説明

接続装置

【解決手段】 無菌培養システム1は、第1開口部2bおよび第1蓋体12を備えたアイソレータ2と、第2開口部3bおよび第2蓋体13を備えたインキュベータ3と、これらの内部空間を連通させる接続装置4とを備えている。
また接続装置は、上記アイソレータとインキュベータとを連結した際に、上記第1蓋体、第2蓋体を囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間S1を形成する密封手段14と、上記第1蓋体、第2蓋体を結合する蓋体結合手段15と、上記除染空間に除染媒体を供給する除染媒体供給手段7とを備えている。
そして、上記除染空間を除染媒体により除染した状態で、上記第1蓋体、第2蓋体を一体的に開かせることで、上記アイソレータの内部空間とインキュベータの内部空間とを連通させるようになっている。
【効果】 様々な形態の密閉ボックスに利用することが可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は接続装置に関し、詳しくは第1開口部および該第1開口部を開閉する第1蓋体を備えた第1密閉ボックスの内部空間と、第2開口部および該第2開口部を開閉する第2蓋体を備えた第2密閉ボックスの内部空間とを、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら上記第1開口部および第2開口部を介して相互に連通させ、または、相互に連通させた状態から、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら連通を解除させる密閉ボックスの接続装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、第1開口部および該第1開口部を開閉する第1蓋体を備えた第1密閉ボックスの内部空間と、第2開口部および該第2開口部を開閉する第2蓋体を備えた第2密閉ボックスの内部空間とを、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら上記第1開口部および第2開口部を介して相互に連通させる接続装置が知られている。
このような接続装置としては、いわゆるRTP(Rapid Transfer Port)を用いたものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3445813号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記特許文献1にかかるRTPを用いた接続装置では、バヨネット継手により接続するようになっており、着脱には回転動作を伴なうため、回転させる密閉ボックスは軽量で扱い易いものに制限され、また第1開口部および第2開口部の形状を円形としなければならず、その形状が制限されるという問題があった。
また、上記特許文献1の構成では、両蓋体の表面同士を密着させることで外部雰囲気に露出される面を封じ込めるようにしているが、密着させた面の周縁部を確実に封じ込めることは難しく、この部分については外部雰囲気と内部空間の両方で露出されている恐れがあった。
そのため、この部分に付着した微生物や細菌、ウイルス等の有害物が、外部雰囲気から内部空間へ持ち込まれ、または、内部空間から外部雰囲気へ流出する危険性があった。
このような課題に鑑み、本発明は様々な形態の密閉ボックスに利用可能であって、外部雰囲気から内部空間への有害物の持ち込み、または内部空間から外部雰囲気への有害物の流出を確実に回避するようにした接続装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
すなわち、請求項1の発明にかかる接続装置は、第1開口部および該第1開口部を開閉する第1蓋体を備えた第1密閉ボックスの内部空間と、第2開口部および該第2開口部を開閉する第2蓋体を備えた第2密閉ボックスの内部空間とを、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら上記第1開口部および第2開口部を介して相互に連通させる接続装置において、
上記第1密閉ボックスまたは第2密閉ボックスの少なくともいずれか一方に設けられて、これら第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続し、かつ、上記第1蓋体と第2蓋体とを囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間を形成する密封手段と、
上記第1蓋体または第2蓋体の少なくともいずれか一方に設けられ、上記第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続した際に、上記第1蓋体および第2蓋体を一体的に結合する蓋体結合手段と、
