説明

接点要素の二つのセットを有するスイッチ

【課題】耐電圧能力が高く、遮断時間を迅速にできる高電圧スイッチを得る。
【解決手段】スイッチング装置12は、接点要素13a,13b,13cの第一のセット、及び、接点要素14a,14b,14cの第二のセットを有し、各接点要素13a,13b,13cと14a,14b,14cは、導電要素16と、導電要素16を支持する絶縁キャリア15からなる。このスイッチング装置12の閉じられた状態において、前記導電要素16は、端子8,9の軸方向Aに沿って、端子8,9の間で、一つまたはそれ以上の電流経路を形成するように揃えられている。このスイッチング装置12を開極するために、前記接点要素は、一つまたは二つの駆動源により軸方向Aに対して垂直な方向Dに沿って互いに変位される。これらの構成要素からなるスイッチング装置12は、流体密ハウジングの中で、高い圧力のガスの中または液体の中に配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに変位可能な接点要素の第一及び第二のセットを有する高電圧または中電圧スイッチに係る。本発明はまた、そのようなスイッチを有する電流ブレーカに係る。
【背景技術】
【0002】
このタイプのスイッチは、米国特許公報 US 7,235,751 の中に開示されている。このスイッチは、接点要素の第一及び第二のセット、及び、接点要素を変位方向に沿って互いに変位させるように構成された駆動源を有している。各接点要素は、少なくとも一つの導電要素を支持している。接点要素の第一の相対位置において、それらの導電要素は、結合して、変位方向に対して横方向に、スイッチの第一の端子と第二の端子の間で、少なくとも一つの導電経路を形成する。接点要素の第二の位置において、導電要素は、食い違いの位置に互いに変位され、それ故に、上記の導電経路が切断される。米国特許公報 US 7,235,751 のスイッチが開かれるとき、即ち、電流が遮断されるとき、アークが、分離される導電要素の間で発生する。これらのアークは、周囲を取り囲むガスと接触する代わりに、接点要素の固体材料と直接的に接触するために、急速に冷却される。これは、好ましい電流の転流性能を備えた高いアーク電圧をもたらす。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第7,235,751号明細書
【発明の概要】
【0004】
本願発明により解決されるべき課題は、このタイプの改善されたスイッチを提供することにある。この課題は、請求項1のスイッチにより解決される。従って、このスイッチは、電流の入り切りのために使用される第一及び第二の端子を有している。更にまた、このスイッチは、接点要素の第一及び第二のセット、及び、接点要素のセットを変位方向に沿って互いに対して互いに変位させるように構成された駆動源を有している。各接点要素は、少なくとも一つの導電要素を支持する絶縁キャリアを有している。
【0005】
導電要素の位置は、以下の通りである:
− 接点要素の第一の相対位置において、導電要素は、第一の端子と第二の端子との間に、軸方向に沿って、一つまたはそれ以上の導電経路を形成し、即ち、スイッチは、閉じられた電流導通位置にある;
− 接点要素の第二の相対位置において、導電要素は、導電経路が形成されないように互いに変位され、即ち、スイッチは、その開かれた非導通位置にある。
【0006】
少なくとも第一及び第二の接点要素は、更に、流体密ハウジングの中に密閉され、このハウジングは、接点要素の周囲を取囲む電気的に絶縁性の流体を含んでいる。それ故に、米国特許公報 US 7,235,751 の教えとは反対に、接点要素の周囲を取囲む流体が主要な役割を演じていて、この流体は、コントロールされた電気的に絶縁性の流体でなければならないと言うことが理解される。流体は、周囲の大気圧力と等しい圧力またはそれと異なる圧力で、ガスおよび/または液体であることが可能である。この手立ては、スイッチの絶縁強度、即ち、その開かれた状態においてそれが耐えることができる電圧を増大させることを可能にする。
【0007】
