説明

接地線保護具

【課題】すでに接地線を保護する合成樹脂管が取り付けられた種々の電柱に、後から、簡単に取り付けをすることができ、かつ、電柱の根元付近の接地線を野焼きや草刈りの刃から十分に保護することができる接地線保護具を提供すること。
【解決手段】接地線保護具10は、接地線保護部12と蓋部14とを備える。接地線保護部12と蓋部14とは、いずれも、ゴム製の防護管と同じような衝撃吸収材料で形成されている。接地線保護部12と蓋部14とは、取り外し可能に組み付けられており、接地線保護部12と蓋部14とが組み付けられた接地線保護具10は、上下方向F(接地線Eの伸びる方向と同一)に延びる、横断面がU字のほぼ同一の形状を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電柱に設置された変圧器等の機器を接地するための接地線を保護する接地線保護具に関する。
【背景技術】
【0002】
電柱に変圧器や避雷器等の電気機器を設置する場合には、その電気機器が設置される箇所に応じて、電気機器と地中に埋設された接地極との間を電気的に接続する接地工事を行うことが義務付けられている。この接地工事は電気設備技術基準及び内線規定に従って行われる。
【0003】
接地工事とは、地中に埋設した接地極と電柱に設置されている変圧器等の電気機器、避雷器、その他接地を必要とする電気機器との間を接地線によって接続する工事である。接地線が電柱の外側にある場合には、接地線を電柱に密着させて帯状の固定部材を接地線とともに電柱に巻いて、締め付けることによって、接地線を電柱に固定させる工事が行われる。
【0004】
従来、この種の技術としては特許文献1に記載されている技術がある。この特許文献1には、コンクリート電柱の接地極及び接地方法の記載がある。特許文献1は、電柱に架線されたグランド線と地中の接地極とを接地線によって接続した点、及び接地線を電柱に敷設した点を開示している。
【0005】
ところで、地上から2.0mより低い範囲にある接地線は、自動車又は自転車等の通行車両及び通行人に接触することにより、接地線が破損されてしまうことがある。そのため、地上から少なくとも2.0mのまでの範囲の接地線を、保護部材によって覆い、保護することが規定されている。
【0006】
この保護部材は、我が国の法律等により、所定の絶縁性を有する材料を用いなければならないとされているので、所定の絶縁性を有するとともに加工が容易なものとして合成樹脂で形成された合成樹脂管が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−18259号公報
【特許文献2】実開平6−41332号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、合成樹脂管は合成樹脂で形成されているので、合成樹脂管の強度は、金属で形成した管の強度と同じ強度を得ることができない。このため、強い外力が合成樹脂管に加わると、合成樹脂管がその外力によって、破壊され、ひいては、合成樹脂管の内部に設けられている接地線が断線してしまうことがある。
【0009】
例えば、草を刈る作業者が、回転刃が回転するタイプの草刈機を用いて、電柱の根本の周囲に生えている草を刈ると、草刈機の回転刃が合成樹脂管に接触して、これが破壊されてしまう場合や、接地線が回転刃によって切断されてしまう場合がある。
【0010】
そこで、特許文献2に記載された合成樹脂製設置保護用モールの技術を適用することも考えられる。しかし、特許文献2に記載の技術では、接地線を保護する合成樹脂管と、その合成樹脂管を保護する合成樹脂製設置保護用モールとを同時に電柱に取り付けなければならないので、すでに、電柱に接地線を保護する合成樹脂管のみが取り付けられている場合には、用いることができない。
【0011】
本発明は、このような問題点を解決するためになされるものであり、すでに接地線を保護する合成樹脂管が取り付けられた種々の電柱に、後から、簡単に取り付けをすることができ、かつ、電柱の根元付近の接地線を野焼きや草刈りの刃から十分に保護することができる接地線保護具を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明に係る接地線保護具は、電柱の上部に設置された電気機器と地中に埋設された接地極との間を電気的に接続しかつ前記電柱の表面に前記電柱の軸方向に沿って固定された合成樹脂管の内部に配置された接地線において前記電柱の反対側に配置される接地線保護具である。接地線保護具は、接地線保護部と蓋部とを備える。接地線保護部は、地中に埋設される埋設部と前記埋設部に隣接し地上に露出される露出部とを有する。接地線保護部は、前記埋設部と前記露出部とにわたり前記接地線の伸びる方向に前記接地線保護部の両端部まで形成され、前記合成樹脂管の外径より大きい幅の溝部と、前記露出部の前記溝部うち前記埋設部と反対側の端部から所定の範囲の端部側溝部と前記溝部と反対側の側面とを通じるように形成されたスリットと、を有する。蓋部は、前記スリットに取り外し可能に組み付けられている。
【0013】
前記接地線保護部及び前記蓋部は、いずれも、衝撃吸収体で形成されていてもよい。
【0014】
前記蓋部は、前記合成樹脂管の外径よりも厚いことが好ましい。
【0015】
