採光装置
【課題】均一に、しかも十分な光量で光を照射可能な採光装置を提供すること。
【解決手段】光を取り込む採光部10と、前記採光部10から取り込んだ光を導く導光部20と、前記導光部20により導かれた光を室内に照射する放光部30とを備え、前記採光部10に、ヘイズ値が50%以上である拡散板11を設けたことを特徴とする採光装置。
【解決手段】光を取り込む採光部10と、前記採光部10から取り込んだ光を導く導光部20と、前記導光部20により導かれた光を室内に照射する放光部30とを備え、前記採光部10に、ヘイズ値が50%以上である拡散板11を設けたことを特徴とする採光装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を室内へと導く採光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食物の安定供給のため、植物育成環境を制御して植物を育てる閉鎖型植物工場の開発が進んでいる(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、このような閉鎖型植物工場においては、植物に照射する光の光源として蛍光灯などの人工光源を用いられているが、照明コストが高く、さらには、人工光源栽培であるという点から消費者の印象があまり良くないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−85134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上述した閉鎖型植物工場において、光ダクトを用いて、太陽光を植物工場内に導く方法も考えられるが、本発明者等が検討したところ、植物工場内に光を均一に照射できず、植物の育成に差が生じてしまい、効率的に植物を栽培することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、均一に、しかも十分な光量で光を照射可能な採光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上述の目的を達成すべく鋭意検討した結果、採光装置において、光を取り込むための採光部に所定のヘイズ値を有する拡散板を設けることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、光を取り込む採光部と、前記採光部から取り込んだ光を導く導光部と、前記導光部により導かれた光を室内に照射する放光部とを備え、前記採光部に、ヘイズ値が50%以上である拡散板を設けたことを特徴とする採光装置が提供される。
【0008】
本発明の採光装置は、内面側に銀または銀合金からなる光反射層が設けられていることが好ましい。
本発明の採光装置において、前記拡散板に対する採光部反射板の角度が45〜70°の範囲となるように設けられていることが好ましい。
本発明の採光装置において、前記放光部は、前記導光部から導かれた光を反射する放光板と、前記放光板により反射された光を室内に照射するための放光口を備え、前記放光板は、前記導光部側から、前記導光部から離れていくにしたがって、前記放光口に近づくような曲面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、均一に、しかも十分な光量で光を照射可能な採光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1実施形態に係る採光装置1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2(A)は、第1実施形態に係る採光装置1の側面図、図2(B)は、採光装置1の平面図である。
【図3】図3(A)は、第1実施形態に係る採光装置1の採光部10付近を拡大して示す斜視図、図3(B)は、採光部10の平面図、図3(C)は、採光部10の側面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る採光装置1の採光部10における採光面積D1と、放光部30における放光面積D2との関係を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る採光装置1aの全体構成を示す斜視図である。
【図6】図6(A)は、第2実施形態に係る採光装置1aの側面図、図6(B)は、採光装置1aの平面図である。
【図7】図7(A)は、第2実施形態に係る採光装置1aの採光部10a付近を拡大して示す斜視図、図7(B)は、採光部10aの正面図、図7(C)は、採光部10aの側面図である。
【図8】図8は、実施例における照射面Sの分割方法を説明するための図である。
【図9】図9(A)、図9(B)は、光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるための実験で用いた採光装置の構成を示す図である。
【図10】図10は、光を採り込む効率と葉の重量との関係を示すグラフである。
【図11】図11(A)は、実施例4で用いた採光装置1bの全体構成を示す斜視図、図11(B)は、採光装置1bの側面図である。
【図12】図12(A)は、実施例5で用いた採光装置1cの全体構成を示す斜視図、図12(B)は、採光装置1cの側面図である。
【図13】図13(A)は、実施例6で用いた採光装置1dの全体構成を示す斜視図、図13(B)は、採光装置1dの側面図である。
【図14】図14(A)、図14(B)は、拡散板11のヘイズ値を変更した場合における、照射面Sに照射される光の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図15】図15(A)、図15(B)は、拡散板11のヘイズ値を変更した場合における、照射面Sに照射される光の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図16】図16(A)〜図16(C)は、拡散板11のヘイズ値を変更した場合における、照射面Sに照射される光の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1実施形態》
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る採光装置1の全体構成を示す斜視図である。また、図2(A)は、図1に示す採光装置1をY軸方向正方向に見た場合における側面図、図2(B)は、図1に示す採光装置1をZ軸方向負方向に見た場合における平面図である。
【0013】
図1、図2(A)、図2(B)に示すように、本実施形態に係る採光装置1は、採光部10と、導光部20と、放光部30とを備えている。採光装置1は、採光部10に設けられた拡散板11(拡散板11については後述する。)を介して、外部から太陽光を採り込み、採り込まれた光を、導光部20を介して放光部30に導き、導かれた光が放光部30にて照射面Sに照射されるような構成となっている。なお、図1に示すように、本実施形態に係る採光装置1は、採光部10、導光部20、および放光部30は、いずれもY軸方向の幅はWで同一とされている。
【0014】
本実施形態の採光装置1は、後述するように、その内面が銀または銀合金からなる光反射層で構成されている。また、放光部30には、光を照射面Sに照射するための放光口31(図1中において灰色で示した。)が設けられている。そのため、本実施形態の採光装置1中に採り込まれた光は、採光装置1の内面に形成された光反射層で反射されながら、放光部30に導かれ、放光部30に形成された放光口31から、照射面Sに照射されることとなる。
【0015】
なお、本実施形態に係る採光装置1としては、特に限定されず、種々の用途に用いることができるが、たとえば、冷凍コンテナを閉鎖空間として利用したコンテナ型植物工場などの閉鎖型植物工場内に太陽光を照射するための植物工場用の採光装置として好適に用いられる。そして、本実施形態に係る採光装置1が、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いられる場合には、照射面Sには育成対象となる植物が一面に載置されることとなる。
【0016】
次いで、本実施形態の採光装置1の採光部10について説明する。ここで、図3(A)は、図1に示す採光装置1の採光部10付近を拡大して示す斜視図であり、図3(A)においては、図1に示す採光装置1を、拡散板11が設置されている方向から見た場合における図を示している。また、図3(B)は、図3(A)に示す採光部10をZ軸方向負方向に見た場合における平面図、図3(C)は、図3(A)に示す採光部10をY軸方向正方向に見た場合における側面図である。なお、図3(A)、図3(B)においては、拡散板11を灰色で示している。
【0017】
図3(A)〜図3(C)に示すように、本実施形態の採光装置1には、採光部10の太陽光を採り込む部分に、拡散板11が設けられている。この拡散板11は、光透過作用に加えて、光を拡散させる作用を有し、通常、日中に太陽が位置する方向に向けて配置され、これにより、太陽光を採光装置1内部に採り込むとともに、採り込んだ光を拡散させるものである。
【0018】
本実施形態では、この拡散板11としては、ヘイズ値が50%以上のもの、好ましくは55〜90%、さらに好ましくは60〜80%のものを用いる。本実施形態においては、ヘイズ値がこの範囲にある拡散板11を、採光部10の太陽光を採り込む部分、すなわち、採光装置1の光の取り込み口に設けることにより、放光部30の放光口31から照射面Sに対して照射される光を、均一であり、しかも十分な光量を有するものとすることができる。ヘイズ値が小さすぎると、照射面Sに対する光の照射が不均一になってしまい、採光装置1を閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、照射面Sに載置される植物の一部に光が照射されなくなり、植物の育成に差が生じてしまうこととなる。なお、ヘイズ値は、散乱光線透過率/可視光線透過率を百分率で表したものである。
【0019】
また、拡散板11は、全光線透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。全光線透過率が低すぎると、照射面Sに照射される光の光量が不十分となってしまい、採光装置1を閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、照射面Sに載置される植物の育成が不十分となってしまう場合がある。
【0020】
拡散板11としては、光を透過できるような透明性の高い板に光拡散機能を有する樹脂フィルムを貼り付けたものや、光拡散機能を有する樹脂板を用いることができるが、耐候性に優れるという観点から前記光を透過できるような透明性の高い板に光拡散機能を有する樹脂フィルムを貼り付けたものが好ましい。拡散板11を構成する樹脂フィルムの材料の具体例としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、などが挙げられ、これらのなかでも、耐候性に優れるという点より、アクリル樹脂が好ましく用いられる。また、拡散板11を構成する光を透過できるような透明性の高い板の具体例としては、たとえば、透明ガラス板、透明樹脂板が挙げられ、これらのなかでも、耐候性に優れるという点より、透明ガラス板が好ましく用いられる。
【0021】
また、拡散板11の樹脂フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは50〜200μmであり、より好ましくは70〜150μmである。更に、拡散板11の板の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは3〜9mmであり、より好ましくは5〜8mmである。
【0022】
本実施形態において、採光部10に、拡散板11を設置する際における拡散板11の設置角度としては、特に限定されないが、図3(C)に示すように、水平面(鉛直方向と直角な平面)に対する角度α1が、好ましくは45°となるようにする。角度α1が大きすぎても、小さすぎても、太陽光の採り込み効率が低下してしまうおそれがある。また、角度α1が小さすぎる場合には、拡散板11上に大気中に飛散する塵などが堆積し易くなり、堆積物の影響により、太陽光の採り込み効率が低下してしまうというおそれもある。
【0023】