上記除染空間に除染媒体を供給する除染媒体供給手段とを備え、
上記密封手段により第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続するとともに、上記蓋体結合手段により結合された第1蓋体および第2蓋体によって上記第1開口部および第2開口部を閉鎖した状態で、上記除染媒体供給手段によって上記除染空間を除染媒体で除染し、この状態で上記第1蓋体および第2蓋体を一体的に開放させて上記第1密閉ボックスの内部空間と第2密閉ボックスの内部空間とを連通させることを特徴としている。
【0006】
また請求項2の発明にかかる接続装置は、第1開口部および該第1開口部を開閉する第1蓋体を備えた第1密閉ボックスの内部空間と、第2開口部および該第2開口部を開閉する第2蓋体を備えた第2密閉ボックスの内部空間とを、上記第1開口部および第2開口部を介して相互に連通させた状態から、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら連通を解除させて接続を解除させる接続装置において、
上記第1密閉ボックスまたは第2密閉ボックスの少なくともいずれか一方に設けられて、これら第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続し、かつ、上記第1蓋体と第2蓋体とを囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間を形成する密封手段と、
上記第1蓋体または第2蓋体の少なくともいずれか一方に設けられ、上記第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続した際に、上記第1蓋体および第2蓋体を一体的に結合する蓋体結合手段と、
上記除染空間に除染媒体を供給する除染媒体供給手段とを備え、
上記密封手段により第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続するとともに、上記蓋体結合手段により結合された第1蓋体および第2蓋体によって上記第1開口部および第2開口部を閉鎖した状態で、上記除染媒体供給手段によって上記除染空間を除染媒体で除染し、この状態で第1密閉ボックスと第2密閉ボックスの接続を解除させることを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
上記請求項1および請求項2の発明にかかる接続装置によれば、様々な形態の密閉ボックスの接続に採用することが可能であって、外部雰囲気から内部空間への有害物の持ち込み、または内部空間から外部雰囲気への有害物の流出を確実に回避しながら、第1密閉ボックスと第2密閉ボックスを接続させて内部空間を相互に連通させ、または、相互に連通させた状態から連通を解除させて、第1密閉ボックスと第2密閉ボックスの接続を解除させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本実施例にかかる無菌培養システムの構成図。
【図2】本発明にかかる接続装置を示す平面図。
【図3】アイソレータとインキュベータの接続を解除した状態での接続装置の断面図であって、(a)は図2のa−a部の断面図を、(b)は図2のb−b部の断面図を示す。
【図4】インキュベータの第2蓋体を示す正面図。
【図5】アイソレータとインキュベータを接続した状態での接続装置の断面図であって、(a)は図2のa−a部の断面図を、(b)は図2のb−b部の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下図示実施例について説明すると、図1は細胞や組織を培養する無菌培養システム1を示し、第1密閉ボックスとしてのアイソレータ2と、第2密閉ボックスとしてのインキュベータ3と、これらアイソレータ2とインキュベータ3を接続させる接続装置4とを備え、この無菌培養システム1は図示しないが同じ構成を有する上記インキュベータ3を複数備えている。
アイソレータ2とインキュベータ3とは、図2に示すように連結手段5としてのフック5aと、該フック5aに係合するリング5bとによって接続されるようになっている。
【0010】
上記アイソレータ2の内部空間2Aは外部雰囲気より隔離され、通常は図示しないエアコンデショナが供給する無菌エアによって陽圧に保たれている。側面には作業者が装着して無菌操作を行うためのグローブ6が設けられている。
アイソレータ2の外部には、過酸化水素蒸気などの除染媒体を供給する除染媒体供給手段7が設けられ、配管8が開閉弁8aを介してアイソレータ2の内部空間2Aに接続されている。
