説明

掘削装置及び掘削方法

【課題】容易かつ効率的に横溝を掘削し、排土の処理も容易に行えるようにする。
【解決手段】回転軸3の周りに螺旋羽根4の設けられた掘削スクリュー2を地面から一定の深さまで地中に挿入し、掘削スクリュー2の鉛直状態を維持したまま回転駆動させて水平に移動する。この際、掘削スクリュー2の後部側に、螺旋羽根4の外周縁と一定の隙間を空けて排土カバー10を配置する。前記掘削スクリュー及び前記排土カバーとは、進行方向の前方に配されて、地面を押し付ける保持体に接続されて、これらの姿勢が一定に保たれる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地面を掘削して横溝を形成するための掘削装置及び掘削方法に関する。
【背景技術】
【0002】
地面から所定の深さの位置にパイプライン等を埋設するには、一定の深さの横溝を掘削するか、縦坑を掘削した後、この縦坑の周壁から水平に延びる横坑を掘削することが従来から行われている。そして、地面から比較的浅い位置にパイプラインを埋設する場合には、一定の深さの横溝を掘削することが一般的に行われている。
【0003】
従来、油圧ショベルを使用して横溝を掘削する工法が多くの場合採用されてきた。即ち、地面を掘削し、掘削により発生する排土をダンプトラックに積載する工程を油圧ショベルに行わせる工法である。
【0004】
近年、油圧ショベルの操作が容易になったとはいえ、一定の幅、一定の深さに横溝を掘削するには依然として操作に熟練を要し、油圧ショベルのオペレータの確保が困難である。また、油圧ショベルで掘削を行う場合、バケットの上下運動、アッパーフレームの旋回運動を伴う。このため、掘削作業を行う地点では安全を確保するための広いスペースが必要となる。
【0005】
他方、油圧ショベルを使用することなく溝を掘削する掘削装置として、スプロケットで無端チェーンを回転駆動させて岩盤等を削岩して溝を形成する掘削装置が特許文献1に開示されている。この特許文献1に開示の掘削装置は、無端チェーンを地中に挿入し、チェーンの回転を利用して岩盤等を削岩しながら溝を掘削するものである。
【0006】
【特許文献1】特開2001−311178号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
確かに、特許文献1に開示された掘削装置は、無端チェーンを回転させつつ装置全体を移動させることにより、地面に溝を連続的に形成させることを可能とする点で優れた装置である。
【0008】
もっとも、特許文献1に開示の掘削装置は、無端チェーンを回転させることで溝を形成する装置であるため、掘削により発生する排土が溝の内部に残留し、また、無端チェーンの回転により排土が周囲に飛散する恐れがある。さらに、特許文献1に開示の掘削装置のように無端チェーンを使用して掘削する場合、掘削している部分に既設のパイプラインがあったとき、無端チェーンがこれらパイプラインに著しい損傷を与えてしまう。
【0009】
そこで、本発明では、容易かつ効率的に横溝を連続して掘削し、排土の処理も容易に行える掘削装置を提供する。さらに、既設のパイプラインを傷つけにくく、しかも障害を早期に確認できる装置とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明では、上記の課題を解決するために、鉛直方向に延びる回転軸及びその周りに設けられた螺旋羽根を有し、地面から一定の深さまで地中に挿入され、駆動源により前記回転軸を中心に回転されて掘削する掘削スクリューと、この掘削スクリューの周囲の後部側を覆い、前記螺旋羽根の外周縁と一定の隙間を空けて配された排土カバーと、地面に接地させて地面を押し付けると共に、前記掘削スクリュー及び前記排土カバーが接続されてこれら掘削スクリュー及び排土カバーを保持する保持体とを備え、保持体を前部として、これら掘削スクリュー、排土カバー及び保持体を前進して地中を掘削する掘削装置を採用した。
【0011】
