説明

採血補助装置

【課題】採血の際に、穿刺すべき静脈の選択及び選んだ静脈における穿刺部位の選択を補助することができる採血補助装置を提供する。
【解決手段】近赤外線を穿刺部位の皮膚表面に照射して、その反射パターンから静脈の走行パターン画像を作成可能な静脈視認装置と、モニターと、静脈走行パターン画像を採血前静脈走行パターン画像として入力して前記モニターに表示させ、表示した採血前静脈走行パターン画像に、患者の採血結果に基づく採血成功部位に関する情報を入力可能とし、採血前静脈走行パターン画像と採血成功部位に関する情報とを組み合わせて採血済み静脈走行パターン画像として、患者IDと関連付けして記憶装置に記憶させる。患者IDに基づいて前記採血成功部位に関する情報を含んだ採血済み静脈走行パターン画像を前記記憶装置から読み出して、読み出した採血済み静脈走行パターン画像を採血成功部位が分かるように前記モニターに表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、採血作業者が採血を行なう時の穿刺を補助するための採血補助装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、健康診断やその他の検査のために医療の現場では採血が頻繁に行なわれる。
採血の際、血液は患者の静脈から採取される。そのため、採血針を静脈に穿刺する必要がある。穿刺は、患者の身体の穿刺部位(例えば、肘正中)より上方(心臓側)に駆血帯を巻き付けて静脈を怒張・固定させ、採血作業者が、穿刺すべき静脈を目視及び触診によって選択して行なう。
しかし、血管の太さは患者によって異なる上に、体表からよく見える静脈が必ずしも太いとは限らない等、穿刺すべき静脈の選択は非常に難しく、熟練を要する。患者によっては、熟練者であっても、血管の位置を体表から目視及び触診では確認することが困難な者もいる。
穿刺すべき静脈の選択を誤ると、針が血管に刺さらなかったり、細い静脈を傷つけて内出血を起こさせてしまうという問題がある。そしてなにより、針を何回も患者の身体に刺すことは、患者に何度も痛みを与えるので問題である。
このような問題を解決するために、穿刺の成功率を高めるための補助装置が種々提案されている。例えば、特許文献1には、施術部位の赤外線による血管透視画像を表示する画像表示装置を施術者の頭部に固定することによって、施術者が施術部位の肉眼による画像と、赤外線による血管透視画像とを同時に確認しながら穿刺の手技を行なうことができる施術用血管視認システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−89876号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記した従来の血管視認装置は、患者の血管そのものを画像として表示するため、目視や触診に比べて静脈の選択が非常に容易になり、かつ正確になるという利点がある。
しかし、上記した従来の血管視認装置は、患者の血管そのものを画像として表示するだけであり、表示された静脈の中から、どの静脈を選択するかは施術者自身が自らの経験に基づいて決めなければならない。
発明者は、従来の血管視認装置が、単に血管の画像を表示させるだけであることに着目し、これをさらに進歩させ、表示された画像の中からの静脈の選択及び穿刺部位の選択を補助することができる装置があれば、採血をより容易に、かつ、確実に行なうことができることを見出した。
本発明は、採血の際に、穿刺すべき静脈の選択及び選んだ静脈における穿刺部位の選択を補助することができる採血補助装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記した目的を達成するために、本発明に係る採血補助装置は、近赤外線を穿刺部位の皮膚表面に照射して、その反射パターンから静脈の走行を探知し、探知結果に基づいて穿刺部位の静脈走行パターン画像を作成可能な静脈視認装置と、モニターと、前記静脈視認装置で作成された静脈走行パターン画像を採血前静脈走行パターン画像として入力して前記モニターに表示させ、表示した採血前静脈走行パターン画像に、その患者の実際の採血結果に基づく採血成功部位に関する情報を入力可能とし、前記採血前静脈走行パターン画像と採血成功部位に関する情報とを組み合わせて採血済み静脈走行パターン画像として、その患者の患者IDと関連付けして記憶装置に記憶させるように構成された制御装置とを備え、前記制御装置を、患者IDに基づいて前記採血成功部位に関する情報を含んだ採血済み静脈走行パターン画像を前記記憶装置から読み出して、読み出した採血済み静脈走行パターン画像を採血成功部位が分かるように前記モニターに表示することができるように構成したことを特徴としている。
