説明

接点出力のシリアル伝送システム及び方法

【課題】 プログラマブルコントローラ(PLC)を用い、多数の接点出力からの、オン/オフ状態を、1対の電線で伝送するシステム及び方法を提供する
【解決手段】 送信開始を通知するため、予め決められた第1のパターンに従い、1対の電線間の電圧のオン/オフ状態を変化させる第1のステップと、予め決められた入力部順に、入力部の入力電圧がオン状態であれば、前記1対の電線間の電圧をオン状態に、入力部の入力電圧がオフ状態であれば前記1対の電線間の電圧をオフ状態に、予め決められた期間だけ順に出力する第2のステップと、送信終了を通知するため、予め決められた第2のパターンに従い、前記1対の電線間の電圧のオン/オフ状態を変化させる第3のステップとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プログラマブルコントローラ(PLC)を用い、多数の接点の出力状態をシリアル伝送するシステム及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
リレーやオープンコレクタといった機械的又は電子的な接点のオン/オフにより状態変化を伝える接点出力が、監視システムや制御システム等において用いられている。一例として、ドアの開閉や、機器運転状況の監視に接点出力を使用する監視システムの構成例を図4に示す。
【0003】
図4によると、接点1−1〜1−Nの一方の端子は、監視装置4の入力部40−1〜40−Nと電線2−1〜2−Nにより接続されている。更に、接点1−1〜1−Nの他方の端子は、監視装置4の入力共通部40−0と電線3により接続されている。入力共通部40−0は、電線3に直流電圧を印加している。接点がOFFの場合は、接点に対応する入力部には外部から電圧は印加されないが、接点がONとなった場合、対応する入力部には外部から電圧が印加されることとなる。入力部40−1〜40−Nは、電圧の印加による電流を、フォトカプラ等により検出することで接点出力がオンであるか、オフであるかを認識する。ドアの開閉状態といった、監視対象の状態に応じて接点をオン/オフすることで、遠隔より状態監視を行う。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したように接点のオン/オフ状態を、遠隔からの監視等に使用するためには、接点出力数+1の電線が、接点出力を使用する装置と、接点出力間に必要であり、使用する接点出力が増えた場合に、電線の数が足りなければ、新たに配線を行う必要がある。
【0005】
配線数を、増加させることなく、使用できる接点出力数を増加させる省配線システム等が市販されているが、多くの場合は専用のケーブルや特定の仕様のケーブルが必要であり、導入の際には、新たな工事が必要となる場合が多く、コストがかかることとなる。また、伝送距離の制限等により導入ができない場合もある。
【0006】
従って、本発明は、安価なプログラマブルコントローラ(PLC)を用い、多数の接点出力からの、オン/オフ状態を、2本の、即ち1対の電線で伝送するシステム及び方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明におけるシリアル伝送システムによれば、
入力共通部と、前記入力共通部の基準電位に対する入力電圧のオン/オフ状態を検出する複数の入力部と、出力共通部と、前記出力共通部と外部出力との電気的接続のオン/オフを行う出力部とを有する第1のプログラマブルコントローラと、入力共通部と、前記入力共通部の基準電位に対する入力電圧のオン/オフ状態を検出する入力部とを有する第2のプログラマブルコントローラとを含み、第1のプログラマブルコントローラの出力部と、第2のプログラマブルコントローラの入力部は第1の電線により接続され、第1のプログラマブルコントローラの出力共通部と、第2のプログラマブルコントローラの入力共通部は第2の電線により接続され、第2のプログラマブルコントローラの入力共通部は第2の電線に対して、基準電位に対して電圧を印加する通信システムにおいて、第1のプログラマブルコントローラは、予め決められた第1のパターンに従い、出力部の電気的接続のオンオフを行った後、予め決められた入力部順に、入力部の入力電圧がオン状態であれば出力部の電気的接続をオンに、入力部の入力電圧がオフであれば出力部の電気的接続をオフに、予め決められた期間だけ順に設定し、全入力部の状態を出力部に設定した後に、予め決められた第2のパターンに従い出力部の電気的接続のオンオフを行い、第2のプログラマブルコントローラは、前記第1のパターンと前記第2のパターンの間にはさまれた、入力部の入力電圧のオン/オフ状態を、前記予め決められた期間に基づき判定し、第1のプログラマブルコントローラの各入力部の入力電圧状態の情報を得ることを特徴とする。