かかる掘削装置に関し、前記掘削スクリュー及び前記排土カバーをそれぞれ昇降せしめる昇降手段を備える。
【0012】
また、掘削により生ずる排土を前記掘削スクリューの上部から搬出する搬出手段を備えた。
【0013】
そして、本発明では上記掘削装置において、牽引車両に連結せしめる連結手段を備えた。
【0014】
あるいは、前記掘削スクリュー、前記排土カバー及び前記保持体と一体に構成し、これらを搬送せしめる自走手段を備えた。
【0015】
また、以上の掘削装置を使用して、地面に横溝を連続的に形成する溝の掘削方法を採用することとした。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、掘削装置を一旦地面に挿入しさえすれば、これを移動させるだけで横溝を形成することができるため、作業効率が大幅に向上する。さらに、従来から行われてきた油圧ショベルによる掘削作業とは異なり、確保すべき作業範囲を小さくすることができる。このため、大きな作業範囲を確保することが困難な都市内、住宅地での作業を効率的に行える。さらに、掘削により発生する排土を自動的に搬出できるため、作業性を大幅に向上させることができる。
【0017】
さらに、排土を除去しつつ掘削を行うこと、及び掘削による排土が飛散しないことから作業者が掘削された溝内部の状況を確認しやすく、既設のパイプラインを早期に確認できる。また、地面の掘削が掘削スクリューにより行われるため、仮に既設のパイプラインに干渉した場合でも、パイプラインの損傷を最小限にくい止めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1〜図10は、本発明の第1の実施形態にかかる掘削装置1を示している。この掘削装置1は、牽引車両であるダンプトラック60によって牽引され、水平に移動されることで地面Gを掘削して横溝Aを形成する装置である。掘削装置1は、掘削スクリュー2と、掘削スクリュー2の周りを囲む排土カバー10と、地面Gに接地せしめ地面を下方に押し付けると共に、これら掘削スクリュー2及び排土カバー10が接続されて両者を一定の姿勢に維持するスライド式ホルダ20とを備えている。また、掘削スクリュー2の掘削により発生する排土をダンプトラック60の荷台61まで搬送させる搬送コンベヤ40を具備している。
【0020】
掘削スクリュー2は、鉛直方向に延びる回転軸3と、この回転軸3の外周面に設けられた螺旋状の螺旋羽根4とを備えている。これらは、図2から明らかなように、螺旋羽根4の下端は回転軸3の下端から若干上方の位置まで延びている一方で、回転軸3の上部は螺旋羽根4の上端から大きく上方に突出するようにして構成されている。そして、回転軸3の下部及び、螺旋羽根4の上端から一定の距離だけ離れた位置には、排土カバー10を装着せしめる取付部5,6が設けられている。この掘削スクリュー2は、油圧モータ65により回転軸3を中心に回転されるように構成されている。
【0021】
なお、特に図面には示していないが、油圧モータ65の駆動は、一般的に使用されている、エンジンと油圧ポンプがユニットされた産業用の油圧ユニットを使用するとよい。
【0022】
この掘削スクリュー2の周囲は排土カバー10により進行方向の後部側が覆われている。排土カバー10は、その断面形状が円弧状をなす周壁部11と、螺旋羽根4の上端から一定の距離を隔てて配された半円状の天面部12と、回転軸3の下端部の位置に配された半円状の底面部13とから構成されている。周壁部11は、その内周面が鉛直方向に関して掘削スクリュー2の螺旋羽根4の外周縁と僅かな隙間が形成されるようにして配置されている。また、天面部12及び底面部13は、円弧状の周縁部が周壁部11と一体に接合され、平坦な前端縁を進行方向の前方に向けて配されている。そして、この排土カバー10には、天面部12及び底面部13のそれぞれ前端縁の中心部が回転軸3に対して着脱可能なように回転軸3の各取付部5,6に取り付けられ、排土カバー10と掘削スクリュー2とが一体化されるように構成されている。なお、排土カバー10が掘削スクリュー2に装着されて両者が一体化された際に、排土カバー10が掘削スクリュー2と供回りすることの無いように、ブッシュなどを介して、排土カバー10の天面部12及び底面部13は回転軸3の取付部5,6装着部に取り付けられる。
