説明

排藁搬送装置

【課題】スプリングに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、ガイドレールの構造を簡素化することができる排藁搬送装置を提供する。
【解決手段】排藁搬送装置20は、後サブレール22dを有する固定レール22Xと、可動レール22Yと、これら固定レール22X及び可動レール22Yに支持されるスプリング22Zとを備えている。該後サブレール22dの直下に、ガイドレール22が収縮状態となるように付勢するスプリング22Zを配置している。これにより、該スプリング22Zに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、ガイドレール22の構造を簡素化することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンバイン等に備えられる排藁搬送装置に係り、詳しくは、排藁搬送チェーンと該排藁搬送チェーンの下方に配置されたガイドレールとによって排藁を挟持して搬送する排藁搬送装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンバインにおいては、脱穀処理された排藁を該コンバインの後部に配置された排藁処理部に搬送する排藁搬送装置を有するものがある。該排藁処理部には、排藁を細かく切断して機外に排出するカッタや、該カッタ上を通過して搬送されてきた排藁を集束して排出するドロッパや、カッタ上を通過して搬送されてきた排藁を結束し、藁束として排出するノッタ等がある。なお、ノッタやドロッパを搭載していないコンバインの場合には、搬送されてきた排藁をそのまま機体後方に放出する。
【0003】
上記コンバインに備えられた排藁搬送装置には、これら複数の排藁処理部に選択的に排藁を搬送できるようにしたものがある。つまり、排藁搬送装置は、排藁を搬送するための排藁搬送チェーンと、該排藁搬送チェーンの下方に配置され、固定レール及び可動レールを有するガイドレールとを備えており、これらによって排藁を挟持しながら搬送し、固定レールに対して可動レールを伸縮させる伸縮機構によって排藁の搬送先の選択を可能にしている。
【0004】
ところで、このような排藁搬送装置におけるガイドレールの伸縮機構は、2本のワイヤの端部をそれぞれ可動レールとレバー等の操作手段とに連結し、操作者が該操作手段によって伸長操作及び収縮操作を行い得るように構成することが考えられる。しかし、ガイドレールの伸縮機構に2本のワイヤを用いることは、構造が複雑となるだけでなく、ワイヤの張り具合の調整が必要なる等して工程の単純化の妨げにもなり、コストダウンの妨げにもなるという問題があった。
【0005】
そこで、このような排藁搬送装置の伸縮機構は、スプリングによって可動レールを伸長状態もしくは収縮状態のいずれか一方に付勢し、1本のワイヤによる引き操作によって他方の状態に操作するように構造を簡素化したものが考えられていた。また、伸縮機構に可動滑車を配置することで、固定レールに対する可動レールの伸縮操作の操作距離を短縮し、操作の容易化を図ったものがある(特許文献1参照)。さらに、円筒形状に形成した可動レールの内径部分にスプリングを配置し、固定レールに対する可動レールの安定化とコンパクト化を図ったものがある(特許文献2参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−79636号公報
【特許文献2】特開平10−52159号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、上記特許文献1に示す排藁搬送装置は、ガイドレールの伸縮機構に可動滑車が用いられており、操作距離を短縮することを可能としているが、該伸縮機構の構造が複雑化してしまうという問題があった。
【0008】
また、上記特許文献2に示すガイドレールの伸縮機構は、固定レールが中空状に形成され、その内径部分に中空円筒状に形成された可動レールが摺動可能に配置され、さらに可動レールの内径部分に、該可動レールを突出させるための圧縮スプリングが配置されており、配置されたスプリングに排藁が引っかかることの防止を図ることができるが、可動レールの内径部分に高い加工精度が要求されるだけでなく、該可動レールの内径部分に上記圧縮スプリングを縮設するなど、伸縮機構の構造が複雑化したり、工程の単純化を妨げてしまうという問題があった。
【0009】
そこで本発明は、スプリングに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、ガイドレールの構造を簡素化することができる排藁搬送装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明は(例えば図1乃至図10参照)、排藁を搬送する排藁搬送チェーン(21)と、該排藁搬送チェーンの下方に配置されると共に固定レール(22X)及び可動レール(22Y)を有するガイドレール(22)と、を備え、
