説明

接着剤塗布設備

【課題】省エネルギー化と省スペース化を実現するとともに接着剤塗布におけるワーク処理数を向上させる。
【解決手段】 ワーク搬送装置6はワーク保持爪11A,11Bを一対備え、その一対のワーク保持爪11A,11Bがワーク供給排出部2とワーク支持部4の間を一体に往復移動して、一往復のうち、ワーク供給排出部2からワーク支持部4に向かう往路で、一方のワーク保持爪11Aが内筒1をワーク支持部4に搬送供給し、ワーク支持部4からワーク供給排出部2に向かう復路で、他方のワーク保持爪11Bが接着剤塗布済みの内筒1をワーク供給排出部2に戻し搬送供給する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、
ワーク供給排出部と、
ワーク支持部に支持されたワークに接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
前記ワーク供給排出部と前記ワーク支持部の間を往復移動するワーク搬送装置とを備え、
前記ワーク搬送装置は、前記ワーク供給排出部から前記ワークをワーク保持爪で取り出して前記ワーク支持部に搬送供給し、前記ワーク支持部から接着剤塗布済みのワークを前記ワーク保持爪で取り出して前記ワーク供給排出部に戻し搬送する接着剤塗布設備に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴムで被膜される機械部品であるワークはゴムとの接着性を良好にするためにその表面に接着剤が塗布される。接着剤の塗布はスプレーによるものや、ブラシによるもの、浸漬によるものなど各種の方法があるが、下記特許文献1に示すように、いずれの方法においても塗布前・塗布後のワーク搬送をそれぞれ別の動力源を持ち別々の動作で搬送させている。
【特許文献1】特開平05−269415
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記従来技術の構造によれば、塗布前・塗布後のワーク搬送を、それぞれに動力源を持ち、別々の動作で搬送させていることになり、動力源が複数個必要になってコストが高くなる。
【0004】
また、接着剤塗布装置の配置スペースに加えて2個のワーク搬送装置用のスペースが必要になり、そのために、接着剤塗布設備全体の配置スペースが大きくなるという問題があった。
さらに、塗布前のワークを搬送する時間と塗布後のワークを搬送する時間が別々に必要であるため、単位時間当たりの接着剤を塗布するワーク処理数を上げるこということが難しいという問題もあった。
【0005】
本発明は上記実状に鑑みて成されたもので、その目的は、省エネルギー化と省スペース化を実現するとともに接着剤塗布における単位時間当たりのワーク処理数を向上させた接着剤塗布設備を提供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明による構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
ワーク供給排出部と、
ワーク支持部に支持されたワークに接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
前記ワーク供給排出部と前記ワーク支持部の間を往復移動するワーク搬送装置とを備え、
前記ワーク搬送装置は、前記ワーク供給排出部から前記ワークをワーク保持爪で取り出して前記ワーク支持部に搬送供給し、前記ワーク支持部から接着剤塗布済みのワークを前記ワーク保持爪で取り出して前記ワーク供給排出部に戻し搬送する接着剤塗布設備であって、
前記ワーク搬送装置は前記ワーク保持爪を一対備え、
前記一対のワーク保持爪が前記ワーク供給排出部とワーク支持部の間を一体に往復移動して、一往復のうち、前記ワーク供給排出部から前記ワーク支持部に向かう往路で、一方のワーク保持爪が前記ワークを前記ワーク支持部に搬送供給し、復路で、他方のワーク保持爪が接着剤塗布済みの前記ワークを前記ワーク供給排出部に戻し搬送供給する。
【0007】
[作用・効果]
上記の構成により、ワーク搬送装置の一対のワーク保持爪が、ワーク供給排出部とワーク支持部の間を一体に往復移動する。