またアイソレータ2には上記除染媒体供給手段7が供給した除染媒体を排出するための排気管9が接続され、該排気管9にはフィルタ9aと、除染媒体を分解するための触媒9bとが設けられている。
このような構成により、作業者がアイソレータ2の外部からグローブ6を装着することにより、無菌環境の内部空間2Aにおいて細胞の播種、培地交換、継代といった培養に伴なう作業を行うことができる。
これらの作業を終えた細胞は、アイソレータ2に接続したインキュベータ3に収容されるようになっており、このインキュベータ3をアイソレータ2から分離することで、アイソレータ2から離隔した位置で上記細胞の培養を行うことが可能となっている。
その後、アイソレータ2に異なるインキュベータ3を接続することで、別の細胞の作業を行うことが可能となっており、その際、作業の前後において除染媒体により内部空間2Aを除染することで、該内部空間2Aの無菌状態を維持することができ、細胞同士のクロスコンタミネーションを防止することができる。
【0011】
上記インキュベータ3の内部空間3Aは外部雰囲気より隔離され、内部空間3Aに培養容器を収容するようになっている。また、インキュベータ3は台車3Bに載置され移動可能となっている。
インキュベータ3には、外部から炭酸ガス等の培養に適した気体が供給可能となっており、図示しないファンによって該気体が内部空間3Aに吹き出されるようになっている。また内部空間3Aは図示しないヒータによって所定温度に保温されるようになっている。
そして、上記インキュベータ3における上記接続装置4の近傍には接続手段10の接続部10aが設けられており、該接続部10aには気体を流通させる配管10Aおよび電力を供給するための配線10Bが連結されており、この接続部10aをアイソレータ2に設けた接続部10bに接続することで、アイソレータ2からインキュベータ3へと上記気体を供給するとともに、電力を供給することが可能となっている。
【0012】
図2、図3に示すように、アイソレータ2の側壁2aには第1開口部2bが形成され、該第1開口部2bに設けた接続ポート11は第1蓋体12によって開閉されるようになっている。
また、インキュベータ3の側壁3aには第2開口部3bが形成され、該第2開口部3bは第2蓋体13によって開閉されるようになっている。
そして上記接続装置4は、上記アイソレータ2とインキュベータ3とを接続し、上記第1蓋体12と第2蓋体13とを囲んで外部雰囲気から離隔された除染空間S1を形成する密封手段14を備えている(図5参照)。
さらに接続装置4は、上記第1蓋体12および第2蓋体13を一体的に結合する蓋体結合手段15と、該蓋体結合手段15によって第1蓋体12と第2蓋体13とが結合された際に、該蓋体結合手段15の周囲を覆う蓋体内部空間S2を形成する区画手段16を備えている(図5参照)。
【0013】
上記アイソレータ2の第1開口部2bは四隅が円弧状とされた略長方形を有しており、これに対応して上記接続ポート11が設けられている。
この接続ポート11は、上記第1開口部2bの周縁部に装着された環状部材21と、該環状部材21におけるアイソレータ2の内部側に設けられた樹脂製の内側シール部材22と、外部側に設けられた樹脂製の外側シール部材23とから構成されている。
上記環状部材21は上記アイソレータ2の第1開口部2bの周縁に沿って気密を保った状態で固定されるとともに、アイソレータ2の側壁2aから外部に向けて突出するように設けられている。
そして該環状部材21におけるアイソレータ2より外部に突出した部分には、上記除染媒体供給手段7から除染媒体を供給する配管24が開閉弁24aを介して接続されるとともに、除染媒体を排出するための排気管25が接続され、この排気管25にはフィルタ25aおよび触媒25bが設けられている(図1参照)。
上記内側シール部材22は、上記環状部材21におけるアイソレータ2の内部空間側に形成した平坦面に設けられ、この内側シール部材22に上記第1蓋体12が密着することで、第1開口部2bが密閉されるようになっている。
第1蓋体12はヒンジ26に軸支されるとともに開閉レバー27を備えており、側壁2aの内面に設けた留め具28に開閉レバー27を係合させることで、第1蓋体12が第1シール部材22に押し付けられるようになっている。
上記ヒンジ26および開閉レバー27は、それぞれアイソレータ2の内部空間2A側に設けられており、このヒンジ26によって第1蓋体12はアイソレータ2の内部空間2A側に開くようになっている。
また、上記開閉レバー27は、作業者がアイソレータ2のグローブ6を装着することにより、アイソレータ2の内部空間2A側から操作するようになっている。
【0014】