前記排藁搬送チェーン(21)及び前記ガイドレール(22)によって排藁を挟持しつつ搬送し、前記ガイドレール(22)を伸長・収縮させることで排藁の搬送先を変更し得る排藁搬送装置(20)において、
前記可動レール(22Y)の直下に配置され、一端部が前記固定レール(22X)に支持されると共に他端部が前記可動レール(22Y)に支持され、前記ガイドレール(22)が収縮状態となるように付勢するスプリング(22Z)を備えてなる、
ことを特徴とする排藁搬送装置(20)にある。
【0011】
請求項2に係る本発明は(例えば図4,5,6,7,10参照)、前記固定レール(22X)は、断面門形状のメインレール(22b)と、前記メインレール(22b)の終端部(22h)に、該メインレールとの間が連続するように固着され、中空円筒状に形成されたサブレール(22d,22d´)と、を有し、
前記可動レール(22Y)は、前記サブレール(22d,22d´)の内径部分に貫通配置されると共に終端部(22g)が下方に折り曲げて形成され、
前記スプリング(22Z)は、前記ガイドレール(22)の収縮状態で前記可動レール(22Y)が貫通配置された前記サブレール(22d,22d´)の直下に配置され、一端部が前記メインレール(22b)の終端部(22h)に支持されると共に他端部が前記可動レールの終端部(22g)に支持されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の排藁搬送装置(20)にある。
【0012】
請求項3に係る本発明は(例えば図4,5,7,10参照)、前記サブレール(22d,22d´)の終端部に庇部(22e,22e´)を備えてなる、
ことを特徴とする請求項2記載の排藁搬送装置(20)にある。
【0013】
なお、上記カッコ内の符号は、図面と対照するためのものであるが、これは、発明の理解を容易にするための便宜的なものであり、特許請求の範囲の記載に何等影響を及ぼすものではない。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に係る本発明によると、ガイドレールが収縮状態となるように付勢するスプリングが、可動レールの直下に配置されているので、該スプリングに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、一端部がメインレールに支持されると共に他端部が可動レールに支持されるだけの簡単な構成とすることができ、ガイドレールの構造を簡素化することができる。
【0015】
請求項2に係る本発明によると、スプリングは、下方に折り曲げて形成された可動レールの終端部に支持されると共に、メインレールの終端部に支持されるので、ガイドレールが伸長状態となる際にも可動レールに対して平行となるように延びるようにすることができ、スプリングに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、簡単な構成とすることができ、ガイドレールの構造を簡素化することができる。
【0016】
請求項3に係る本発明によると、サブレールの終端部に庇部を備えたので、ガイドレールの収縮時に可動レールと排藁搬送チェーンとの間に排藁を挟持することで可動レールが引き出されてしまうことを防止することができる。これにより、ガイドレールの収縮時の排藁の搬送位置を安定させることができ、カッタでの詰まりや排藁の切断長が不ぞろいとなることを防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に関する実施の形態を図1乃至図10に沿って説明する。
【0018】
本実施の形態に係るコンバイン1は、図1に示すように、左右のクローラ走行装置4R,4Lに支持された走行機体2を有しており、該走行機体2に対して昇降自在に接続されている前処理部3と、脱穀部10と、運転席部5とを備えて構成される。
【0019】
上記走行機体2は、右側前方に座席シート6を有する運転席部5と、該運転席部5の後方側に穀粒を一時的に貯留するためのグレンタンク7と、該グレンタンク7の後部から略々垂直に立設されかつ旋回自在な長筒を有する排出オーガ8とがそれぞれ配置されている。また、走行機体2の左側には、搬送された穀稈を脱穀する脱穀部10が配置され、該脱穀部10の後方には、詳しくは後述する排藁搬送装置20と排藁処理部30とが配置されている。
【0020】
上記前処理部3は、穀稈を分草するデバイダ42と、穀稈引起し装置41とを有しており、該前処理部3の後方には、穀稈搬送装置等を有している。前処理部3で穀稈引起し装置41によって引起されて刈取られた穀稈は、穀稈搬送装置を介して外側をカバー45aに覆われた脱穀フィードチェーン45(図2及び図3参照)に引継がれて脱穀部10に供給される。