そして、ワーク供給排出部とワーク支持部の間の一往復のうち、往路で一方のワーク保持爪がワークをワーク支持部に搬送供給し、復路で他方のワーク保持爪が接着剤塗布済みのワークをワーク供給排出部に戻し搬送供給する。
【0008】
これにより、ワーク支持部での接着剤塗布前のワークの供給作動と、接着剤塗布済みワークの取出し搬送作動とを一台のワーク搬送装置により、ワーク供給排出部とワーク支持部の間の一往復で行うことができる。
その結果、省エネルギー化と省スペース化を実現できるとともにワーク処理数を向上させることができる。
【0009】
請求項2の発明による構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項1の発明による構成において、
前記ワーク支持部は、
1個のワークを支持する支持具を一対備えた回転テーブルと、
前記回転テーブルを前記回転テーブルの軸芯周りに回転自在に支持する基台と、
一方の支持具と他方の支持具が接着剤の塗布位置と非塗布位置に交互に位置するように、前記回転テーブルを前記軸芯周りに設定角度回転させる回転駆動部とを備え、
前記接着剤塗布装置は、
前記一方の支持具が前記ワークを支持して前記塗布位置に位置し、他方の支持具がワークを支持することなく前記非塗布位置に位置している状態で、前記塗布位置のワークに接着剤を塗布し、
前記回転駆動部は、
前記接着剤の塗布が完了すると、前記回転テーブルを設定角度回転させて、前記接着剤の塗布済みのワークを支持している一方の支持具を前記非塗布位置に、前記ワークを支持していない他方の支持具を前記塗布位置に位置させ、
前記ワーク搬送装置は、
前記ワーク供給排出部から一方のワーク保持爪で接着剤塗布前のワークを取り出して保持し、かつ、他方のワーク保持爪で前記ワークを保持していない状態で、前記接着剤塗布前のワークを前記ワーク支持部に搬送して、前記一方のワーク保持爪で前記塗布位置の前記他方の支持具にワークを供給して支持させるとともに、前記他方のワーク保持爪で、前記非塗布位置の接着剤塗布済みのワークを前記一方の支持具から取り出して、前記ワーク供給排出部に戻し搬送供給する。
【0010】
[作用・効果]
請求項1の構成による上記の作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏することができる。
接着剤塗布装置は、一方の支持具がワークを支持して前記塗布位置に位置し、他方の支持具がワークを支持することなく前記非塗布位置に位置している状態で、前記塗布位置のワークに接着剤を塗布する。
【0011】
前記回転駆動部は、接着剤の塗布が完了すると、回転テーブルを設定角度回転させて、接着剤の塗布済みのワークを支持している一方の支持具を前記非塗布位置に、ワークを支持していない他方の支持具を前記塗布位置に位置させる。
【0012】
前記ワーク搬送装置は、ワーク供給排出部から一方のワーク保持爪で接着剤塗布前のワークを取り出して保持し、かつ、他方のワーク保持爪で前記ワークを保持していない状態で、接着剤塗布前のワークをワーク支持部に搬送して、一方のワーク保持爪で前記塗布位置の前記他方の支持具にワークを供給して支持させるとともに、他方のワーク保持爪で、前記非塗布位置の接着剤塗布済みのワークを前記一方の支持具から取り出して、ワーク供給排出部に戻し搬送供給する。
【0013】
これにより、ワーク支持部での接着剤塗布前のワークの供給作動と、接着剤塗布済みワークの取出し搬送作動とを一台のワーク搬送装置により、ワーク供給排出部とワーク支持部の間の一往復で行うことができる。
このように作動するから、ワーク搬送装置の構造を複雑化することなく、簡素な構造で確実に作動させることができる。
【0014】
請求項3の発明による構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項2の発明による構成において、
前記一対の支持具を上方から覆うカバーを設け、
前記一対の支持具を各別に昇降させる一対の昇降機構を設け、
前記カバーに前記支持具を通過させる貫通孔を形成し、