【発明の効果】
【0006】
本発明に係る採血補助装置は、近赤外線を穿刺部位の皮膚表面に照射して、その反射パターンから静脈の走行を探知し、探知結果に基づいて穿刺部位の静脈走行パターン画像を作成可能な静脈視認装置と、モニターと、前記静脈視認装置で作成された静脈走行パターン画像を採血前静脈走行パターン画像として入力して前記モニターに表示させ、表示した採血前静脈走行パターン画像に、その患者の実際の採血結果に基づく採血成功部位に関する情報を入力可能とし、前記採血前静脈走行パターン画像と採血成功部位に関する情報とを組み合わせて採血済み静脈走行パターン画像として、その患者の患者IDと関連付けして記憶装置に記憶させるように構成された制御装置とを備え、前記制御装置を、患者IDに基づいて前記採血成功部位に関する情報を含んだ採血済み静脈走行パターン画像を前記記憶装置から読み出して、読み出した採血済み静脈走行パターン画像を採血成功部位が分かるように前記モニターに表示することができるように構成されているので、単に血管の画像を表示させるだけでなく、その患者に対する過去の採血の成功例に基づいて、表示された採血済み静脈走行パターン画像の中から、より穿刺に適した静脈の選択及び穿刺部位の選択を補助することができるようになるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る採血補助装置が設けられた採血台の概略斜視図である。
【図2】採血補助装置の構成を示す概略ブロック図である。
【図3】制御装置4によって表示されるモニター3の表示画面を示している。
【図4】制御装置4によって表示されるモニター3の表示画面を示している。
【図5】制御装置4によって表示されるモニター3の表示画面を示している。
【図6】制御装置4によって表示されるモニター3の表示画面を示している。
【図7】制御装置4によって表示されるモニター3の表示画面の別の実施例を示している。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、添付図面に示す一実施例を参照しながら、本発明に係る採血補助装置の実施の形態について説明していく。
図1は、本発明に係る採血補助装置が設けられた採血台の概略斜視図を、図2は採血補助装置の構成を示す概略ブロック図を各々示している。
図1中、符号1は採血台を示している。この採血台1には、本発明に係る採血補助装置の一部を構成する静脈視認装置2及びモニター3が設けられている。
静脈視認装置2は、近赤外線を穿刺部位の皮膚表面に照射して、その反射パターンから静脈の走行を探知し、探知した静脈走行パターン画像を、その患者の穿刺部位の皮膚表面に可視光で投影すると共に、後述する制御装置4に出力するように構成されている。
図2に示すように、本発明に係る採血補助装置は、前記した静脈視認装置2及びモニター3に加えて、制御装置4及びバーコードリーダ5を備えている。制御装置4は、例えば、パーソナルコンピュータで構成され得る。
制御装置4は、バーコードリーダ5で読み取った採血すべき患者の患者ID情報と、静脈視認装置2から出力される前記患者の「採血前静脈走行パターン画像」とを入力し、これらの情報に加えて実際の採血結果に関する情報を関連付けして「採血済み静脈走行パターン画像」として外部又は内部の記憶装置又はサーバ6に記憶させると共に、必要に応じてサーバ6に記憶させた「採血済み静脈走行パターン画像」を読み出してモニター3に表示させることができるように構成されている。
以下、制御装置4の機能について説明していく。
図3〜図6は、制御装置4によって表示されるモニター3の表示画面の一例を示している。
図3〜図6において、符号10で示す領域は、採血をすべき患者の患者IDや氏名等を表示する患者情報表示領域である。また、符号11で示す領域は、静脈視認装置2から出力される「採血前静脈走行パターン画像」又はサーバ6等に記憶された「採血済み静脈走行パターン画像」を表示するための静脈走行パターン画像表示領域である。
採血作業者が、バーコードリーダ5を用いて採血すべき患者の採血指示書や整理券等に印字されたバーコードを読み取り、そのバーコード情報が制御装置4に送られると、制御装置4は、そのバーコード情報に対応する患者IDや患者氏名等の患者に情報をサーバ6から読み出してモニター3の患者情報表示領域10に表示させる(図3参照)。
