接合構造の構築方法
【課題】接着部材と被接着部材間で接着剤の硬化反応の連鎖をより確実に維持することができる。
【解決手段】連鎖反応型の第1接着剤4を第1接着部34の接合面34aと被接着部材10の接合面14aとの間に配置するとともに、連鎖反応型の第2接着剤4を第2接着部44の接合面44aと被接着部材10の接合面14aとの間に配置する接着剤配置工程と、エネルギー付与接着剤決定工程で決定されたエネルギー付与接着剤にエネルギーを付与して当該エネルギー付与接着剤と他方の接着剤とを特定方向に沿って連鎖的に硬化させることで接着部材20と被接着部材10とを接合する硬化工程とを含み、エネルギー付与接着剤決定工程では、第1接着部34の熱容量と第2接着部44の熱容量のうちのより小さい熱容量を有する接着部側に配置された接着剤4をエネルギー付与接着剤に決定する。
【解決手段】連鎖反応型の第1接着剤4を第1接着部34の接合面34aと被接着部材10の接合面14aとの間に配置するとともに、連鎖反応型の第2接着剤4を第2接着部44の接合面44aと被接着部材10の接合面14aとの間に配置する接着剤配置工程と、エネルギー付与接着剤決定工程で決定されたエネルギー付与接着剤にエネルギーを付与して当該エネルギー付与接着剤と他方の接着剤とを特定方向に沿って連鎖的に硬化させることで接着部材20と被接着部材10とを接合する硬化工程とを含み、エネルギー付与接着剤決定工程では、第1接着部34の熱容量と第2接着部44の熱容量のうちのより小さい熱容量を有する接着部側に配置された接着剤4をエネルギー付与接着剤に決定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を構成する板金部材どうし等が接合された接合構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体を構成する板金部材どうしを接合する手段等として、スポット溶接やレーザー溶接等の溶接技術、あるいは接着剤による接着方法が採用されている。
【0003】
特に、近年では、特許文献1に開示されているように、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化する接着剤であって、この内部エネルギーが発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化していく連鎖反応型の接着剤を用いる接着方法が注目されている。この接着剤を用いる方法では、接着部材に接着剤を塗布し、この接着剤の所定箇所に外部からエネルギーを付与することで接着剤を順次硬化させていく。そして、この接着剤の硬化により接着部材どうしを接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−193322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記連鎖反応型の接着剤を用いる方法において、接着剤に付与されたエネルギーおよび接着剤の内部エネルギーの一部は接着剤から接着部材側に逃げる。この逃げ量が大きい場合には、接着剤が硬化可能な温度にまで温められず接着剤の硬化反応が途中で停止する場合がある。この硬化反応の停止を回避する方法として、外部から付与するエネルギー量を大きくすることが考えられるが、この場合には、エネルギー効率が悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、接着部材の接合面と当該接着部材から離間した位置に配置される被接着部材の接合面とが互いに接合された接合構造を構築する接合構造の構築方法であって、前記接着部材として、材質あるいは形状の少なくとも一方が異なる第1接着部と第2接着部とが特定方向に沿って互いに隣接して配置された接着部材を用い、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第1接着剤を前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置するとともに、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第2接着剤を、前記第1接着剤と連続して前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置する接着剤配置工程と、前記第1接着剤と第2接着剤のうちいずれか一方を、外部からのエネルギーを付与するエネルギー付与接着剤に決定するエネルギー付与接着剤決定工程と、前記接着剤配置工程の後に実施されて、前記エネルギー付与接着剤決定工程で決定されたエネルギー付与接着剤にエネルギーを付与して当該エネルギー付与接着剤と他方の接着剤とを前記特定方向に沿って連鎖的に硬化させることで前記接着部材と前記被接着部材とを接合する硬化工程とを含み、前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量のうちのより小さい熱容量を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定することを特徴とする接合構造の構築方法を提供する(請求項1)。
【0007】
この方法によれば、接着剤に付与するエネルギーを小さく抑えつつ材質あるいは形状の異なる第1接着部と第2接着部とにわたって接着剤の硬化反応の連鎖を維持して接着剤全体を硬化させ、接着部材と被接着部材とを確実に接着することができる。すなわち、熱容量が小さい接着部では接着剤からエネルギーを受けた際にその温度が容易に上昇するため、接着剤と接着部の温度差ひいてはこの温度差に伴い接着剤から接着部側に逃げるエネルギー量が小さく抑えられる。従って、熱容量が小さい接着部に配置された接着剤をエネルギー付与接着剤とし、この接着剤に外部からエネルギーを付与してこの接着部側から接着剤の硬化反応を開始させることで、付与するエネルギーを小さく抑えつつ接着剤の硬化反応を維持することができる。そして、この熱容量が小さい接着部側において接着剤の硬化反応が連鎖していく間に他方の接着部が一方の接着部からの熱伝導により温められることで、この他方の接着部においても、接着剤の硬化反応が行われる時点で接着部と接着剤との温度差が小さくなり接着剤の硬化反応を維持することができる。
【0008】
また本発明において、前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量とが同一の場合には、前記第1接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値と第2接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値のうちのより大きい熱抵抗値を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定するのが好ましい(請求項2)。
【0009】
熱抵抗値が大きく放熱しにくい接着部では、接着部を通って接着剤側から外部に放出されるエネルギー量が小さく抑えられる。そのため、このように大きい熱抵抗値を有する接着部側に外部からエネルギーを付与してこの接着部側から接着剤の硬化反応を開始させることで、外部からのエネルギーを小さく抑えつつ接着剤の硬化反応を維持することができる。そして、この熱抵抗値が小さい接着部側において接着剤の硬化反応が連鎖していく間に他方の接着部が一方の接着部からの熱伝導により温められることで、この他方の接着部においても接着剤の硬化反応を維持することができる。
【0010】
また本発明において、前記硬化工程では、前記エネルギー付与接着剤の前記特定方向の端部であって、他方の接着剤が配置されている側と反対側の端部にエネルギーを付与するのが好ましい(請求項3)。
【0011】
このようにすれば、熱容量の小さい接着部あるいは熱抵抗値の大きい接着部において接着剤の硬化反応が行われている間に、他方の接着部の温度が十分に温められるため、他方の接着部において接着剤の硬化反応をより確実に維持することができる。
【0012】
ここで、本発明では、第1接着剤と第2接着剤の厚みや種類を異ならせることなく、接着剤の硬化反応をより確実に維持することができるので、前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離を、前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離と略同一とし、前記接着剤配置工程で、前記第1接着剤および前記第2接着剤として同じ種類の接着剤を配置するとともに、これら第1接着剤および前記第2接着剤を当該第1接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さと当該第2接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さとが略同一となるように配置して、接着部材と被接着部材との間に接着剤を容易に配置することができる(請求項4)。
