説明

接着阻害性を有する多フコシル化されたジカルボン酸

【課題】 接着阻害性を有する新規な多フコシル化されたジカルボン酸誘導体、それらの製造法、それらの使用及びそれらの誘導体から製造される医薬及び診断薬の提供。
【解決手段】 この多フコシル化されたジカルボン酸誘導体は下記式I

で示される。これらの多フコシル化されたジカルボン酸誘導体は、疾病により影響される組織で過剰なセレクチン受容体に媒介された細胞接着に関連した疾病に対する医薬及び診断薬を調製するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【0001】本発明は、接着阻害性を有する多フコシル化されたジカルボン酸、それらの製造法、それらの使用及びそれらから調製される医薬及び診断薬に関する。分子レベルで、白血球、好中球、顆粒球及び単球のような血球の循環は、大変複雑な多段階の過程であり、そのうち、ある段階だけが知られているにすぎない(Review: T.A. Springer, Cell 76, 301-304, 1994)。
【0002】最近の研究結果によれば、免疫監視に重要なリンパ球の再循環と炎症部位における好中球及び単球の局在化は、大変類似した分子機構で応答することが明らかにされた。このように、急性及び慢性の炎症過程では、白血球は内皮細胞に接着し、炎症部位及び二次リンパ系器官に移動する。
【0003】多くの特異的なシグナル分子、例えばインターロイキン、ロイコトリエン及び腫瘍壊死因子(TNF)、それらのGタンパク結合受容体、並びに免疫細胞及び内皮細胞の正確に制御された認識を保証する、特に組織−特異的な細胞接着分子が、この過程に関与している。このような状況で関与する最も重要な接着分子(接着分子は、以下の記述では受容体と称する)は、セレクチン(E、P及びLセレクチン)、インテグリン及び免疫グロブリン・スーパーファミリーのメンバーである。
【0004】3種のセレクチン受容体は白血球接着の初期段階を決定する。Eセレクチンは、例えばインターロイキン1(IL−1β)又は腫瘍壊死因子(TNF−a)による刺激後、数時間で内皮細胞に発現し、一方、Pセレクチンは血小板及び内皮細胞に蓄積され、トロンビン、過酸化物ラジカル又は、特にサブスタンスPによる刺激後、細胞表面上に発現する。Lセレクチンは絶えず白血球上に発現されていると同時に、それは炎症を受けている間その白血球により再度迅速に接着される。
【0005】炎症過程の初期段階にセレクチン受容体により媒介される、内皮細胞への白血球の接着は、様々な炎症刺激及び血管組織への傷害に対し、自然でかつ必要な免疫応答である。
【0006】しかしながら、ある急性及び慢性疾患の過程は、関連した組織への白血球の過剰な接着とそれらの浸潤により、及び自己免疫反応の形成で健康な組織への損傷により悪影響を受ける。これらの疾患には、例えばリウマチ、心筋虚血/梗塞(MI)のような再潅流傷害、外科手術の介在、外傷性ショック及び発作後の急性肺炎、乾癬、皮膚炎、ARDS(成人呼吸困難症候群)並びに外科手術の介在(例えば、血管形成とバイパス手術)後に起こる再発狭窄症がある。
【0007】SLeX構造を有する天然リガンドは、Pセクレチン依存性肺障害(M.S. Mulligan et al., Nature 1993, 364, 149)及び心筋再潅流傷害(M. Buerke et al., J. Clin. Invest. 1994, 93, 1140)と関連して、動物実験ですでに使用され成功している。初期の臨床試験において、その化合物が急性肺炎に対して患者一日あたり1〜2gの投与量で使用されていることが報告されている(1994年5月16〜18日、the 2nd Glycotechnology Meeting/CHI in La Jolla/USAでの Cytel Corp.,/La Jolla(CA.)からの情報)。
【0008】活性化合物のこの高投与量は、弱くなることが知られているセレクチン受容体に対する天然のSLex/Aリガンドの親和性と一致する。このように、全ての既知のインビトロ試験系で、SLexだけが約1mMのIC50の範囲内にある比較的高濃度でセレクチン受容体への細胞接着を阻害する(Jacob et al., Biochemistry 1995,34, 1210)。一方、一部の刊行物及び特許出願には、リガンドの構造の改変によって、さらに強く結合するアンタゴニストを得る試みが報告されている。これらの研究の目的は、より活性があり、及びインビボで低投与量で使用される可能性のある有効なアンタゴニストを製することである。
【0009】しかしながら、フコース及びノイラミン酸構成成分の改変は、現在まで構造活性相関に対して重要と考えられていたが(B.K. Brandley et al., Glycobiology1993, 3, 633、及びM. Yoshida et al., Glycoconjugate J. 1993, 10, 3)、著しく改善された阻害値を示さなかった。グルコサミン構成成分を改変することによってのみ(GlcNAcのグルコースによる置換、並びにGlcNAcの2位にアジド基及びアミノ基の置換)、Eセレクチン受容体に対して親和性を著しく増加させることができるようになった。一方、Pセレクチンへの結合は改善されなかった
【0010】HL−60及びU−937細胞の接着阻害に対し、これらのオリゴサッカライドに対するIC50値は、Eセレクチンの場合0.12mMの範囲内にある(SLeXに対する1.2〜2.0mMと比較して)。一方、欠点としては、5mM以上でのL及びPセレクチンへの結合が著しく損なわれることである(Dasgupta et al., Glycomed Inc. poster presentation at the La Jolla meeting in 5/94)。
【0011】一般的に、SLex誘導体及びSLeA誘導体の結合親和性を改善するのに成功したのは、現在までEセレクチン受容体だけに限定されている。これは、Pセレクチン受容体の場合には、約1mMの阻害剤濃度で弱い阻害作用しか見出されていないためである(R.M. Nelson et al., J. Clin. Invest. 1993, 91, 1157)。
【0012】セレクチンに対する修飾されたSLex/A構造の結合親和性に関する先行技術は、Pharmacochem. Libr. 1993, 20(Trends in Drug Research), pp. 33〜40に言及されている。本発明の目的は、天然のリガンドに比べ受容体に著しく強い結合を示す新規なセレクチンリガンドを製造すること、及び天然のリガンドよりも容易に合成することにある。
【0013】この目的は次の式Iの化合物によって達成される。
1. 式I
【化6】