また、制御装置4は、患者IDに対応する「採血済み静脈走行パターン画像」がサーバ6に記録されていないか否かを照会し、サーバ6に「採血済み静脈走行パターン画像」が記録されていれば、同画像をサーバ6から読み出してモニター3の静脈走行パターン表示領域11に表示させる。
患者IDに対応する「採血済み静脈走行パターン画像」がサーバ6に記録されていない場合には、静脈走行パターン表示領域11には何も表示されない。図3は、患者IDに対応する「採血済み静脈走行パターン画像」がサーバ6に記録されていなかった例を示している。
次いで、採血作業者が、患者に腕を静脈視認装置2の下方の認識位置に置いてもらい、静脈視認装置2を作動させると、静脈視認装置2は、近赤外線を穿刺部位の皮膚表面に照射して、その反射パターンから静脈の走行を探知し、探知した静脈走行パターン画像を、その患者の穿刺部位の皮膚表面に可視光で投影する。静脈視認装置2は、この時、同時に探知した静脈走行パターン画像を制御装置4に出力する。
制御装置4は、静脈視認装置2から静脈走行パターン画像を入力すると、同画像を「採血前静脈走行パターン画像」としてモニター3の静脈走行パターン表示領域11に表示させる(図4参照)。
次いで、採血作業者は、動脈視認装置2が患者の穿刺部位に投影した静脈走行パターン画像を参照しながら、穿刺すべき静脈を選択して、採血針を穿刺して採血を行なう。
採血作業者は、採血終了後に、例えば、マウスを用いてモニター3の静脈走行パターン表示領域11に表示されている「成功」ボタンをクリックして選択した後、同領域11に表示されている「採血前静脈走行パターン画像」の中で穿刺が成功した部位をクリックして選択する。制御装置4は、この採血作業者の動作に基づいて、採血作業者が選択した部位を採血成功部位として登録し、「採血前静脈走行パターン画像」における前記採血成功部位に「○」を表示させる(図5参照)。
また、採血が1回で成功しなかった場合には、採血作業者は、制御装置4に採血失敗部位を入力をする。この場合、採血作業者は、例えば、マウスを用いてモニター3の静脈走行パターン表示領域11に表示されている「失敗」ボタンをクリックして選択した後、同領域11に表示されている「採血前静脈走行パターン画像」の中で穿刺が失敗した部位をクリックして選択する。制御装置4は、この採血作業者の動作に基づいて、採血作業者が選択した部位を採血失敗部位として登録し、「採血前静脈走行パターン画像」における前記採血失敗部位に「×」を表示させる(図5参照)。
また、採血作業者は、例えば、マウスを用いてモニター3の静脈走行パターン表示領域11に表示されている穿刺部位名称選択リストボックスの中から、静脈視認装置2で視認させた穿刺部位を選択する。図5においては、穿刺部位は「左正中」が選択されている。この「左正中」は、左腕の肘正中を意味している。前記リストボックスには、「左正中」の他、右腕の肘正中を表す「右正中」等、穿刺する可能性がある様々な穿刺部位の名称が予め登録されている。
採血作業者が、上記した採血結果の登録及び穿刺部位名称の選択をした後、モニター3における下側に表示されている操作ボタンの中の「登録」をクリックすると、制御装置4は、「採血前静脈走行パターン画像」「採血成功部位」「採血失敗部位」及び「穿刺部位名称」を、患者IDと関連付けして「採血済み静脈走行パターン画像」として、サーバ6に記憶させる。
同じ患者に対して後日採血を行なう場合には、制御装置4は、患者IDに基づいて、サーバ6に記録された「採血済み静脈走行パターン画像」をモニター3の静脈走行パターン表示領域11に表示させる(図6参照)。
図3〜図6において、モニター3における下側に表示されている操作ボタンの中の「切替」ボタンは、静脈走行パターン表示領域11の表示内容を切り替えるためのボタンであり、例えば、「採血済み静脈走行パターン画像」と「採血前静脈走行パターン画像」とを切り替えたり、また、「採血済み静脈走行パターン画像」が複数保存されている場合には、それらを切り替えたりするために使用される。
【0009】
上記した実施例では、「採血済み静脈走行パターン画像」には、各採決前静脈走行パターン画像に「採血成功部位」「採血失敗部位」及び「穿刺部位名称」が組み合わされて記録されているが、各採血前静脈走行パターン画像に組み合わせられる採血結果に関する情報は、本実施例に限定されることなく、例えば、前記した情報に加えて、採血をした日時や採血を行なった採血作業者に関する情報も組み合わせて記憶され得る。
また、上記した実施例では、制御装置4が、「採血前静脈走行パターン画像」と「採血済み静脈走行パターン画像」とを切り替えて表示するように構成されているが、この構成は本実施例に限定されることなく、例えば、モニター3に二つの静脈走行パターン表示領域11を設けて「採血前静脈走行パターン画像」と「採血済み静脈走行パターン画像」とを同時に並べて表示するように制御装置4を構成してもよい。