【0021】
上記脱穀部10は、図2及び図3に示すように、回転自在に配置されると共に多数の扱歯12が備えられた扱胴11と、該扱胴11の下方に配置された受網(図示せず)とを有する扱室13と、該扱室13の後方側に配置された吸引ファン15と、該吸引ファン15及び唐箕ファン(図示せず)等によって形成された選別風路中で前後方向に揺動することにより、扱室13より排出された穀粒や藁屑等の選別物を選別する揺動選別装置(図示せず)とを備えており、上記穀稈搬送装置によって搬送されてきた穀稈の脱穀・選別を行う。脱穀部10で脱穀・選別された穀粒は、揚上移送されてグレンタンク7に一時的に貯留され、該貯留された穀粒は、排出オーガ8により機外に搬出される。一方、脱穀部10にて脱穀された後の穀稈は、排藁搬送装置20により機体後部に搬送され、排藁処理部30に供給される。
【0022】
上記排藁処理部30は、カッタケース35と、該カッタケース35の上面部分に配置された後切換え板33a及び前切換え板33bと、前回転刃31a及び後回転刃31bからなる回転刃ユニット31と、拡散ラセン32とを備えて構成されている。
【0023】
後切換え板33aは、排藁処理部30の後方部分に左右方向に配置された後回動支点軸55を回動支点として、後方が下がるように傾斜する基準位置から上方側に回動可能に構成されている。上記前切換え板33bは、排藁処理部30の前方部分に左右方向に配置された前回動支点軸54を回動支点として、後方が下がるように傾斜する基準位置から下方側に回動可能に構成されている。そして、後切換え板33a及び前切換え板33bは、図2にあっては、後切換え板33aが上方側に回動すると共に前切換え板33bが下方側に回動し、排藁搬送装置20によって搬送された排藁を受け入れる開状態を示しており、図3にあっては、後切換え板33a及び前切換え板33bが、共に基準位置とされた閉状態を示している。
【0024】
回転刃ユニット31は、カッタケース35内で左右方向に回転駆動自在に軸支された前回転刃軸31cに、一体回転するように所定間隔を介して複数取付けられた円板状の前回転刃31aと、カッタケース35内で該前回転刃軸31cに対して平行かつ後方側に回転駆動自在に軸支された後回転刃軸31dに、該前回転刃31aのそれぞれと対応して近接し合う複数の円板状の後回転刃31bとを有しており、カッタケース35内に導入された排藁が、それぞれ逆方向に回転駆動される前回転刃31a及び後回転刃31bによって掻き込まれるようにして切断されるように構成されている。
【0025】
拡散ラセン32は、カッタケース35内の下方部分で機体左右方向に延びて配置されたラセン搬送装置であり、回転刃ユニット31によって切断された排藁の切断片(切藁)を受け、左右方向にそれぞれ拡散搬送し、一部に集中することなく分散して機外に排出するように構成されている。
【0026】
次に、排藁搬送装置20について、図2乃至図9に沿って説明する。
【0027】
排藁搬送装置20は、脱穀フィードチェーン45から引継いだ排藁を搬送する排藁搬送チェーン21と、該排藁搬送チェーン21の下方に配置され排藁搬送チェーン21との間に排藁を挟持するためのガイドレール22とによって構成されている。
【0028】
排藁搬送チェーン21は、図2,3,6,8,9に示すように、前方側に配置された駆動スプロケット(図示せず)と、後方側に配置された従動スプロケット21bと、突起部が形成されたチェーンプレート21dを有すると共に、該駆動スプロケット及び従動スプロケット21bに巻掛けられた搬送チェーン21cとを備えている。また、排藁搬送チェーン21は、機体左方側で脱穀フィードチェーン45の搬送終端部となる位置から、後方となるにつれて機体右方側に向かい、機体最後部付近となる位置まで、斜めに配置されている。さらに、排藁搬送チェーン21は、後方側端部に排藁の巻付きを防止するための巻付き防止ガイド21aが配置されている。
【0029】
ガイドレール22は、図4及び図5に示すように、前支持部24と、後支持部23と、これら前支持部24及び後支持部23に支持される固定レール22Xと、該固定レール22Xに対して伸縮可能に配置された可動レール22Yと、固定レール22X及び可動レール22Yに両端部をそれぞれ支持されたスプリング22Zとを備えている。
【0030】
前支持部24は、フレーム(図示せず)に対する取付け部となる前側基部ブラケット24aと、固定レール22Xに対する取付け部となる前側レールブラケット24cと、これら前側基部ブラケット24a及び前側レールブラケット24cにそれぞれ両端部が固着されたスプリングを内蔵したブーツ24bとによって構成されている。後支持部23は、排塵室横フレーム49(図2,3,6参照)に対する取付け部となる後側基部ブラケット23aと、固定レール22Xに対する取付け部となる後側レールブラケット23cと、これら後側基部ブラケット23a及び後側レールブラケット23cにそれぞれ両端部が固着されたスプリングを内蔵したブーツ23bとによって構成されている。