(式中、R5及びR6は、互いに独立に、H、OH、COOH、NH2、NHAc、−O(CH2)c1、(CH2)c1、CH2O(CH2)c1又はZであり、A、B、D、E及びGは、互いに独立に、O、S、−NH、−HN−C(O)−、−(O)C−NH−、−O−C(O)−、−(O)C−O−、NH−C(O)−O、O−C(O)−NH、NH−C(O)−NH、S−C(O)−、(S)C−O、O−C(S)−S、S−C(S)−O、NH−C(S)−S、S−C(S)−NH、−CH2−、−O−CH2−、CH2−O−、CH2−NH−又はNH−CH2であり、V1及びV2は、互いに独立に、炭素原子又は窒素原子であり、窒素原子の場合にはR5及びR6はなく、Q及びYは、互いに独立に、−(CX2,X3)b−、−(CX2,R7)b−、−(CR7,R8)b−、−CH2−(CX2,X3)b−又は飽和若しくは不飽和の、5員若しくは6員の炭素環若しくは複素環、あるいは−(CX2,X3)b−、−(CX2,R7)b−、若しくは−(CR7,R8)b−及び炭素環若しくは複素環との組合せであり、このとき、R7及びR8は、互いに独立に、H、OH、COOH、NH2、NH−C(O)−CH3、−O(CH2)d1又はCH2O(CH2)d1であり、そしてX1、X2及びX3は、互いに独立に、H、NH2、COOH、OH、CH2OH、CH2NH2、C1〜C20−アルキル又はC6〜C10−アリールであり、K及びLは、互いに独立に、H−C−GZ又はCH2であり、R1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、H、OH又はG−Zであり、Zは、ピラノシド、C6位で連結されるピラノシル残基、C6位で連結されるアルキルピラノシド、フラノシド、 C5位で連結されるアルキルフラノシド又はポリアルコール、そしてそれらに一又はそれ以上のヒドロキシル基が、互いに独立に、任意の位置でGに連結されるR7又はR8によって置換されていてもよく、及びその指数である、a、b、c、d、l、m、n、p、q、t、v、w、x及びyは、互いに独立に、0から20までの整数であり、そして又r及びzは、互いに独立に、0又は1であり、そしてrが0であるとき、q及びtは0であり、R2及びR3はない)で表される化合物。
【0014】2.式Iの化合物で、好ましくは、式中R5はHであり、V1はCであり、A及びYはCH2であり、BはO−CH2であり、DはCH2−Oであり、r、p及びwは0であり、そしてR1及びR4はG−Zである。
【0015】3.好ましくは、式中Zは1であり、Q及びEはCH2であり、V2はCであり、そしてR6はHである。
4.特に好ましくは、式中l、m、y及びxは0であり、GはOであり、そしてZはピラノシドである。
【0016】5.ピラノシドZは好ましくはL−フコシドであり、例えば
【化7】


である。
【0017】6.好ましくは、式Iの化合物は2.で述べた特徴、及びまたは以下の特徴を有する。Zは0であり、そしてR6はZである。
7.好ましくは、式中l及びmは0であり、GはOであり、そしてZはピラノシドである。
【0018】8.ピラノシドZは特に好ましくはL−フコシドであり、例えば
【化8】


である。
【0019】9.本発明の更に好ましい態様としては、式Iの化合物でR1、R4及びR5はHであり、V1はCであり、A及びYはCH2であり、B及びDはOであり、p及びwは0であり、rは1であり、KはCH2であり、そしてR2及びR3はGZである。
【0020】10.好ましくは、式中zは1であり、Q及びEはCH2であり、V2はCであり、そしてR6はHである。
【0021】11.特に好ましくは、式中l、m、x及びyは0であり、q及びtは1であり、GはOであり、そしてZはピラノシドであり、そのピラノシドZは好ましくはL−フコシドであり、例えば
【化9】


である。
【0022】13.本発明の更なる態様としては、式Iの化合物でR5はHであり、V1はCであり、A及びYはCH2であり、B及びDはOであり、そしてrは0である。
14.好ましくは、式中zは1であり、R6はHであり、Q及びEはCH2であり、そしてV2はCである。
【0023】15.特に好ましくは、式中l、m、y及びxは0であり、p及びwは2であり、LはH−C−GZであり、R1及びR4はHであり、GはOであり、そしてZはピラノシドである。
【0024】16. そしてその式中、ピラノシドZは特に好ましくはL−フコシドであり、例えば
【化10】


である。
【0025】17.本発明の更なる態様としては、式Iの化合物でa、p、r、w及びzは0であり、R5及びR6はHであり、V1はCであり、A及びYはCH2であり、BはO−CH2であり、そしてR1及びR4はG−Zである。
18.好ましくは、式中l及びmは0であり、GはOであり、そしてZはピラノシドである。
【0026】19.そしてこのピラノシドは好ましくはL−フコシドであり、例えば、
【化11】


である。
【0027】20.最初に述べた目的は、更に式Iの化合物を製造する方法によっても達成され この方法は、式II
【化12】


の受容体の一つの官能基L1又は二つの官能基L1及びL2(この式IIの受容体の残りの官能基及び官能基Ln(それぞれ、n=2〜6又は3〜6)は、必要ならば保護されている)を、供与体IIIL8−A−(Y)n−B−L7 III(この式IIIの供与体は活性化された官能基L7を有する)によって、そしてL2がまた保護されていないならば供与体IVL7−(D)a−(Q)r−E−L8 IV(この式IVの供与体は活性化された官能基L7を有し、残りの官能基及び官能基L8は、必要ならば保護基を有する)によって、同時ににまたは連続して、アルキル化、アシル化またはグリコシル化して、最初に中間体V
【化13】