前記昇降機構により、前記支持具を前記カバーの貫通孔を通過させて前記カバーから上方に突出させた突出状態と、前記カバー内に引退させた引退状態とに切換え自在に構成し、
前記塗布位置の支持具が前記突出状態になり、前記非塗布位置の前記支持具が前記引退状態になった状態で、前記接着剤塗布装置が、前記塗布位置の支持具に支持されたワークに接着剤を塗布する。
【0015】
[作用・効果]
請求項2の構成による上記の作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏することができる。
前記塗布位置の支持具が前記突出状態になり、前記非塗布位置の前記支持具が前記引退状態になった状態で、前記接着剤塗布装置が、前記塗布位置の支持具に支持されたワークに接着剤を塗布するから、非塗布位置にある支持具に接着剤が付着することを防止することができる。
【0016】
従って、非塗布位置の支持具に付着した接着剤によって塗布前のワークが支持具に接着されることを防止でき、ワーク保持爪でワークを支持具から取り出しにくくなることを回避することができて、ワーク保持爪を円滑に作動させることができる。
【0017】
請求項4の発明による構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項2又は3の発明による構成において、
前記接着剤塗布装置を、前記ワークに接着剤を吹き付けるスプレー式に構成し、前記塗布位置の支持具を前記支持具の軸芯周りに回転させる回転機構を設け、
前記塗布位置の支持具を前記軸芯周りに回転させながら接着剤を前記ワークに吹き付ける。
【0018】
[作用・効果]
請求項2又は3の構成による上記の作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏することができる。
接着剤塗布位置の支持具をその軸芯周りに回転させながら、スプレー式の接着剤塗布装置でワークに接着剤を吹き付けることで、ワークの外周面に均一に接着剤を塗布しやすくなる。
【0019】
請求項5の発明による構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項1〜4のいずれか一つの発明による構成において、
前記ワークは、外周面に接着剤を塗布される筒状の部材であり、
前記ワーク保持爪は、前記ワークの内周面に圧接及び圧接解除自在に構成され、
前記塗布位置側に位置した前記ワーク保持爪が、前記支持具に前記ワークを上方から外挿させて、前記支持具に前記ワークを支持させる。
【0020】
[作用・効果]
請求項1〜4のいずれか一つによる上記の作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏することができる。
ワーク保持爪はワーク内周面に圧接及び圧接解除させることでワークを保持及び保持解除するから、接着剤が塗布されるワーク外周面にワーク保持爪を接触させることなくワーク保持爪でワークを保持して搬送することができ、外周面に形成された接着剤層を傷つけることなく搬送することができる。
【0021】
請求項6の発明による構成・作用・効果は次のとおりである。
[構成]
請求項1〜5のいずれか一つの発明による構成において、
前記ワーク搬送装置の一対のワーク保持爪を複数対設けるとともに、前記一対の支持具を前記複数と同数の複数対設けてある。
【0022】
[作用・効果]
請求項1〜5のいずれか一つの構成による上記の作用・効果に加えて、次の作用・効果を奏することができる。
ワーク搬送装置の一対のワーク保持爪を複数対に構成したことで、一度に接着剤を塗布するワークの数を増やすことができ、ワークの処理数を増やすことができる。これにより、生産性を向上させることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、
省エネルギー化と省スペース化を実現するとともに接着剤塗布における単位時間当たりのワーク処理数を向上させた接着剤塗布設備を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための最良の形態を図面に基づいて説明する。