【0031】
固定レール22Xは、断面門形状となると共に上記前支持部24の前側レールブラケット24cにピン26によって連結される前メインレール22aと、断面門形状となると共に上記後支持部23の後側レールブラケット23cにピン25によって連結される後メインレール22bと、中空円筒状に形成され、内径部分にて可動レール22Yを摺動可能に支持する前サブレール22cと、中空円筒状に形成され、内径部分にて可動レール22Yを摺動可能に支持する後サブレール22dと、上記前メインレール22aの始端部分に配置される始端レール22fとによって構成されている。
【0032】
また、固定レール22Xは、これら前メインレール22a、後メインレール22b、前サブレール22c、後サブレール22d、及び始端レール22fが溶接によって一体に固着されており、上面部分は、搬送される排藁の引っかかりを防止するために連続した形状とされている。さらに、上記後サブレール22dは、図7に示すように、後メインレール22bの上面部分側から延設される形で配置されており、該後サブレール22dの下方にスプリング22Zが配置されている。また、後サブレール22dは、終端部分において上方側が下方側に比して突出した突出部、つまり庇部22eを有する形状となっている。
【0033】
可動レール22Yは、図4及び図5に示すように、上記固定レール22Xの前サブレール22c及び後サブレール22dの内径部分に摺動可能に貫通配置される軸状部材であり、該可動レール22Yが固定レール22Xの内部に収納される状態で、ガイドレール22の収縮状態となり、可動レール22Yが後方側に突出させた状態で、ガイドレール22の伸長状態となる。即ち、ガイドレール22は、可動レール22Yが固定レール22Xの内部に収納される状態と、固定レール22Xの終端部分から後方側に突出した状態とをとり得ることにより、伸縮可能に構成されている。また、可動レール22Yは、始端(前方)部付近に伸縮操作するためのワイヤ28が連結されており、終端(後方)部分22gが下方に折り曲げて形成されている。
【0034】
なお、一端部が可動レール22Yに連結されたワイヤ28は、固定レール22Xの前メインレール22aに溶接によって一体に固着された固定部材28bによって固定されたガイドチューブ28aにガイドされつつ、他端部が後述するリンク機構50の切換えアーム56に連結されている。
【0035】
スプリング22Zは、上記固定レール22Xの後サブレール22dの直下となる位置で、後メインレール22bの終端部22hと、上記可動レール22Yの終端部22gとにそれぞれ支持されており、可動レール22Yが固定レール22Xの内部に収納される方向、つまりガイドレール22の収縮状態となる方向に付勢するように配置されている。また、スプリング22Zは、可動レール22Yの終端部分22gが下方に折り曲げられて形成されているため、ガイドレール22が伸長状態となる際にも可動レール22Yの直下で、かつ該可動レール22Yに対して平行となるように延びる。
【0036】
ついで、排藁搬送装置20と排藁処理部30とのリンク機構50について、図8及び図9に沿って説明する。
【0037】
リンク機構50は、上記カッタケース35の機体左右方向の右側面に配置されており、配置後切換え板33aの後回動支点軸55と一体に回動可能となるように配置された後回動軸アーム51と、前切換え板33bの前回動支点軸54と一体に回動可能となるように配置された前回動軸アーム53と、これら後回動軸アーム51と前回動軸アーム53とを連結する連結ロッド52と、板ばね状に形成された切換えレバー56aを有する切換えアーム56等を備えて構成されている。該切換えアーム56は、一端部が上記後回動支点軸55と一体に回動可能となるように連結され、他端部が上記ワイヤ28に連結されている。
【0038】
また、カッタケース35の右側面には、側面視で切換えアーム56と交差するように配置された切換えプレート57が備えられており、該切換えプレート57には、切欠き部57a,57bが形成されている。
【0039】
即ち、リンク機構50は、図8に示すように、切換えアーム56の切換えレバー56aが切換えプレート57の切欠き部57bに係止されている場合には、排藁処理部30を、後切換え板33aが上方側に回動し、前切換え板33bが下方側に回動した開状態とし、一方、ガイドレール22を、切換えアーム56によりワイヤ28が引き操作されていないことにより、スプリング22Zの付勢力によって可動レール22Yが収納された収縮状態とするように構成されている。
