接合装置
【課題】小さな押圧力で、信頼性が高くかつ作業環境を悪化させずに接合物を被接合物に接合できる接合方法および装置を提供する。
【解決手段】本発明においては、スタッド2とワーク3との間に、融点低下部材を配置する。この融点低下部材は、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料と共晶反応する金属材料によって形成される。融点低下部材を介してスタッド2をワーク3に押圧した状態でスタッド2を回転させて摩擦熱を生じさせ、スタッド2およびワーク3の接続部位と融点低下部材とを共晶反応により溶融させ、スタッド2の回転を停止して、スタッド2をワーク3に接合する。これにより、小さな押圧力で、信頼性が高く、かつ作業環境を悪化させることなく接合物を被接合物に接合することができる。
【解決手段】本発明においては、スタッド2とワーク3との間に、融点低下部材を配置する。この融点低下部材は、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料と共晶反応する金属材料によって形成される。融点低下部材を介してスタッド2をワーク3に押圧した状態でスタッド2を回転させて摩擦熱を生じさせ、スタッド2およびワーク3の接続部位と融点低下部材とを共晶反応により溶融させ、スタッド2の回転を停止して、スタッド2をワーク3に接合する。これにより、小さな押圧力で、信頼性が高く、かつ作業環境を悪化させることなく接合物を被接合物に接合することができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合物を被接合物に接合する接合方法および接合装置に関する。本発明による接合方法及び接合装置の具体的な利用分野としては、例えば、LNGタンク等の大型アルミ構造物への小物部材の取り付け、鉄道車両、自動車等のアルミ部材への小物部材の取り付け、船舶、橋梁等の鉄鋼部材への小物部材の取り付け等がある。
【背景技術】
【0002】
接合物を被接合物に接合する従来の方法としてアークスタッド法がある。アークスタッド法では、まず接合物と被接合物との間にアーク放電を発生させ、このアーク放電によって接合物と被接合物とを溶融させて、接合物と被接合物との間に溶融物から成る溶融池を形成する。次に溶融池を形成した状態で接合物を被接合物に押圧し、接合物を被接合物に接合している。
【0003】
接合物を被接合物に接合する他の従来の方法として摩擦圧接法がある。摩擦圧接法では、接合物を被接合物に押付けた状態で接合物を回転させ、接合物と被接合物との間に摩擦熱を生じさせ、接合物と被接合物との接合部に塑性変形を生じさせることによって接合物と被接合物とを接合している(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
接合物を被接合物に接合するさらに他の従来の方法として、ろう接がある。ろう接では、接合物と被接合物との間に、接合物および被接合物よりも融点の低いろう材を配置し、このろう材を溶融させて接合物と被接合物とを接合している(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
ところが、アークスタッド法では、溶融池が凝固する課程において割れおよびブローホールなどの欠陥が生じ、溶接部の品質および接合強度のばらつきが大きくなり易く、接合の信頼性が低いという問題がある。また、アークスタッド法を行うには、溶接を行なうためのガン、電圧を印加するための溶接電源および酸化などを防ぐためのシールドガスを供給する装置などの付帯機器と、これらの付帯機器の配線および配管などが必要となる。また、接合前の酸化被膜除去工程・スタッド接合工程・フェルール除去工程が必要であり、工程数が多い。
【0006】
摩擦圧接法は、姿勢変化の影響を受けない安定した工法であるが、塑性変形を生じさせるために、数百kgからトンオーダの押圧力で接合物を被接合物に押圧する必要がある。したがって、このような押圧力に耐えることができる接合物および被接合物の接合にのみ摩擦圧接法を適用することができるが、たとえば押圧力で座屈するような強度の小さい接合物を摩擦圧接法では接合することができないという問題がある。また、接合装置が大形化し、既設構造物に装置を運び入れて施工することは困難である。また、発生する摩擦熱は相対速度と押圧力の積に比例する。接合物が小径の場合は相対速度が低くなるため、特に大きな押圧力もしくは超高速回転が必要となる。
【0007】
アルミニウムのろう接では、接合物および被接合物のうちのろう材が付着する部分の酸化皮膜を除去する工程が必要となる。酸化皮膜の除去には強活性フラックスが多く用いられる。この強活性フラックスは、残留すると接合部分の腐食の原因となるので、ろう接では、強活性フラックスを除去する工程がさらに必要となり、工程数が増加するという問題がある。またろう材と母材とは、融点の差が小さいので、±5℃程度の温度範囲内でろう付けを行う必要がある。したがってろう接は、溶融温度範囲が狭く、ろう材との融点の差が比較的大きいアルミニウム合金に一般的に適用され、溶融温度範囲が広く、ろう材との融点の差が比較的小さいCu,Mg,Zn,Siなどの含有量の多い高力アルミニウム合金などに適用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−153979号公報
【特許文献2】特開2002−290068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、小さな押圧力で、信頼性が高く、かつ作業環境を悪化させることなく接合物を被接合物に接合することができる接合方法および接合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による接合方法は、
それぞれが金属材料によって形成される接合物および被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材を配置し、
前記融点低下部材を介して前記接合物を前記被接合物に押圧した状態で、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることによって摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と前記融点低下部材との接続部位を溶融させ、
前記接合物と前記被接合物との間の相対運動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、本発明は、前記接合物および前記被接合物は、同じ種類の金属材料によって形成されることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、本発明は、前記金属材料は、アルミニウムであることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、本発明は、前記接合物を回転させることによって、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、本発明は、前記接合物は、円柱状であって、前記被接合物に押圧される先端部が、先細状に形成されることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、本発明は、前記接合物と前記被接合物との相対運動を生じさせるときの負荷を検出し、
検出した負荷に基づいて、前記接合物と前記被接合物との相対運動を停止することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明による接合装置は、
金属材料によって形成される接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を変位駆動する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記接合物および金属材料によって形成される被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材が配置された状態で、前記回転駆動手段を制御して前記把持手段を回転させながら前記把持手段が前記接合物を前記被接合物に押圧させるように前記変位駆動手段を制御して両者の間に摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と、前記融点低下部材との接続部位とを溶融させ、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、本発明は、前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときの負荷を検出する負荷検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記負荷検出手段が検出した負荷に基づいて、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止させることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、本発明は、前記融点低下部材を前記接合物と前記被接合物との間に配置する供給手段をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、本発明は、鉛直方向に対する傾きを検出する姿勢検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、重力と前記変位駆動手段によって加わる力との合力が予め定める力となるように前記変位駆動手段を制御することを特徴とする。
【0020】
上述した本発明の接合方法及び接合装置によれば、まず金属によって形成される接合物と、金属によって形成される被接合物との間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材が配置される。この融点低下部材は、接合物と被接合物の少なくとも一方と共晶反応する金属材料によって形成される。次に融点低下部材が介在した状態で、接合物を被接合物に押圧しつつ、接合物と被接合物との間に相対運動を与える。これにより、接合物と被接合物が突き合わされた部分に摩擦熱が生じる。この摩擦熱によって摩擦面の温度が上昇し、接合物および被接合物のうちの少なくともいずれか一方と融点低下部材との接する部位のみが共晶反応によって液相を生じる。接合物と被接合物の間に十分液相が生じた後、相対運動を停止させる。また、任意の工程として、変位駆動手段を制御してアップセット加圧を行うこともできる。これにより、摩擦面の液相が排出され、接合物と被接合物との活性な新生面同士が突き合わされることで両者を接合することができる。
【0021】
本発明では、摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、従来の技術のアークスタッド法のように形成した溶融池が凝固するときに、割れおよびブローホールなどの欠陥の発生することを抑制することができ、信頼性の高い接合を実現することができる。またアークスタッド法のようにアーク放電を生じさせるための電源およびシールドガスを供給する装置などを必要としないので、接合方法を実現するための装置のコストを大幅に節減することができる。さらに、アークスタッド法に比べると、アーク放電を発生させることなく接合することができるので、省エネルギーで接合を行うことができる。さらに、アーク放電によって生じる有害な紫外線および、ヒュームなどが発生しないので、作業環境の悪化を防ぐことができ、清浄な環境で接合作業を行うことができる。
【0022】
また従来の技術の摩擦圧接法では、塑性変形を生じさせるために大きな押圧力を必要とするが、本発明では融点を低下させて、接合物を形成する金属材料の融点および被接合物を形成する金属材料の融点のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で接合物と被接合物とを溶融させることができるので、摩擦圧接法に比べて、(i)回転速度を低くすること、(ii)押圧力を小さくすること、或いは、(iii)回転速度を低くし且つ押圧力を小さくすることを実現する上で有利であり、大きな押圧力を発生するための大掛かりな装置を必要としない。さらに本発明では摩擦圧接法に比べると小さな押圧力で接合を実現することができるので、摩擦圧接法では、押圧力に耐えることができず、摩擦圧接法を適用することができないような小さな接合物であっても、被接合物に接合することができる。さらに摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、接合物と被接合物との接合面の形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができる。
【0023】
また本発明によれば、例えば、同じ種類の金属材料によって形成される接合物と被接合物との接合を、前述したように装置のコストを大幅に節減しつつ、省エネルギーで行うことができ、また摩擦圧接を行う装置のように装置の構成が大掛かりにならずに、摩擦圧接法では接合できないような小さい接合物を接合することができ、また接合物と被接合物との形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができ、作業環境の悪化を防いで、清浄な環境で信頼性の高い接合を行うことができる。
【0024】
また本発明によれば、例えば、アルミニウムによって形成される接合物と被接合物との接合を、前述したように装置のコストを大幅に節減しつつ、省エネルギーで行うことができ、また摩擦圧接を行う装置のように装置の構成が大掛かりにならずに、摩擦圧接法では接合できないような小さい接合物を接合することができ、また接合物と被接合物との形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができ、作業環境の悪化を防いで、清浄な環境で信頼性の高い接合を行うことができる。
【0025】
また本発明によれば、例えば、接合物を回転させることによって相対運動を与えるので、被接合物の摩擦熱が生じる領域を可能な限り狭くすることができ、接合の影響が生じる領域を可能な限り狭くすることができる。たとえば接合物を被接合物に押圧した状態でスライドさせ、往復運動をする場合に比べて、摩擦熱が発生する領域を狭くすることができる。これによって接合の影響が生じる領域を可能な限り小さくすることができる。
【0026】