を製造し、ここで上記の供与体III及びIVは、異なっていても又は同一でもよいものとし、その後で、中間体Vの原子K及びL上の官能基、並びに適当である場合には、官能基L3乃至L6及びL8の保護基を選択的に脱離し、この選択的に脱保護された中間体Vを、一又はそれ以上のグリコシル又はポリオ−ル供与体VIL9−Z VI(式中、L9は活性化された官能基であり、この供与体VIの残りの官能基は必要ならば保護されているものとする)と反応させ、そして官能基L8の選択的脱保護の後に、アルキル供与体VII
【化14】


および適当である場合に、アルキル供与体VIII
【化15】


(式中、L10はカルボキシル保護基であり、そしてL11は、適当である場合には、V1又はV2と組み合わせて、アルキル化基であるものとする)でアルキル化し、そして全ての保護基を脱離することにより、請求項1乃至16のいずれかに記載された式Iの化合物に最終的に変換することからなる。但し、ここで定義されていない全ての変数は1.に記載された意味を有するものとする。
【0028】21.所望ならば、受容体IIを、まず第一に、一またはそれ以上のグリコシル供与体又はポリオ−ル供与体VIと反応させ、次いで中間体Vを製造するために供与体IVと反応させることができる。
【0029】a) 5.及び8.に記載された化合物は、本発明による方法を用い、好ましくは、受容体IIとして(−)−2,3−O−イソプロピリデン−L−トレイトール、供与体III及びIVとして5−アリルオキシ−1−p−トルエンスルホニルオキシペンタン、及びグリコシル供与体VIとしてO−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−α/β−L−フコピラノシル)トリクロロアセトイミダートを用いて製造され得る。二つのアリル基を脱離し、生じるヒドロキシル基をトシル化又はブロム化した後、アルキル供与体VIIとしてマロン酸ジメチルを用いてアルキル化を行い、その後脱保護が行われる。
【0030】b) 11.に記載された化合物は、本発明による方法を用い、好ましくは、受容体IIとしてイソプロピリデン−ペンタエリトリトールを用い、次いでa)に記載したように反応させて製造され得る。
【0031】c) 16.に記載された化合物は、本発明による方法を用い、好ましくは、受容体IIとして1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトールを用い、次いでa)に記載したように反応させて製造され得る。
【0032】d) 19.に記載された化合物は、本発明による方法を用い、受容体IIとしてD−α/β−イソプロピリデン−グリセロールを用い、次いでa)に記載したように反応させて有利に製造され得る。
【0033】シアリルルイスXより低分子量であるにもかかわらず、本発明による式Iの化合物は天然の受容体、例えばEセレクチン及びPセレクチンに対し、シアリルルイスXよりも高親和性を持つことができる。このことは以下に述べる細胞接着分析を用いて示すことができる。
【0034】組換体、可溶性セレクチン融合タンパク質への細胞接着に対する本発明による化合物の効果を検討するための一次アッセイE及びPセレクチン(古い命名法では、それぞれELAM−1及びGMP−140)とそれらのリガンド間の相互作用に対する本発明の化合物の効果を試験するために、それぞれの場合にこれらの相互作用の一方にのみ特異的であるアッセイが用いられる。これらのリガンドは、前骨髄細胞HL60細胞上の表面構造として天然型で表される。HL60細胞は極めて広い種類の特異性のあるリガンドと接着分子を示すので、アッセイの所望の特異性は結合相手によってのみ発生する。Eセレクチン又はPセレクチンのいずれかの細胞質外ドメイン及びIgG1サブクラスのヒト免疫グロブリンの定常領域から形成された、遺伝子組換えで調製された可溶性融合タンパク質が結合相手として用いられた。
【0035】Lセレクチン−IgG1の調製1990年にWalzらにより公表された遺伝子構築体「ELAM−Rg」が、可溶性L−セレクチン−IgG1融合タンパク質を調製するために用いられた。発現させるために、プラスミドDNAがDEAEデキストランを用いるCOS−7細胞(ATCC)にトランスフェクトされた(分子生物学的方法:参照Ausubel, F. M., Brent, R., Kingston, R. E., Moore, D. D., Seidman, J. G., Struhl, K. and Smith, J. A. 1990. Current Protocols in Molecular Biology,John Wiley, New York)。トランスフェクション後7日目に、培養上清を分離し、遠心分離により細胞と細胞断片を除去し、25mM Hepes、pH7.0、0.3mMPMSF、0.02%アジ化ナトリウムに移し、+4℃で保存した(Walz, G., Aruffo, A., Kolanus, W., Bevilacqua, M. and Seed, B. 1990. Recognition byELAM-1 of the sialyl-Lex determinant on myeloid and tumor cells. Science 250, 1132-1135)。
【0036】Pセレクチン−IgG1の調製1991年にAruffoらにより公表された遺伝子構築体「CD62Rg」が、可溶性Pセレクチン−IgG1融合タンパク質を調製するために用いられる。その後の方法はA1に記載されたLセレクチン−IgG1の調製と同様である。Aruffo, A., Kolanus, W., Walz, G., Fredman, P. and Seed, B. 1991. CD62/P-selectin recognition of myeloid and tumor cell sulfatides. Cell 67, 35-44。