また、図3(A)〜図3(C)に示すように、採光部10には、反射板12が設置されている。反射板12としては、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。この場合における金属板としては、たとえば、鋼板、またはアルミニウム板を用いることができる。また、銀または銀合金からなる光反射層は、金属板の表面に、銀鏡反応により銀を還元析出させる無電解めっき法や、スプレーめっき法、銀イオンを含む水溶液中での電気分解による電気めっき法、減圧雰囲気下で銀を蒸発させて皮膜を形成する蒸着法などにより形成することができる。
【0024】
さらに、反射板12としては、拡散板11を介して入射される太陽光を効率的に採り込めるように、正反射率の高いような構成とすることが好ましく、たとえば、全反射率のうち、正反射率が90%以上、拡散反射率が10%以下のものを用いることが好ましい。なお、反射板12を、銀または銀合金からなる光反射層を有する構成とする場合において、正反射率および拡散反射率の割合を上記範囲に制御する方法としては、たとえば、基板の表面性状を調整する方法などが挙げられる。
【0025】
また、反射板12の銀または銀合金からなる光反射層の表面には、変色や汚れなどの発生を防止するために、保護膜が形成されていてもよい。保護膜としては、透明ななどの有機樹脂材料、酸化チタンなどの無機材料などを用いて形成することができる。
【0026】
反射板12における、銀または銀合金からなる光反射層の厚みは、好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.08〜0.15μmであり、また、光反射層を銀合金からなるものとする場合における銀合金中の銀の含有割合は、好ましくは95重量%以上であり、より好ましくは98重量%以上である。
【0027】
また、反射板12は、拡散板11に対する角度β1が、好ましくは45〜70°、より好ましくは45〜65°の範囲となるように設置することが望ましい。特に、本実施形態の採光装置1を、年間を通して太陽高度が高いような場所に設置する場合には、反射板12の角度β1は比較的小さくすることが好ましく、一方、年間を通して太陽高度が低いような場所に設置する場合には、反射板12の角度β1は比較的大きくすることが好ましい。一方、拡散板11に対する角度β1が小さすぎると、朝夕などの太陽高度が低い時間帯における太陽光の採り込む量が少なくなり、照射面Sに照射される光の光量が減少してしまう場合があり、また、拡散板11に対する角度β1が大きすぎると、夏至や南中時間帯における太陽光の採り込む量が少なくなり、照射面Sに照射される光の光量が減少してしまう場合がある。
【0028】
このような採光部10から採り込まれた太陽光は、導光部20に導かれる。導光部20は、図1、図2(A)、図2(B)に示すように、採光部10から採り込まれた太陽光を放光部30に導くためのダクト部を形成する。導光部20を形成する材料としては、上述した反射板12と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、導光部20を形成する材料としては、採光部10で採り込まれた太陽光を放光部30へと効率的に導くために、上述した採光部10の反射板12と同様に、全反射率のうち、正反射率が90%以上、拡散反射率が10%以下のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、導光部20は、図1、図2(A)に示すように、長さL1の第1直管部と、第1直管部から連続する屈曲部と、屈曲部から連続する長さL2の第2直管部と、から構成されている。すなわち、導光部20に屈曲部を形成しており、導光部20に屈曲部を形成することにより、採光部10から採り込まれる際に拡散板11により拡散された太陽光の導光部20内における反射回数を増加させ、これにより、拡散板11により拡散された太陽光の拡散度合いをより高めることが可能となる。なお、本実施形態に係る採光装置1においては、屈曲部における屈曲角度を90°とし、これにより、長さL1の第1直管部における光の進行方向と、長さL2の第2直管部における光の進行方向とが直角になるように設定している。
【0030】
そして、上述した採光部10から採り込まれた太陽光は、導光部20を介して放光部30まで導かれる。放光部30は、図1、図2(A)、図2(B)に示すように、図1中において灰色で示す放光口31および放光板32を備えており、放光部30まで導かれた光が、放光口31と対向して設けられた放光板32により反射することで、放光口31を介して照射面Sに照射される。
【0031】
放光板32は、放光部30まで導かれた光を反射し、放光口31を介して照射面Sに照射する機能を有し、図1、図2(A)、図2(B)に示すように、導光部20側から、導光部20から離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面を有する構造となっている。このように、放光板32を導光部20から離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面を有する構造とすることにより、放光部30まで導かれた太陽光を、より高い均一度で、照射面Sに照射することができる。
【0032】
また、放光板32を形成する材料としては、上述した反射板12と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、本実施形態の採光装置1が閉鎖型植物工場用の採光装置である場合には、放光板32により反射した光が植物に直接当たることから、放光板32を形成する材料としては、光拡散機能を有していることが好ましく、全反射率のうち、拡散反射率が、好ましくは0〜60%、より好ましくは0〜55%のものを用いることが好ましい。放光板32の拡散反射率を上記範囲とすることにより、照射面Sに照射される光をよりやわらかいものとすることができる。拡散反射率が低すぎると、上述した効果が得難くなり、一方、高すぎると、反射光が照射面S以外の領域に散乱してしまい、結果として、照射面Sに照射される光の光量が低下してしまうおそれがある。
【0033】
放光口31は、放光板32により反射された光を、照射面Sに照射できるような構成であればよく、特に限定されないが、透明性の高い板、たとえば、透明ガラス板や透明樹脂板で構成することができる。あるいは、放光口31としては、このような透明性の高い板を設けずに開口としてもよい。
【0034】
次いで、採光部10における採光面積D1と、放光部30における放光面積D2との関係について説明する。図4は、採光部10における採光面積D1と、放光部30における放光面積D2との関係を示す図である。図4に示すように、採光部10の採光面積D1は、採光部10から採り込まれた太陽光が、採光部10から導光部20に導かれる際における導光部20の導入口の面積であり、また、放光部30の放光面積D2は放光口31の面積である。本実施形態の採光装置1は、採光面積D1と放光面積D2との比が、「採光面積D1:放光面積D2」で表した場合に、好ましくは1:2.5〜1:5、より好ましくは1:3〜1:4である。本実施形態によれば、採光部10に、ヘイズ値が上述した所定の範囲にある拡散板11を設けて、採光部10から採り込まれる太陽光を拡散させるため、このように放光面積D2を採光面積D1と比較して大きなものとした場合でも、照射面Sに、均一、かつ、十分な光量の光を照射することができる。
【0035】
また、本実施形態の採光装置1においては、図2(A)、図4に示すように、導光部20の中心(すなわち、導光部20の高さHに対して、1/2×Hの位置)を通った場合における長さを、導光部20の代表長さLとした場合に、導光部20の代表長さLは、好ましくは200〜400mm、より好ましくは150〜300mmの範囲とされる。また、導光部20の第1直管部の長さL1は、好ましくは0〜150mm、より好ましくは50〜100mmの範囲とされる。さらに、導光部20の第2直管部は、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁を貫通する部分に設けられるものであるため、導光部20の第2直管部の長さL2は、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁の厚さと同程度とされる。具体的には、導光部20の第2直管部の長さL2は、好ましくは100〜400mm、より好ましくは150〜300mmの範囲とされる。
【0036】
本実施形態では、このように導光部20の長さを放光部30の放光口31の大きさによらず、比較的短いものに設定することで、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いられる場合に、省スペース化を実現することが可能となる。また、本実施形態では、採光装置1内に太陽光を採り入れる際に、拡散板11により拡散しているため、導光部20の長さを比較的短く設定した場合でも、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、均一なものとすることができるものである。加えて、本実施形態では、上述したように、導光部20に屈曲部を設け、これにより、導光部20の長さを短くすることによる、拡散板11により拡散された太陽光の反射回数の減少を補うものであり、これにより、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、より均一なものとすることができるものである。
【0037】
本実施形態によれば、採光部10の太陽光を採り込む部分、すなわち、採光装置1の光の取り込み口に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けているため、採光部10から太陽光を採り込む際に採り込んだ光を拡散させることができ、採り込んだ光を拡散した状態で、導光部20を介して放光部30に導くことができ、これにより、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、均一、かつ十分な光量を有するものとすることができる。そのため、本実施形態の採光装置1は、冷凍コンテナを閉鎖空間として利用したコンテナ型植物工場などの閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物工場内の植物に対して、均一に、かつ十分な光量で光を照射することができ、効率的に植物の育成を行なうことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、採光部10の太陽光を採り込む部分に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けており、これにより採光装置1内に採り込まれた段階で、採り込まれた光を拡散することができるため、採光装置1内において、採光装置1の光反射層を利用した光の拡散を行なわない場合でも、放光部30に導かれる光を拡散されたものとすることができるため、導光部20をより短く形成することができ、これにより、採光装置1自体のサイズを小さくでき、省スペース化が可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態においては、採光部10の反射板12、導光部20の全体、および放光部30の放光板32の内面側の表面、すなわち、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成している。銀は、紫外域での反射率が低い一方で、可視光領域および可視光領域よりも長波長側において高い反射率を有するため、本実施形態によれば、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成することにより、採光装置1内で採り入れた太陽光を反射させた場合でも、光量を著しく減少させることなく、照射面Sに導くことができる。
【0040】