【0023】
また、天面部12の内面と周壁面の内周面とは曲面部14により連続的に接続されている。この曲面部14は、後に詳細を説明するように、掘削により発生した排土を排土カバー10の内部から円滑に外部に排出するためのものである。
【0024】
これら掘削スクリュー2及び排土カバー10は、鉛直方向に立てられた状態が維持されて、地面Gから一定の深さの位置まで地中に挿入される。
【0025】
これら掘削スクリュー2及び排土カバー10が鉛直方向に立てられた状態を維持するものが、これらを接続して保持するスライド式ホルダ20である。このスライド式ホルダ20は、地面Gに接地されると共に地面Gをスライドするスライダ21と、スライダ21から上方に向けて延びるボディ22とから構成されている。スライダ21の底面21aは、そりのように、その前方が上側に向けられた傾斜面として形成されており、円滑に地面Gをスライド可能に構成されている。ボディ22は、ボックス状に形成されており、進行方向の前部をなす前面部22aにダンプトラック60に当該掘削装置1を連結するための連結シリンダ25が取り付けられる一方で、背面部22bに掘削スクリュー2を接続せしめる接続体30が取り付けられる。
【0026】
図3は、スライド式ホルダ20のボディ22と掘削スクリュー2とを接続する接続体30の一例を模型的に示すものである。例えば、ボディ22の上部と下部とから接続バー31を後方の掘削スクリュー2に向けて延びるように設ける。そして、これらの接続バー31の後端に円筒状のホルダ32を設けて、回転軸3が排土カバー10の天面部12からさらに上方に向けて突出する部分をホルダ32で保持する。この際、掘削スクリュー2の回転を阻害することの無いようにベアリングなどを介して回転軸を保持する。
【0027】
さらに、排土カバー10の底部とスライド式ホルダ20とを2本の油圧シリンダ24,25で接続する。2本の油圧シリンダ24,25のうち、第一シリンダ24は、シリンダの基部がボディ22に接続され、シリンダロッドの先端が排土カバー10の後方まで延びるように配される。そして第二シリンダ25は、シリンダロッドの先端が前方に向けられるようにして、基部が連結ピンなどを介して第1シリンダ24に連結され、シリンダロッドの先端が排土カバー10の下部に連結される。上述のように、掘削スクリュー2と排土カバー10とは、一体化されているので、この油圧シリンダ24,25で排土カバー10とスライド式ホルダ20とを接続することにより、油圧シリンダ24,25及び排土カバー10を介して掘削スクリュー2の下部とスライド式ホルダ20とが接続されることになる。これにより掘削スクリュー2及び排土カバー10は、鉛直方向の上部及び下部がスライド式ホルダ20に保持されて、転倒することなく鉛直方向に立てられた状態が維持される。
【0028】
さらに、この掘削装置1は、掘削により発生した排土をダンプトラック60の荷台61まで搬送する搬送コンベヤ40が設けられている。この搬送コンベヤ40は2つのコンベヤ41,50から構成されており、地面Gからダンプトラック60の荷台61の高さの位置まで排土を上昇せしめる第1コンベヤ41と、上昇された排土を水平移動させてダンプトラック60の荷台61の内側まで排土を搬送する第2コンベヤ50とから構成されている。
【0029】
第1コンベヤ41は、排土の導入部42が排土カバー10の前部側にて、掘削スクリュー2と排土カバー10の天面部12との間に位置されて、上斜め前方に延びるようにして配置され、排出部43が第2コンベヤ50の高さに位置されている。そして、導入部42には、排土カバー10の上部から前方に排出される排土が周囲に飛散することのないように、排土カバー10の上部に接続される案内カバー45により導入部42の周囲が覆われている。また、第1コンベヤ41には搬送中の排土が周囲に飛散することを防止するために、その全体が筒状のカバー44により覆われている。なお、第1コンベヤ41により搬送された排土を第2コンベヤ50へ中継する際に、排土の一部が第2コンベヤ50からたとえこぼれ落ちたとしても、ダンプトラック60の荷台61の内部に排土が投入されるように、その排出部43が荷台61の内側に位置されるように、第1コンベヤ41の傾きが予め調整され、排出部43のやや下側がダンプトラック60の荷台61の後端部にセットされる。