第1蓋体12は、図3に示すように扁平な箱状に形成したものであって、アイソレータ2の外部側を向いた長方形の開口部12aが形成され、該開口部12aの外周部分には平坦部12bが設けられている。
上記平坦部12bは上記接続ポート11の内側シール部材22との当接面となっており、この当接面のさらに内周には、上記開口部12aを囲繞するように設けられた樹脂製の第1シール部材31が設けられている。
さらに上記開口部12aの内側には、上記蓋体結合手段15を構成する一組のエアシリンダ32A、32Bと、該エアシリンダ32A、32Bによって互いに接近離隔する一対の把持部材33A、33Bとを備えている。
上記エアシリンダ32A、32Bは互いに反対方向にピストンロッド32Aa、32Baを出退動させるように配置され、これらピストンロッド32Aa、32Baの先端に上記把持部材33A、33Bが取り付けられている。
各把持部材33A、33Bには、円錐凹状の挿入孔が形成された当接部33Aa、33Baが、互いに対向するようにそれぞれ2つずつ設けられている
また上記エアシリンダ32A、32Bに作動エアを供給するエア配管32Aa、32Baは、アイソレータ2の内部空間2Aに気密を保った状態で引き込まれている。
【0015】
上記第2蓋体13は、図3に示すようにトレー状に形成され、インキュベータ3の第2開口部3bを密閉する底部13aと、底部13aの周緑部からアイソレータ2側に立設された周壁13bと、周壁13bから外側に折り返して形成した周縁面13cとを備えている。
この周縁面13cは、第1蓋体12と第2蓋体13とを一体的に結合した際に、第1蓋体12の第1シール部材31と密着して上記区画手段16を構成するようになっており、これにより第1蓋体12の内部空間と第2蓋体13の内部空間とからなる蓋体内部空間S2を形成するようになっている。
この第2蓋体13の周壁13bの内側には、第1蓋体12に設けた把持部材33A、33Bによって把持され、上記第2蓋体13を第1蓋体12に結合させるとともに、第2蓋体13によるインキュベータ3の第2開口部3bの密閉を解除させる動作手段41が設けられている。
図4に示すように、この動作手段41は、上記第1蓋体12に設けた把持部材33A、33Bによって把持される一対の被把持部材42A、42Bと、各被把持部材42A、42Bより相互に離隔する方向に立設されたロックピン43A、43Bと、このロックピン43A、43Bを摺動可能に支持する支持部材44A、44Bとから構成されている。
上記ロックピン43A、43Bはそれぞれ上記被把持部材42A、42Bに2本ずつ設けられており、その先端は円錐状に形成されるとともに気密を保った状態で周壁13bを貫通して外周側に突出するように設けられており、ロックピン43A、43Bを周壁13bの外周側に向けて付勢するスプリング45A、45Bが設けられている。
また上記被把持部材42A、42Bおける上記ロックピン43A、43Aおよびロックピン43B、43Bの間には、それぞれ2本ずつ係合ピン46A、46Bが立設されている。
この係合ピン46A、46Bの先端は円錐状に形成されており、第1蓋体12の把持部材33A、33Bが把持動作すると、上記当接部33Aa、33Baの円錐凹状の挿入孔に誘い込まれるようになっている。
さらに、上記周壁13bの外面には、上記ロックピン43A、43Aおよびロックピン43B、43Bの中間となる位置に、それぞれ係合片47A、47Bが設けられている。
また、被把持部材42A,42Bの間には、互いの接近量を規制するストッパ48A,48Bが設けられている。
【0016】
上記インキュベータ3には、その側壁3aに四隅が円弧状とされた略長方形の第2開口部3bが形成され、その第2開口部3bの周縁に沿って第2シール部材51を設けるとともに、この第2シール部材51のさらに外周を囲繞するように突出部材52が設けられている。
上記第2シール部材51は上記第2蓋体13の底部13aと密着するようになっており、これにより第2開口部3bを密閉するようになっている。
上記突出部材52は、アイソレータ2とインキュベータ3を接続した際に、上記接続ポート11の環状部材21に設けた外側シール部材23と密着する上記密封手段14を構成しており、この密封手段14により第1蓋体12と第2蓋体13とを囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間S1を形成するようになっている。
上記インキュベータ3における第2シール部材51と突出部材52の間には、上記第2蓋体13に設けたロックピン43A、43Bの先端が差し込まれるピン係合部材53A、53Bが設けられている。