図3に、筒状の部材である内筒1(ワークに相当)を示してある。この内筒1は、外筒との間にゴム状弾性体を加硫成形されて、外筒及びゴム状弾性体と共に自動車用の防振装置を構成する。
内筒1の軸芯方向中間部には両端部よりも大径の膨出部1Aを形成してある。ゴムで被膜される内筒1はゴム状弾性体との接着性を良くするためにその外周面の全体に下記の接着剤塗布設備において接着剤を塗布される。
【0025】
<接着剤塗布設備の概略構造>
図1〜図5に示すように、接着剤塗布設備は、内筒1の供給と排出を行う機構であるワーク供給排出部2と、内筒1を支持するワーク支持部4と、ワーク支持部4に支持された内筒1に接着剤を塗布する接着剤塗布装置5(図2参照)と、ワーク供給排出部2とワーク支持部4の間を横向き姿勢の第1エアーシリンダ29の駆動により水平方向Aに往復移動するワーク搬送装置6とを備えている。
【0026】
前記ワーク供給排出部2は、内筒1を供給するワーク供給部と、内筒1を排出するワーク排出部とから成る。ワーク供給排出部2のワーク供給部、ワーク排出部は、接着剤塗布前の内筒1、接着剤塗布済み内筒1を搬送するそれぞれのコンベアや、それぞれのワーク載置台などで構成されている。
【0027】
[ワーク搬送装置6の構造]
図1,図2に示すように、一対の上側の第2エアーシリンダ30を介して前記第1エアーシリンダ29を水平方向に沿う装置フレーム9に吊り下げ支持させ、下側の第2エアーシリンダ10を介してワーク保持体8を第1エアーシリンダ29に吊り下げ支持させてある。
この構造により、ワーク保持体8を第1エアーシリンダ29の駆動でワーク供給排出部2とワーク支持部4の間を往復移動させるとともに、上側の第2エアーシリンダ30と下側の第2エアーシリンダ10の駆動でワーク保持体8を昇降させるようにしてある。
【0028】
前記ワーク保持体8には、下方に向けて内筒1の内周面1B(図3参照)に圧接及び圧接解除自在な複数のワーク保持爪11A,11Bを設けてあり、上記のように、上側の第2エアーシリンダ30と下側の第2エアーシリンダ10とでワーク保持爪11A,11Bの位置を、上側位置12(図2参照)と下側位置13(図2参照)とに切換えるようになっている。
【0029】
前記ワーク保持爪11A,11Bはワーク保持爪用の駆動部により開閉駆動され、前記駆動部による開き駆動で内筒1の内周面1Bに圧接して内筒1を保持し、閉じ駆動で前記圧接を解除する。
図1,図2に示すように、ワーク保持爪11A,11Bとして、ワーク支持部4の塗布位置に対応する2個のワーク保持爪11Aと、非塗布位置に対応する2個のワーク保持爪11Bとを設けてある。
【0030】
前記塗布位置に対応する一方のワーク保持爪11Aと、非塗布位置に対応する一方のワーク保持爪11Bとで、特許請求の範囲における一対のワーク保持爪11A,11Bを構成している。つまり、本実施形態では前記一対のワーク保持爪11A,11Bを複数対(2対)設けた構造を例に挙げて説明している(ワーク保持爪11A,11Bを一対だけ設けた構造であっても本発明を適用することができる)。
【0031】
このワーク搬送装置6は、ワーク供給排出部2から内筒1をワーク保持爪11Aで取り出してワーク支持部4に搬送供給し、ワーク支持部4から接着剤塗布済みの内筒1をワーク保持爪11Bで取り出してワーク供給排出部2に戻し搬送する。ワーク搬送装置6の内筒1の搬送作動については後で詳しく説明する。
【0032】
[ワーク支持部4の構造]
図3に示すように、ワーク支持部4は、各1個の縦姿勢の内筒1を支持する支持ピン14(ワーク支持具に相当)を2対、合計4個備えた回転テーブル15と、回転テーブル15をその第1軸芯O周りに回転自在に支持する基台Kと、基台Kに取付けられ、回転テーブル15を第1軸芯O周りに設定角度回転させるロータリアクチュエータ20(回転駆動部に相当)とを備えている。
【0033】
図5に示すように前記基台Kは、ブラケット18の上板に4本の支柱19を立設して構成してあり、前記ロータリアクチュエータ20は支柱19の上端部に設けた支持板に固定され、そのロータリアクチュエータ20の可動部に回転テーブル15を固定してある。
【0034】
