説明

掘削機

【課題】 掘削作業等を行う場合に用いられる全高が低い所謂低空頭型の掘削機に於て、高さ制限がある狭隘な現場で掘削作業とクレーン作業の両方を行える様にする。
【解決手段】 車体2、走行体3、旋回体4、旋回台5、マスト6、昇降体7、回転駆動装置8、クレーンアーム9とで構成し、とりわけ旋回体4の前側に旋回体4の旋回軸Aとは偏心した偏心軸Bを中心に旋回可能な旋回台5を設けると共に、この旋回台5に低揚高のマスト6を前後傾倒可能に設け、然もマスト6の上部にその先端と回転駆動装置8の中心とが偏心軸Bを中心として所定角度θだけ離間されたクレーンアーム9を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば高架下や建物内等の高さに制限がある狭隘な現場で掘削作業等を行う場合に用いられる全高が低い所謂低空頭型の掘削機の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の掘削機としては、次の様なものが知られている。
(1) 車体と、車体に設けられてこれを走行させる走行体と、車体に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前側に前後傾動可能に設けられた低揚高のマストと、マストに昇降可能に設けられた昇降体と、昇降体に設けられて掘削具を回転させる回転駆動装置と、マストの上部に設けられてその先端と回転駆動装置の中心とが旋回体の旋回軸を中心として所定角度だけ離間されたクレーンアームと、から構成されたもの(特許文献1参照)。
(2) 車体と、車体に設けられてこれを走行させる走行体と、車体に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前側に設けられて旋回軸とは偏心した偏心軸を中心に旋回可能な旋回台と、旋回台に前後傾倒可能に設けられて高揚高のマストと、マストに昇降可能に設けられた昇降体と、昇降体に設けられて掘削具を回転させる回転駆動装置と、から構成されたもの(特許文献2参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2002−285775号
【特許文献2】実開昭64−5994号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところが、前記(1)のものは、低揚高のマストを用いているので、高さに制限がある現場での作業が可能であると共に、掘削具を回転させる回転駆動装置とクレーンアームを備えているので、掘削作業とクレーン作業との両方が行える。然しながら、これらの作業は、旋回体を旋回させて行なわなければならないので、旋回半径が大きくなって、狭隘な現場での作業が行えなかった。
他方、前記(2)のものは、旋回体より旋回半径の小さい旋回台を備えているので、狭隘な現場での掘削作業を行う事ができる。然しながら、高揚高のマストを用いているので、高さ制限のある現場での掘削作業が行えないと共に、クレーンアームを備えていないので、クレーン作業を行う事ができなかった。
この様に、従来のものは、夫々一長一短があり、高さ制限がある狭隘な現場で掘削作業とクレーン作業の両方を行えるものがなかった。
【0005】
本発明は、叙上の問題点に鑑み、これを解消する為に創案されたもので、その課題とする処は、高さ制限がある狭隘な現場で掘削作業とクレーン作業の両方を行える様にした掘削機を提供するにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の掘削機は、基本的には、車体と、車体に設けられてこれを走行させる走行体と、車体に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前側に設けられて旋回体の旋回軸とは偏心した偏心軸を中心に旋回可能な旋回台と、旋回台に前後傾倒可能に設けられた低揚高のマストと、マストに昇降可能に設けられた昇降体と、昇降体に設けられて掘削具を回転させる回転駆動装置と、マストの上部に設けられてその先端と回転駆動装置の中心とが偏心軸を中心として所定角度だけ離間されたクレーンアームと、から構成した事に特徴が存する。
【0007】
車体は、走行体に依り走行されると共に、旋回体は、車体に対して旋回軸を中心に旋回される。旋回台は、旋回体に対して偏心軸を中心に旋回されると共に、マストは、旋回台に対して前後傾倒される。昇降体は、マストに対して昇降されると共に、回転駆動装置は、昇降体と一緒に昇降される。回転駆動装置が作動されると、これに設けられた掘削具が回転されて地面に対して掘削作業が行われる。
