説明

接着剤を含む硬質表面清掃用物品

本発明は、硬質表面を清掃する物品に関し、具体的には、広い表面から大きな粒子及び毛髪を除去することに関する。前記物品には、大きな粒子及び毛髪を収集及び捕捉する効率性を向上させる特定のレオロジー特性を備えている接着剤を含む。前記物品はシート、拭取り布、又はパッドの形態であってよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を含む硬質表面清掃用物品に関する。前記接着剤は、埃、糸くず、毛髪、砂、食物のくず、ガラス等を迅速に捕捉及び保持することができる。具体的に言うと、前記接着剤は、接着剤が含まれていない通常の物品では一般に捕捉されず、電気掃除機又はほうきで集める必要のある粒子及び毛髪を保持することができる。これは、接着剤の化学的組成及びレオロジー特性を慎重に選択することによって実現する。
【背景技術】
【0002】
粒子及び毛髪を保持する接着剤を含む硬質表面清掃用物品は、当該技術分野において既知である。例えば、プロクター&ギャンブル社(Procter & Gamble Company)によるPCT特許出願WO/01/62132号には、表面から微粒子物質を捕捉及び保持する機能を増大させる接着剤を含むとともに、清掃表面上に残る残留物の量を最小限に抑える添加剤を含んだ清掃シートが記載されている。接着剤は、使用可能な添加剤の1つとして言及されている。上記の出願には、弾性底面のあるモップヘッドを備えており、その一部に好ましくは、取り外し可能な清掃シートを嵌合させるための実質的に滑らかな湾曲形状部又は凸状部を有する、清掃用具もまた記載されている。
前記出願にはさらに、過度な粘着性を防ぎ、清掃シートが表面を滑走する機能を維持させる目的で、接着剤を清掃シートの特定領域にのみ塗布する方法も記載されている。
【0003】
3M社(3M Company)による特許出願WO03/075735号には、一般的な埃又はちり、並びに、砂のようなより重い粒子を捕捉する拭取り布であって、別個の谷部及び頂部のある拭取り部材が備わっている拭取り布が提供されており、この拭取り布では、接着剤を前記谷部に含み、頂点には含まれていない。前記接着剤は、砂及びその他の重い粒子を捕捉できるほど十分に表面に接触するが、拭取り布と表面の間の摩擦係数の度合いはあまり高くないため、拭取りにくくなる可能性がある。
【0004】
3M社の出願と同様に、S.C.ジョンソン社(S.C. Johnson)の米国特許第6,550,092号には、複数の空隙があるファブリック外面を画定する目的で、可撓性裏層に固定されている空隙が複数あるファブリック層を備える清掃シートが記載されている。前記空隙には、埃及びその他の粒子を保持する機能を増大させることのできる粘着性底面を含むことができる。清掃シートを用いる清掃用具及び表面清掃法も記載されている。
【0005】
従来技術に記載されている硬質表面清掃用物品は、とりわけ粒子及び毛髪の捕捉及び保持効率の面で、さらに改良されることができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、上述の現況技術に基づき、粒子及び毛髪の捕捉及び保持の効率がさらに優れている硬質表面清掃用物品を提供することである。本発明のその他の目的は、パンくず等のような大きな粒子を捕捉するのにさらに有効である硬質表面清掃用物品を提供することである。
【0007】
引用した全ての従来技術出願には、一般的な接着剤を含む硬質表面清掃用物品が記載されている。驚くべきことに、独特のレオロジー特性を備える特定範囲の接着性物質を選択することによって、粒子/毛髪の捕捉効率が向上した硬質表面物品を得ることができることを我々は発見した。これは、言い換えれば、物品の操作し易さの向上、清掃動作の向上、更には、より大きな粒子を収集する機能も含め、清掃効率の向上を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
ある1つの態様において本発明は、接着剤を含む硬質表面清掃用物品であって、