【0013】
また本発明は、前記接着剤配置工程の前に実施されて、前記第1接着部と前記第2接着部とをテーラードブランク工法により互いに接合するテーラードブランク工程を備えるものも含む(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、接着剤に付与するエネルギー量を小さく抑えつつ接着剤の硬化反応の連鎖をより確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る接合構造の構築方法が適用されるサイドフレームアウタパネルの概略平面図である。
【図2】図1に示すセンタピラーインナパネルの概略平面図である。
【図3】図2のII−II線断面図である。
【図4】図2のIII−III線断面図である。
【図5】図1に示すサイドフレームアウタパネルの概略平面図である。
【図6】図5のV−V線断面図である。
【図7】接着剤を塗布するための接着剤塗布装置の概要を示す図である。
【図8】接着剤配置工程の様態を示す説明図である。
【図9】接着剤配置工程の様態を示す説明図である。
【図10】硬化工程の様態を示す説明図である。
【図11】本発明に係る接合構造の構築方法が適用された他の例を示す図である。
【図12】本発明に係る接合構造の構築方法が適用された他の例を示す図である。
【図13】本発明に係る接合構造の構築方法に関する実験例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る接合構造の構築方法の好ましい実施の形態について説明する。本発明に係る接合構造の構築方法は、材質あるいは形状の少なくとも一方が異なる第1接着部と第2接着部とが特定方向に沿って互いに隣接して配置された接着部材の接合面と被接着部材の接合面とが互いに接合された接合構造を構築するための方法である。ここでは、図1に示すように、被接着部材であるサイドフレームアウタパネル10と、接着部材であるセンタピラーインナパネル20とが接合されて、自動車のセンタピラー(いわゆるBピラー)に接合構造100が構築される場合について説明する。ここで、前記センタピラーインナパネル20に形成された後述する第1インナフランジ34が前記第1接着部に相当し、センタピラーインナパネル20に形成された後述する第2インナフランジ44が第2接着部に相当する。
【0017】
図2は前記センタピラーインナパネル20の概略平面図であり、図3は図1のII−II線断面図であり、図4は図2のIII−III線断面図である。このセンタピラーインナパネル20は、車体下部に配置される上下方向に延びる第1パネル30と、車体上部に配置される上下方向に延びる第2パネル40とで構成されている。この第1パネル30と第2パネル30とは上下方向に隣接している。このセンタピラーインナパネル20は、後述するように、テーラードブランク工法により、第1パネル30を構成する板材と第2パネル40を構成する板材とがレーザー溶接等により一体に接合された後プレス加工されることで形成されている。ここでは、この第1パネル30と第2パネル40とが、同一の材料例えば鋼板で形成されている。
【0018】
第1パネル30にはプレス加工によりフランジ34(第1接着部、以下、第1インナフランジ34という)が形成され、前記第2パネル40にはプレス加工によりフランジ44(第2接着部、以下、第2インナフランジ44という)が形成されている。第1インナフランジ34と第2インナフランジ44とは上下方向に隣接しており、いずれも鋼板で形成されている。第1インナフランジ34と第2インナフランジ44とは、水平方向の幅W1,W2(図2参照)と上下方向の長さL1,L2(図4参照)が互いに同一の値に設定されている一方、各厚みd1、d2(図4参照)は異なる値に設定されている。例えば、第1パネル30の厚みd1は0.8mmであり、第2パネル40の厚みd2は1.6mmに設定されている。
【0019】
図5は、前記サイドフレームアウタパネル10の概略平面図であり、図6は、図5のV−V線断面図である。このサイドフレームアウタパネル10には、フロントドアが取り付けられるフロント開口部11と、リアドアが取り付けられるリア開口部12とが形成されている。そして、前記フロント開口部11の周囲およびリア開口部12の周囲には、フランジ14(以下、アウタフランジ14と言う)が形成されている。
【0020】
前記サイドフレームアウタパネル10と前記センタピラーインナパネル20とは、図1等に示すように、サイドフレームアウタパネル10のうち前記フロント開口部11と前記リア開口部12との間の領域にセンタピラーインナパネル20が取り付けられて、前記アウタフランジ14と前記センタピラーインナパネル20の第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とが接着剤4で接着されることで互いに接合される。具体的には、図10等に示すように、アウタフランジ14の車体内側表面(接合面)14aと、第1インナフランジ34の車体外側表面(接合面)34aおよび第2インナフランジ44の車体外側表面(接合面)44aとが接着剤4により接着される。そして、この接着により、前記第1インナフランジ34と前記第2インナフランジ44とが、前記サイドフレームアウタパネル10および接着剤4を介して接合される。
【0021】
本接合構造の構築方法では、前記接着剤4に連鎖反応型の接着剤を用いる。具体的には、この接着剤4として、光重合性樹脂(主としてエポキシ樹脂、特に好ましくは脂環式エポキシ樹脂)、光・熱重合開始剤(芳香族スルホニウム塩等)、および光重合開始剤(スルホニウム塩等)を主成分とする樹脂組成物であって、紫外線、電子線、X線、赤外線、太陽光線、可視光線、レーザビーム(エキシマレーザ、CO2、レーザー等)、熱線(放射や輻射熱等)等のエネルギー線、或いは熱等の所定量のエネルギーが付与されることによって、その内部にカチオンと硬化反応熱とを積極的に発生させ、これらカチオンと硬化反応熱とによって、連鎖的に硬化反応するものを用いる。
【0022】
また、前記接着剤4を塗布するための接着剤塗布装置110として、図7に示すような装置を用いる。この接着剤塗布装置110は、図略のタンクに貯留されている接着剤4を吐出するノズル112と、前記接着剤4を前記ノズル112に導くホース114と、前記ノズル112を駆動する駆動ロボット115とを有している。
【0023】
前記接着剤4等を用いた本接合構造の構築方法は、次の各工程を含む。
【0024】
1)テーラードブランク工程
この工程は、前述のように、前記第1パネル30と第2パネル40とを有するセンタピラーインナパネル20を形成する工程である。
【0025】
この工程では、まず、前記第1パネル30を構成する第1の鋼板と、この鋼板よりも厚みが厚いい前記第2パネル40を構成する第2の鋼板とをレーザー等により溶接する。そして、溶接により一つの素材となった鋼板をプレス加工し、前記第1の鋼板により前記第1インナフランジ34を有する第1パネル30を形成するとともに、前記第2の鋼板により第1インナフランジ34よりも厚みの厚い前記第2インナフランジ44を有する第2パネル40を形成する。このようにして、本工程では、前記第1パネル30と第2パネル40ひいては第1インナフランジ34と第2インナフランジ44とが一体に溶接されたセンタピラーインナパネル20を形成する。
【0026】
2)接着剤配置工程
この工程は、前記第1インナフランジ34および第2インナフランジ44と前記アウタフランジ14との間に前記接着剤4を配置する工程である。
【0027】
この工程では、まず、図8に示すように、前記アウタフランジ14の車体内側表面14aに接着剤4を塗布する。具体的には、前記接着剤塗布装置110の駆動ロボット115を駆動させて、前記ノズル112から、ホース114を通して供給された前記接着剤4を、前記アウタフランジ14の車体内側表面14a上にその厚みすなわちアウタフランジ14の車体内側表面14aから垂直な方向の高さがこの車体内側表面14a全体にわたって一定となるように吐出していく。
【0028】
次に、図9に示すように、前記第1インナフランジ34および第2インナフランジ44が形成された前記センタピラーインナパネル20を、前記第1インナフランジ34の車体外側表面34aおよび第2インナフランジ44の車体外側表面44aと前記アウタフランジ14の車体内側表面14aとの間で接着剤4を挟み込むようにして、前記サイドフレームアウタパネル10上に載置する。このとき、前記第1インナフランジ34の車体外側表面34aおよび第2インナフランジ44の車体外側表面44aと前記アウタフランジ14の車体内側表面14aとがそれぞれ平行となるようにする。
