説明

接着剤組成物及び接着方法

【課題】調合後のポットライフが長いため作業性に優れ、短時間で硬化可能なため生産性に優れる接着剤組成物及び接着方法を提供する。
【解決手段】活性水素基を有する化合物、アセチルアセトン、多価イソシアネート化合物を混合して得られることを特徴とする接着剤組成物を用いて、硬化させる際に加熱する。調合後のポットライフが長いため作業性に優れ、圧締時間は同じか僅かな延長で済むため、生産性にも優れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は調合後のポットライフが長いため作業性に優れ、短時間で硬化可能なため生産性に優れる接着剤組成物及び接着方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属パネルとペーパーハニカム等を貼り合わせて複合パネルを製造する際、二液型ウレタン樹脂接着剤が使用されるようになっている。二液型ウレタン樹脂接着剤は硬化性に優れるため、短時間の圧締で実用的な強度が得られるが、調合後のポットライフが短いため、頻繁に調合を行う必要があり、ライントラブルの発生等によってラインが停止した際には、調合した接着剤がライフ切れとなる等の問題があった。
【0003】
接着剤の反応性を低下させれば容易にポットライフを延長できるものの、同時に圧締時間や養生時間も延長してしまうため生産性が低下する問題があり、生産性を重視した場合はポットライフが十分ではない接着剤を使用しなければならなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
特許文献1、2には硬化性に優れる二液型ウレタン接着剤が開示されているが、ポットライフの延長、あるいはポットライフと硬化性の両立については解決されていなかった。
【特許文献1】特開2008−308687号公報
【特許文献2】特開2006−282922号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の課題は、調合後のポットライフが長いため作業性に優れ、短時間で硬化可能なため生産性に優れる接着剤組成物及び接着方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、活性水素基を有する化合物、アセチルアセトン、多価イソシアネート化合物を混合して得られることを特徴とする接着剤組成物である。また、前記接着剤組成物を用いて被着体を接着する方法であって、硬化させる際に加熱することを特徴とする接着方法である。
【発明の効果】
【0007】
本発明の接着剤組成物は調合後のポットライフが長いため、調合の頻度を減らしたり、ラインが停止した際にも接着剤がライフ切れになりにくく、作業性を向上させることができる。また、特に接着剤組成物を硬化させる際に加熱した場合、圧締時間は同じか僅かな延長で済むため、生産性にも優れる。したがって、本発明の接着剤組成物を用いた接着方法は、作業性及び生産性に優れた接着方法となる。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の接着剤組成物における活性水素基を有する化合物は、後述する多価イソシアネート化合物と反応可能な化合物であり、具体的には各種ポリオールが挙げられる。ポリオールの例として、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール等のジオール類、グリセリン、トリメチロールプロパン等のトリオール類、ポリプロピレングリコール等のポリエーテルポリオール、アジピン酸、セバシン酸、テレフタル酸等とジオール類を反応させたポリエステルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ポリブタジエンポリオール、ポリイソプレンポリオールやこれらの水添物等のポリオレフィンポリオール、ひまし油、ひまし油系ポリオール等が挙げられる。
【0009】
多価イソシアネート化合物としては、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(2,4’−MDI)、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート(4,4’−MDI)、ポリメリックジフェニルメタンジイソシアネート(c−MDI)トリレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート等の芳香族多官能イソシアネート類のほか、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート等の脂肪族多官能イソシアネート類等が挙げられる。
【0010】
アセチルアセトンの配合により、活性水素基を有する化合物と多価イソシアネート化合物の反応を遅延させ、接着剤調合後のポットライフを延長させることができる。一方、接着剤組成物の硬化性には顕著な低下はなく、特に接着剤組成物を硬化させる際に加熱した場合、圧締時間は同じか僅かな延長で済む。アセチルアセトンの配合量は、主剤混合物に対して0.01〜0.1重量部とすることが好ましい。
【0011】
本発明の接着剤組成物には前記必須成分の他、各種材料を配合できる。具体的には、1,8−ジアザビシクロ(5,4,0)ウンデセン−7(DBU)や、その塩等の硬化触媒、炭酸カルシウム、硅砂、カオリン、ゼオライト、ベントナイト、クルー、タルク、グラファイト、石綿、炭素繊維、無水ケイ酸、炭酸マグネシウム、酸化チタン、シラスバルーン、ガラスバルーンなどの充填材、希釈剤、粘性調整剤、消泡剤、老化防止剤、脱水剤等が挙げられる。
【0012】
本発明の接着剤組成物は、使用時に前記成分が混合されていればよいが、予め多価イソシアネート化合物以外を混合して二液型接着剤とすれば、使用時には多価イソシアネート化合物のみを混合すればよく、使いやすい。また、本発明の接着剤組成物は化学反応硬化型であるため、被着材に塗布して圧締すれば経時で硬化が進行するが、硬化時に加熱を行うことによって硬化時間を短縮できる。
【0013】
以下、実施例、比較例に基づき本発明をより詳細に説明する。なお、配合比は全て重量を基準とする。ただし、本発明は実施例に何ら限定されるものでない。
【実施例】
【0014】
ひまし油系ポリオールであるTLM(豊国製油社製、商品名)、炭酸カルシウムであるLW350(清水工業社製、商品名)及びS−25(丸尾カルシウム社製、商品名)、ゼオライトであるCA110P(日本化学工業社製、商品名)、硬化触媒であるDBU(サンアプロ社製、商品名)及びSA1(DBUのフェノール塩、サンアプロ社製、商品名)、アセチルアセトンを表1記載の配合にて混合し、各主剤組成物を得た。次いで、各主剤組成物と多価イソシアネート化合物である44V20(住化バイエルウレタン社製、商品名)を、配合比が3:1となるように混合し、各接着剤組成物を得た。各接着剤組成物について、以下の方法で評価を行った。
【0015】
ポットライフ
予め各所定温度に調整した主剤と硬化剤を配合比が3:1となるようポリカップに計量し、混合攪拌した。接着剤組成物を各所定温度雰囲気で静置し、全体がゲル状となるか、部分的にゲル状物が生成するまでの時間を測定した。
セットタイム
接着剤組成物を塗布量200g/m2で鋼板に塗布した。各所定温度に設定した熱盤に接着剤組成物を塗布した鋼板をセットし、スペーサーを用いて圧締することにより、鋼板が熱盤に密着するようにした。接着剤組成物の状態を確認し、糸引きがなくなる時間を測定した。
【0016】
【表1】

【0017】
各実施例においては、参考例1と同等のセットタイムを有しており、ポットライフについては参考例よりも優れている。各比較例は触媒量を減らしたものであり、ポットライフについては参考例よりも優れていたものの、セットタイムが大幅に遅くなっているため不適である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性水素基を有する化合物、アセチルアセトン、多価イソシアネート化合物を混合して得られることを特徴とする接着剤組成物。
【請求項2】
硬化時に加熱されることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
複合パネルの製造に使用されることを特徴とする請求項1または2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
請求項1〜3いずれかに記載の接着剤組成物を用いて被着体を接着する方法であって、硬化させる際に加熱することを特徴とする接着方法。

【公開番号】特開2010−235768(P2010−235768A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−85171(P2009−85171)
【出願日】平成21年3月31日(2009.3.31)
【出願人】(000100698)アイカ工業株式会社 (566)
【Fターム(参考)】