加えて、銀は、800nm付近に吸収帯域を有し近赤外領域における反射率が低いアルミニウムと異なり、太陽光を反射させた場合に、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光を減衰させることのないものである。具体的には、太陽光をまたは銀合金からなる光反射層で2回以上反射させた場合における、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光の光量を50%以上に保つことできる。そのため、本実施形態によれば、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成することにより、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光を減衰させずに、照射面Sに照射することができる。そのため、本実施形態の採光装置1は、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物の光合成に必要な光合成有効波長域である400〜700nmの光に加えて、光合成促進作用を有する近赤外波長域である700〜1000nm光を植物に照射することができ、これにより、効率的に植物の育成を行なうことができる。そして、本実施形態の採光装置1は、上記特性を活かし、植物工場で育成可能な各種植物の育成、特に、葉物植物(たとえば、レタス類や春菊、ほうれん草、小松菜、水菜等の、主として葉が食される葉菜類)の育成に好適に用いることができる。
【0041】
《第2実施形態》
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。
【0042】
図5は、第2実施形態に係る採光装置1aの全体構成を示す斜視図である。また、図6(A)は、図5に示す採光装置1aをY軸方向正方向に見た場合における側面図、図6(B)は、図5に示す採光装置1aをZ軸方向負方向に見た場合における平面図である。
【0043】
なお、第2実施形態に係る採光装置1aは、以下に説明する以外は、上述した第1実施形態の採光装置1aと同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。なお、第2実施形態に係る採光装置1aにおいては、上述した第1実施形態に係る採光装置1と同じ構成については同じ符号を付した。
【0044】
図5、図6(A)、図6(B)に示すように、第2実施形態に係る採光装置1aは、採光部10aと、導光部20aと、放光部30とを備えている。第2実施形態に係る採光装置1aも、上述した第1実施形態に係る採光装置1aと同様に、採光部10aに設けられた拡散板11を介して、外部から太陽光を採り込み、採り込まれた光を、導光部20aを介して放光部30に導き、導かれた光が放光部30にて照射面Sに照射されるような構成となっている。なお、図5に示すように、第2実施形態に係る採光装置1aにおいても、上述した第1実施形態と同様に、採光部10a、導光部20a、および放光部30は、いずれもY軸方向の幅はWで同一とされている。
【0045】
第2実施形態に係る採光装置1aは、主として、導光部20aの構成が、上述した第1実施形態に係る採光装置1と異なっている。すなわち、第1実施形態に係る採光装置1においては、導光部20が屈曲部を有している構成であるのに対し、第2実施形態に係る採光装置1aにおいては、導光部20aが屈曲部を有さないような構成となっている。すなわち、第2実施形態に係る採光装置1aは、第1実施形態に係る採光装置1と比較して、より省スペースな構成となっている。また、第2実施形態に係る採光装置1aは、第1実施形態に係る採光装置1と比較して、より簡易な構造であるため、製造に係るコストを低減することが可能となる。
【0046】
図7(A)は、図5に示す採光装置1aの採光部10a付近を拡大して示す斜視図であり、図7(A)においては、図5に示す採光装置1aを、拡散板11が設置されている方向から見た場合における図を示している。また、図7(B)は、図7(A)に示す採光部10aをX軸方向正方向に見た場合における正面図、図7(C)は、図7(A)に示す採光部10aをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。なお、図7(A)、図7(B)においては、拡散板11を灰色で示している。
【0047】
図7(A)〜図7(C)に示すように、第2実施形態の採光装置1aには、採光部10aの太陽光を採り込む部分に、拡散板11が設けられている。なお、拡散板11としては、上述した第1実施形態で例示したものと同じものを用いることができる。
【0048】
第2実施形態の採光装置1aにおける、拡散板11の設置角度としては、特に限定されないが、図7(C)に示すように、照射面Sと水平な面に対する角度α2は、上述した第1実施形態と同様に、好ましくは45°となるようにする。
【0049】
また、図7(A)〜図7(C)に示すように、第2実施形態の採光装置1aにおいても、採光部10aに、反射板12が設置されている。反射板12としては、上述した第1実施形態と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、反射板12の正反射率および拡散反射率も同様とすることができる。第2実施形態の採光装置1aにおける、反射板12の拡散板11に対する角度β2は、上述した第1実施形態と同様に、好ましくは45〜70°、より好ましくは45〜65°の範囲となるように設置することが望ましい。
【0050】
そして、このような採光部10aから採り込まれた太陽光は、導光部20aに導かれる。導光部20aは、上述した第1実施形態と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、導光部20aの正反射率および拡散反射率も同様とすることができる。なお、上述したように、第2実施形態の採光装置1aは、主として、導光部20aには屈曲部が設けられていない点において、上述した第1実施形態に係る採光装置1と異なるものである。
【0051】
放光部30は、図5、図6(A)、図6(B)に示すように、上述した第1実施形態と同様に、図5中において灰色で示す開口部としての放光口31および放光板32を備えており、放光部30まで導かれた光を、導光部20a側から、導光部20aから離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面構造を有する放光板32により反射することで、放光口31を介して照射面Sに照射する。なお、放光板32を形成する材料としては、上述した第1実施形態と同様に、上述した反射板12と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、放光板32の拡散反射率も同様とすることができる。
【0052】
また、第2実施形態の採光装置1aにおいては、採光部10aにおける採光面積と、放光部30における放光面積との比や大きさについては、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0053】
さらに、第2実施形態の採光装置1aにおいては、図6(A)に示すように、導光部20aは、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁を貫通する部分に設けられるものであるため、導光部20aの長さL4は、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁の厚さと同程度とされる。具体的には、導光部20aの長さL4は、好ましくは100〜400mm、より好ましくは150〜300mmの範囲とされる。本実施形態では、このように導光部20aの長さL4を放光部30の放光口31の大きさによらず、比較的短いものに設定することで、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いられる場合に、省スペース化を実現することが可能となる。
【0054】
以上、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、採光部10の太陽光を採り込む部分、すなわち、採光装置1aの光の取り込み口に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けているため、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、均一、かつ十分な光量を有するものとすることができる。そして、上述した第1実施形態と同様に、第2実施形態の採光装置1aは、冷凍コンテナを閉鎖空間として利用したコンテナ型植物工場などの閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物工場内の植物に対して、均一に、かつ十分な光量で光を照射することができ、効率的に植物の育成を行なうことができる。
【0055】
また、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、採光部10aの太陽光を採り込む部分に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けており、これにより採光装置1a内に採り込まれた段階で、採り込まれた光を拡散することができるため、採光装置1a内において、採光装置1の光反射層を利用した光の拡散を行なわない場合でも、放光部30に導かれる光を拡散されたものとすることができるため、導光部20aをより短く形成することができ、これにより、採光装置1a自体のサイズを小さくでき、省スペース化が可能となる。
【0056】
さらに、第2実施形態においては、上述した第1実施形態と同様に、採光部10aの反射板12、導光部20aの全体、および放光部30の放光板32の内面側の表面、すなわち、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成している。そのため、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、光量を著しく減少させることなく、照射面Sに導くことができ、さらには、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光を減衰させずに、照射面Sに照射することができる。そのため、第2実施形態の採光装置1aは、上述した第1実施形態と同様に、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物の光合成に必要な光合成有効波長域である400〜700nmの光に加えて、光合成促進作用を有する近赤外波長域である700〜1000nm光を植物に照射することができ、これにより、効率的に植物の育成を行なうことができる。そして、第2実施形態の採光装置1aは、上記特性を活かし、植物工場で育成可能な各種植物の育成、特に、葉物植物(たとえば、レタス類や春菊、ほうれん草、小松菜、水菜等の、主として葉が食される葉菜類)の育成に好適に用いることができる。
【0057】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0059】
<実施例1>
図1〜図4に示す採光装置1を備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場について、評価を行った。なお、実施例1では、拡散板11として、ヘイズ値が70%、全光線透過率が90%、厚み80μmのアクリル樹脂製の拡散フィルムを貼り付けた透明ガラス板を用い、水平面に対する角度α1が45°となるように設置し、さらに、反射板12を、拡散板11と反射板12との角度β1が45°となるように設置した。また、採光部10の反射板12、導光部20の全体、および放光部30の放光板32、側面板は、いずれも金属板としての鋼板上にアクリルウレタン樹脂からなる樹脂層を形成し、その上に銀からなる光反射層およびアクリルシリコン系樹脂からなる保護膜を形成してなるものを用い、採光部10の反射板12、導光部20の全体については、全反射率95%のうち、正反射率94%、拡散反射率1%とし、放光部30の放光板32、側面板についても、全反射率95%のうち、正反射率94%、拡散反射率1%とした。
【0060】
また、採光装置1のY軸方向の幅Wは、採光部10、導光部20、および放光部30のいずれも450mmとし、導光部20の第1直管部の長さL1=0mm、第2直管部の長さL2=200mm、導光部20の高さH=100mm、屈曲部をR100形状とした。すなわち、導光部20の代表長さL=278.5mmとした。さらに、放光口31における長さL3=300mmとし、放光面積D2=L3×W=300mm×450mm=135,000mm2とし、また、採光面積D1=H×W=100mm×450mm=45,000mm2とした。
【0061】
