説明

接木用接合具

【課題】台木と穂木の茎径差が大きい場合においても高い活着率を得ることが可能であり、加えて平接ぎでも斜め接ぎと同等の活着率を得ることができる接木用接合具を提供すること。
【解決手段】台木の切断面と穂木の切断面とを互いに当接させた状態で保持することにより、台木と穂木とを接合する接木用接合具であって、台木と穂木の接合部を含む長さ方向の所定範囲において台木及び穂木の周囲を保持する第1筒状部と、前記接合部より上方において穂木のみの周囲を保持する第2筒状部を備えており、前記第2筒状部の内径は、前記第1筒状部の内径よりも小さいことを特徴とする接木用接合具である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、果菜類等において台木に穂木を接合する接木作業の際に使用される接木用接合具に関する。
【背景技術】
【0002】
接木は、一の植物体と他の植物体を人為的に作成した切断面で接合して1つの植物体とする技術であり、安定した増殖、収穫までの期間の短縮、病害虫被害の回避、品質や収穫数の向上等を目的として行われている。
【0003】
接木作業において台木と穂木との接合部分を保持するために用いられる接木用接合具としては、既に種々の構造のものが提案されており、本願発明者らが提案している下記特許文献1,2に開示された接木用接合具はその一例である。
【0004】
ところで、接木に際しては台木と穂木を互いの切断面を合わせて接合するのであるが、このとき台木はできるだけ茎の下方で切断したもの、穂木はできるだけ茎の上方で切断したものを用いることが好ましい。
このようにすることで、接木により得られる植物体の高さを低くすることができ、当該植物体を収容するためのスペースを小さくすることが可能となるためである。
【0005】
しかし、台木を茎の下方で切断し、穂木を茎の上方で切断した場合、台木と穂木の茎径が大きく異なることとなる。
このような場合、従来の接木用接合具では、台木と穂木とを互いの切断面でしっかりと密接させることができないという問題が生じる。
すなわち、図8に示すように、従来の接木用接合具(A)は、穂木を保持する上方部分と台木を保持する下方部分の内径が同一であるため、台木(B)と穂木(C)の茎径が大きく異なる場合、台木(B)は接合具(A)により周囲からしっかりと保持されるが穂木(C)は殆ど保持されないこととなる。
そのため、穂木が台木の上に載っているだけの切断面同士が密接していない状態となり、活着率が大きく低下してしまう。
【0006】
このような不都合は、接木の方法として、切断面が茎の長さ方向に対して直角である平接ぎ(図8(b)参照)ではなく、切断面が斜めである斜め接ぎ(図8(a)参照)を採用することにより、若干軽減することができる。これは、平接ぎに比べて斜め接ぎの方が接合部の面積が大きくて活着し易いためである。
しかしながら、通常、接木に用いる植物体の切断作業は人が剃刀を使用して行っており、斜めに切断する作業は直角に切断する作業に比べて難しく熟練を要する。そのため、斜め接ぎは平接ぎに比べて作業効率がかなり低くなる。
従って、作業効率の観点からは斜め接ぎよりも平接ぎの方が好ましいが、従来の接合具では台木と穂木の茎径差が大きい場合には平接ぎにすると活着率が大きく低下してしまうという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−252267号公報
【特許文献2】特開2008−154484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記した従来技術の問題点を解決すべくなされたものであって、台木と穂木の茎径差が大きい場合においても高い活着率を得ることが可能であり、加えて平接ぎでも斜め接ぎと同等の活着率を得ることができる接木用接合具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、台木の切断面と穂木の切断面とを互いに当接させた状態で保持することにより、台木と穂木とを接合する接木用接合具であって、台木と穂木の接合部を含む長さ方向の所定範囲において台木及び穂木の周囲を保持する第1筒状部と、前記接合部より上方において穂木のみの周囲を保持する第2筒状部を備えており、前記第2筒状部の内径は、前記第1筒状部の内径よりも小さいことを特徴とする接木用接合具に関する。
【0010】
請求項2に係る発明は、前記第1筒状部と前記第2筒状部は、長手方向の全長に亘るスリットを有する弾性素材から形成されてなるとともに、周方向の一部分においてのみ長手方向に繋がっていることを特徴とする請求項1記載の接木用接合具に関する。
【0011】
請求項3に係る発明は、前記第1筒状部と前記第2筒状部は、長手方向の軸心がずれていることを特徴とする請求項1又は2記載の接木用接合具に関する。
【0012】
請求項4に係る発明は、前記第1筒状部と前記第2筒状部は、内周面の一部が長手方向において直線状に連続していることを特徴とする請求項3記載の接木用接合具に関する。