【0030】
一方、第2コンベヤ50は、第1コンベヤ41の排出部43の高さの位置にて前後に延びるように水平に配置される。この第2コンベヤ50は、第1コンベヤ41によって搬送された排土を後部から前部へ向けて搬送せしめ、前端をなす排出部51から排土をダンプトラック60の荷台61の内部に投下する。なお、排土をダンプトラック60の荷台61の内部に均一に投下することができるように全体を前後に移動可能に構成するとよい。
【0031】
以上のように構成された掘削装置1によれば、以下に説明するようにして一定の深さで、かつ一定の幅を有する横溝Aを形成する。
【0032】
まず、図4に示すように、横溝Aを形成しようとする始点Pに、掘削スクリュー2を地面Gに挿入する。この際、スライド式ホルダ20から排土カバー10は外しておき、掘削スクリュー2のみを取り付けておく。そして、図示しない駆動源を作動させて油圧モータ65を回転駆動させる。これにより、油圧モータ65に連結された掘削スクリュー2が回転し、掘削スクリュー2が地面Gを掘削し始める。
【0033】
次いで、図5に示すように、掘削スクリュー2を下方に向けて降下させる。この際、スライド式ホルダ20のボディ22に対して掘削スクリュー2を徐々に下方に向けてスライドさせることで掘削スクリュー2全体を降下させる。掘削スクリュー2を回転させつつ降下させると、掘削された排土が螺旋羽根4の回転に伴い地表まで上昇する。上昇された排土は、形成された縦坑の周囲に盛られる。なお、油圧モータ65を回転せしめるオイルの流れるメイン回路にリリーフバルブを設けておけば、掘削スクリュー2の螺旋羽根4が地中に存在する堅固な岩盤に接触した場合でも、無理に回転されることがなく、掘削スクリュー2の破損を防止できる。
【0034】
そして、掘削スクリュー2の下端が、形成しようとしている横溝Aの深さにまで到達した後、図6に示すように、掘削スクリュー2の軸方向が鉛直方向に向けられた状態を維持したままスライド式ホルダ20ごと掘削スクリュー2を前進させる。掘削スクリュー2を前進させると、掘削スクリュー2の螺旋羽根4が、回転軸3の軸方向の全域において、地面Gを掘削する。
【0035】
そして、ある程度、掘削スクリュー2を前進させた後、一旦油圧モータ65の駆動を停止する。その後、図7に示すように、排土カバー10を掘削スクリュー2の後ろ側に配置されるように、形成された横溝Aの内部に降下させる。そして、排土カバー10の底面部13を掘削スクリュー2の下部に取り付けると共に、天面部12を螺旋羽根4から一定の距離だけ離れた回転軸3の装着部5,6に取り付ける。これにより、排土カバー10と掘削スクリュー2とを一体化させる。なお、この図8には示されていないが、排土カバー10をなす周壁部11の下部は、油圧シリンダを介してスライド式ホルダ20に取り付けられているので、排土カバー10及び排土スクリュー2は、スライド式ホルダ20によって確実に鉛直に立てられた状態が維持される。
【0036】
排土カバー10をセットした後、図8に示すように、搬送コンベヤ40をセットする。この際、搬送コンベヤ40のうち、第1コンベヤ41の傾きを適宜調整し、導入部42が排土カバー10の前面側、かつ上部に位置され、排出部43が、ダンプトラック60の荷台61の内側に位置されるように配置する。傾きを調整した後、第1コンベヤ41の導入部42と排土カバー10の上部とを案内カバー45で接続する。
【0037】