ロータリアクチュエータ20は、各対の支持ピン14のうちの一方の支持ピン14と他方の支持ピン14が接着剤の塗布位置と非塗布位置に交互に位置するように、回転テーブル15を第1軸芯O周りに180°(設定角度に相当)回転させる。回転テーブル15は180°回転した後、次に同じ方向に180°回転するのではなく、一方方向に180°回転した後は、逆方向に180°回転して元の位置に戻る。
【0035】
図3に示すように、前記ワーク支持部4に、各支持ピン14をその支持ピン14の第2軸芯Q周りに回転させる回転機構Rと、各支持ピン14を回転テーブル15に対して昇降させる第3エアーシリンダ36と、これらを上方から覆うカバー38とを設けてある。
【0036】
[ワーク支持部4の回転機構Rの構造]
前記回転機構Rについて説明すると、図3,図5に示すように、基台Kに電動モータ23を固定し、電動モータ23の第1回転軸23Aを、ロータリアクチュエータ20内を貫通させ、回転テーブル15内の大径歯車24の駆動軸としてある。
【0037】
回転テーブル15には、テーブル中心部に位置する前記大径歯車24と、この大径歯車24と噛み合う4個の小径歯車25と、小径歯車25の中心から上方に立ち上がる第2回転軸26と、この第2回転軸26を上下一対のベアリング28を介して回転自在に支持する支持体27とを有している。
【0038】
図3,図5に示すように、支持体27の上端部から上方に突出した第2回転軸26にリング32をスプライン嵌合させ、リング32の上部に、縦穴33を有したキャップ34を固定するとともに、キャップ34の上端に縦姿勢の支持ピン14を内嵌固定してある。
【0039】
前記リング32は受体35によってベアリングBを介して第2軸心Q周りに回転自在に支持されており、その受体35と回転テーブル15との間に、支持ピン14を昇降させるための縦形の前記第3エアーシリンダ36(昇降機構に相当)を介在させてある。
【0040】
上記の構造により、電動モータ23が駆動回転すると、大径歯車24、小径歯車25を介して第2回転軸26が各第2軸心Q周りに回転するとともに、リング32及びキャップ34を介して各支持ピン14が第2軸心Q周りに回転する。
【0041】
また、第3エアーシリンダ36を伸張駆動して受体35を上昇させると、リング32が第2回転軸26に対して上昇し、支持ピン14が、カバー38に形成した貫通孔39を通過してカバー38から上方に突出した突出状態になる(図3の左側の支持ピン14参照)。逆に、受体35を下降させると、リング32が第2回転軸26に対して下降し、支持ピン14がカバー38から下方に引退した引退状態になる(図3の右側の支持ピン14参照)。すなわち、第3エアーシリンダ36により、支持ピン14をカバー38の貫通孔39を通過させてカバー38から上方に突出させた突出状態と、カバー38内に引退させた引退状態とに切換え自在に構成してある。
【0042】
前記受体35は回転テーブル15の塗布位置側の一対のリング32に対応する塗布位置側の受体35と、回転テーブル15の非塗布位置側の一対のリング32に対応する非塗布位置側の受体35とに分けて、各受体35に対応する一対の第3エアーシリンダ36(図3参照)によって駆動するようにしてある。この構成により、4個の支持ピン14のうち、塗布位置側の2個の支持ピン14と非塗布位置側の2個の支持ピン14がそれぞれ一組になって昇降する。
【0043】
[接着剤塗布装置5の構造]
図2、図8に示すように、接着剤塗布装置5に、支持ピン14に外挿された2個の内筒1に各別に対向する一対のスプレーガン40を設けて、接着剤塗布装置5を内筒1に接着剤を吹き付けるスプレー式に構成してある。
【0044】
[接着剤塗布設備の動作]
以下、接着剤塗布設備の動作について、図6〜図10を参照して説明する。接着剤塗布設備は、前記上側の第2エアーシリンダ30、下側の第2エアーシリンダ10、第1エアーシリンダ29、第3エアーシリンダ36、電動モータ23等の駆動で次のように作動する。
(1) 図6に示すようにワーク搬送装置のワーク保持爪11A,11Bをワーク供給排出部2の上方に位置させる。
【0045】
その後、上側の第2エアーシリンダ30と下側の第2エアーシリンダ10が伸張駆動して、ワーク保持爪11A,11Bが下側位置まで下降し、ワーク保持爪11Aの駆動部の駆動により、一方の(塗布位置側)のワーク保持爪11Aが内筒1の内周面に圧接する。
