説明

排紙集積装置

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、複写機,プリンタ,フアクシミリ等の画像形成装置に用いられる排紙集積装置に関する。
【0002】
【従来の技術】従来、特開昭63−106269号公報に示されているように、オフイス空間の有効活用のため画像形成済の用紙を、画像形成装置内に設けられた、用紙の搬送方向に直角な方向に引き出し自在な排紙トレイに排紙する構成のものが知られている。また特開昭63−208469号公報に示されているように、上記構成のものにおいて、排紙トレイの受け面を開口側に向かつて下方に傾斜させ、排紙された用紙を反転できるようにしてページ揃えを可能にしたものも知られている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従来技術のうち前者においては、画像の仕上がり状態は、排紙途中で排紙トレイをオペレータが引き出さない限り確認することができず、使い勝手が悪いという欠点があつた。また、上記従来技術のうち後者においては、排紙トレイの受け面に沿つて用紙を滑落させるためには、かなり大掛かりな傾斜面が必要になり、排紙部が大型化し、また、滑落後の用紙の揃い具合が良くないという欠点があつた。
【0004】本発明の目的は、画像形成装置に組み込まれた時、画像形成装置本体の小型化が図れ、かつ、操作性が良好な排紙集積装置を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記目的は、画像形成装置本体内に設置されて、画像形成済の用紙を排紙集積させる排紙トレイと、前記排紙トレイ上に集積された用紙を、用紙取出開口に向けて移動させるための押圧手段と、前記排紙トレイ上に用紙が排紙されるごとに前記押圧手段を駆動する駆動手段と、前記用紙取出開口を開閉すると共に、内面を用紙案内面とした前扉と、前記前扉の開閉状態を検知する開閉検知センサとを備え、この開閉検知センサにより前記前扉が閉状態であることを検知した時、前記押圧手段の移動を禁止するようにしたことにより達成される。
【0006】
【作用】定着装置を通過した画像定着済の用紙は、切換爪によつて本体内の排紙ユニツトに設けられた排紙トレイに導かれ、入口ローラによつて排紙トレイ内に排紙される。すると、駆動手段(ステツピングモータ)によつて押圧手段(押圧板)が移動し、排紙トレイ内の用紙を用紙取出開口に向けて移動させる。開閉検知センサにより前扉が閉状態であることを検知した時、押圧手段の移動を禁止している。前扉が開かれた状態で、その内面は、用紙の移動時の案内面となり、また、その先端部に形成したストツパで、用紙の脱落を防止している。また、排紙トレイと、前扉の内面の少なくとも一方には、用紙の有無を検知する用紙検知センサを設け、この用紙検知センサにより用紙の取り出しを検知したとき、例えば、この用紙を除去するよう警告表示し、用紙が除去されるまで画像形成動作を禁止する。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面を参照して説明する。図1は本発明の一実施例を搭載した複写機の全体構成図であつて、1は複写機本体、100は排紙集積装置である排紙ユニツト、200はオプシヨンの給紙ユニツト、300は機台である。
【0008】複写機本体1上部には、原稿を走査して感光体2を露光させる光学系3と、感光体2を中心とした公知の電子写真プロセス部4と、本体内給紙ユニツト5とが設けられている。61,62,63,64,65,66,67は複数の搬送ローラ、7は定着装置、8は定着装置7からの用紙を外部排出部9へ排出させるか、本体内の排紙ユニツト100へ排出させるかによつて搬送路の切り換えをするための切換爪である。前記排紙ユニツト100は、排紙トレイ10の上方に、排紙トレイ10積載面と略平行に走行するゴム製の平ベルト11が一対のローラ12間に張設された用紙搬送手段13と、排紙トレイ10の用紙搬入側に設置された入口ローラ14,15とを有している。
【0009】図2の排紙ユニツト部分を示す斜視図のように、下方の入口ローラ15の支軸16には後述するクランプ手段を有する回転体17が設けられている。また上方の入口ローラ14は、下方の入口ローラ15により駆動され、図示しない接離手段により下方の入口ローラ15に対して接離可能になつている。前記排紙トレイ10の入口ローラ14,15の直下部分には基準壁10aが立設されており、さらに排紙トレイ10の底部には用紙進行方向に長孔10bを形成し、ストツパ18を移動可能に設けてある。このストツパ18は、ステツピングモータ19によつて駆動されるワイヤ20に固定され、通常は検知センサ21の検知動作によつてホームポジシヨンIで待機している。
