説明

接着剤組成物

【課題】 食品の包装材料の接着剤として、金属箔とプラスチックフィルム間の接着強度を向上させ、かつ長期間その強度を維持できると共にその塗工時に基材に対して濡れが良く平滑な皮膜を与える接着剤組成物を提供すること。
【解決手段】 3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールに由来する官能基を持つ基を分岐して結合した有機ポリオール(イ)と直鎖構造である有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(ハ)と反応させ、更に多塩基酸若しくはその無水物を反応させて得たカルボキシル基を有する多官能有機ポリオール(A)並びに有機ポリイソシアネート化合物(B)を必須成分とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤組成物に関し、より詳細には、耐熱水性、耐油性に優れ、良好な外観を示す各種プラスチックフィルム、金属箔、金属蒸着フィルム等からなるラミネート複合フィルム用のウレタン系接着剤組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば食品、医療品、化粧品等の包装用材料として、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエステル等のプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、アルミ箔等の金属箔をラミネートした多層複合用フィルムが広く使用されている。これらのプラスチックフィルム、金属蒸着フィルム、金属箔等を接着するのに有機ポリオールと有機イソシアネートを組み合せたウレタン系接着剤が知られている。近年、遊離脂肪酸等を含む食品の包装用部材の接着剤として、従来の接着性能を改善したウレタン変性ポリエステル系接着剤が提供されるようになった。
【0003】
上記の部材であるプラスチックフィルムや金属箔等への接着性能を向上するために、例えば、有機ポリオール及び有機イソシアネートを含有する組成物に、リンの酸素酸若しくはその誘導体、エポキシ樹脂及びシランカップリング剤を配合した接着剤、分子末端に2個以上の水酸基を有するポリエステルに無水多価カルボン酸を反応せしめることにより、分子末端に少なくとも1個のカルボキシル基を導入したポリエステルを含む接着剤、有機ポリオール及び有機イソシアネートを含有する組成物に、分子中に少なくとも2個の酸無水物基を有する多塩基酸を配合した接着剤、有機ポリオール及び有機イソシアネートを含有する組成物に、リンの酸素酸若しくはその誘導体を配合した接着剤、有機ポリオールの分子末端にカルボキシル基を導入したものに、オルトリン酸若しくはそのエステル化合物及びシランカップリング剤を配合した接着剤等が提案されている。
【0004】
しかし、上記の提案は、いずれもアルミニウム箔等の金属箔を用いたラミネート積層体において、その金属箔より内容物側(内層側)の耐水性、耐酸性等を改良することを主眼とするものであり、内容物への接着剤成分の抽出量やアルミニウム箔等の金属箔の外層側における接着性、耐水性、耐油性等を改良することを狙いとするものではない。又、従来の接着剤では、レトルトパウチに代表される用途に関しては、アルミニウム箔等の金属箔に対する接着性が十分ではないために、金属箔の外側と内側では異なる接着剤を使用する例が多く、同一の接着剤で加工できることが、経済的な面からも切望されていた。
【0005】
一方、食品の包装用接着剤の分野では、食生活の向上、簡便性という時代の流れに沿って、充填される食品も多種ソ−ス、醤油、食酢、動物性油脂、各種香辛料、アルコール含有物等と、その組み合わせの多様化は止まることを知らない。食品の殺菌温度も100℃(ボイル)、120℃(レトルト)、135℃(ハイレトルト)へと上昇し、高温度における耐水性、耐油性、耐酸性等の厳しい性能がラミネートフィルムに要求されている。又、同時に、レトルトパウチの構成、形状、サイズや内容物が複雑化し、この傾向は今後も益々強まって行くものと思われる。
【0006】
近年、内容物の変質、保護を目的とした加熱殺菌時間の短縮が行われており、効率的に内容物温度を短時間に目的温度に上昇させるため、回転レトルト、スプレーレトルト或いはシャワーレトルトが考案、実施されている。しかし、このような加熱殺菌において、従来の接着剤を用いると、主に業務用で1kgを超えるような大袋で、かつナイロンフィルムを含む4層のフィルムからなる構成において、レトルトの高温殺菌処理を必要とする場合、レトルトの回転中若しくはレトルト後の積み重ね等の作業時、或いは局部的な歪みを受けるスプレーレトルトやシャワーレトルトの作業時に、不本意な折り曲げによる部分的な外観不良やナイロンフィルムと金属箔との間での剥離等が起こり問題になることが多い。又、これらの対策のために接着剤の高分子量化やガラス転移温度を上昇させることによる耐熱性の試みられているが、一般的には高分子量化やガラス転移温度を上昇させると、その接着剤溶液の粘度が上昇し、接着剤溶液を塗布するときに基材に対する流れが低下したり、平滑に塗布されないことがあり問題になっている。
【0007】
【特許文献1】特開平5−51574号公報
【特許文献2】特開2002−3813号公報