これらピン係合部材53A、53Bは、それぞれ2つずつ設けられたロックビン43A、43Aおよびロックピン43B、43Bの間隔に合わせて2つずつ配置されており、それぞれ円錐凹状の挿入孔が上記ロックピン43A、43Bの先端に対向するように形成されている。
そして、この挿入孔にロックピン43A、43Bの先端が挿入されることで、インキュベータ3に第2蓋体13が固定されるようになっている。
上記ピン係合部材53A、53Aおよびピン係合部材53B、53Bの中間には、上記第2蓋体13の周壁13bに設けた係合片47A、47Bと係合する係合ピン54A、54Bが設けられている。
【0017】
以上の構成を有する接続装置4の使用方法について説明する。
図3は、アイソレータ2とインキュベータ3とが分離した状態を示し、アイソレータ2は第1蓋体12により密閉され、インキュベータ3は第2蓋体13により密閉された状態となっている。
このときアイソレータ2では、上記第1蓋体12は開閉レバー27によってアイソレータ2に設けた接続ポート11の内側シール部材22に密着させられており、アイソレータ2の内部空間2Aは外部雰囲気から隔離された状態となっている。
一方、インキュベータ3では、該インキュベータ3に設けた係合ピン54A、54Bが第2蓋体13の係合片47A、47Bに係合し、また第2蓋体13に設けたスプリング45A、45Bによって付勢されたロックピン43A,43Bが、インキュベータ3に設けたピン係合部材53A、53Bに係合した状態となっている。
その結果、上記第2蓋体13がインキュベータ3の第2シール部材51に密着し、これによりインキュベータ3の内部空間3Aは外部雰囲気から隔離された状態となっている。
【0018】
図5はアイソレータ2とインキュベータ3とを接続した状態を示し、上記密封手段14によって上記除染空間S1を形成するとともに、上記蓋体結合手段15によって第1蓋体12、第2蓋体13が結合され、かつ区画手段16によって蓋体内部空間S2が形成された状態を示している。
まず、作業者がインキュベータ3を移動させて、インキュベータ3に設けた突出部材52を、アイソレータ2に設けた環状部材21の外側シール部材23に密着させ、さらに連結手段5によってアイソレータ2とインキュベータ3とを連結する。
これにより、アイソレータ2とインキュベータ3は接続され、環状部材21に設けた外側シール部材23と突出部材52とからなる密封手段14によって、上記第1蓋体12、第2蓋体13を囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間S1が形成される。
なお、密封手段14は、アイソレータ2とインキュベータ3のいずれか一方に設けられていてもよい。例えば、上記突出部材52を樹脂製としてこれをアイソレータ2の開口部2bの外周に密着させる構成とすることで、上記外側シール部材23を省略することが可能となる。
一方、上記第2蓋体13の周縁面13cが第1蓋体12の第1シール部材31に密着され、この状態からエアシリンダ32A、32Bがシリンダロッド32Aa、32Baを一斉に後退させて把持部材33A、33Bを相互に接近させ、当接部33Aa、33Baが相互に接近して第2蓋体13に設けた被把持部材42A、42Bに設けた係合ピン46A,46Bに係合する。
さらに、エアシリンダ32A、32Bはロックピン43A,43Bを付勢しているスプリング45A,45Bの付勢力に抗して被把持部材42A,42Bをストッパ48A,48Bに当接するまで接近させる。
これにより、エアシリンダ32A,32Bや把持部材33A,33Bからなる蓋体結合手段15により、第1蓋体12と第2蓋体13とが一体的に結合され、この際に、上記第2蓋体13の周壁13bと第1蓋体12の第1シール部材31とによって、上記蓋体結合手段15の周囲を覆う蓋体内部空間S2が形成される。
なお、蓋体結合手段15や区画手段16は、少なくとも第1蓋体12と第2蓋体13のいずれか一方に設けられていればよい。
【0019】
さらにこの状態では、上記被把持部材42A、42Bに設けたロックピン43A、43Bがインキュベータ3に設けたピン係合部材53A、53Bより離脱し、これにより第2蓋体13による第2開口部3bの密閉が解除される。
この状態において、開閉弁24aを開いて上記除染媒体供給手段7から配管24を介して上記除染空間S1に除染媒体を供給する。これにより上記除染空間S1の全域が除染される。
詳しくは、外部雰囲気に露出していた部分であって、一体的に結合された第1蓋体12と第2蓋体13とを開放してアイソレータ2の内部空間2Aとインキュベータ3の内部空間3Aとを連通させた際に、これら内部空間2A,3Aに露出される部分の全てが除染される。
これにより、この部分に付着した微生物や細菌、ウイルス等の有害物が外部雰囲気から内部空間2A,3Aへ持ち込まれることが確実に回避される。