【0013】
請求項5に係る発明は、前記第2筒状部は、前記第1筒状部に比べて肉厚の薄い薄肉部を有していることを特徴とする請求項2乃至4いずれかに記載の接木用接合具に関する。
【0014】
請求項6に係る発明は、前記第1筒状部の長手方向の長さは、前記第2筒状部の長手方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の接木用接合具に関する。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に係る発明によれば、台木と穂木の接合部を含む長さ方向の所定範囲において台木及び穂木の周囲を保持する第1筒状部と、前記接合部より上方において穂木のみの周囲を保持する第2筒状部を備えており、前記第2筒状部の内径は、前記第1筒状部の内径よりも小さいことにより、台木と穂木の茎径が大きく異なる場合であっても高い活着率を得ることができる。
すなわち、第1筒状部により茎径が大きい台木を確実に保持し、第2筒状部により茎径が小さい穂木を確実に保持することができるため、台木と穂木の切断面同士をしっかりと密接させることが可能となり、台木と穂木の茎径差が大きい場合でも高い活着率を得ることができる。
また、台木と穂木の切断面同士をしっかりと密接させることが可能となるため、台木と穂木の茎径差が大きい場合においても、平接ぎでも斜め接ぎと同等の高い活着率を得ることができる。
【0016】
請求項2に係る発明によれば、前記第1筒状部と前記第2筒状部は、長手方向の全長に亘るスリットを有する弾性素材から形成されてなるとともに、周方向の一部分においてのみ長手方向に繋がっていることにより、第1筒状部と第2筒状部が独立して弾性変形できるようになり、様々な茎径差の台木と穂木に対して幅広く対応することが可能となる。
【0017】
請求項3に係る発明によれば、前記第1筒状部と前記第2筒状部は長手方向の軸心がずれていることにより、茎径差がある台木と穂木を接合する場合において、台木と穂木の軸心をずらして接合することが可能となり、接合部分の見栄えを良好なものとすることができる。
【0018】
請求項4に係る発明によれば、前記第1筒状部と前記第2筒状部は、長手方向において互いの内周面の一部が直線状に連続していることにより、茎径差がある台木と穂木を接合する場合において、台木と穂木を互いの外周面の一部を一致させて直線状に接合することが可能となり、接合部分の見栄えを非常に良好なものとすることができる。
【0019】
請求項5に係る発明によれば、前記第2筒状部は、前記第1筒状部に比べて肉厚の薄い薄肉部を有していることにより、第2筒状部は第1筒状部に比べて容易に弾性変形するようになる。そのため、茎径の小さい穂木を茎径の大きい台木に比べて弱い力で保持することが可能となり、台木と穂木の茎径差に応じた2段階の適当な保持力を有する接木用接合具となる。
【0020】
請求項6に係る発明によれば、前記第1筒状部の長手方向の長さは、前記第2筒状部の長手方向の長さよりも長いことにより、第1筒状部においては台木と穂木の接合部が長い範囲で保持され、第2筒状部においては穂木が短い範囲で保持されることとなり、確実な接合を得ることができるとともに、接合具をコンパクトに構成することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る接木用接合具の斜視図である。
【図2】本発明に係る接木用接合具を示す図であって、(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)は背面図、(d)は平面図である。
【図3】本発明に係る接木用接合具を作業者が指で把持している状態を示す図である。
【図4】本発明に係る接木用接合具を使用して台木と穂木を接合した状態を示す図であって、(a)は全体図、(b)は要部拡大図である。
【図5】本発明に係る接木用接合具を使用して台木と穂木を接合した状態を示す断面図であって、(a)は斜め接ぎの場合、(b)は平接ぎの場合を示している。
【図6】本発明に係る接木用接合具を使用して接木された植物体の接合部分付近を示す外観図である。
【図7】本発明に係る接木用接合具の変更例を示す断面図であって、(a)は第1筒状部と第2筒状部の長手方向の軸心がずれておらず同一直線上にあるもの、(b)は第1筒状部と第2筒状部の長手方向の軸心がずれているが内周面の一部が長手方向において直線状に連続していないものを示している。
【図8】従来の接木用接合具を使用して台木と穂木を接合した状態を示す断面図であって、(a)は斜め接ぎの場合、(b)は平接ぎの場合を示している。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明に係る接木用接合具の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