【0037】CD4−IgG1の調製1990年にZettelmeisslらにより公表された遺伝子構築体「CD4:IgG1ヒンジ」が、可溶性CD4−IgG1融合タンパク質を調製するために用いられる。その後の方法はA1に記載されたLセレクチン−IgG1の調製と同様である(Zettelmeissl, G., Gregersen, J.-P., Duport, J. M., Mehdi, S., Reiner, G. and Seed, B. 1990. Expression and characterization of human CD4:Immunoglobulin Fusion Proteins. DNA and Cell Biology 9, 347-353.)。
【0038】組換体、可溶性接着分子に対するHL60細胞接着アッセイの実施1.96−ウェルマイクロタイターテストプレート(Nunc Maxisorb)を、50mM Tris、pH9.5中で(1+100)に希釈した、100μlのヤギ抗−ヒトIgG抗体(Sigma)とともに、室温で2時間インキュベートした。抗体溶液を除去した後、プレートをPBSで一度洗浄した。
2.ウェル中に150μlのブロッキングバファーを加え室温で一時間放置した。ブロッキングバファーの組成は、0.1%ゼラチン、1%BSA、5%ウシ血清、0.2mM PMSF、0.02%アジ化ナトリウムである。ブロッキングバッファーを除去した後、プレートをPBSで一度洗浄した。
【0039】3.それぞれの場合、適当にトランスフェクトされ、発現しているCOS細胞からの100μlの細胞培養上清をウェル中にピペットで加えた。次いで、プレートを室温で2時間インキュベートした。細胞培養上清を除去した後、プレ−トをPBSで一度洗浄した。
4.20μlの結合バッファーをウェルに加えた。結合バッファーは、50mM Hepes、pH7.5;100mM NaCl;1mg/ml BSA;2mM MgCl2;1mMCaCl2;3mM MnCl2;0.02%アジ化ナトリウム:0.2mM PMSFの組成である。これに5μlの試験物質をピペットで加えた。プレートを回転して混合し、室温で10分間インキュベートした。
【0040】5.200,000細胞/mlを含有するHL60細胞の培養液50mlを350gで4分間遠心分離した。ペレットを10mlのRPMI 1640に再懸濁し、細胞を再度遠心分離した。細胞を標識するために、50μgのBCECF−AM(Molecular Probes)を5μlの無水DMSOに溶解し、ついで、1.5mlのRPMI 1640をBCECF−AM/DMSO溶液に加えた。細胞をこの溶液に再懸濁し、その懸濁液を37℃で30分間インキュベートした。350gで2分間遠心分離した後、標識された細胞ペレットを11mlの結合バッファーに再懸濁し、再懸濁した細胞をマイクロタイタープレートウェルに100μlずつ分配した。プレートを室温で10分間放置し、細胞をテストプレートの底に沈殿させた。これにより細胞はコーティングされたプラスチックに接着する機会を得る。
【0041】6.テストを停止するために、マイクロタイタープレートを停止バッファー(25mM Tris、pH7.5;125mM NaCl;0.1%BSA;2mM MgCl2;1mM CaCl2;3mM MnCl2;0.02%アジ化ナトリウム)中に45℃の角度で完全に浸漬した。停止バッファーを逆さにしてウェルから除去し、この操作をさらに2回繰返した。
【0042】7.ウェル中に接着しているBCECF−AM標識細胞量を、設定感度4、励起波長485/22nm、発光波長530/25nmに設定した細胞蛍光測定装置(Millipore)で測定した。
【0043】白血球接着−本発明の化合物のインビボにおける効能試験(ラットにおける生体内顕微鏡検査)
白血球遊走により引起こされる組織破壊又は微小循環を遮断することは、炎症過程及びサイトカインを活性化する他の条件下で重要な役割を果たす。その後の疾患過程に対し重要である初期段階は、循環内、特に毛細血管領域の前後で白血球を活性化することである。この段階では、まず第一に白血球が軸上の血液循環を離れた後、内部血管壁、すなわち血管内皮に白血球が接着する。その後の全ての白血球の作用、すなわち血管壁を通しての能動的移動及びその後の組織内での一定方向の移動が必然的な反応である(Harlan, J.M., Leukocyte-endothelialinteraction, Blood 65, 513-525, 1985)。
【0044】この受容体に媒介される白血球と内皮細胞の相互作用は、炎症過程の初期の兆候とみなされる。既に生理学的に発現している接着分子に加えて、炎症メディエーター(ロイコトリエン及びPAF)及びサイトカイン(TNF−α及びインターロイキン)の影響を受けて、接着分子の次第に変化した大量発現が細胞上に起こる。現在、これらの分子は3つのグループ、すなわち、1.免疫グロブリン遺伝子スーパーファミリー、2.インテグリン及び3.セレクチンに分けられている。Ig遺伝子スーパーファミリーの分子とタンパク質−タンパク質結合間に接着が起こっている間に、セレクチン間の協同によりレクチン−炭水化物結合が顕著になる(Springer, T.A., Adhesion receptors of the immune system. Nature346, 425-434, 1990; Huges, G., Cell adhesion molecules - the key to a universal panacea, Scrips Magazine 6, 30-33, 1993; Springer, T.A., Trafficsignals for lymphocyte recirculation and leukocyte emigration; The multistep paradigm. Cell 76, 301-314, 1994)。