前記接地線保護部及び前記蓋部の表面は、いずれも、前記電柱とは異なる色で形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、接地線保護部には、埋設部と露出部とにわたり接地線の伸びる方向に接地線保護部の両端部まで形成されたスリットを有する。さらに、そのスリットは、既設の合成樹脂管の外径より大きい幅の溝部が形成されているので、接地線保護具は、合成樹脂管を包み込むようにして電柱に設置することができる。
【0017】
さらに、接地線保護具は、取り外し可能な蓋部を有するので、接地線の点検をするときは、その蓋部のみを取り外すだけでよい。
【0018】
また、接地線保護部及び蓋部は、いずれも、衝撃吸収体で形成されているので、草刈機の回転刃の回転時の接触の時に生じる衝撃を吸収し、回転刃が合成樹脂管に到達するのを防ぐ。特に、蓋部は、接地線の外径よりも厚いと、より堅固に回転刃が合成樹脂管に到達するのを防ぐ。
【0019】
また、接地線保護部及び蓋部の表面は、いずれも、電柱とは異なる色で形成されているので、草を刈る作業者は、接地線保護具の存在を十分に認識するので、芝刈機の回転刃を接地線保護具に接触させないように、芝刈り作業を行う。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る第1の実施形態の接地線保護具を示す一部を省略した斜視図である。
【図2】図1に示した接地線保護具を電柱に取り付ける各種部材の位置関係を示す説明図である。
【図3】図2に示した接地線保護具の部分断面拡大図である。
【図4】図1に示した接地線保護具の設置を行う作業状態を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しながら説明する。
【0022】
<接地線保護具>
図1から図3を参照するに、接地線保護具10は、接地線保護部12と蓋部14とを備える。接地線保護部12と蓋部14とは、いずれも、ゴム製の防護管と同じような衝撃吸収材料で形成されている。したがって、接地線保護部12及び蓋部14は、いずれも、衝撃吸収体を構成する。
【0023】
接地線保護部12と蓋部14とは、後述するように、取り外し可能に組み付けられており、接地線保護部12と蓋部14とが組み付けられた接地線保護具10は、図1において、上下方向F(接地線Eの伸びる方向と同一)に延びる、横断面がU字のほぼ同一の形状を有する。
【0024】
接地線保護部12は、地中Gに埋設される埋設部16と埋設部16に隣接し地上に露出される露出部18とを有する。
【0025】
接地線保護部12は、溝部20とスリット22とを有する。溝部20は、埋設部16と露出部18と上下方向Fにわたりに接地線保護部12の両端部24、26まで形成されている。溝部20の幅Wは、合成樹脂管28の外径より大きくなるように構成されている。
【0026】
スリット22は、露出部18の溝部20うち埋設部16と反対側の端部26から所定の範囲の端部側溝部30と溝部20の反対側の側面31とを通じるように形成されている。
【0027】
スリット22の両側面には、それぞれ、上下方向Fに延び、その内側に向けた凸条部32及び32が形成されている。
【0028】
蓋部14は、横断面が扇形の形状を有する。蓋部14の両側面には、上下方向Fに延び、その内側に向けた凹条部34が形成されている。凸条部32と凹条部34とは互いに習動可能に噛み合う。したがって、接地線保護部12に噛み合った蓋部14は、上下方向Fに摺動可能であるが、上下方向Fに直角の方向には、ほとんど動かない構造を有する。
【0029】
接地線保護部12及び蓋部14の表面は、いずれも、電柱36の表面Sとは異なる色(例えば、一般に注意を喚起する黄色)で形成されている。
【0030】
接地線保護部12の両側面には、後述するステンレスバンド38を通す為の複数の止め穴40が形成されている。
【0031】
<電柱>
図2に示すように、電柱36は、電柱36の伸びる方向が地面Gに対して略直角になるように、電柱36の一端部が埋設されている。電柱36の他端部すなわち電柱36の上部には、トランスのような電気機器42が取り付けられている。
【0032】
電柱36の表面Sには、接地線Eがこれの伸びる方向と電柱36の伸びる方向とが平行になるように、配置されている。接地線Eは合成樹脂管28の内部に通されており、合成樹脂管28の外部と接地線Eとの間の電気的な接続を防止している。したがって、接地線Eの一端と他端との間は、電気的に絶縁状態で電柱36の表面Sに取り付けられている。
【0033】
地面Gから電気機器42に向かって(上方に向かって)2.0mの位置より高い範囲における接地線Eは、電柱36の表面Sに、帯状の複数のステンレスバンド38によって合成樹脂管28を介して固定されている。
【0034】
地面Gから地上2.0mの位置と地面Gから地下0.75mの位置との間の範囲Lにおける接地線Eは、合成樹脂管28の内部に配置されている。なお、我が国は、範囲L内にある接地線Eを合成樹脂管28によって保護することが規定されている。合成樹脂管28はステンレスバンド38によって電柱36の表面Sに固定されている。
【0035】
接地線Eの一端は電気機器42の金属ケース、避雷器、その他接地を必要とする部材に電気的に接続されている。接地線Eの他端は地中に埋設された接地極46に電気的に接続されている。接地線Eにおける一端と合成樹脂管28の上端との間における所定の位置に柱体外接地測定端子48が設置されている。
