掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルト
【課題】パレットなどの上で積荷を結束する際に荷物表面や作業者を傷つけることが少なく、また、牽引時において牽引方向へのスリップが少なく、さらに運搬中においてもベルトが緩むことの少ない掛止部材及び該部材を用いた荷崩れ防止ベルトを提供する。
【解決手段】積荷Pの荷崩れを防止する荷崩防止ベルト20の一端部3を連結するための連結部1aと、積荷に巻回したベルト部材2の折り返し部を支持するための支持部1bとを備えた掛止部材10であって、積荷Pと対面する部位に、積荷への傷付けを防止するための緩衝部材1Bを配設したことを特徴とする。荷崩防止ベルト20は、ベルト部材2の一端部3に上記掛止部材10の連結部1aが連結されたものである。
【解決手段】積荷Pの荷崩れを防止する荷崩防止ベルト20の一端部3を連結するための連結部1aと、積荷に巻回したベルト部材2の折り返し部を支持するための支持部1bとを備えた掛止部材10であって、積荷Pと対面する部位に、積荷への傷付けを防止するための緩衝部材1Bを配設したことを特徴とする。荷崩防止ベルト20は、ベルト部材2の一端部3に上記掛止部材10の連結部1aが連結されたものである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば荷役用パレットや運搬用台車等の上に載置した積荷を結束する際に用いる掛止部材及び積荷を掛止部材から保護する保護部材並びに荷崩れ防止ベルトに係り、特に積荷の荷崩れを効果的に防止するとともに、積荷表面や作業者を傷つけることの少ない掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、荷役用パレットや運搬用台車あるいはトラックの荷台等に積載された多くの積荷を目的地まで荷崩れすることなく安全に運搬するために、パレット上の積荷相互の結束手段として、あるいは結束した積荷をパレット上に固定する手段として、荷崩れ防止ベルトが用いられている。
【0003】
このベルトには、通常、ベルトの牽引時及び牽引後のベルトの緩み止め効果を高めるため、ベルトの掛止金具(別名として、かん、バックル、通し金具)が用いられる。
【0004】
このような掛止金具を用いた従来の荷崩れ防止ベルトとしては、種々の形態のものがあるが、例えば特許文献1に記載の荷崩れ防止ベルトが知られている。
【0005】
図13の斜視図に示すように、この従来ベルト100は、略四角形からなる金属製のリング101の連結部101aに、積荷Pの周長よりも長いベルト102の一端部103を連結して一体にしたものである。
【0006】
積荷Pの結束に際しては、ベルト102の他端部104を積荷Pに周回させた後、他端部近傍の把持部材105をリング101に挿通し、その支持部101bで折り返し、牽引しつつ、ベルト表面に設けられた雄面ファスナー部材106に、他端部104付近に設けた雌面ファスナー部材107を取着するものである。
【0007】
このベルト100の特徴とするところは、作業者の牽引力によるベルト全体の牽引方向(図の右方向)への移動を防止するために、ベルト端部の裏面に例えばゴムからなる滑走防止部材108を設けた点にある。
【0008】
しかし、この特許文献1に記載の荷崩れ防止ベルト100は、その滑走防止部材108によりベルトの滑走を防止するものの、滑走防止部材108が牽引位置よりも離れた位置にあるため、結束後は他物との接触によって積荷表面に金具の傷跡が付くなどの問題があった。
【0009】
一方、特許文献2では、金具と積荷間に布製シート等の緩衝部材(敷物)をあてがうことにより、積荷との緩衝効果を高めることが記載されている。
【0010】
しかし、この「金具と積荷間にあてがう緩衝部材(敷物)」を用いれば当該問題は生じないものの、この緩衝部材(敷物)はベルト端部の裏面に基端部を縫着させてリング101の裏面を通りその先端部分にまで延在させた舌状のものであるため、その配置範囲から必然的に部材自体にある程度の大きさが必要となる。
【0011】
その結果、ベルトを含めた全体重量が増大せざるを得ない、また、使用時や折りたたみ収納時にはその配設厚さ分だけ嵩張るという不具合があった。何よりも、その構成からこの緩衝部材(敷物)をベルトに縫着する手間や作業時間が増えて、製造コストがかさむ欠点は否めない。
【0012】
これら作業工程や製造コストが増大する点は、特許文献1に記載の荷崩れ防止ベルト100に別途滑走防止部材108を取り付ける場合においても同様である。
【0013】
さらに、これら何れの場合においても作業者がベルト102を積荷Pに巻回する際には、リング101がベルトの端部にあるため、又は緩衝部材(敷物)とリング101とが一体的に密着していないため、リング101のみが作業者の手や顔に当たって怪我をする虞があった。
【特許文献1】特開2004−189292号公報(請求項1、図4の止滑部材7)
【特許文献2】特開2002−104494号公報(図1の保護シート部材3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、パレットや運搬台車上で積荷を結束する際に荷物表面や作業者を傷つけることが少なく、また、牽引時において牽引方向への荷崩れ防止ベルトのスリップが少なく、さらに、ベルト端部の裏面に他部材を縫着する等の余計な作業を要さず、従って荷崩れ防止ベルト自体の製造工程を変更することなく、且つどのような荷崩れ防止ベルトであっても、簡単にたちどころに緩衝効果を発揮せしめ得る掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルトを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の掛止部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷への傷付けを防止するための緩衝部材を配設したことを特徴とする(以下、第1発明という。)。
【0016】
請求項2に記載の掛止部材は、請求項1に記載の掛止部材において、緩衝部材が、着脱自在であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の掛止部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷に対する滑りを防止するための滑止部材を配設したことを特徴とする(以下、第2発明という。)。
【0018】
請求項4に記載の掛止部材は、請求項3に記載の掛止部材において、滑止部材が、着脱自在であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の掛止部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、請求項1又は2に記載の緩衝部材と、請求項3又は4に記載の滑止部材とを配設したことを特徴とする(以下、第3発明という。)。
【0020】
請求項6に記載の保護部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部に連結された掛止部材の前記積荷への傷付け又は前記掛止部材が前記積荷から滑ることを防止するための保護部材であって、
前記掛止部材と前記積荷との間に着脱自在に介設することを特徴とする(以下、第4発明という。)。
【0021】
請求項7に記載の荷崩れ防止ベルトは、ベルトの一端部に、請求項1乃至5のいずれかに記載の掛止部材を連結したことを特徴とする(以下、第5発明という。)。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の掛止部材によれば、この掛止部材の積荷と対面する一部又は全部の部位に、緩衝部材を配設したので、これを装着した荷崩れ防止ベルトで積荷を結束する際に、例えば堅い金属製係止リングと積荷との接触によって発生する積荷表面の擦り傷や凹み傷を防止することが可能となる。
【0023】
或いは結束作業に際してベルト端部のリング部が跳ね上がり、作業者の身体や顔を直撃しても、その衝撃を緩和してより軽傷な怪我又は無傷に抑えることが可能となる。
【0024】
さらに、どのような荷崩れ防止ベルトであっても従来の製造工程に従ってこの掛止部材を装着しさえすれば、ベルト本体に他部材を縫着する等の手間や作業コストを生じさせずに、簡単に緩衝効果を発揮せしめることが可能となる。
【0025】
請求項2に記載の掛止部材によれば、さらに緩衝部材が着脱自在に構成されているので、積荷表面に応じた材質の緩衝部材への交換や、損耗による交換を容易に行うことができる。
【0026】
さらにベルト使用後においては、緩衝部材のみを保管箱に集めて収納することができ、材質的に日光や雨風の悪影響を受けやすいゴム等の劣化を防止しつつ保管整理の便宜を図ることができ、又は緩衝部材が必要な積荷についてのみ保管箱から取り出して使用する等の如く、積荷表面の材質に併せて自在に通常のベルトとして又は緩衝用のベルトとして等の用途の選択・決定を行うことが可能となる。