さらに本発明によれば、例えば、接合物は、円柱状であって、被接合物に押圧される先端部が先細状に形成される。これは、摩擦面に生ずる摩擦熱を均一にするためである。仮に接合物が完全に円柱形状であって、先端が平面に形成されている場合、接合物を回転させたときに、半径方向の内方と外方とでは、回転速度が外方の方が高くなる。摩擦熱は押圧される圧力、相対速度、摩擦時間の積で表されるので、回転速度の高い半径方向の外方の方が回転速度の低い内方よりも加熱され、接合するときの温度にばらつきが生じ、接合の信頼性が低下する。先細状の接合物では、まず先端が加熱されて溶融し、順次半径外方の領域が被接合物に押圧されて摩擦熱によって溶融し、溶融すべき部位の全てを溶融させることができる。すなわち、回転速度の低い半径方向の内方は高圧力かつ長時間摩擦され、回転速度の高い半径方向の外方は低圧力かつ短時間摩擦される。これによって接合時の温度のばらつきを抑えることができ、信頼性の高い接合を実現することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、例えば、まず接合物と被接合物と間に相対運動を与えるときの負荷を検出し、次にこの検出した負荷に基づいて接合物と被接合物との間の相対運動を停止させる。接合物と被接合物との間の相対運動を与えるときの負荷は、接合物と被接合物との溶融状態に依存する。本発明では、負荷を検出するだけで間接的に溶融状態を確認することができるので、温度および溶融部位などの溶融状態を直接的に検出することなく、相対運動を停止するタイミングを決定することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、例えば、接合物は、把持手段に把持され、制御手段によって駆動が制御される回転駆動手段および変位駆動手段が把持手段を駆動することによって、前述した接合方法を実行する接合装置が実現される。この接合装置は、前述した本発明の接合方法を実行するので、前述したように装置のコストを大幅に節減しつつ、省エネルギーで接合を行い、摩擦圧接を行う装置のように装置の構成が大掛かりにならずに、摩擦圧接法では接合できないような小さい接合物を接合することができ、また接合物と被接合物との形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができ、作業環境の悪化を防いで、清浄な環境で信頼性の高い接合を行うことができる。
【0029】
さらに本発明によれば、例えば、負荷検出手段によって、変位駆動手段が把持手段を回転駆動するときの負荷を検出する。制御部は、負荷検出手段が検出した負荷に基づいて、回転駆動手段を制御して回転駆動を停止させる。接合物と被接合物との間の相対運動を与えるときの負荷は、接合物と被接合物との溶融状態に依存する。本発明では、負荷を検出するだけで間接的に溶融状態を確認することができるので、温度および溶融部位などの溶融状態を直接的に検出する検出手段を備えることなく、相対運動を停止するタイミングを決定することができ、装置が複雑化することを防ぐことができる。
【0030】
さらに本発明によれば、例えば、供給手段が、融点低下部材を接合物と被接合物との間に配置することによって、作業者が融点低下部材を配置することなく、本発明の接合方法を実行する接合装置を実現することができる。
【0031】
さらに本発明によれば、例えば、鉛直方向に対する傾きを検出する姿勢検出手段を含み、制御手段は、姿勢検出手段の検出結果に基づいて、重力と変位駆動手段とによって接合物に加わる力が予め定める力となるように変位駆動手段を制御する。これによって、接合装置が鉛直方向に対してどのような姿勢であっても、接合物を被接合物に押圧することができ、ほぼ同じ接合強度で接合物を被接合物に接合することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明による接合装置は、接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態にある前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態にある把持手段を変位駆動して前記接合物を被接合物に押圧する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときに前記回転駆動手段の回転軸に加えられる負荷を検出する負荷検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記負荷検出手段の検出結果に基づいて前記回転駆動手段による前記接合物の回転を停止するように構成されている、ことを特徴とする。
【0033】
好ましくは、前記回転駆動手段とは別に前記接合物の回転を停止する回転停止手段を更に備える。
【0034】
好ましくは、前記被接合物と前記接合装置とを相対的に固定する固定手段を更に備える。
【0035】
好ましくは、前記接合物と前記被接合物との間に融点低下物質を供給する供給手段をさらに含む。
【0036】
好ましくは、前記回転停止手段が、前記回転駆動手段と前記把持手段とを切り離すためのクラッチ及び前記把持手段を制動するブレーキの少なくともいずれか一方を備えている。
【0037】
好ましくは、前記固定手段が、前記被接合物の形状に沿った形状を備えており、及び/又は、前記被接合物と接触する部分が弾性材料により形成されている。
【0038】
好ましくは、前記固定手段が、高真空吸着パッド又は磁石を含む。
【0039】
好ましくは、前記供給手段が、前記接合物及び前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の接合面に対して、前記融点低下物質を霧状に噴射する噴霧器を含む。
【0040】
好ましくは、前記供給手段が、薄板状の前記融点低下物質を前記接合物及び前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の接合面に固定するクランプもしくはホルダを含む。
【0041】
好ましくは、前記回転駆動手段が、電動機を含む。
【0042】
好ましくは、前記変位駆動手段が、空気シリンダを含む。
【0043】
本発明による接合装置によれば、従来のアークスタッド溶接装置と比較して、接合に伴う溶融域が必要最小限であるので、溶融に伴って発生する割れやブローホール等の欠陥が起こりにくい。また、大きな電力を必要としない省エネルギー型の装置である。また、アークを生じないため事前の酸化被膜除去も必要なく、有害紫外線やヒュームも発生しない。また、施工姿勢の変化による継手性能への影響が少なく、作業者の技量への依存度が小さい。
【0044】
また、従来の摩擦圧接装置と比較すると、金属間化学反応を利用して接合界面を溶融するので、溶融に必要なエネルギーが低く、摩擦圧接法に比べて、(i)回転速度を低くすること、(ii)押圧力を小さくすること、或いは、(iii)回転速度を低くし且つ押圧力を小さくすることを実現する上で有利である。このため、接合物が小径の場合でも比較的低い回転数と比較的小さな押圧力で接合を行うことができる。また、被接合物(ワーク)にボルト穴等の加工を施すことなく、吸着パッド等の固定手段によって接合装置を被接合物に対して確実に固定することができる。接合装置を被接合物に固定した状態においては、任意の姿勢で接合を行うことができる。また、装置を大幅に小型化できるので、既設構造物に接合装置を持ち運んで容易に施工を行うことができる。また、簡単な補助器具のみで任意にハンドリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の一形態の接合装置1を示す正面図である。
【図2】接合装置1を図1の右側から見た側面図である。
【図3】接合装置1を図2のIII−IIIから見た断面図である。
【図4】図1の切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】融点低下部材54をスタッド2の表面上に形成する工程を示す図である。
【図5A】融点低下部材54を固定具55Aによって所定位置に固定する工程を示す図である。
【図6】スタッド2とワーク3とを接合するときの制御手段8の接合処理を示すフローチャートである。
【図7】スタッド2とワーク3とを接合する接合過程を模式的に示す図である。
【図8】サーボモータ23に流れる電流の時間変化を模式的に示す図である。
【図9】第1〜第4スタッド61〜64をそれぞれアルミ基板に接合させた接合体の引張強度を表す図である。
【図10】第4スタッド64をアップセット加圧時の押圧力を変化させてアルミ基板に接合させた接合体のそれぞれの引張強度を表す図である。
【図11】第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の断面図である。
【図11A】上段は、ワーク3と第4スタッド64との破断面において、第4スタッド64側の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果であり、比較例として、融点低下部材(Zn)を使用せずに接合した場合の観察結果を下段に示している。
【図11B】図11Aの上段(実施例)の拡大図2を更に拡大した図である。
【図11C】図11Aの下段(比較例)の拡大図2を更に拡大した図である。
【図12】曲げ試験を行った後の第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の平面図である。
【図13】施工姿勢の変化による継手引張強度への影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施の一形態としての接合装置1及び同装置を用いた接合方法について以下で説明する。
【0047】
なお、本実施の形態においては、図1の紙面に垂直な方向を第1方向X1,X2(「X1,X2」を総括してXと記載する)とし、図1の左右方向を第2方向Y1,Y2(「Y1,Y2」を総括してYと記載する)とし、図1の上下方向を第3方向Z1,Z2(「Z1,Z2」を総括してZと記載する)とする。また第3方向一方Z1を上方Z1といい、第3方向他方Z2を下方Z2という場合がある。第1〜第3方向X,Y,Zは、相互に直交する。
【0048】
図1乃至図4に示したように接合装置1は、金属材料によって形成される接合物に相当するスタッド2を、金属材料によって形成される被接合物に相当するワーク3に接合する。具体的には、スタッド2をワーク3に押圧するとともに、スタッド2を回転させて摩擦熱によってスタッド2およびワーク3を溶接する。ワーク3は、たとえば液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:略称LNG)を収容するLNGタンクの一部を構成し、球形である。接合装置1は、球形のワーク3の外表面に対してスタッド2の軸線が垂直となるようにスタッド2を接合する。接合装置1は、支持台4と、スタッド2を把持し、第3方向Zに延びる把持手段5と、把持手段5を第3方向Zに変位駆動する変位駆動手段6と、把持手段5を第3方向Zに延びる基準軸線Lまわりに回転駆動する回転駆動手段7と、変位駆動手段6および回転駆動手段7の駆動を制御する制御手段8とを含み、本発明の接合方法を用いてスタッド2をワーク3に接合した接合体を製造する。
【0049】
回転駆動手段7は、把持手段5を保持し、かつ把持手段5を回転駆動する。この回転駆動手段7は、変位駆動手段6に保持される。変位駆動手段6は、回転駆動手段7を第3方向Zに変位駆動する。変位駆動手段6が、回転駆動手段7を第3方向Zに変位駆動することによって、回転駆動手段7に保持された把持手段5と、把持手段5に把持されたスタッド2とが第3方向Zに変位する。変位駆動手段6は、ワーク3に貼りついて固定される支持台4に連結される。このような接合装置1では、把持手段5がスタッド2を把持し、かつ変位駆動手段6が回転駆動手段7を下方Z2に変位駆動してスタッド2をワーク3に押圧した状態で、回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動することによって、スタッド2をワーク3に押圧しつつ、回転運動を生じさせて、当接部分に摩擦熱を発生させることができる。
【0050】
支持台4は、ボルト部材、接着剤、磁石、および真空吸着などによってワーク3に貼付いて固定され、本実施の形態では、真空吸着によってワーク3に貼付く。支持台4は、弾性部材から成る高真空吸着パッド4aと排気管4bとを含む固定手段を有し、別途備える排気手段による排気によって吸着パッド4aがワーク3に吸着して固定される。排気手段はエジェクタ、真空ポンプなどによって実現される。吸着パッド4aの弾性により、ワーク3の表面3aが平坦、平滑でない場合でも、接合装置1を確実にワーク3に固定することができる。本実施の形態では、排気手段を真空ポンプで実現し、ワーク3の表面3aの基準軸線L上での法線の延びる方向が、第3方向Zに一致する。
【0051】
変位駆動手段6は、電動機、油圧装置および空圧装置などによって実現され、本実施の形態では空圧装置によって実現される。変位駆動手段6は、2つの複動空気シリンダ15a、15bを含む。複動空気シリンダ15a,15bの各ロッド16a,16bは、各シリンダチューブ17a,17bからそれぞれ下方Z2に延び、下方Z2の端部が支持台4にそれぞれ連結される。変位駆動手段6は、2つのシリンダチューブ17a,17bに挟まれて設けられ、把持手段5が第3方向Zに貫通して案内される第1案内部18をさらに含む。第1案内部18には、第3方向Zに貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に把持手段5が第3方向Zに案内される。変位駆動手段6は、圧縮空気供給源、電磁切替弁および圧縮空気を通す流路をさらに含む。
【0052】
回転駆動手段7は、電動機によって実現され、本実施の形態ではサーボモータ23によって実現される。サーボモータ23は、基準軸線Lと共通な軸線を有する駆動出力軸24を含む。回転駆動手段7は、駆動出力軸24に連結される連結軸25と、把持手段5の軸21の上方Z1の端部を連結軸25に連結するクラッチ26とをさらに含む。このクラッチ26は、本実施の形態では乾式単板電磁クラッチによって実現される。クラッチ26は、連結軸25と把持手段5とを連結するか、切離すかを、コイルに流れる電流によって切替え、サーボモータ23の回転動力が、駆動出力軸24および連結軸25を介して把持手段5に伝達されるか否かを切替える。接合装置1は、把持手段5の回転方向とは逆の方向に力を加える制動機34をさらに含む。本実施の形態では、制動機34は、乾式単板電磁ブレーキによって実現される。この制動機34は、第1案内部18の下方Z2の端部にボルト部材35によって固定され、中心を把持手段5が通る。
【0053】
なお、変形例としては、モータをブレーキ機能付きのものとすることにより、電磁クラッチおよび電磁ブレーキを不要として、装置の小型化を図ることもできる。
【0054】
回転駆動手段7は、変位駆動手段6の上方Z1に複数のボルト部材27で固定される第2案内部28をさらに含む。この第2案内部28には、基準軸線Lを中心にして第3方向Zに貫通する貫通孔31が形成され、この貫通孔31に把持手段5の上方Z1の端部および連結軸25が案内され、基準軸線Lまわりに回転可能に支持される。
【0055】
接合装置1は、接合中の接合対象物の界面の溶融状態を把握する溶融状態把握手段43をさらに含む。溶融状態把握手段43は、回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動するときの負荷を検出する負荷検出手段、接合中のスタッド2とワーク3との界面近傍の温度を計測する温度計、および接合中のスタッド2とワーク3との変形量を計測する変形量検出手段などによって実現される。変形量検出手段は、たとえばスタッド2を把持する把持手段の変位量に基づいて変形量を算出する。本実施の形態における溶融状態把握手段43は、負荷検出手段として回転駆動手段7に流れる電流を検出する検流計によって実現され、回転駆動手段7に設けられて、回転駆動手段7の一部を構成する。溶融状態把握手段43は、回転駆動手段7に流れる電流を検出して、検出した電流を表す情報を制御手段8に与える。溶融状態把握手段43から制御手段8に与えられる情報は、回転駆動手段7を実現するサーボモータ23に流れる電流を表す情報であって、把持手段5を回転させるときのトルクの大きさに対応する情報、すなわち回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動するときの負荷を表す。
【0056】
接合装置1は、鉛直方向に対する傾きを検出し、自身の姿勢を検出する姿勢検出手段44をさらに含む。姿勢検出手段44は、第2案内部28に第2方向他方Y2から取付けられる。姿勢検出手段44は、円板形状の分度器45と、角度を指示する指示部46と、指示部46を回転自在に支持する中心軸47とを含む。