【0036】
<接地線保護具の取り付け状態>
図3及び図4に示すように、接地線保護具10は、埋設部16が地面Gに埋設され、かつ、露出部18が地面Gから露出された状態になるように、電柱36の表面Sに配置されている。埋設部16の長さ寸法は、例えば、20cm程度に設定される。
【0037】
さらに、接地線保護具10は、接地線Eを接地線保護具10と電柱36との間に配置した状態で、ステンレスバンド38によって電柱36に取り付けられている。ステンレスバンド38は、例えば、地面Gから10cmの位置に取り付けられる。これにより、図2及び図3に示すように、接地線保護具10は、電柱36の表面Sに電柱36の軸方向に沿って固定された接地線Eにおいて電柱36の反対側に配置される。これにより、接地線保護具10の背面50が電柱36の表面Sに当接させるとともに、溝部20と電柱36の表面Sとにより形成される空間に合成樹脂管28ひいては接地線Eが配置されている。
【0038】
<接地線保護具の取り付け方>
図3及び図4に示すように、以下の手順で、接地線保護具10を電柱36に取り付ける。
【0039】
まず、作業者Xは、電柱36の根元における合成樹脂管28付近の土を掘り、埋設されていた合成樹脂管28を露出させ、合成樹脂管28及び接地線Eに破損や傷がないこと及び合成樹脂管28を電柱36に固定しているステンレスバンド38の取り付け位置を目視により確認する。
【0040】
次に、作業者Xは、接地線保護具10の背面50を電柱36の表面Sに当接させた状態を維持しながら、かつ、溝部20に合成樹脂管28を配置させた状態を維持する。そのような状態を維持しながら、作業者Xは、接地線保護具10の埋設部16の先端を地中に差し込んで仮固定をする。
【0041】
次に、図3に示すように、作業者Xは、露出部18に帯状の複数のステンレスバンド38を電柱36に巻き付けて、さらに、ステンレスバンド38を止め穴40に通して、接地線保護具10を電柱36に固定する。そして、作業者Xは、掘り出された土で埋設部16を埋める。
【0042】
このように、接地線保護具10を電柱36に取り付けることにより、電柱36の根元付近の合成樹脂管28が保護され、例えば、接地線保護具10に草刈機の回転刃が接触したとしても、合成樹脂管28ひいては接地線Eに損傷を与えることを防止することができる。
【0043】
<接地線の点検の仕方>
接地線保護具10の蓋部14は、ステンレスバンド38によっては、固定されていないので、作業者Xは、蓋部14を上方向にスライドさせるだけで、接地線保護具10に覆われていた合成樹脂管28や柱体外接地測定端子48が露出する。
【0044】
そして、作業者Xは、柱体外接地測定端子48で所定の点検を行い、点検終了後、再び、蓋部14で蓋をする。
【0045】
このように、接地線保護具10は、合成樹脂管28を包み込むようにして電柱36に設置することができ、かつ、蓋部14をスライドさせるだけで、簡単に、点検に必要な柱体外接地測定端子48を露出させることができる。
【符号の説明】
【0046】
E 接地線
F 上下方向
G 地面
S 電柱の表面
10 接地線保護具
12 接地線保護部
14 蓋部
16 埋設部
18 露出部
20 溝部
22 スリット
24 端部
26 端部
28 合成樹脂管
30 端部側溝部
31 側面
32 凸条部
34 凹条部
36 電柱
38 ステンレスバンド
40 止め穴
42 電気機器
46 接地極
48 柱体外接地測定端子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電柱の上部に設置された電気機器と地中に埋設された接地極との間を電気的に接続しかつ前記電柱の表面に前記電柱の軸方向に沿って固定された合成樹脂管の内部に配置された接地線において前記電柱の反対側に配置される接地線保護具において、
地中に埋設される埋設部と前記埋設部に隣接し地上に露出される露出部とを有する接地線保護部であって、前記埋設部と前記露出部とにわたり前記接地線の伸びる方向に前記接地線保護部の両端部まで形成され、前記合成樹脂管の外径より大きい幅の溝部と、前記露出部の前記溝部うち前記埋設部と反対側の端部から所定の範囲の端部側溝部と前記溝部の反対側の側面とを通じるように形成されたスリットと、を有する接地線保護部と、
前記スリットに取り外し可能に組み付けられた蓋部と、を備える、接地線保護具。
【請求項2】
前記接地線保護部及び前記蓋部は、いずれも、衝撃吸収体で形成されている請求項1に記載の接地線保護具。
【請求項3】
前記蓋部は、前記合成樹脂管の外径よりも厚い、請求項1又は2に記載の接地線保護具。
【請求項4】
前記接地線保護部及び前記蓋部の表面は、いずれも、前記電柱とは異なる色で形成されている、請求項1から3のいずれかに記載の接地線保護具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−254635(P2011−254635A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−127085(P2010−127085)
【出願日】平成22年6月2日(2010.6.2)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】