【0027】
請求項3に記載の掛止部材によれば、この掛止部材の積荷と対面する一部又は全部の部位に、積荷に対する滑りを防止するための滑止部材を配設したので、これを装着した荷崩れ防止ベルトの牽引時においては、掛止部材と積荷の当接面に摩擦抵抗力が働き、ベルト牽引方向へのスリップが抑制され、また、運搬中においてもベルトの緩みが抑制される。
【0028】
さらに、ベルト本体部分に別途ゴム等の他部材を縫着する工程を設けることなく、どのような荷崩れ防止ベルトであっても、従来の製造工程に従って掛止部材を装着するだけで簡単に滑り止め効果を発揮せしめ、ベルト牽引時のスリップを防止することが可能となる。
【0029】
請求項4に記載の掛止部材によれば、さらに滑止部材が着脱自在に構成されているので、積荷表面に応じた材質の緩衝部材への交換や、損耗による交換を容易に行うことができる。
【0030】
請求項5に記載の掛止部材によれば、上記緩衝部材と滑止部材とを有するので、それぞれの部材の効果を併有することができる。
【0031】
請求項6に記載の保護部材によれば、牽引前に保護部材を単にベルトの掛止部材と積荷との間に差し込むだけで、牽引時の掛止部材と積荷との接触によって発生する積荷表面の擦り傷や凹み傷を容易に防止することができる。
【0032】
また、牽引中においては、この保護部材と積荷との当接面において摩擦抵抗力が働くので、ベルト全体の牽引方向へのスリップが抑制される。
【0033】
また、ベルト牽引後に掛止部材と積荷との間に保護部材を挿入しても良く、この場合は挿入した保護部材の厚み分だけベルト張力が増し、より一層積荷に対する結束力が強くなり、積荷運搬中の緩み発生が抑制される。
【0034】
さらに、この保護部材も積荷表面とベルトに応じた寸法、材質のものを数種類保管箱に保管して置くことにより、作業者が必要に応じて最適のものを使用でき、積荷表面とベルトの個々の事情に応じた対応が可能となる。
【0035】
請求項7に記載の荷崩れ防止ベルトによれば、上記いずれかの掛止部材を有するベルトとすることができるので、積荷又は作業者を傷付けることなく、また、牽引時の締付力を維持したままの状態で積荷を目的地まで荷崩れすることなく搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施例の図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
【0037】
図1は、本発明の掛止部材及び該部材を用いた荷崩れ防止ベルトの全体図で、(a)図はその平面図、(b)図はその側面図である。
【0038】
図中、符号10が第1発明及び第2発明の掛止部材(別名:かん、バックル、通し金具)を示し、符号20で示す部材(掛止部材1を含む。)が第5発明の荷崩れ防止ベルトを示している。
【0039】
また、図2は、図1の掛止部材10の部分拡大図で、(a)図はその平面図、(b)図はその側面図である。
【0040】
まず、第1発明の掛止部材について、図2を参照しながら説明する。
【0041】
図2において、第1発明に係る掛止部材10は、荷崩防止ベルト2の一端部をループ状に折り返し加工した折り返し部2aに連結するための連結部1aと、ベルト部材2を積荷Pに巻回した後のベルト他端部の折り返し部2bを支持するための支持部1bとを備えたリング1Aにおいて、積荷Pと対面する部位に、積荷Pへの傷付けを防止するための緩衝部材1Bを配設したものである。
【0042】
すなわち、リング1Aは、積荷Pを巻回したベルト部材2の折り返し部2bを、図1(b)の矢印方向に牽引することで、牽引効果を高めるための部材である。
【0043】
本図のものはリング1Aの形状として、四角形のものを用いているが、特に限定する必要はなく、四角形以外の多角形や、円形、楕円形等であっても良いことは勿論である。また、本図のリング1Aは、エンドレス状になっているが、後述する図8(b)で説明するように途中に切れ目1dがあっても良い。
【0044】
また、材質についても、ステンレス、ニッケルなどの金属製のものが好ましいが、強度があればプラスチック製その他の材質のものであっても良い。
【0045】
緩衝部材1Bとしては、本図のものは折り返し部2aと折り返し部2bとを連結する二つの連結部1cのそれぞれに、直径がDからなる円筒状のゴム部材を設けたものである。
【0046】
ここで、緩衝部材1Bの配設位置である「積荷Pと対面する部位に、」とは、本図のものは製作の便宜上、円筒状のものをリング1Aの積荷Pと対面しない部位にも設けているが、本発明の第1の目的は積荷Pへの傷付けを防止することにあるから、少なくとも積荷Pと対面する部位に設けられていれば良いことを意味する(実施例1、図6符合1Fの部材参照)。
【0047】
緩衝部材1Bの材質としては、上記ゴムの他、ポリウレタンその他の弾力性素材からなるものが好ましい。弾力性があると、たとえ掛止部材10が積荷表面Pや作業者の顔に当っても、緩衝効果が高くなるからである。
【0048】
素材としては、糸、ゴム紐、布、不織布等でもよく、これらのうちのいずれか又はこれらを組み合わせてリング1Aの接続部1cに直接巻き付け、適当な手段で固定することができる(実施例2、図7参照)。
【0049】
また、積荷表面の材質や形態によっては、例えばナイロン、ポリエステル繊維などの合成繊維に発泡体を吹き付け固定したものや、フエルト材、織物などをリング1Aに巻き付けても良い。
【0050】
緩衝部材1Bの配設数とその配設位置としては、図2のものは2個であるが、リング1Aの大きさ等に応じて1個又は3個以上の複数個とすることもでき、配設位置もリングの四隅等種々の箇所が挙げられる(実施例3、図8参照)。
【0051】
緩衝部材1Bの外形寸法としては、本発明の目的である傷付け防止効果を高めるには、リング1Aと積荷Pとの間において、リング1A全体を覆うとともに、積荷表面上で大きな面積を占めるようにするのが良い。
【0052】
なお、いずれの場合においても、緩衝部材1Bは積荷表面に応じた素材のものへの交換や損耗した場合の取替えに備えて、リング1Aの一部に切り欠きを入れ、その切り欠きから着脱自在にすることができる(実施例3、図8参照)。
【0053】
次に、第2発明の掛止部材について、再び図2を参照して説明する。
【0054】
第2発明の掛止部材10Aは、荷崩防止ベルト2の一端部をループ状に折り返し加工した折り返し部2aに連結するための連結部1aと、積荷Pに巻回した後のベルト他端部の折り返し部2bを支持するための支持部1bとを備えたリング1Aにおいて、積荷Pと対面する部位に、積荷に対する滑りを防止するための滑止部材1Cを配設したものである。
【0055】
すなわち、第2発明の掛止部材10Aは、前述の第1発明の掛止部材10を例にとれば、第1発明のリング1Aと同じものをリングとして用い、積荷Pと対面する部位に、第1発明の緩衝部材1Bに代えて、積荷に対する滑りを防止するための滑止部材1Cを設けたものである。
【0056】
滑止部材1Cの素材としては、積荷に対する滑りを防止できるものであれば特に限定されないが、例えばゴム、ポリウレタンその他の密着性素材からなるものが好ましい。密着性があると、積荷表面の材質、状況等にもよるが、ベルト牽引時において滑止部材1Cが積荷表面に密着し、より一層積荷表面でのベルトのスリップが少なく、運搬中においてもベルトの緩みが少なくなるからである。
【0057】
さらに、滑止部材1Cが弾力性素材からなるものであると、積荷を結束する際に例えば堅い金属製のリングと荷物とが接触して積荷表面に擦り傷や凹み傷ができる等の不具合をより減少せしめ又は解消し、或いは結束作業に際してベルト端部の堅い金属リング部が跳ね上がり、作業者の身体や顔を直撃してもより軽傷に抑えることが可能となる。
【0058】
滑止部材1Cの断面形状としては、図に示す円筒状の他、角柱状にすることもでき、また、積荷P表面上での上下左右方向への移動を防止するために、表面にローロット目状の凹凸加工を施しても良い。
【0059】
なお、滑止部材1Cを仮に円形断面のものとした場合は、牽引後に常時、滑止部材1Cを積荷表面に接触させるためには、滑止部材1Cの外形寸法に次の条件があることが好ましい。
【0060】
これを図2(b)の側面図を用いて説明すると、滑止部材1Cの直径Dは、ベルトの厚みをtとし、リング1Aのリング径をdとすると、次の式を満足することが好ましい。
【0061】
D>d+t
この寸法関係が成立する限り、リング1Aの折り返し部1a、1bにおいて、滑止部材1Cは常時積荷表面に接触するので、積荷表面に対する滑り止め効果を発揮することができる。なお、緩衝部材1Bについては、積荷に対する緩衝効果さえあれば良いので、上式の場合に限られず、その逆であっても何ら影響はない。
【0062】