以上の段取りを終了した後に、ダンプトラック60で掘削装置1を牽引して前進させる。掘削装置1をダンプトラック60で前進させると、掘削スクリュー2の螺旋羽根4が地面Gを順次掘削する。掘削スクリュー2の背後には排土カバー10が設けられているので、掘削により発生した排土は、この排土カバー10によって掘削装置1の後方へ流出することが阻止される。そうすると、排土は、螺旋羽根4の回転に伴って螺旋羽根4の上面を螺旋状に上方に向けて強制的に上昇される。その様子は、上述の図2に示す通りである。
【0038】
排土が地表まで上昇されると順次上昇される排土に押され、排土は順次導入部42から第1コンベヤ41に載せられて排土カバー10から搬出される。この際、排土カバー10の周壁部11と天面部12とは、その内面が曲面部14により接続されているため、上昇された排土が排土カバー10の上部で滞留することなく、円滑に排土カバー10の前部から排出される。第1コンベヤ41により搬送された排土は、第1コンベヤ41の上部にて第2コンベヤ50に中継される。そして、排土は、第2コンベヤ50の前端をなす排出部43からダンプトラック60の荷台61の内部へ投下される。
【0039】
また、この掘削装置1は、地面Gを掘削する過程で、地面Gの表面を覆うアスファルトSを破砕する。図9は、アスファルトSが破砕される様子を示している。
【0040】
掘削の過程においては、掘削スクリュー2の螺旋羽根4は、その前部がアスファルトSの下側に挿入される。掘削スクリュー2が回転されると、螺旋羽根4がアスファルトSを下から排土と共に上方へ持ち上げることになる。その一方で、掘削スクリュー2の前方では、スライド式ホルダ20のスライダ21が、アスファルトSをその表面から下側に向けて押し付けている。このため、アスファルトSは、スライダ21と螺旋羽根4との間に挟み込まれ、スライダ21の後端部より後ろ側が螺旋回転4により上昇される。これにより、アスファルトSは、スライダ21の後端部を支点として折り込まれるようにして破砕される。破砕されたアスファルトSの破片は、掘削により発生した排土と共に搬送コンベヤ40によりダンプトラック60の荷台61へ搬送される。
【0041】
以上の作用を通じて、一定の深さでかつ、一定の幅を有する横溝Aが形成される。そして、かかる掘削装置1により形成される横溝Aは、その溝底に凹凸がほとんど存在しない平坦な溝底となる(図8参照)。これは、排土カバー10を構成する底面部13が溝底の余分な排土を掻き取ると共に、底面部13の裏面が溝底をならしながら前進するためである。
【0042】
また、図10に示すように、掘削スクリュー2の両側方に、排土カバー10の前面から前方に延びる板状のサイドカバー15を設けておけば、横溝Aの内壁を平坦に形成することができる。即ち、サイドカバー15が横溝Aの内壁を削り取ることで横溝Aの内壁が平坦形成される。サイドカバー15により削り取られた排土は、掘削スクリュー2によって掘削された排土ともに、掘削スクリュー2によって地表まで上昇される。
【0043】
なお、掘削スクリュー2は、掘削の対象となる地面Gの状態に応じて、その螺旋羽根4の回転軸3の軸方向に関するピッチが異なるものを適宜選定出来るようにしておくと良い。同じく、地面Gの状態に応じて、掘削スクリュー2の回転速度も、適宜変更出来るように、油圧モータ65の回路を設計しておくと良い。さらに、螺旋羽根4の外周縁に沿って、一定の間隔を空けて硬質チップを取り付け可能に構成すれば、硬質チップが岩盤とを破砕して、堅固な地盤についても横溝Aを容易に形成できる。
【0044】
次に、図11及び図12を参照して、掘削装置100を自走式に構成した第2の実施形態について説明する。この第2の実施形態にかかる掘削装置100は、自走機101に、掘削スクリュー130、排土カバー140及びスライド式ホルダ122とが一体化された掘削ユニット120を連結して構成している。
【0045】