好ましい実施形態において、流体は、1気圧(約101.325kPa)を超える圧力のガスであり、絶縁破壊電圧を増大させるために、特に2気圧を超える圧力のガスである。典型的なガスは、SFおよび/または空気を有している。その代わりに、流体は、油を有していても良い。更なる好ましい実施形態において、流体は、一相を有していても良く、または、二相の絶縁媒体であることも可能であり、国際公開 WO 2010/142346 の中に記載されているような、例えば、フルオロケトン、特にC5−パーフルオロケトン、および/またはC6−パーフルオロケトンなどである。国際公開 WO 2010/142346 は、ここでリファレンスによりその全体でこの明細書の中に組み込まれる。
【0008】
更なる好ましい実施形態おいて、各導電要素は、それを支持するキャリアを、少なくとも横切って伸びている。軸方向に沿った導電要素の範囲は、軸方向でキャリアの範囲を超えている。これは、第一の位置において、接点は互いに接触するが、キャリアは接触せず、それで、ギャップがキャリアの間に形成されると言うことを確保する。これは、接点の間のみでの良好な機械的な接触、及び減少された摩擦力をもたらす。
【0009】
それに加えて、導電要素が、周囲を取り囲むキャリアの表面の上方に突出するとき、表面と導電要素の間の交点での電場が、導電要素の表面がキャリアの表面と実質的に揃うデバイスに対する場合と比べて小さいと言うことが示されることが可能である。この理由のために、導電要素は、好ましくは、それを支持するキャリアの二つの反対側の表面の上方に突出すべきである。
【0010】
好ましくは、各導電要素は、それを支持するキャリアに対して、軸方向に僅かに可動であり、および/または、傾動軸の周りで僅かに傾動可能であり、ここで、前記傾動軸は、軸方向に対して及び変位の方向に対して垂直である。これは、スイッチが、その第一の、閉じられた電流伝送位置にあるとき、導電要素がそれ自身を正確に軸方向に向けさせることを可能にし、それにより、電流の伝導を改善する。
【0011】
また更なる好ましい実施形態において、各端子は、導電要素と接触するための接点表面を形成し、ここで、端子の内の少なくとも一つは、端子の接点表面を導電要素に対して弾性的に押し出すバネ部材を有している。これは、導電要素自身の間の、及び、導電要素と接点表面の間の、適切な接触力を確保する。これは、軸方向に可動な導電要素との組み合わせで、特に好ましく、その理由は、その場合には、電流経路の中の全ての導電要素の間の力が実質的に等しいからである。
【0012】
スイッチの他の好ましい実施形態は、第一の駆動源に加えて、第二の駆動源を有している。第一の駆動源は、接点要素の第一のセットに接続され、第二の駆動源は、接点要素の第二のセットに接続されている。各駆動源は、それに属する接点要素のセットを移動させることが可能であり、前記第一及び第二の駆動源は、同時に、または少なくとも、同一のタイム・ウインドウの中で、前記第一及び第二のセットを反対方向に、それぞれ移動させるように構成されている。この手立てにより、相対的な接点分離速度が基本的に二倍にされる。
【0013】
駆動源は、または、もし二つ以上ある場合には複数の駆動源は、好ましくは、ハウジングの中に配置され、このようにして、機械的なブッシングの必要性を取り除く。
【0014】
スイッチは、好ましくは、高電圧の用途(即ち、電圧上記の72kVに対して)で使用されるが、中電圧用途のために(数KVと72kVとの間で)使用されることも可能である。
【0015】
他の好ましい実施形態は、従属請求項の中、並びに、以下の説明の中に挙げられている。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、スイッチの実施形態の断面図を示している。
【図2】図2は、接点要素の拡大断面図を示している。
【図3】図3は、導電要素を有するキャリアの第一の実施形態の断面図を示している。
【図4】図4は、キャリア及び導電要素の第二の実施形態を示している。
【図5】図5は、スイッチの適用例を示している。
【図6】図6は、スイッチを開けるとき及び閉じるときの、ストローク対時間の図を示している。
【図7】図7は、絶縁キャリアの上の、導電要素の配置の第一の例を示している。
【図8】図8は、絶縁キャリアの上の、導電要素の配置の第二の例を示している。
【図9】図9は、絶縁キャリアの上の、導電要素の配置の第三の例を示している。
【図10】図10は、その開かれた状態におけるスイッチの第二の実施形態を示している。
【図11】図11は、閉じるときの図10のスイッチを示している。