【特許文献3】特開2003−171644号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、金属箔とプラスチックフィルム間の接着強度を向上させ、食品の包装材料として、レトルト後の不本意な折り曲げが原因の外観不良を防止でき、酸性度の高い食品や油性食品を充填した場合においても、経時的な接着強度の低下やピンホールの発生がなく、長期にわたって強い接着強度を維持できると共にその塗工時に基材に対して濡れが良く、平滑な皮膜を与える接着剤組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記課題を解決するために種々検討した結果、分岐構造を持つ多官能基を有する有機ポリオールと直鎖構造である有機ポリオールとを有機ポリイソシアネート化合物、更に多塩基酸若しくはその無水物と反応させて得たカルボキシル基を有する多官能有機ポリオール並びに有機ポリイソシアネート化合物を必須成分とする接着剤組成物組成物が本発明の目的を達成し得ることを見出だし、本発明に到達した。
【0010】
すなわち、本発明は、3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールに由来する官能基を持つ基を分岐して結合した有機ポリオール(イ)と実質的に直鎖構造である有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(ハ)を介して反応させ、次いで多塩基酸若しくはその無水物と反応させることにより得られるその分子内にカルボキシル基を有する多官能有機ポリオール(A)並びに有機ポリイソシアネート化合物(B)を必須成分とする接着剤組成物を要旨とする。
【0011】
又、本発明の組成物は、上記有機ポリオール(イ)が、3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールその分子中に10モル%以下含有するものであることを特徴とする。
又、本発明の組成物は、上記有機ポリオール(イ)と上記有機ポリオール(ロ)とを、該有機ポリオール(イ)が98〜2質量%、該有機ポリオール(ロ)が2〜98質量%の比率で反応させることを特徴とする。
又、本発明の組成物は、上記有機ポリオール(イ)は、ガラス転移温度が−20℃〜40℃未満のものであり、上記有機ポリオール(ロ)は、ガラス転移温度が40℃〜100℃のものであることを特徴とする。
又、本発明の組成物は、更にシランカップリング剤及び/又はリンの酸素酸若しくはその誘導体を必須成分とすることを特徴とする。
【0012】
更に、本発明は、上記接着剤組成物を成分する食品包装材のラミネート用接着剤を要旨とする。
【0013】
更に、本発明は、上記ラミネート用接着剤により部材を接合してなる食品包装用積層体を要旨とする。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物は、例えばアルミニウムのような金属箔と、ポリエステル、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルムの間で極めて優れた接着力、耐熱水性を示し、包装材に食品を充填した状態で、例え120℃以上でレトルト殺菌処理をした後においても金属箔とプラスチックフィルムと間が剥離することなく、食品の長期保存安定性が良好な包装材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明では、3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールに由来する官能基を持つ基を分岐して結合した有機ポリオール(イ)及び実質的に直鎖構造である有機ポリオール(ロ)が用いられる。これら有機ポリオール(イ)及び有機ポリオール(ロ)の骨格は、下記有機ポリオール(以下、有機ポリオール(C)という。)からなる。
【0016】
有機ポリオール(C)としては、1分子中の官能基数が約2〜6、好ましくは約2〜4で、数平均分子量が約500〜100,000、好ましくは1,000〜30,000の化合物が挙げられる。更に詳しくは、上記の官能基数と数平均分子量を有するポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリウレタンポリオール、ポリエステルアミドポリオール、アクリルポリオール、メタクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール又はそれらの混合物が挙げられる。なお、以下、アクリル及び/又はメタクリルを(メタ)アクリルと記載する。
【0017】
ポリエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール等のジオール類若しくはそれらの混合物とを反応させて得られるポリエステルポリオール或いはポリカプロラクトン、ポリバレロラクトン、ポリ(β−メチル−γ−バレロラクトン)等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0018】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を、例えば、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリン等の低分量ポリオールを開始剤として重合して得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。
【0019】
ポリエーテルエステルポリオールとしては、例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸等の二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、上記ポリエーテルポリオールを反応させて得られるポリエーテルエステルポリオールが挙げられる。