【0040】
また、リンク機構50は、図9に示すように、切換えアーム56の切換えレバー56aが切換えプレート57の切欠き部57aに係止されている場合には、排藁処理部30を、後切換え板33a及び前切換え板33bが、共に基準位置とされた閉状態とし、一方、ガイドレール22を、切換えアーム56によりワイヤ28が引き操作されることにより、可動レール22Yが突出した伸長状態とするように構成されている。
【0041】
次に、本実施の形態に係るコンバイン1の作用について説明する。
【0042】
コンバイン1は、図1に示すように、前処理部3で穀稈引起し装置41によって引起されて刈取られた穀稈を、穀稈搬送装置を介して脱穀フィードチェーン45によって搬送し、脱穀部10に供給する。脱穀部10にて脱穀された排藁は、図2及び図3に示すように、脱穀フィードチェーン45によって搬送され、排藁搬送装置20に引継がれる。該排藁搬送装置20に引継がれた排藁は、排藁搬送チェーン21とガイドレール22との間に挟持されつつ搬送される。この際、ガイドレール22は、前支持部24のブーツ24b内に内蔵されたスプリングと、後支持部23のブーツ23b内に内蔵されたスプリングとによって上方側に、つまり排藁搬送チェーン21に押し付けるように付勢されており、該排藁搬送チェーン21との間で排藁を確実に挟持する。
【0043】
その後、排藁は、排藁搬送チェーン21とガイドレール22とに挟持され後方側へ搬送される。ここで、排藁を排藁処理部30にて処理する作業を行う場合には、図2及び図8に示すように、上記切換えアーム56の切換えレバー56aを前方側(図中右方側)へ回動操作し、該切換えレバー56aを切換えプレート57の切欠き部57bに係止させることにより、排藁処理部30の後切換え板33a及び前切換え板33bを開状態とする。
【0044】
このとき、上述のようにガイドレール22は収縮状態となり、搬送された排藁はカッタケース35内に落下し、回転刃ユニット31により切断され、拡散ラセン32を介して切断片(切藁)が機外に排出される。この際、搬送された排藁は、スプリング22Zが後サブレール22dの直下に配置されているため、該スプリング22Zに極力引っかかることなく、ガイドレール22の終端部まで搬送される。
【0045】
また、収縮状態とされたガイドレール22の可動レール22Yは、後サブレール22dの庇部22eによって上方側が覆われており、排藁搬送チェーン21と固定レール22Xとによって排藁を挟持する際に、該庇部22eによって可動レール22Yが排藁と接触することを防止している。これにより、可動レール22Yと排藁搬送チェーン21とによって排藁を挟持し、この挟持力によって可動レール22Yが後方側に引き出されてしまうことを防止している。
【0046】
一方、排藁を排藁処理部30にて処理せず、機体後方側に排出する作業を行う場合には、図3及び図9に示すように、上記切換えアーム56の切換えレバー56aを切換えプレート57の切欠き部57bから解放し、後方側(図中左方側)へ回動操作して、該切換えレバー56aを切欠き部57aに係止させることにより、排藁処理部30の後切換え板33a及び前切換え板33bを閉状態とする。
【0047】
このとき、上述のようにガイドレール22は伸長状態となり、排藁は排藁搬送チェーン21及びガイドレール22の終端部まで搬送され、そのまま機外に排出される。この際、搬送された排藁は、スプリング22Zが可動レール22Yの直下に配置されているため、該スプリング22Zに極力引っかかることなく、ガイドレール22の終端部まで搬送される。
【0048】
また、排藁処理部30の作業状態が開状態から閉状態に切換えられる際には、後切換え板33a及び前切換え板33bが回動動作すると同時に、可動レール22Yが固定レール22Xに対してスプリング22Zの付勢力に抗しながら伸長動作を行う、つまり、前切換え板33bに比して自重の大きい後切換え板33aが下方側に回動する際の力とスプリング22Zの付勢力とが相殺するため、操作時の荷重を低減させることができる。
【0049】
以上のように本発明に係る排藁搬送装置20によると、ガイドレール22が収縮状態となるように付勢するスプリング22Zが、可動レール22Yの直下に配置されているので、該スプリング22Zに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、一端部が後メインレール22bに支持されると共に他端部が可動レール22Yに支持されるだけの簡単な構成とすることができ、ガイドレール22の構造を簡素化することができる。
【0050】