さらに、制御装置4は、「採血済み静脈走行パターン画像」が複数保存されている場合には、好ましくは、最新の「採血済み静脈走行パターン画像」を優先して表示するように構成され得る。また、制御装置4は、「採血済み静脈走行パターン画像」が複数保存されている場合には、複数の「採血済み静脈走行パターン画像」の「採血成功部位」データから最も採血が成功し易い部位を決めて、その部位を例えば二重丸等の「採血成功部位」とは異なるマークで表示するように構成され得る。
さらにまた、上記した実施例では、モニター3に患者情報表示領域10、動脈走行パターン表示領域11及び操作ボタン類を表示するように制御装置4を構成した例を挙げているが、制御装置4の構成は本実施例に限定されることなく、患者情報表示領域10、動脈走行パターン表示領域11及び操作ボタン類に加えて、例えば、採血の待ち人数に関する情報や患者の採血に関する情報等を同時に表示するように制御装置4を構成してもよい(図7参照)。
また、上記した実施例では、記憶装置としてサーバを例に挙げて説明しているが、記憶装置の構成は本実施例に限定されることなく、例えば、制御装置を構成するパーソナルコンピュータ内のハードディスクを記憶装置として用いてもよいことは勿論である。
さらにまた、上記した実施例では、採血成功部位及び採血失敗部位の登録やその他の操作をマウスを用いて行うことを例に挙げて説明をしているが、これらの操作手段は本実施例に限定されることなく、例えば、キーボードで行えるように構成してもよく、また、モニターをタッチパネルで構成してタッチパネルを介して採血成功部位及び採血失敗部位の登録を行うように構成してもよい。
【符号の説明】
【0010】
1 採血台
2 静脈視認装置
3 モニター
4 制御装置
5 バーコードリーダ
6 記憶装置(又はサーバ)

10 患者情報表示領域
11 静脈走行パターン表示領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
近赤外線を穿刺部位の皮膚表面に照射して、その反射パターンから静脈の走行を探知し、探知結果に基づいて穿刺部位の静脈走行パターン画像を作成可能な静脈視認装置と、
モニターと、
前記静脈視認装置で作成された静脈走行パターン画像を採血前静脈走行パターン画像として入力して前記モニターに表示させ、
表示した採血前静脈走行パターン画像に、その患者の実際の採血結果に基づく採血成功部位に関する情報を入力可能とし、
前記採血前静脈走行パターン画像と採血成功部位に関する情報とを組み合わせて採血済み静脈走行パターン画像として、その患者の患者IDと関連付けして記憶装置に記憶させる
ように構成された制御装置と
を備え、
前記制御装置を、患者IDに基づいて前記採血成功部位に関する情報を含んだ採血済み静脈走行パターン画像を前記記憶装置から読み出して、読み出した採血済み静脈走行パターン画像を採血成功部位が分かるように前記モニターに表示することができるように構成した
ことを特徴とする採血補助装置。
【請求項2】
前記制御装置が、さらに採血前静脈走行パターン画像に採血失敗部位を組み合わせて採血済み静脈走行パターン画像として記憶装置に記憶させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1に記載の採血補助装置。
【請求項3】
前記制御装置が、同一の患者に対して複数の採血済み静脈走行パターン画像を経時的に記憶装置に記憶させるように構成されている
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の採血補助装置。
【請求項4】
前記制御装置が、採血済み静脈走行パターン画像と、採血前の静脈走行パターン画像とをモニター上で切り替えて表示できるように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の採血補助装置。
【請求項5】
前記制御装置が、採血済み静脈走行パターン画像と、採血前の静脈走行パターン画像とをモニター上に同時に表示できるように構成されている
ことを特徴とする請求項1〜3の何れか一項に記載の採血補助装置。

【図2】
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【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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