【図12】図12は、その閉じられた状態における図10のスイッチを示している。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明、及び以上で規定されたもの以外の目的、優位性及び実施形態は、以下の詳細なその説明からより良く理解され、明らかになるであろう。そのような説明は、添付図面を参照する。
【0018】
図1のスイッチは、絶縁性の流体で満たされたスペース2を密閉する流体密ハウジング1を有していて、この流体は、特に、SFおよび/または空気および/またはフルオロケトンであり、特に、高い圧力の、C5−パーフルオロケトンおよび/またはC6−パーフルオロケトンであり、または、フルオロケトンなどのような、油または二相の絶縁媒体であり、特にC5−パーフルオロケトンおよび/またはC6−パーフルオロケトン(より高い濃度の、即ち、凝縮が生ずるように沸点よりも上で動作する)。
【0019】
ハウジング1は、マニフォールド・タイプのGISタイプの金属製密閉容器を形成し、二つの管状部分を有している。第一の管状部分3は、軸方向Aに沿って伸び、第二の管状部分4は、方向Dに沿って伸び、この方向Dは、以下において明らかになる理由のために、変位方向と呼ばれている。軸方向Aは、変位方向Dに対して垂直またはほぼ垂直である。管状部分は、実質的に十字形のハウジング部分5により形成されている。
【0020】
第一の管状部分3は、それぞれ第一及び第二の支持絶縁体6及び7で終了する。第一の支持絶縁体6は、第一の端子8を支持し、第二の支持絶縁体(7)は、スイッチの第二の端子9を支持している。支持絶縁体6,7の中を通って伸びる二つの端子8,9は、実質的に軸方向Aに沿って、スイッチを通って、電流を伝送する。
【0021】
第二の管状部分4は、第一及び第二のキャップの中で、またはフランジ10及び11の中で、それぞれ終了している。
【0022】
第一の端子8及び第二の端子9は、スペース2の中心の方へ伸びて、互いから距離を隔てて終了し、スイッチング装置12が、第一の管状部分3と第二の管状部分4の交差領域で、それらの間に配置されている。
【0023】
図2から良く分かるように、スイッチング装置12は、接点要素の第一のセット13a、13b,13c、及び接点要素の第二のセット14a、14b、14cを有している。ここに示された実施形態において、各セットは、三つの接点要素を有しているが、その数は変わっても良く、例えば、二つまたは三つ以上である。第一及び第二のセットは、それぞれ異なる数の接点要素を有していても良く、例えば二つ及び三つである。好ましくは、その数は、セット当り、少なくとも二つの接点要素である。二つのセットの接点要素は、交互に積み重ねられ、即ち、一つのセットの各接点要素は、それがスイッチング装置12の端部に配置されていない場合には、他のセットの二つの接点要素に隣接し、その場合には、各接点要素は、他のセットの一つの接点要素と端子8,9の内の一つの間に配置される。
【0024】
図2及び7に示されているように、各接点要素は、プレート形の絶縁キャリア15、一つまたはそれ以上の導電要素16、及びアクチュエータ・ロッド17を有している。ここに示された実施形態において、各キャリア15は、二つの導電要素16を支持している。
【0025】
図1及び2は、閉じられた状態のスイッチを示していて、接点要素13a,13b,13c;14a,14b,14cは、第一の相対位置にあり、ここで、導電要素16は、第一の端子8と第二の端子9との間で、軸方向Aに沿って、二つの導電経路34を形成するように揃えられている。導電経路34は、端子8,9の間で電流を伝送する。それらの数は、電流を連続して運ぶ能力を増大させるために、1よりも大きいことが可能である。
【0026】
図8は、各絶縁キャリア15の中に三つの接点要素16がある場合の配置の例を示していて、これは、スイッチが閉じられたとき、三つの導電経路34をもたらす。図9は、各絶縁キャリア15の中で、四つの接点要素16が一列に並んでいない配置の、更なる例を示していて、これは、スイッチが閉じられたとき、四つの導電経路34をもたらす。
【0027】
接点要素13a,13b,13c;14a,14b,14cは、第二の位置に、変位方向Dに沿って移動されることが可能であり、ここで、導電要素16は、互いに対して食い違い、導電経路を形成しない。図2の中に、この第二の位置における導電要素の位置が、参照符号16’を付けられて、点線で示されている。図から分かるように、導電要素16’は、方向Dに沿って互いから分離され、それにより、幾つかの接点ギャップ(接点要素13,14の数の二倍)を作り出し、それによって、耐絶縁性の高いレベルを迅速にもたらす。