そして、このような採光装置1を備える閉鎖型植物工場を用いて、照射面Sにおける光量の測定を行った。
【0062】
具体的には、照射面Sにおける光量(光量子束密度:μmol/m2・s)の測定は次のようにして行った。すなわち、照射面Sを図8に示すように均等な面積でA1〜A12の12個の領域に分割し、各領域A1〜A12に光量子測定装置をそれぞれ設置して、各領域A1〜A12における午前9時〜午後4時までの光量を測定し、その積算値を算出した。また、これとは別に、全天空光量についても同条件で測定し、その積算値を算出した。そして、各領域A1〜A12における光量の積算値と、全天空光量の積算値とに基づいて、各領域A1〜A12における、光の採り込み効率を下記式にしたがって算出した。また、下記式にしたがって算出した光の採り込み効率に基づいて、栽培シミュレーションを行なった。光の採り込み効率の結果を表1に、栽培シミュレーションの結果得られた育成される植物の葉の重量のシミュレーション結果を表2に、これらの結果をまとめたものを表3に示した。
各領域A1〜A12の光の採り込み効率(%)=各領域A1〜A12における光量の積算値/全天空光量の積算値
【0063】
なお、栽培シミュレーションは、以下に説明する栽培試験から得た光を採り込む効率と葉の重量との相関を元に行った。
すなわち、本実施例では、光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるために、図9(A)、図9(B)に示す採光装置を作製し、作製した採光装置を用いて、栽培試験を行い、葉の重量の測定を行った。なお、採光装置は、鋼板上に銀からなる光反射層およびアクリルシリコン系樹脂からなる保護膜を形成してなる光反射板を用いて作製した。また、図9(A)、図9(B)中、L1=4230mm、L2=770mm、L3=1572mm、W1=W2=W3=W4=500mm、α=45°、β=22°とした。
【0064】
また、太陽光を採り入れる採光部には、透明ガラスからなる採光口と、採光口から採り込まれる光を採光装置内部に反射させるための反射板を設け、採光口から採り込まれた光が放光口から、500mm×500mmの面積で設けられた栽培区に照射されるようにし、栽培区に、播種日から14日経過して5葉展開したチマ・サンチュの苗を12株定植することで、栽培試験を行った。なお、栽培試験においては、栽培区には採光装置からの光以外の光が照射されないように遮光を行なった。
【0065】
そして、栽培開始からの光量を分光放射計(Handy Lambda II、スペクトラ・コープ社製)にて、栽培区に照射される光の光合成量子束密度(PPFD,mol/m2・s)を測定した。光の光合成量子束密度の1日の積算光量から算出される採り込み効率が、5、10、15、20、30%となるように調整し栽培した。14日間経過後に全株の葉の重量を測定し、葉の重量の平均値を算出した。そして、このような測定の結果得られた光を採り込む効率と葉の重量との関係を示すグラフを図10に示す。本実施例では、このような測定結果を元にして、栽培シミュレーションを行なった。
【0066】
<実施例2>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図5〜図7に示す採光装置1aを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、実施例2においては、拡散板11として、実施例1と同様の拡散板を用い、水平面に対する角度α2が45°となるように設置し、さらに、反射板12を、拡散板11と反射板12との角度β2が65°となるように設置した。また、実施例2においては、採光装置1aの構造上、導光部20aに屈曲部を設けず、導光部20aの長さL4を200mmとし、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0067】
<実施例3>
放光部30の放光板32として、内面側表面にエンボス加工が施され、全反射率90%のうち、正反射率が40%、拡散反射率を50%としたものを用いた以外は、実施例2と同様にして、図5〜図7に示す採光装置1aを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。
【0068】
<参考例1>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図11(A)、図11(B)に示す採光装置1bを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、図11(A)は、実施例4で用いた採光装置1bの全体構成を示す斜視図であり、図11(B)は、図11(A)に示す採光装置1bをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。すなわち、実施例4においては、放光部30bの放光板を放光口と平行としたものを用い、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0069】
<参考例2>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図12(A)、図12(B)に示す採光装置1cを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、図12(A)は、実施例5で用いた採光装置1cの全体構成を示す斜視図であり、図12(B)は、図12(A)に示す採光装置1cをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。すなわち、実施例5においては、放光部30cの放光板を、導光部20側から、導光部20から離れるにしたがって傾斜しているような構成としたものを用い、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0070】
<参考例3>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図13(A)、図13(B)に示す採光装置1dを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、図13(A)は、実施例6で用いた採光装置1dの全体構成を示す斜視図であり、図13(B)は、図13(A)に示す採光装置1dをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。すなわち、実施例6においては、放光部30dの放光板を、導光部20a側から、導光部20aから離れるにしたがって傾斜しているような構成としたものを用い、その他の条件については、実施例2と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0071】
<比較例1>
図1〜図4に示す採光装置1において、拡散板11の代わりに、透明ガラスを用いて、閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。すなわち、比較例1においては、拡散板11を用いず、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0072】
<比較例2>
図5〜図7に示す採光装置1aにおいて、拡散板11の代わりに、透明ガラスを用いて、閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。すなわち、比較例1においては、拡散板11を用いず、その他の条件については、実施例2と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
実施例1〜6、比較例1,2の各領域A1〜A12における光量の測定結果より得られた光の取り込み効率を表1に、栽培シミュレーションにおける葉の重量の測定結果を表2に示した。また、表3に、各領域A1〜A12における光の取り込み効率の平均値、光量の均一性、光の取り込み効率の最大値と最小値との差、栽培試験における葉の重量の最大値と最小値との差、光の取り込み効率が50%以上である栽培区の数、および、光の採り込み効率が15%未満の栽培区の数を示す。
【0077】
表3に示すように、採光部10に拡散板11を設けた実施例1〜3、参考例1〜3においては、いずれも光量の最大値と最小値との差、および、葉の重量の最大値と最小値との差が小さく、照射面Sに対して、均一に光を照射されていることが確認できる。なお、これら実施例1〜3、参考例1〜3のなかでも、放光部30の放光板32の形状を、導光部20側から、導光部20から離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面を有する構造とした実施例1〜3においては、光量の最大値と最小値との差、および、葉の重量の最大値と最小値との差が特に小さく、さらには光の採り込み効率が50%以上である栽培区および15%未満である栽培区のいずれも検出されず、照射面Sに対して、より均一に光を照射されていることが確認できる。なお、光の採り込み効率が50%以上である場合には、上述した光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるための実験結果より、葉焼けが生じてしまうことが確認されており、そのため、光の採り込み効率が50%以上の栽培区はゼロであることが望ましい。また、光の採り込み効率が15%未満である場合には、上述した光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるための実験結果より、葉の成長不良および徒長が生じてしまうことが確認されており、そのため、光の採り込み効率が15%未満の栽培区はゼロであることが望ましい。
【0078】
一方、採光部10に拡散板11を設けなかった比較例1,2においては、光量の最大値と最小値との差、および、葉の重量の最大値と最小値との差のいずれも大きくなり、照射面Sに対して照射される光は不均一となる結果となった。
【0079】
<実施例7>
実施例7では、図4〜図6に示す採光装置1aにおいて、拡散板11のヘイズ値を変化させた場合における、照射面Sに照射される光の分布の変化のシミュレーションを行なった。実施例7では、拡散板11と反射板12との角度β2を60°に変更した以外は、上述した実施例2と同様な条件としてシミュレーションを行なった。なお、本シミュレーションでは、北緯約34°地点、夏至の日、午前11時における太陽の位置におけるシミュレーションを行なった。シミュレーション結果を、図14〜図16に示す。
図14(A):拡散板11のヘイズ値が40%のシミュレーション結果
図14(B):拡散板11のヘイズ値が50%のシミュレーション結果
図15(A):拡散板11のヘイズ値が60%のシミュレーション結果
図15(B):拡散板11のヘイズ値が70%のシミュレーション結果
図16(A):拡散板11のヘイズ値が80%のシミュレーション結果
図16(B):拡散板11のヘイズ値が90%のシミュレーション結果
図16(C):拡散板11のヘイズ値が100%のシミュレーション結果
【0080】
なお、図14〜図16中においては、各図において矢印で示した範囲が、照射面Sの領域域に相当する。また、図14〜図16中において、図面左側が導光部20a側に相当する。図14〜図16からも確認できるように、拡散板11のヘイズ値を40%以上、好ましくは60%以上とすることにより、照射面Sに対して均一な光を照射できることが確認できる。一方、図14(A)の結果より、拡散板11のヘイズ値を40%とした場合には、照射面Sに対して照射される光の均一性が低下してしまうことが確認できる。
【符号の説明】
【0081】
1,1a…採光装置
10,10a…採光部
11…拡散板
12…反射板
20,20a…導光部
30…放光部
31…放光口
32…放光板
【技術分野】
【0001】
本発明は、光を室内へと導く採光装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、食物の安定供給のため、植物育成環境を制御して植物を育てる閉鎖型植物工場の開発が進んでいる(たとえば、特許文献1参照)。しかしながら、このような閉鎖型植物工場においては、植物に照射する光の光源として蛍光灯などの人工光源を用いられているが、照明コストが高く、さらには、人工光源栽培であるという点から消費者の印象があまり良くないという問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−85134号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方で、上述した閉鎖型植物工場において、光ダクトを用いて、太陽光を植物工場内に導く方法も考えられるが、本発明者等が検討したところ、植物工場内に光を均一に照射できず、植物の育成に差が生じてしまい、効率的に植物を栽培することができないという課題があった。