スプリング22Zは、下方に折り曲げて形成された可動レール22Yの終端部22gに支持されると共に、後メインレール22bの終端部22hに支持されるので、ガイドレール22が伸長状態となる際にも可動レール22Yに対して平行となるように延びるようにすることができ、スプリング22Zに排藁が引っかかることを極力防止できるものでありながら、簡単な構成とすることができ、ガイドレール22の構造を簡素化することができる。
【0051】
また、後サブレール22dの終端部に庇部22eを備えたので、ガイドレール22の収縮時に可動レール22Yと排藁搬送チェーン21との間に排藁を挟持することで可動レール22Yが引き出されてしまうことを防止することができる。これにより、ガイドレール22の収縮時の排藁の搬送位置を安定させることができ、カッタでの詰まりや排藁の切断長が不ぞろいとなることを防止することができる。
【0052】
なお、本実施の形態では、庇部22eを備えた後サブレール22dの形状を、円筒部材を斜めに切取ったような形状として説明したが、これに限らず、図10に示すように、円筒部材を階段状に切取ったような形状の庇部22e´を備えた後サブレール22d´としても本発明を適用することができる。
【0053】
また、排藁搬送装置20及び排藁処理部30の作業状態を切換える際には、切換えレバー56aを操作するように説明したが、例えば、該切換えレバー56aをワイヤ等を介して運転席部5に配置したレバーに連係させ、作業者が運転席部5にて切換え操作を行うことができるように構成しても、本発明を適用することができる。
【0054】
また、ガイドレール22が伸長状態となる作業状態の際には、搬送された排藁がそのまま機体後方側に排出されるように説明したが、例えば、搬送されてきた排藁を集束して排出する排藁処理部(ドロッパ)や、搬送された排藁を結束し、藁束として排出する排藁処理部(ノッタ)を機体後部に装着したコンバインにあっても、本発明を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明に係るコンバインを示す側面図。
【図2】ガイドレールが収縮状態の際の排藁搬送装置及び排藁処理部を示す側面断面図。
【図3】ガイドレールが伸長状態の際の排藁搬送装置及び排藁処理部を示す側面断面図。
【図4】ガイドレールを示す側面図。
【図5】ガイドレールを示す分解図。
【図6】排藁搬送装置を示す正面図。
【図7】ガイドレールの終端部分を示す側面図。
【図8】ガイドレールが収縮状態の際の排藁搬送装置及び排藁処理部を示す斜視図。
【図9】ガイドレールが伸長状態の際の排藁搬送装置及び排藁処理部を示す斜視図。
【図10】別の実施例に係るガイドレールの終端部分を示す側面図。
【符号の説明】
【0056】
20 排藁搬送装置
21 排藁搬送チェーン
22 ガイドレール
22b メインレール(後メインレール)
22d,22d´ サブレール(後サブレール)
22e,22e´ 庇部
22h メインレールの終端部
22g 可動レールの終端部
22X 固定レール
22Y 可動レール
22Z スプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
排藁を搬送する排藁搬送チェーンと、該排藁搬送チェーンの下方に配置されると共に固定レール及び可動レールを有するガイドレールと、を備え、
前記排藁搬送チェーン及び前記ガイドレールによって排藁を挟持しつつ搬送し、前記ガイドレールを伸長・収縮させることで排藁の搬送先を変更し得る排藁搬送装置において、
前記可動レールの直下に配置され、一端部が前記固定レールに支持されると共に他端部が前記可動レールに支持され、前記ガイドレールが収縮状態となるように付勢するスプリングを備えてなる、
ことを特徴とする排藁搬送装置。
【請求項2】
前記固定レールは、断面門形状のメインレールと、前記メインレールの終端部に、該メインレールとの間が連続するように固着され、中空円筒状に形成されたサブレールと、を有し、
前記可動レールは、前記サブレールの内径部分に貫通配置されると共に終端部が下方に折り曲げて形成され、
前記スプリングは、前記ガイドレールの収縮状態で前記可動レールが貫通配置された前記サブレールの直下に配置され、一端部が前記メインレールの終端部に支持されると共に他端部が前記可動レールの終端部に支持されてなる、
ことを特徴とする請求項1記載の排藁搬送装置。
【請求項3】
前記サブレールの終端部に庇部を備えてなる、
ことを特徴とする請求項2記載の排藁搬送装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−68774(P2010−68774A)
【公開日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−241624(P2008−241624)
【出願日】平成20年9月19日(2008.9.19)
【出願人】(000001878)三菱農機株式会社 (1,502)
【Fターム(参考)】