【0010】排紙トレイ10には、用紙進行方向と直交する方向に移動可能な複数の押圧板22が設けられており、この押圧板22は、前記ストツパ18と同様に図示しないステツピングモータによつてワイヤ駆動され、検知センサによつてホームポジシヨンに位置規制されている。前記基準壁10a,ストツパ18,押圧板22によつて用紙整合手段が構成されている。また排紙ユニツト100の用紙取出側には用紙取出開口23が設けられ、この用紙取出開口23に駆動手段24によつて開閉する前扉25が、そして前扉25に用紙検知センサ26が設けられており、前記前扉25の背面は用紙ガイド面となつて、端部にストツパ25aが設けられている。なお、27は前扉25の開閉を検知する開閉検知センサ、28は排紙トレイ10上に設けられた用紙検知センサである。
【0011】図3は図1の下方の入口ローラ15の支軸16を通る断面図、図4は図3の要部の正面図であつて、複数の下方の入口ローラ15を回転自在に保持する支軸16と駆動軸29とが平行に設けられている。そして、モータ(図示せず)で駆動される駆動部である駆動ギヤ30に噛合されたギヤ31が支軸16に回転自在に嵌合され、駆動軸29にはギヤ31に噛合されたギヤ32とギヤ33とギヤ34とが固定的に嵌合されている。ギヤ34は前記入口ローラ15のハブに形成されたギヤ35に噛合されている。さらに、前記支軸16の端部にはスプリングクラツチ36の従動側となるスリーブ37が固定され、駆動側のスプリング38aが巻回されたクラツチ胴38には前記ギヤ33に噛合されたギヤ39が固定されている。スリーブ37の外周には二つの突部40,41が形成されている。そして、図4に示すように、ソレノイド42のプランジヤ43にはレバー44が回動自在に連結されている。このレバー44は個々に前記突部40,41に係合する係止片45,46を有してスプリング47により時計方向に付勢されている。
【0012】さらに、クランプ部の分解斜視図および組み立て後の状態を示す斜視図を図5,図6に示すように、前記支軸16には回転体17を構成する円筒形のハウジング48が固定的に嵌合されている。このハウジング48の内部にはスプリング座50を有する略角形のボス49が形成され、内周の一部には軸方向に沿う溝51が形成され、外周部の一部には開口部52が形成されている。前記ボス49に案内されてハウジング48の溝51と開口部52を結ぶ半径方向に摺動自在に変位するクランプ手段であるクランプ爪53には、前記溝51に係合される突条54と、前記開口部52から半径方向に突出して周方向に屈曲するL字形の屈曲片55と、スプリング座56とが形成されている。
【0013】前記ボス49のスプリング座50と前記クランプ爪53のスプリング座56との間にはスプリング58が介装されている。さらに、前記支軸16と前記駆動軸29とに両端が回転自在に遊嵌されて回り止めされたカム59が設けられている。このカム59には前記屈曲片55の基部から軸方向に突出する当接部57に当接するカム面60が形成されている。このカム面60は支軸16の中心からの半径が前記ハウジング48の回転方向に沿つて次第に変化する。前記ハウジング48と前記入口ローラ15の外径は同一に設定されている。また、前記屈曲片55の表面はハウジグ48の外周面に沿わされているが、屈曲片55の先端はハウジング48の外周面に対する隙間が広くなるように僅かに外側に曲げられている。
【0014】次に上記実施例の動作を説明する。感光体2は帯電器により帯電され、その帯電部分が光学系3で露光されて静電潜像が形成され、この静電潜像が現像器で現像されて感光体2の外周にトナー像が形成される。このトナー像は用紙搬送路に沿つて用紙を搬送する過程で用紙に転写され、定着装置7により定着される。両面コピーの場合には、分岐爪8を起こして定着後の用紙を下方の用紙搬送路に導き、搬送ローラ66により用紙を排紙トレイ10に搬送する過程で反転させる。この反転動作の説明に先立ち、支軸16の駆動動作を図3および図4により説明する。
【0015】図3において、モータで駆動される駆動ギヤ30の回転は、ギヤ31,32、駆動軸29、ギヤ34,35を介して入口ローラ15に伝達される。これにより、搬送ローラ66から搬送された用紙を用紙搬送手段13に受けわたす。また、駆動軸29の回転はギヤ33,39を介してスプリングクラツチ36の駆動側のクラツチ胴38に伝達される。このクラツチ胴38の回転力はスプリング38aの摩擦力を介して従動側のスリーブ37に伝達されるが、図4に示すように、スリーブ37はその突部40がレバー44の係止片45により回り止めされているため回転しない。