図1及び図2は本発明に係る接木用接合具を示す図であって、図1は斜視図、図2の(a)は正面図、(b)はA−A断面図、(c)は背面図、(d)は平面図である。
本発明に係る接木用接合具(1)は、台木の切断面と穂木の切断面とを互いに当接させた状態で保持することにより台木と穂木とを接合する接木用接合具であって、下方に位置する第1筒状部(2)と、上方に位置する第2筒状部(3)とを備えている。
【0023】
第1筒状部(2)は、台木と穂木の接合部を含む長さ方向の所定範囲において台木及び穂木の両方の周囲を保持する部分である。
第2筒状部(3)は、台木と穂木の接合部より上方において穂木のみの周囲を保持する部分である。
これら第1筒状部(2)及び第2筒状部(3)は、ゴムや軟質合成樹脂などの弾性素材(所謂エラストマー)により一体に成型されている。
【0024】
第2筒状部(3)の内径は、第1筒状部(2)の内径よりも小さく形成されている。
これにより、第1筒状部(2)においては茎径が大きい台木を確実に保持し、第2筒状部(3)においては茎径が小さい穂木を確実に保持することができる。
【0025】
第1筒状部(2)と第2筒状部(3)の内径差については、適用される植物体の種類等に応じて適宜設定することができ特に限定されないが、例えば第1筒状部(2)の内径をφ1.7〜2.0mm、第2筒状部(3)の内径をφ1.2〜1.4mmに設定することができる。
【0026】
第1筒状部(2)及び第2筒状部(3)には、長手方向の全長に亘ってスリットが形成されている。以下、第1筒状部(2)に形成されたスリットをスリット(4)、第2筒状部(3)に形成されたスリットをスリット(5)と称する。
スリット(4)(5)が設けられていることにより、接木後の植物体が成長して茎径が太くなると、第1筒状部(2)及び第2筒状部(3)が弾性変形してスリット(4)(5)が開き、接木用接合具(1)が自然に茎から外れて落下する。
スリット(4)(5)は、図1及び図2(a)に示すように、上下方向に同一直線上に形成されている。これにより、第1筒状部(2)及び第2筒状部(3)のスリットが同方向から開くようになるため、接木用接合具(1)が茎から自然に外れ易くなる。
【0027】
スリット(4)の幅とスリット(5)の幅は同じであってもよいし異なっていてもよいが、図示例ではスリット(5)の幅がスリット(4)の幅よりも小さく形成されている。このようにすると、台木と穂木の茎径差が大きい場合(穂木の茎径が小さい場合)においても、穂木がスリット(5)から抜け出ることが防がれる。
【0028】
第1筒状部(2)と第2筒状部(3)は、スリット(4)(5)部分以外の周方向の一部分においてのみ長手方向に繋がっている。より具体的には、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)は、スリット(4)(5)の反対側において周方向の約半分の領域(半円弧状の領域)で繋がっている。以下、繋がっている部分を連結部(6)と称す。
このように、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)とが周方向の一部分においてのみ長手方向に繋がっていることにより、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)が夫々独立して弾性変形することができるようになる。これにより、様々な茎径差の台木と穂木に対して幅広く対応することが可能となる。
【0029】
第2筒状部(3)の外周面には、半径方向外側に向かって突出する突出部(7)が設けられている。この突出部(7)の突出方向は、スリット(5)が設けられた位置に対して略直角方向となっている。
突出部(7)の形状は特に限定されないが、図示例のものは正面視長方形の板状であり、長方形の短辺が上下方向に指向し、長辺が半径方向に指向している。
このような突出部(7)が設けられていることにより、作業者は突出部(7)を摘んで接木用接合具(1)を容易に把持することができる(図3参照)。また、突出部(7)の存在により、接木用接合具(1)が転がることが防止できる。更に、突出部(7)を目印としてスリット(5)(6)の位置を容易に把握することができる。これらの作用により、接木の作業効率を大きく向上させることが可能となる。
【0030】
また、図示していないが、突出部(7)の先端に第2筒状部(3)と平行に延びる筒状部を設けて、この筒状部に接木された植物体を支えるための支柱を挿通できるように構成することも可能である。
【0031】
第2筒状部(3)の内周面の上端部には、上向きに拡がるテーパ面(8)が形成されている。このテーパ面(8)は、穂木を第2筒状部(3)の上方から内部に挿通する際のガイドの役割を果たす。
【0032】
第2筒状部(3)は、第1筒状部(2)に比べて肉厚の薄い薄肉部(9)を有している。
薄肉部(9)は、第2筒状部(3)の外周面のスリット(5)と反対側を部分的に切り欠くことにより形成されている。