【0057】
接合装置1は、円環状の吊輪48をさらに含む。この吊輪48は、第2案内部28の第1方向一方X1に取付けられる。この吊輪48は、たとえば接合装置1の重心を通り、かつ第1方向Xに平行に延びる直線上に配置される。これによって吊輪48を支持した場合には、基準軸線Lが水平方向に平行になる。
【0058】
接合装置1は、円環状の吊輪48、および1または複数の取手をさらに含み、本実施の形態では2本の第1取手51と、第2取手52とを含む。作業者は、この第1取手51と第2取手52とを把持することによって、接合装置1を変位自在に支持することができる。
【0059】
制御手段8は、変位駆動手段6および回転駆動手段7の駆動を制御する。制御手段8は、たとえばマイクロコンピュータおよびPLC(Programmable Logic Controller)などによって実現される。あらかじめ記憶された制御プログラムによって、制御手段8が変位駆動手段6および回転駆動手段7の駆動を制御する。接合装置1は、テンキーなどを含む入力手段をさらに含む。作業者が入力手段を操作することによって、この操作に対応する指令が制御手段8に与えられ、制御手段8は、与えられた指令に基づいた制御を行う。たとえば入力手段の操作に応じて制御プログラムを変更する。このように作業者が入力手段を操作して制御プログラムを変更することによって、回転駆動手段7が回転駆動するときの回転速度、および変位駆動手段6が変位駆動するときの第3方向Zの駆動力を設定することができる。
【0060】
制御手段8は、スタッド2が予め定める力でワーク3を押圧するように変位駆動手段6を制御する。スタッド2がワーク3を押圧する力は、変位駆動手段6によって第3方向Zに印加される力と、2つのシリンダチューブ17a,17bおよび変位駆動手段6が支持する部材(把持手段5、回転駆動手段7、姿勢検出手段44、吊輪48、第1取手51および第2取手52)に加わる重力の第3方向Zの成分との合力である。本実施の形態における制御手段8は、接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力と、変位駆動手段6によってスタッド2に加わる力との合力が、予め定める力となるように変位駆動手段6の圧縮空気供給源を制御する。本実施の形態において2つのシリンダチューブ17a,17bおよび変位駆動手段6が支持する部材の合計の質量をMとし、重力加速度をgとする。接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力は、第3方向Zと鉛直方向との成す角度の余弦と、Mと、gとを積算した値である。たとえば分度器45の厚み方向の一表面が鉛直方向に平行になるように接合装置1が配置された場合に、接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力は、指示部46が指し示す角度の余弦と、Mと、gとを積算した値である。本実施の形態における接合装置1は、分度器45の厚み方向の一表面が鉛直方向に平行になるように接合装置1が配置された状態で使用されると仮定して説明する。
【0061】
作業者は、指示部46が指す角度を読取り、入力手段を操作することによって読取った角度を制御手段8に与える。なお指示部46が指す角度は、作業者を介さずに姿勢検出手段44から制御手段8に与えられてもよい。制御手段8は、変位駆動手段6によって第3方向Zに印加される力と、入力された角度の余弦、Mおよびgの積算値との合計が、予め定める力になるように、変位駆動手段6の圧縮空気供給源を制御する。これによって、接合装置1が鉛直方向に対してどのような姿勢であっても、スタッド2をワーク3に押圧することができる。この予め定める力は、作業者が入力手段を操作することによって設定可能である。
【0062】
図5は、融点低下部材54をスタッド2の表面上に形成する工程を示す図である。スタッド2は、円柱状の軸部2aと、軸部2aの軸線方向の端部から周方向に突出する円柱状の円柱部2bと、この円柱部2bから先細状に延びる先端部2cとを含む。本実施の形態における融点低下部材54は、円錐形状の先端部2cの側面上に積層して形成される。本実施の形態では、例えば支持台4に配置された噴霧装置55からZnの含有量が95パーセントの霧状の融点低下部材54aを先端部2cに向けて噴霧することによって、融点低下部材54がスタッド2の表面に積層される。
【0063】
融点低下部材54は、スタッド2とワーク3とを接合するときに、スタッド2とワーク3との間に配置される。本実施の形態ではスタッド2の表面に融点低下部材54を配置することによって、スタッド2とワーク3との間に融点低下部材54を配置しているが、他の実施の形態では、ワーク3の表面上に融点低下部材54を積層して形成してもよく、さらに他の実施の形態ではスタッド2およびワーク3の表面に積層して配置することなく、スタッド2とワーク3との間に薄板状の融点低下部材54を配置して、スタッド2とワーク3とで融点低下部材54を挟むようにしてもよい(図5A参照)。
【0064】
融点低下部材54は、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料との共晶反応によって、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料の融点よりも低い温度で液相を生じスタッド2およびワーク3を形成する金属材料と溶け合う。本実施の形態におけるスタッド2およびワーク3は、同じ種類の金属材料によって形成され、アルミニウムによって形成される。スタッド2には、たとえばJIS規格のA5356、A5052、またはA5056を用い、ワーク3には、JIS規格のA5083を用いることができる。融点低下部材54は、アルミニウムと共晶反応することによってアルミニウムの融点よりも低い温度で液相を生じるZn、Cu、SiおよびMgなどの金属材料から成り、本実施の形態ではZnから成る。
【0065】
次に、図6乃至図8を参照して、接合装置1を用いてスタッド2とワーク3とを接合する方法について説明する。
【0066】
制御手段8は、スタッド2とワーク3との間に、融点低下部材54が配置されると、その状態で回転駆動手段7を制御して把持手段5を回転させ、把持手段5がスタッド2をワーク3に押圧させるように変位駆動手段6を制御し、摩擦熱を生じさせ、スタッド2を形成する金属材料の融点およびワーク3を形成する金属材料の融点のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、スタッド2およびワーク3と、融点低下部材54との接続部位56に共晶反応による液相を生じ、回転駆動手段7を制御して回転駆動を停止するとともにアップセット加圧を行い、スタッド2をワーク3に接合する。なお、アップセット加圧は必ずしも必須の工程ではなく、接合条件に応じて適宜実施するものである。
【0067】
スタッド2が把持手段5に取付けられた状態で、接合装置1をワーク3に対して固定し、作業者が入力手段を操作し、スタッド2とワーク3との接合を開始する指令を制御手段8に入力すると、ステップs0からステップs1に移行する。
【0068】
ステップs1では、制御手段8は、回転駆動手段7を制御して把持手段5の回転駆動を開始させる。本実施の形態では、たとえば6000rpmで把持手段5を基準軸線Lまわりに回転させる。次にステップs2において制御手段8は、変位駆動手段6を制御して下方Z2への変位駆動を開始させる。これによって図7(1)に示すように、把持手段5に把持されたスタッド2が基準軸線Lまわりに回転しながら、下方Z2に下降する。スタッド2が基準軸線Lまわりに回転しつつ、ワーク3に押圧されることによって、摩擦熱が生じ、スタッド2の先端部と、ワーク3のスタッド2と付き合わされた部分とが溶融する。
【0069】
次にステップs3において制御手段8は、回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動するときの負荷が予め定める負荷以上か否かを判定し、予め定める負荷以上であればステップs4に移行し、予め定める負荷未満であれば、ステップs3の処理を繰り返す。
【0070】
スタッド2とワーク3との溶融状態に応じて一定の回転速度で把持手段5を回転させるときのサーボモータ23に流れる電流が変化する。サーボモータ23に流れる電流が、予め設定した接合終了電流になると、予め定める負荷以上になったと判断し、ステップs4に移行する。この予め設定した接合終了電流は、接合を終了したときに、最も接合強度が高くなるように実験的に設定される。
【0071】
次にステップs4では、制御手段8は、回転駆動手段7のクラッチ26と制動機34を制御して回転駆動を急停止させる。これにより、接合物と被接合物とが接合される。図8には、回転駆動手段7の回転駆動を停止しなかった場合のサーボモータ23に流れる電流を破線で示している。
【0072】
次にステップs5において制御手段8は、変位駆動手段6を制御して上方Z1への変位駆動を開始させ、把持手段5を上方Z1に変位させ、スタッド2を把持手段5から開放させる。次にステップs6に移行して、接合処理を終了する。
【0073】
なお、ステップs4の次に実施する任意の工程として、制御手段8が変位駆動手段6を制御して、回転駆動停止より1〜3秒程度把持手段5に下方Z2に加える力を5%〜150%増加させて、スタッド2にアップセット加圧を加えるようにしても良い。このように回転駆動停止より1〜3秒程度アップセット加圧を行うことより、接合界面の共晶液相が排出され、接合物と被接合物との活性な新生面同士が突き合わされることによって、スタッド2がワーク3に接合される。
【0074】
以上説明した本実施の形態の接合装置1によれば、融点低下部材54がスタッド2とワーク3との間に介在した状態で、スタッド2をワーク3に押圧しつつ、スタッド2とワーク3との間の相対運動を与える。これによってスタッド2およびワーク3の融点よりも低い温度で、共晶反応によりスタッド2およびワーク3の接続部位56が溶融する。スタッド2とワーク3とが溶融した後に、相対運動を停止させることで、互いに同じ種類の金属材料によって形成されるスタッド2をワーク3に接合することができる。
【0075】
本実施の形態では、摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、従来の技術のアークスタッド法のように形成した溶融池が凝固するときに、割れおよびブローホールなどの欠陥の発生することを抑制することができ、信頼性の高い接合を実現することができる。またアークスタッド法のようにアーク放電を生じさせるための電源およびシールドガスを供給する装置などを必要としないので、接合方法を実現するための接合装置1のコストを大幅に節減することができる。さらに、アークスタッド法に比べると、アーク放電を発生させることなく接合することができるので、省エネルギーで接合を行うことができる。さらに、アーク放電によって生じる有害な紫外線および、ヒュームなどが発生しないので、作業環境の悪化を防ぐことができ、清浄な環境で接合作業を行うことができる。
【0076】
また従来の技術の摩擦圧接法では、塑性変形を生じさせるために大きな押圧力を必要とするが、本発明では共晶反応を利用して、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料の融点のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度でスタッド2とワーク3とを溶融させることができるので、摩擦圧接法に比べて小さな押圧力で接合を実現することができ、大きな押圧力を発生するための大掛かりな装置を必要としない。さらに摩擦圧接法に比べると、(i)回転速度を低くすること、(ii)押圧力を小さくすること、或いは、(iii)回転速度を低くし且つ押圧力を小さくすることを実現する上で有利なので、摩擦圧接法を適用することができないような小さなスタッド2であっても、ワーク3に接合することができる。さらに摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、スタッド2とワーク3との接合面の形状が異なる場合であっても、スタッド2をワーク3に接合することができる。
【0077】
また本実施の形態の接合装置1によれば、ろう付けを行わないので、ろう付けの適用が困難な、溶融温度範囲が広く、ろう材との融点の差が比較的小さいCu,Mg,Zn,Siなどの含有量の多い高力アルミニウム合金などの接合を行うことができる。
【0078】
また本実施の形態の接合装置1によれば、スタッド2を回転させることによって相対運動を与えるので、摩擦熱が生じる領域を可能な限り狭くすることができ、接合の影響が生じる領域を可能な限り狭くすることができる。たとえばスタッド2をワーク3に押圧した状態でスライドさせ、往復運動をする場合に比べて、摩擦熱が発生する領域を狭くすることができる。これによって接合の影響が生じる領域を可能な限り小さくすることができる。
【0079】
さらに本実施の形態の接合装置1によれば、スタッド2は円柱状であって、ワーク3に押圧される先端部2cが先細状に形成される。仮にスタッド2が完全に円柱形状であって、先端が平面に形成されている場合、接合物を回転させたときに半径方向の内方と外方とでは、相対速度が外方の方が高くなる。摩擦熱は押圧される圧力、相対速度、摩擦時間の積で表されるので、回転速度の高い半径方向の外方の方が回転速度の低い内方よりも加熱され、接合するときの温度にばらつきが生じ、接合の信頼性が低下する。先細状のスタッド2では、まず先端が加熱されて溶融し、順次半径外方の領域が被接合物に押圧されて摩擦熱によって溶融し、溶融すべき部位の全てを溶融させることができる。すなわち、回転速度の低い半径方向の内方は高圧力かつ長時間摩擦され、回転速度の高い半径方向の外方は低圧力かつ短時間摩擦される。これによって接合時の温度のばらつきを抑えることができ、信頼性の高い接合を実現することができる。
【0080】
さらに本実施の形態におけるスタッド2は、円柱部2bが、軸部2aに対して半径方向に突出して形成される。たとえば円柱部2bが軸部2aに対して半径方向に突出せずに、軸部2aの先端から先細状に形成されている場合と比べると、円柱部2bが軸部2aに対して半径方向に突出して形成されることによって、スタッド2をワーク3に接合したときに、接合部位での軸線方向に垂直な断面が大きくなり、接合強度が大きくなる。なお、本発明が適用可能なスタッドの形状は、この例に限定されるものではない。
【0081】
さらに本実施の形態の接合装置1によれば、スタッド2とワーク3との間に相対運動を与えるときの回転駆動手段7の負荷を溶融状態把握手段43が検出し、検出した負荷に基づいてスタッド2とワーク3との間の相対運動を停止させる。スタッド2とワーク3との間に相対運動を与えるときの負荷は、スタッド2とワーク3との溶融状態に依存する。本発明では、負荷を検出するだけで間接的に溶融状態を確認することができるので、温度および溶融部位などの溶融状態を直接的に検出する検出手段を備えることなく、相対運動を停止するタイミングを決定することができ、装置が複雑化することを防ぐことができる。
【0082】
さらに本実施の形態の接合装置1によれば、制御手段8は、変位駆動手段6によって第3方向Zに印加される力と、入力された角度の余弦、Mおよびgの積算値との合計が、予め定める力になるように、変位駆動手段6の圧縮空気供給源を制御する。これによって、接合装置1が鉛直方向に対してどのような姿勢であっても、スタッド2をワーク3に押圧することができる。たとえばLNGタンクの一部を構成する球状のワーク3にスタッド2を接合する場合には、鉛直方向の上方に向けてスタッド2をワーク3に押圧したり、水平方向にスタッド2をワーク3に押圧したりする。このような場合であっても、接合装置1の鉛直方向に対する姿勢にかかわらずに予め定める力でスタッド2をワーク3に押圧することができるので、スタッド2を接合するワーク3上の位置にかかわらず、ほぼ同じ接合強度でスタッド2をワーク3に接合することができる。