【0005】
本発明は、均一に、しかも十分な光量で光を照射可能な採光装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者等は、上述の目的を達成すべく鋭意検討した結果、採光装置において、光を取り込むための採光部に所定のヘイズ値を有する拡散板を設けることにより、上記目的を達成できることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0007】
すなわち、本発明によれば、光を取り込む採光部と、前記採光部から取り込んだ光を導く導光部と、前記導光部により導かれた光を室内に照射する放光部とを備え、前記採光部に、ヘイズ値が50%以上である拡散板を設けたことを特徴とする採光装置が提供される。
【0008】
本発明の採光装置は、内面側に銀または銀合金からなる光反射層が設けられていることが好ましい。
本発明の採光装置において、前記拡散板に対する採光部反射板の角度が45〜70°の範囲となるように設けられていることが好ましい。
本発明の採光装置において、前記放光部は、前記導光部から導かれた光を反射する放光板と、前記放光板により反射された光を室内に照射するための放光口を備え、前記放光板は、前記導光部側から、前記導光部から離れていくにしたがって、前記放光口に近づくような曲面を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、均一に、しかも十分な光量で光を照射可能な採光装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、第1実施形態に係る採光装置1の全体構成を示す斜視図である。
【図2】図2(A)は、第1実施形態に係る採光装置1の側面図、図2(B)は、採光装置1の平面図である。
【図3】図3(A)は、第1実施形態に係る採光装置1の採光部10付近を拡大して示す斜視図、図3(B)は、採光部10の平面図、図3(C)は、採光部10の側面図である。
【図4】図4は、第1実施形態に係る採光装置1の採光部10における採光面積D1と、放光部30における放光面積D2との関係を示す図である。
【図5】図5は、第2実施形態に係る採光装置1aの全体構成を示す斜視図である。
【図6】図6(A)は、第2実施形態に係る採光装置1aの側面図、図6(B)は、採光装置1aの平面図である。
【図7】図7(A)は、第2実施形態に係る採光装置1aの採光部10a付近を拡大して示す斜視図、図7(B)は、採光部10aの正面図、図7(C)は、採光部10aの側面図である。
【図8】図8は、実施例における照射面Sの分割方法を説明するための図である。
【図9】図9(A)、図9(B)は、光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるための実験で用いた採光装置の構成を示す図である。
【図10】図10は、光を採り込む効率と葉の重量との関係を示すグラフである。
【図11】図11(A)は、実施例4で用いた採光装置1bの全体構成を示す斜視図、図11(B)は、採光装置1bの側面図である。
【図12】図12(A)は、実施例5で用いた採光装置1cの全体構成を示す斜視図、図12(B)は、採光装置1cの側面図である。
【図13】図13(A)は、実施例6で用いた採光装置1dの全体構成を示す斜視図、図13(B)は、採光装置1dの側面図である。
【図14】図14(A)、図14(B)は、拡散板11のヘイズ値を変更した場合における、照射面Sに照射される光の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図15】図15(A)、図15(B)は、拡散板11のヘイズ値を変更した場合における、照射面Sに照射される光の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【図16】図16(A)〜図16(C)は、拡散板11のヘイズ値を変更した場合における、照射面Sに照射される光の分布のシミュレーション結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
《第1実施形態》
以下、図面に基づいて、本発明の第1実施形態について説明する。
【0012】
図1は、本実施形態に係る採光装置1の全体構成を示す斜視図である。また、図2(A)は、図1に示す採光装置1をY軸方向正方向に見た場合における側面図、図2(B)は、図1に示す採光装置1をZ軸方向負方向に見た場合における平面図である。
【0013】
図1、図2(A)、図2(B)に示すように、本実施形態に係る採光装置1は、採光部10と、導光部20と、放光部30とを備えている。採光装置1は、採光部10に設けられた拡散板11(拡散板11については後述する。)を介して、外部から太陽光を採り込み、採り込まれた光を、導光部20を介して放光部30に導き、導かれた光が放光部30にて照射面Sに照射されるような構成となっている。なお、図1に示すように、本実施形態に係る採光装置1は、採光部10、導光部20、および放光部30は、いずれもY軸方向の幅はWで同一とされている。
【0014】
本実施形態の採光装置1は、後述するように、その内面が銀または銀合金からなる光反射層で構成されている。また、放光部30には、光を照射面Sに照射するための放光口31(図1中において灰色で示した。)が設けられている。そのため、本実施形態の採光装置1中に採り込まれた光は、採光装置1の内面に形成された光反射層で反射されながら、放光部30に導かれ、放光部30に形成された放光口31から、照射面Sに照射されることとなる。
【0015】
なお、本実施形態に係る採光装置1としては、特に限定されず、種々の用途に用いることができるが、たとえば、冷凍コンテナを閉鎖空間として利用したコンテナ型植物工場などの閉鎖型植物工場内に太陽光を照射するための植物工場用の採光装置として好適に用いられる。そして、本実施形態に係る採光装置1が、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いられる場合には、照射面Sには育成対象となる植物が一面に載置されることとなる。
【0016】
次いで、本実施形態の採光装置1の採光部10について説明する。ここで、図3(A)は、図1に示す採光装置1の採光部10付近を拡大して示す斜視図であり、図3(A)においては、図1に示す採光装置1を、拡散板11が設置されている方向から見た場合における図を示している。また、図3(B)は、図3(A)に示す採光部10をZ軸方向負方向に見た場合における平面図、図3(C)は、図3(A)に示す採光部10をY軸方向正方向に見た場合における側面図である。なお、図3(A)、図3(B)においては、拡散板11を灰色で示している。
【0017】
図3(A)〜図3(C)に示すように、本実施形態の採光装置1には、採光部10の太陽光を採り込む部分に、拡散板11が設けられている。この拡散板11は、光透過作用に加えて、光を拡散させる作用を有し、通常、日中に太陽が位置する方向に向けて配置され、これにより、太陽光を採光装置1内部に採り込むとともに、採り込んだ光を拡散させるものである。
【0018】
本実施形態では、この拡散板11としては、ヘイズ値が50%以上のもの、好ましくは55〜90%、さらに好ましくは60〜80%のものを用いる。本実施形態においては、ヘイズ値がこの範囲にある拡散板11を、採光部10の太陽光を採り込む部分、すなわち、採光装置1の光の取り込み口に設けることにより、放光部30の放光口31から照射面Sに対して照射される光を、均一であり、しかも十分な光量を有するものとすることができる。ヘイズ値が小さすぎると、照射面Sに対する光の照射が不均一になってしまい、採光装置1を閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、照射面Sに載置される植物の一部に光が照射されなくなり、植物の育成に差が生じてしまうこととなる。なお、ヘイズ値は、散乱光線透過率/可視光線透過率を百分率で表したものである。
【0019】
また、拡散板11は、全光線透過率が、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上である。全光線透過率が低すぎると、照射面Sに照射される光の光量が不十分となってしまい、採光装置1を閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、照射面Sに載置される植物の育成が不十分となってしまう場合がある。
【0020】
拡散板11としては、光を透過できるような透明性の高い板に光拡散機能を有する樹脂フィルムを貼り付けたものや、光拡散機能を有する樹脂板を用いることができるが、耐候性に優れるという観点から前記光を透過できるような透明性の高い板に光拡散機能を有する樹脂フィルムを貼り付けたものが好ましい。拡散板11を構成する樹脂フィルムの材料の具体例としては、たとえば、アクリル樹脂、ポリエステル樹脂、シリコン樹脂、などが挙げられ、これらのなかでも、耐候性に優れるという点より、アクリル樹脂が好ましく用いられる。また、拡散板11を構成する光を透過できるような透明性の高い板の具体例としては、たとえば、透明ガラス板、透明樹脂板が挙げられ、これらのなかでも、耐候性に優れるという点より、透明ガラス板が好ましく用いられる。
【0021】
また、拡散板11の樹脂フィルムの厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは50〜200μmであり、より好ましくは70〜150μmである。更に、拡散板11の板の厚みとしては、特に限定されないが、好ましくは3〜9mmであり、より好ましくは5〜8mmである。
【0022】
本実施形態において、採光部10に、拡散板11を設置する際における拡散板11の設置角度としては、特に限定されないが、図3(C)に示すように、水平面(鉛直方向と直角な平面)に対する角度α1が、好ましくは45°となるようにする。角度α1が大きすぎても、小さすぎても、太陽光の採り込み効率が低下してしまうおそれがある。また、角度α1が小さすぎる場合には、拡散板11上に大気中に飛散する塵などが堆積し易くなり、堆積物の影響により、太陽光の採り込み効率が低下してしまうというおそれもある。
【0023】
また、図3(A)〜図3(C)に示すように、採光部10には、反射板12が設置されている。反射板12としては、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。この場合における金属板としては、たとえば、鋼板、またはアルミニウム板を用いることができる。また、銀または銀合金からなる光反射層は、金属板の表面に、銀鏡反応により銀を還元析出させる無電解めっき法や、スプレーめっき法、銀イオンを含む水溶液中での電気分解による電気めっき法、減圧雰囲気下で銀を蒸発させて皮膜を形成する蒸着法などにより形成することができる。
【0024】
さらに、反射板12としては、拡散板11を介して入射される太陽光を効率的に採り込めるように、正反射率の高いような構成とすることが好ましく、たとえば、全反射率のうち、正反射率が90%以上、拡散反射率が10%以下のものを用いることが好ましい。なお、反射板12を、銀または銀合金からなる光反射層を有する構成とする場合において、正反射率および拡散反射率の割合を上記範囲に制御する方法としては、たとえば、基板の表面性状を調整する方法などが挙げられる。
【0025】
また、反射板12の銀または銀合金からなる光反射層の表面には、変色や汚れなどの発生を防止するために、保護膜が形成されていてもよい。保護膜としては、透明ななどの有機樹脂材料、酸化チタンなどの無機材料などを用いて形成することができる。
【0026】
反射板12における、銀または銀合金からなる光反射層の厚みは、好ましくは0.01〜0.3μm、より好ましくは0.08〜0.15μmであり、また、光反射層を銀合金からなるものとする場合における銀合金中の銀の含有割合は、好ましくは95重量%以上であり、より好ましくは98重量%以上である。