a.25℃及び0.1rad/sで測定された前記接着剤の弾性率G’25が、15,000Pa未満、好ましくは10,000Pa未満、最も好ましくは5,000Pa未満であり、
b.0.1〜100rad/sの間で測定された前記接着剤の弾性率の向上率ΔG’25が100%超、好ましくは130%超、より好ましくは150%超である、硬質表面清掃用物品に関する。
【0009】
別の実施形態では、本発明は、硬質表面を清掃する方法であって、上述の接着剤が含まれている物品と前記表面を接触させることから成る方法に関する。
【0010】
本発明の更に別の実施形態は、大きな粒子及び毛髪をより効率的に除去する目的で、上述の接着剤が含まれている硬質表面清掃用物品を使用することに関する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
接着剤
この文脈の中で考慮されている特性は、物質の弾性挙動を表す弾性率G’と、接着性物質の粘性挙動を表す粘性率G’’である。G’及びG’’はパスカル(Pa)単位で測定し、全ての値において、測定する際の温度(℃)及び周波数(rad/s)を指定する必要がある。G’もG’’もこれら2つのパラメーターによって著しく変化する可能性があるためである。
【0012】
接着剤の粘性挙動は、接着剤が迅速に付着し、しっかりと粘着する機能の指標を表すものと解釈できる。弾性挙動は、接着剤の「硬度」の指標として解釈することができる。またその値は、良好な初期接着性を得るためにも欠かせない。これらの組み合わせは、取り外す際に必要となる力の指標と考えられている。弾性率と粘性率の比率は、取り外しエネルギーの一部分が接着剤内で消散し、前記一部分が実際の取り外しを誘引するのに利用可能であるという指標と考えられている。
【0013】
ちり粒子を迅速に付着させ、埋め込み、保持する所望の特性をもたらすために、さまざまな周波数における弾性率の動的挙動は、接着剤がそれぞれちり粒子を付着させ/埋め込み、前記粒子を保持する際の代表的な条件であり、極めて重要である。粘性率と弾性率の比率も、接着剤の選定をさらに最適化する手段として重要である。
【0014】
議論の対象となる接着剤は、家庭用清掃物品で用いるよう意図されていることから、通常使用温度は大抵の場合、約25℃であると予測されるため、以下で議論するレオロジー特性はいずれも25℃で測定する。
【0015】
本発明で用いる接着剤は、25℃の温度での弾性率G’25及び25℃の温度での粘性率G’’25備え、これらの値はそれぞれ特定の周波数(rad/s)で測定される。前記接着剤にはさらに、弾性率の上昇率ΔG’25として表される動的弾性挙動を備え、前記挙動は、0.1rad/s〜100rad/sの周波数におけるG’25の上昇率として定義されている。
【0016】
【数1】

【0017】
また、前記接着剤には「クロスオーバー周波数」を有し、前記周波数はG’25とG’’25の値が等しい周波数(rad/s)として定義されている。
【0018】
本発明で用いる接着剤は、以下の条件を満たしている。
・G’25(0.1rad/s)が15,000Pa未満、
好ましくは10,000Pa未満、
最も好ましくは5,000Pa未満であり、
及び、
・ΔG’25が100%超、
好ましくは130%超、
最も好ましくは150%超である。
【0019】
好ましい実施形態では、さらに、本発明で用いる接着剤のクロスオーバー周波数が1,000rad/s未満、好ましくは700rad/s未満、最も好ましくは500rad/s未満である。
【0020】
本発明の接着剤はホットメルト接着剤の形状であることが一般的には好ましい。
【0021】
上述のレオロジー条件を満たしている場合、接着剤は、接着剤を商業利用する際に欠かせないうえに、当業者であれば容易に理解できる条件、例えば十分な凝集性(処理表面上に接着剤が残留するのを防ぐもの)も満たすようになるのが好ましい。
【0022】
接触する際の衛生的外観及び心地よい感触が重要である場合が多いため、透明又は白色である接着性組成物が好ましい。
【0023】
驚くべきことに、上述の接着剤を含む硬質表面清掃用物品では、大きな粒子及び毛髪を捕捉する効率性が向上していることが分かっている。