【0029】
3)エネルギー付与接着剤決定工程
本方法では、後述する硬化工程において、前記第1インナフランジ34側に配置された接着剤(第1接着剤)4と前記第2インナフランジ44側に配置された接着剤(第2接着剤)4の一方側にのみトリガーとなるエネルギーを付与し、この付与部分を起点として接着剤4を連鎖的に硬化させる。この工程では、第1インナフランジ34と第2インナフランジ44のいずれ側にトリガーとなるエネルギーを付与するかを決定する。
【0030】
本発明者らは、連鎖反応型の接着剤を用いて形状あるいは材質の異なる第1接着部と第2接着部とからなる接着部材を被接着部材に接着させる実験を各接着部の形状あるいは材質を種々に変更して行ったところ、第1接着部と第2接着部の熱容量が異なる場合には、これら第1接着部側に配置された接着剤と第2接着部側に配置された接着剤のいずれにトリガーとなるエネルギーを付与するかによって、同じエネルギーを付与した場合でも接着剤の硬化反応が接着部材全体にわたって連鎖する場合としない場合とがあるという結果を得た。換言すれば、第1接着部側に配置された接着剤と第2接着部側に配置された接着剤のいずれにトリガーとなるエネルギーを付与するかによって、接着部材全体にわたって硬化反応を維持するために付与するエネルギーが異なるという結果を得た。
【0031】
例えば、図13に示すように、第1接着部530としての長さL530=37.5mm、厚みd530=2.0mm、幅(紙面と垂直な方向)37.5mmのアルミ板と第2接着部540としての長さL540=37.5mm、厚みd540=1.2mm、幅(紙面と垂直な方向)37.5mmのアルミ板を長さ方向に隣接した状態で配置することで接着部材520を構成して、この接着部材520と被接着部材510との間に配置した連鎖反応型の接着剤504にエネルギーを付与した場合には、厚みの小さい第1接着部530の長さ方向端部530eにトリガーとしてのエネルギーを付与した際には接着剤504全体にわたって硬化反応が連鎖するが、厚みの大きい第2接着部540の長さ方向の端部540eに同じ大きさのエネルギーを付与した際には接着剤504の硬化反応が第1接着部530側に連鎖する前に停止した。なお、この実験において、被接着部材510には長さL=100mm、厚みd3=1.2mm、幅25mmのアルミ板を用い、接着剤504には、脂環式エポキシ樹脂100重量部を主剤として芳香族スルホニウム塩およびスルホニウム塩計3重量部からなる硬化剤が混合された連鎖反応型の接着剤504を用い、接着剤504の厚みをd504=1.0mmとした。
【0032】
前記のような現象は、第1接着部530のアルミ板の方が厚みが小さく熱容量が小さいことで温度上昇が容易に行われるため接着剤504と第1接着部530との温度差が接着剤504と第2接着部540との温度差よりも小さく抑えられて接着剤504から接着部材520側に移動するエネルギー量が小さく抑えられるためと考えられる。すなわち、接着剤504から外部に逃げるエネルギー量が小さく抑えられることで、接着剤504内でエネルギーがより確実に伝達するためと考えられる。そして、この第1接着部530で接着剤504の硬化反応が連鎖していく間に第2接着部540が第1接着部530からの熱伝導により温められて接着剤504の硬化反応が第2接着部540に到達する時点で第2接着部540の温度が十分に高められることで、この第2接着部540においても第2接着部540と接着剤504との温度差が小さく抑えられて接着剤504内でのエネルギー伝達が維持されるためと考えられる。
【0033】
また、本発明者らは、第1接着部と第2接着部の熱容量が同一であっても接着剤と接触する各接合面と垂直な方向における熱抵抗値が異なる場合、例えば、同一の熱伝導率を有する一方接合面と垂直な方向の厚みが異なる場合、あるいは、厚みが同一である一方熱伝導率が異なる場合には、これら第1接着部側に配置された接着剤と第2接着部側に配置された接着剤のいずれにトリガーとなるエネルギーを付与するかによって、同じエネルギーを付与した場合でも接着剤の硬化反応が接着部材全体にわたって連鎖する場合としない場合とがあるという結果、すなわち、接着部材全体にわたって硬化反応を維持するために付与するエネルギーが異なるという結果を得た。具体的には、熱抵抗値が大きい接着部(例えば第1接着部)側に配置された接着剤にトリガーとしてのエネルギーを付与した方が硬化反応の連鎖の停止を回避することができる、すなわち、より小さいエネルギーで硬化反応の連鎖を維持することができるという結果を得た。
【0034】
これは、熱抵抗値が大きく放熱しにくい接着部では、単位時間に接着部を通って接着剤側から外部に放出されるエネルギー量が小さく抑えられることで、接着剤内でエネルギーがより確実に伝達するためと考えられる。そして、この熱抵抗値が大きい一方の接着部において接着剤の硬化反応が連鎖していく間に他方の接着部が一方の接着部からの熱伝導により温められることで、この他方の接着部においても接着剤内でのエネルギー伝達が維持されるためと考えられる。
【0035】
以上より、このエネルギー付与接着剤決定工程では、第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量とを比較して、より小さい熱容量を有する接着部に配置された接着剤(エネルギー付与接着剤)にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。また、第1接着部と第2接着部の熱容量が同一の場合には、各接着部の熱抵抗値を比較して、より大きい熱抵抗値を有する接着部に配置された接着剤(エネルギー付与接着剤)にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。
【0036】
本実施形態におけるセンタピラーに接合構造100を構築する場合では、前述のように、第1接着部に相当する第1インナフランジ34と第2接着部に相当する第2インナフランジ44とは同一の材料で長さおよび幅が同一となるよう形成されている一方、第1インナフランジ34の方が厚みが薄く設定されており、第1インナフランジ34の方が熱容量が小さくなっている。そのためこのエネルギー付与接着剤決定工程において、第1インナフランジ34に配置された接着剤4にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。
【0037】
4)硬化工程
この工程は、前記接着剤4に硬化反応のトリガーとなるエネルギーを付与して接着剤4を硬化させる工程である。
【0038】
この工程では、紫外線照射により接着剤4にエネルギーを付与する。すなわち、図10に示すように、紫外線を照射可能な周知の装置であるUV照射装置130により前記第1インナフランジ34に配置された接着剤4に紫外線を照射する。
【0039】
具体的には、第1インナフランジ34の上端部34e、すなわち第1インナフランジ34の上下方向両端のうち第2インナフランジ44と反対側の端部34eにおいて露出している接着剤4に紫外線を照射する。紫外線が照射された接着剤4は、その内部にカチオンと硬化反応熱とを発生させつつ硬化を開始する。
【0040】
接着剤4の温度は、紫外線が照射されることでまた硬化反応熱の発生により上昇し、第1インナフランジ34との間には温度差が生じる。そのため、この温度差に伴い接着剤4内のエネルギーの一部は第1インナフランジ34側に移動する。しかしながら、前述のように、第1インナフランジ34の熱容量は小さく、前記エネルギーを受けて第1インナフランジ34の温度は早期に上昇する。そのため、接着剤4から第1インナフランジ34に移動するエネルギーは小さく抑えられ、第1インナフランジ34全体にわたって接着剤4の硬化反応は維持され、この硬化反応は第2インナフランジ44側に配置された接着剤4に連鎖していく。前記第1インナフランジ34において接着剤4の硬化反応が連鎖している間に第2インナフランジ44の温度は第1インナフランジ34からの熱伝導により高められており、この第2インナフランジ44側に接着剤4の硬化反応が進んできた時点で第2インナフランジ33の温度はある程度高められている。そのため、この第2インナフランジ44側において、接着剤4から第2インナフランジ44へ移動するエネルギーは小さく抑えられ、第2インナフランジ44全体にわたって接着剤4の硬化反応が行われる。
【0041】
このようにして、本工程では、前記接着剤4を硬化させて前記アウタフランジ14と前記第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とを接合する。
【0042】