【0046】
そして、上側の第2エアーシリンダ30と下側の第2エアーシリンダ10が短縮駆動し、ワーク保持爪11A,11Bがその内筒1を上方に取り出して、図7の2点鎖線で示すように保持する。この状態では他方のワーク保持爪11Bは作動することがなく、内筒1を保持してはいない。そして、第1エアーシリンダ29が駆動してワーク保持体8が、図7の実線に示すようにワーク支持部4の上方位置まで移動し、塗布位置に対応する支持ピン14の上方に内筒1を位置させる。
【0047】
(2) 上側の第2エアーシリンダ30と下側の第2エアーシリンダ10が伸張駆動して、図8に示すように、内筒1が塗布位置の支持ピン14に外挿される。このとき、非塗布位置側の昇降用の第3エアーシリンダ36が短縮駆動して、非塗布位置の2個の支持ピン14がカバー38の下方に引退した状態になる。
この状態で、電動モータ23の回転により塗布位置の内筒1が支持ピン14の第2軸芯Q周りに回転しており、この内筒1に、接着剤塗布装置5のスプレーガン40が接着剤を吹き付けて塗布する。
【0048】
このように接着剤塗布装置5は、一方の支持ピン14が内筒1を支持して前記塗布位置に位置するとともに前記突出状態になり、他方の支持ピン14が内筒1を支持することなく前記非塗布位置に位置するとともに前記引退状態になった状態で、前記塗布位置の内筒1に接着剤を塗布する。
【0049】
これにより、非塗布位置にある支持ピン14に接着剤が付着することを防止することができる。
従って、非塗布位置の支持ピン14に付着した接着剤によって塗布前の内筒1が支持ピン14に接着されることを防止でき、ワーク保持爪11Bで内筒1を支持ピン14から取り出しにくくなることを回避することができて、ワーク保持爪11Bを円滑に作動させることができる。
【0050】
(3) 内筒1に接着剤を塗布している間にワーク搬送装置6は、図8に示すように、ワーク供給排出部2まで移動して新しい内筒1の上に位置し、その新しい内筒1を、上記のように作動して保持爪11Aで保持しておく。
【0051】
(4) 図9に示すように、塗布位置にある内筒1への接着剤の塗布が完了すると、ロータリアクチュエータ20が駆動して回転テーブル15が180°回転し、非塗布位置の支持ピン14と塗布位置の支持ピン14との位置が入れ替わった状態になる。回転テーブル15が180°回転した状態では一方の支持ピン14が非塗布位置に、他方の支持ピン14が塗布位置に位置変更される。
つまり、ロータリアクチュエータ20は、接着剤の塗布が完了すると、回転テーブル15を180°回転させて、接着剤の塗布済みの内筒1を支持している一方の支持ピン14を前記非塗布位置に、内筒1を支持していない他方の支持ピン14を前記塗布位置に位置させる。
【0052】
(5) 図9に示すように、2点鎖線で示す前記ワーク供給排出部2において新しい2個の内筒1を保持しておいた塗布位置側のワーク保持爪11Aが、実線に示すように180゜回転した回転テーブル15の上方に位置する。
【0053】
(6) この状態から図10に示すように、塗布位置の支持ピン14に新しい2個の内筒1を外挿するとともに、非塗布位置の塗布済み内筒1をワーク保持爪11Bで保持し、その保持した塗布済みの内筒1を図10の2点鎖線のようにワーク供給排出部2に搬送して、そのワーク排出部2に載置する。
【0054】
以下、同様の処理を繰り返すことによって、内筒1に接着剤を塗布した後に、ワーク供給排出部2に塗布済み内筒1を戻し搬送することができる。
【0055】
上記のように、本発明の接着剤塗布設備では、一対のワーク保持爪11A,11Bがワーク供給排出部2とワーク支持部4の間を一体に往復移動して、一往復のうち、ワーク供給排出部2からワーク支持部4に向かう往路で、一方のワーク保持爪11Aが内筒1をワーク支持部4に搬送供給し、復路で、他方のワーク保持爪11Bが接着剤塗布済みの内筒1をワーク供給排出部2に戻し搬送供給する。
【0056】