【0008】
本発明におけるシリアル伝送方法によれば、
第1のプログラマブルコントローラが、前記第1のプログラマブルコントローラの各入力部の入力電圧のオン/オフ状態を、1対の電線により接続された第2のプログラマブルコントローラに送信する方法において、送信開始を通知するため、予め決められた第1のパターンに従い、前記1対の電線間の電圧のオン/オフ状態を変化させる第1のステップと、予め決められた入力部順に、入力部の入力電圧がオン状態であれば、前記1対の電線間の電圧をオン状態に、入力部の入力電圧がオフ状態であれば前記1対の電線間の電圧をオフ状態に、予め決められた期間だけ順に出力する第2のステップと、送信終了を通知するため、予め決められた第2のパターンに従い、前記1対の電線間の電圧のオン/オフ状態を変化させる第3のステップとを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
使用する接点出力が増加しても、2本の電線により接点出力の伝送が可能である。また、直流電圧をオン又はオフとすることで伝送しており、特殊なケーブル等は必要なく安価にシステム構築ができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明を実施するための最良の実施形態について、以下では図面を用いて詳細に説明する。以下の説明において、接点出力状態を監視装置に伝送する例で説明するが、監視装置は例示であり、接点出力を使用する装置に制限はない。
【0011】
図1は、本発明によるシリアル伝送システムの構成図である。図1によると、本発明によるシリアル伝送システムは、PLC5と、PLC6とを有する。
【0012】
PLC5は、複数の入力部50−1〜50−Nと、入力共通部50−0と、出力部51−1と、出力共通部51−0と、制御部52とを有する。PLC6は、入力部60−1と、入力共通部60−0と、複数の出力部61−1〜61−Nと、出力共通部61−0と、制御部62とを有する。
【0013】
PLC5は、接点出力の近くに設置され、PLC5の入力部50−1〜50−Nは、接点1−1〜1−Nの一方の端子と接続され、PLC5の入力共通部50−0は、接点1−1〜1−Nの他方の端子と接続されている。入力共通部50−0は、内部に直流電源を有し、接点1−1〜1−Nの端子に直流電圧を印加している。なお、PLC自身が直流電圧を印加せず、入力共通部と、接点出力間に外部直流電源を接続して、接点端子に直流電圧を印加するものもあるが、システムとしての動作は同じである。以下において入力共通部とは、外部直流電源を使用する場合は、外部直流電源を含んだものを意味するものとする。また、入力共通部50−0が有する直流電源の、接点出力に印加する電圧側とは逆側の電位を、以後、入力共通部50−0の基準電位と呼ぶ。PLC5の出力部51−1は、PLC6の入力部60−1と電線7により接続され、PLC5の出力共通部51−0は、PLC6の入力共通部60−0と電線8により接続されている。
【0014】
PLC6は、監視装置4等の、接点出力を使用する側の近くに設置され、PLC6の出力部61−1〜61−Nは、監視装置4の入力部40−1から40−Nに接続され、PLC6の出力共通部61−0は、監視装置4の入力共通部40−0と接続されている。監視装置4の入力共通部は、PLC6の出力共通部61−0に対し直流電圧を印加している。また、PLC6の入力共通部60−0は、PLC8の出力共通部51−0に対し、電線8を通じて直流電圧を印加している。PLC6の入力共通部は、PLC5の場合と同様に、外部直流電源を使用する場合は、外部直流電源を含んだものを意味する。また、入力共通部60−0が有する直流電源の出力側とは逆側の電位も、同様に、入力共通部60−0の基準電位と呼ぶ。
【0015】
PLC5及びPLC6の入力部は、それぞれ、入力共通部の基準電位に対して、外部電線から電圧が印加されているか否か、即ち、入力電圧が印加されているか否かを制御部に通知する機能を有する。つまり、接点のオン又はオフ状態を制御部に通知する機能を有する。以後、入力電圧が印加されている状態を、電圧オン状態、電圧が印加されていない状態を電圧オフ状態と表現する。
【0016】