また、第1発明と同様理由により、滑止部材1Cは着脱自在とすることができる。
【0063】
次に、第3発明の掛止部材について、図3を参照して説明する。
【0064】
図3は、第3発明の掛止部材の一例を示すもので、(a)図はその斜視図、(b)図は(a)図の部材をA−A方向から見た縦断面図である。
【0065】
図に示すように、第3発明の掛止部材10Bは、一つのリング1Aに、第1発明の掛止部材の緩衝部材1Dと、第2発明の掛止部材の滑止部材1Eの両方の部材を配設したものである。
【0066】
このように、緩衝機能と滑り止め機能を有する部材を一つのリング1Aに同時に装着すると、その効果も一つの掛止部材でありながら両方の効果が同時に得られる。
【0067】
緩衝部材1Dと滑止部材1Eの素材としては、前述の第1、第2発明のものを使用でき、その大きさは、積荷Pとの対向面が大きいものが良い。また、図のものは各部材をリング1Aに回動自在に取り付けているが、着脱できるものであっても良い。
【0068】
なお、図に示す各部材の構成とその作用効果は、細部に渡るのでここでの説明は省略し、実施例5で説明する。
【0069】
次に、第4発明の保護部材について、図4を参照して説明する。
【0070】
図4は、第4発明の保護部材の一例を示すもので、(a)図はその斜視図、(b)図は(a)図の保護部材をB−B方向から見た縦断面図である。
【0071】
保護部材15は、シート状の緩衝部材1Mに、外形が略「コ」字状形状をした金属製又はプラスチック製のフック8aを有する差込部材8を、例えば鳩目、接着等の適当な手段で固定したものである。
【0072】
差込部材8の素材としては、前述した布、ゴム又はポリウレタン等の緩衝機能又は滑止機能を有するものを用いることができ、 その形態はシート体の他、発泡体等であっても良い。外形寸法としては、リング1Aの全体のみならず、ベルトの一端部3と他端部4範囲まで広く覆うものが良い。
【0073】
差込部材8は、リング1Aの全幅よりも広い間隔Wの位置に設けられたベルト20の幅方向に伸びる二つの「コ」字状先端部8bを有し、その断面形状は、(b)図に示すように先端部に行くに従いテーパ状に形成されている。
【0074】
差込部材8の使用に際しては、積荷Pに荷崩れ防止ベルト20を巻回する前にフック8aをリング1Aに掛け止めして保護部材15の全体を固定するか、ベルト20を積荷Pに巻回後にベルトと積荷との間に保護部材15を作業者が差し入れて、フック8aをリング1Aの連結部1cに掛けて固定する。
【0075】
なお、図ではフック8aはリング1Aに掛け止めできるようにしたが、「コ」字状先端部8bの間隔Wを広くし、ベルト長さ方向に二つのフック8aを設けて、ベルト20に直接掛けるようにしても良い。
【0076】
この保護部材15によれば、リング1Aの全面及び崩れ防止ベルト20の折り返し部2a、2bは勿論、ベルトの一端部3及び他端部4までの広い範囲を積荷表面に対して覆うことができるから、掛止部材15が積荷表面を傷つけることが抑制される。
【0077】
また、保護部材15をベルト巻回前にリング1Aに装着してベルト2を図の矢印方向に牽引する場合は、ベルト牽引時にベルト他端部4が差込部材8の表面で滑るので、ベルト部材2の牽引作業が容易となる。
【0078】
また、牽引後に保護部材15を積荷Pとの間に差し入れる場合は、差込部材8の先端部の断面がテーパ状に形成されているので、差し込み作業が容易である。
【0079】
さらに、差し込んだ厚み分だけベルト張力が増すことになり、さらなる牽引力向上効果を奏する。
【0080】
最後に、第5発明の荷崩れ防止ベルトについて、再び図1を参照して説明する。
【0081】
図1(a)に示すように、本発明の荷崩れ防止ベルト20は、前述したいずれかの掛止部材10、10A、10Bなどの連結部1aに、ベルト部材2の一端部3を連結して一体にしたものである。
【0082】
ここで、ベルト部材2は、積荷Pを周回する長さを有したものであればどのようなものでも良い。ベルト部材2の素材としては、特に限定されないが、例えばナイロン、アクリルなどの化学繊維をベルト状に織成した織布や、ゴムベルトなどを用いることができる。
【0083】
なお、本発明で言う「ベルト部材」とは、便宜上の呼称で、ベルトの他、例えばロープ、紐、ワイヤー或いはシート材その他の長尺体も含まれる。
【0084】
一方、その他端部4には、ループ状の把持部材5が取り付けられ、その近傍には雄面ファスナー部材7と、所定間隔を隔てて雌面ファスナー部材6とが固定される。
【0085】
次に、図5を参照して、図1及び図2で説明した第1発明に係る本発明の掛止部材10と、荷崩れ防止ベルト20の使用方法を説明する。
【0086】
図5は、荷崩れ防止ベルト20(掛止部材10を含む。)を用いて段ボール箱状の複数の積荷Pを結束している状態を示した斜視図である。
【0087】
まず、従来の係止フックを備えた荷ベルト同様に、ベルト部材5を積荷Pに周回させて、把持部材5を掛止部材10に挿通し、支持部1bを折り返し支点として図の右方向に牽引してベルト部材2を引き締める。このとき、牽引力により掛止部材10が強固に積荷表面に押圧されても、その緩衝効果により積荷表面を傷つけることがない。
【0088】
また、掛止部材10に緩衝部材1Bに代えて滑止部材1Cが装着されている場合は、その滑り止め効果により、牽引力が働いても荷崩れ防止ベルト20の全体が牽引方向に移動しにくくなる。
【0089】
ベルト部材2が十分引き締められた後、雄面ファスナー部材7が雌面ファスナー部材6に取着され、結束が完了する。
【0090】
また、滑止部材1Bの場合は、その密着性又は弾力性により、強固に積荷表面を把持しつづけるから、積荷の搬送中においてもベルトが緩むことがない。
【0091】
以下に、本発明の掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルトの実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0092】
図6は、前述した第1発明の実施例である。なお、本実施例において、前述の図1及び図2に登場する符号と同一符号のものは、それらの部材と同一部材であることを示している(以下の実施例も同様である。)。
【0093】
図に示すように、この掛止部材10Cは、リング1Aにおいて、連結部1aと折り返し部2bとの接続部1cに、積荷Pと対面する態様で積荷への傷付けを防止するため、弾力性を有する断面が略矩形のゴム製の緩衝部材1Fをリング1Aの積荷Pと対面する部位である積荷P側に集中して設け、接着固定したものである。
【0094】
これにより、本発明の効果を奏するとともに、緩衝部材1Fの使用量を節約することができる。また、緩衝部材1Fがゴム製であるから、第2発明の滑り止め効果も併せて有する。
【実施例2】
【0095】
図7は、第1発明の掛止部材の別の実施例である。
【0096】
図に示すように、この実施例の掛止部材10Dは、上記実施例1の緩衝部材1Fに代えて、緩衝部材1Gとしてゴム紐をリング1Aの二つの接続部1cのそれぞれに直接巻き付けて固定したものである。
【0097】
本実施例のような紐状体を用いると、安価かつ簡易に緩衝部材1Gを取着できる。
【実施例3】
【0098】
図8は、第1発明の掛止部材のさらに別の実施例である。
【0099】
この実施例の掛止部材10Eのリング1Hは、略8角形をしており、その連結部1cの四隅に、緩衝部材1Iとして紐状のポリウレタンを巻回して固定したものである。
【0100】
このような形態の緩衝部材1Iによれば、少量の紐状体によっても簡易に緩衝部材1Iを構成することができる。
【0101】
なお、緩衝部材1Iを紐状体でなく、各々独立した一個の固体として形成しても良く、その場合にはリング1Aの切れ目1dから挿入して取着させ、また、緩衝部材が劣化した場合にはこの切れ目から新品と交換することとなる。
【実施例4】
【0102】
図9は、第2発明の掛止部材の実施例である。
【0103】
図に示すように、この掛止部材10Fは、矩形状のリング1Aの二つの接続部1cのうちの一つの接続部1cに、滑止部材1Jとして矩形状のゴム板をその一端部が接続部1cを中心に180度回動自在となるように装着した。
【0104】
また、(b)図の二点差線で示すように、ゴム板(滑止部材1J)の接続部1cから対辺までの長さは、ゴム板が180度回動したときにもう一つの対面する接続部1cを超える長さとした。
【0105】
なお、符号1eは、ゴム板1Jが180度回転した時に、積荷P表面と全面が接触するようにするためのスリットで、その内幅は回動後に容易にゴム板1Jが接続部1cから離脱できないように締まり嵌めになっている。
【0106】
滑止部材1Jとして、このようなゴム板を用いるとその面積が大きいため、積荷P表面からのベルト部材2のスリップを一層有効に防止することができる。
【0107】