【0024】
理論によって制限されないが、接着剤は、2つの主機構、すなわち、1)接着剤の表面と、付着させる粒子/基材の表面(被接着面)とのエネルギー相互作用、及び、2)付着させる粒子/基材の表面(被接着面)を接着剤によって機械的に接合又は埋め込む機構によって機能すると考えられる。双方の機構が起こり得る場合に、接着効率が最大となる。
【0025】
双方の機構を活性化させ、最適な結合条件をもたらすには、結合形成が生じる典型的な周波数(例えば0.01〜1rad/s)において、接着剤が十分に柔軟、すなわち、G’の絶対値が十分に低いことが重要である。
【0026】
この範囲の周波数においてG’の絶対値が低いことで、実際に、接着剤の表面と被接着面のエネルギー相互作用の活性化によって接着剤と被接着面を非常に緊密に接触させること、被接着面の機械的接合/埋め込みを助けることの双方が可能となる。G’の値が低いほど、前記現象の双方が更に活性化され、これによって、強固な接着をもたらす。一方、被接着面は、接着剤によって結合させる必要があるうえに、接着性結合の消失をもたらし得る全ての外部応力に可能な限り耐えられるように、安定的な形で保持させる必要がある。このため、接着剤は、結合生成条件、すなわち低周波数において十分に柔軟であるうえに、高周波数、例えば、剥離が発生する際の典型的な条件である100rad/sにおいて硬化するとともに、結合の消失に可能な限り耐えることができるのが不可欠である。
【0027】
良好な結合を生成させるとともに、周波数が向上した際に硬化することによって剥離に耐えるという接着剤の機能は、典型的な結合周波数、例えば0.1rad/sと典型的な剥離周波数、例えば、100rad/sの間におけるG’の上昇度に強く表れている。
【0028】
上述のとおり、良好な結合生成、及び、剥離に対する十分な耐性を実現させるには、G’の絶対値及び動的変動が重要であるが、硬質表面清掃用途の全体的な接着挙動を決定する上で、粘性率G’’、及び、周波数によるG’の動的変動もかなりの重要である。優れた接着剤は典型的に、想定周波数にわたってG’が大きく変動するのみならず、G’’の変動がさらに大きくなる場合が多く、G’の値に近づくか、又はG’の値を超える可能性もある。
【0029】
理論によって制限されないが、これは、剥離の際に加わるエネルギーの多くの部分が接着剤内で消散する(つまり、剥離を引き起こす効果が低い)ことを意味するものとして解釈でき、また、このことによって、非常に高いレベルの接着力の巨視的な記録をもたらす。
【0030】
したがって、本発明による良好な接着剤では、適用周波数、すなわちG’’がG’以上である際の周波数の関数として、係数G’及びG’’のクロスオーバーが示され、これは特定の制限を下回る周波数で発生する。この現象は、一般的に接着剤のクロスオーバー周波数が低ければ低いほど接着強度は強力になると要約することができる。
【0031】
接着剤の化学的組成
特に指定の無い限り、組成物はいずれも重量%で表す。接着剤の上述のレオロジー抑制及び物理的特性の要件を満たす接着性組成物をもたらすために、以下の調合基準をさらに用いることができる。接着剤として有用な大半の組成物は実質的にゲル様の構造をしており、ゲルであるのが好ましいことに留意すべきである。ゲルは、分子間に形成される物理的又は化学的結合によって生じる三次元網目構造の物質である。ゲルは一般的に、室温では液体である場合の多い可塑剤及び粘着付与剤等の低分子量構成成分が比較的大量に(30〜80質量%)、並びに、ゲルの重量に対して一般的に50%未満である高分子又はポリマー構成成分をある量含む。
【0032】
本発明で用いられる接着性組成物には、以下のものが含まれているのが好ましい。