PLC5及びPLC6の出力部は、各出力部に接続され外部出力となる電線と、出力共通部との電気的な接続のオン/オフを行う機能を有し、出力共通部と外部出力との電気的接続のオン/オフ制御は、制御部により行われる。上記機能を持つ電子部品としてリレーのような機械的接点を有するものと、トランジスタのように機械的な動作接点を持たないものがあるが、どちらも使用可能である。
【0017】
PLC5の制御部52及びPLC6の制御部62は、プロセッサ及びメモリを有し、プログラムが実行されている。プログラムの指示内容に基づき、入力部の状態を一時的に保存し、入力部の状態や状態変化に基づき出力部の電気的接続をオン/オフする機能や、各種タイマや、カウンタの管理等を行う機能を有する。
【0018】
PLC5において、制御部52は、入力部50−1から50−Nに入力される接点1−1〜1−Nのオン/オフ状態に応じて、出力部51−1の電気的接続を、順にオン又はオフとすることで、各入力部の入力電圧のオン/オフ状態をPLC6に送信する。
【0019】
PLC6において、制御部62は、入力部60−1の入力共通部60−0の基準電位に対する入力電圧のオン/オフ状態を監視し、PLC5から送信されてくるPLC5の各入力部のオン/オフ状態に応じて、出力部61−1〜61−Nのうち対応する出力部の電気的接続のオン/オフを制御する。
【0020】
図2は、本発明のシリアル伝送方法の送信側でのフローチャートである。図1の構成においては、PLC5の制御部52において実行されるものである。ここで、T1は、送信側PLCの全入力部の状態を送信後、再度全入力部の状態送信を開始するまでの時間T1であり、T2は、ある入力部の状態を、出力部から送信する期間、即ち、出力部の電気的接続状態を、送信している入力部の状態と同じ状態にする期間であり、Nは、処理する入力部の数である。また、開始パターンとは、送信側PLCが全入力ポートの状態送信を行うに先立ち、受信側PLCに送信開始を伝えるために用いられ、オン/オフパターンと、各オン/オフ状態の継続時間は、送受信PLC間で同じものを使用する。同様に、終了パターンは、送信側PLCが全入力ポートの送信後、送信終了を受信PLCに伝えるために用いられ、そのオン/オフパターンと各オン/オフ状態継続時間は、送受信PLC間で同じものを使用する。これらT2、N、開始パターン及び終了パターンは、予め送受信間で決めておき、各制御部52及び62で実行されるプログラム内に直接書き込まれるか、または、各制御部が有するメモリに記録され、プログラムが前記記録された内容を参照して使用する。
【0021】
(S21, S22, S23, S24) 変数t1を0とし、T1時間待機する。T1時間経過後、受信PLCに送信開始を通知するため、出力部51−1の電気的接続のオン/オフを制御し開始パターンの出力を行う。また、変数iの初期化を行う。
【0022】
(S25, S26) 入力部i、例えば図1の構成での1回目の反復処理においては、入力部50−1の状態が、オンであれば、出力部51−1の電気的接続をオンに、オフであればオフにする。合わせて変数t2を0とする。そのままの状態をT2時間継続させる。
【0023】
(S27, S28) T2時間継続後、変数iにより、全入力部の状態送信が完了しているか否かを検査し、終了していなければ、変数iを増加させ、全入力部の状態送信が完了するまで、S25とS26を反復して行う。全入力部の処理が完了すれば、終了パターンの出力を行い1回の送信が終了する。
【0024】
以後、T1時間毎に、上記送信処理を繰り返す。
【0025】
図3は、本発明のシリアル伝送方法の受信側でのフローチャートである。図1の構成においては、PLC6の制御部62において実行されるものである。
【0026】
(S31, S32) 入力部60−1の状態が、予め決められたパターンのオン/オフ、つまり、開始パターンを検出するまでは待機を行う。開始パターン検出で、変数iを初期化する。
【0027】
(S33, S34, S35, S36) 変数t2を0とし、T2の半分の時間待機する。t2がT2の半分となったところで、入力部60−1の状態を、出力部i、つまり、第1回目の反復処理では、PLC6の出力部61−1の新たな状態候補として記憶しておく。その後、更に、T2の半分の時間待機する。
【0028】
(S37, S38) 変数iにより、全出力ポートの状態を受け取ったか否かを検査し、受け取っていなければ、変数iを1増やし、S33からS36の処理を繰り返す。
【0029】