【0045】方法白血球の誘導された接着は、生体内顕微鏡検査技術を用いてラット腸間膜で定量される(Atherton A. and Born G.V.R., Quantitative investigations of the adhesiveness of circulating polymorphonuclear leukocytes to blood vessel walls. J. Physiol. 222, 447-474, 1972)。持続麻酔は、エーテルによる吸入麻酔下、ウレタン(1.25mg/kg体重)を筋肉内注射して開始する。血管(物質の注射には大腿部の静脈、及び血圧の測定には頚動脈)を切開により露出し、次いでカテーテルを血管内に縛りつける。その後、相当する透明な組織(腸間膜)を露出し、顕微鏡の台上に広げ、そして37℃でパラフィンオイルでおおう(Menger, M.D. and Lehr, H., A. Scope and perspectives of intravital microscopy-bridge over from in vitro to in vivo, Immunology Today 14, 519-522, 1993)。試験物質を動物に静脈内投与する(10mg/kg)。サイトカインの活性化によって、試験物質の投与15分後にリポ多糖(LPS、15mg/kg)を全身投与し、血球接着の実験的増加を起こす(Foster S.J., McCormick L.M., Ntolosi B.A. and Campbell D., Production of TNF-alpha by LPS-stimulated murine, rat and human blood and its pharmacological modulation, Agents andActions 38, C77-C79, 1993, 18.01. 1995)。その結果生じる内皮への白血球の接着の増大は、生体内顕微鏡によって直接に、又は蛍光染色を用いて定量される。全ての測定操作をビデオカメラでとり、ビデオレコーダーに保存する。回転する白血球の数(すなわち、明らかに回転し、赤血球の流れよりも遅い全ての白血球)及び内皮に接着している白血球の数(5秒間以上滞留している)を60分間にわたって10分毎に記録する。実験終了後、麻酔した動物を、苦痛なく、かつ全身にT61を注射し刺激を与えることなく殺す。評価するためには、それぞれ8匹の処理した動物からの結果を、それぞれ8匹の未処理動物(対照群)の結果と比較する(その結果は百分率値として与えられる)。
【0046】結果化合物6a:投与量10mg/kg;投与i.v.;種SPRD(m);重量:298±17.72g;血管数14;血管直径26±2μm;白血球:(6.0±1.09)・103/mm3;フィブリノーゲン130±6.95mg/100ml;阻害39%切開したウサギの心臓上で行った虚血/再潅流過程の好中球の接着の影響を調べるための再潅流モデル。心臓を栄養液と、並びに白血球及び/又は活性化合物の存在下又は非存在下に、定常圧でLangendorff技術を用いて潅流する。その後、左冠状動脈を結紮することにより(30分)、虚血を引起こす。再潅流後(30分)、白血球の蓄積を組織学的に評価する。実験中、電位と不整脈を256電極で測定する(総実験時間、約90分)。白血球を潅流した未処置の心臓の7例中6例で、白血球の浸潤により、著しい不整脈が起こったが、活性化合物(RGDSペプチド又はコンドロイチン硫酸)で処置した心臓では、白血球の蓄積及び不整脈はほとんど見られなかった。本発明による化合物及び生理学的に許容される塩は、有効な薬学上の性質により、哺乳動物、特にヒトの医薬としての使用に対し極めて適している従って、本発明は、更に式Iの化合物を少なくとも一つ、又はその薬学的に許容される塩からなる医薬、及びリューマチのような自己免疫疾患、又は再潅流傷害、虚血若しくは心筋梗塞のような心臓血管の疾病等により影響を受ける組織でのセレクチン受容体で媒介された過剰な細胞接着に関連した疾病の治療又は予防に対する医薬を調製するための使用に関する。
【0047】NaOH、KOH、Mg(OH)2、Ca(OH)2、ジエタノールアミン若しくはエチレンジアミン等の無機及び有機塩基との塩、又はアルギニン、ロイシン若しくはグルタミン酸等のアミノ酸との塩は、式Iの化合物の薬学的に許容される塩としての使用に対し特に適する。これらは標準のプロトコールにより製造される。これらの医薬は、細胞循環、例えばリンパ球、単球及び好中性の顆粒球の妨害により、病態生理学的に特徴づけられ得る急性及び慢性の炎症を治療するのに特に適する。これらの炎症は、急性多発動脈炎、関節リューマチ及びインスリン依存性糖尿病(糖尿病、IDDM)のような自己免疫疾患、急性及び慢性移植拒絶、ショック肺(ARDS、成人呼吸困難症候群)、乾癬及び接触湿疹のような炎症性及びアレルギー性皮膚疾患、心筋梗塞、血栓溶解後の再潅流傷害、血管形成若しくはバイパス手術、敗血症ショック及び全身ショックのような心臓血管の疾病を含む。腫瘍細胞は、エピトープ認識として、シアリルルイスX及びシアリルルイスA構造を共に有する抗原表面を持つので、さらに可能性のある用法は転移している腫瘍の処置である。更に、胃の酸性媒体で安定であるこれらの医薬は、ヘリコバクターピロリ及び関連した微生物の接着阻害治療に対しても使用され、そしてこれらは抗生物質と組合せても適している。その上、これらの医薬を用いて、マラリアの脳の状態に対する治療に発展させることも可能である。
