説明

採血針

【課題】 本発明は注射器3と注射針1とによる採血をスピイツ内に安全迅速に採血(分注)することを目的とする。
【解決手段】 注射針1の基端部2に注射器3のノズル4を着脱自在に嵌合する注入口5を開口し、上記基端部2に雄ネジ部6を形成し、該雄ネジ部6を採血管ホルダー7に着脱自在に螺入するようにし、上記注入口と上記雄ネジ部とを短管で接続し、該短管に複数の補強縁を上記基端部の中心線に沿って設けてなることを特徴とする採血針。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は採血用注射器に用いる採血針に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血管が極めて細い患者や乳幼児又は静脈圧が低い場合或は血液量が少ない場合で真空管採血が困難な場合がある(例えば特許文献1、2)。
【0003】
しかし真空管採血による合併症のリスクが大きい場合には注射器と従来の注射針を用いた採血が行われる(例えば非特許文献1)。
【0004】
注射器と従来の注射針を用いた採血では注射針を減圧採血管又は陰圧試験管(スピイツ)内にゴム栓から刺入し、注射器内の採血(検体)をスピイツ内に直接減圧により採血した。
【0005】
このような採血手順では右手に持った注射器の注射針を一旦体外に露出し、この注射針をスピイツ内に刺入する手順又は動作が行われ、針刺し事故を起こしやすいという危険性があり、かつ時間を要し、陰圧(負圧)及び針の内径(22ゲージ以下)によっては血液中の赤血球が壊れ溶血して検体(検査用の血液)に用い難いという問題があった。
【0006】
【特許文献1】特開平9−56700号公報
【特許文献2】特開2005−325486号公報
【非特許文献1】北海道医報第1032号平成16年9月1日「標準採血法ガイドライン」(第1版)(3)(4)頁
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は注射器と注射針とによる採血をスピイツ内に安全迅速に採血(分注)することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的を達成するため本発明は、
第1に注射針の基端部に注射器のノズルを着脱自在に嵌合する注入口を開口し、上記基端部に雄ネジ部を形成し、該雄ネジ部を採血管ホルダーに着脱自在に螺入するようにした採血針、
第2に上記注入口と上記雄ネジ部とを短管で接続し、該短管に複数の補強縁を上記基端部の中心線に沿って設けた上記第1発明記載の採血針、
第3に上記注入口と上記雄ネジ部とをカテーテルで接続し、該雄ネジ部に翼状板を設けた上記第1又は第2発明記載の採血針、
第4に上記雄ネジ部を上記採血管ホルダーに螺着してなる上記第1〜第3発明いずれかに記載の採血針、
第5に上記注射針に代る穿刺針である上記第1〜第4発明のいずれかに記載の採血針、
第6に上記雄ネジ部に代り上記基端部に逆止係合段を形成し、上記採血管ホルダーに上記着脱自在螺入に代り逆止係合するように形成した上記第1〜第5発明のいずれかに記載の採血針、
によって構成される。
【0009】
従って注射針の上記注入口に注射器のノズルを嵌合し、注射針を静脈に刺入して注射器のシリンダー内に血液を採血する。
【0010】
その後上記注射針を上記ホルダー内に挿入し、該注射針の基端部に形成した雄ネジ部を該ホルダーに螺入し、
該ホルダーの他端から負圧採血管(スピイツ)を該ホルダー内に挿入すると該採血管のゴム栓を貫通して該採血管内に注射針が刺入され、該採血管の負圧又は陰圧により、注射器内の採血(検体)は自動的に該採血管内に流入し、これを繰返して複数の採血管内に上記採血を分注することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明では注射器のノズルに注射針の注入口を嵌合装着し、そのまま注射針を直接採血管ホルダー内に挿入し、注射針と上記ホルダーとを螺着して固定し得て、その状態で安全迅速に注射器内の検体を採血管(スピイツ)内に速やかに採血し得る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
注射針1の基端部2はほぼ錐形の合成樹脂製支持部であって一端に注入口5を開口する。
【0013】