以上のように、本接合構造の構築方法では、熱容量の小さい第1インナフランジ34に配置された接着剤4に紫外線を照射して、この第1インナフランジ34側の接着剤4から硬化反応を開始させることで、接着剤4に付与するエネルギーを大きくすることなく、前記接着剤4の硬化反応の連鎖をより確実に維持して、前記第1インナフランジ34と第2インナフランジ44と前記アウタフランジ14とをより確実に接合することができる。
【0043】
本方法では、前記第1インナフランジ34の熱容量が第2インナフランジ44の熱容量と同一である一方、第1インナフランジ34の熱抵抗値が第2インナフランジ44の熱抵抗値よりも大きい場合にも、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
この場合には、前記エネルギー付与接着剤決定工程にて熱抵抗値の大きい第1インナフランジ34にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。そして、前記硬化工程にてこの第2インナフランジ34に配置された接着剤4に紫外線を照射する。
【0045】
紫外線を照射されることで接着剤4は硬化反応熱を発生させつつ硬化反応を開始する。このとき、接着剤4の温度は紫外線が照射されることでまた紫外線照射により開始した硬化反応の反応熱の発生により上昇する。これにより、第1インナフランジ34では、接着剤4と接している面とこの面に対抗する外部と接している面との間で温度差が生じる。そして、この温度差に伴って接着剤4から第1インナフランジ34を通って外部にエネルギーが移動する。しかしながら、第1インナフランジ34の熱抵抗値は大きく、この第1インナフランジ34を通って外部に移動するエネルギー量は小さく抑えられる。そのため、第1インナフランジ34全体にわたって接着剤4の硬化反応が維持される。そして、この第1インナフランジ34において接着剤4の硬化反応が連鎖している間に第2インナフランジ44の温度が第1インナフランジ34からの熱伝導により高められる結果、この第2インナフランジ44側において接着剤4から第2インナフランジ44へ移動するエネルギーは小さく抑えられ、第2インナフランジ44においても接着剤4の硬化反応の連鎖が維持され、第1インナフランジ34と第2インナフランジ44と前記アウタフランジ14とが確実に接合される。
【0046】
ここで、前記硬化工程において紫外線を照射する位置は第1インナフランジ34の上端部34eに限らない。例えば、図11に示すように、第1インナフランジ34の上下方向略中央部分に表裏に貫通する貫通孔34を形成し、この貫通孔34において露出している接着剤4に紫外線を照射するようにしてもよい。ただし、第1インナフランジ34の上端部34eに紫外線を照射してこの上端部34eから接着剤4の硬化反応を開始すれば、接着剤4の硬化反応が第2インナフランジ44側に進行するまでの時間をより長くしてこの進行までの間に第2インナフランジ44の温度を第1インナフランジ34からの熱伝導により十分に高めることができる。そのため、第2インナフランジ44において接着剤4の硬化反応が進行する際に、接着剤4と第2インナフランジ44との温度差をより小さく抑えることができ、接着剤4の硬化反応の連鎖をより確実に維持することができる。
【0047】
また、前記接着剤配置工程において、前記第1インナフランジ34とアウタフランジ14との間に配置する接着剤104と、第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間に配置する接着剤204とを、異なる種類の接着剤としてもよい。また、第1インナフランジ34とアウタフランジ14との間の接着剤104の厚みと第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間の接着剤204の厚みとは同じでなくてもよい。しかしながら、本方法では、これら接着剤の厚みや種類を異ならせることなく接着剤の硬化反応をより確実に維持することができるので、第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間に同じ種類の接着剤を同じ厚みで配置すれば、より容易に接着剤の配置を行うことができる。
【0048】
また、前記テーラードブランク工程は省略可能である。
【0049】
また、前記接着剤4の具体的構成は前記に限らない。例えば、固形の接着剤や、液状の接着剤を用い、これらを第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間に塗布あるいは充填等してもよい。
【0050】
また、前記硬化工程において、前記接着剤4を硬化させる具体的方法は前記に限らない。
【0051】
また、本方法の適用は、センタピラーに接合構造100を構築する場合に限らない。
【符号の説明】
【0052】
4 接着剤
10 サイドフレームアウタパネル(被接着部材)
14 アウタフランジ
20 センタピラーインナパネル(接着部材)
30 第1パネル
34 第1インナフランジ(第1接着部)
40 第2パネル(第2接着部材)
44 第2インナフランジ(第2接着部)
【技術分野】
【0001】
本発明は、車体を構成する板金部材どうし等が接合された接合構造の構築方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車体を構成する板金部材どうしを接合する手段等として、スポット溶接やレーザー溶接等の溶接技術、あるいは接着剤による接着方法が採用されている。
【0003】
特に、近年では、特許文献1に開示されているように、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化する接着剤であって、この内部エネルギーが発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化していく連鎖反応型の接着剤を用いる接着方法が注目されている。この接着剤を用いる方法では、接着部材に接着剤を塗布し、この接着剤の所定箇所に外部からエネルギーを付与することで接着剤を順次硬化させていく。そして、この接着剤の硬化により接着部材どうしを接合する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−193322号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記連鎖反応型の接着剤を用いる方法において、接着剤に付与されたエネルギーおよび接着剤の内部エネルギーの一部は接着剤から接着部材側に逃げる。この逃げ量が大きい場合には、接着剤が硬化可能な温度にまで温められず接着剤の硬化反応が途中で停止する場合がある。この硬化反応の停止を回避する方法として、外部から付与するエネルギー量を大きくすることが考えられるが、この場合には、エネルギー効率が悪化する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために本発明は、接着部材の接合面と当該接着部材から離間した位置に配置される被接着部材の接合面とが互いに接合された接合構造を構築する接合構造の構築方法であって、前記接着部材として、材質あるいは形状の少なくとも一方が異なる第1接着部と第2接着部とが特定方向に沿って互いに隣接して配置された接着部材を用い、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第1接着剤を前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置するとともに、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第2接着剤を、前記第1接着剤と連続して前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置する接着剤配置工程と、前記第1接着剤と第2接着剤のうちいずれか一方を、外部からのエネルギーを付与するエネルギー付与接着剤に決定するエネルギー付与接着剤決定工程と、前記接着剤配置工程の後に実施されて、前記エネルギー付与接着剤決定工程で決定されたエネルギー付与接着剤にエネルギーを付与して当該エネルギー付与接着剤と他方の接着剤とを前記特定方向に沿って連鎖的に硬化させることで前記接着部材と前記被接着部材とを接合する硬化工程とを含み、前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量のうちのより小さい熱容量を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定することを特徴とする接合構造の構築方法を提供する(請求項1)。
【0007】