【0027】
また、反射板12は、拡散板11に対する角度β1が、好ましくは45〜70°、より好ましくは45〜65°の範囲となるように設置することが望ましい。特に、本実施形態の採光装置1を、年間を通して太陽高度が高いような場所に設置する場合には、反射板12の角度β1は比較的小さくすることが好ましく、一方、年間を通して太陽高度が低いような場所に設置する場合には、反射板12の角度β1は比較的大きくすることが好ましい。一方、拡散板11に対する角度β1が小さすぎると、朝夕などの太陽高度が低い時間帯における太陽光の採り込む量が少なくなり、照射面Sに照射される光の光量が減少してしまう場合があり、また、拡散板11に対する角度β1が大きすぎると、夏至や南中時間帯における太陽光の採り込む量が少なくなり、照射面Sに照射される光の光量が減少してしまう場合がある。
【0028】
このような採光部10から採り込まれた太陽光は、導光部20に導かれる。導光部20は、図1、図2(A)、図2(B)に示すように、採光部10から採り込まれた太陽光を放光部30に導くためのダクト部を形成する。導光部20を形成する材料としては、上述した反射板12と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、導光部20を形成する材料としては、採光部10で採り込まれた太陽光を放光部30へと効率的に導くために、上述した採光部10の反射板12と同様に、全反射率のうち、正反射率が90%以上、拡散反射率が10%以下のものを用いることが好ましい。
【0029】
また、導光部20は、図1、図2(A)に示すように、長さL1の第1直管部と、第1直管部から連続する屈曲部と、屈曲部から連続する長さL2の第2直管部と、から構成されている。すなわち、導光部20に屈曲部を形成しており、導光部20に屈曲部を形成することにより、採光部10から採り込まれる際に拡散板11により拡散された太陽光の導光部20内における反射回数を増加させ、これにより、拡散板11により拡散された太陽光の拡散度合いをより高めることが可能となる。なお、本実施形態に係る採光装置1においては、屈曲部における屈曲角度を90°とし、これにより、長さL1の第1直管部における光の進行方向と、長さL2の第2直管部における光の進行方向とが直角になるように設定している。
【0030】
そして、上述した採光部10から採り込まれた太陽光は、導光部20を介して放光部30まで導かれる。放光部30は、図1、図2(A)、図2(B)に示すように、図1中において灰色で示す放光口31および放光板32を備えており、放光部30まで導かれた光が、放光口31と対向して設けられた放光板32により反射することで、放光口31を介して照射面Sに照射される。
【0031】
放光板32は、放光部30まで導かれた光を反射し、放光口31を介して照射面Sに照射する機能を有し、図1、図2(A)、図2(B)に示すように、導光部20側から、導光部20から離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面を有する構造となっている。このように、放光板32を導光部20から離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面を有する構造とすることにより、放光部30まで導かれた太陽光を、より高い均一度で、照射面Sに照射することができる。
【0032】
また、放光板32を形成する材料としては、上述した反射板12と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、本実施形態の採光装置1が閉鎖型植物工場用の採光装置である場合には、放光板32により反射した光が植物に直接当たることから、放光板32を形成する材料としては、光拡散機能を有していることが好ましく、全反射率のうち、拡散反射率が、好ましくは0〜60%、より好ましくは0〜55%のものを用いることが好ましい。放光板32の拡散反射率を上記範囲とすることにより、照射面Sに照射される光をよりやわらかいものとすることができる。拡散反射率が低すぎると、上述した効果が得難くなり、一方、高すぎると、反射光が照射面S以外の領域に散乱してしまい、結果として、照射面Sに照射される光の光量が低下してしまうおそれがある。
【0033】
放光口31は、放光板32により反射された光を、照射面Sに照射できるような構成であればよく、特に限定されないが、透明性の高い板、たとえば、透明ガラス板や透明樹脂板で構成することができる。あるいは、放光口31としては、このような透明性の高い板を設けずに開口としてもよい。
【0034】
次いで、採光部10における採光面積D1と、放光部30における放光面積D2との関係について説明する。図4は、採光部10における採光面積D1と、放光部30における放光面積D2との関係を示す図である。図4に示すように、採光部10の採光面積D1は、採光部10から採り込まれた太陽光が、採光部10から導光部20に導かれる際における導光部20の導入口の面積であり、また、放光部30の放光面積D2は放光口31の面積である。本実施形態の採光装置1は、採光面積D1と放光面積D2との比が、「採光面積D1:放光面積D2」で表した場合に、好ましくは1:2.5〜1:5、より好ましくは1:3〜1:4である。本実施形態によれば、採光部10に、ヘイズ値が上述した所定の範囲にある拡散板11を設けて、採光部10から採り込まれる太陽光を拡散させるため、このように放光面積D2を採光面積D1と比較して大きなものとした場合でも、照射面Sに、均一、かつ、十分な光量の光を照射することができる。
【0035】
また、本実施形態の採光装置1においては、図2(A)、図4に示すように、導光部20の中心(すなわち、導光部20の高さHに対して、1/2×Hの位置)を通った場合における長さを、導光部20の代表長さLとした場合に、導光部20の代表長さLは、好ましくは200〜400mm、より好ましくは150〜300mmの範囲とされる。また、導光部20の第1直管部の長さL1は、好ましくは0〜150mm、より好ましくは50〜100mmの範囲とされる。さらに、導光部20の第2直管部は、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁を貫通する部分に設けられるものであるため、導光部20の第2直管部の長さL2は、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁の厚さと同程度とされる。具体的には、導光部20の第2直管部の長さL2は、好ましくは100〜400mm、より好ましくは150〜300mmの範囲とされる。
【0036】
本実施形態では、このように導光部20の長さを放光部30の放光口31の大きさによらず、比較的短いものに設定することで、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いられる場合に、省スペース化を実現することが可能となる。また、本実施形態では、採光装置1内に太陽光を採り入れる際に、拡散板11により拡散しているため、導光部20の長さを比較的短く設定した場合でも、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、均一なものとすることができるものである。加えて、本実施形態では、上述したように、導光部20に屈曲部を設け、これにより、導光部20の長さを短くすることによる、拡散板11により拡散された太陽光の反射回数の減少を補うものであり、これにより、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、より均一なものとすることができるものである。
【0037】
本実施形態によれば、採光部10の太陽光を採り込む部分、すなわち、採光装置1の光の取り込み口に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けているため、採光部10から太陽光を採り込む際に採り込んだ光を拡散させることができ、採り込んだ光を拡散した状態で、導光部20を介して放光部30に導くことができ、これにより、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、均一、かつ十分な光量を有するものとすることができる。そのため、本実施形態の採光装置1は、冷凍コンテナを閉鎖空間として利用したコンテナ型植物工場などの閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物工場内の植物に対して、均一に、かつ十分な光量で光を照射することができ、効率的に植物の育成を行なうことができる。
【0038】
また、本実施形態によれば、採光部10の太陽光を採り込む部分に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けており、これにより採光装置1内に採り込まれた段階で、採り込まれた光を拡散することができるため、採光装置1内において、採光装置1の光反射層を利用した光の拡散を行なわない場合でも、放光部30に導かれる光を拡散されたものとすることができるため、導光部20をより短く形成することができ、これにより、採光装置1自体のサイズを小さくでき、省スペース化が可能となる。
【0039】
さらに、本実施形態においては、採光部10の反射板12、導光部20の全体、および放光部30の放光板32の内面側の表面、すなわち、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成している。銀は、紫外域での反射率が低い一方で、可視光領域および可視光領域よりも長波長側において高い反射率を有するため、本実施形態によれば、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成することにより、採光装置1内で採り入れた太陽光を反射させた場合でも、光量を著しく減少させることなく、照射面Sに導くことができる。
【0040】
加えて、銀は、800nm付近に吸収帯域を有し近赤外領域における反射率が低いアルミニウムと異なり、太陽光を反射させた場合に、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光を減衰させることのないものである。具体的には、太陽光をまたは銀合金からなる光反射層で2回以上反射させた場合における、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光の光量を50%以上に保つことできる。そのため、本実施形態によれば、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成することにより、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光を減衰させずに、照射面Sに照射することができる。そのため、本実施形態の採光装置1は、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物の光合成に必要な光合成有効波長域である400〜700nmの光に加えて、光合成促進作用を有する近赤外波長域である700〜1000nm光を植物に照射することができ、これにより、効率的に植物の育成を行なうことができる。そして、本実施形態の採光装置1は、上記特性を活かし、植物工場で育成可能な各種植物の育成、特に、葉物植物(たとえば、レタス類や春菊、ほうれん草、小松菜、水菜等の、主として葉が食される葉菜類)の育成に好適に用いることができる。
【0041】
《第2実施形態》
次いで、本発明の第2実施形態について説明する。
【0042】
図5は、第2実施形態に係る採光装置1aの全体構成を示す斜視図である。また、図6(A)は、図5に示す採光装置1aをY軸方向正方向に見た場合における側面図、図6(B)は、図5に示す採光装置1aをZ軸方向負方向に見た場合における平面図である。
【0043】
なお、第2実施形態に係る採光装置1aは、以下に説明する以外は、上述した第1実施形態の採光装置1aと同様な構成と作用を有し、その重複する説明は省略する。なお、第2実施形態に係る採光装置1aにおいては、上述した第1実施形態に係る採光装置1と同じ構成については同じ符号を付した。
【0044】