旋回台を所定角度だけ旋回させると、マストを介してクレーンアームと回転駆動装置とが同角度だけ旋回される。この為、クレーンアームの先端を旋回前の回転駆動装置の中心位置に移動させる事ができ、掘削箇所に対してクレーンアームに依るクレーン作業を行う事ができる。
【0008】
マストは、旋回台に対して左右傾倒可能に設けられているのが好ましい。この様にすれば、掘削具を左右に傾倒する事が可能となり、掘削具を真直状態に修正したり、逆に掘削具を積極的に左右傾倒状態にする事ができ、掘削作業の多様化に対応できる。
【0009】
マストは、着脱可能に取り付けられる延長マストを備えているのが好ましい。この様にすれば、作業現場に呼応したマスト高さにする事ができ、作業能率の向上を図る事ができる。
【発明の効果】
【0010】
本発明に依れば、次の様な優れた効果を奏する事ができる。
(1) 車体、走行体、旋回体、旋回台、マスト、昇降体、回転駆動装置、クレーンアームとで構成し、とりわけ旋回体の前側に旋回体の旋回軸とは偏心した偏心軸を中心に旋回可能な旋回台を設けると共に、この旋回台に低揚高のマストを前後傾倒可能に設け、然もマストの上部にその先端と回転駆動装置の中心とが偏心軸を中心として所定角度だけ離間されたクレーンアームを設けたので、高さ制限がある狭隘な現場で掘削作業とクレーン作業の両方を行う事ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の掘削機を示す側面図。図2は、図1の平面図。図3は、一部を破断して示す図1の背面図。図4は、旋回台を旋回させてクレーン作業を行う状態を示す平面図である。
【0012】
掘削機1は、車体2、走行体3、旋回体4、旋回台5、マスト6、昇降体7、回転駆動装置8、クレーンアーム9とからその主要部が構成されている。
【0013】
車体2は、掘削機1の基本部分を為すものである。
【0014】
走行体3は、車体2に設けられてこれを走行させるもので、この例では、車体2に回転可能に設けられた左右のクローラにしてあり、これらを回転させる油圧モータ等の走行駆動機10が車体2に設けられている。
【0015】
旋回体4は、車体2に旋回可能に設けられたもので、この例では、車体2の上部に旋回軸A廻りに回転可能に設けられて居り、油圧モータ等の旋回駆動機11に依り旋回される様になっている。
而して、旋回体4は、前側から順に支持体12と運転室13とエンジン室14を備えて居り、前側と後側には、地面に接地して安定を図る為の左右一対のアウトリガ15が設けられている。
【0016】
旋回台5は、旋回体4の前側に設けられて旋回体4の旋回軸Aとは偏心した偏心軸Bを中心に旋回可能なもので、この例では、支持体12の上部に偏心軸B廻りに旋回可能に設けられて居り、油圧シリンダ等の旋動駆動機16に依り旋回体4より小さい旋回半径で旋回される様にしてある。
【0017】
マスト6は、旋回台5に前後傾倒可能に設けられた低揚高のもので、この例では、旋回台5に対して左右傾倒可能に設けられていると共に、前後傾倒可能に設けられている。
つまり、旋回台5は、その上部に前後軸廻りに搖動可能な搖動体17を備えて居り、これは、油圧シリンダ等の搖動駆動機18に依り左右に所定角度αだけ傾倒される様になっている。マスト6は、上下(上部マスト19と下部マスト20)に分割されて着脱可能に連結されている。下部マスト19は、搖動体17の前側に横軸廻りに前後傾倒可能に設けられて居り、上部マスト20と搖動体17との間に介設された油圧シリンダ等の傾倒駆動機21に依り前後に所定角度づつ傾動される様になっている。下部マスト20には、地面に接地して安定を図る為のアウトリガ22が設けられている。
マスト6の高さは2.75mにしてあり、掘削機1の全高は3.1mにしてある。マスト6の左右傾倒角度αは夫々5度にしてある。
【0018】
昇降体7は、マスト6に昇降可能に設けられたもので、この例では、油圧モータとチェーン・スプロケット機構等から成る昇降駆動機23に依り昇降される様になっている。
【0019】
回転駆動装置8は、昇降体7に設けられて掘削具を回転させるもので、この例では、オーガスクリュ等の掘削具(図示せず)を縦軸廻りに回転させる油圧モータ等から成り、掘削具に薬液等を供給する為のスイベル24を備えている。
【0020】
クレーンアーム9は、マスト6の上部に設けられてその先端と回転駆動装置8の中心Cとが偏心軸Bを中心として所定角度θだけ離間されたもので、この例では、上部マスト19の頂部に水平に延設されて居り、所定角度θは26度にしてある。
クレーンアーム9は、前後端に水平軸廻りに回転可能に設けられたシーブ25と、旋回体4の後側上部に設置されたウインチ26と、これに巻かれて各シーブ25に掛渡されたワイヤロープ27と、これの先端に設けられて鋼管等(図示せず)の吊り込み等に利用するフック28とを備えている。
【0021】