0.5重量%〜49重量%、好ましくは5重量%〜40重量%、より好ましくは7重量%〜35重量%のポリマー又はポリマーの混合物。本発明で用いることのできるポリマーとしては、天然及び/又は合成ポリマー、例えばポリオレフィン及びそのコポリマー(例えばポリエチレン−ビニルアセテート又はポリエチレン−アクリルレートコポリマーなど)、天然及び合成ゴム(ポリイソプレン、ポリブタジエン、ブチルゴム、及び、ポリイソブチレン、SBR、NBRなど)、熱可塑性ブロックコポリマー、ポリウレタン、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミド、ポリビニル−ピロリドン及びそのコポリマー、セルロースエーテル及びエステル、天然ゴム及びゼラチン、アルギネート、デンプン及びデキストリン、並びに、これらの化学修飾誘導体が挙げられる。本出願において特に好ましいのは、熱可塑性ブロックエラストマーであり、好ましくは、スチレン/ブタジエンブロックコポリマー、例えばSBS及び(SB)n、スチレン/イソプレンブロックコポリマー、例えば、SIS及び(SI)n、スチレン/イソプレン−ブタジエンブロックコポリマー、例えばSIBS、スチレン/エチレン−ブチレンブロックコポリマー、例えばSEBS、並びに、スチレン/エチレン−プロピレンブロックコポリマー、例えばSEPS等のスチレンブロックコポリマーである。
【0033】
51重量%〜99.5重量%、好ましくは65重量%〜95重量%、より好ましくは75重量%〜93重量%の好ましくは室温で液体である可塑剤又は可塑剤の混合物。前記可塑剤の非限定的な例は、鉱油及び植物油並びにこれらの化学修飾誘導体、例えばエポキシ化油及び重合油、液体ポリブテン、液体粘着付与剤、例えば液体ロジン及びロジンエステル、フタレート(phtalates)、シトレート、ホスフェートのようなエステル、液体ポリエステル、モノカルボン(monocarboxilic)脂肪酸(C8〜C22)及びその誘導体、グリコール及びポリグリコールであってよい。親水性ポリマーを用いる場合には、前記可塑剤は水、グリセロール、又は、グリセロールエステルにすることができるのが好ましい。
【0034】
0重量%〜48.5重量%の、軟化点が160℃以下、好ましくは125℃以下、及びより好ましくは100℃以下である粘着付与剤又は粘着付与剤の混合物。前記粘着付与剤の非限定的な例は、ロジン及びロジンエステル、炭化水素樹脂、脂肪族樹脂(apliphatic resin)、テルペン及びテルペン−フェノール樹脂、芳香族及び芳香族修飾樹脂、並びに、合成C5樹脂及びC5〜C9樹脂であってよい。
【0035】
本発明で用いる接着剤は、疎水性ポリマー系のゲル、又は、「オイルゲル」と呼ばれるゲルであるのが好ましい。
【0036】
防腐剤、酸化防止剤、抗UV、色素、無機充填剤、レオロジー変性剤等として当該技術分野において既知の一般的な添加物は、それぞれ最大10重量%の量で含むことができる。
【0037】
本物品
本発明による物品は硬質表面清掃用物品である。本発明の目的上、硬質表面は、家の内側又は外側に存在しており、布地、繊維、又は、アース/ガラスで被覆されておらず、床、壁、ドア、家具、装具などを含む一般的な全ての表面である。硬質表面は、樹脂、ゴム、プラスチック、グレス(gres)、大理石、セラミックス、磁器、石、金属(鋼、アルミニウム)、セメント、レンガ等のほぼあらゆる材料によって作製することができる。より具体的には、本発明で定義する硬質表面という用語は、リノリウム及び樹脂表面を含み、カーペット表面は含まない。ある1つの実施形態では、本発明は、上述の接着剤を含む硬質表面清掃用物品に関する。前記物品は、例えば、本特許出願の「発明の背景」の項で引用した従来技術に記載されているような既知の硬質表面清掃用物品のいずれかにすることができる。
【0038】
前記接着剤は、前記物品の一部分の上にに塗布するか、取り外し可能なカートリッジ又はシートとして組み込むことができる。ある1つの実施形態では、本発明の物品は、手で直接使用できるか、又は、好ましくは、例えば特許出願WO01/62132号の図1及び2に記載されているもののように、シートを一度使用したら廃棄して、新たなものと取り替えられるように、モップのヘッド上に取り付けることができる拭取り布、又はパッド等の使い捨てシートである。あるいは、シートは、シートによって表面を拭取るのを助けることのできる任意の型の用具、例えば、清掃するために表面上で転がすことのできる円筒形の支持体などに取り付ることができる。
【0039】