図5、図6(A)、図6(B)に示すように、第2実施形態に係る採光装置1aは、採光部10aと、導光部20aと、放光部30とを備えている。第2実施形態に係る採光装置1aも、上述した第1実施形態に係る採光装置1aと同様に、採光部10aに設けられた拡散板11を介して、外部から太陽光を採り込み、採り込まれた光を、導光部20aを介して放光部30に導き、導かれた光が放光部30にて照射面Sに照射されるような構成となっている。なお、図5に示すように、第2実施形態に係る採光装置1aにおいても、上述した第1実施形態と同様に、採光部10a、導光部20a、および放光部30は、いずれもY軸方向の幅はWで同一とされている。
【0045】
第2実施形態に係る採光装置1aは、主として、導光部20aの構成が、上述した第1実施形態に係る採光装置1と異なっている。すなわち、第1実施形態に係る採光装置1においては、導光部20が屈曲部を有している構成であるのに対し、第2実施形態に係る採光装置1aにおいては、導光部20aが屈曲部を有さないような構成となっている。すなわち、第2実施形態に係る採光装置1aは、第1実施形態に係る採光装置1と比較して、より省スペースな構成となっている。また、第2実施形態に係る採光装置1aは、第1実施形態に係る採光装置1と比較して、より簡易な構造であるため、製造に係るコストを低減することが可能となる。
【0046】
図7(A)は、図5に示す採光装置1aの採光部10a付近を拡大して示す斜視図であり、図7(A)においては、図5に示す採光装置1aを、拡散板11が設置されている方向から見た場合における図を示している。また、図7(B)は、図7(A)に示す採光部10aをX軸方向正方向に見た場合における正面図、図7(C)は、図7(A)に示す採光部10aをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。なお、図7(A)、図7(B)においては、拡散板11を灰色で示している。
【0047】
図7(A)〜図7(C)に示すように、第2実施形態の採光装置1aには、採光部10aの太陽光を採り込む部分に、拡散板11が設けられている。なお、拡散板11としては、上述した第1実施形態で例示したものと同じものを用いることができる。
【0048】
第2実施形態の採光装置1aにおける、拡散板11の設置角度としては、特に限定されないが、図7(C)に示すように、照射面Sと水平な面に対する角度α2は、上述した第1実施形態と同様に、好ましくは45°となるようにする。
【0049】
また、図7(A)〜図7(C)に示すように、第2実施形態の採光装置1aにおいても、採光部10aに、反射板12が設置されている。反射板12としては、上述した第1実施形態と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、反射板12の正反射率および拡散反射率も同様とすることができる。第2実施形態の採光装置1aにおける、反射板12の拡散板11に対する角度β2は、上述した第1実施形態と同様に、好ましくは45〜70°、より好ましくは45〜65°の範囲となるように設置することが望ましい。
【0050】
そして、このような採光部10aから採り込まれた太陽光は、導光部20aに導かれる。導光部20aは、上述した第1実施形態と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、導光部20aの正反射率および拡散反射率も同様とすることができる。なお、上述したように、第2実施形態の採光装置1aは、主として、導光部20aには屈曲部が設けられていない点において、上述した第1実施形態に係る採光装置1と異なるものである。
【0051】
放光部30は、図5、図6(A)、図6(B)に示すように、上述した第1実施形態と同様に、図5中において灰色で示す開口部としての放光口31および放光板32を備えており、放光部30まで導かれた光を、導光部20a側から、導光部20aから離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面構造を有する放光板32により反射することで、放光口31を介して照射面Sに照射する。なお、放光板32を形成する材料としては、上述した第1実施形態と同様に、上述した反射板12と同様に、金属板の内面側の表面(採光装置1の内面側の表面)に、銀または銀合金からなる光反射層が形成されてなる板を用いることができる。また、放光板32の拡散反射率も同様とすることができる。
【0052】
また、第2実施形態の採光装置1aにおいては、採光部10aにおける採光面積と、放光部30における放光面積との比や大きさについては、上述した第1実施形態と同様とすることができる。
【0053】
さらに、第2実施形態の採光装置1aにおいては、図6(A)に示すように、導光部20aは、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁を貫通する部分に設けられるものであるため、導光部20aの長さL4は、通常、閉鎖型植物工場の外部と内部とを仕切る壁の厚さと同程度とされる。具体的には、導光部20aの長さL4は、好ましくは100〜400mm、より好ましくは150〜300mmの範囲とされる。本実施形態では、このように導光部20aの長さL4を放光部30の放光口31の大きさによらず、比較的短いものに設定することで、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いられる場合に、省スペース化を実現することが可能となる。
【0054】
以上、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、採光部10の太陽光を採り込む部分、すなわち、採光装置1aの光の取り込み口に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けているため、放光部30の放光口31から照射面Sに照射される光を、均一、かつ十分な光量を有するものとすることができる。そして、上述した第1実施形態と同様に、第2実施形態の採光装置1aは、冷凍コンテナを閉鎖空間として利用したコンテナ型植物工場などの閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物工場内の植物に対して、均一に、かつ十分な光量で光を照射することができ、効率的に植物の育成を行なうことができる。
【0055】
また、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、採光部10aの太陽光を採り込む部分に、ヘイズ値が50%以上の拡散板11を設けており、これにより採光装置1a内に採り込まれた段階で、採り込まれた光を拡散することができるため、採光装置1a内において、採光装置1の光反射層を利用した光の拡散を行なわない場合でも、放光部30に導かれる光を拡散されたものとすることができるため、導光部20aをより短く形成することができ、これにより、採光装置1a自体のサイズを小さくでき、省スペース化が可能となる。
【0056】
さらに、第2実施形態においては、上述した第1実施形態と同様に、採光部10aの反射板12、導光部20aの全体、および放光部30の放光板32の内面側の表面、すなわち、採光装置1の内面側の表面を、銀または銀合金からなる光反射層で形成している。そのため、第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様に、光量を著しく減少させることなく、照射面Sに導くことができ、さらには、400〜1000nmの波長域のうち、700〜1000nmの波長域の光を減衰させずに、照射面Sに照射することができる。そのため、第2実施形態の採光装置1aは、上述した第1実施形態と同様に、閉鎖型植物工場用の採光装置として用いた場合に、植物の光合成に必要な光合成有効波長域である400〜700nmの光に加えて、光合成促進作用を有する近赤外波長域である700〜1000nm光を植物に照射することができ、これにより、効率的に植物の育成を行なうことができる。そして、第2実施形態の採光装置1aは、上記特性を活かし、植物工場で育成可能な各種植物の育成、特に、葉物植物(たとえば、レタス類や春菊、ほうれん草、小松菜、水菜等の、主として葉が食される葉菜類)の育成に好適に用いることができる。
【0057】
なお、以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするために記載されたものであって、本発明を限定するために記載されたものではない。したがって、上記の実施形態に開示された各要素は、本発明の技術的範囲に属する全ての設計変更や均等物をも含む趣旨である。
【実施例】
【0058】
以下に、実施例を挙げて、本発明についてより具体的に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。
【0059】
<実施例1>
図1〜図4に示す採光装置1を備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場について、評価を行った。なお、実施例1では、拡散板11として、ヘイズ値が70%、全光線透過率が90%、厚み80μmのアクリル樹脂製の拡散フィルムを貼り付けた透明ガラス板を用い、水平面に対する角度α1が45°となるように設置し、さらに、反射板12を、拡散板11と反射板12との角度β1が45°となるように設置した。また、採光部10の反射板12、導光部20の全体、および放光部30の放光板32、側面板は、いずれも金属板としての鋼板上にアクリルウレタン樹脂からなる樹脂層を形成し、その上に銀からなる光反射層およびアクリルシリコン系樹脂からなる保護膜を形成してなるものを用い、採光部10の反射板12、導光部20の全体については、全反射率95%のうち、正反射率94%、拡散反射率1%とし、放光部30の放光板32、側面板についても、全反射率95%のうち、正反射率94%、拡散反射率1%とした。
【0060】
また、採光装置1のY軸方向の幅Wは、採光部10、導光部20、および放光部30のいずれも450mmとし、導光部20の第1直管部の長さL1=0mm、第2直管部の長さL2=200mm、導光部20の高さH=100mm、屈曲部をR100形状とした。すなわち、導光部20の代表長さL=278.5mmとした。さらに、放光口31における長さL3=300mmとし、放光面積D2=L3×W=300mm×450mm=135,000mm2とし、また、採光面積D1=H×W=100mm×450mm=45,000mm2とした。
【0061】
そして、このような採光装置1を備える閉鎖型植物工場を用いて、照射面Sにおける光量の測定を行った。
【0062】
具体的には、照射面Sにおける光量(光量子束密度:μmol/m2・s)の測定は次のようにして行った。すなわち、照射面Sを図8に示すように均等な面積でA1〜A12の12個の領域に分割し、各領域A1〜A12に光量子測定装置をそれぞれ設置して、各領域A1〜A12における午前9時〜午後4時までの光量を測定し、その積算値を算出した。また、これとは別に、全天空光量についても同条件で測定し、その積算値を算出した。そして、各領域A1〜A12における光量の積算値と、全天空光量の積算値とに基づいて、各領域A1〜A12における、光の採り込み効率を下記式にしたがって算出した。また、下記式にしたがって算出した光の採り込み効率に基づいて、栽培シミュレーションを行なった。光の採り込み効率の結果を表1に、栽培シミュレーションの結果得られた育成される植物の葉の重量のシミュレーション結果を表2に、これらの結果をまとめたものを表3に示した。
各領域A1〜A12の光の採り込み効率(%)=各領域A1〜A12における光量の積算値/全天空光量の積算値
【0063】
なお、栽培シミュレーションは、以下に説明する栽培試験から得た光を採り込む効率と葉の重量との相関を元に行った。
すなわち、本実施例では、光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるために、図9(A)、図9(B)に示す採光装置を作製し、作製した採光装置を用いて、栽培試験を行い、葉の重量の測定を行った。なお、採光装置は、鋼板上に銀からなる光反射層およびアクリルシリコン系樹脂からなる保護膜を形成してなる光反射板を用いて作製した。また、図9(A)、図9(B)中、L1=4230mm、L2=770mm、L3=1572mm、W1=W2=W3=W4=500mm、α=45°、β=22°とした。
【0064】