【0028】
そのような変位を実現するために、そして、図1の中で良く分かるように、アクチュエータ・ロッド17は、二つの駆動源18,19に接続されている。第一の駆動源18は、接点要素の第一のセット13a、13b,13cのアクチュエータ・ロッド17に接続され、第二の駆動源19は、接点要素の第二のセット14a、14b、14cのアクチュエータ・ロッド17に接続されている。
【0029】
図1及び2に示された実施形態において、スイッチは、アクチュエータ・ロッド17をスイッチの中心から遠ざかるように引くことにより開かれ、それにより、導電要素を、それらの第二の、食い違いの位置へ移動させる。その代わりに、ロッド17は、スイッチの中心の方へ押されることが可能であり、それはまた、導電要素を食い違いの位置へ移動させることを可能にする。
【0030】
駆動源18,19は、例えば、反発するロレンツ力の原理で動作することが可能であり、そして、米国特許公報 US 7,235,751 の中に開示されたタイプであって、この米国特許公報は、ここでリファレンスによりその全体でこの明細書の中に組み込まれ、それ故に、この中で詳細には説明されていない。各駆動源は、接点要素の一つのセットを変位方向Dに沿って変位させることが可能である。それらは、走行長さ及び変位の速度を増大させるために、第一及び第二のセットを、同時に、または、少なくとも同一のタイム・ウインドウの中で、反対方向に移動させるように構成され且つコントロールされる。
【0031】
駆動源18,19は、第二の管状部分4の反対側の端の領域の中に配置されている。
【0032】
留意すべきことは、接点システムが要求される絶縁強度をもたらすために、駆動源の全ストローク(例えば駆動源当り20mm)が、必ずしも移動されなくても良いと言うことであって、より短い時間で到達されることが可能であるところの、遥かに短い距離(例えば駆動源当り10mm)で十分なことがあると言うことである。これはまた、アクチュエータのストロークの末端の位置及び減衰フェーズに到達する際の、後方への移動の場合にある程度の安全性をもたらす(図6参照方)。図6から分かるように、導電要素16の十分な分離は、好ましくは、1または2msの範囲内で到達されることが可能である。
【0033】
図2に示されているように、スイッチがその第一の位置にあるとき、各端子8,9は、導電要素16に接触する接点表面33を形成する接点プレート32を支持している。接点プレート32は、軸方向に変位可能な状態で端子8,9に取り付けられ、バネ20は、接点表面33を導電要素に対して弾性的に押し付け、それによって、導電要素16を、より良い伝導のためのそれらの揃えられた状態に押し付ける。図2の実施形態において、ラセン圧縮バネ20は、この目的のために使用されているが、他のタイプのバネ部材が、同様に使用されることも可能である。また、各端子8,9の中に少なくとも一つのバネ部材があることが好ましいが、揃えられた導電要素16のための圧縮力は、端子8,9の唯一つの中のバネ部材により作り出されることも可能である。
【0034】
図3は、そのキャリア15の中の、単一の導電要素16の断面図を示している。この図から分かるように、この要素は、好ましくは、キャリア15の両方の軸方向の表面15a、15bの上方に、高さHだけ、軸方向に突出している。換言すると、導電要素16の軸方向の範囲(即ち、軸方向Aに沿う範囲)は、その周囲を取り囲むキャリア15の軸方向の範囲を超えている。好ましくは、導電要素16の位置での、キャリア15の軸方向の範囲は、導電要素16の軸方向の範囲と比べて、少なくとも10%小さい。
【0035】
導電要素16は、好ましくは、銀でコーティングされたアルミニウムの本体を有している。
【0036】
図3の実施形態において、導電要素16は、例えば接着剤により、キャリア15に固定された状態で接続されている。
【0037】
図4は、接点要素16の代替的な実施形態を示している。この実施形態において、接点要素16は、例えばネジ23により互いに接続された、第一の部分21及び第二の部分22を有している。各部分21,22は、シャフト24及びヘッド25を有していて、ヘッドは、シャフトと比べてより大きい直径を有している。二つのシャフト24は、キャリア15及びキャリア15の表面15a、15bに対する頭受けの中の開口部26を通って、軸方向に伸びている。二つのヘッド25の間の距離は、キャリア15の軸方向の範囲と比べて僅かに大きく、それによって、上記の理由のために、導電要素16がキャリア15に対して軸方向Aに可動であるようになっている。