本発明によるシートは、既に引用済みの特許出願であるプロクター&ギャンブル社(Procter & Gamble)によるWO01/62132号、3M社によるWO03/075735号、及び、S.Cジョンソン社(S.C. Johnson)による米国特許第6550092号で述べられているもの(これらに限定されない)のような、清掃シート用として既知のあらゆるデザイン及び構造に従って作製することができる。したがってシートには、基材として、織布又はニット生地、不織布、布地の積層体、及び、ポリマーフィルム、並びにこれらの混合物の形状をしている天然又は合成繊維性材料のいずれかが含まれている。前記基材を作製する方法も当該技術分野において既知であり、本明細書では詳しく記載しない。前記基材は不織布であるのが好ましい。
【0040】
一般に、使用の際に、本発明の物品に含まれる接着剤は直接硬質表面に接触しない、又は、少なくとも広範囲では接触せず、あるいは、前記物品が硬質表面に粘着できて滑らないようになっているのが好ましい。実際のところ、接着剤を物品の凹部領域に存在させて、除去する必要のある粒子及び毛髪が接着剤と接触できるようにするとともに、清掃して粒子及び毛髪を捕捉する表面上を前記物品が迅速に通過するようにすることが好ましい。この効果を得るためには、接着剤のレオロジー特性がいかに重要であるかは当業者であれば理解しており、実際に接着剤は、粒子又は毛髪表面の第2の部分、及びごく一部のみと接触し得るため、粒子又は毛髪に粘着して粒子又は毛髪を十分迅速に捕捉するためには、接着剤には上述のような適切な「柔軟性」特性を持たせることが非常に重要である。
【0041】
本発明の実施形態では、前記物品はシートであり、前記シートには任意の形状を持たせることができ、接着剤は、清掃する表面とわずかに接触するか、全く接触しない。ある1つの実施形態では、本発明の物品は、谷部と頂点から成る三次元構造を有するシートであり、接着剤は谷部のみに存在している。別の実施形態では、本発明の物品は、2つの層の間に挟まれている接着剤層を備えている多層シートであり、前記層の1つは開放構造体である。前記接着剤を1つのシート層の表面上に均一に塗布してよいし、別個の領域に塗布してもよい。当該技術分野において既知の任意の好適な方法、例えば、スプレー、ブローイング、スロットコーティングなどによって接着剤を塗布してよい。好ましい方法は、ノードソン社(Nordson)製のスパイログルーヘッド(Spyro Glue Heads)、又は、ダイナテック社(Dynatech)製のITWダイナファイバー(Dynafiber)のような装置を用いるブローイングである。前記接着剤は、0.5gsm以上、好ましくは2〜20gsm、より好ましくは5〜15gsmのアドオンレベルで塗布されてよい。開放構造を有する層は、例えば有孔布地層にすることができる。前記布地層の一例は有孔不織布層である。前記孔には0.5mm〜8mmの開口部、又は0.19mm2〜50mm2の開口領域があるのが好ましい。前記孔は、2〜25mmの間隔で隔てられているのが好ましい。より好ましい有孔不織布層は、丸い円錐状の突出部を備えている不織布層である。前記突出部は、シートの他の層と向かい合わせにしてよいが、清掃する表面と向かい合うように対向方向にするのが好ましい。最も好ましい不織布層は、非整形又は孔様構造を有する不織布である。孔様構造は、非整形孔を貫通する繊維を呈している。これらの貫通繊維は接着剤を保持することができ、清掃する表面の近くに配置すると、毛髪捕捉量を向上させるのに効果的である。有孔不織布又は突出物を備えている不織布の作製プロセスは、当該技術分野において既知であり、さらなる記載をする必要はない。円錐形の突出部を備えている不織布を使用する場合、接着剤は突出部の内部及び突出部の頂点、又はその近辺に塗布するのが好ましい。開口構造層の別の例は、ポリマー網目である。好適なポリマー網目は、米国特許第4,636,419号に詳細に記載されている。それらは、ポリエチレン又はポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリオレフィンのコポリマー、ポリ(ブチレンテレフタレート)(terephtalat)、ポリエチレンテレフタレート(terephtalat)、ナイロン6、ナイロン66などから誘導することができる。使用する際、ポリマー網目は、清掃する表面に接触し、接着剤が表面に直接接触するのを防ぐ。表面を清掃する際、開口構造層は表面に接着剤が直接接触するのを防ぎながら、毛髪は孔を貫通し、接着剤に捕えられて定位置に固定される。