【0020】
ポリウレタンポリオールとしては、1分子中にウレタン結合を有するポリオールであり、例えば、数平均分子量200〜20,000のポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール等と有機ポリイソシアネートとをNCO/OH比が1当量未満、好ましくは0.9当量以下で反応させて得られるものが挙げられる。用い得る有機ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、1,2−プロピレンジイソシアネート、1,2−ブチレンジイソシアネート、2,3−ブチレンジイソシアネート、1,3−ブチレンジイソシアネート、2,4,4−又は2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、2,6−ジイソシアネートメチルカプロエート等の脂肪族ジイソシアネート、1,4−シクロヘキサンジイソシアネート、1,3−シクロヘキサンジイソシアネート、3−イソシアネートメチル−3,5,5−トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、4,4′−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、メチル2,4−シクロヘキサンジイソシアネート、メチル2,6−シクロヘキサンジイソシアネート、1,4−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,3−ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の脂環式ジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4−又は2,6−トリレンジイソシアネート若しくはその混合物、4,4′−トルイジンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルエーテルジイソシアネート等の芳香族ジイソシアネート、1,3−又は1,4−キシリレンジイソシアネート若しくはその混合物、ω,ω′−ジイソシアネート−1,4−ジエチルベンゼン、1,3−又は1,4−ビス(1−イソシアネート−1−メチルエチル)ベンゼン若しくはその混合物等の芳香脂肪族ジイソシアネート、トリフェニルメタン−4,4′,4″−トリイソシアネート、1,3,5−トリイソシアネートベンゼン、2,4,6−トリイソシアネートトルエン等の有機トリイソシアネート、4,4′−ジフェニルジメチルメタン−2,2′−5,5′−テトライソシアネート等の有機テトライソシアネート等のポリイソシアネート単量体、上記ポリイソシアネート単量体から誘導されたダイマー、トリマー、ビウレット、アロファネート、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートとの付加体等が挙げられる。
【0021】
ポリエステルアミドポリオールとしては、上記ポリエステルポリオールの製造の際、二塩基酸若しくはそれらのジアルキルエステル又はそれらの混合物と、グリコール類若しくはそれらの混合物とを反応させるエステル化反応において、例えば、エチレンジアミン、プロピレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン等のアミノ基を有する脂肪族ジアミンを原料として合わせて使用することによって得られるものが挙げられる。
【0022】
(メタ)アクリルポリオールの例としては、1分子中に1個以上のヒドロキシ基を持つ(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシプロピル、(メタ)アクリル酸ヒドロキシブチル等の(メタ)アクリル酸ヒドロキシアルキル又はこれらに対応する(メタ)アクリル酸誘導体と、アクリル酸、メタクリル酸又はそれらのエステルとを共重合させたもの等が挙げられる。
【0023】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,8−ノナンジオール、ネオペンチルグリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノールA、水添ビスフェノールAの中から選ばれた1種又は2種以上のジオール類をジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート、ホスゲン等との反応によって得られたものが挙げられる。
【0024】
本発明で用いられる有機ポリオール(イ)は、3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールに由来する官能基を持つ基を分岐して結合しているものである。官能基としては、ヒドロキシル基、エステル基、エーテル基、カルボニル基等の含酸素基が挙げられる。有機ポリオール(イ)中のポリオールのその分子中の含有量は、10モル%以下が好ましく、更に好ましくは5モル%以下、特に好ましくは3モル%以下である。但し、その下限は0.1モル%以上でなければならない。0.1モル%未満のものを使用すると、本発明の目的を達成することができない。10モル%を超えるものを使用すると使用中に著しく粘度が上昇したり、ゲル化する恐れがある。又、ポリオール(イ)は、ガラス転移温度が−20℃から40℃未満の範囲のものが望ましい。この温度範囲を外れるものを用いると、基材に対する接着性能が劣る等の問題がある。