【0083】
本実施の形態の接合装置1では、融点低下部材54をスタッド2とワーク3との間に供給する供給手段として、支持台4に噴霧装置55が配置されており、この噴霧装置55からスタッド2またはワーク3に向けて霧状の融点低下部材54aが噴出される。噴霧装置55以外にも、図5Aに示したように、薄板状の融点低下部材54をスタッド2とワーク3との間に固定するクランプもしくはホルダから成る固定具55Aで供給手段を構成しても良い。これによって作業者が融点低下部材54を配置することなく、本発明の接合方法を実行する接合装置1を実現することができる。
【0084】
本実施の形態におけるスタッド2の先端部2cは、円錐形状としたけれども、先細状であればよく、たとえば半球状のような円錐形状に対して側面が突出した形状、または円錐形状に対して側面が内側に退避した形状であってもよい。またスタッド2は、ほぼ円柱形状であるとしたけれども、三角柱および五角柱などの多角柱形状でもよい。
【0085】
また本実施の形態の接合装置1は、スタッド2を基準軸線Lまわりに回転させるとしたけれども、回転に限らずにスタッド2の先端をワーク3に押圧した状態でたとえばスライド運動をして、接合物と被接合物との間の相対運動を与えて摩擦熱を生じさせてもよい。
【0086】
また本実施の形態の接合装置1は、姿勢検出手段44を1つ含むとしたけれども、他の実施の形態において2つの姿勢検出手段を含み、接合装置1がどのような姿勢であったとしても鉛直方向と基準軸線Lとの成す角度を検出することができるようにしてもよい。たとえば厚み方向の一表面が第1方向Xに垂直な分度器と、厚み方向の一表面が第2方向Yに垂直な分度器を備え、2つの分度器に設けられる各指示部の各角度に基づいて、鉛直方向と基準軸線Lとの成す角度を検出してもよい。これによって接合装置1がどのような姿勢であっても、基準軸線Lと鉛直方向との成す角度の余弦、M、およびgを積算して、接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力を算出することができ、前述したようにスタッド2が予め定める力でワーク3を押圧するように変位駆動手段6を制御することができる。
【0087】
また本実施の形態の接合装置1は、作業者が第1および第2取手51,52を把持して運搬可能であるとしたけれども、第1および第2取手51,52ならびに吊輪48などを設けることなく、予め定める作業位置に固定されていてもよい。
【0088】
また本実施の形態におけるスタッド2およびワーク3は、同じ種類の金属材料のアルミニウムによって形成され、融点低下部材54は、Znによって形成されるとしたけれども、これらには限られない。スタッド2およびワーク3を鉄で形成した場合は、融点低下部材54をMn、Siによって形成されてもよい。またスタッド2とワーク3とは異なる金属材料によって形成されてもよく、たとえばスタッド2およびワーク3のいずれか一方を鉄によって形成し、他方をアルミニウムによって形成し、融点低下部材54をSiによって形成してもよい。
【0089】
[実施例]
実施例として、前述の実施の形態の接合装置1を用いて、図9に示した4本の第1〜第4スタッド61〜64をそれぞれ同一の条件でワーク3に接合させた。また、第4スタッド64をアップセット加圧時の押圧力が異なる2つの条件でそれぞれワーク3に接合させた。
【0090】
図9は、第1〜第4スタッド61〜64のそれぞれの引張強度を表す図である。図9では、第1〜第4スタッド61〜64についてそれぞれ6回の引張試験を行い、引張強度の平均値を棒グラフで表した。また各引張試験での引張強度の最大値と最小値とを記号(◆)で印し、この最大値と最小値との間を実線で結んだ。
【0091】
第1スタッド61は、直径が6mmの円柱形状である。第2および第3スタッド62,63は、同一形状であって、直径が6mmの円柱形状の軸部62a,63aと、軸部62a,63aの先端から円錐形状に延びる先端部62b,63bとを有する。この先端部62b,63bの高さは、2mmである。第4スタッド64は、前述の実施の形態のスタッド2と同じであって、軸部64aの直径が6mm、円柱部64bの直径が8mm、円柱形状の先端部64cの高さが2mmである。第1および第2スタッド61,62には、融点低下部材54を形成しておらず、第3および第4スタッド63,64の端部の表面には融点低下部材54を形成している。すなわち本発明の接合方法を用いずに第1および第2スタッド61,62をワーク3に接合し、本発明の接合方法を用いて第3および第4スタッド63,64をワーク3に接合した。ワーク3は、アルミニウムから成り、JIS規格のA5083を用いた。また第1〜第4スタッド61〜64は、アルミニウムから成り、JIS規格のA5356を用いた。また融点低下部材54は、Znの含有量が95パーセントのスプレーを噴霧して形成した。第1〜第4スタッド61〜64をワーク3に押圧する力は、摩擦時の押圧力を1000ニュートン(N)、アップセット加圧時の押圧力を1900Nとした。第1および第2スタッド61,62の接合方法は、従来の技術の摩擦圧接法と同じであるが、通常Φ6mm程度の円柱形のスタッドに摩擦圧接法を適用する場合、摩擦時の押圧力は4000N程度、アップセット加圧時の押圧力を5500N程度であるのに対して、押圧する力が小さい。
【0092】
図9に示すように、引張強度は、第1、第2、第3および第4スタッド61,62,63,64の順に大きい。このように本発明の接合方法を用いて接合した第3および第4スタッド63,64の方が、第1および第2スタッド61,62よりも引張強度が大きくなることが示された。また第1スタッド61よりも第2スタッド62の引張強度が大きくなったことから、端部を先細状にすることによって引張強度が大きくなることが示された。また第2スタッド62よりも第3スタッド63の引張強度が大きくなったことから、融点低下部材54を配置することによって、すなわち本発明の接合方法を用いることによって引張強度が大きくなることが示された。さらに、第3スタッド63よりも第4スタッド64の引張強度が大きくなったことから、先端部63b,64cの底辺の直径が大きく、接合する領域の断面積が大きいほど引張強度が大きくなることが示された。
【0093】
図10は、第4スタッド64をアップセット加圧時の押圧力が異なる2つの条件でそれぞれワーク3に接合させた場合の、それぞれの引張強度を表す図である。図10では摩擦時の押圧力を1000Nとし、摩擦時とアップセット加圧時の押圧力が等しく1000Nの場合と、アップセット加圧時に摩擦時より90%増加させた1900Nを負荷している場合についてそれぞれ6回の引張試験を行い、引張強度の平均値を棒グラフで表した。また各引張試験での引張強度の最大値と最小値とを記号(◆)で印し、この最大値と最小値との間を実線で結んだ。
【0094】
図10に示すように、アップセット時の押圧力が摩擦時と等しい場合に比べ、アップセット加圧時に摩擦時より90%増加させた1900Nを負荷した場合のほうが引張強度が大きくなることが分かる。
【0095】
図11は、第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の断面図である。図11に示すように、本発明の接合方法を用いることによって、接合過程において第4スタッド64の先端部64cの大部分および円柱部64bの一部、およびワーク3の表面部が塑性流動していることが分かる。
【0096】
図11Aの上段は、ワーク3と第4スタッド64との接合面の破断面において、第4スタッド64側の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したものである。接合面中心部の領域では凝固した液滴が観察されなかったが、接合面外周部の領域(図11においてXで示した部分)では図11Aの上段にSEM写真で示すように凝固した液滴が観察された(拡大図2を更に拡大した図11B参照)。したがって、接合時に材料が溶融し、塑性流動により外周部へ排出されていることが分かる。
【0097】
図11Aの下段は、比較例として、融点低下部材(Zn)を使用しなかった場合の観察結果を示しており、この比較例においては凝固した液滴が観察されなかった(拡大図2を更に拡大した図11C参照)。
【0098】
図12は、曲げ試験を行った後の第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の平面図である。図12に示すように、本発明の接合方法を用いて第4スタッド64を接合すると、曲げ試験によってワーク3の表面の法線と第4スタッド64との成す角度が90°以上になっても、第4スタッド64がワーク3から剥がれないことが示された。たとえば規格MIL−S−24149Bには、曲げ試験においてスタッドが剥がれることなく15°以上曲がることが基準として規定されている。本発明の接合方法を用いると、従来の技術の摩擦圧接法を適用する場合の通常の押圧力よりも小さい押圧力にもかかわらず、規格MIL−S−24149Bに規定される基準を満たすことが確認された。
【0099】
図13は、施工姿勢の変化による継手引張強度への影響を示した図であり、鉛直下向き方向で接合した場合と、水平横向き方向で接合した場合とで、継手引張強度に大きな変化はないことが分かる。
【0100】
以上、本発明の好ましい例についてある程度特定的に説明したが、それらについて種々の変更をなし得ることはあきらかである。従って、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書中で特定的に記載された態様とは異なる態様で本発明を実施できることが理解されるべきである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、接合物を被接合物に接合する接合方法および接合装置に関する。本発明による接合方法及び接合装置の具体的な利用分野としては、例えば、LNGタンク等の大型アルミ構造物への小物部材の取り付け、鉄道車両、自動車等のアルミ部材への小物部材の取り付け、船舶、橋梁等の鉄鋼部材への小物部材の取り付け等がある。
【背景技術】
【0002】
接合物を被接合物に接合する従来の方法としてアークスタッド法がある。アークスタッド法では、まず接合物と被接合物との間にアーク放電を発生させ、このアーク放電によって接合物と被接合物とを溶融させて、接合物と被接合物との間に溶融物から成る溶融池を形成する。次に溶融池を形成した状態で接合物を被接合物に押圧し、接合物を被接合物に接合している。
【0003】
接合物を被接合物に接合する他の従来の方法として摩擦圧接法がある。摩擦圧接法では、接合物を被接合物に押付けた状態で接合物を回転させ、接合物と被接合物との間に摩擦熱を生じさせ、接合物と被接合物との接合部に塑性変形を生じさせることによって接合物と被接合物とを接合している(たとえば特許文献1参照)。
【0004】
接合物を被接合物に接合するさらに他の従来の方法として、ろう接がある。ろう接では、接合物と被接合物との間に、接合物および被接合物よりも融点の低いろう材を配置し、このろう材を溶融させて接合物と被接合物とを接合している(たとえば特許文献2参照)。
【0005】
ところが、アークスタッド法では、溶融池が凝固する課程において割れおよびブローホールなどの欠陥が生じ、溶接部の品質および接合強度のばらつきが大きくなり易く、接合の信頼性が低いという問題がある。また、アークスタッド法を行うには、溶接を行なうためのガン、電圧を印加するための溶接電源および酸化などを防ぐためのシールドガスを供給する装置などの付帯機器と、これらの付帯機器の配線および配管などが必要となる。また、接合前の酸化被膜除去工程・スタッド接合工程・フェルール除去工程が必要であり、工程数が多い。
【0006】
摩擦圧接法は、姿勢変化の影響を受けない安定した工法であるが、塑性変形を生じさせるために、数百kgからトンオーダの押圧力で接合物を被接合物に押圧する必要がある。したがって、このような押圧力に耐えることができる接合物および被接合物の接合にのみ摩擦圧接法を適用することができるが、たとえば押圧力で座屈するような強度の小さい接合物を摩擦圧接法では接合することができないという問題がある。また、接合装置が大形化し、既設構造物に装置を運び入れて施工することは困難である。また、発生する摩擦熱は相対速度と押圧力の積に比例する。接合物が小径の場合は相対速度が低くなるため、特に大きな押圧力もしくは超高速回転が必要となる。
【0007】
アルミニウムのろう接では、接合物および被接合物のうちのろう材が付着する部分の酸化皮膜を除去する工程が必要となる。酸化皮膜の除去には強活性フラックスが多く用いられる。この強活性フラックスは、残留すると接合部分の腐食の原因となるので、ろう接では、強活性フラックスを除去する工程がさらに必要となり、工程数が増加するという問題がある。またろう材と母材とは、融点の差が小さいので、±5℃程度の温度範囲内でろう付けを行う必要がある。したがってろう接は、溶融温度範囲が狭く、ろう材との融点の差が比較的大きいアルミニウム合金に一般的に適用され、溶融温度範囲が広く、ろう材との融点の差が比較的小さいCu,Mg,Zn,Siなどの含有量の多い高力アルミニウム合金などに適用することが困難である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−153979号公報
【特許文献2】特開2002−290068号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
したがって本発明の目的は、小さな押圧力で、信頼性が高く、かつ作業環境を悪化させることなく接合物を被接合物に接合することができる接合方法および接合装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明による接合方法は、
それぞれが金属材料によって形成される接合物および被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材を配置し、
前記融点低下部材を介して前記接合物を前記被接合物に押圧した状態で、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることによって摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と前記融点低下部材との接続部位を溶融させ、
前記接合物と前記被接合物との間の相対運動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする。
【0011】
好ましくは、本発明は、前記接合物および前記被接合物は、同じ種類の金属材料によって形成されることを特徴とする。
【0012】
好ましくは、本発明は、前記金属材料は、アルミニウムであることを特徴とする。
【0013】
好ましくは、本発明は、前記接合物を回転させることによって、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることを特徴とする。
【0014】
好ましくは、本発明は、前記接合物は、円柱状であって、前記被接合物に押圧される先端部が、先細状に形成されることを特徴とする。
【0015】
好ましくは、本発明は、前記接合物と前記被接合物との相対運動を生じさせるときの負荷を検出し、
検出した負荷に基づいて、前記接合物と前記被接合物との相対運動を停止することを特徴とする。
【0016】