また、ベルト部材2をリング1Aに挿通する際には、ゴム板をリング1Aの外側に回動させればこれが挿通作業の邪魔になることはなく、一方、ベルト部材を挿通し終えた時点でゴム板をリング1Aの内側に回動させてベルトを牽引することができるため、ベルト部材2の挿通作業性を向上させることができる。
【実施例5】
【0108】
前述した第3発明の掛止部材10Bを再び図3に基づいて説明する。
【0109】
前述したように、掛止部材10Bは、一つのリング1Aのそれぞれの接続部1cに、第1発明の掛止部材の緩衝部材1Dと、第2発明の掛止部材の滑止部材1Eの両方の部材を配設したものである。
【0110】
緩衝部材1Dとしては、板状部材1dの一端部に突起部1eを接続した断面が「L」字状のゴム製のものを、滑止部材1Eとしては、同様断面形状をしたポリウレタン製の滑止部材1Eを、いずれもリング1Aの接続部1cを中心に90度回動可能に装着した。
【0111】
また、緩衝部材1Dと滑止部材1Eにおけるリング1Aの中心位置は、各部材の縦断面内において、板状部材1dの底面からは肉厚の1/2(寸法T)の位置であるが、突起部1eの側面からはより大なる寸法に偏位した位置(寸法H、H>T)とした。
【0112】
これら緩衝部材1Dと滑止部材1Eの使用に際しては、ベルト部材2の牽引後に必要に応じて、緩衝部材1Dあるいは滑止部材1E又は双方を90度回動して(b)図の二点鎖線位置まで引き起こして使用する。
【0113】
本実施例の掛止部材によれば、緩衝効果と滑止効果の双方を有するとともに、二点鎖線位置に引き起こしたときにベルト部材2の全体を積荷Pの表面から寸法H分だけ引き離した位置に固定するから、その引き離し分だけベルト張力が増し、さらに積荷を引き締める効果を奏する。
【実施例6】
【0114】
図10は、前述した第1乃至第3発明の掛止部材の変形例である。
【0115】
この掛止部材10Gは、滑止部材1Lとして、縦断面が略台形をしたゴム製のものを用い、これを矩形断面のリング1Kの4箇所のコーナー部1gも含めてリング1Kの相対する2つの連結辺1f同士を接続するとともに、リング1Kの周囲を覆うようにしたものである。
【0116】
但し、リング1Kの連結部1dと支持部1eの中央部は、ベルト部材2の折り返し部2a、2bの接続のために露出されており、その近傍の滑止部材1Lも同様目的のために操作用孔1hが設けられている。
【0117】
このような構成にすると、リング1Kの相対する2つの連結辺1f同士を接続したので掛止部材10Gの積荷Pとの接触面積が広くなり、積荷Pに対する滑り止め効果が向上するうえ、四隅のコーナー部1gが滑止部材1Lで覆われるので、積荷表面又は作業者の顔等を傷つけることがかなり抑制される。
【0118】
以上の説明は、滑止部材として説明したが、緩衝部材として同様の構成にして第3発明の掛止部材を構成しても良い。
【実施例7】
【0119】
図11は、前述した第5発明の荷崩れ防止ベルトの実施例である。
【0120】
図の荷崩れ防止ベルト20Aの掛止部材10Gは、正八角形の環状リング1Nの相対する辺に、直径がDの円筒状ゴム部材を滑止部材1Cとして4個配置するとともに、滑止部材1Cの間にベルト部材2の一端部3を例えばステッチなどの適当な手段で連結したものである。
【0121】
使用に際しては、積荷Pが例えば立方体又は直方体状に積み上げられている場合はその積荷の天面に当該部材を配置し、他端部4を積荷Pに周回させて再び環状リング1Nの対向辺に引き寄せ、リングに挿通後、牽引して結束する。
【0122】
本実施例の荷崩れ防止ベルト20Aによれば、他端部4の積荷周回中は4個の滑止部材1Cが積荷の天面において、その摩擦力により掛止部材10の全体を固定するから、ベルト部材2の全体がずれることが少なくなる。
【0123】
また、2本のベルト部材2が積荷を十の字状にほぼ同時に結束できるので、作業の効率化を図ることができる。さらに、滑止部材1Cは緩衝部材としても作用するから、積荷表面を傷付けることが少ない。
【実施例8】
【0124】
図12は、前述した第5発明の荷崩れ防止ベルトの別の実施例である。
【0125】
上記実施例7の荷崩れ防止ベルト20Aは、リング1Nにベルト部材2を2本連結したものであるが、本実施例のものはベルト部材2を3本連結した例である。
【0126】
図に示すように、本実施例の荷崩れ防止ベルト20Bは、一枚のシート9の左側に、図1で説明した掛止部材10にベルト部材2を連結したものを3本並行にして接続し、一方シート9の右側には、雌面ファスナー部材6、雄面ファスナー部材7及び把持部材5を有するベルト部材2を3本平行に接続して一体化した。
【0127】
この荷崩れ防止ベルト20Bによれば、上下方向の幅が広いから、結束すべき積荷の天地寸法が長いときでも迅速に結束でき、掛止部材に上記実施例のいずれかのものを用いれば上述したそれぞれの緩衝効果又は滑止効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の掛止部材、ベルト部材及びこれら部材を用いた荷崩れ防止ベルトは、物流分野における荷崩れ防止用の結束部材として好適のものであるが、当該分野に限定されるものではない。すなわち、複数の部材相互を結束、固定するものならばあらゆる分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明に係る第1発明の掛止部材が用いられている、第5発明の荷崩れ防止ベルトの図面であり、図1(a)はその平面図、図1(b)はその側面図である。
【図2】本発明に係る第1及び第2発明の掛止部材の一例図面で、図2(a)はその平面図、図2(b)はその側面図である。
【図3】本発明に係る第3発明の掛止部材の一例図面で、図3(a)はその斜視図、図3(b)は図3(a)の掛止部材のA−A方向断面図である。
【図4】本発明に係る第4発明の保護部材の一例図面で、図4(a)はその斜視図、図4(b)は図4(a)の部材のB−B方向断面図である。
【図5】図1の掛止部材と荷崩れ防止ベルトとを用いて、積荷相互間を固定している状態を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る第1発明の掛止部材の別例の図面で、図6(a)はその斜視図、図6(b)は図6(a)の部材のC−C方向断面図である。
【図7】本発明に係る第1発明の掛止部材のさらに別例の斜視図である。
【図8】本発明に係る第1発明の掛止部材のさらに別例の斜視図である。
【図9】本発明に係る第2発明の掛止部材の一例の図面で、図9(a)は掛止部材の斜視図、図9(b)はそのD−D方向断面図である。
【図10】本発明に係る第1及び第2発明の変形例の図面で、図10(a)は、その斜視図、 図10(b)は、その側面図である。
【図11】本発明に係る第5発明の荷崩れ防止ベルトの別例の平面図である。
【図12】本発明に係る第5発明の荷崩れ防止ベルトのさらに別例の平面図である。
【図13】従来の掛止部材と荷崩れ防止ベルトとを用いて、積荷相互間を固定している状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
1a、1d 連結部
1b、1e 支持部(折り返し部)
1c、1f 接続部
1A、1H、1K、1N リング
1B、1D、1E、1F、1G、1I、1M 緩衝部材
1C、1J、1L 滑止部材
2 ベルト部材
2a、2b 折り返し部
3 一端部
4 他端部
5 把持部材
6 雌面ファスナー部材
7 雄面ファスナー部材
8 差込部材
9 シート
10、10A〜10G 掛止部材(本発明)
15、15A 保護部材(本発明)
20、20A、20B 荷崩れ防止ベルト(本発明)
100 荷崩れ防止ベルト(従来品)
108 滑走防止部材
P 積荷
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば荷役用パレットや運搬用台車等の上に載置した積荷を結束する際に用いる掛止部材及び積荷を掛止部材から保護する保護部材並びに荷崩れ防止ベルトに係り、特に積荷の荷崩れを効果的に防止するとともに、積荷表面や作業者を傷つけることの少ない掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルトに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、荷役用パレットや運搬用台車あるいはトラックの荷台等に積載された多くの積荷を目的地まで荷崩れすることなく安全に運搬するために、パレット上の積荷相互の結束手段として、あるいは結束した積荷をパレット上に固定する手段として、荷崩れ防止ベルトが用いられている。
【0003】
このベルトには、通常、ベルトの牽引時及び牽引後のベルトの緩み止め効果を高めるため、ベルトの掛止金具(別名として、かん、バックル、通し金具)が用いられる。
【0004】
このような掛止金具を用いた従来の荷崩れ防止ベルトとしては、種々の形態のものがあるが、例えば特許文献1に記載の荷崩れ防止ベルトが知られている。