この注入口5には注射器3のノズル4を着脱自在に嵌合し、注射器3はシリンダー3’内に手動摺動杆3”を有する一般の医療用注射器3である。
【0014】
上記基端部2の他端側即ち注射針1側に雄ネジ部6を形成する(図1(イ)(ロ)(ハ)(ニ)図に示す)。
【0015】
この雄ネジ部6は図3(イ)(ロ)(ハ)図に示すように採血管ホルダー7の底端に形成した雌ネジ孔7’に着脱自在に螺入することができる。
【0016】
上記基端部2については図8(イ)(ロ)図に示すように雄ネジ部6に翼状板9を設け、カテーテル8を介して上記注入口5を接続し、翼状針を形成する。
【0017】
上記注入口5は截頭円錐形で開口端にフランジ5’を有し、他端と雄ネジ部6とを短管10で一体に接続し、短管10の外周に中心線cと平行に複数(4個)の補強縁(リブ)11を設ける。
【0018】
このように形成した注射器3の注射針1を図2(イ)図に示すように静脈12に刺入し、手動摺動杆3”を操作して図2(ロ)図に示すようにシリンダー3’内に採血することができる。
【0019】
採血後図3(ロ)図に示すように雄ネジ部6をホルダー7の雌ネジ孔7’に螺入することによって注射針1をホルダー7内に挿入支持する。
【0020】
このように雄ネジ部6と雌ネジ孔7’とを螺着することによって注射針1とその基端部2とは中心線cの方向に上記ホルダー7に固定され、
その状態で図3(ハ)図に示すように上記採決管13(スピイツ)をホルダー7内に押込むと、該採血管13のゴム栓13’を経て注射針1が該採血管13内に圧入される。
【0021】
上記採血管13の押込み圧力で注射針1を中心線c方向に押圧しても、注射針1は基端部2の雄ネジ部6とホルダー7の雌ネジ孔7’とが螺着しているため注射針1が押されてホルダー7から外れるおそれは無く、採血管13(スピイツ)内と注射器3のシリンダー3’内とは連通し、該シリンダー3’内の採血(検体)は圧力差によって自動的に採血管13内に流入する。
【0022】
上記注射針1の内径は22ゲージ以下では上記のように不可である。
【0023】
シリンダー3’内の手動摺動杆3”は図3(ロ)図位置から図3(ハ)図位置に自動的に摺動する。
【0024】
上記採血管13内に採血が収容された後該採血管13をホルダー7から引抜いて取り外し、図3(ニ)図に示す新たな採血管13を上述のようにホルダー7内の注射針1に圧入して上述の採血動作を繰返し、複数の採血管13に採血(分注)することができる。
【0025】
分注終了後は図4(ロ)図に示すように注入口5とノズル4とを分離するとホルダー7と注射針1とは雄ネジ部6と雌ネジ孔7’とが一体に螺着した状態となり、注射器3のシリンダー3’は注入口5から分離する。
【0026】
この状態において注射針1を図5(イ)図に示すように下向となし、注射針1を収容瓶14の蓋14’の中央開口部15に挿入し、中央開口部15に形成した鍵孔15’に上記補強縁(リブ)11を係合させて(図6,7)雄ネジ部6の中心線cの回りの回動を制止し、その状態で上方にあるホルダー7を中心線cの回りに逆回動することによってホルダー7の雌ネジ孔7’と雄ネジ部6との螺合(螺着)を解除することにより注射針1を収容瓶14内に落下封入することができる。
【0027】
上記基端部2は図8(イ)(ロ)図に示すように上記注入口5と上記雄ネジ部6側の短管10とを合成樹脂柔軟チューブ(カテーテル8という)によって接続し、上記補強縁11(リブ)から突出した上記短管10(図1(ニ)図)の側面に中心線cと直角に両側に拡がる翼状板9を設けて注射針1と注射器3とを必要に応じて隔離状態にカテーテル8により接続することができ、カテーテル8を経て注射器3内に採血し、その状態で雄ネジ部6をホルダー7の雌ネジ孔7’に螺着し、カテーテル8を経て採血管13に分注することができる。
【0028】
尚図中16で示すものはシリンダー3’の内面に摺動自在に密着する手動摺動杆3”の先端ピストン、図2中17は人の腕である。
【0029】
又上記雄ネジ6に代り、図10(イ)(ロ)図に示すように上記基端部2に逆止係合部6’を形成し、上記ホルダー7の底部に穿設した透孔18内に発条19,19の力によって対向方向に近接する拡縮材20,20を設け、該拡縮材20,20の外面にホルダー7の中心に向うテーパ誘道面20’,20’となし、該誘道面20’,20’に沿って逆止係合部6’をホルダー内に挿入し、該係合部6’を拡縮材20,20に逆止状態に係合させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は上述のように構成したのでホルダー7の雌ネジ孔7’に螺入した雄ネジ6の一端に突設した注射針(図示していない)によっては採血し難い患者であっても、通常の注射器3内にその注射針1によって採血することができる。