自走機101は、走行部102と、走行部102の上側に設けられ、走行部に対して水平に旋回可能に支持された旋回体106とから構成されている。この実施形態にかかる自走機101の走行部102は、クローラ式の足回りを採用している。この走行部102は、前後に延びる走行フレーム103と、この走行フレーム103の前後に取り付けられたスプロケット104と、これらスプロケット104により内側から支持されて、走行フレーム103の周囲に巻き付けられるようにして設けられたゴムシュー105とを備えている。また、走行部102の後部には油圧式の走行モータが内蔵されており、後部側のスプロケット104を回転駆動させている。この走行部102は、走行モータの駆動に伴って、後部側のスプロケット104が回転され、さらにスプロケット104の回転により、ゴムシュー105が走行部102の周りを回転されるように構成されている。走行は、ゴムシュー105が回転することにより行われる。
【0046】
旋回体106は、ボールレース110などにより走行部102に接続され、走行部102に対して水平に自在に回転できるように構成されている。旋回体106の前部は、オペレータが着座するための操作部107であり、その前部には、複数の操作レバー108が設けられている。掘削装置100の走行、や掘削ユニット120の作動は、これら操作レバー108の操作により行われるように構成されている。一方、旋回体106の後部にはエンジンルーム109が設けられ、その内部にエンジンや油圧ポンプなどの駆動源が搭載される。この駆動源をなす油圧ポンプには、走行部102の走行モータや、掘削ユニット120の作動を行うモータやシリンダなどが接続される。
【0047】
そして、この自走機101をなす旋回体106の前部には、掘削ユニット120が接続される。掘削ユニット120は、旋回体106の前部に接続されるフレーム121と、フレーム121の前部に設けられたスライド式ホルダ122と、を備えている。フレーム121は、その後部が連結ピンなどにより、走行機101の前部に着脱可能に取り付けられる。スライド式ホルダ122は、地面Gに接地されると共に地面Gをスライドするスライダ123と、スライダ123から上方に向けて延びるボディ124とから構成されている。このスライダ123についても、その底面123aは、そりのように、その前方が上側に向けられた傾斜面として形成されており、円滑に地面Gをスライド可能に構成されている。ボディ124は、ボックス状に形成されており、その上部がフレーム121の前端に取り付けられている。
【0048】
そして、フレーム121には2種類の油圧シリンダ125,135が鉛直方向に延びるようにして取り付けられている。その一方の油圧シリンダは、掘削スクリュー130を昇降させるスクリュー昇降シリンダ125で、もう一方の油圧シリンダは、排土カバー140を昇降させるカバー昇降シリンダ135である。これら両シリンダ125,135は、ケース部125a,135aがフレーム121から上方に向け延び、シリンダロッド125b,135bがフレーム121の下側に向けられるようにしてそれぞれフレーム121に取り付けられている。
【0049】
そして、スクリュー昇降シリンダ125のシリンダロッド125bには、掘削スクリュー130がスイベルジョイント128などを介してシリンダロッド125bに対して回転可能に連結されている。また、スクリュー昇降シリンダ125のシリンダロッド125bには、掘削スクリュー130を回転駆動させるための油圧モータ127が取り付けられている。なお、油圧モータ127と掘削スクリュー130とは、油圧モータ127の回転を掘削スクリュー130に伝達するためのギヤボックス126などを介して接続される。
【0050】
スクリュー昇降シリンダ125に接続された掘削スクリュー130は、鉛直方向に延びる回転軸131と、回転軸131の外周面において、螺旋状に形成された螺旋羽根132とから構成されている。この点は、第1の実施形態にかかるものと同様である。
【0051】