【0038】
図4の実施形態において、ネジが、二つの部分21,22を接続するために使用されていたが、その代わりに、リベットが、同様に使用されることも可能である。また更なる代替形態において、部分21,22の一つが、ピンを有するオス部分としてデザインされることが可能であり、このピンは、プレス嵌めまたはシュリベル・フィットコネクタを形成するために、他方の、メス部分の開口部の中に導入される。
【0039】
以上で指摘したように、導電性のプレート32の接点表面33は、より良い伝導のためのそれらの揃えられた状態で、導電要素16に対して押付けられるべきである。しかしながら、これまで示された実施形態において、これは、接点要素16が揃えられた状態にある間に、比較的高い接線方向の力をもたらすことが可能であり、それは、コンポーネントの表面および/またはコーティングに損傷を与える可能性がある。
【0040】
図10〜12は、この問題を減少させまたは取り除くスイッチの実施形態を示している。この実施形態において、スイッチは、スイッチが閉じられた状態にある間に、軸方向Aに、接点表面33の間の距離を減少させるように構成されている。これを実現するために、図10〜12に示された実施形態において、最も外側の絶縁キャリア15の内の少なくとも一つが、リセス35を有するカムプレートとしてデザインされ、接点表面33がカムフォロワ36に接続されている。
【0041】
スイッチが開くとき、リセス35及びカムフォロワ36は、揃っておらず、カムフォロワ36がカムプレートのフラットな部分に対して接触する。この状態において、接点表面33は、その隣接する接点要素16から軸方向で離れている。スイッチが閉じるとき、カムフォロワ36がリセス35と揃い、それが、接点プレート32をキャリア15の方へ軸方向に移動させ、これにより、接点表面33とその隣接する接点要素16との間の軸方向の距離を減少させる。
【0042】
それ故に、接点表面33と導電要素16との間の衝撃は、概ね軸方向Aに加えられ、接点要素16の表面上及び接点表面33上の剪断力が、減少されまたは避けられる。スイッチが基本的に完全に閉じられたときにのみ、接点表面33が接点要素16と接触して、接点要素を押圧する。
【0043】
図5は、高電圧サーキット・ブレーカの中での、本願発明のスイッチ27の適用例を示している。このサーキット・ブレーカは、互いに平行に配置された、一次の電気的ブランチ28及び二次の電気的ブランチ29を有している。少なくとも一つの固体状態のブレーカ30は、一次ブランチ28の中に配置され、複数の固体状態のブレーカ31は、二次ブランチ29の中に直列に配置されている。二次ブランチ29の中の固体状態のブレーカ31の数は、一次ブランチ28の中の固体状態のブレーカ30の数と比べて遥かに大きい。
【0044】
サーキット・ブレーカがその閉じられた電流導通状態にあるとき、全ての固体状態のブレーカは導電状態にあり、スイッチ27は閉じられている。電流は、二次ブランチ29を実質的にバイパスし、その理由は、一次ブランチ28の中での電圧低下が遥かに小さいからである。それ故に、公称電流に対して、サーキット・ブレーカでの損失は、比較的小さい。
【0045】
電流が遮断されたとき、第一のステップで、一次ブランチ28の中の固体状態のブレーカ30が開かれ、それが一次ブランチ28の中の電流を小さな残存値まで低下させ、次いで、それがスイッチ27を開けることにより遮断される。ここで、全電流は、既に二次ブランチ29へ転流されている。次のステップにおいて、二次ブランチ29の中の固体状態のブレーカ31が開かれる。
【0046】
それ故に、図5のサーキット・ブレーカの開かれた状態において、スイッチ27は、二次ブランチの中での全電圧低下を運び、それにより、一次ブランチ28の固体状態のブレーカ30を絶縁破壊から保護する。
【0047】
上記のスイッチは、その迅速なスイッチング時間及びその大きな絶縁強度のために、そのような用途のためのスイッチ27として良く適している。
【0048】
注記:
ハウジング1は、好ましくは接地電位にある(例えばGIS=ガス絶縁変電施設において)が、高電圧電位にあっても良い(例えばライブ・タンク・ブレーカにおいて)。上記の例において、各絶縁キャリア15は、それ自身のアクチュエータ・ロッド17を有していた。その代わりに、アクチュエータ・ロッドの数は、異なっていても良く、特に、絶縁キャリア15の数と比べて小さく、絶縁キャリアの少なくとも一部が機械的に相互に接続されていても良い。