【0031】
上記注射器3内の採血(検体)をシリンダー3’のノズル4に嵌合した既設の注射針1の基端部2に形成した雄ネジ部6にホルダー7の雌ネジ孔7’を雌雄螺着して中心線cの方向に摺動分離が不可能となすことができる。
【0032】
その状態で上記ホルダー7内に減圧採血管13(スピイツ)をゴム栓13’から圧入し得て、上記ホルダー7内の注射針1をゴム栓13’を経て該管13(スピイツ)内に刺入することができる。該管13(スピイツ)内と注射器3のシリンダー3’内とは圧力差によりシリンダー3’内の採血はスピイツ13内に注射針1やカテーテル8を経て自動的に流入し、迅速安全に分注することができる。
【0033】
又従来の(常用の)注射針(図示していない)を注射器3のノズル4に装着して注射器3内に採血を行った後、該注射針を収容瓶14内に分離し、上記ノズル4に図9(ハ)図に示す穿刺針1の基端部2の注入口5を嵌合し、該基端部2の雄ネジ部6をホルダー7の雌ネジ孔7’に螺着し、
【0034】
その状態でホルダー7内にスピイツ13を挿入し、穿刺針1から注射器3内の採血をスピイツ13内に分注することができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】(イ)(ロ)(ハ)図は本発明の採血針を示す側面図、(ニ)図は採血針の斜視図である。
【図2】(イ)図は静脈に刺入した状態の縦断面図、(ロ)図は採血した状態の縦断面図である。
【図3】(イ)図は本発明の注射針をホルダーに挿入する前の状態の縦断面図、(ロ)図は雄ネジ部と雌ネジ孔との螺着状態の縦断面図、(ハ)図はホルダーに負圧採血管を圧入した状態の縦断面図、(ニ)図は負圧採血管(スピイツ)の一部切欠側図である。
【図4】(イ)図はホルダーからスピイツを取り外した状態の縦断側面図、(ロ)図は注射器のノズルを注入口から分離した状態の縦断側面図である。
【図5】(イ)図は注射針収容瓶に注射針の注入口を挿入係合した状態の縦断面図、(ロ)図は注射針を上記瓶に分離落下させた状態の縦断面図である。
【図6】図5(ロ)図A−A線による拡大平面図である。
【図7】図5(イ)図の一部拡大縦断面図である。
【図8】(イ)図はカテーテルを介在させた状態の側面図、(ロ)図は(イ)図の一部拡大図である。
【図9】(イ)図は上記注射針をラバースリーブで被覆した穿刺針をホルダーに装着した縦断正面図、(ロ)図は該穿刺針をスピイツに刺入した状態の正面図、(ハ)図は上記穿刺針を横向にした状態の正面図である。
【図10】(イ)図は逆止係合段及びホルダーに係合した状態の側面図、(ロ)図は翼状針の側面図である。
【符号の説明】
【0036】
1 注射針
2 基端部
3 注射器
4 ノズル
5 注入口
6 雄ネジ部
7 採血管ホルダー
7’ 雌ネジ孔
8 カテーテル
9 翼状板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
注射針の基端部に注射器のノズルを着脱自在に嵌合する注入口を開口し、
上記基端部に雄ネジ部を形成し、
該雄ネジ部を採血管ホルダーに着脱自在に螺入するようにした採血針。
【請求項2】
上記注入口と上記雄ネジ部とを短管で接続し、該短管に複数の補強縁を上記基端部の中心線に沿って設けた請求項1記載の採血針。
【請求項3】
上記注入口と上記雄ネジ部とをカテーテルで接続し、該雄ネジ部に翼状板を設けた請求項1又は2記載の採血針。
【請求項4】
上記雄ネジ部を上記採血管ホルダーに螺着してなる請求項1〜3いずれかに記載の採血針。
【請求項5】
上記注射針に代る穿刺針である請求項1〜4のいずれかに記載の採血針。
【請求項6】
上記雄ネジ部に代り上記基端部に逆止係合部を形成し、上記採血管ホルダーに上記着脱自在螺入に代り逆止係合するように形成した請求項1〜5記載の採血針。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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