【0016】この図4に示す状態で、ソレノイド42が励磁されるとプランジヤ43が吸引され、スプリング47の力に抗してレバー44が反時計方向に変位し、係止片45が突部40から離反して係止片46がスリーブ37の外周に接近する。これにより、スプリング38aを介してクラツチ胴38のフリクシヨンを受けていたスリーブ37は支軸16とともに一体的に時計方向へ回転し、略半回転した位置で係止片46と突部41との当接により停止する。一定時間経過後にソレノイド42ヘの通電が遮断されるとレバー44がスプリング47の付勢力によりプランジヤ43を復帰させつつ時計方向に変位し、係止片46が突部41から離反して係止片45がスリーブ37の外周に接近する。これにより、スリーブ37が時計方向に回転し、略半回転した位置で係止片45と突部40との当接により停止する。
【0017】以上のような支軸16の回転運動の制御を基に、用紙の反転動作を図7と図8に基づいて説明する。図7において、転写画像を上に向けて用紙が搬送され、その先端がハウジング48の外周面と屈曲片55との間に挿入された時点でソレノイド42が励磁され、前述した動作によりスプリングクラツチ36が連結状態となり、支軸16がハウジング48とクランプ爪53とともに時計方向に略半回転する。この時、スプリング58で付勢されたクランプ爪53の当接部57はカム面60に弾発的に当接し、この過程では支軸16の軸心を中心とするカム面60の半径がハウジング48の回転方向に向かうに従い次第に小さくなるため、クランプ爪53は屈曲片55を内方に引き込むように変位し、屈曲片55により用紙の前縁をハウジング48の外周面に圧接する。
【0018】これにより、図8に示すように、用紙の先端は排紙トレイ10の左端のストツパ10aに当接し、この位置で支軸16とハウジング48が停止する。このハウジング48と同軸上に配列された入口ローラ15は、前述したように、ギヤ34により時計方向に駆動されているため、用紙は先端がストツパ10aに当接しているにも拘らず搬送され続け、U字形に湾曲された用紙は自らの腰の強さによつて時計方向に回転する平ベルト11の下面に弾発的に接触する(図8のPの状態)。この過程で用紙は順次右方に搬送され、やがて後端縁が平ベルト11から離れて排紙トレイ10に積載される。そして、用紙の後端の通過を検出した図示しない用紙検出器の検出信号に従つてソレノイド42への通電が遮断されるため、前述したようにスプリングクラツチ36が連結状態となり、支軸16がハウジング48とクランプ爪53とともに時計方向に略半回転して停止する。
【0019】この過程では、支軸16の軸心を中心とするカム面60の半径がハウジング48の回転方向に向かうに従い次第に大きくなるため、クランプ爪53はカム面60に押され屈曲片55を外方に突出させるようにスプリング58の付勢力に抗して変位し、屈曲片55をハウジング48の外周面から浮かせて次の用紙の反転動作のために待機する。このように、感光体2の画像が転写された用紙は反転され、転写面を上に向けて排紙トレイ10に積層される。そして、図1において、ステツプモータ19によりワイヤ20を移送させ、ストツパ18を左方に移動することにより積層された用紙が基準壁10aに当接して用紙が排紙トレイ10内に揃えられることになる。
【0020】また非反転の動作は、クランプ爪53による用紙のクランプを行わないようにして排紙トレイ10に排出させればよい。この非反転モード時には、排紙トレイ10に排出された用紙が前方に飛び出すことがストツパ18によつて規制される。すなわち、用紙選択の指令信号によつてストツパ18は、用紙サイズに応じた用紙受入れ位置(図9のIIの位置)まで移動して待機し、用紙積載後に用紙を基準壁10aに向けて押し戻す(図9のIIIの位置)ようにして、スキユー,揃えの補正が行われる。ストツパ18は用紙1枚毎に上記動作を繰り返す。
【0021】上述のようにして排紙トレイ10でのスタツキング終了後、予め開放されてある用紙取出開口23に向けて用紙束が押圧板22によつて押し出される。また押圧板22による用紙の押出しはストツパ18の動作と同様に、用紙1枚毎に行つてもよい。用紙の押出しに際し、基準壁10aまたはストツパ18を用紙または用紙束の側部を案内するガイドとすることもできる。
【0022】なお、開閉検知センサ27によつて前扉25が閉じられていることを検知した場合は、押圧板22の用紙押し出し動作を禁止し、また前扉25の開放によつて積載紙束を一度に押し出してもよい。また、用紙検知センサ26,28のいずれかで前扉25上あるいは排紙トレイ10上に取り残しの用紙の存在を検知した時は、例えばその旨、図示しない表示部に警告表示し、用紙の除去が完了するまで画像形成動作を禁止する。