(S39, S40) 全出力ポートを受け取った場合は、制御部62は、入力部60−1において、終了パターンが検出されるか否かを確認する。検出されれば、正常に受信ができたものとし、記憶している各出力部の状態候補を、実際に出力部の状態として出力する。終了パターンが検出されない場合は、異常終了であるとして、出力部の状態変更は行わない。
【0030】
以上の処理により、複数接点の出力状態を、2本の電線により伝送を行う。単純な直流電圧のオン又はオフにより伝送を行っているため。使用する電線の仕様や長さによる制約はほとんどない。
【0031】
送受信のタイミングは、開始パターンの後、送受信の各PLCが有するタイマに基づき独立して行う。正しく受信できたことの確認は、終了パターンが受信側において正しく検出されるか否かにより行う。正しく検出されなかった場合は、受信側では、その回の受信データは無視し、出力部の更新を行わないが、次の送信開始までの時間T1を短縮するため、図1において、PLC6の出力部とPLC5の入力部を電線で接続し、PLC6からオン/オフ制御によりPLC5に受信側でのエラーを通知することも有効である。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明によるシリアル伝送システムの構成図である。
【図2】本発明のシリアル伝送方法の送信側でのフローチャートである。
【図3】本発明のシリアル伝送方法の受信側でのフローチャートである。
【図4】接点出力の使用例の説明図である。
【符号の説明】
【0033】
1−1〜1−N 接点
2−1〜2−N、3、7、8 電線
4 監視装置
40−1〜40−N 監視装置入力部
40−0 監視装置入力共通部
5、6 PLC
50−1〜50−N、60−1 入力部
50−0、60−0 入力共通部
51−1、61−1〜61−N 出力部
51−0、61−0 出力共通部
52、62 制御部



【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力共通部と、前記入力共通部の基準電位に対する入力電圧のオン/オフ状態を検出する複数の入力部と、出力共通部と、前記出力共通部と外部出力との電気的接続のオン/オフを行う出力部とを有する第1のプログラマブルコントローラと、
入力共通部と、前記入力共通部の基準電位に対する入力電圧のオン/オフ状態を検出する入力部とを有する第2のプログラマブルコントローラとを含み、
第1のプログラマブルコントローラの出力部と、第2のプログラマブルコントローラの入力部は第1の電線により接続され、第1のプログラマブルコントローラの出力共通部と、第2のプログラマブルコントローラの入力共通部は第2の電線により接続され、第2のプログラマブルコントローラの入力共通部は第2の電線に対して、基準電位に対して電圧を印加する通信システムにおいて、
第1のプログラマブルコントローラは、予め決められた第1のパターンに従い、出力部の電気的接続のオンオフを行った後、予め決められた入力部順に、入力部の入力電圧がオン状態であれば出力部の電気的接続をオンに、入力部の入力電圧がオフであれば出力部の電気的接続をオフに、予め決められた期間だけ順に設定し、全入力部の状態を出力部に設定した後に、予め決められた第2のパターンに従い出力部の電気的接続のオンオフを行い、
第2のプログラマブルコントローラは、前記第1のパターンと前記第2のパターンの間にはさまれた、入力部の入力電圧のオン/オフ状態を、前記予め決められた期間に基づき判定し、第1のプログラマブルコントローラの各入力部の入力電圧状態の情報を得ることを特徴とするシリアル伝送システム。
【請求項2】
第1のプログラマブルコントローラが、前記第1のプログラマブルコントローラの各入力部の入力電圧のオン/オフ状態を、1対の電線により接続された第2のプログラマブルコントローラに送信する方法において、
送信開始を通知するため、予め決められた第1のパターンに従い、前記1対の電線間の電圧のオン/オフ状態を変化させる第1のステップと、
予め決められた入力部順に、入力部の入力電圧がオン状態であれば、前記1対の電線間の電圧をオン状態に、入力部の入力電圧がオフ状態であれば前記1対の電線間の電圧をオフ状態に、予め決められた期間だけ順に出力する第2のステップと、
送信終了を通知するため、予め決められた第2のパターンに従い、前記1対の電線間の電圧のオン/オフ状態を変化させる第3のステップとを有することを特徴とするシリアル伝送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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