上記課題を解決するために、本発明による接合装置は、
金属材料によって形成される接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を変位駆動する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記接合物および金属材料によって形成される被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材が配置された状態で、前記回転駆動手段を制御して前記把持手段を回転させながら前記把持手段が前記接合物を前記被接合物に押圧させるように前記変位駆動手段を制御して両者の間に摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と、前記融点低下部材との接続部位とを溶融させ、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする。
【0017】
好ましくは、本発明は、前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときの負荷を検出する負荷検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記負荷検出手段が検出した負荷に基づいて、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止させることを特徴とする。
【0018】
好ましくは、本発明は、前記融点低下部材を前記接合物と前記被接合物との間に配置する供給手段をさらに含むことを特徴とする。
【0019】
好ましくは、本発明は、鉛直方向に対する傾きを検出する姿勢検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、重力と前記変位駆動手段によって加わる力との合力が予め定める力となるように前記変位駆動手段を制御することを特徴とする。
【0020】
上述した本発明の接合方法及び接合装置によれば、まず金属によって形成される接合物と、金属によって形成される被接合物との間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材が配置される。この融点低下部材は、接合物と被接合物の少なくとも一方と共晶反応する金属材料によって形成される。次に融点低下部材が介在した状態で、接合物を被接合物に押圧しつつ、接合物と被接合物との間に相対運動を与える。これにより、接合物と被接合物が突き合わされた部分に摩擦熱が生じる。この摩擦熱によって摩擦面の温度が上昇し、接合物および被接合物のうちの少なくともいずれか一方と融点低下部材との接する部位のみが共晶反応によって液相を生じる。接合物と被接合物の間に十分液相が生じた後、相対運動を停止させる。また、任意の工程として、変位駆動手段を制御してアップセット加圧を行うこともできる。これにより、摩擦面の液相が排出され、接合物と被接合物との活性な新生面同士が突き合わされることで両者を接合することができる。
【0021】
本発明では、摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、従来の技術のアークスタッド法のように形成した溶融池が凝固するときに、割れおよびブローホールなどの欠陥の発生することを抑制することができ、信頼性の高い接合を実現することができる。またアークスタッド法のようにアーク放電を生じさせるための電源およびシールドガスを供給する装置などを必要としないので、接合方法を実現するための装置のコストを大幅に節減することができる。さらに、アークスタッド法に比べると、アーク放電を発生させることなく接合することができるので、省エネルギーで接合を行うことができる。さらに、アーク放電によって生じる有害な紫外線および、ヒュームなどが発生しないので、作業環境の悪化を防ぐことができ、清浄な環境で接合作業を行うことができる。
【0022】
また従来の技術の摩擦圧接法では、塑性変形を生じさせるために大きな押圧力を必要とするが、本発明では融点を低下させて、接合物を形成する金属材料の融点および被接合物を形成する金属材料の融点のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で接合物と被接合物とを溶融させることができるので、摩擦圧接法に比べて、(i)回転速度を低くすること、(ii)押圧力を小さくすること、或いは、(iii)回転速度を低くし且つ押圧力を小さくすることを実現する上で有利であり、大きな押圧力を発生するための大掛かりな装置を必要としない。さらに本発明では摩擦圧接法に比べると小さな押圧力で接合を実現することができるので、摩擦圧接法では、押圧力に耐えることができず、摩擦圧接法を適用することができないような小さな接合物であっても、被接合物に接合することができる。さらに摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、接合物と被接合物との接合面の形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができる。
【0023】
また本発明によれば、例えば、同じ種類の金属材料によって形成される接合物と被接合物との接合を、前述したように装置のコストを大幅に節減しつつ、省エネルギーで行うことができ、また摩擦圧接を行う装置のように装置の構成が大掛かりにならずに、摩擦圧接法では接合できないような小さい接合物を接合することができ、また接合物と被接合物との形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができ、作業環境の悪化を防いで、清浄な環境で信頼性の高い接合を行うことができる。
【0024】
また本発明によれば、例えば、アルミニウムによって形成される接合物と被接合物との接合を、前述したように装置のコストを大幅に節減しつつ、省エネルギーで行うことができ、また摩擦圧接を行う装置のように装置の構成が大掛かりにならずに、摩擦圧接法では接合できないような小さい接合物を接合することができ、また接合物と被接合物との形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができ、作業環境の悪化を防いで、清浄な環境で信頼性の高い接合を行うことができる。
【0025】
また本発明によれば、例えば、接合物を回転させることによって相対運動を与えるので、被接合物の摩擦熱が生じる領域を可能な限り狭くすることができ、接合の影響が生じる領域を可能な限り狭くすることができる。たとえば接合物を被接合物に押圧した状態でスライドさせ、往復運動をする場合に比べて、摩擦熱が発生する領域を狭くすることができる。これによって接合の影響が生じる領域を可能な限り小さくすることができる。
【0026】
さらに本発明によれば、例えば、接合物は、円柱状であって、被接合物に押圧される先端部が先細状に形成される。これは、摩擦面に生ずる摩擦熱を均一にするためである。仮に接合物が完全に円柱形状であって、先端が平面に形成されている場合、接合物を回転させたときに、半径方向の内方と外方とでは、回転速度が外方の方が高くなる。摩擦熱は押圧される圧力、相対速度、摩擦時間の積で表されるので、回転速度の高い半径方向の外方の方が回転速度の低い内方よりも加熱され、接合するときの温度にばらつきが生じ、接合の信頼性が低下する。先細状の接合物では、まず先端が加熱されて溶融し、順次半径外方の領域が被接合物に押圧されて摩擦熱によって溶融し、溶融すべき部位の全てを溶融させることができる。すなわち、回転速度の低い半径方向の内方は高圧力かつ長時間摩擦され、回転速度の高い半径方向の外方は低圧力かつ短時間摩擦される。これによって接合時の温度のばらつきを抑えることができ、信頼性の高い接合を実現することができる。
【0027】
さらに本発明によれば、例えば、まず接合物と被接合物と間に相対運動を与えるときの負荷を検出し、次にこの検出した負荷に基づいて接合物と被接合物との間の相対運動を停止させる。接合物と被接合物との間の相対運動を与えるときの負荷は、接合物と被接合物との溶融状態に依存する。本発明では、負荷を検出するだけで間接的に溶融状態を確認することができるので、温度および溶融部位などの溶融状態を直接的に検出することなく、相対運動を停止するタイミングを決定することができる。
【0028】
さらに本発明によれば、例えば、接合物は、把持手段に把持され、制御手段によって駆動が制御される回転駆動手段および変位駆動手段が把持手段を駆動することによって、前述した接合方法を実行する接合装置が実現される。この接合装置は、前述した本発明の接合方法を実行するので、前述したように装置のコストを大幅に節減しつつ、省エネルギーで接合を行い、摩擦圧接を行う装置のように装置の構成が大掛かりにならずに、摩擦圧接法では接合できないような小さい接合物を接合することができ、また接合物と被接合物との形状が異なる場合であっても、接合物を被接合物に接合することができ、作業環境の悪化を防いで、清浄な環境で信頼性の高い接合を行うことができる。
【0029】
さらに本発明によれば、例えば、負荷検出手段によって、変位駆動手段が把持手段を回転駆動するときの負荷を検出する。制御部は、負荷検出手段が検出した負荷に基づいて、回転駆動手段を制御して回転駆動を停止させる。接合物と被接合物との間の相対運動を与えるときの負荷は、接合物と被接合物との溶融状態に依存する。本発明では、負荷を検出するだけで間接的に溶融状態を確認することができるので、温度および溶融部位などの溶融状態を直接的に検出する検出手段を備えることなく、相対運動を停止するタイミングを決定することができ、装置が複雑化することを防ぐことができる。
【0030】
さらに本発明によれば、例えば、供給手段が、融点低下部材を接合物と被接合物との間に配置することによって、作業者が融点低下部材を配置することなく、本発明の接合方法を実行する接合装置を実現することができる。
【0031】
さらに本発明によれば、例えば、鉛直方向に対する傾きを検出する姿勢検出手段を含み、制御手段は、姿勢検出手段の検出結果に基づいて、重力と変位駆動手段とによって接合物に加わる力が予め定める力となるように変位駆動手段を制御する。これによって、接合装置が鉛直方向に対してどのような姿勢であっても、接合物を被接合物に押圧することができ、ほぼ同じ接合強度で接合物を被接合物に接合することができる。
【0032】
上記課題を解決するために、本発明による接合装置は、接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態にある前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態にある把持手段を変位駆動して前記接合物を被接合物に押圧する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときに前記回転駆動手段の回転軸に加えられる負荷を検出する負荷検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記負荷検出手段の検出結果に基づいて前記回転駆動手段による前記接合物の回転を停止するように構成されている、ことを特徴とする。
【0033】
好ましくは、前記回転駆動手段とは別に前記接合物の回転を停止する回転停止手段を更に備える。
【0034】
好ましくは、前記被接合物と前記接合装置とを相対的に固定する固定手段を更に備える。
【0035】
好ましくは、前記接合物と前記被接合物との間に融点低下物質を供給する供給手段をさらに含む。
【0036】
好ましくは、前記回転停止手段が、前記回転駆動手段と前記把持手段とを切り離すためのクラッチ及び前記把持手段を制動するブレーキの少なくともいずれか一方を備えている。
【0037】
好ましくは、前記固定手段が、前記被接合物の形状に沿った形状を備えており、及び/又は、前記被接合物と接触する部分が弾性材料により形成されている。
【0038】
好ましくは、前記固定手段が、高真空吸着パッド又は磁石を含む。
【0039】
好ましくは、前記供給手段が、前記接合物及び前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の接合面に対して、前記融点低下物質を霧状に噴射する噴霧器を含む。
【0040】
好ましくは、前記供給手段が、薄板状の前記融点低下物質を前記接合物及び前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の接合面に固定するクランプもしくはホルダを含む。
【0041】
好ましくは、前記回転駆動手段が、電動機を含む。
【0042】
好ましくは、前記変位駆動手段が、空気シリンダを含む。
【0043】
本発明による接合装置によれば、従来のアークスタッド溶接装置と比較して、接合に伴う溶融域が必要最小限であるので、溶融に伴って発生する割れやブローホール等の欠陥が起こりにくい。また、大きな電力を必要としない省エネルギー型の装置である。また、アークを生じないため事前の酸化被膜除去も必要なく、有害紫外線やヒュームも発生しない。また、施工姿勢の変化による継手性能への影響が少なく、作業者の技量への依存度が小さい。
【0044】
また、従来の摩擦圧接装置と比較すると、金属間化学反応を利用して接合界面を溶融するので、溶融に必要なエネルギーが低く、摩擦圧接法に比べて、(i)回転速度を低くすること、(ii)押圧力を小さくすること、或いは、(iii)回転速度を低くし且つ押圧力を小さくすることを実現する上で有利である。このため、接合物が小径の場合でも比較的低い回転数と比較的小さな押圧力で接合を行うことができる。また、被接合物(ワーク)にボルト穴等の加工を施すことなく、吸着パッド等の固定手段によって接合装置を被接合物に対して確実に固定することができる。接合装置を被接合物に固定した状態においては、任意の姿勢で接合を行うことができる。また、装置を大幅に小型化できるので、既設構造物に接合装置を持ち運んで容易に施工を行うことができる。また、簡単な補助器具のみで任意にハンドリングすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
【図1】本発明の実施の一形態の接合装置1を示す正面図である。
【図2】接合装置1を図1の右側から見た側面図である。
【図3】接合装置1を図2のIII−IIIから見た断面図である。
【図4】図1の切断面線IV−IVから見た断面図である。
【図5】融点低下部材54をスタッド2の表面上に形成する工程を示す図である。
【図5A】融点低下部材54を固定具55Aによって所定位置に固定する工程を示す図である。
【図6】スタッド2とワーク3とを接合するときの制御手段8の接合処理を示すフローチャートである。
【図7】スタッド2とワーク3とを接合する接合過程を模式的に示す図である。
【図8】サーボモータ23に流れる電流の時間変化を模式的に示す図である。
【図9】第1〜第4スタッド61〜64をそれぞれアルミ基板に接合させた接合体の引張強度を表す図である。
【図10】第4スタッド64をアップセット加圧時の押圧力を変化させてアルミ基板に接合させた接合体のそれぞれの引張強度を表す図である。
【図11】第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の断面図である。
【図11A】上段は、ワーク3と第4スタッド64との破断面において、第4スタッド64側の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察した結果であり、比較例として、融点低下部材(Zn)を使用せずに接合した場合の観察結果を下段に示している。
【図11B】図11Aの上段(実施例)の拡大図2を更に拡大した図である。