【0025】
3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールとしては、グルセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等が挙げられる。上記官能基を持つ基を分岐して結合した有機ポリオール(イ)は、有機ポリオール(イ)の骨格である上記有機ポリオール(C)を調製する際に、前記ジオール類若しくはそれらの混合物に、上記の3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールを混合して反応させることにより製造することができる他、上記有機ポリオール(C)に、上記の3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールを用いて反応させることにより製造することができる。
【0026】
本発明で用いられる有機ポリオール(ロ)は、前記有機ポリオール(C)の中から本質的に直鎖構造のものが選択して用いられる。これらの有機ポリオール(ロ)は、ガラス転移温度が40℃から100℃の範囲のものが望ましい。この温度範囲を外れるものを用いると、基材に対する接着性や積層体として用いた際に要求されれる諸性能に劣る可能性がある。
【0027】
本発明では、上記有機ポリオール(イ)と上記有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(以下、有機ポリイソシアネート化合物(ハ)という。)を介して反応させ、次いで、多塩基酸若しくはその無水物を反応させることによりその分子内にカルボキシル基を有する多官能有機ポリオール(A)とする。上記有機ポリオール(イ)と上記有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(ハ)を介して反応させることにより、その分子内に上記官能基を持つ基を分岐した結合とウレタン結合を持たせることができるが、更に多塩基酸若しくはその無水物を反応させることによりカルボキシル基を結合させるることができる。
【0028】
多塩基酸若しくはその無水物としては、例えば、フタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸等の芳香族系多塩基酸及びそれらの無水物が挙げられるが、それらの無水物である無水フタル酸、無水トリメリット酸、無水ピロメリット酸等が特に好適である。更に、これらの無水物から誘導されたエチレングリコールビスアンヒドロトリメリテート、グリセリントリスアンヒドロトリメリテート、エチレングリコールビスアンヒドロピロメリテート、グリセリントリスアンヒドロピロメリテート、又ロジン成分のアビエチン酸や、C1016ジエン化合物及びこれらの混合物に無水マレイン酸を付加反応させた誘導体等を使用することができる。
【0029】
多塩基酸若しくはその無水物は、上記有機ポリオール(イ)と上記有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(ハ)を介して反応させる際に存在させて反応させても良いが、上記有機ポリオール(イ)と上記有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(ハ)を介して反応させた後、存在させて反応させるのが好ましい。多塩基酸若しくはその無水物の反応は、多塩基酸若しくはその無水物の開環反応によるエステル化反応が主反応になるように、反応温度を200℃以下、好ましく150〜180℃に制御するのが好ましい。多塩基酸若しくはその無水物は、上記有機ポリオール(イ)及び上記有機ポリオール(ロ)中の水酸基当たり1当量以下、好ましくは0.7当量以下、更に好ましくは0.5当量以下であるが、0.1当量以上でなければならない。又、上記有機ポリオール(イ)及び上記有機ポリオール(ロ)は、該有機ポリオール(イ)が98〜2質量%、好ましくは、70〜30質量%、該有機ポリオール(ロ)が2〜98質量%、好ましくは、30〜70質量%の比率で反応される。
【0030】
本発明で用いられる有機ポリイソシアネート(ハ)としては、上記有機ポリオール(C)の中のポリウレタンポリオールを調製する際に用い得る前記有機ポリイソシアネートの中から選択することができる以外に、炭酸ガスと上記ポリイソシアネート単量体とから得られる2,4,6−オキサジアジントリオン環を有するポリイソシアネートと、エチレングリコール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキシレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,6−ヘキサンジオール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、3,3′−ジメチロールプロパン、シクロヘキサンジメタノール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセロール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ソルビトール等の分子量200未満の低分子ポリオールとの付加体、分子量200〜20,000のポリエステルポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、ポリエステルアミドポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリバレロラクトンポリオール、(メタ)アクリルポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油、ポリウレタンポリオール等との付加体等が挙げられる。