【0005】
図13の斜視図に示すように、この従来ベルト100は、略四角形からなる金属製のリング101の連結部101aに、積荷Pの周長よりも長いベルト102の一端部103を連結して一体にしたものである。
【0006】
積荷Pの結束に際しては、ベルト102の他端部104を積荷Pに周回させた後、他端部近傍の把持部材105をリング101に挿通し、その支持部101bで折り返し、牽引しつつ、ベルト表面に設けられた雄面ファスナー部材106に、他端部104付近に設けた雌面ファスナー部材107を取着するものである。
【0007】
このベルト100の特徴とするところは、作業者の牽引力によるベルト全体の牽引方向(図の右方向)への移動を防止するために、ベルト端部の裏面に例えばゴムからなる滑走防止部材108を設けた点にある。
【0008】
しかし、この特許文献1に記載の荷崩れ防止ベルト100は、その滑走防止部材108によりベルトの滑走を防止するものの、滑走防止部材108が牽引位置よりも離れた位置にあるため、結束後は他物との接触によって積荷表面に金具の傷跡が付くなどの問題があった。
【0009】
一方、特許文献2では、金具と積荷間に布製シート等の緩衝部材(敷物)をあてがうことにより、積荷との緩衝効果を高めることが記載されている。
【0010】
しかし、この「金具と積荷間にあてがう緩衝部材(敷物)」を用いれば当該問題は生じないものの、この緩衝部材(敷物)はベルト端部の裏面に基端部を縫着させてリング101の裏面を通りその先端部分にまで延在させた舌状のものであるため、その配置範囲から必然的に部材自体にある程度の大きさが必要となる。
【0011】
その結果、ベルトを含めた全体重量が増大せざるを得ない、また、使用時や折りたたみ収納時にはその配設厚さ分だけ嵩張るという不具合があった。何よりも、その構成からこの緩衝部材(敷物)をベルトに縫着する手間や作業時間が増えて、製造コストがかさむ欠点は否めない。
【0012】
これら作業工程や製造コストが増大する点は、特許文献1に記載の荷崩れ防止ベルト100に別途滑走防止部材108を取り付ける場合においても同様である。
【0013】
さらに、これら何れの場合においても作業者がベルト102を積荷Pに巻回する際には、リング101がベルトの端部にあるため、又は緩衝部材(敷物)とリング101とが一体的に密着していないため、リング101のみが作業者の手や顔に当たって怪我をする虞があった。
【特許文献1】特開2004−189292号公報(請求項1、図4の止滑部材7)
【特許文献2】特開2002−104494号公報(図1の保護シート部材3)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点を解決するためになされたもので、パレットや運搬台車上で積荷を結束する際に荷物表面や作業者を傷つけることが少なく、また、牽引時において牽引方向への荷崩れ防止ベルトのスリップが少なく、さらに、ベルト端部の裏面に他部材を縫着する等の余計な作業を要さず、従って荷崩れ防止ベルト自体の製造工程を変更することなく、且つどのような荷崩れ防止ベルトであっても、簡単にたちどころに緩衝効果を発揮せしめ得る掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルトを提供することを目的する。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の掛止部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷への傷付けを防止するための緩衝部材を配設したことを特徴とする(以下、第1発明という。)。
【0016】
請求項2に記載の掛止部材は、請求項1に記載の掛止部材において、緩衝部材が、着脱自在であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に記載の掛止部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷に対する滑りを防止するための滑止部材を配設したことを特徴とする(以下、第2発明という。)。
【0018】
請求項4に記載の掛止部材は、請求項3に記載の掛止部材において、滑止部材が、着脱自在であることを特徴とする。
【0019】
請求項5に記載の掛止部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、請求項1又は2に記載の緩衝部材と、請求項3又は4に記載の滑止部材とを配設したことを特徴とする(以下、第3発明という。)。
【0020】
請求項6に記載の保護部材は、積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部に連結された掛止部材の前記積荷への傷付け又は前記掛止部材が前記積荷から滑ることを防止するための保護部材であって、
前記掛止部材と前記積荷との間に着脱自在に介設することを特徴とする(以下、第4発明という。)。
【0021】
請求項7に記載の荷崩れ防止ベルトは、ベルトの一端部に、請求項1乃至5のいずれかに記載の掛止部材を連結したことを特徴とする(以下、第5発明という。)。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の掛止部材によれば、この掛止部材の積荷と対面する一部又は全部の部位に、緩衝部材を配設したので、これを装着した荷崩れ防止ベルトで積荷を結束する際に、例えば堅い金属製係止リングと積荷との接触によって発生する積荷表面の擦り傷や凹み傷を防止することが可能となる。
【0023】
或いは結束作業に際してベルト端部のリング部が跳ね上がり、作業者の身体や顔を直撃しても、その衝撃を緩和してより軽傷な怪我又は無傷に抑えることが可能となる。
【0024】
さらに、どのような荷崩れ防止ベルトであっても従来の製造工程に従ってこの掛止部材を装着しさえすれば、ベルト本体に他部材を縫着する等の手間や作業コストを生じさせずに、簡単に緩衝効果を発揮せしめることが可能となる。
【0025】
請求項2に記載の掛止部材によれば、さらに緩衝部材が着脱自在に構成されているので、積荷表面に応じた材質の緩衝部材への交換や、損耗による交換を容易に行うことができる。
【0026】
さらにベルト使用後においては、緩衝部材のみを保管箱に集めて収納することができ、材質的に日光や雨風の悪影響を受けやすいゴム等の劣化を防止しつつ保管整理の便宜を図ることができ、又は緩衝部材が必要な積荷についてのみ保管箱から取り出して使用する等の如く、積荷表面の材質に併せて自在に通常のベルトとして又は緩衝用のベルトとして等の用途の選択・決定を行うことが可能となる。
【0027】
請求項3に記載の掛止部材によれば、この掛止部材の積荷と対面する一部又は全部の部位に、積荷に対する滑りを防止するための滑止部材を配設したので、これを装着した荷崩れ防止ベルトの牽引時においては、掛止部材と積荷の当接面に摩擦抵抗力が働き、ベルト牽引方向へのスリップが抑制され、また、運搬中においてもベルトの緩みが抑制される。
【0028】
さらに、ベルト本体部分に別途ゴム等の他部材を縫着する工程を設けることなく、どのような荷崩れ防止ベルトであっても、従来の製造工程に従って掛止部材を装着するだけで簡単に滑り止め効果を発揮せしめ、ベルト牽引時のスリップを防止することが可能となる。
【0029】
請求項4に記載の掛止部材によれば、さらに滑止部材が着脱自在に構成されているので、積荷表面に応じた材質の緩衝部材への交換や、損耗による交換を容易に行うことができる。
【0030】
請求項5に記載の掛止部材によれば、上記緩衝部材と滑止部材とを有するので、それぞれの部材の効果を併有することができる。
【0031】
請求項6に記載の保護部材によれば、牽引前に保護部材を単にベルトの掛止部材と積荷との間に差し込むだけで、牽引時の掛止部材と積荷との接触によって発生する積荷表面の擦り傷や凹み傷を容易に防止することができる。
【0032】
また、牽引中においては、この保護部材と積荷との当接面において摩擦抵抗力が働くので、ベルト全体の牽引方向へのスリップが抑制される。
【0033】
また、ベルト牽引後に掛止部材と積荷との間に保護部材を挿入しても良く、この場合は挿入した保護部材の厚み分だけベルト張力が増し、より一層積荷に対する結束力が強くなり、積荷運搬中の緩み発生が抑制される。
【0034】
さらに、この保護部材も積荷表面とベルトに応じた寸法、材質のものを数種類保管箱に保管して置くことにより、作業者が必要に応じて最適のものを使用でき、積荷表面とベルトの個々の事情に応じた対応が可能となる。
【0035】
請求項7に記載の荷崩れ防止ベルトによれば、上記いずれかの掛止部材を有するベルトとすることができるので、積荷又は作業者を傷付けることなく、また、牽引時の締付力を維持したままの状態で積荷を目的地まで荷崩れすることなく搬送することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0036】