また、太陽光を採り入れる採光部には、透明ガラスからなる採光口と、採光口から採り込まれる光を採光装置内部に反射させるための反射板を設け、採光口から採り込まれた光が放光口から、500mm×500mmの面積で設けられた栽培区に照射されるようにし、栽培区に、播種日から14日経過して5葉展開したチマ・サンチュの苗を12株定植することで、栽培試験を行った。なお、栽培試験においては、栽培区には採光装置からの光以外の光が照射されないように遮光を行なった。
【0065】
そして、栽培開始からの光量を分光放射計(Handy Lambda II、スペクトラ・コープ社製)にて、栽培区に照射される光の光合成量子束密度(PPFD,mol/m2・s)を測定した。光の光合成量子束密度の1日の積算光量から算出される採り込み効率が、5、10、15、20、30%となるように調整し栽培した。14日間経過後に全株の葉の重量を測定し、葉の重量の平均値を算出した。そして、このような測定の結果得られた光を採り込む効率と葉の重量との関係を示すグラフを図10に示す。本実施例では、このような測定結果を元にして、栽培シミュレーションを行なった。
【0066】
<実施例2>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図5〜図7に示す採光装置1aを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、実施例2においては、拡散板11として、実施例1と同様の拡散板を用い、水平面に対する角度α2が45°となるように設置し、さらに、反射板12を、拡散板11と反射板12との角度β2が65°となるように設置した。また、実施例2においては、採光装置1aの構造上、導光部20aに屈曲部を設けず、導光部20aの長さL4を200mmとし、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0067】
<実施例3>
放光部30の放光板32として、内面側表面にエンボス加工が施され、全反射率90%のうち、正反射率が40%、拡散反射率を50%としたものを用いた以外は、実施例2と同様にして、図5〜図7に示す採光装置1aを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。
【0068】
<参考例1>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図11(A)、図11(B)に示す採光装置1bを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、図11(A)は、実施例4で用いた採光装置1bの全体構成を示す斜視図であり、図11(B)は、図11(A)に示す採光装置1bをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。すなわち、実施例4においては、放光部30bの放光板を放光口と平行としたものを用い、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0069】
<参考例2>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図12(A)、図12(B)に示す採光装置1cを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、図12(A)は、実施例5で用いた採光装置1cの全体構成を示す斜視図であり、図12(B)は、図12(A)に示す採光装置1cをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。すなわち、実施例5においては、放光部30cの放光板を、導光部20側から、導光部20から離れるにしたがって傾斜しているような構成としたものを用い、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0070】
<参考例3>
図1〜図4に示す採光装置1に代えて、図13(A)、図13(B)に示す採光装置1dを備える閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。なお、図13(A)は、実施例6で用いた採光装置1dの全体構成を示す斜視図であり、図13(B)は、図13(A)に示す採光装置1dをY軸方向正方向に見た場合における側面図である。すなわち、実施例6においては、放光部30dの放光板を、導光部20a側から、導光部20aから離れるにしたがって傾斜しているような構成としたものを用い、その他の条件については、実施例2と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0071】
<比較例1>
図1〜図4に示す採光装置1において、拡散板11の代わりに、透明ガラスを用いて、閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。すなわち、比較例1においては、拡散板11を用いず、その他の条件については、実施例1と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0072】
<比較例2>
図5〜図7に示す採光装置1aにおいて、拡散板11の代わりに、透明ガラスを用いて、閉鎖型植物工場を作製し、作製した植物工場において、上述した実施例1と同様に、照射面Sにおける光量の測定および栽培試験を行った。すなわち、比較例1においては、拡散板11を用いず、その他の条件については、実施例2と同様とした。結果を表1〜表3に示す。
【0073】
【表1】
【0074】
【表2】
【0075】
【表3】
【0076】
実施例1〜6、比較例1,2の各領域A1〜A12における光量の測定結果より得られた光の取り込み効率を表1に、栽培シミュレーションにおける葉の重量の測定結果を表2に示した。また、表3に、各領域A1〜A12における光の取り込み効率の平均値、光量の均一性、光の取り込み効率の最大値と最小値との差、栽培試験における葉の重量の最大値と最小値との差、光の取り込み効率が50%以上である栽培区の数、および、光の採り込み効率が15%未満の栽培区の数を示す。
【0077】
表3に示すように、採光部10に拡散板11を設けた実施例1〜3、参考例1〜3においては、いずれも光量の最大値と最小値との差、および、葉の重量の最大値と最小値との差が小さく、照射面Sに対して、均一に光を照射されていることが確認できる。なお、これら実施例1〜3、参考例1〜3のなかでも、放光部30の放光板32の形状を、導光部20側から、導光部20から離れていくにしたがって、放光口31に近づくような曲面を有する構造とした実施例1〜3においては、光量の最大値と最小値との差、および、葉の重量の最大値と最小値との差が特に小さく、さらには光の採り込み効率が50%以上である栽培区および15%未満である栽培区のいずれも検出されず、照射面Sに対して、より均一に光を照射されていることが確認できる。なお、光の採り込み効率が50%以上である場合には、上述した光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるための実験結果より、葉焼けが生じてしまうことが確認されており、そのため、光の採り込み効率が50%以上の栽培区はゼロであることが望ましい。また、光の採り込み効率が15%未満である場合には、上述した光を採り込む効率と葉の重量との相関を調べるための実験結果より、葉の成長不良および徒長が生じてしまうことが確認されており、そのため、光の採り込み効率が15%未満の栽培区はゼロであることが望ましい。
【0078】
一方、採光部10に拡散板11を設けなかった比較例1,2においては、光量の最大値と最小値との差、および、葉の重量の最大値と最小値との差のいずれも大きくなり、照射面Sに対して照射される光は不均一となる結果となった。
【0079】
<実施例7>
実施例7では、図4〜図6に示す採光装置1aにおいて、拡散板11のヘイズ値を変化させた場合における、照射面Sに照射される光の分布の変化のシミュレーションを行なった。実施例7では、拡散板11と反射板12との角度β2を60°に変更した以外は、上述した実施例2と同様な条件としてシミュレーションを行なった。なお、本シミュレーションでは、北緯約34°地点、夏至の日、午前11時における太陽の位置におけるシミュレーションを行なった。シミュレーション結果を、図14〜図16に示す。
図14(A):拡散板11のヘイズ値が40%のシミュレーション結果
図14(B):拡散板11のヘイズ値が50%のシミュレーション結果
図15(A):拡散板11のヘイズ値が60%のシミュレーション結果
図15(B):拡散板11のヘイズ値が70%のシミュレーション結果
図16(A):拡散板11のヘイズ値が80%のシミュレーション結果
図16(B):拡散板11のヘイズ値が90%のシミュレーション結果
図16(C):拡散板11のヘイズ値が100%のシミュレーション結果
【0080】
なお、図14〜図16中においては、各図において矢印で示した範囲が、照射面Sの領域域に相当する。また、図14〜図16中において、図面左側が導光部20a側に相当する。図14〜図16からも確認できるように、拡散板11のヘイズ値を40%以上、好ましくは60%以上とすることにより、照射面Sに対して均一な光を照射できることが確認できる。一方、図14(A)の結果より、拡散板11のヘイズ値を40%とした場合には、照射面Sに対して照射される光の均一性が低下してしまうことが確認できる。
【符号の説明】
【0081】
1,1a…採光装置
10,10a…採光部
11…拡散板
12…反射板
20,20a…導光部
30…放光部
31…放光口
32…放光板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を取り込む採光部と、前記採光部から取り込んだ光を導く導光部と、前記導光部により導かれた光を室内に照射する放光部とを備え、前記採光部に、ヘイズ値が50%以上である拡散板を設けたことを特徴とする採光装置。
【請求項2】
内側に銀または銀合金からなる光反射層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の採光装置。
【請求項3】
前記拡散板に対する採光部反射板の角度が45〜70°の範囲となるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の採光装置。
【請求項4】
前記放光部は、前記導光部から導かれた光を反射する放光板と、前記放光板により反射された光を室内に照射するための放光口を備え、前記放光板は、前記導光部側から、前記導光部から離れていくにしたがって、前記放光口に近づくような曲面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の採光装置。
【請求項1】
光を取り込む採光部と、前記採光部から取り込んだ光を導く導光部と、前記導光部により導かれた光を室内に照射する放光部とを備え、前記採光部に、ヘイズ値が50%以上である拡散板を設けたことを特徴とする採光装置。
【請求項2】
内側に銀または銀合金からなる光反射層が設けられていることを特徴とする請求項1に記載の採光装置。
【請求項3】
前記拡散板に対する採光部反射板の角度が45〜70°の範囲となるように設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載の採光装置。
【請求項4】
前記放光部は、前記導光部から導かれた光を反射する放光板と、前記放光板により反射された光を室内に照射するための放光口を備え、前記放光板は、前記導光部側から、前記導光部から離れていくにしたがって、前記放光口に近づくような曲面を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の採光装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2012−256557(P2012−256557A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−129802(P2011−129802)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(390003193)東洋鋼鈑株式会社 (265)
【Fターム(参考)】
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