【0048】本発明による医薬は、一般に静脈内、経口若しくは非経口的に、又は移植剤として投与されるが、原則的には直腸にも用いることができる。適した固体又は液体製剤形態の例としては、顆粒剤、粉末剤、錠剤、コーティング錠、(マイクロ)カプセル、坐薬、シロップ剤、乳化剤、懸濁剤、エーロゾル剤、アンプル形態の滴剤若しくは注射用溶液、活性化合物の放出を延長させた製剤等があり、それらの製造には、賦形剤並びに添加剤、及び/又は補助剤、例えば崩壊剤、結合剤、コーティング剤、膨潤剤、グライダント、滑沢剤、香味剤、甘味剤又は安定剤が慣用的に使用される。頻繁に用いられる賦形剤又は補助剤は、炭酸マグネシウム、二酸化チタン、乳糖、マンニトール及び他の糖、タルク、ラクトアルブミン、ゼラチン、澱粉、ビタミン、セルロースおよびその誘導体、動物性及び植物性油、ポリエチレングリコール並びに溶媒、例えば滅菌水、アルコール、グリセロール及び多価アルコールである。医薬製剤は好適に調製され、投薬単位で投与される。錠剤、カプセル及び坐薬は、固体投薬単位である。
【0049】患者の治療に際しては、化合物の活性、投与の形式、疾患の性質及び重症度、及び患者の年齢と体重に応じて、一日の投与量を変える必要がある。しかしながら、高投与量又は低投与量の一日量が共に適当な場合もある。一日に投与される用量は、一用量単位又は数個の小用量単位の形態で一回投与により、及び一定の間隔で小分けした用量の繰返し投与のいずれでもよい。一日の投与される用量は疾患の過程で発現する受容体の数にも依存する。疾患の初期段階では、細胞表面にわずかな受容体しか発現しなく、結果として、投与されることになる一日の用量は重症な患者の場合に比べ低用量でよいと考えられる。本発明による医薬は、通常の賦形剤、並びに適当な場合には、添加剤及び/又は補助剤を用いて、本発明の化合物を適当な投与形態になるように製造される。更に、疾患により影響を受ける組織での過剰なセレクチン受容体に媒介された細胞接着に関連した疾患の診断用の組成物を調製するために式Iの化合物を用いることを考えることもできる。
【0050】本発明の化合物の製造例実施例1a) 1,4−ビス(5−アリルオキシ−1−ペンチルオキシ)−D−トレイトール(1a)及び1−(5−アリルオキシ−1−ペンチルオキシ)−D−トレイトール(1b)の合成ジメチルホルムアミド(100ml)中の2,3−O−イソプロピリデン−D−トレイトール(1.38g、8.51mmol)と水素化ナトリウム(572mg、23.83mmol)の混合物を室温で30分間攪拌した。次いで、5−アリルオキシ−1−ペンチルオキシトルエンスルホナート(6.6g、22.19mmol)を0℃で滴下した。その後、この混合物を室温で二日間攪拌しておいた。水(20ml)とジエチルエーテル(400ml)を作業性を上げるために加えた。有機層を水(3×140ml)で洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、そして濃縮した。残留物を60℃で、45分間、50%トリフルオロ酢酸(250ml)で処理した。濃縮後、残留物をクロマトグラフィー(トルエン/酢酸5:1→4:1→3:1→2:1→1:1)で精製し、1a(2.1g、67%)及び1b(284mg、13%)を得た。1bの収率は、2.8当量の5−アリルオキシ−1−ペンチルオキシトルエンスルホナートの代わりに0.8当量だけ使用することにより、60%以上に高めることができる。
1a:1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ=1.42(m, 4H, 2 CH2), 1.60(m, 8H, 4 CH2), 2.86(bd, 2H, 2 OH), 3.42(m, 12H, 6 CH2), 3.82(m, 2H, 2-Hthreit, 3-Hthreit), 3.96(m, 4H, 2 CH2-CH=CH2), 5.22(m, 4H, 2 CH2-CH=CH2), 5.92(m, 2H,2 CH2-CH=CH2)1b:1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ=1.42(m, 2H, CH2), 1.60(m, 4H, 2 CH2),3.42-3.84(m, 13H, 4 CH2, 2-Hthreit, 3-Hthreit, 3 OH), 3.96(m, 2H, CH2-CH=CH2), 5.22(m, 2H, CH2-CH=CH2), 5.92(m, 1H, CH2-CH=CH2)
【0051】b) 1,4−ビス(5−アリルオキシ−1−ペンチルオキシ)−2,3−ビス(2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−L−フコピラノシル)−D−トレイトール(2a)の合成0.1Mのトリメチルシリルトリフルオロメタンスルホナート(0.9ml)溶液を、ジエチルエーテル(30ml)中の1a(1.15g、3.09mmol)溶液に加えた。その後すぐに、ジエチルエーテル(10ml)中のO−(2,3,4−トリ−O−ベンジル−α/β−L−フコピラノシル)−トリクロロアセトイミダート(5.0g、8.6mmol)溶液を、5分間以内に滴下して加えた。30分後、炭酸水素ナトリウム(0.25g)を加え、その混合物を濾過し、濃縮した。次いで、残留物をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1→3:1)に付し、2a(3.21g、86%)を得た。