第2筒状部(3)は、このような薄肉部(9)を有することにより、第1筒状部(2)に比べて弱い力で弾性変形することが可能となる。そのため、茎径の小さい穂木を第2筒状部(3)で弱い力で保持し、茎径の大きい台木を第1筒状部(2)で強い力で保持することが可能となり、台木と穂木の茎径差に応じた2段階の適当な保持力を有する接木用接合具(1)となる。
尚、薄肉部(9)は、図示例のように第2筒状部(3)の外周面を部分的に切り欠いて設ける代わりに、外周面全体に設けてもよい。即ち、第2筒状部(3)の全体を第1筒状部(2)に比べて薄肉に形成してもよい。
【0033】
第1筒状部(2)の内周面の下端部には、下向きに拡がるテーパ面(10)が形成されている。このテーパ面(10)は、台木を第1筒状部(2)の下方から内部に挿通する際のガイドの役割を果たす。
また、第1筒状部(2)のスリット(4)の上端部には、上向きに拡がる正面視台形状の切り込み(11)が正面から奥方向に向けて形成されている。この切り込み(11)は、穂木を第2筒状部(3)から第1筒状部(2)の内部に向けて挿通する際にガイドの役割を果たす。
【0034】
第1筒状部(2)の長手方向の長さは、第2筒状部(3)の長手方向の長さよりも長く、具体的には約2〜3倍の長さに形成されている。
これにより、第1筒状部(2)においては台木と穂木の接合部が長い範囲で保持され、第2筒状部(3)においては穂木が短い範囲で保持されることとなり、確実な接合を得ることができるとともに、接合具をコンパクトに構成することが可能となる。
【0035】
第1筒状部(2)と第2筒状部(3)は、長手方向の軸心が同一直線上になく、ずれている。
第1筒状部(2)と第2筒状部(3)の長手方向の軸心がずれていることにより、茎径差がある台木と穂木を接合する場合において、台木と穂木の軸心をずらして接合することが可能となり、接合部分の見栄えを良好なものとすることができる。
【0036】
より具体的には、図2(b)に示すように、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)は、内周面の一部が長手方向において連結部(6)の内周面を介して直線状に連続する(段差無く連続する)ようにずれている。
このように、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)が、長手方向において互いの内周面の一部が直線状に連続していることにより、茎径差がある台木と穂木を接合する場合において、台木(B)と穂木(C)を互いの外周面の一部を一致させて直線状に接合することが可能となり(図6参照)、接合部分の見栄えを非常に良好なものとすることができる。
【0037】
但し、第2筒状部(3)の内径が第1筒状部(2)の内径よりも小さいものであれば、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)の長手方向の軸心がずれておらず同一直線上にあるもの(図7(a)参照)や、第1筒状部(2)と第2筒状部(3)の長手方向の軸心がずれているが内周面の一部が長手方向において直線状に連続していないもの(図7(b)参照)も本発明の技術的範囲に含まれる。
【0038】
図4は、本発明に係る接木用接合具(1)を使用して台木(B)と穂木(C)を接合した状態を示す図であって、(a)は全体図、(b)は要部拡大図である。
本発明に係る接木用接合具(1)は、第1筒状部(2)により台木(B)と穂木(C)の接合部を保持し、第2筒状部(3)により穂木(C)のみを保持するように取り付けて使用される。
【0039】
図5は、図4(b)の断面図であって、(a)は斜め接ぎの場合、(b)は平接ぎの場合を示している。
図示の如く、本発明に係る接木用接合具(1)によれば、台木(B)と穂木(C)の茎径差が大きい場合においても、第1筒状部(2)により茎径が大きい台木(B)を確実に保持し、第2筒状部(3)により茎径が小さい穂木(C)を確実に保持することができる。その結果、斜め接ぎの場合でも平接ぎの場合でも、台木(B)と穂木(C)の切断面同士をしっかりと密接させることができ、台木(B)と穂木(C)の茎径差が大きい場合でも高い活着率を得ることが可能となる。
【実施例】
【0040】
以下、本発明に係る接木用接合具の実施例及び比較例を示すことにより、本発明の効果をより明確なものとする。但し、本発明は以下の実施例に何ら限定されるものではない。
(実施例1)
実施例として本発明に係る接木用接合具(図2参照、第1筒状部の内径:φ1.5mm、第2筒状部の内径:φ1.2mm)を使用してナスの苗木の接木を行った。比較例として筒状部の内径がストレート(同一径)に形成された市販の接木用接合具(商品名:ウィズ17、内径φ1.7mm)を使用して同種のナスの接木を行った。穂木は播種後10日目のもの、台木は播種後14日目のものを用いた
実施例及び比較例について、接木日の10日後に台木と穂木の当接部が活着しているかどうかを調べた。接木の方法は、夫々斜め接ぎと平接ぎの2種類で行った。