一方、カバー昇降シリンダ135は、そのシリンダロッド135bの下端に排土カバー140に取り付けられて、排土カバー140を昇降させている。カバー昇降シリンダ135に取り付けられている排土カバー140は、第1の実施形態のものと同様の構成を有しており、掘削スクリュー130の螺旋羽根132の外周を覆う円弧状の周壁部141、半円状の天面部142及び底面部143とから構成されている。なお、この第2の実施形態にかかる掘削装置100においては、排土カバー140を前後に移動させる小型のシリンダをフレーム121内に設けておけば、掘削スクリュー130への取り付けを自動で行うことができる。但し、図12に示すように、排土カバー140の背面部にカバー移動用のシリンダ150を設けることでも、掘削スクリュー130への取り付けを自動的に行うことができる。この図12に示す態様では、シリンダ150の基部をフレーム121に取り付け、シリンダロッドを伸縮させて、排土カバー140を掘削スクリュー130に対して着脱させる。
【0052】
そして、掘削により発生した排土をダンプトラック60の荷台61に搬送する搬送コンベヤ40が設けられる。この搬送コンベヤ40の構成は、第1実施形態にかかる掘削装置1の搬送コンベヤ40と同様に、斜め上前方に向けて延びる第1コンベヤ41と水平に延びる第2コンベヤ50とから構成されている。
【0053】
以上の構成を備えた掘削装置100によれば、掘削により発生される排土を積載するダンプトラック60を掘削装置100の前方に配置させ、掘削装置100と共にダンプトラックトラック60を低速で前進させながら横溝Aを形成させる。なお、掘削のメカニズム自体は、第1実施形態にかかる掘削装置1と同様である。
【0054】
以上、走行機の足回りをクローラ式のものを例に説明したが、ホイール式の足回りを採用しても構わない。
【0055】
なお、第1の実施形態、第2の実施形態を問わず、岩盤など固い地質を掘削する場合には、図13に示す掘削スクリュー160を使用するとよい。
【0056】
この図13に示す掘削スクリュー160も、その基本構造は、上記の掘削スクリュー2,130と同様であり、回転軸161と、この回転軸161の外周部に設けられた螺旋羽根162とから構成されている。そして、この掘削スクリュー160の螺旋羽根162には、その外周縁に削岩用の硬質チップ163が取り付けられている。硬質チップ163は、螺旋羽根162の外周縁の延びる方向に関して、一定の間隔毎に取り付けられている。この図13に示す螺旋羽根162においては、回転軸161の軸方向における螺旋羽根162の1ピッチに4つ、即ち、90度毎に取り付けられている。もっとも、硬質チップ163を設ける間隔は、掘削する地質に応じて適宜変更すればよい。
【0057】
図14は、2つの掘削スクリュー170を並列に配置して、より幅広く掘削することができるものの一例を示している。
【0058】
各掘削スクリュー170は、回転軸171と、その外周部に設けられた螺旋羽根172とから構成されている。そして、2つの掘削スクリュー170は、その回転軸171が相互に平行をなして鉛直に延びるようにして配置され、かつ、螺旋羽根172同士が干渉しないように一定の間隔を空けて配置されている。
【0059】
また、これら掘削スクリュー170は、その周囲が排土カバー180により進行方向の後部側が覆われている。この排土カバー180も、その断面形状が円弧状をなす周壁部181と、螺旋羽根122の上端から一定の距離を隔てて配された半円状の天面部182と、回転軸171の下端部の位置に配された半円状の底面部183とから構成されている。
【0060】
そして、回転軸171は、螺旋羽根172の上端から一定の距離だけ離れた上部が天面部182に保持され、下端が底面部183に保持されている。
【0061】
この実施形態においては、第1及び第2の実施形態で採用しているシングルタイプのものに比べ、螺旋羽根172の幅、即ち、回転軸171の外周部から螺旋羽根172の外周縁までの寸法が小さく形成されている。これにより、掘削スクリュー170を駆動する駆動モータの負荷を低減させている。
【0062】