1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ=1.10(d, 3H, CH3fuc), 5.18(m, 4H, 2 CH2-CH=CH2), 5.88(m, 2H, 2 CH2-CH=CH2)c) 1,4−ビス(5−ヒドロキシ−1−ペンチルオキシ)−2,3−ビス(2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−L−フコピラノシル)−D−トレイトール(3a)の合成エタノール/水(9:1、100ml)中の2a(3.21g、2.66mmol)とロジウムトリス(トリフェニルホスフィン)クロライド(0.247mmol、0.267mmol)の混合物を、還流下、2時間沸騰した。濃縮後、残留物をクロマトグラフィー(トルエン/アセトン/メタノール5:1:0.1)で精製し、3a(1.53g、51%)を得た。
【0052】d) 1,4−ビス(5−ブロモ−1−ペンチルオキシ)−2,3−ビス(2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−L−フコピラノシル)−D−トレイトール(4a)の合成トリエチルアミン(3.8ml、27.44mmol)と1,2−ジブロモテトラクロロエタン(4.47g、13.72mmol)を、0℃で、ジクロロメタン(250ml)中の3a(7.7g、6.86mmol)とトリフェニルホスフィン(3.6g、13.72mmol)の溶液に加えた。90分後、その混合物を濃縮し、残留物をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル3:1)で精製した。4aの収率:5.8g(68%)e) 1,4−ビス(5−マロニル−1−ペンチルオキシ)−2,3−ビス(2,3,4−トリ−O−ベンジル−α−L−フコピラノシル)−D−トレイトール(5a)の合成4a(5.8g、4.64mmol)、ジメチルマロネート(243ml)、炭酸カリウム(12.49g)及びジベンゾ−18−クラウン−6(3.35g)の混合物を、100℃で3時間攪拌した。冷却した後、更なる処理のために、その混合物をジクロロメタン(2.5リットル)で希釈し、吸引しながらケイソウ土を通し濾過した。次いで、水層のpHが中性になるまで、有機層を水(110ml)とドライアイスで交互に処理した。硫酸ナトリウムで乾燥し、続いて濾過及び濃縮し、次いで残留物をクロマトグラフィー(ヘキサン/酢酸エチル4:1→3:1→2:1)に付し、5a(5.6g、94%)を得た。
1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ=1.10(d,6H, 2 CH3fuc), 1.26(m, 12H, 6 CH2), 1.47(m, 4H), 1.83(m, 4H), 3.70(2 s, 12H, 4 COOCH3), 5.29(d, 2H, 2 1-Hfuc)
【0053】f) 1,4−ビス(5−マロニル−1−ペンチルオキシ)−2,3−ビス(α−L−フコピラノシル)−D−トレイトール(6a)の合成メタノール/ジオキサン(10:1、330ml)中の5a(2.8g、2.19mmol)とパラジウムカーボン(10%、2.8g)の混合物を、標準圧下で24時間、水素雰囲気中、水素添加した。パラジウムカーボンを濾取し、残っている混合物を濃縮し、1M水酸化ナトリウム溶液(100ml)で処理した。2時間後、その混合物をアンバーライトIR−120で中和し、水/メタノール(9:1→1:9)を用いたRPシリカゲル(C18 Bakerbond 60オングストローム)を通して精製した。6a(1.11g、67%)を得た。
1H-NMR(300 MHz, CDCl3):δ=1.17(d, 6H, 2 CH3fuc), 1.26(m, 4H, 2 CH2),1.52(m, 4H, 2 CH2), 1.66(m, 4H, 2 CH2), 4.20(q, 2H, 2 5-Hfuc), 5.07(d,2H, 2 1-Hfuc)
【0054】実施例2a) 1−(5−マロニル−1−ペンチルオキシ)−2,3,4−トリス(α−L−フコピラノシル)−D−トレイトール(2b)の合成化合物2bは、1aの代わりに1bを用いること以外は、6aと同様な方法により合成した。
1H-NMR(300 MHz, D2O):δ=1.18(3 d, 9H, 3 CH3fuc), 1.26(m, 2H, CH2), 1.53(m, 2H, CH2), 1.67(m, 2H, CH2), 4.84, 5.06, 5.16(3 d, 3H, 3 1-Hfuc)
【0055】実施例3a) ビス(4−マロニル−1−ブチルオキシ)−ビス(α/β−L−フコピラノシル)−ペンタエリトリトール(1c)の合成化合物1cは、2,3−O−イソプロピリデン−D−トレイトールの代わりにO−イソプロピリデン−ペンタエリトリトールを用いること以外は、6aと同様な方法により合成した。
1H-NMR(300 MHz, D2O):δ=1.10, 1.12(2 d, 6H, 2 CH3fuc), 4.17, 4.19, 4.70(3 d, 2H, 2 1-Hfuc)
【0056】実施例4a) 1,2−ビス(α−L−フコピラノシル)−3−(5−マロニル−1−ペンチルオキシ)−D−グリセロール(1d)の合成化合物1dは、2,3−O−イソプロピリデン−D−トレイトールの代わりにD−α/β−イソプロピリデン−グリセロールを用いること以外は、6aと同様な方法により合成した。
1H-NMR(300 MHz, D2O):δ=1.10(2 d, 6H, 2 CH3fuc), 4.75, 4.96(2 d, 2H,2 1-Hfuc)
【0057】実施例5a) 1,2,5,6−テトラキス(α−L−フコピラノシル)−3,4−ビス(5−マロニル−1−ペンチルオキシ)−D−マンニトール(1e)の合成化合物1eは、2,3−O−イソプロピリデン−D−トレイトールの代わりに1,2:5,6−ジ−O−イソプロピリデン−D−マンニトールを用いること以外は、6aと同様な方法により合成した。
1H-NMR(300 MHz, D2O):δ=1.10(d, 12H, 4 CH3fuc), 4.26, 4.79, 5.07(3 d, 2H, 2 1-Hfuc)