【0031】
有機ポリイソシアネート(ハ)を用いる反応は、200℃以下、好ましく120〜180℃の温度範囲で行われる。有機ポリイソシアネート(ハ)は、上記有機ポリオール(イ)及び上記有機ポリオール(ロ)中の水酸基及びカルボキシル基の当量の合計に対して、有機ポリイソシアネート(ハ)中のイソシアネート基が1当量未満の比になるような割合で用いて反応させる。しかし、当量比は少なくとも0.1でなければならない。
【0032】
上記のようにして得られた多官能有機ポリオール(A)は、その分子内にカルボキシル基及びウレタン結合を有するものであるが、その数平均分子量を10,000〜30,000のものにする必要がある。数平均分子量が10,000未満のものではレトルト等の熱処理において耐熱性に劣るという恐れがあり、30,000を超えるものでは接着剤の使用時に高粘度となり、接着剤を均一に塗布しづらくなり、仕上がりの外観が悪くなるいという恐れがある。
【0033】
本発明の組成物は、上記のようにして得られた多官能有機ポリオール(A)と有機ポリイソシアネート化合物(B)を必須成分とするものであるが、該組成物は、多官能有機ポリオール(A)と有機ポリイソシアネート化合物(B)を配合することにより製造することができる。有機ポリイソシアネート化合物(B)は、上記有機ポリオール(C)の中のポリウレタンポリオールを調製する際に用い得る前記有機ポリイソシアネートの中から選択することができる。多官能有機ポリオール(A)と有機ポリイソシアネート化合物(B)は、多官能有機ポリオール(A)中の水酸基及びカルボキシル基の当量の合計に対して、有機ポリイソシアネート(B)中のイソシアネート基が当量比で1.0〜5.0になるような割合で配合される。当量比1.0未満では接着剤組成物が硬化不良となり十分な諸物性が得られなく、5.0を超えると硬化時間、衛生性、経済性の点で不利となる。
【0034】
本発明の接着剤組成物は、更にシランカップリング剤及び/又はリンの酸素酸又はその誘導体を含有することができる。シランカップリング剤としては、下記一般式(I)又は(II)で示されるものならいずれも使用することができる。
R−Si≡X (I)
R−Si≡R (II)
式中、Rはビニル基、エポキシ基、アミノ基、イミノ基又はメルカプト基を有する有機基を、Rは低級アルキル基、Xはメトキシ基、エトキシ基又は塩素原子を表す。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン等のクロロシラン、N−(ジメトキシメチルシリルプロピル)エチレンジアミン、N−(トリエトキシシリルプロピル)エチレンジアミン等のアミノシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン等のエポキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のビニルシラン等が挙げられる。シランカップリング剤の使用量は、本発明の接着剤組成物に対して0.15質量%以下が好ましい。
【0035】
本発明で用いられるリンの酸素酸又はその誘導体としては、遊離の酸素酸を少なくとも1個以上有しているものであればいずれでもよく、例えば、次亜リン酸、亜リン酸、オルトリン酸、次リン酸等のリン酸類、メタリン酸、ピロリン酸、トリポリリン酸、ポリリン酸、ウルトラリン酸等の縮合リン酸類が挙げられる。又、リンの酸素酸の誘導体としては、上記のリンの酸素酸の遊離した酸素酸を少なくとも1個以上残した状態でアルコール類と部分的にエステル化されたもの等が挙げられる。これらのアルコールとしては、メタノール、エタノール、エチレングリコール、グリセリン等の脂肪族アルコール、フェノール、キシレノール、ハイドロキノン、カテコール、フロログリシノール等の芳香族アルコール等が挙げられる。リンの酸素酸又はその誘導体は、1種に限らず2種以上を用いることができる。リンの酸素酸又はその誘導体の使用量は、本発明の接着剤組成物に対して0.01〜10質量%、好ましくは0.05〜5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。
【0036】
本発明の接着剤組成物は、上記有機ポリオールにシランカップリング剤又は上記リンの酸素酸若しくはその誘導体を混合することができるが、上記有機ポリオールとシランカップリング剤又は上記リンの酸素酸若しくはその誘導体を混合する場合、それらを単に混合してもよいが、有機溶剤の存在下、それらを混合するのが望ましい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものであればいかなるものを使用してもよい。
【0037】
本発明の接着剤組成物は、上記各成分以外に、更に、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、加水分解防止剤、防黴剤、増粘剤、可塑剤、顔料、充填剤、消泡剤等の添加剤を必要に応じて配合することができる。又、硬化反応を調節するため公知の触媒、添加剤等を使用することができる。
【0038】