以下、本発明の実施例の図面を参照して、本発明を実施するための形態について説明する。
【0037】
図1は、本発明の掛止部材及び該部材を用いた荷崩れ防止ベルトの全体図で、(a)図はその平面図、(b)図はその側面図である。
【0038】
図中、符号10が第1発明及び第2発明の掛止部材(別名:かん、バックル、通し金具)を示し、符号20で示す部材(掛止部材1を含む。)が第5発明の荷崩れ防止ベルトを示している。
【0039】
また、図2は、図1の掛止部材10の部分拡大図で、(a)図はその平面図、(b)図はその側面図である。
【0040】
まず、第1発明の掛止部材について、図2を参照しながら説明する。
【0041】
図2において、第1発明に係る掛止部材10は、荷崩防止ベルト2の一端部をループ状に折り返し加工した折り返し部2aに連結するための連結部1aと、ベルト部材2を積荷Pに巻回した後のベルト他端部の折り返し部2bを支持するための支持部1bとを備えたリング1Aにおいて、積荷Pと対面する部位に、積荷Pへの傷付けを防止するための緩衝部材1Bを配設したものである。
【0042】
すなわち、リング1Aは、積荷Pを巻回したベルト部材2の折り返し部2bを、図1(b)の矢印方向に牽引することで、牽引効果を高めるための部材である。
【0043】
本図のものはリング1Aの形状として、四角形のものを用いているが、特に限定する必要はなく、四角形以外の多角形や、円形、楕円形等であっても良いことは勿論である。また、本図のリング1Aは、エンドレス状になっているが、後述する図8(b)で説明するように途中に切れ目1dがあっても良い。
【0044】
また、材質についても、ステンレス、ニッケルなどの金属製のものが好ましいが、強度があればプラスチック製その他の材質のものであっても良い。
【0045】
緩衝部材1Bとしては、本図のものは折り返し部2aと折り返し部2bとを連結する二つの連結部1cのそれぞれに、直径がDからなる円筒状のゴム部材を設けたものである。
【0046】
ここで、緩衝部材1Bの配設位置である「積荷Pと対面する部位に、」とは、本図のものは製作の便宜上、円筒状のものをリング1Aの積荷Pと対面しない部位にも設けているが、本発明の第1の目的は積荷Pへの傷付けを防止することにあるから、少なくとも積荷Pと対面する部位に設けられていれば良いことを意味する(実施例1、図6符合1Fの部材参照)。
【0047】
緩衝部材1Bの材質としては、上記ゴムの他、ポリウレタンその他の弾力性素材からなるものが好ましい。弾力性があると、たとえ掛止部材10が積荷表面Pや作業者の顔に当っても、緩衝効果が高くなるからである。
【0048】
素材としては、糸、ゴム紐、布、不織布等でもよく、これらのうちのいずれか又はこれらを組み合わせてリング1Aの接続部1cに直接巻き付け、適当な手段で固定することができる(実施例2、図7参照)。
【0049】
また、積荷表面の材質や形態によっては、例えばナイロン、ポリエステル繊維などの合成繊維に発泡体を吹き付け固定したものや、フエルト材、織物などをリング1Aに巻き付けても良い。
【0050】
緩衝部材1Bの配設数とその配設位置としては、図2のものは2個であるが、リング1Aの大きさ等に応じて1個又は3個以上の複数個とすることもでき、配設位置もリングの四隅等種々の箇所が挙げられる(実施例3、図8参照)。
【0051】
緩衝部材1Bの外形寸法としては、本発明の目的である傷付け防止効果を高めるには、リング1Aと積荷Pとの間において、リング1A全体を覆うとともに、積荷表面上で大きな面積を占めるようにするのが良い。
【0052】
なお、いずれの場合においても、緩衝部材1Bは積荷表面に応じた素材のものへの交換や損耗した場合の取替えに備えて、リング1Aの一部に切り欠きを入れ、その切り欠きから着脱自在にすることができる(実施例3、図8参照)。
【0053】
次に、第2発明の掛止部材について、再び図2を参照して説明する。
【0054】
第2発明の掛止部材10Aは、荷崩防止ベルト2の一端部をループ状に折り返し加工した折り返し部2aに連結するための連結部1aと、積荷Pに巻回した後のベルト他端部の折り返し部2bを支持するための支持部1bとを備えたリング1Aにおいて、積荷Pと対面する部位に、積荷に対する滑りを防止するための滑止部材1Cを配設したものである。
【0055】
すなわち、第2発明の掛止部材10Aは、前述の第1発明の掛止部材10を例にとれば、第1発明のリング1Aと同じものをリングとして用い、積荷Pと対面する部位に、第1発明の緩衝部材1Bに代えて、積荷に対する滑りを防止するための滑止部材1Cを設けたものである。
【0056】
滑止部材1Cの素材としては、積荷に対する滑りを防止できるものであれば特に限定されないが、例えばゴム、ポリウレタンその他の密着性素材からなるものが好ましい。密着性があると、積荷表面の材質、状況等にもよるが、ベルト牽引時において滑止部材1Cが積荷表面に密着し、より一層積荷表面でのベルトのスリップが少なく、運搬中においてもベルトの緩みが少なくなるからである。
【0057】
さらに、滑止部材1Cが弾力性素材からなるものであると、積荷を結束する際に例えば堅い金属製のリングと荷物とが接触して積荷表面に擦り傷や凹み傷ができる等の不具合をより減少せしめ又は解消し、或いは結束作業に際してベルト端部の堅い金属リング部が跳ね上がり、作業者の身体や顔を直撃してもより軽傷に抑えることが可能となる。
【0058】
滑止部材1Cの断面形状としては、図に示す円筒状の他、角柱状にすることもでき、また、積荷P表面上での上下左右方向への移動を防止するために、表面にローロット目状の凹凸加工を施しても良い。
【0059】
なお、滑止部材1Cを仮に円形断面のものとした場合は、牽引後に常時、滑止部材1Cを積荷表面に接触させるためには、滑止部材1Cの外形寸法に次の条件があることが好ましい。
【0060】
これを図2(b)の側面図を用いて説明すると、滑止部材1Cの直径Dは、ベルトの厚みをtとし、リング1Aのリング径をdとすると、次の式を満足することが好ましい。
【0061】
D>d+t
この寸法関係が成立する限り、リング1Aの折り返し部1a、1bにおいて、滑止部材1Cは常時積荷表面に接触するので、積荷表面に対する滑り止め効果を発揮することができる。なお、緩衝部材1Bについては、積荷に対する緩衝効果さえあれば良いので、上式の場合に限られず、その逆であっても何ら影響はない。
【0062】
また、第1発明と同様理由により、滑止部材1Cは着脱自在とすることができる。
【0063】
次に、第3発明の掛止部材について、図3を参照して説明する。
【0064】
図3は、第3発明の掛止部材の一例を示すもので、(a)図はその斜視図、(b)図は(a)図の部材をA−A方向から見た縦断面図である。
【0065】
図に示すように、第3発明の掛止部材10Bは、一つのリング1Aに、第1発明の掛止部材の緩衝部材1Dと、第2発明の掛止部材の滑止部材1Eの両方の部材を配設したものである。
【0066】
このように、緩衝機能と滑り止め機能を有する部材を一つのリング1Aに同時に装着すると、その効果も一つの掛止部材でありながら両方の効果が同時に得られる。
【0067】
緩衝部材1Dと滑止部材1Eの素材としては、前述の第1、第2発明のものを使用でき、その大きさは、積荷Pとの対向面が大きいものが良い。また、図のものは各部材をリング1Aに回動自在に取り付けているが、着脱できるものであっても良い。
【0068】
なお、図に示す各部材の構成とその作用効果は、細部に渡るのでここでの説明は省略し、実施例5で説明する。
【0069】
次に、第4発明の保護部材について、図4を参照して説明する。
【0070】
図4は、第4発明の保護部材の一例を示すもので、(a)図はその斜視図、(b)図は(a)図の保護部材をB−B方向から見た縦断面図である。
【0071】
保護部材15は、シート状の緩衝部材1Mに、外形が略「コ」字状形状をした金属製又はプラスチック製のフック8aを有する差込部材8を、例えば鳩目、接着等の適当な手段で固定したものである。
【0072】
差込部材8の素材としては、前述した布、ゴム又はポリウレタン等の緩衝機能又は滑止機能を有するものを用いることができ、 その形態はシート体の他、発泡体等であっても良い。外形寸法としては、リング1Aの全体のみならず、ベルトの一端部3と他端部4範囲まで広く覆うものが良い。
【0073】
差込部材8は、リング1Aの全幅よりも広い間隔Wの位置に設けられたベルト20の幅方向に伸びる二つの「コ」字状先端部8bを有し、その断面形状は、(b)図に示すように先端部に行くに従いテーパ状に形成されている。
【0074】
差込部材8の使用に際しては、積荷Pに荷崩れ防止ベルト20を巻回する前にフック8aをリング1Aに掛け止めして保護部材15の全体を固定するか、ベルト20を積荷Pに巻回後にベルトと積荷との間に保護部材15を作業者が差し入れて、フック8aをリング1Aの連結部1cに掛けて固定する。