【特許請求の範囲】
【請求項1】 式I
【化1】


(式中、R5及びR6は、互いに独立に、H、OH、COOH、NH2、NHAc、O(CH2)c1、(CH2)c1、CH2O(CH2)c1又はZであり、A、B、D、E及びGは、互いに独立に、O、S、−NH、−HN−C(O)−、−(O)C−NH−、−O−C(O)−、−(O)C−O−、NH−C(O)−O、O−C(O)−NH、NH−C(O)−NH、S−C(O)−、(S)C−O、O−C(S)−S、S−C(S)−O、NH−C(S)−S、S−C(S)−NH、−CH2−、−O−CH2−、CH2−O−、CH2−NH−又はNH−CH2であり、V1及びV2は、互いに独立に、炭素原子又は窒素原子であり、窒素原子の場合にはR5及びR6はなく、Q及びYは、互いに独立に、−(CX2,X3)b−、−(CX2,R7)b−、−(CR7,R8)b−、−CH2−(CX2,X3)b−又は飽和若しくは不飽和の、5員若しくは6員の炭素環若しくは複素環、又は−(CX2,X3)b−、−(CX2,R7)b−、若しくは−(CR7,R8)b−及び炭素環若しくは複素環との組合せであり、このときR7及びR8は、互いに独立に、H、OH、COOH、NH2、NH−C(O)−CH3、−O(CH2)d1又はCH2O(CH2)d1であり、そしてX1、X2及びX3は、互いに独立に、H、NH2、COOH、OH、CH2OH、CH2NH2、C1〜C20−アルキル又はC6〜C10−アリールであり、K及びLは、互いに独立に、H−C−GZ又はCH2であり、R1、R2、R3及びR4は、互いに独立に、H、OH又はG−Zであり、Zは、ピラノシド、C6位で連結されるピラノシル残基、C6位で連結されるアルキルピラノシド、フラノシド、C5位で連結されるアルキルフラノシド又はポリアルコールで、それらの一又はそれ以上のヒドロキシル基は、互いに独立に、任意の位置でGに連結されるR7又はR8によって置換されていてもよくそしてa、b、c、d、l、m、n、p、q、t、v、w、x及びyの指数は、互いに独立に、0から20までの整数であり、そして又r及びzは、互いに独立に、0又は1であり、そしてrが0であるときq及びtは0であり、R2及びR3はない)の化合物。
【請求項2】 aが1であり、R5がHであり、V1がCであり、A及びYがCH2であり、BがO−CH2であり、DがCH2−Oであり、r、p及びwが0であり、そしてR1及びR4がG−Zである請求項1に記載の化合物。
【請求項3】 Zが1であり、Q及びEがCH2であり、V2がCであり、そしてR6がHである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項4】 l、m、y及びxが0であり、GがOであり、そしてZがピラノシドである請求項1から3のいずれかに記載の化合物。
【請求項5】 ZがL−フコシドである請求項1から4のいずれかに記載の化合物。
【請求項6】 Zが0であり、そしてR6がZである請求項1又は2に記載の化合物。
【請求項7】 l及びmが0であり、GがOであり、そしてZがピラノシドである請求項1、2又は6のいずれかに記載の化合物。
【請求項8】 ZがL−フコシドである請求項1、2、6又は7のいずれかに記載の化合物。
【請求項9】 aがlであり、R1、R4及びR5がHであり、V1がCであり、A及びYがCH2であり、B及びDがOであり、p及びwが0であり、rが1であり、KがCH2であり、そしてR2及びR3がGZである請求項1に記載の化合物。
【請求項10】 zが1であり、Q及びEがCH2であり、V2がCであり、及びR6がHである請求項1又は9に記載の化合物。
【請求項11】 l、m、x及びyが0であり、q及びtが1であり、GがOであり、及びZがピラノシドである請求項1、9又は10のいずれかに記載の化合物。
【請求項12】 ZがL−フコシドである請求項1又は9乃至11のいずれかに記載の化合物。
【請求項13】 aが1であり、R5がHであり、V1がCであり、A及びYがCH2であり、B及びDがOであり、そしてrが0である請求項1に記載の化合物。
【請求項14】 zが1であり、R6がHであり、Q及びEがCH2であり、そしてV2がCである請求項1又は13に記載の化合物。
【請求項15】 l、m、y及びxが0であり、p及びwが2であり、LがH−C−GZであり、R1及びR4がHであり、GがOであり、そしてZがピラノシドである請求項1、13又は14のいずれかに記載の化合物。
【請求項16】 ZがL−フコシドである請求項13乃至15のいずれかに記載の化合物。
【請求項17】 a、p、r、w及びzが0であり、R5及びR6がHであり、V1がCであり、A及びYがCH2であり、BがO−CH2であり、そしてR1及びR4がG−Zである請求項1に記載の化合物。
【請求項18】 l及びmが0であり、GがOであり、そしてZがピラノシドである請求項1又は17に記載の化合物。
【請求項19】 ピラノシドがL−フコシドである請求項1、17又は18のいずれかに記載の化合物。
【請求項20】 式II
【化2】


の受容体の一つの官能基L1又は二つの官能基L1及びL2(この式IIの受容体の残りの官能基及び官能基Ln(それぞれ、n=2〜6又は3〜6)は、必要ならば保護されている)を、供与体IIIL8−A−(Y)n−B−L7 III(この式IIIの供与体は活性化された官能基L7を有する)によって、そしてL2がまた保護されていないならば供与体IVL7−(D)a−(Q)r−E−L8 IV(この式IVの供与体は活性化された官能基L7を有し、残りの官能基及び官能基L8は、必要ならば保護基を有する)によって、同時ににまたは連続して、アルキル化、アシル化またはグリコシル化して、最初に中間体V
【化3】


を製造し、ここで上記の供与体III及びIVは、異なっていても又は同一でもよいものとし、その後で、中間体Vの原子K及びL上の官能基、並びに適当である場合には、官能基L3乃至L6及びL8の保護基を選択的に脱離し、この選択的に脱保護された中間体Vを、一又はそれ以上のグリコシル又はポリオール供与体VIL9−Z VI(式中、L9は活性化された官能基であり、この供与体VIの残りの官能基は必要ならば保護されているものとする)と反応させ、そして官能基L8の選択的脱保護の後に、アルキル供与体VII
【化4】


および適当である場合に、アルキル供与体VIII
【化5】


(式中、L10はカルボキシル保護基であり、そしてL11は、適当である場合には、V1又はV2と組み合わせて、アルキル化基であるものとする)でアルキル化し、そして全ての保護基を脱離することにより、請求項1乃至16のいずれかに記載された式Iの化合物に最終的に変換することからなる、請求項1乃至19のいずれかに記載された式Iの化合物を製造する方法。但し、定義されていない全ての変数は請求項1に記載された意味を有するものとする。
【請求項21】 受容体IIを、まず第一に、式IVの一又はそれ以上のグリコシル又はポリオール供与体と反応させ、次いで供与体IIIと、適当である場合には供与体IVと反応させることことからなる請求項20に記載された方法。
【請求項22】 請求項1乃至19のいずれかに記載された式Iの化合物を少なくとも一つ、又はその薬学的に許容される塩からなる医薬。
【請求項23】 疾病により影響される組織で過剰なセレクチン受容体に媒介された細胞接着に関連した疾病の治療又は予防のための医薬を製造するための請求項1乃至19のいずれかに記載された式Iの化合物の使用。
【請求項24】 疾病が自己免疫疾患である請求項23に記載された使用
【請求項25】 疾病が心臓血管の疾患である請求項23に記載された使用。
【請求項26】 疾病により影響される組織で過剰なセレクチン受容体に媒介された細胞接着に関連した疾病の診断のための組成物を製造するための請求項1乃至19のいずれかに記載された式Iの化合物の使用。

【公開番号】特開平9−249685
【公開日】平成9年(1997)9月22日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−9998
【出願日】平成9年(1997)1月23日
【出願人】(590000145)ヘキスト・アクチェンゲゼルシャフト (15)