本発明の接着剤組成物は、更に多塩基酸若しくはその無水物を添加することができる。多塩基酸若しくはその無水物を添加することにより、本発明の接着剤組成物の接着性能、例えば、耐水性、耐油性、耐酸性等の効果を向上させる補足的効果を示す。多塩基酸若しくはその無水物の添加は加熱下に行うのが望ましい。多塩基酸若しくはその無水物としては、上記有機ポリオール(イ)及び上記有機ポリオール(ロ)に反応させて分子内にカルボキシル基を有する多官能有機ポリオール(A)とする際に用いられる上記多塩基酸若しくはその無水物の中から選択することができる。
【0039】
本発明の接着剤組成物は、使用する際に、その粘度が常温〜150℃、好ましくは常温〜100℃で100〜10,000mPa・s、好ましくは100〜5,000mPa・sの場合は無溶剤型で用いることができる。上記組成物の粘度が上記範囲より高い場合、有機溶剤で希釈してもよい。有機溶剤としては、例えば酢酸エチル等のエステル系、メチルエチルケトン等のケトン系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系等のイソシアネートに対して不活性なものであれば必要に応じていかなるものを使用してもよい。
【0040】
更に、本発明は、本発明の接着剤組成物を成分とする食品包装材のラミネート用接着剤からなる。この接着剤の使用方法としては、溶剤型、無溶剤型のラミネーターによって接着剤をフィルム表面に塗布し、溶剤型の場合は溶剤を揮散させた後、無溶剤型ではそのまま接着面を貼り合せ、常温又は加温下に硬化させる。通常、無溶剤型では塗布量が乾燥固形物量1.0〜2.0g/m2 、溶剤型では乾燥固形物量2.0〜5.0g/m2 の範囲で使用すると好都合である。本発明の接着剤や接着剤組成物は、従来のウレタン系接着剤に比較して接着性能が優れており、特にポリエステル、ポリアミド、ポリエチレン、ポリプロピレン等のプラスチックフィルム、アルミニウム、酸化珪素、酸化アルミニウム等を蒸着したプラスチックフィルム、ステンレス鋼、鉄、銅、鉛等の金属に優れた接着強度、耐熱水性を示す。
【0041】
更に、本発明は、上記接着剤により部材を接合してなる食品包装用積層体からなる。該積層体は、食品包装用の通常用いられる複数のプラスチックフィルム同士、或いは該プラスチックフィルムと他部材、例えば、紙、金属等とを複数、上記接着剤を用いて接合させて得た多層構造からなる。該プラスチックフィルムとしては、熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂が用い得るが、熱可塑性樹脂が好ましい。熱可塑性樹脂としては、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド、ポリスチレン、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、ABS樹脂、アクリル樹脂、アセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、繊維素系プラスチック等が挙げられる。該積層体の厚さは、通常10μm以上である。
【実施例】
【0042】
次に、実施例及び比較例を挙げて本発明を更に具体的に説明する。実施例及び比較例中の%及び部は、断りがない限りは総て質量基準である。
【0043】
(合成例1)
イソフタル酸237.7部、エチレングリコール39.9部、ネオペンチルグリコール67.0部、1,6−ヘキサンジオール88.7部、トリメチロールプロパン14.4部を仕込み、200〜230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸52.3部を加え、更に200〜230℃で6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し、1.3〜2.7hPa、230〜250℃で6時間掛けて余剰のグリコールを系外へ除去し、分岐構造を有する有機ポリオール(イ)であるポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールのガラス転移温度をDSC(示差走査熱量分析)で測定したところ、約10℃であった。
【0044】
(合成例2)
イソフタル酸156.3部、テレフタル酸156.3部、ネオペンチルグリコール117.5部、エチレングリコール70.0部を仕込み、200〜230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、徐々に減圧し、1.3〜2.7hPa、230〜250℃で6時間掛けて余剰のグリコールを系外へ除去し、直鎖構造を有する有機ポリオール(ロ)であるポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールのガラス転移温度を測定したところ、約60℃であった。
【0045】
(合成例3)
イソフタル酸229.3部、エチレングリコール38.5部、ネオペンチルグリコール64.6部、1,6−ヘキサンジオール97.8部を仕込み、200〜230℃で6時間エステル化反応を行い、所定量の水の留出後、アジピン酸69.8部を加え、更に200〜230℃で6時間エステル化反応を行った。所定量の水の留出後、徐々に減圧し、1.3〜2.7hPa、230〜250℃で6時間掛けて余剰のグリコールを系外へ除去し、ポリエステルポリオールを得た。得られたポリエステルポリオールのガラス転移温度を測定したところ、約10℃であった。
【0046】
(合成例4)