【符号の説明】
【0049】
1・・・ハウジング、2・・・スペース、3,4・・・管状部分、5・・・ハウジング部分、6,7・・・支持絶縁体、8,9・・・端子、10,11・・・キャップ、フランジ、12・・・スイッチング装置、13a,13b,13c・・・接点要素の第一のセット、14a,14b,14c・・・接点要素の第二のセット、15・・・絶縁キャリア、15a,15b・・・絶縁キャリアの軸方向の表面、16,16’・・・導電要素、17・・・アクチュエータ・ロッド、18・・・接点プレート、19・・・接点表面、20・・・バネ、21,22・・・接点要素の第一及び第二の部分、23・・・ネジ、24,25・・・シャフト及びヘッド、26・・・開口部、27・・・スイッチ28,29・・・一次及び二次の電気的なブランチ、30,31・・・半導体ブレーカ、32・・・接点プレート、33・・・接点表面、34・・・導電経路、35・・・リセス、36・・・カムフォロワ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧または中電圧スイッチであって、
第一の端子(8)及び第二の端子(9)と、
第一の端子(8)と第二の端子(9)との間に配置された、接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)の第一及び第二のセットと、
接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)の前記セットを、変位方向(D)に沿って互いに変位させるように構成された少なくとも第一の駆動源(18)と、
を有し、
各接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)は、少なくとも一つの導電要素(16)支持する絶縁キャリア(15)を有し、
前記接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)の第一の相対位置で、前記接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)の導電要素(16)は、前記変位方向(D)に対して横の方向に、前記第一の端子(8)と前記第二の端子(9)との間で、軸方向(A)の少なくとも一つの導電経路(34)を形成し、
前記接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)の第二の相対位置で、前記導電要素(16)は、互いに変位されて、前記導電経路(34)を形成しない、
高電圧または中電圧スイッチにおいて、
前記第一及び第二の接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)は、流体密ハウジング(1)の中に密閉され、
前記流体密ハウジング(1)は、前記接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)の周囲を取囲む電気的に絶縁性の流体を含んでいること、
を特徴とする高電圧または中電圧スイッチ。
【請求項2】
下記特徴を有する請求項1に記載のスイッチ、
前記絶縁性の流体は、1気圧を超える圧力の、特に2気圧を超える圧力のガスである。
【請求項3】
下記特徴を有する請求項2に記載のスイッチ、
前記ガスは、SFおよび/または空気および/またはフルオロケトンを有し、特に、C5−パーフルオロケトンおよび/またはC6−パーフルオロケトンを有している。
【請求項4】
下記特徴を有する請求項1に記載のスイッチ、
前記流体は、例えばフルオロケトンなどの、油または二相の絶縁媒体を有し、特に、C5−パーフルオロケトンおよび/またはC6−パーフルオロケトンを有している。
【請求項5】
下記特徴を有する請求項1から4の何れか1項に記載のスイッチ、
各導電要素(16)は、それを支持するキャリア(15)を横切って伸び、
軸方向(A)に沿う、前記導電要素(16)の範囲は、軸方向(A)で前記キャリア(15)の範囲を超えている。
【請求項6】
下記特徴を有する請求項5に記載のスイッチ、
前記導電要素(16)は、それを支持するキャリア(15)の二つの反対側の表面(15a,15b)の上方に、軸方向に突出する。