【0075】
なお、図ではフック8aはリング1Aに掛け止めできるようにしたが、「コ」字状先端部8bの間隔Wを広くし、ベルト長さ方向に二つのフック8aを設けて、ベルト20に直接掛けるようにしても良い。
【0076】
この保護部材15によれば、リング1Aの全面及び崩れ防止ベルト20の折り返し部2a、2bは勿論、ベルトの一端部3及び他端部4までの広い範囲を積荷表面に対して覆うことができるから、掛止部材15が積荷表面を傷つけることが抑制される。
【0077】
また、保護部材15をベルト巻回前にリング1Aに装着してベルト2を図の矢印方向に牽引する場合は、ベルト牽引時にベルト他端部4が差込部材8の表面で滑るので、ベルト部材2の牽引作業が容易となる。
【0078】
また、牽引後に保護部材15を積荷Pとの間に差し入れる場合は、差込部材8の先端部の断面がテーパ状に形成されているので、差し込み作業が容易である。
【0079】
さらに、差し込んだ厚み分だけベルト張力が増すことになり、さらなる牽引力向上効果を奏する。
【0080】
最後に、第5発明の荷崩れ防止ベルトについて、再び図1を参照して説明する。
【0081】
図1(a)に示すように、本発明の荷崩れ防止ベルト20は、前述したいずれかの掛止部材10、10A、10Bなどの連結部1aに、ベルト部材2の一端部3を連結して一体にしたものである。
【0082】
ここで、ベルト部材2は、積荷Pを周回する長さを有したものであればどのようなものでも良い。ベルト部材2の素材としては、特に限定されないが、例えばナイロン、アクリルなどの化学繊維をベルト状に織成した織布や、ゴムベルトなどを用いることができる。
【0083】
なお、本発明で言う「ベルト部材」とは、便宜上の呼称で、ベルトの他、例えばロープ、紐、ワイヤー或いはシート材その他の長尺体も含まれる。
【0084】
一方、その他端部4には、ループ状の把持部材5が取り付けられ、その近傍には雄面ファスナー部材7と、所定間隔を隔てて雌面ファスナー部材6とが固定される。
【0085】
次に、図5を参照して、図1及び図2で説明した第1発明に係る本発明の掛止部材10と、荷崩れ防止ベルト20の使用方法を説明する。
【0086】
図5は、荷崩れ防止ベルト20(掛止部材10を含む。)を用いて段ボール箱状の複数の積荷Pを結束している状態を示した斜視図である。
【0087】
まず、従来の係止フックを備えた荷ベルト同様に、ベルト部材5を積荷Pに周回させて、把持部材5を掛止部材10に挿通し、支持部1bを折り返し支点として図の右方向に牽引してベルト部材2を引き締める。このとき、牽引力により掛止部材10が強固に積荷表面に押圧されても、その緩衝効果により積荷表面を傷つけることがない。
【0088】
また、掛止部材10に緩衝部材1Bに代えて滑止部材1Cが装着されている場合は、その滑り止め効果により、牽引力が働いても荷崩れ防止ベルト20の全体が牽引方向に移動しにくくなる。
【0089】
ベルト部材2が十分引き締められた後、雄面ファスナー部材7が雌面ファスナー部材6に取着され、結束が完了する。
【0090】
また、滑止部材1Bの場合は、その密着性又は弾力性により、強固に積荷表面を把持しつづけるから、積荷の搬送中においてもベルトが緩むことがない。
【0091】
以下に、本発明の掛止部材及び保護部材並びに荷崩れ防止ベルトの実施例について、図面を参照して説明する。
【実施例1】
【0092】
図6は、前述した第1発明の実施例である。なお、本実施例において、前述の図1及び図2に登場する符号と同一符号のものは、それらの部材と同一部材であることを示している(以下の実施例も同様である。)。
【0093】
図に示すように、この掛止部材10Cは、リング1Aにおいて、連結部1aと折り返し部2bとの接続部1cに、積荷Pと対面する態様で積荷への傷付けを防止するため、弾力性を有する断面が略矩形のゴム製の緩衝部材1Fをリング1Aの積荷Pと対面する部位である積荷P側に集中して設け、接着固定したものである。
【0094】
これにより、本発明の効果を奏するとともに、緩衝部材1Fの使用量を節約することができる。また、緩衝部材1Fがゴム製であるから、第2発明の滑り止め効果も併せて有する。
【実施例2】
【0095】
図7は、第1発明の掛止部材の別の実施例である。
【0096】
図に示すように、この実施例の掛止部材10Dは、上記実施例1の緩衝部材1Fに代えて、緩衝部材1Gとしてゴム紐をリング1Aの二つの接続部1cのそれぞれに直接巻き付けて固定したものである。
【0097】
本実施例のような紐状体を用いると、安価かつ簡易に緩衝部材1Gを取着できる。
【実施例3】
【0098】
図8は、第1発明の掛止部材のさらに別の実施例である。
【0099】
この実施例の掛止部材10Eのリング1Hは、略8角形をしており、その連結部1cの四隅に、緩衝部材1Iとして紐状のポリウレタンを巻回して固定したものである。
【0100】
このような形態の緩衝部材1Iによれば、少量の紐状体によっても簡易に緩衝部材1Iを構成することができる。
【0101】
なお、緩衝部材1Iを紐状体でなく、各々独立した一個の固体として形成しても良く、その場合にはリング1Aの切れ目1dから挿入して取着させ、また、緩衝部材が劣化した場合にはこの切れ目から新品と交換することとなる。
【実施例4】
【0102】
図9は、第2発明の掛止部材の実施例である。
【0103】
図に示すように、この掛止部材10Fは、矩形状のリング1Aの二つの接続部1cのうちの一つの接続部1cに、滑止部材1Jとして矩形状のゴム板をその一端部が接続部1cを中心に180度回動自在となるように装着した。
【0104】
また、(b)図の二点差線で示すように、ゴム板(滑止部材1J)の接続部1cから対辺までの長さは、ゴム板が180度回動したときにもう一つの対面する接続部1cを超える長さとした。
【0105】
なお、符号1eは、ゴム板1Jが180度回転した時に、積荷P表面と全面が接触するようにするためのスリットで、その内幅は回動後に容易にゴム板1Jが接続部1cから離脱できないように締まり嵌めになっている。
【0106】
滑止部材1Jとして、このようなゴム板を用いるとその面積が大きいため、積荷P表面からのベルト部材2のスリップを一層有効に防止することができる。
【0107】
また、ベルト部材2をリング1Aに挿通する際には、ゴム板をリング1Aの外側に回動させればこれが挿通作業の邪魔になることはなく、一方、ベルト部材を挿通し終えた時点でゴム板をリング1Aの内側に回動させてベルトを牽引することができるため、ベルト部材2の挿通作業性を向上させることができる。
【実施例5】
【0108】
前述した第3発明の掛止部材10Bを再び図3に基づいて説明する。
【0109】
前述したように、掛止部材10Bは、一つのリング1Aのそれぞれの接続部1cに、第1発明の掛止部材の緩衝部材1Dと、第2発明の掛止部材の滑止部材1Eの両方の部材を配設したものである。
【0110】
緩衝部材1Dとしては、板状部材1dの一端部に突起部1eを接続した断面が「L」字状のゴム製のものを、滑止部材1Eとしては、同様断面形状をしたポリウレタン製の滑止部材1Eを、いずれもリング1Aの接続部1cを中心に90度回動可能に装着した。
【0111】
また、緩衝部材1Dと滑止部材1Eにおけるリング1Aの中心位置は、各部材の縦断面内において、板状部材1dの底面からは肉厚の1/2(寸法T)の位置であるが、突起部1eの側面からはより大なる寸法に偏位した位置(寸法H、H>T)とした。
【0112】
これら緩衝部材1Dと滑止部材1Eの使用に際しては、ベルト部材2の牽引後に必要に応じて、緩衝部材1Dあるいは滑止部材1E又は双方を90度回動して(b)図の二点鎖線位置まで引き起こして使用する。
【0113】
本実施例の掛止部材によれば、緩衝効果と滑止効果の双方を有するとともに、二点鎖線位置に引き起こしたときにベルト部材2の全体を積荷Pの表面から寸法H分だけ引き離した位置に固定するから、その引き離し分だけベルト張力が増し、さらに積荷を引き締める効果を奏する。
【実施例6】
【0114】
図10は、前述した第1乃至第3発明の掛止部材の変形例である。
【0115】
この掛止部材10Gは、滑止部材1Lとして、縦断面が略台形をしたゴム製のものを用い、これを矩形断面のリング1Kの4箇所のコーナー部1gも含めてリング1Kの相対する2つの連結辺1f同士を接続するとともに、リング1Kの周囲を覆うようにしたものである。
【0116】
但し、リング1Kの連結部1dと支持部1eの中央部は、ベルト部材2の折り返し部2a、2bの接続のために露出されており、その近傍の滑止部材1Lも同様目的のために操作用孔1hが設けられている。
【0117】
このような構成にすると、リング1Kの相対する2つの連結辺1f同士を接続したので掛止部材10Gの積荷Pとの接触面積が広くなり、積荷Pに対する滑り止め効果が向上するうえ、四隅のコーナー部1gが滑止部材1Lで覆われるので、積荷表面又は作業者の顔等を傷つけることがかなり抑制される。