合成例1で得られたポリエステルポリオール450部と合成例2で得られたポリエステルポリオール50部の存在下、イソホロンジイソシアネート10部を仕込み、150〜180℃で2時間ウレタン化反応を行った。赤外線吸収スペクトル分析計を用いて、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基が消失したことを確認した後、更に、無水トリメリット酸を10部添加し、150〜180℃で2時間酸付加反応を行った。液体クロマトグラフィを用いて、反応系に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、数平均分子量15,000の多官能有機ポリオール(A)を得た。更にこの多官能有機ポリオール(A)を酢酸エチルにて不揮発分50%に調整した有機ポリオール溶液(a)を得た。
【0047】
(合成例5)
合成例1で得られたポリエステルポリオール250部と合成例2で得られたポリエステルポリオール250部の存在下、イソホロンジイソシアネート10部を仕込み、150〜180℃で2時間ウレタン化反応を行った。赤外線吸収スペクトル分析計を用いて、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基が消失したことを確認した後、更に、無水トリメリット酸を10部添加し、150〜180℃で2時間酸付加反応を行った。液体クロマトグラフィを用いて、反応系に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、数平均分子量16,000の多官能有機ポリオール(A)を得た。更にこの多官能有機ポリオール(A)を酢酸エチルにて不揮発分50%に調整した有機ポリオール溶液(b)を得た。
【0048】
(合成例6)
合成例3で得られたポリエステルポリオール450部と合成例2で得られたポリエステルポリオール50部の存在下、イソホロンジイソシアネート10部を仕込み、150〜180℃で2時間ウレタン化反応を行った。赤外線吸収スペクトル分析計を用いて、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基が消失したことを確認した後、更に、無水トリメリット酸を10部添加し、150〜180℃で2時間酸付加反応を行った。液体クロマトグラフィを用いて、反応系に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、数平均分子量15,000の多官能有機ポリオールを得た。更にこの多官能有機ポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整した有機ポリオール溶液(c)を得た。
【0049】
(合成例7)
合成例3で得られたポリエステルポリオール250部と合成例2で得られたポリエステルポリオール250部の存在下、イソホロンジイソシアネート10部を仕込み、150〜180℃で2時間ウレタン化反応を行った。赤外線吸収スペクトル分析計を用いて、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基が消失したことを確認した後、更に、無水トリメリット酸を10部添加し、150〜180℃で2時間酸付加反応を行った。液体クロマトグラフィを用いて、反応系に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、数平均分子量16,000の多官能有機ポリオールを得た。更にこの多官能有機ポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整した有機ポリオール溶液(d)を得た。
【0050】
(合成例8)
合成例1で得られたポリエステルポリオール500部の存在下、イソホロンジイソシアネート10部を仕込み、150〜180℃で2時間ウレタン化反応を行った。赤外線吸収スペクトル分析計を用いて、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基が消失したことを確認した後、更に、無水トリメリット酸を10部添加し、150〜180℃で2時間酸付加反応を行った。液体クロマトグラフィを用いて、反応系に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、数平均分子量17,000の多官能有機ポリオールを得た。更にこの多官能有機ポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整した有機ポリオール溶液(e)を得た。
【0051】
(合成例9)
合成例2で得られたポリエステルポリオール500部の存在下、イソホロンジイソシアネート10部を仕込み、150〜180℃で2時間ウレタン化反応を行った。赤外線吸収スペクトル分析計を用いて、イソホロンジイソシアネート由来のイソシアネート基が消失したことを確認した後、更に、無水トリメリット酸を10部添加し、150〜180℃で2時間酸付加反応を行った。液体クロマトグラフィを用いて、反応系に未反応の無水トリメリット酸が残存しないことを確認した後、数平均分子量17,000の多官能有機ポリオールを得た。更にこの多官能有機ポリオールを酢酸エチルにて不揮発分50%に調整した有機ポリオール溶液(f)を得た。
【0052】
(実施例1〜4、比較例1〜7)
有機ポリオール溶液(a)、(b)、(c)、(d)、(e)又は(f)並びに下記に示す有機ポリイソシアネート、更に下記に示すシランカップリング剤、又は該シランカップリング剤及び下記に示すリンの酸素酸若しくは下記に示す多塩基酸無水物を表1に示す割合で配合すると共に、得られる組成物の不揮発分が30%となるように酢酸エチルを加えて、接着剤組成物を得た。
有機ポリイソシアネート:CAT RT86(商品名、東洋モートン社製)