この方法によれば、接着剤に付与するエネルギーを小さく抑えつつ材質あるいは形状の異なる第1接着部と第2接着部とにわたって接着剤の硬化反応の連鎖を維持して接着剤全体を硬化させ、接着部材と被接着部材とを確実に接着することができる。すなわち、熱容量が小さい接着部では接着剤からエネルギーを受けた際にその温度が容易に上昇するため、接着剤と接着部の温度差ひいてはこの温度差に伴い接着剤から接着部側に逃げるエネルギー量が小さく抑えられる。従って、熱容量が小さい接着部に配置された接着剤をエネルギー付与接着剤とし、この接着剤に外部からエネルギーを付与してこの接着部側から接着剤の硬化反応を開始させることで、付与するエネルギーを小さく抑えつつ接着剤の硬化反応を維持することができる。そして、この熱容量が小さい接着部側において接着剤の硬化反応が連鎖していく間に他方の接着部が一方の接着部からの熱伝導により温められることで、この他方の接着部においても、接着剤の硬化反応が行われる時点で接着部と接着剤との温度差が小さくなり接着剤の硬化反応を維持することができる。
【0008】
また本発明において、前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量とが同一の場合には、前記第1接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値と第2接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値のうちのより大きい熱抵抗値を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定するのが好ましい(請求項2)。
【0009】
熱抵抗値が大きく放熱しにくい接着部では、接着部を通って接着剤側から外部に放出されるエネルギー量が小さく抑えられる。そのため、このように大きい熱抵抗値を有する接着部側に外部からエネルギーを付与してこの接着部側から接着剤の硬化反応を開始させることで、外部からのエネルギーを小さく抑えつつ接着剤の硬化反応を維持することができる。そして、この熱抵抗値が小さい接着部側において接着剤の硬化反応が連鎖していく間に他方の接着部が一方の接着部からの熱伝導により温められることで、この他方の接着部においても接着剤の硬化反応を維持することができる。
【0010】
また本発明において、前記硬化工程では、前記エネルギー付与接着剤の前記特定方向の端部であって、他方の接着剤が配置されている側と反対側の端部にエネルギーを付与するのが好ましい(請求項3)。
【0011】
このようにすれば、熱容量の小さい接着部あるいは熱抵抗値の大きい接着部において接着剤の硬化反応が行われている間に、他方の接着部の温度が十分に温められるため、他方の接着部において接着剤の硬化反応をより確実に維持することができる。
【0012】
ここで、本発明では、第1接着剤と第2接着剤の厚みや種類を異ならせることなく、接着剤の硬化反応をより確実に維持することができるので、前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離を、前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離と略同一とし、前記接着剤配置工程で、前記第1接着剤および前記第2接着剤として同じ種類の接着剤を配置するとともに、これら第1接着剤および前記第2接着剤を当該第1接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さと当該第2接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さとが略同一となるように配置して、接着部材と被接着部材との間に接着剤を容易に配置することができる(請求項4)。
【0013】
また本発明は、前記接着剤配置工程の前に実施されて、前記第1接着部と前記第2接着部とをテーラードブランク工法により互いに接合するテーラードブランク工程を備えるものも含む(請求項5)。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、接着剤に付与するエネルギー量を小さく抑えつつ接着剤の硬化反応の連鎖をより確実に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る接合構造の構築方法が適用されるサイドフレームアウタパネルの概略平面図である。
【図2】図1に示すセンタピラーインナパネルの概略平面図である。
【図3】図2のII−II線断面図である。
【図4】図2のIII−III線断面図である。
【図5】図1に示すサイドフレームアウタパネルの概略平面図である。
【図6】図5のV−V線断面図である。
【図7】接着剤を塗布するための接着剤塗布装置の概要を示す図である。
【図8】接着剤配置工程の様態を示す説明図である。
【図9】接着剤配置工程の様態を示す説明図である。
【図10】硬化工程の様態を示す説明図である。
【図11】本発明に係る接合構造の構築方法が適用された他の例を示す図である。
【図12】本発明に係る接合構造の構築方法が適用された他の例を示す図である。
【図13】本発明に係る接合構造の構築方法に関する実験例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照しつつ、本発明に係る接合構造の構築方法の好ましい実施の形態について説明する。本発明に係る接合構造の構築方法は、材質あるいは形状の少なくとも一方が異なる第1接着部と第2接着部とが特定方向に沿って互いに隣接して配置された接着部材の接合面と被接着部材の接合面とが互いに接合された接合構造を構築するための方法である。ここでは、図1に示すように、被接着部材であるサイドフレームアウタパネル10と、接着部材であるセンタピラーインナパネル20とが接合されて、自動車のセンタピラー(いわゆるBピラー)に接合構造100が構築される場合について説明する。ここで、前記センタピラーインナパネル20に形成された後述する第1インナフランジ34が前記第1接着部に相当し、センタピラーインナパネル20に形成された後述する第2インナフランジ44が第2接着部に相当する。
【0017】
図2は前記センタピラーインナパネル20の概略平面図であり、図3は図1のII−II線断面図であり、図4は図2のIII−III線断面図である。このセンタピラーインナパネル20は、車体下部に配置される上下方向に延びる第1パネル30と、車体上部に配置される上下方向に延びる第2パネル40とで構成されている。この第1パネル30と第2パネル30とは上下方向に隣接している。このセンタピラーインナパネル20は、後述するように、テーラードブランク工法により、第1パネル30を構成する板材と第2パネル40を構成する板材とがレーザー溶接等により一体に接合された後プレス加工されることで形成されている。ここでは、この第1パネル30と第2パネル40とが、同一の材料例えば鋼板で形成されている。
【0018】
第1パネル30にはプレス加工によりフランジ34(第1接着部、以下、第1インナフランジ34という)が形成され、前記第2パネル40にはプレス加工によりフランジ44(第2接着部、以下、第2インナフランジ44という)が形成されている。第1インナフランジ34と第2インナフランジ44とは上下方向に隣接しており、いずれも鋼板で形成されている。第1インナフランジ34と第2インナフランジ44とは、水平方向の幅W1,W2(図2参照)と上下方向の長さL1,L2(図4参照)が互いに同一の値に設定されている一方、各厚みd1、d2(図4参照)は異なる値に設定されている。例えば、第1パネル30の厚みd1は0.8mmであり、第2パネル40の厚みd2は1.6mmに設定されている。
【0019】
図5は、前記サイドフレームアウタパネル10の概略平面図であり、図6は、図5のV−V線断面図である。このサイドフレームアウタパネル10には、フロントドアが取り付けられるフロント開口部11と、リアドアが取り付けられるリア開口部12とが形成されている。そして、前記フロント開口部11の周囲およびリア開口部12の周囲には、フランジ14(以下、アウタフランジ14と言う)が形成されている。
【0020】
前記サイドフレームアウタパネル10と前記センタピラーインナパネル20とは、図1等に示すように、サイドフレームアウタパネル10のうち前記フロント開口部11と前記リア開口部12との間の領域にセンタピラーインナパネル20が取り付けられて、前記アウタフランジ14と前記センタピラーインナパネル20の第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とが接着剤4で接着されることで互いに接合される。具体的には、図10等に示すように、アウタフランジ14の車体内側表面(接合面)14aと、第1インナフランジ34の車体外側表面(接合面)34aおよび第2インナフランジ44の車体外側表面(接合面)44aとが接着剤4により接着される。そして、この接着により、前記第1インナフランジ34と前記第2インナフランジ44とが、前記サイドフレームアウタパネル10および接着剤4を介して接合される。