【0042】
別の実施形態では、本発明の物品はシートであり、接着剤の層は、使用の際に接着剤が、清掃する表面に接触するのを防ぐのに十分弾力的である非常に軽い繊維層に被覆されており、前記繊維層の繊維間の距離は、粒子及び毛髪が接着剤に到達し、その中に捕らえられるほど十分に長い。別の実施形態では、本発明の物品は、厚みが不均一であるとともに、少なくとも2つの隆起部及び凹部を備えているシートであり、前記シートを硬質表面上に配置した時に隆起部のみが前記表面に接触するように、接着剤は凹部上に塗布されている。
【0043】
代替的な実施形態では、本発明の物品は、パンくずのような粒子を除去するためのブラシであり、前記ブラシには、硬質表面から粒子を捕捉する手段と、前記粒子を前記物品の内部区画に収集する手段が備わっており、前記粒子を捕捉して保持できるように、上述の接着剤が塗布(好ましくは使い捨てシートの形態で)されている。この実施形態では、接着剤は、使い終わった際に、捕捉した粒子と共に廃棄することができる取り外し可能なカートリッジ又はシートであることが好ましい。
【0044】
全ての実施形態における本発明の物品には、所望に応じて、清掃ローションを含むこともできる。シートである場合、そのシートには、例えばワックス、溶媒、又は、水系溶液のような清掃ローションを浸透させることができる。清掃ローションが存在する場合、清掃ローションには界面活性剤が含まれているのが好ましい。顕著に、本発明で用いる接着剤は、そのレオロジー特性のために、接着剤表面の粘着性を低下させる清掃ローションの存在の下でも、粒子を保持することができる。
【0045】
言及した実施形態は、本開発によって実現可能な多くの物品のわずか一部に過ぎず、一般的な接着剤を用いる従来技術の物品に本明細書に記載したような接着剤を組み込むことで、従来技術から他の実現可能な実施形態を簡単に得られることは明らかである。例えば、スティック、ほうき、ロール、ハンドルを備えているか、又は、備えていない固体支持体のような任意の既知の清掃用具に、本発明による物品を取り付けることによって、あるいは、使い捨てのものよりもむしろ耐久性のある物体として物品を作製することによって、本発明から逸脱することなく、多くの変更及び改変を行ってもよい。
【実施例】
【0046】
乾燥接着拭取り布
本発明による接着拭取り布は、イスラエル、ホロン(Holon)のアブゴル社(Avgol Corporation)から入手可能で、重量が1平方メートル当たり20グラムである市販のスパンボンドポリプロピレン不織布ウェブを使用して作成した。我々による米国特許第6,881,471号に記載されているようなエンボス加工及び接着剤プリントプロセスによって、接着剤を不織布の凹部領域に塗布した。前記特許の図3を参照しながら述べると、基材を雄ロール15及び雌ロール16の間でエンボス加工した。前記ロールを1〜1.5mm(0.04〜0.06インチ)間で嵌合した。雌ロール15との接触及び位置合わせを維持させながら、エンボス化済みの基材を接着剤転移ニップに向かって回転させた。接着剤転移ニップ17は、0.013mm(0.0005インチ)のFEP剥離コーティング及び位置合わせ済みのエンボスパターンを備えている第2の雌ロールであり、雄パターンロール(role)と0.4mm(0.016インチ)嵌合させた。
【0047】
スロットダイ22を介して、接着剤を第1の接着剤塗布計測ロールの表面上に押し出した。接着剤及びスロットダイの双方の塗布温度を130℃に設定した。接着剤を計測ロール22に通し、接着剤転移ニップ17のランド領域に転移させた。最後の計測ロール22とエンボスロール17との相互作用を制御して、接着剤をランド間の凹部又はポケットの中に押し込むことなく、接着剤を第1のエンボスロール17のランドへ確実に塗布させるようにした。1平方メートル当たり2グラムの重量で、接着剤を第2の雌ロールに塗布した。続いて、結合した接着剤/基材を、ニップロール被覆ゴムでプレスした。
