113 温風供給ポート
114 排泄ポート
115 接続端子
120 前カップ部
130 臀部支持部
131 クッション層
132 窪み部
140 開口部
200 排泄補助具着用カバー
201 前身頃領域
202 股下領域
203 後身頃領域
204 サイドフラップ
205 弾性部材
206 面ファスナタブ
210 開口部
220 トップシート
230 バックシート
231 剥離紙
232 ポケットシート
240 面ファスナ
250 保持シート
251,252 面ファスナ
260 立体ギャザー
261 弾性部材
262 サイドシート
271 弾性部材
270 防漏バリヤ
300 クッションパッド
310 ベースシート
311 面ファスナ
320 クッションブロック
321 面ファスナ
322 クッション材
323 カバーシート
324 開口部
400 配管
500 排泄物処理ユニット
600 低反発マットレス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
股間部を洗浄して排泄物を吸引排除するための排泄物処理システムにおいて用いられ、股間部にあてがわれて排泄物を受け入れる前後に細長い開口部が形成された排泄補助具であって、
会陰部と対向する本体部と、
この本体部の前端部分から延在して下腹部に当接する前カップ部と、
前記本体部の後端部分から延在して臀部に当接する臀部支持部と
を具え、前記前後に細長い開口部は、前記前カップ部から前記本体部に亙って尿管口および肛門を囲むように形成され、
前記臀部支持部は、その表面の少なくとも一部に露出するクッション層を有し、仙骨部が位置する前記クッション層の部分に窪み部が形成されていることを特徴とする排泄補助具。
【請求項2】
前記クッション層は、そのショア硬さがHSC20以下であることを特徴とする請求項1に記載の排泄補助具。
【請求項3】
前記本体部は、その前端部分に前記前カップ部の後端部分につながる可撓接続部を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の排泄補助具。
【請求項4】
前記本体部は、洗浄液が供給される洗浄液供給ポートと、温風が供給される温風供給ポートと、排泄物を洗浄液と共に本体部の外に吸引除去するための排泄ポートとをさらに有することを特徴とする請求項1から請求項3の何れかに記載の排泄補助具。
【請求項5】
股間部を洗浄して排泄物を吸引排除するための排泄物処理システムにおいて、請求項1から請求項4の何れかに記載の排泄補助具と共に用いられ、左右の臀部を受けるクッションパッドであって、
排泄補助具の臀部支持部が載置されるベースシートと、
このベースシートの左右両側に前記臀部支持部を挟むように配される一対のクッションブロックと、
これらベースシートおよび少なくとも一方のクッションブロックに配されて前記ベースシートに対する少なくとも一方のクッションブロックの固定位置を変更し得る面ファスナと
を具えたことを特徴とするクッションパッド。
【請求項6】
前記クッションブロックは、クッション材と、このクッション材を取り外し可能に包むと共に前記面ファスナが接合されたカバーシートとを有することを特徴とする請求項5に記載のクッションパッド。
【請求項7】
前記クッション材は、その反発弾性率が30%以下であることを特徴とする請求項6に記載のクッションパッド。
【請求項8】
請求項4に記載の排泄補助具と、
この排泄補助具の開口部に結合される前後に細長い開口部が形成された股下領域ならびに前身頃領域および後身頃領域を有し、この排泄補助具を包むように装着される排泄補助具着用カバーと、
請求項5または請求項6に記載のクッションパッドと、
排泄補助具に連結されて洗浄液および温風の供給ならびに排泄物を洗浄液と共に吸引回収する排泄物処理ユニットと
を具えたことを特徴とする排泄物処理システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−142243(P2008−142243A)
【公開日】平成20年6月26日(2008.6.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−331771(P2006−331771)
【出願日】平成18年12月8日(2006.12.8)
【出願人】(503363493)株式会社縁設計 (3)
【Fターム(参考)】