【図11C】図11Aの下段(比較例)の拡大図2を更に拡大した図である。
【図12】曲げ試験を行った後の第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の平面図である。
【図13】施工姿勢の変化による継手引張強度への影響を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本発明の実施の一形態としての接合装置1及び同装置を用いた接合方法について以下で説明する。
【0047】
なお、本実施の形態においては、図1の紙面に垂直な方向を第1方向X1,X2(「X1,X2」を総括してXと記載する)とし、図1の左右方向を第2方向Y1,Y2(「Y1,Y2」を総括してYと記載する)とし、図1の上下方向を第3方向Z1,Z2(「Z1,Z2」を総括してZと記載する)とする。また第3方向一方Z1を上方Z1といい、第3方向他方Z2を下方Z2という場合がある。第1〜第3方向X,Y,Zは、相互に直交する。
【0048】
図1乃至図4に示したように接合装置1は、金属材料によって形成される接合物に相当するスタッド2を、金属材料によって形成される被接合物に相当するワーク3に接合する。具体的には、スタッド2をワーク3に押圧するとともに、スタッド2を回転させて摩擦熱によってスタッド2およびワーク3を溶接する。ワーク3は、たとえば液化天然ガス(Liquefied Natural Gas:略称LNG)を収容するLNGタンクの一部を構成し、球形である。接合装置1は、球形のワーク3の外表面に対してスタッド2の軸線が垂直となるようにスタッド2を接合する。接合装置1は、支持台4と、スタッド2を把持し、第3方向Zに延びる把持手段5と、把持手段5を第3方向Zに変位駆動する変位駆動手段6と、把持手段5を第3方向Zに延びる基準軸線Lまわりに回転駆動する回転駆動手段7と、変位駆動手段6および回転駆動手段7の駆動を制御する制御手段8とを含み、本発明の接合方法を用いてスタッド2をワーク3に接合した接合体を製造する。
【0049】
回転駆動手段7は、把持手段5を保持し、かつ把持手段5を回転駆動する。この回転駆動手段7は、変位駆動手段6に保持される。変位駆動手段6は、回転駆動手段7を第3方向Zに変位駆動する。変位駆動手段6が、回転駆動手段7を第3方向Zに変位駆動することによって、回転駆動手段7に保持された把持手段5と、把持手段5に把持されたスタッド2とが第3方向Zに変位する。変位駆動手段6は、ワーク3に貼りついて固定される支持台4に連結される。このような接合装置1では、把持手段5がスタッド2を把持し、かつ変位駆動手段6が回転駆動手段7を下方Z2に変位駆動してスタッド2をワーク3に押圧した状態で、回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動することによって、スタッド2をワーク3に押圧しつつ、回転運動を生じさせて、当接部分に摩擦熱を発生させることができる。
【0050】
支持台4は、ボルト部材、接着剤、磁石、および真空吸着などによってワーク3に貼付いて固定され、本実施の形態では、真空吸着によってワーク3に貼付く。支持台4は、弾性部材から成る高真空吸着パッド4aと排気管4bとを含む固定手段を有し、別途備える排気手段による排気によって吸着パッド4aがワーク3に吸着して固定される。排気手段はエジェクタ、真空ポンプなどによって実現される。吸着パッド4aの弾性により、ワーク3の表面3aが平坦、平滑でない場合でも、接合装置1を確実にワーク3に固定することができる。本実施の形態では、排気手段を真空ポンプで実現し、ワーク3の表面3aの基準軸線L上での法線の延びる方向が、第3方向Zに一致する。
【0051】
変位駆動手段6は、電動機、油圧装置および空圧装置などによって実現され、本実施の形態では空圧装置によって実現される。変位駆動手段6は、2つの複動空気シリンダ15a、15bを含む。複動空気シリンダ15a,15bの各ロッド16a,16bは、各シリンダチューブ17a,17bからそれぞれ下方Z2に延び、下方Z2の端部が支持台4にそれぞれ連結される。変位駆動手段6は、2つのシリンダチューブ17a,17bに挟まれて設けられ、把持手段5が第3方向Zに貫通して案内される第1案内部18をさらに含む。第1案内部18には、第3方向Zに貫通する貫通孔が形成され、この貫通孔に把持手段5が第3方向Zに案内される。変位駆動手段6は、圧縮空気供給源、電磁切替弁および圧縮空気を通す流路をさらに含む。
【0052】
回転駆動手段7は、電動機によって実現され、本実施の形態ではサーボモータ23によって実現される。サーボモータ23は、基準軸線Lと共通な軸線を有する駆動出力軸24を含む。回転駆動手段7は、駆動出力軸24に連結される連結軸25と、把持手段5の軸21の上方Z1の端部を連結軸25に連結するクラッチ26とをさらに含む。このクラッチ26は、本実施の形態では乾式単板電磁クラッチによって実現される。クラッチ26は、連結軸25と把持手段5とを連結するか、切離すかを、コイルに流れる電流によって切替え、サーボモータ23の回転動力が、駆動出力軸24および連結軸25を介して把持手段5に伝達されるか否かを切替える。接合装置1は、把持手段5の回転方向とは逆の方向に力を加える制動機34をさらに含む。本実施の形態では、制動機34は、乾式単板電磁ブレーキによって実現される。この制動機34は、第1案内部18の下方Z2の端部にボルト部材35によって固定され、中心を把持手段5が通る。
【0053】
なお、変形例としては、モータをブレーキ機能付きのものとすることにより、電磁クラッチおよび電磁ブレーキを不要として、装置の小型化を図ることもできる。
【0054】
回転駆動手段7は、変位駆動手段6の上方Z1に複数のボルト部材27で固定される第2案内部28をさらに含む。この第2案内部28には、基準軸線Lを中心にして第3方向Zに貫通する貫通孔31が形成され、この貫通孔31に把持手段5の上方Z1の端部および連結軸25が案内され、基準軸線Lまわりに回転可能に支持される。
【0055】
接合装置1は、接合中の接合対象物の界面の溶融状態を把握する溶融状態把握手段43をさらに含む。溶融状態把握手段43は、回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動するときの負荷を検出する負荷検出手段、接合中のスタッド2とワーク3との界面近傍の温度を計測する温度計、および接合中のスタッド2とワーク3との変形量を計測する変形量検出手段などによって実現される。変形量検出手段は、たとえばスタッド2を把持する把持手段の変位量に基づいて変形量を算出する。本実施の形態における溶融状態把握手段43は、負荷検出手段として回転駆動手段7に流れる電流を検出する検流計によって実現され、回転駆動手段7に設けられて、回転駆動手段7の一部を構成する。溶融状態把握手段43は、回転駆動手段7に流れる電流を検出して、検出した電流を表す情報を制御手段8に与える。溶融状態把握手段43から制御手段8に与えられる情報は、回転駆動手段7を実現するサーボモータ23に流れる電流を表す情報であって、把持手段5を回転させるときのトルクの大きさに対応する情報、すなわち回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動するときの負荷を表す。
【0056】
接合装置1は、鉛直方向に対する傾きを検出し、自身の姿勢を検出する姿勢検出手段44をさらに含む。姿勢検出手段44は、第2案内部28に第2方向他方Y2から取付けられる。姿勢検出手段44は、円板形状の分度器45と、角度を指示する指示部46と、指示部46を回転自在に支持する中心軸47とを含む。
【0057】
接合装置1は、円環状の吊輪48をさらに含む。この吊輪48は、第2案内部28の第1方向一方X1に取付けられる。この吊輪48は、たとえば接合装置1の重心を通り、かつ第1方向Xに平行に延びる直線上に配置される。これによって吊輪48を支持した場合には、基準軸線Lが水平方向に平行になる。
【0058】
接合装置1は、円環状の吊輪48、および1または複数の取手をさらに含み、本実施の形態では2本の第1取手51と、第2取手52とを含む。作業者は、この第1取手51と第2取手52とを把持することによって、接合装置1を変位自在に支持することができる。
【0059】
制御手段8は、変位駆動手段6および回転駆動手段7の駆動を制御する。制御手段8は、たとえばマイクロコンピュータおよびPLC(Programmable Logic Controller)などによって実現される。あらかじめ記憶された制御プログラムによって、制御手段8が変位駆動手段6および回転駆動手段7の駆動を制御する。接合装置1は、テンキーなどを含む入力手段をさらに含む。作業者が入力手段を操作することによって、この操作に対応する指令が制御手段8に与えられ、制御手段8は、与えられた指令に基づいた制御を行う。たとえば入力手段の操作に応じて制御プログラムを変更する。このように作業者が入力手段を操作して制御プログラムを変更することによって、回転駆動手段7が回転駆動するときの回転速度、および変位駆動手段6が変位駆動するときの第3方向Zの駆動力を設定することができる。
【0060】
制御手段8は、スタッド2が予め定める力でワーク3を押圧するように変位駆動手段6を制御する。スタッド2がワーク3を押圧する力は、変位駆動手段6によって第3方向Zに印加される力と、2つのシリンダチューブ17a,17bおよび変位駆動手段6が支持する部材(把持手段5、回転駆動手段7、姿勢検出手段44、吊輪48、第1取手51および第2取手52)に加わる重力の第3方向Zの成分との合力である。本実施の形態における制御手段8は、接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力と、変位駆動手段6によってスタッド2に加わる力との合力が、予め定める力となるように変位駆動手段6の圧縮空気供給源を制御する。本実施の形態において2つのシリンダチューブ17a,17bおよび変位駆動手段6が支持する部材の合計の質量をMとし、重力加速度をgとする。接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力は、第3方向Zと鉛直方向との成す角度の余弦と、Mと、gとを積算した値である。たとえば分度器45の厚み方向の一表面が鉛直方向に平行になるように接合装置1が配置された場合に、接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力は、指示部46が指し示す角度の余弦と、Mと、gとを積算した値である。本実施の形態における接合装置1は、分度器45の厚み方向の一表面が鉛直方向に平行になるように接合装置1が配置された状態で使用されると仮定して説明する。
【0061】
作業者は、指示部46が指す角度を読取り、入力手段を操作することによって読取った角度を制御手段8に与える。なお指示部46が指す角度は、作業者を介さずに姿勢検出手段44から制御手段8に与えられてもよい。制御手段8は、変位駆動手段6によって第3方向Zに印加される力と、入力された角度の余弦、Mおよびgの積算値との合計が、予め定める力になるように、変位駆動手段6の圧縮空気供給源を制御する。これによって、接合装置1が鉛直方向に対してどのような姿勢であっても、スタッド2をワーク3に押圧することができる。この予め定める力は、作業者が入力手段を操作することによって設定可能である。
【0062】
図5は、融点低下部材54をスタッド2の表面上に形成する工程を示す図である。スタッド2は、円柱状の軸部2aと、軸部2aの軸線方向の端部から周方向に突出する円柱状の円柱部2bと、この円柱部2bから先細状に延びる先端部2cとを含む。本実施の形態における融点低下部材54は、円錐形状の先端部2cの側面上に積層して形成される。本実施の形態では、例えば支持台4に配置された噴霧装置55からZnの含有量が95パーセントの霧状の融点低下部材54aを先端部2cに向けて噴霧することによって、融点低下部材54がスタッド2の表面に積層される。
【0063】
融点低下部材54は、スタッド2とワーク3とを接合するときに、スタッド2とワーク3との間に配置される。本実施の形態ではスタッド2の表面に融点低下部材54を配置することによって、スタッド2とワーク3との間に融点低下部材54を配置しているが、他の実施の形態では、ワーク3の表面上に融点低下部材54を積層して形成してもよく、さらに他の実施の形態ではスタッド2およびワーク3の表面に積層して配置することなく、スタッド2とワーク3との間に薄板状の融点低下部材54を配置して、スタッド2とワーク3とで融点低下部材54を挟むようにしてもよい(図5A参照)。
【0064】
融点低下部材54は、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料との共晶反応によって、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料の融点よりも低い温度で液相を生じスタッド2およびワーク3を形成する金属材料と溶け合う。本実施の形態におけるスタッド2およびワーク3は、同じ種類の金属材料によって形成され、アルミニウムによって形成される。スタッド2には、たとえばJIS規格のA5356、A5052、またはA5056を用い、ワーク3には、JIS規格のA5083を用いることができる。融点低下部材54は、アルミニウムと共晶反応することによってアルミニウムの融点よりも低い温度で液相を生じるZn、Cu、SiおよびMgなどの金属材料から成り、本実施の形態ではZnから成る。
【0065】
次に、図6乃至図8を参照して、接合装置1を用いてスタッド2とワーク3とを接合する方法について説明する。
【0066】
制御手段8は、スタッド2とワーク3との間に、融点低下部材54が配置されると、その状態で回転駆動手段7を制御して把持手段5を回転させ、把持手段5がスタッド2をワーク3に押圧させるように変位駆動手段6を制御し、摩擦熱を生じさせ、スタッド2を形成する金属材料の融点およびワーク3を形成する金属材料の融点のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、スタッド2およびワーク3と、融点低下部材54との接続部位56に共晶反応による液相を生じ、回転駆動手段7を制御して回転駆動を停止するとともにアップセット加圧を行い、スタッド2をワーク3に接合する。なお、アップセット加圧は必ずしも必須の工程ではなく、接合条件に応じて適宜実施するものである。
【0067】
スタッド2が把持手段5に取付けられた状態で、接合装置1をワーク3に対して固定し、作業者が入力手段を操作し、スタッド2とワーク3との接合を開始する指令を制御手段8に入力すると、ステップs0からステップs1に移行する。
【0068】
ステップs1では、制御手段8は、回転駆動手段7を制御して把持手段5の回転駆動を開始させる。本実施の形態では、たとえば6000rpmで把持手段5を基準軸線Lまわりに回転させる。次にステップs2において制御手段8は、変位駆動手段6を制御して下方Z2への変位駆動を開始させる。これによって図7(1)に示すように、把持手段5に把持されたスタッド2が基準軸線Lまわりに回転しながら、下方Z2に下降する。スタッド2が基準軸線Lまわりに回転しつつ、ワーク3に押圧されることによって、摩擦熱が生じ、スタッド2の先端部と、ワーク3のスタッド2と付き合わされた部分とが溶融する。
【0069】
次にステップs3において制御手段8は、回転駆動手段7が把持手段5を回転駆動するときの負荷が予め定める負荷以上か否かを判定し、予め定める負荷以上であればステップs4に移行し、予め定める負荷未満であれば、ステップs3の処理を繰り返す。
【0070】