これにより、ワーク支持部4での接着剤塗布前の内筒1の供給作動と、接着剤塗布済み内筒1の取出し搬送作動とを一台のワーク搬送装置6により、ワーク供給排出部2とワーク支持部4の間の一往復で行うことができる。
その結果、省エネルギー化と省スペース化を実現できるとともにワーク処理数を向上させることができる。
【0057】
また、ワーク搬送装置6は、ワーク供給排出部2から一方のワーク保持爪11Aで接着剤塗布前の内筒1を取り出して保持し、かつ、他方のワーク保持爪1Bで内筒1を保持していない状態で、接着剤塗布前の内筒1をワーク支持部4に搬送して、一方のワーク保持爪11Aで前記塗布位置の前記他方の支持ピン14に内筒1を供給して支持させるとともに、他方のワーク保持爪11Bで、前記非塗布位置の接着剤塗布済みの内筒1を前記一方の支持ピン14から取り出して、ワーク供給排出部2に戻し搬送供給する。
【0058】
上記構成の接着液塗布設備の構造によれば、さらに、以下の効果を得ることができる。
(1)一対のワーク保持爪でなく、ワーク保持爪を2対設けているので、塗布位置において一度に塗布される内筒1を2個にすることができる。
この構成によって一対のものに比べて塗布速度を向上させることができる。3対以上の複数対を設けるとともにスプレーガン40もその個数に応じて設けることで、一度に塗布できる内筒1の数をさらに増やすこともできる。
【0059】
(2)塗布位置にある支持ピン14と非塗布位置にある支持ピン14が回転テーブル15の回転によって切換わるのでワーク搬送装置6側で塗布前用の保持爪と塗布済み用の保持爪11の位置を切換える必要がない。したがって塗布前用の保持爪と塗布済み用の保持爪を同時に昇降動作するだけの比較的単純な搬送装置を使用することができる。
【0060】
(3)ロータリアクチュエータ20上に、支持ピン軸芯Q周りに回転させる回転機構と支持ピン14を昇降動作させる昇降機構を設けたので、構成を簡単化できる。
また、4個の支持ピン14を個別に回転させるのではなく、電動モータ23からの回転動力を大径歯車24、小径歯車25を介して各4個の支持ピン軸芯Q周りの回転に分ける構成なので、構成を簡素化できるともに各支持ピン14の回転速度の違いによる接着剤の塗布量の違いをなくすことができる。
【0061】
[別実施形態]
前記実施形態ではワークを自動車に使用する内筒と外筒を備えた防振装置を例にとって説明したが、ワーク保持爪11で保持可能なワークであれば、ワークは筒体に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】接着剤塗布設備の正面図
【図2】接着剤塗布設備の側面図
【図3】ワーク支持部の部分縦断面図
【図4】(a)は図3のD−D線矢視平面図、(b)は図3のE−E矢視図
【図5】接着剤塗布設備の一部切欠き断面図
【図6】接着剤塗布設備の動作を示す図(1)
【図7】接着剤塗布設備の動作を示す図(2)
【図8】接着剤塗布設備の動作を示す図(3)
【図9】接着剤塗布設備の動作を示す図(4)
【図10】接着剤塗布設備の動作を示す図(5)
【符号の説明】
【0063】
1 内筒
1A 膨出部
1B 内周面(内筒の内周面)
2 ワーク供給排出部
4 ワーク支持部
5 接着剤塗布装置
6 ワーク搬送装置
8 ワーク保持体
9 装置フレーム
10 下側の第2エアーシリンダ
11A ワーク保持爪
11B ワーク保持爪
12 上側位置
13 下側位置
14 支持具(支持ピン)
15 回転テーブル
18 ブラケット
19 支柱
20 回転駆動部
(ロータリーアクチュエータ)
23 電動モータ
23A 第1回転軸
24 大径歯車
25 小径歯車
26 第2回転軸
27 支持体
29 第1エアーシリンダ
30 上側の第2エアーシリンダ
32 リング
33 縦穴
34 キャップ
35 受け体
36 昇降機構(第3エアーシリンダ)
38 カバー
39 貫通孔
40 スプレーガン
A 水平方向
O 回転テーブルの軸心(第1軸心)
Q 第2軸心
R 回転機構
K 基台
Z 上下方向
B ベアリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ワーク供給排出部と、
ワーク支持部に支持されたワークに接着剤を塗布する接着剤塗布装置と、