【0048】
塗布した接着剤は、ソフトゲル(Softgel)555−8819の商標名で、ナショナルスターチ社(National Starch)によって提供されているホットメルトである。この接着材料の0.1rad/s及び25℃におけるG’は2,700Paである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接着剤を含む硬質表面清掃用物品であって、
a.25℃、0.1rad/sで測定された前記接着剤の弾性率G’25が、15,000Pa未満、好ましくは10,000Pa未満、最も好ましくは5,000Pa未満であり、
b.0.1〜100rad/sの間で測定された前記接着剤の弾性率の向上率ΔG’25が100%超、好ましくは130%超、より好ましくは150%超である、硬質表面清掃用物品。
【請求項2】
請求項1に記載の硬質表面清掃用物品であって、前記接着剤のクロスオーバー周波数が1,000rad/s未満、好ましくは700rad/s未満、最も好ましくは500rad/s未満である、硬質表面清掃用物品。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の硬質表面清掃用物品であって、前記接着剤がホットメルト接着剤である、硬質表面清掃用物品。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載の硬質表面清掃用物品であって、前記接着剤がオイルゲルである、硬質表面清掃用物品。
【請求項5】
前記接着剤が、0.5重量%〜49重量%、好ましくは5重量%〜40重量%、より好ましくは7重量%〜35重量%のポリマー又はポリマーの混合物と、51重量%〜99.5重量%、好ましくは65重量%〜95重量%、より好ましくは75重量%〜93%重量の可塑剤又は可塑剤の混合物とを含む、請求項1〜4のいずれかに記載の硬質表面清掃用物品。
【請求項6】
前記物品が、シート、拭取り布、又はパッドである、請求項1〜5のいずれかに記載の硬質表面清掃用物品。
【請求項7】
前記接着剤が、前記シート、拭取り布、又はパッドの片面に塗布されており、前記シート、拭取り布、又はパッドの、接着剤が塗布されている前記側面に、開放構造を有する層、好ましくは有孔又は有孔様の不織布層が付けられている、請求項6に記載の硬質表面清掃用物品。
【請求項8】
硬質表面から粒子及び毛髪を除去し、前記表面上に、接着剤を含む物品を通過させる工程を含む方法であって
a.25℃、0.1rad/sで測定された前記接着剤の弾性率G’25が、15000Pa未満、好ましくは10,000Pa未満、最も好ましくは5,000Pa未満であり、
b.0.1〜100rad/sの間で測定された前記接着剤の弾性率の向上率ΔG’25が100%超、好ましくは130%超、より好ましくは150%超である、
方法。
【請求項9】
接着剤の使用であって、
a.25℃、0.1rad/sで測定された前記接着剤の弾性率G’25が、15,000Pa未満、好ましくは10,000Pa未満、最も好ましくは5,000Pa未満であり、
b.0.1〜100rad/sの間で測定された前記接着剤の弾性率の向上率ΔG’25が100%超、好ましくは130%超、より好ましくは150%超である、
接着剤の使用。

【公表番号】特表2009−516530(P2009−516530A)
【公表日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−525171(P2008−525171)
【出願日】平成18年8月3日(2006.8.3)
【国際出願番号】PCT/US2006/030179
【国際公開番号】WO2007/019201
【国際公開日】平成19年2月15日(2007.2.15)
【出願人】(590005058)ザ プロクター アンド ギャンブル カンパニー (2,280)
【Fターム(参考)】