スタッド2とワーク3との溶融状態に応じて一定の回転速度で把持手段5を回転させるときのサーボモータ23に流れる電流が変化する。サーボモータ23に流れる電流が、予め設定した接合終了電流になると、予め定める負荷以上になったと判断し、ステップs4に移行する。この予め設定した接合終了電流は、接合を終了したときに、最も接合強度が高くなるように実験的に設定される。
【0071】
次にステップs4では、制御手段8は、回転駆動手段7のクラッチ26と制動機34を制御して回転駆動を急停止させる。これにより、接合物と被接合物とが接合される。図8には、回転駆動手段7の回転駆動を停止しなかった場合のサーボモータ23に流れる電流を破線で示している。
【0072】
次にステップs5において制御手段8は、変位駆動手段6を制御して上方Z1への変位駆動を開始させ、把持手段5を上方Z1に変位させ、スタッド2を把持手段5から開放させる。次にステップs6に移行して、接合処理を終了する。
【0073】
なお、ステップs4の次に実施する任意の工程として、制御手段8が変位駆動手段6を制御して、回転駆動停止より1〜3秒程度把持手段5に下方Z2に加える力を5%〜150%増加させて、スタッド2にアップセット加圧を加えるようにしても良い。このように回転駆動停止より1〜3秒程度アップセット加圧を行うことより、接合界面の共晶液相が排出され、接合物と被接合物との活性な新生面同士が突き合わされることによって、スタッド2がワーク3に接合される。
【0074】
以上説明した本実施の形態の接合装置1によれば、融点低下部材54がスタッド2とワーク3との間に介在した状態で、スタッド2をワーク3に押圧しつつ、スタッド2とワーク3との間の相対運動を与える。これによってスタッド2およびワーク3の融点よりも低い温度で、共晶反応によりスタッド2およびワーク3の接続部位56が溶融する。スタッド2とワーク3とが溶融した後に、相対運動を停止させることで、互いに同じ種類の金属材料によって形成されるスタッド2をワーク3に接合することができる。
【0075】
本実施の形態では、摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、従来の技術のアークスタッド法のように形成した溶融池が凝固するときに、割れおよびブローホールなどの欠陥の発生することを抑制することができ、信頼性の高い接合を実現することができる。またアークスタッド法のようにアーク放電を生じさせるための電源およびシールドガスを供給する装置などを必要としないので、接合方法を実現するための接合装置1のコストを大幅に節減することができる。さらに、アークスタッド法に比べると、アーク放電を発生させることなく接合することができるので、省エネルギーで接合を行うことができる。さらに、アーク放電によって生じる有害な紫外線および、ヒュームなどが発生しないので、作業環境の悪化を防ぐことができ、清浄な環境で接合作業を行うことができる。
【0076】
また従来の技術の摩擦圧接法では、塑性変形を生じさせるために大きな押圧力を必要とするが、本発明では共晶反応を利用して、スタッド2およびワーク3を形成する金属材料の融点のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度でスタッド2とワーク3とを溶融させることができるので、摩擦圧接法に比べて小さな押圧力で接合を実現することができ、大きな押圧力を発生するための大掛かりな装置を必要としない。さらに摩擦圧接法に比べると、(i)回転速度を低くすること、(ii)押圧力を小さくすること、或いは、(iii)回転速度を低くし且つ押圧力を小さくすることを実現する上で有利なので、摩擦圧接法を適用することができないような小さなスタッド2であっても、ワーク3に接合することができる。さらに摩擦が生じる部位を局所的に加熱し、溶融する範囲を局所的に限定することができるので、スタッド2とワーク3との接合面の形状が異なる場合であっても、スタッド2をワーク3に接合することができる。
【0077】
また本実施の形態の接合装置1によれば、ろう付けを行わないので、ろう付けの適用が困難な、溶融温度範囲が広く、ろう材との融点の差が比較的小さいCu,Mg,Zn,Siなどの含有量の多い高力アルミニウム合金などの接合を行うことができる。
【0078】
また本実施の形態の接合装置1によれば、スタッド2を回転させることによって相対運動を与えるので、摩擦熱が生じる領域を可能な限り狭くすることができ、接合の影響が生じる領域を可能な限り狭くすることができる。たとえばスタッド2をワーク3に押圧した状態でスライドさせ、往復運動をする場合に比べて、摩擦熱が発生する領域を狭くすることができる。これによって接合の影響が生じる領域を可能な限り小さくすることができる。
【0079】
さらに本実施の形態の接合装置1によれば、スタッド2は円柱状であって、ワーク3に押圧される先端部2cが先細状に形成される。仮にスタッド2が完全に円柱形状であって、先端が平面に形成されている場合、接合物を回転させたときに半径方向の内方と外方とでは、相対速度が外方の方が高くなる。摩擦熱は押圧される圧力、相対速度、摩擦時間の積で表されるので、回転速度の高い半径方向の外方の方が回転速度の低い内方よりも加熱され、接合するときの温度にばらつきが生じ、接合の信頼性が低下する。先細状のスタッド2では、まず先端が加熱されて溶融し、順次半径外方の領域が被接合物に押圧されて摩擦熱によって溶融し、溶融すべき部位の全てを溶融させることができる。すなわち、回転速度の低い半径方向の内方は高圧力かつ長時間摩擦され、回転速度の高い半径方向の外方は低圧力かつ短時間摩擦される。これによって接合時の温度のばらつきを抑えることができ、信頼性の高い接合を実現することができる。
【0080】
さらに本実施の形態におけるスタッド2は、円柱部2bが、軸部2aに対して半径方向に突出して形成される。たとえば円柱部2bが軸部2aに対して半径方向に突出せずに、軸部2aの先端から先細状に形成されている場合と比べると、円柱部2bが軸部2aに対して半径方向に突出して形成されることによって、スタッド2をワーク3に接合したときに、接合部位での軸線方向に垂直な断面が大きくなり、接合強度が大きくなる。なお、本発明が適用可能なスタッドの形状は、この例に限定されるものではない。
【0081】
さらに本実施の形態の接合装置1によれば、スタッド2とワーク3との間に相対運動を与えるときの回転駆動手段7の負荷を溶融状態把握手段43が検出し、検出した負荷に基づいてスタッド2とワーク3との間の相対運動を停止させる。スタッド2とワーク3との間に相対運動を与えるときの負荷は、スタッド2とワーク3との溶融状態に依存する。本発明では、負荷を検出するだけで間接的に溶融状態を確認することができるので、温度および溶融部位などの溶融状態を直接的に検出する検出手段を備えることなく、相対運動を停止するタイミングを決定することができ、装置が複雑化することを防ぐことができる。
【0082】
さらに本実施の形態の接合装置1によれば、制御手段8は、変位駆動手段6によって第3方向Zに印加される力と、入力された角度の余弦、Mおよびgの積算値との合計が、予め定める力になるように、変位駆動手段6の圧縮空気供給源を制御する。これによって、接合装置1が鉛直方向に対してどのような姿勢であっても、スタッド2をワーク3に押圧することができる。たとえばLNGタンクの一部を構成する球状のワーク3にスタッド2を接合する場合には、鉛直方向の上方に向けてスタッド2をワーク3に押圧したり、水平方向にスタッド2をワーク3に押圧したりする。このような場合であっても、接合装置1の鉛直方向に対する姿勢にかかわらずに予め定める力でスタッド2をワーク3に押圧することができるので、スタッド2を接合するワーク3上の位置にかかわらず、ほぼ同じ接合強度でスタッド2をワーク3に接合することができる。
【0083】
本実施の形態の接合装置1では、融点低下部材54をスタッド2とワーク3との間に供給する供給手段として、支持台4に噴霧装置55が配置されており、この噴霧装置55からスタッド2またはワーク3に向けて霧状の融点低下部材54aが噴出される。噴霧装置55以外にも、図5Aに示したように、薄板状の融点低下部材54をスタッド2とワーク3との間に固定するクランプもしくはホルダから成る固定具55Aで供給手段を構成しても良い。これによって作業者が融点低下部材54を配置することなく、本発明の接合方法を実行する接合装置1を実現することができる。
【0084】
本実施の形態におけるスタッド2の先端部2cは、円錐形状としたけれども、先細状であればよく、たとえば半球状のような円錐形状に対して側面が突出した形状、または円錐形状に対して側面が内側に退避した形状であってもよい。またスタッド2は、ほぼ円柱形状であるとしたけれども、三角柱および五角柱などの多角柱形状でもよい。
【0085】
また本実施の形態の接合装置1は、スタッド2を基準軸線Lまわりに回転させるとしたけれども、回転に限らずにスタッド2の先端をワーク3に押圧した状態でたとえばスライド運動をして、接合物と被接合物との間の相対運動を与えて摩擦熱を生じさせてもよい。
【0086】
また本実施の形態の接合装置1は、姿勢検出手段44を1つ含むとしたけれども、他の実施の形態において2つの姿勢検出手段を含み、接合装置1がどのような姿勢であったとしても鉛直方向と基準軸線Lとの成す角度を検出することができるようにしてもよい。たとえば厚み方向の一表面が第1方向Xに垂直な分度器と、厚み方向の一表面が第2方向Yに垂直な分度器を備え、2つの分度器に設けられる各指示部の各角度に基づいて、鉛直方向と基準軸線Lとの成す角度を検出してもよい。これによって接合装置1がどのような姿勢であっても、基準軸線Lと鉛直方向との成す角度の余弦、M、およびgを積算して、接合装置1の自重によってスタッド2に加わる力を算出することができ、前述したようにスタッド2が予め定める力でワーク3を押圧するように変位駆動手段6を制御することができる。
【0087】
また本実施の形態の接合装置1は、作業者が第1および第2取手51,52を把持して運搬可能であるとしたけれども、第1および第2取手51,52ならびに吊輪48などを設けることなく、予め定める作業位置に固定されていてもよい。
【0088】
また本実施の形態におけるスタッド2およびワーク3は、同じ種類の金属材料のアルミニウムによって形成され、融点低下部材54は、Znによって形成されるとしたけれども、これらには限られない。スタッド2およびワーク3を鉄で形成した場合は、融点低下部材54をMn、Siによって形成されてもよい。またスタッド2とワーク3とは異なる金属材料によって形成されてもよく、たとえばスタッド2およびワーク3のいずれか一方を鉄によって形成し、他方をアルミニウムによって形成し、融点低下部材54をSiによって形成してもよい。
【0089】
[実施例]
実施例として、前述の実施の形態の接合装置1を用いて、図9に示した4本の第1〜第4スタッド61〜64をそれぞれ同一の条件でワーク3に接合させた。また、第4スタッド64をアップセット加圧時の押圧力が異なる2つの条件でそれぞれワーク3に接合させた。
【0090】
図9は、第1〜第4スタッド61〜64のそれぞれの引張強度を表す図である。図9では、第1〜第4スタッド61〜64についてそれぞれ6回の引張試験を行い、引張強度の平均値を棒グラフで表した。また各引張試験での引張強度の最大値と最小値とを記号(◆)で印し、この最大値と最小値との間を実線で結んだ。
【0091】
第1スタッド61は、直径が6mmの円柱形状である。第2および第3スタッド62,63は、同一形状であって、直径が6mmの円柱形状の軸部62a,63aと、軸部62a,63aの先端から円錐形状に延びる先端部62b,63bとを有する。この先端部62b,63bの高さは、2mmである。第4スタッド64は、前述の実施の形態のスタッド2と同じであって、軸部64aの直径が6mm、円柱部64bの直径が8mm、円柱形状の先端部64cの高さが2mmである。第1および第2スタッド61,62には、融点低下部材54を形成しておらず、第3および第4スタッド63,64の端部の表面には融点低下部材54を形成している。すなわち本発明の接合方法を用いずに第1および第2スタッド61,62をワーク3に接合し、本発明の接合方法を用いて第3および第4スタッド63,64をワーク3に接合した。ワーク3は、アルミニウムから成り、JIS規格のA5083を用いた。また第1〜第4スタッド61〜64は、アルミニウムから成り、JIS規格のA5356を用いた。また融点低下部材54は、Znの含有量が95パーセントのスプレーを噴霧して形成した。第1〜第4スタッド61〜64をワーク3に押圧する力は、摩擦時の押圧力を1000ニュートン(N)、アップセット加圧時の押圧力を1900Nとした。第1および第2スタッド61,62の接合方法は、従来の技術の摩擦圧接法と同じであるが、通常Φ6mm程度の円柱形のスタッドに摩擦圧接法を適用する場合、摩擦時の押圧力は4000N程度、アップセット加圧時の押圧力を5500N程度であるのに対して、押圧する力が小さい。
【0092】
図9に示すように、引張強度は、第1、第2、第3および第4スタッド61,62,63,64の順に大きい。このように本発明の接合方法を用いて接合した第3および第4スタッド63,64の方が、第1および第2スタッド61,62よりも引張強度が大きくなることが示された。また第1スタッド61よりも第2スタッド62の引張強度が大きくなったことから、端部を先細状にすることによって引張強度が大きくなることが示された。また第2スタッド62よりも第3スタッド63の引張強度が大きくなったことから、融点低下部材54を配置することによって、すなわち本発明の接合方法を用いることによって引張強度が大きくなることが示された。さらに、第3スタッド63よりも第4スタッド64の引張強度が大きくなったことから、先端部63b,64cの底辺の直径が大きく、接合する領域の断面積が大きいほど引張強度が大きくなることが示された。
【0093】
図10は、第4スタッド64をアップセット加圧時の押圧力が異なる2つの条件でそれぞれワーク3に接合させた場合の、それぞれの引張強度を表す図である。図10では摩擦時の押圧力を1000Nとし、摩擦時とアップセット加圧時の押圧力が等しく1000Nの場合と、アップセット加圧時に摩擦時より90%増加させた1900Nを負荷している場合についてそれぞれ6回の引張試験を行い、引張強度の平均値を棒グラフで表した。また各引張試験での引張強度の最大値と最小値とを記号(◆)で印し、この最大値と最小値との間を実線で結んだ。
【0094】
図10に示すように、アップセット時の押圧力が摩擦時と等しい場合に比べ、アップセット加圧時に摩擦時より90%増加させた1900Nを負荷した場合のほうが引張強度が大きくなることが分かる。
【0095】
図11は、第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の断面図である。図11に示すように、本発明の接合方法を用いることによって、接合過程において第4スタッド64の先端部64cの大部分および円柱部64bの一部、およびワーク3の表面部が塑性流動していることが分かる。
【0096】
図11Aの上段は、ワーク3と第4スタッド64との接合面の破断面において、第4スタッド64側の状態を走査型電子顕微鏡(SEM)で観察したものである。接合面中心部の領域では凝固した液滴が観察されなかったが、接合面外周部の領域(図11においてXで示した部分)では図11Aの上段にSEM写真で示すように凝固した液滴が観察された(拡大図2を更に拡大した図11B参照)。したがって、接合時に材料が溶融し、塑性流動により外周部へ排出されていることが分かる。
【0097】
図11Aの下段は、比較例として、融点低下部材(Zn)を使用しなかった場合の観察結果を示しており、この比較例においては凝固した液滴が観察されなかった(拡大図2を更に拡大した図11C参照)。