前記ワーク供給排出部と前記ワーク支持部の間を往復移動するワーク搬送装置とを備え、
前記ワーク搬送装置は、前記ワーク供給排出部から前記ワークをワーク保持爪で取り出して前記ワーク支持部に搬送供給し、前記ワーク支持部から接着剤塗布済みのワークを前記ワーク保持爪で取り出して前記ワーク供給排出部に戻し搬送する接着剤塗布設備であって、
前記ワーク搬送装置は前記ワーク保持爪を一対備え、
前記一対のワーク保持爪が前記ワーク供給排出部とワーク支持部の間を一体に往復移動して、一往復のうち、前記ワーク供給排出部から前記ワーク支持部に向かう往路で、一方のワーク保持爪が前記ワークを前記ワーク支持部に搬送供給し、復路で、他方のワーク保持爪が接着剤塗布済みの前記ワークを前記ワーク供給排出部に戻し搬送供給する接着剤塗布設備。
【請求項2】
前記ワーク支持部は、
1個のワークを支持する支持具を一対備えた回転テーブルと、
前記回転テーブルを前記回転テーブルの軸芯周りに回転自在に支持する基台と、
一方の支持具と他方の支持具が接着剤の塗布位置と非塗布位置に交互に位置するように、前記回転テーブルを前記軸芯周りに設定角度回転させる回転駆動部とを備え、
前記接着剤塗布装置は、
前記一方の支持具が前記ワークを支持して前記塗布位置に位置し、他方の支持具がワークを支持することなく前記非塗布位置に位置している状態で、前記塗布位置のワークに接着剤を塗布し、
前記回転駆動部は、
前記接着剤の塗布が完了すると、前記回転テーブルを設定角度回転させて、前記接着剤の塗布済みのワークを支持している一方の支持具を前記非塗布位置に、前記ワークを支持していない他方の支持具を前記塗布位置に位置させ、
前記ワーク搬送装置は、
前記ワーク供給排出部から一方のワーク保持爪で接着剤塗布前のワークを取り出して保持し、かつ、他方のワーク保持爪で前記ワークを保持していない状態で、前記接着剤塗布前のワークを前記ワーク支持部に搬送して、前記一方のワーク保持爪で前記塗布位置の前記他方の支持具にワークを供給して支持させるとともに、前記他方のワーク保持爪で、前記非塗布位置の接着剤塗布済みのワークを前記一方の支持具から取り出して、前記ワーク供給排出部に戻し搬送供給する請求項1記載の接着剤塗布設備。
【請求項3】
前記一対の支持具を上方から覆うカバーを設け、
前記一対の支持具を各別に昇降させる一対の昇降機構を設け、
前記カバーに前記支持具を通過させる貫通孔を形成し、
前記昇降機構により、前記支持具を前記カバーの貫通孔を通過させて前記カバーから上方に突出させた突出状態と、前記カバー内に引退させた引退状態とに切換え自在に構成し、
前記塗布位置の支持具が前記突出状態になり、前記非塗布位置の前記支持具が前記引退状態になった状態で、前記接着剤塗布装置が、前記塗布位置の支持具に支持されたワークに接着剤を塗布する請求項2記載の接着剤塗布設備。
【請求項4】
前記接着剤塗布装置を、前記ワークに接着剤を吹き付けるスプレー式に構成し、前記塗布位置の支持具を前記支持具の軸芯周りに回転させる回転機構を設け、
前記塗布位置の支持具を前記軸芯周りに回転させながら接着剤を前記ワークに吹き付ける請求項2又は3記載の接着剤塗布設備。
【請求項5】
前記ワークは、外周面に接着剤を塗布される筒状の部材であり、
前記ワーク保持爪は、前記ワークの内周面に圧接及び圧接解除自在に構成され、
前記塗布位置側に位置した前記ワーク保持爪が、前記支持具に前記ワークを上方から外挿させて、前記支持具に前記ワークを支持させる請求項1〜4のいずれか一つに記載の接着剤塗布設備。
【請求項6】
前記ワーク搬送装置の一対のワーク保持爪を複数対設けるとともに、前記一対の支持具を前記複数と同数の複数対設けてある請求項1〜5のいずれか一つに記載の接着剤塗布設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−82845(P2009−82845A)
【公開日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−257109(P2007−257109)
【出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】