なお、図14には、2つの駆動スクリューを並列に配置したものを示しているが、これは限定されず、3本以上の複数の駆動スクリューを並列に配置してもよい。その場合、螺旋羽根の軸方向に関するピッチ、螺旋羽根の幅は、掘削する地質に応じて、駆動モータに過負荷がかからないように適宜設定すればよい。また、岩盤等の固い地質を掘削する場合には、各掘削スクリューの螺旋羽根の外周縁に硬質チップを取り付けたものを使用すればよい。
【0063】
なお、図14に示す例では、2つの掘削スクリューが1つの排土カバー内に収納されたものを示しているが、掘削スクリュー毎に排土カバーを設けたものを並列に配列して構成したものを採用しても構わない。
【図面の簡単な説明】
【0064】
【図1】本発明の第1実施形態にかかる掘削装置の使用状態を示す側面図。
【図2】図1に示す掘削装置の作動の状態を示す側面図。
【図3】掘削スクリューの回転軸の保持の一例を示す斜視図。
【図4】掘削装置で地面に縦坑を形成する工程を示す説明図。
【図5】地面に縦坑を形成する工程において、図4の状態からさらに進めた状態を示す説明図。
【図6】所望の深さの縦坑を形成し終えた状態を示す説明図。
【図7】排土カバーを取り付ける工程を示す説明図。
【図8】横溝を形成する様子、及び形成された横溝の溝底の状態を示す図。
【図9】横溝の状態を示す平面図。
【図10】アスファルトが破砕される様子を示す説明図。
【図11】第2実施形態にかかる掘削装置の側面図。
【図12】排土カバーを掘削スクリューへ着脱せしめるシリンダの取り付け状態を模型的に示す斜視図。
【図13】硬質チップが取り付けられた掘削スクリューの側面図。
【図14】2つの掘削スクリューを並列に配置した実施形態の正面図。
【符号の説明】
【0065】
1,100 掘削措置
2,130 掘削スクリュー
160,170 掘削スクリュー
10,140 排土カバー
180 排土カバー
20,122 スライド式ホルダ(保持体)
30 接続体
40 搬送コンベヤ
60 ダンプトラック(牽引手段)
163 硬質チップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉛直方向に延びる回転軸及びその周りに設けられた螺旋羽根を有し、地面から一定の深さまで地中に挿入され、駆動源により前記回転軸を中心に回転されて掘削する掘削スクリューと、
この掘削スクリューの周囲の後部側を覆い、前記螺旋羽根の外周縁と一定の隙間を空けて配された排土カバーと、
地面に接地させて地面を押し付けると共に、前記掘削スクリュー及び前記排土カバーが接続されてこれら掘削スクリュー及び排土カバーを保持する保持体と、を備え、
保持体を前部として、これら掘削スクリュー、排土カバー及び保持体を前進して地中を掘削することを特徴とする掘削装置。
【請求項2】
前記掘削スクリュー及び前記排土カバーをそれぞれ昇降せしめる昇降手段を備えたことを特徴する請求項1に記載の掘削装置。
【請求項3】
掘削により生ずる排土を前記掘削スクリューの上部から搬出する搬出手段を備えたことを特徴とする請求項1に記載の掘削装置。
【請求項4】
牽引車両に連結せしめる連結手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項5】
前記掘削スクリュー、前記排土カバー及び前記姿勢維持体と一体に構成され、これらを搬送せしめる自走手段を備えたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の掘削装置。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の掘削装置を使用して、地面に横溝を連続的に形成することを特徴とする溝の掘削方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2007−239262(P2007−239262A)
【公開日】平成19年9月20日(2007.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−61180(P2006−61180)
【出願日】平成18年3月7日(2006.3.7)
【出願人】(000231132)JFE工建株式会社 (54)