【0021】
本接合構造の構築方法では、前記接着剤4に連鎖反応型の接着剤を用いる。具体的には、この接着剤4として、光重合性樹脂(主としてエポキシ樹脂、特に好ましくは脂環式エポキシ樹脂)、光・熱重合開始剤(芳香族スルホニウム塩等)、および光重合開始剤(スルホニウム塩等)を主成分とする樹脂組成物であって、紫外線、電子線、X線、赤外線、太陽光線、可視光線、レーザビーム(エキシマレーザ、CO2、レーザー等)、熱線(放射や輻射熱等)等のエネルギー線、或いは熱等の所定量のエネルギーが付与されることによって、その内部にカチオンと硬化反応熱とを積極的に発生させ、これらカチオンと硬化反応熱とによって、連鎖的に硬化反応するものを用いる。
【0022】
また、前記接着剤4を塗布するための接着剤塗布装置110として、図7に示すような装置を用いる。この接着剤塗布装置110は、図略のタンクに貯留されている接着剤4を吐出するノズル112と、前記接着剤4を前記ノズル112に導くホース114と、前記ノズル112を駆動する駆動ロボット115とを有している。
【0023】
前記接着剤4等を用いた本接合構造の構築方法は、次の各工程を含む。
【0024】
1)テーラードブランク工程
この工程は、前述のように、前記第1パネル30と第2パネル40とを有するセンタピラーインナパネル20を形成する工程である。
【0025】
この工程では、まず、前記第1パネル30を構成する第1の鋼板と、この鋼板よりも厚みが厚いい前記第2パネル40を構成する第2の鋼板とをレーザー等により溶接する。そして、溶接により一つの素材となった鋼板をプレス加工し、前記第1の鋼板により前記第1インナフランジ34を有する第1パネル30を形成するとともに、前記第2の鋼板により第1インナフランジ34よりも厚みの厚い前記第2インナフランジ44を有する第2パネル40を形成する。このようにして、本工程では、前記第1パネル30と第2パネル40ひいては第1インナフランジ34と第2インナフランジ44とが一体に溶接されたセンタピラーインナパネル20を形成する。
【0026】
2)接着剤配置工程
この工程は、前記第1インナフランジ34および第2インナフランジ44と前記アウタフランジ14との間に前記接着剤4を配置する工程である。
【0027】
この工程では、まず、図8に示すように、前記アウタフランジ14の車体内側表面14aに接着剤4を塗布する。具体的には、前記接着剤塗布装置110の駆動ロボット115を駆動させて、前記ノズル112から、ホース114を通して供給された前記接着剤4を、前記アウタフランジ14の車体内側表面14a上にその厚みすなわちアウタフランジ14の車体内側表面14aから垂直な方向の高さがこの車体内側表面14a全体にわたって一定となるように吐出していく。
【0028】
次に、図9に示すように、前記第1インナフランジ34および第2インナフランジ44が形成された前記センタピラーインナパネル20を、前記第1インナフランジ34の車体外側表面34aおよび第2インナフランジ44の車体外側表面44aと前記アウタフランジ14の車体内側表面14aとの間で接着剤4を挟み込むようにして、前記サイドフレームアウタパネル10上に載置する。このとき、前記第1インナフランジ34の車体外側表面34aおよび第2インナフランジ44の車体外側表面44aと前記アウタフランジ14の車体内側表面14aとがそれぞれ平行となるようにする。
【0029】
3)エネルギー付与接着剤決定工程
本方法では、後述する硬化工程において、前記第1インナフランジ34側に配置された接着剤(第1接着剤)4と前記第2インナフランジ44側に配置された接着剤(第2接着剤)4の一方側にのみトリガーとなるエネルギーを付与し、この付与部分を起点として接着剤4を連鎖的に硬化させる。この工程では、第1インナフランジ34と第2インナフランジ44のいずれ側にトリガーとなるエネルギーを付与するかを決定する。
【0030】
本発明者らは、連鎖反応型の接着剤を用いて形状あるいは材質の異なる第1接着部と第2接着部とからなる接着部材を被接着部材に接着させる実験を各接着部の形状あるいは材質を種々に変更して行ったところ、第1接着部と第2接着部の熱容量が異なる場合には、これら第1接着部側に配置された接着剤と第2接着部側に配置された接着剤のいずれにトリガーとなるエネルギーを付与するかによって、同じエネルギーを付与した場合でも接着剤の硬化反応が接着部材全体にわたって連鎖する場合としない場合とがあるという結果を得た。換言すれば、第1接着部側に配置された接着剤と第2接着部側に配置された接着剤のいずれにトリガーとなるエネルギーを付与するかによって、接着部材全体にわたって硬化反応を維持するために付与するエネルギーが異なるという結果を得た。
【0031】
例えば、図13に示すように、第1接着部530としての長さL530=37.5mm、厚みd530=2.0mm、幅(紙面と垂直な方向)37.5mmのアルミ板と第2接着部540としての長さL540=37.5mm、厚みd540=1.2mm、幅(紙面と垂直な方向)37.5mmのアルミ板を長さ方向に隣接した状態で配置することで接着部材520を構成して、この接着部材520と被接着部材510との間に配置した連鎖反応型の接着剤504にエネルギーを付与した場合には、厚みの小さい第1接着部530の長さ方向端部530eにトリガーとしてのエネルギーを付与した際には接着剤504全体にわたって硬化反応が連鎖するが、厚みの大きい第2接着部540の長さ方向の端部540eに同じ大きさのエネルギーを付与した際には接着剤504の硬化反応が第1接着部530側に連鎖する前に停止した。なお、この実験において、被接着部材510には長さL=100mm、厚みd3=1.2mm、幅25mmのアルミ板を用い、接着剤504には、脂環式エポキシ樹脂100重量部を主剤として芳香族スルホニウム塩およびスルホニウム塩計3重量部からなる硬化剤が混合された連鎖反応型の接着剤504を用い、接着剤504の厚みをd504=1.0mmとした。
【0032】
前記のような現象は、第1接着部530のアルミ板の方が厚みが小さく熱容量が小さいことで温度上昇が容易に行われるため接着剤504と第1接着部530との温度差が接着剤504と第2接着部540との温度差よりも小さく抑えられて接着剤504から接着部材520側に移動するエネルギー量が小さく抑えられるためと考えられる。すなわち、接着剤504から外部に逃げるエネルギー量が小さく抑えられることで、接着剤504内でエネルギーがより確実に伝達するためと考えられる。そして、この第1接着部530で接着剤504の硬化反応が連鎖していく間に第2接着部540が第1接着部530からの熱伝導により温められて接着剤504の硬化反応が第2接着部540に到達する時点で第2接着部540の温度が十分に高められることで、この第2接着部540においても第2接着部540と接着剤504との温度差が小さく抑えられて接着剤504内でのエネルギー伝達が維持されるためと考えられる。
【0033】
また、本発明者らは、第1接着部と第2接着部の熱容量が同一であっても接着剤と接触する各接合面と垂直な方向における熱抵抗値が異なる場合、例えば、同一の熱伝導率を有する一方接合面と垂直な方向の厚みが異なる場合、あるいは、厚みが同一である一方熱伝導率が異なる場合には、これら第1接着部側に配置された接着剤と第2接着部側に配置された接着剤のいずれにトリガーとなるエネルギーを付与するかによって、同じエネルギーを付与した場合でも接着剤の硬化反応が接着部材全体にわたって連鎖する場合としない場合とがあるという結果、すなわち、接着部材全体にわたって硬化反応を維持するために付与するエネルギーが異なるという結果を得た。具体的には、熱抵抗値が大きい接着部(例えば第1接着部)側に配置された接着剤にトリガーとしてのエネルギーを付与した方が硬化反応の連鎖の停止を回避することができる、すなわち、より小さいエネルギーで硬化反応の連鎖を維持することができるという結果を得た。
【0034】
これは、熱抵抗値が大きく放熱しにくい接着部では、単位時間に接着部を通って接着剤側から外部に放出されるエネルギー量が小さく抑えられることで、接着剤内でエネルギーがより確実に伝達するためと考えられる。そして、この熱抵抗値が大きい一方の接着部において接着剤の硬化反応が連鎖していく間に他方の接着部が一方の接着部からの熱伝導により温められることで、この他方の接着部においても接着剤内でのエネルギー伝達が維持されるためと考えられる。
【0035】