【請求項7】
下記特徴を有する請求項5または6に記載のスイッチ、
導電要素(16)の位置で、前記キャリア(15)の軸方向の範囲は、前記導電要素(16)の軸方向の範囲と比べて、少なくとも10%小さい。
【請求項8】
下記特徴を有する請求項1から7の何れか1項に記載のスイッチ、
各導電要素(16)は、それを支持するキャリア(15)に対して、軸方向(A)に可動であり、および/または、軸方向(A)及び変位方向(D)に対して垂直な傾動軸の周りで傾動可能である。
【請求項9】
下記特徴を有する請求項1から8の何れか1項に記載のスイッチ、
各端子(8,9)は、導電要素(16)と接触するための接点表面(33)を形成し、
少なくとも一つの端子(8,9)は、端子(8,9)の接点表面(33)を前記導電要素(16)に対して弾性的に押付けるバネ部材(20)を有している。
【請求項10】
下記特徴を有する請求項9に記載のスイッチ、
前記スイッチは、スイッチを閉じる際に、前記軸方向(A)で前記接点表面(33)の距離を減少させるように構成されている。
【請求項11】
下記特徴を有する請求項10に記載のスイッチ、
前記キャリア(15)の内の少なくとも一つは、リセス(35)を有するカムプレートとして構成され、
前記カムプレートに隣接する接点表面(33)は、前記カムプレートに接するカムフォロワ(36)に接続され、
スイッチが閉じるとき、前記カムフォロワ(36)は、前記リセス(35)に揃う。
【請求項12】
下記特徴を有する請求項1から11の何れか1項に記載のスイッチ、
前記第一の駆動源(18)に加えて、第二の駆動源(19)を有していて、
前記第一の駆動源(18)は、前記第一のセットに接続され、前記第二の駆動源(19)は、前記第二のセットに接続され、且つ、
前記第一及び第二の駆動源(18,19)は、前記第一及び第二のセットを同時に反対方向にそれぞれ移動させるように構成されている。
【請求項13】
下記特徴を有する請求項1から12の何れか1項に記載のスイッチ、
前記ハウジング(1)は、第一の管状部分(3)及び第二の管状部分(4)を有していて、
第一の管状部分(3)は、両側で、第一の支持絶縁体(6)の中及び第二の支持絶縁体(7)の中で終了し、第一の端子(8)は、第一の支持絶縁体(6)の中を通って伸び、第二の端子(9)は、第二の支持絶縁体(7)の中を通って伸び、第二の管状部分(4)は、前記第一の管状部分(3)に対して実質的に垂直に配置されている。
【請求項14】
下記特徴を有する請求項12または13に記載のスイッチ、
前記第一の駆動源(18)及び前記第二の駆動源(19)は、前記第二の管状部分(4)の反対側の端の領域の中に配置され、
前記接点要素(13a,13b,13c;14a,14b,14c)は、前記第一及び第二の管状部分(3,4)の交差領域に配置されている。
【請求項15】
下記特徴を有する請求項1から14の何れか1項に記載のスイッチ、
前記駆動源(18)または前記駆動源(18,19)は、前記ハウジング(1)の中に配置されている。
【請求項16】
請求項1から15の何れか1項に記載のスイッチ(27)を有する電流ブレーカであって、
当該電流ブレーカは、
並列に配置された、一次の電気的ブランチ(28)及び二次の電気的ブランチ(29)と、
一次の電気的ブランチ(28)の中に配置された、少なくとも一つの固体状態のブレーカ(30)と、
二次の電気的ブランチ(29)の中に直列に配置された、複数の固体状態のブレーカ(31)と、
を更に有し、
二次の電気的ブランチ(29)の中の、固体状態のブレーカ(31)の数は、一次の電気的ブランチ(28)の中の、固体状態のブレーカ(30)の数と比べて大きいこと、及び
前記スイッチ(27)は、前記電気的な一次ブランチ(28)の前記固体状態のブレーカ(30)に対して直列に、前記一次の電気的ブランチ(28)の中に配置されていること、
を特徴とする電流ブレーカ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−221960(P2012−221960A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−89923(P2012−89923)
【出願日】平成24年4月11日(2012.4.11)
【出願人】(505063441)アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー (96)