【0023】図10は、用紙取出開口の他の設置例を示す構成図であり、上記実施例では用紙搬送方向と直角の方向に用紙取出開口23を設けたが、図10に示すように用紙搬送方向に用紙取出開口230を設けてもよい。
【0024】
【発明の効果】請求項1記載の発明によれば、画像形成装置本体内に設置されて、画像形成済の用紙を排紙集積させる排紙トレイを有し、用紙取出開口に前扉を設け、かつ、これを開いた状態で、排紙トレイに排紙される用紙が1枚ごとに、用紙取出開口に向けて前扉の内面を案内面として押し出される(移動される)ので、画像形成の仕上がり具合を簡単に、かつ全ページの画像形成完了前にチエツクすることができ、画像形成装置の省スペース化を図りつつ、外付けトレイに近い操作性が得られる。また、前扉の内面により用紙押し出し時の案内を行うようにしたから、用紙の取り出し性を向上させることができ、また、前扉が開いていない状態で、押圧手段を駆動しないようにしたから、前扉の開放を忘れた時の用紙の積載不良を未然に防止することができ、また、不使用時の用紙取出開口の防塵効果もある。請求項記載の発明によれば、前扉の先端部内側にストツパを形成て、前扉を開放したとき、取り出し方向に移動させる用紙の先端部を規制するようにしたことで、用紙の脱落を防止することができる。請求項記載の発明によれば、用紙検知センサにより、前扉や排紙トレイ上に用紙が取り残された時、これを検知することができるから、用紙取り残しに基づくトラブルが発生する前に、これに対処することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を搭載した複写機の全体構成図である。
【図2】排紙ユニツト部分の斜視図である。
【図3】排紙ユニツトの入口ローラ部分の断面図である。
【図4】スプリングクラツチの側面図である。
【図5】クランプ部の分解斜視図である。
【図6】クランプ部の組立後の状態を示す斜視図である。
【図7】反転動作時のクランプ部の用紙受け入れ状態を示す説明図である。
【図8】クランプ部の用紙反転動作のクランプ状態を示す説明図である。
【図9】排紙トレイの平面図である。
【図10】用紙取出開口の他の設置例を示す構成図である。
【符号の説明】
10 排紙トレイ
10a 基準壁
13 用紙搬送手段
14,15 入口ローラ
19 ステツピングモータ
22 押圧板
23,230 用紙取出開口
25 前扉
25a ストツパ
26,28 用紙検知センサ
27 開閉検知センサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】 画像形成装置本体内に設置されて、画像形成済の用紙を排紙集積させる排紙トレイと、前記排紙トレイ上に集積された用紙を、用紙取出開口に向けて移動させるための押圧手段と、前記排紙トレイ上に用紙が排紙されるごとに前記押圧手段を駆動する駆動手段と、前記用紙取出開口を開閉すると共に、内面を用紙案内面とした前扉と、前記前扉の開閉状態を検知する開閉検知センサとを備え、この開閉検知センサにより前記前扉が閉状態であることを検知した時、前記押圧手段の移動を禁止するようにしことを特徴とする排紙集積装置。

【請求項2】
請求項1記載において、前記前扉の先端部内側にストツパを形成し、前記ストツパは、前記前扉を開放したとき、取り出し方向に移動される用紙の先端部を規制するようにしたことを特徴とする排紙集積装置。

【請求項3】
請求項1記載において、前記排紙トレイと、前記前扉の内面の少なくとも一方に、前記排紙トレイあるいは前扉上の用紙を検知する用紙検知センサを設けたことを特徴とする排紙集積装置。

【図1】
image rotate


【図2】
image rotate


【図3】
image rotate


【図10】
image rotate


【図4】
image rotate


【図6】
image rotate


【図5】
image rotate


【図7】
image rotate


【図8】
image rotate


【図9】
image rotate


【特許番号】特許第3069397号(P3069397)
【登録日】平成12年5月19日(2000.5.19)
【発行日】平成12年7月24日(2000.7.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平3−171903
【出願日】平成3年6月18日(1991.6.18)
【公開番号】特開平4−371444
【公開日】平成4年12月24日(1992.12.24)
【審査請求日】平成10年5月26日(1998.5.26)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【参考文献】
【文献】実開 昭63−116467(JP,U)