以上より、このエネルギー付与接着剤決定工程では、第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量とを比較して、より小さい熱容量を有する接着部に配置された接着剤(エネルギー付与接着剤)にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。また、第1接着部と第2接着部の熱容量が同一の場合には、各接着部の熱抵抗値を比較して、より大きい熱抵抗値を有する接着部に配置された接着剤(エネルギー付与接着剤)にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。
【0036】
本実施形態におけるセンタピラーに接合構造100を構築する場合では、前述のように、第1接着部に相当する第1インナフランジ34と第2接着部に相当する第2インナフランジ44とは同一の材料で長さおよび幅が同一となるよう形成されている一方、第1インナフランジ34の方が厚みが薄く設定されており、第1インナフランジ34の方が熱容量が小さくなっている。そのためこのエネルギー付与接着剤決定工程において、第1インナフランジ34に配置された接着剤4にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。
【0037】
4)硬化工程
この工程は、前記接着剤4に硬化反応のトリガーとなるエネルギーを付与して接着剤4を硬化させる工程である。
【0038】
この工程では、紫外線照射により接着剤4にエネルギーを付与する。すなわち、図10に示すように、紫外線を照射可能な周知の装置であるUV照射装置130により前記第1インナフランジ34に配置された接着剤4に紫外線を照射する。
【0039】
具体的には、第1インナフランジ34の上端部34e、すなわち第1インナフランジ34の上下方向両端のうち第2インナフランジ44と反対側の端部34eにおいて露出している接着剤4に紫外線を照射する。紫外線が照射された接着剤4は、その内部にカチオンと硬化反応熱とを発生させつつ硬化を開始する。
【0040】
接着剤4の温度は、紫外線が照射されることでまた硬化反応熱の発生により上昇し、第1インナフランジ34との間には温度差が生じる。そのため、この温度差に伴い接着剤4内のエネルギーの一部は第1インナフランジ34側に移動する。しかしながら、前述のように、第1インナフランジ34の熱容量は小さく、前記エネルギーを受けて第1インナフランジ34の温度は早期に上昇する。そのため、接着剤4から第1インナフランジ34に移動するエネルギーは小さく抑えられ、第1インナフランジ34全体にわたって接着剤4の硬化反応は維持され、この硬化反応は第2インナフランジ44側に配置された接着剤4に連鎖していく。前記第1インナフランジ34において接着剤4の硬化反応が連鎖している間に第2インナフランジ44の温度は第1インナフランジ34からの熱伝導により高められており、この第2インナフランジ44側に接着剤4の硬化反応が進んできた時点で第2インナフランジ33の温度はある程度高められている。そのため、この第2インナフランジ44側において、接着剤4から第2インナフランジ44へ移動するエネルギーは小さく抑えられ、第2インナフランジ44全体にわたって接着剤4の硬化反応が行われる。
【0041】
このようにして、本工程では、前記接着剤4を硬化させて前記アウタフランジ14と前記第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とを接合する。
【0042】
以上のように、本接合構造の構築方法では、熱容量の小さい第1インナフランジ34に配置された接着剤4に紫外線を照射して、この第1インナフランジ34側の接着剤4から硬化反応を開始させることで、接着剤4に付与するエネルギーを大きくすることなく、前記接着剤4の硬化反応の連鎖をより確実に維持して、前記第1インナフランジ34と第2インナフランジ44と前記アウタフランジ14とをより確実に接合することができる。
【0043】
本方法では、前記第1インナフランジ34の熱容量が第2インナフランジ44の熱容量と同一である一方、第1インナフランジ34の熱抵抗値が第2インナフランジ44の熱抵抗値よりも大きい場合にも、前記実施形態と同様の効果を奏することができる。
【0044】
この場合には、前記エネルギー付与接着剤決定工程にて熱抵抗値の大きい第1インナフランジ34にトリガーとなるエネルギーを付与するよう決定する。そして、前記硬化工程にてこの第2インナフランジ34に配置された接着剤4に紫外線を照射する。
【0045】
紫外線を照射されることで接着剤4は硬化反応熱を発生させつつ硬化反応を開始する。このとき、接着剤4の温度は紫外線が照射されることでまた紫外線照射により開始した硬化反応の反応熱の発生により上昇する。これにより、第1インナフランジ34では、接着剤4と接している面とこの面に対抗する外部と接している面との間で温度差が生じる。そして、この温度差に伴って接着剤4から第1インナフランジ34を通って外部にエネルギーが移動する。しかしながら、第1インナフランジ34の熱抵抗値は大きく、この第1インナフランジ34を通って外部に移動するエネルギー量は小さく抑えられる。そのため、第1インナフランジ34全体にわたって接着剤4の硬化反応が維持される。そして、この第1インナフランジ34において接着剤4の硬化反応が連鎖している間に第2インナフランジ44の温度が第1インナフランジ34からの熱伝導により高められる結果、この第2インナフランジ44側において接着剤4から第2インナフランジ44へ移動するエネルギーは小さく抑えられ、第2インナフランジ44においても接着剤4の硬化反応の連鎖が維持され、第1インナフランジ34と第2インナフランジ44と前記アウタフランジ14とが確実に接合される。
【0046】
ここで、前記硬化工程において紫外線を照射する位置は第1インナフランジ34の上端部34eに限らない。例えば、図11に示すように、第1インナフランジ34の上下方向略中央部分に表裏に貫通する貫通孔34を形成し、この貫通孔34において露出している接着剤4に紫外線を照射するようにしてもよい。ただし、第1インナフランジ34の上端部34eに紫外線を照射してこの上端部34eから接着剤4の硬化反応を開始すれば、接着剤4の硬化反応が第2インナフランジ44側に進行するまでの時間をより長くしてこの進行までの間に第2インナフランジ44の温度を第1インナフランジ34からの熱伝導により十分に高めることができる。そのため、第2インナフランジ44において接着剤4の硬化反応が進行する際に、接着剤4と第2インナフランジ44との温度差をより小さく抑えることができ、接着剤4の硬化反応の連鎖をより確実に維持することができる。
【0047】
また、前記接着剤配置工程において、前記第1インナフランジ34とアウタフランジ14との間に配置する接着剤104と、第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間に配置する接着剤204とを、異なる種類の接着剤としてもよい。また、第1インナフランジ34とアウタフランジ14との間の接着剤104の厚みと第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間の接着剤204の厚みとは同じでなくてもよい。しかしながら、本方法では、これら接着剤の厚みや種類を異ならせることなく接着剤の硬化反応をより確実に維持することができるので、第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間に同じ種類の接着剤を同じ厚みで配置すれば、より容易に接着剤の配置を行うことができる。
【0048】
また、前記テーラードブランク工程は省略可能である。
【0049】
また、前記接着剤4の具体的構成は前記に限らない。例えば、固形の接着剤や、液状の接着剤を用い、これらを第1インナフランジ34および第2インナフランジ44とアウタフランジ14との間に塗布あるいは充填等してもよい。
【0050】
また、前記硬化工程において、前記接着剤4を硬化させる具体的方法は前記に限らない。
【0051】
また、本方法の適用は、センタピラーに接合構造100を構築する場合に限らない。
【符号の説明】
【0052】
4 接着剤
10 サイドフレームアウタパネル(被接着部材)
14 アウタフランジ
20 センタピラーインナパネル(接着部材)
30 第1パネル
34 第1インナフランジ(第1接着部)
40 第2パネル(第2接着部材)
44 第2インナフランジ(第2接着部)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着部材の接合面と当該接着部材から離間した位置に配置される被接着部材の接合面とが互いに接合された接合構造を構築する接合構造の構築方法であって、