実施例の結果を表1に示し、比較例の結果を表2に示す。表中の数値は茎径(mm)、○は活着したもの、×は活着しなかったものを示している。
【0041】
【表1】

【0042】
【表2】

【0043】
(実施例2)
実施例として本発明に係る接木用接合具(図2参照、第1筒状部の内径:φ1.7mm、第2筒状部の内径:φ1.2mm)を使用してナスの苗木の接木を行った。比較例として筒状部の内径がストレート(同一径)に形成された市販の接木用接合具(商品名:ウィズ17、内径φ1.7mm)を使用して同種のナスの接木を行った。穂木は播種後11日目のもの、台木は播種後15日目のものを用いた
実施例及び比較例について、接木日の6日後に台木と穂木の当接部が活着しているかどうかを調べた。接木の方法は平接ぎとした。
実施例及び比較例の結果を表3に示す。表中の数値及び記号の意味は表1,2と同じである。
【0044】
【表3】

【0045】
表1〜3に示されるように、台木と穂木の茎径差が大きい条件において、斜め接ぎの場合には実施例と比較例の接木用接合具は共に高い活着率(100%)を示したが、平接ぎの場合には比較例の接合具の活着率が60〜70%と低かったのに対して実施例の接合具の活着率は90%以上と高い値を示した。
これらの結果から、本発明に係る接木用接合具によれば、台木と穂木の茎径差が大きい場合において、斜め接ぎだけでなく平接ぎでも高い活着率を得ることができることが確認された。
【0046】
(実施例3)
実施例2と同じ本発明に係る接木用接合具を使用してナスの苗木の接木を行った。穂木及び台木は播種後15日目のものを用いた。
接木日の6日後に台木と穂木の当接部が活着しているかどうかを調べた。接木の方法は平接ぎとした。
結果を表4に示す。表中の数値及び記号の意味は表1,2と同じである。
【0047】
【表4】

【0048】
表4に示されるように、台木と穂木の茎径が略同じである条件において、平接ぎの場合の実施例の接合具の活着率は100%であった。
この結果から、本発明に係る接木用接合具によれば、台木と穂木の茎径が略同じ場合でも高い活着率を得ることが可能であることが確認された。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係る接木用接合具は、例えば、ナス、トマト、スイカ、きゅうり、りんご、ぶどう等の果菜類を接木する際に利用されるものであり、特に台木と穂木の茎径差が大きい場合に好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
1 接木用接合具
2 第1筒状部
3 第2筒状部
4 第1筒状部に形成されたスリット
5 第2筒状部に形成されたスリット
6 第1筒状部と第2筒状部の連結部
7 突出部
8 テーパ面
9 薄肉部
10 テーパ面
11 切り込み
B 台木
C 穂木

【特許請求の範囲】
【請求項1】
台木の切断面と穂木の切断面とを互いに当接させた状態で保持することにより、台木と穂木とを接合する接木用接合具であって、
台木と穂木の接合部を含む長さ方向の所定範囲において台木及び穂木の周囲を保持する第1筒状部と、
前記接合部より上方において穂木のみの周囲を保持する第2筒状部を備えており、
前記第2筒状部の内径は、前記第1筒状部の内径よりも小さいことを特徴とする接木用接合具。
【請求項2】
前記第1筒状部と前記第2筒状部は、長手方向の全長に亘るスリットを有する弾性素材から形成されてなるとともに、周方向の一部分においてのみ長手方向に繋がっていることを特徴とする請求項1記載の接木用接合具。
【請求項3】
前記第1筒状部と前記第2筒状部は、長手方向の軸心がずれていることを特徴とする請求項1又は2記載の接木用接合具。
【請求項4】
前記第1筒状部と前記第2筒状部は、内周面の一部が長手方向において直線状に連続していることを特徴とする請求項3記載の接木用接合具。
【請求項5】
前記第2筒状部は、前記第1筒状部に比べて肉厚の薄い薄肉部を有していることを特徴とする請求項2乃至4いずれかに記載の接木用接合具。
【請求項6】
前記第1筒状部の長手方向の長さは、前記第2筒状部の長手方向の長さよりも長いことを特徴とする請求項1乃至5いずれかに記載の接木用接合具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2010−259380(P2010−259380A)
【公開日】平成22年11月18日(2010.11.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−113274(P2009−113274)
【出願日】平成21年5月8日(2009.5.8)
【出願人】(000205627)大阪府 (238)
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【出願人】(503198415)株式会社ツルミプラ (4)