【0118】
以上の説明は、滑止部材として説明したが、緩衝部材として同様の構成にして第3発明の掛止部材を構成しても良い。
【実施例7】
【0119】
図11は、前述した第5発明の荷崩れ防止ベルトの実施例である。
【0120】
図の荷崩れ防止ベルト20Aの掛止部材10Gは、正八角形の環状リング1Nの相対する辺に、直径がDの円筒状ゴム部材を滑止部材1Cとして4個配置するとともに、滑止部材1Cの間にベルト部材2の一端部3を例えばステッチなどの適当な手段で連結したものである。
【0121】
使用に際しては、積荷Pが例えば立方体又は直方体状に積み上げられている場合はその積荷の天面に当該部材を配置し、他端部4を積荷Pに周回させて再び環状リング1Nの対向辺に引き寄せ、リングに挿通後、牽引して結束する。
【0122】
本実施例の荷崩れ防止ベルト20Aによれば、他端部4の積荷周回中は4個の滑止部材1Cが積荷の天面において、その摩擦力により掛止部材10の全体を固定するから、ベルト部材2の全体がずれることが少なくなる。
【0123】
また、2本のベルト部材2が積荷を十の字状にほぼ同時に結束できるので、作業の効率化を図ることができる。さらに、滑止部材1Cは緩衝部材としても作用するから、積荷表面を傷付けることが少ない。
【実施例8】
【0124】
図12は、前述した第5発明の荷崩れ防止ベルトの別の実施例である。
【0125】
上記実施例7の荷崩れ防止ベルト20Aは、リング1Nにベルト部材2を2本連結したものであるが、本実施例のものはベルト部材2を3本連結した例である。
【0126】
図に示すように、本実施例の荷崩れ防止ベルト20Bは、一枚のシート9の左側に、図1で説明した掛止部材10にベルト部材2を連結したものを3本並行にして接続し、一方シート9の右側には、雌面ファスナー部材6、雄面ファスナー部材7及び把持部材5を有するベルト部材2を3本平行に接続して一体化した。
【0127】
この荷崩れ防止ベルト20Bによれば、上下方向の幅が広いから、結束すべき積荷の天地寸法が長いときでも迅速に結束でき、掛止部材に上記実施例のいずれかのものを用いれば上述したそれぞれの緩衝効果又は滑止効果を得ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明の掛止部材、ベルト部材及びこれら部材を用いた荷崩れ防止ベルトは、物流分野における荷崩れ防止用の結束部材として好適のものであるが、当該分野に限定されるものではない。すなわち、複数の部材相互を結束、固定するものならばあらゆる分野に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0129】
【図1】本発明に係る第1発明の掛止部材が用いられている、第5発明の荷崩れ防止ベルトの図面であり、図1(a)はその平面図、図1(b)はその側面図である。
【図2】本発明に係る第1及び第2発明の掛止部材の一例図面で、図2(a)はその平面図、図2(b)はその側面図である。
【図3】本発明に係る第3発明の掛止部材の一例図面で、図3(a)はその斜視図、図3(b)は図3(a)の掛止部材のA−A方向断面図である。
【図4】本発明に係る第4発明の保護部材の一例図面で、図4(a)はその斜視図、図4(b)は図4(a)の部材のB−B方向断面図である。
【図5】図1の掛止部材と荷崩れ防止ベルトとを用いて、積荷相互間を固定している状態を示した斜視図である。
【図6】本発明に係る第1発明の掛止部材の別例の図面で、図6(a)はその斜視図、図6(b)は図6(a)の部材のC−C方向断面図である。
【図7】本発明に係る第1発明の掛止部材のさらに別例の斜視図である。
【図8】本発明に係る第1発明の掛止部材のさらに別例の斜視図である。
【図9】本発明に係る第2発明の掛止部材の一例の図面で、図9(a)は掛止部材の斜視図、図9(b)はそのD−D方向断面図である。
【図10】本発明に係る第1及び第2発明の変形例の図面で、図10(a)は、その斜視図、 図10(b)は、その側面図である。
【図11】本発明に係る第5発明の荷崩れ防止ベルトの別例の平面図である。
【図12】本発明に係る第5発明の荷崩れ防止ベルトのさらに別例の平面図である。
【図13】従来の掛止部材と荷崩れ防止ベルトとを用いて、積荷相互間を固定している状態を示した斜視図である。
【符号の説明】
【0130】
1a、1d 連結部
1b、1e 支持部(折り返し部)
1c、1f 接続部
1A、1H、1K、1N リング
1B、1D、1E、1F、1G、1I、1M 緩衝部材
1C、1J、1L 滑止部材
2 ベルト部材
2a、2b 折り返し部
3 一端部
4 他端部
5 把持部材
6 雌面ファスナー部材
7 雄面ファスナー部材
8 差込部材
9 シート
10、10A〜10G 掛止部材(本発明)
15、15A 保護部材(本発明)
20、20A、20B 荷崩れ防止ベルト(本発明)
100 荷崩れ防止ベルト(従来品)
108 滑走防止部材
P 積荷
【特許請求の範囲】
【請求項1】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷への傷付けを防止するための緩衝部材を配設したことを特徴とする掛止部材。
【請求項2】
緩衝部材は、着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の掛止部材。
【請求項3】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷に対する滑りを防止するための滑止部材を配設したことを特徴とする掛止部材。
【請求項4】
滑止部材は、着脱自在であることを特徴とする請求項3に記載の掛止部材。
【請求項5】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、請求項1又は2に記載の緩衝部材と、請求項3又は4に記載の滑止部材とを配設したことを特徴とする掛止部材。
【請求項6】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部に連結された掛止部材の前記積荷への傷付け又は前記掛止部材が前記積荷から滑ることを防止するための保護部材であって、
前記掛止部材と前記積荷との間に着脱自在に介設することを特徴とする保護部材。
【請求項7】
ベルトの一端部に、請求項1乃至5のいずれかに記載の掛止部材を連結したことを特徴とする荷崩れ防止ベルト。
【請求項1】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷への傷付けを防止するための緩衝部材を配設したことを特徴とする掛止部材。
【請求項2】
緩衝部材は、着脱自在であることを特徴とする請求項1に記載の掛止部材。
【請求項3】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、該積荷に対する滑りを防止するための滑止部材を配設したことを特徴とする掛止部材。
【請求項4】
滑止部材は、着脱自在であることを特徴とする請求項3に記載の掛止部材。
【請求項5】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部を連結するための連結部と、積荷に巻回した前記荷崩防止ベルトの折り返し部を支持するための支持部とを備えた掛止部材であって、
前記積荷と対面する部位に、請求項1又は2に記載の緩衝部材と、請求項3又は4に記載の滑止部材とを配設したことを特徴とする掛止部材。
【請求項6】
積荷の荷崩れを防止する荷崩防止ベルトの一端部に連結された掛止部材の前記積荷への傷付け又は前記掛止部材が前記積荷から滑ることを防止するための保護部材であって、
前記掛止部材と前記積荷との間に着脱自在に介設することを特徴とする保護部材。
【請求項7】
ベルトの一端部に、請求項1乃至5のいずれかに記載の掛止部材を連結したことを特徴とする荷崩れ防止ベルト。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2008−62991(P2008−62991A)
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−245337(P2006−245337)
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000132921)株式会社タカギ・パックス (11)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成18年9月11日(2006.9.11)
【出願人】(000132921)株式会社タカギ・パックス (11)
【Fターム(参考)】
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