【0098】
図12は、曲げ試験を行った後の第4スタッド64をワーク3に接合した接合体の平面図である。図12に示すように、本発明の接合方法を用いて第4スタッド64を接合すると、曲げ試験によってワーク3の表面の法線と第4スタッド64との成す角度が90°以上になっても、第4スタッド64がワーク3から剥がれないことが示された。たとえば規格MIL−S−24149Bには、曲げ試験においてスタッドが剥がれることなく15°以上曲がることが基準として規定されている。本発明の接合方法を用いると、従来の技術の摩擦圧接法を適用する場合の通常の押圧力よりも小さい押圧力にもかかわらず、規格MIL−S−24149Bに規定される基準を満たすことが確認された。
【0099】
図13は、施工姿勢の変化による継手引張強度への影響を示した図であり、鉛直下向き方向で接合した場合と、水平横向き方向で接合した場合とで、継手引張強度に大きな変化はないことが分かる。
【0100】
以上、本発明の好ましい例についてある程度特定的に説明したが、それらについて種々の変更をなし得ることはあきらかである。従って、本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、本明細書中で特定的に記載された態様とは異なる態様で本発明を実施できることが理解されるべきである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが金属材料によって形成される接合物および被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材を配置し、
前記融点低下部材を介して前記接合物を前記被接合物に押圧した状態で、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることによって摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と前記融点低下部材との接続部位を溶融させ、
前記接合物と前記被接合物との間の相対運動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記接合物および前記被接合物は、同じ種類の金属材料によって形成されることを特徴とする請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
前記金属材料は、アルミニウムであることを特徴とする請求項2記載の接合方法。
【請求項4】
前記接合物を回転させることによって、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合物は、円柱状であって、前記被接合物に押圧される先端部が、先細状に形成されることを特徴とする請求項4記載の接合方法。
【請求項6】
前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えるときの負荷を検出し、
検出した負荷に基づいて、前記接合物と前記被接合物との相対運動を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
金属材料によって形成される接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を変位駆動する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記接合物および金属材料によって形成される被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材が配置された状態で、前記回転駆動手段を制御して前記把持手段を回転させながら前記把持手段が前記接合物を前記被接合物に押圧させるように前記変位駆動手段を制御して両者の間に摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と、前記融点低下部材との接続部位とを溶融させ、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする接合装置。
【請求項8】
前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときの負荷を検出する負荷検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記負荷検出手段が検出した負荷に基づいて、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止させることを特徴とする請求項7記載の接合装置。
【請求項9】
前記融点低下部材を前記接合物と前記被接合物との間に配置する供給手段をさらに含むことを特徴とする請求項7または8記載の接合装置。
【請求項10】
鉛直方向に対する傾きを検出する姿勢検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、重力と前記変位駆動手段とによって前記接合物に加わる力が予め定める力となるように前記変位駆動手段を制御することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項11】
接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を変位駆動して前記接合物を被接合物に押圧する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときに前記回転駆動手段の回転軸に加えられる負荷を検出する負荷検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記負荷検出手段の検出結果に基づいて前記回転駆動手段による前記接合物の回転を停止するように構成されている、ことを特徴とする接合装置。
【請求項12】
前記回転駆動手段とは別に前記接合物の回転を停止する回転停止手段を更に備えることを特徴とする請求項11記載の接合装置。
【請求項13】
前記被接合物と前記接合装置とを相対的に固定する固定手段を更に備えることを特徴とする請求項11又は12に記載に接合装置。
【請求項14】
前記接合物と前記被接合物との間に融点低下物質を供給する供給手段をさらに含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項15】
前記回転停止手段が、前記回転駆動手段と前記把持手段とを切り離すためのクラッチ及び前記把持手段を制動するブレーキの少なくともいずれか一方を備えていることを特徴とする請求項12記載の接合装置。
【請求項16】
前記固定手段が、前記被接合物の形状に沿った形状を備えており、及び/又は、前記被接合物と接触する部分が弾性材料により形成されている、ことを特徴とする請求項13記載の接合装置。
【請求項17】
前記固定手段が、高真空吸着パッド又は磁石を含むことを特徴とする請求項13記載の接合装置。
【請求項18】
前記供給手段が、前記接合物及び前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の接合面に対して、前記融点低下物質を霧状に噴射する噴霧器を含むことを特徴とする請求項14記載の接合装置。
【請求項19】
前記供給手段が、薄板状の前記融点低下物質を前記接合物と前記被接合物との間に固定する固定具を含むことを特徴とする請求項14記載の接合装置。
【請求項20】
前記回転駆動手段が、電動機を含むことを特徴とする請求項11乃至19のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項21】
前記変位駆動手段が、空気シリンダを含むことを特徴とする請求項11乃至20のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項1】
それぞれが金属材料によって形成される接合物および被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材を配置し、
前記融点低下部材を介して前記接合物を前記被接合物に押圧した状態で、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることによって摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と前記融点低下部材との接続部位を溶融させ、
前記接合物と前記被接合物との間の相対運動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする接合方法。
【請求項2】
前記接合物および前記被接合物は、同じ種類の金属材料によって形成されることを特徴とする請求項1記載の接合方法。
【請求項3】
前記金属材料は、アルミニウムであることを特徴とする請求項2記載の接合方法。
【請求項4】
前記接合物を回転させることによって、前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項5】
前記接合物は、円柱状であって、前記被接合物に押圧される先端部が、先細状に形成されることを特徴とする請求項4記載の接合方法。
【請求項6】
前記接合物と前記被接合物との間に相対運動を与えるときの負荷を検出し、
検出した負荷に基づいて、前記接合物と前記被接合物との相対運動を停止することを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の接合方法。
【請求項7】
金属材料によって形成される接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を変位駆動する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、を含み、
前記制御手段は、
前記接合物および金属材料によって形成される被接合物の間に、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点低下部材が配置された状態で、前記回転駆動手段を制御して前記把持手段を回転させながら前記把持手段が前記接合物を前記被接合物に押圧させるように前記変位駆動手段を制御して両者の間に摩擦熱を生じさせ、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の融点未満の温度で、前記接合物および前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方と、前記融点低下部材との接続部位とを溶融させ、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止して、前記接合物を前記被接合物に接合することを特徴とする接合装置。
【請求項8】
前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときの負荷を検出する負荷検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記負荷検出手段が検出した負荷に基づいて、前記回転駆動手段を制御して回転駆動を停止させることを特徴とする請求項7記載の接合装置。
【請求項9】
前記融点低下部材を前記接合物と前記被接合物との間に配置する供給手段をさらに含むことを特徴とする請求項7または8記載の接合装置。
【請求項10】
鉛直方向に対する傾きを検出する姿勢検出手段をさらに含み、
前記制御手段は、前記姿勢検出手段の検出結果に基づいて、重力と前記変位駆動手段とによって前記接合物に加わる力が予め定める力となるように前記変位駆動手段を制御することを特徴とする請求項7〜9のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項11】
接合物を把持する把持手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を回転駆動する回転駆動手段と、
前記接合物を把持した状態で、前記把持手段を変位駆動して前記接合物を被接合物に押圧する変位駆動手段と、
前記回転駆動手段および前記変位駆動手段の駆動を制御する制御手段と、
前記回転駆動手段が前記把持手段を回転駆動するときに前記回転駆動手段の回転軸に加えられる負荷を検出する負荷検出手段と、を備え、
前記制御手段は、前記負荷検出手段の検出結果に基づいて前記回転駆動手段による前記接合物の回転を停止するように構成されている、ことを特徴とする接合装置。
【請求項12】
前記回転駆動手段とは別に前記接合物の回転を停止する回転停止手段を更に備えることを特徴とする請求項11記載の接合装置。
【請求項13】
前記被接合物と前記接合装置とを相対的に固定する固定手段を更に備えることを特徴とする請求項11又は12に記載に接合装置。
【請求項14】
前記接合物と前記被接合物との間に融点低下物質を供給する供給手段をさらに含むことを特徴とする請求項11〜13のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項15】
前記回転停止手段が、前記回転駆動手段と前記把持手段とを切り離すためのクラッチ及び前記把持手段を制動するブレーキの少なくともいずれか一方を備えていることを特徴とする請求項12記載の接合装置。
【請求項16】
前記固定手段が、前記被接合物の形状に沿った形状を備えており、及び/又は、前記被接合物と接触する部分が弾性材料により形成されている、ことを特徴とする請求項13記載の接合装置。
【請求項17】
前記固定手段が、高真空吸着パッド又は磁石を含むことを特徴とする請求項13記載の接合装置。
【請求項18】
前記供給手段が、前記接合物及び前記被接合物のうちの少なくともいずれか一方の接合面に対して、前記融点低下物質を霧状に噴射する噴霧器を含むことを特徴とする請求項14記載の接合装置。
【請求項19】
前記供給手段が、薄板状の前記融点低下物質を前記接合物と前記被接合物との間に固定する固定具を含むことを特徴とする請求項14記載の接合装置。
【請求項20】
前記回転駆動手段が、電動機を含むことを特徴とする請求項11乃至19のいずれか一項に記載の接合装置。
【請求項21】
前記変位駆動手段が、空気シリンダを含むことを特徴とする請求項11乃至20のいずれか一項に記載の接合装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図5A】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図11A】
【図11B】
【図11C】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−101283(P2012−101283A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−7066(P2012−7066)
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【分割の表示】特願2009−507397(P2009−507397)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願日】平成24年1月17日(2012.1.17)
【分割の表示】特願2009−507397(P2009−507397)の分割
【原出願日】平成19年12月28日(2007.12.28)
【出願人】(000000974)川崎重工業株式会社 (1,710)
【Fターム(参考)】
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