次に、この様な構成に基づいてその作用を述解する。
走行駆動機10が作動されると、走行体3であるクローラが回転されて車体2が走行される。旋回駆動機11が作動されると、車体2に対して旋回体4が旋回軸Aを中心に旋回される。アウトリガ15が作動されると、これが接地されて旋回体4の水平度が調整される。
旋動駆動機16が作動されると、旋回体4に対して旋回台5が偏心軸Bを中心に旋動される。搖動駆動機18が作動されると、旋回台5に対して搖動体17が搖動されてマスト6が左右方向に傾動される。傾倒駆動機21が作動されると、搖動体17に対してマスト6が前後方向に傾動される。アウトリガ22が作動されると、これが接地されてマスト6が地面に対して固定される。昇降駆動機23が作動されると、マスト6に対して昇降体7及び回転駆動装置8が昇降される。回転駆動装置8に掘削具を装着して縦軸廻りに回転させると共に、昇降駆動機23に依り昇降体7と一緒にこれらを下降させると、掘削具が回転降下されて地面が掘削される。
【0022】
旋回台5を図2の状態から図4に示す状態に偏心軸Bを中心に所定角度θだけ旋回させると、マスト6を介してクレーンアーム9と回転駆動装置8とが同角度だけ旋回される。この為、クレーンアーム9の先端を旋回前の回転駆動装置8の中心Cに移動させる事ができ、掘削箇所に対してクレーンアーム9に依るクレーン作業を行う事ができる。
マスト6は、旋回台5に対して左右傾倒可能に設けられているので、掘削具を左右に傾倒する事が可能となり、掘削具を真直状態に修正したり、逆に掘削具を積極的に左右傾倒状態にする事ができる。
【0023】
次に、本発明の第二例を、図5に基づいて説明する。
図5は、本発明の第二例に係る掘削機を示す側面図である。
第二例は、マスト6を異ならせたものであり、着脱可能に取り付けられる延長マスト29を備えたものである。つまり、上部マスト19と下部マスト20を分離してこの間に延長マスト29を介設したものである。
而して、延長マスト29の高さは0.7mにしてあり、これを継ぎ足したマスト6の高さは3.45mになり、掘削機1の全高は3.8mになっている。
この様なものは、作業現場に呼応したマスト高さにする事ができ、作業能率の向上を図る事ができる。
【0024】
尚、走行体3は、先の例では、クローラであったが、これに限らず、例えばタイヤ等でも良い。
マスト6は、先の例では、旋回台5に対して左右傾倒可能にしたが、これに限らず、例えばこれを割愛しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の掘削機を示す側面図。
【図2】図1の平面図。
【図3】一部を破断して示す図1の背面図。
【図4】旋回台を旋回させてクレーン作業を行う状態を示す平面図。
【図5】本発明の第二例に係る掘削機を示す側面図。
【符号の説明】
【0026】
1…掘削機、2…車体、3…走行体、4…旋回体、5…旋回台、6…マスト、7…昇降体、8…回転駆動装置、9…クレーンアーム、10…走行駆動機、11…旋回駆動機、12…支持体、13…運転室、14…エンジン室、15…アウトリガ、16…旋動駆動機、17…搖動体、18…搖動駆動機、19…上部マスト、20…下部マスト、21…傾倒駆動機、22…アウトリガ、23…昇降駆動機、24…スイベル、25…シーブ、26…ウインチ、27…ワイヤロープ、28…フック、29…延長マスト、A…旋回軸、B…偏心軸、C…中心、α…左右傾倒角度、θ…所定角度。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、車体に設けられてこれを走行させる走行体と、車体に旋回可能に設けられた旋回体と、旋回体の前側に設けられて旋回体の旋回軸とは偏心した偏心軸を中心に旋回可能な旋回台と、旋回台に前後傾倒可能に設けられた低揚高のマストと、マストに昇降可能に設けられた昇降体と、昇降体に設けられて掘削具を回転させる回転駆動装置と、マストの上部に設けられてその先端と回転駆動装置の中心とが偏心軸を中心として所定角度だけ離間されたクレーンアームと、から構成した事を特徴とする掘削機。
【請求項2】
マストは、旋回台に対して左右傾倒可能に設けられている請求項1に記載の掘削機。
【請求項3】
マストは、着脱可能に取り付けられる延長マストを備えている請求項1に記載の掘削機。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−37433(P2006−37433A)
【公開日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−216885(P2004−216885)
【出願日】平成16年7月26日(2004.7.26)
【出願人】(595018916)株式会社シロタ (5)
【Fターム(参考)】