前記接着部材として、材質あるいは形状の少なくとも一方が異なる第1接着部と第2接着部とが特定方向に沿って互いに隣接して配置された接着部材を用い、
外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第1接着剤を前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置するとともに、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第2接着剤を、前記第1接着剤と連続して前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置する接着剤配置工程と、
前記第1接着剤と第2接着剤のうちいずれか一方を、外部からのエネルギーを付与するエネルギー付与接着剤に決定するエネルギー付与接着剤決定工程と、
前記接着剤配置工程の後に実施されて、前記エネルギー付与接着剤決定工程で決定されたエネルギー付与接着剤にエネルギーを付与して当該エネルギー付与接着剤と他方の接着剤とを前記特定方向に沿って連鎖的に硬化させることで前記接着部材と前記被接着部材とを接合する硬化工程とを含み、
前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量のうちのより小さい熱容量を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定することを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造の構築方法であって、
前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量とが同一の場合には、前記第1接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値と第2接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値のうちのより大きい熱抵抗値を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定することを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合構造の構築方法であって、
前記硬化工程では、前記エネルギー付与接着剤の前記特定方向の端部であって、他方の接着剤が配置されている側と反対側の端部にエネルギーを付与することを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の接合構造の構築方法であって、
前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離が、前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離と略同一であり、
前記接着剤配置工程では、前記第1接着剤および前記第2接着剤として同じ種類の接着剤が配置されるとともに、これら第1接着剤および前記第2接着剤が当該第1接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さと当該第2接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さとが略同一となるように配置されることを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の接合構造の構築方法であって、
前記接着剤配置工程の前に実施されて、前記第1接着部と前記第2接着部とをテーラードブランク工法により互いに接合するテーラードブランク工程を備えることを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項1】
接着部材の接合面と当該接着部材から離間した位置に配置される被接着部材の接合面とが互いに接合された接合構造を構築する接合構造の構築方法であって、
前記接着部材として、材質あるいは形状の少なくとも一方が異なる第1接着部と第2接着部とが特定方向に沿って互いに隣接して配置された接着部材を用い、
外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第1接着剤を前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置するとともに、外部から一部に付与されたエネルギーによって内部エネルギーを自己発生させつつ硬化するとともに、当該内部エネルギーが自己発生した部位に隣接する部分がこの内部エネルギーを受けてさらに内部エネルギーを自己発生させつつ硬化反応を起こすことにより連鎖的に硬化する連鎖反応型の第2接着剤を、前記第1接着剤と連続して前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との間に配置する接着剤配置工程と、
前記第1接着剤と第2接着剤のうちいずれか一方を、外部からのエネルギーを付与するエネルギー付与接着剤に決定するエネルギー付与接着剤決定工程と、
前記接着剤配置工程の後に実施されて、前記エネルギー付与接着剤決定工程で決定されたエネルギー付与接着剤にエネルギーを付与して当該エネルギー付与接着剤と他方の接着剤とを前記特定方向に沿って連鎖的に硬化させることで前記接着部材と前記被接着部材とを接合する硬化工程とを含み、
前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量のうちのより小さい熱容量を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定することを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項2】
請求項1に記載の接合構造の構築方法であって、
前記エネルギー付与接着剤決定工程では、前記第1接着部の熱容量と第2接着部の熱容量とが同一の場合には、前記第1接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値と第2接着部のその接合面と垂直な方向における熱抵抗値のうちのより大きい熱抵抗値を有する接着部側に配置された接着剤を前記エネルギー付与接着剤に決定することを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項3】
請求項1または2に記載の接合構造の構築方法であって、
前記硬化工程では、前記エネルギー付与接着剤の前記特定方向の端部であって、他方の接着剤が配置されている側と反対側の端部にエネルギーを付与することを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の接合構造の構築方法であって、
前記第1接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離が、前記第2接着部の接合面と前記被接着部材の接合面との距離と略同一であり、
前記接着剤配置工程では、前記第1接着剤および前記第2接着剤として同じ種類の接着剤が配置されるとともに、これら第1接着剤および前記第2接着剤が当該第1接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さと当該第2接着剤の前記接着部材の接合面と垂直な方向の厚さとが略同一となるように配置されることを特徴とする接合構造の構築方法。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の接合構造の構築方法であって、
前記接着剤配置工程の前に実施されて、前記第1接着部と前記第2接着部とをテーラードブランク工法により互いに接合するテーラードブランク工程を備えることを特徴とする接合構造の構築方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2011−57898(P2011−57898A)
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−210612(P2009−210612)
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月24日(2011.3.24)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年9月11日(2009.9.11)
【出願人】(000003137)マツダ株式会社 (6,115)
【Fターム(参考)】
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