シランカップリング剤:γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(信越シリコーン社製)
リンの酸素酸:85%オルトリン酸
多塩基酸無水物:無水トリメリット酸
【0053】
【表1】

【0054】
実施例及び比較例で得られた各接着剤組成物を用いて下記の要領で作業性を試験すると共に、各接着剤組成物を用いて下記の方法で複合フィルムを作成した後、得られた各フィルムについて、下記の試験を行い、それらの結果を表2に示した。
(作業性)
No.3ザーンカップ(離合社製)を使用し、25℃で粘度(秒数)を測定した。秒数が20秒を超えれば作業性が悪く、20秒以下であれば作業性は良好と判断される。
4層複合フィルムの作成
得られた接着剤組成物を用いて、ポリエチレンテレフタレートフィルム(東洋紡社製、商品名:E−5102、厚さ12μm)/印刷層/ナイロンフィルム(ユニチカ社製、商品名:エンブレムRT、厚さ15μm)/アルミニウム箔(厚さ9μm)/未延伸ポリプロピレンフィルム(東洋紡社製、商品名:P 1146、厚さ70μm、表面コロナ放電処理)の4層複合ラミネート材を以下に記載の方法で作成した。すなわち、接着剤組成物を常温にてラミネーターにより、まずポリエチレンテレフタレートフィルムに塗布し、溶剤を揮散させた後、塗布面をナイロンフィルムと貼り合せた。次に、その複合フィルムのナイロンフィルムの他の面に同様に接着剤を塗布し、溶剤を揮散させ、塗布面にアルミニウム箔を貼り合せ、更にアルミニウム箔の他の面に未延伸ポリエチレンフィルムを貼り合せ、40℃で4日間保温し、複合フィルムを作成した。
(剥離強度試験)
上記の作成した複合フィルム材から300mm×15mmの大きさの試験片を作成し、引張り試験機を用い、(1)温度20℃、相対湿度65%の条件下、T型剥離により、(2)温度135℃の条件下、180度剥離により、それぞれ剥離速度30cm/分で、ナイロンフィルムとアルミニウム箔間の剥離強度(N/15mm)を測定した。表2の数値は、5個の試験片の平均値である。
(耐熱水性試験)
上記の作成した複合ラミネート材から21cm×30cmの大きさのパウチを作成し、内容物として水を1kg真空充填した。このパウチを30r.p.m.、135℃、30分間、0.3MPaの加圧下、加熱殺菌した後、ナイロンフィルムとアルミニウム箔間の剥離状態を観察した。表2において、○は剥離なし、△は部分剥離、×は完全剥離をそれぞれ示す。
(耐酸性試験)
上記の作成した複合フィルム材から9cm×13cmの大きさのパウチを作成し、内容物として1.2%以上の濃度を有する食酢を充填した。このパウチを30r.p.m.、135℃、30分間、0.3MPaの加圧下、加熱殺菌した後、アルミニウム箔と未延伸ポリプロピレンフィルム間の剥離強度について、加熱殺菌の前後、更に60℃で14日保存後の強度(N/15mm)を測定した。表2の数値は、5個の試験片の平均値である。又、98℃の熱水中で30分間加熱したパウチについて、アルミニウム箔と未延伸ポリプロピレンフィルム間の剥離状態を観察した。表2において、○は剥離なし、△は部分剥離、×は完全剥離をそれぞれ示す。
【0055】
【表2】

【0056】
表2から、本発明の組成物は、レトルト食品包装用積層体を製造するための接着剤として優れた接着性能を有していることが判る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールに由来する官能基を持つ基を分岐して結合した有機ポリオール(イ)と実質的に直鎖構造である有機ポリオール(ロ)とを有機ポリイソシアネート化合物(ハ)を介して反応させ、次いで多塩基酸若しくはその無水物と反応させることにより得られるその分子内にカルボキシル基を有する多官能有機ポリオール(A)並びに有機ポリイソシアネート化合物(B)を必須成分とする接着剤組成物。
【請求項2】
上記有機ポリオール(イ)が、3個以上のヒドロキシル基を有するポリオールをその分子中に10モル%以下含有するものであることを特徴とする請求項1記載の接着剤組成物。
【請求項3】
上記有機ポリオール(イ)と上記有機ポリオール(ロ)とを、該有機ポリオール(イ)が98〜2質量%、該有機ポリオール(ロ)が2〜98質量%の比率で反応させることを特徴とする請求項1又は2記載の接着剤組成物。
【請求項4】
上記有機ポリオール(イ)は、ガラス転移温度が−20℃〜40℃未満のものであり、上記有機ポリオール(ロ)は、ガラス転移温度が40℃〜100℃のものであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項5】
更にシランカップリング剤及び/又はリンの酸素酸若しくはその誘導体を必須成分とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の接着剤組成物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか1項に記載の接着剤組成物を成分とする食品包装材のラミネート用接着剤。
【請求項7】
請求項6に記載の接着剤により部材を接合してなる食品包装用積層体。

【公開番号】特開2006−160904(P2006−160904A)
【公開日】平成18年6月22日(2006.6.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−355287(P2004−355287)
【出願日】平成16年12月8日(2004.12.8)
【出願人】(396009595)東洋モートン株式会社 (13)
【Fターム(参考)】