一方、上記区画手段16によって蓋体内部空間S2に除染媒体が入り込まないようにされていることから、該蓋体内部空間S2に位置する蓋体結合手段15や動作手段41の腐食等を防止することができる。
そして、除染空間S1の全域を十分に除染できるだけの時間が経過すると、除染媒体供給手段7からの除染媒体の供給を停止させてから、同じ配管24を介して無菌エアを流通させるとともにこれを排気管25から排出させ、除染空間S1の除染媒体を除去するエアレーションを所定時間実行する。
ここで、上記密封手段14により形成された除染空間S1は、第1蓋体12と第2蓋体13の周囲を囲むだけの小さな空間であるため、短時間で除染、エアレーションを完了することができる。
【0020】
除染およびエアレーションが完了すると、作業者は上記アイソレータ2に設けたグローブ6を装着して該アイソレータ2の内部から開閉レバー27を操作し、一体的に結合された第1蓋体12および第2蓋体13をアイソレータ2の内部に向けて開き、アイソレータ2の内部空間2Aとインキュベータ3の内部空間3Aとを相互に連通させる。
このとき、上記除染空間S1に露出していた部分は除染されており、また第1蓋体12、第2蓋体13の蓋体内部空間S2は区画手段16によって密閉されていることから、外部雰囲気に露出されていた部分が除染されずにアイソレータ2の内部空間2Aとインキュベータ3の内部空間3Aとが連通した空間に露出することはない。
また、上記アイソレータ2とインキュベータ3とを接続することにより、インキュベータ3に設けた接続部10aがアイソレータ2に設けた接続部10bに接続されて、気体や電力の供給が行われるため、インキュベータ3を移動させる際の配管や配線の取り回しが簡易となる。
【0021】
インキュベータ3とアイソレータ2との接続を解除させる際には、まず作業者は開閉レバー27を操作して上記第1蓋体12および第2蓋体13を一体的に閉鎖する。
これにより、アイソレータ2の内部空間2Aとインキュベータ3の内部空間3Aとの連通が解除され、アイソレータ2とインキュベータ3との間には、上記密封手段14によって、上記第1蓋体12、第2蓋体13を囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間S1が再び形成される。
この状態で、アイソレータ2の内部空間2Aで扱った細胞や組織が、微生物や細菌、ウイルス等の有害物に汚染されている可能性が懸念される場合には、再び上記除染媒体供給手段7から上記除染空間S1に除染媒体を供給するとともに、除染空間S1の除染媒体を除去するエアレーションを所定時間実行し、上記除染空間S1の全域を除染する。
その後、上記蓋体結合手段15のエアシリンダ32A、32Bが上記把持部材33A,33Bを相互に離隔させ、これによりインキュベータ3のピン係合部材53A,53Bに第2蓋体13のロックピン43A,43Bが係合し、さらに上記当接部33Aa,33Baが係合ピン46A,46Bより離脱する。これにより、第1蓋体12と第2蓋体13との結合が解除される。
そして、作業者が上記連結手段5を操作してリング5bをフック5aから離脱させることで、インキュベータ3とアイソレータ2との接続を解除させることができ、インキュベータ3を任意の場所まで移動させることが可能となる。
【0022】
このように、アイソレータ2とインキュペータ3との接続を解除させる際に、上記除染空間S1を除染することで、アイソレータ2の内部空間2Aとインキュベータ3の内部空間3Aとを連通させた際に内部空間に露出される部分であって、アイソレータ2とインキュベータ3との接続を解除させた際に、外部雰囲気に露出される部分の全てが除染される。
これにより、この部分に付着した微生物や細菌、ウイルス等の有害物が内部空間から外部雰囲気へ流出することが確実に回避される。
【0023】
以上のように、本実施例における接続装置4によれば、特許文献1のように着脱させる際に第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを相対的に回転させる必要はなく、アイソレータ2やインキュベータ3といった、回転させることが困難な様々な形態の密閉ボックスの接続に採用することが可能である。
【0024】
なお、上記インキュベータ3をアイソレータ2に接続しない状態で開放する場合は、被把持部材42A、42Bを手で接近させることで、第2蓋体13を開くことが可能であるが、別途開放できるよう扉等を設けても良い。
なお、蓋体結合手段15の駆動手段としては限らずしもエアシリンダ32A、32Bである必要はなく、その他のアクチエータや、または、ハンドルやレバーによりアイソレータ2の内側から作業者が動作させるよう構成しても良い。
【符号の説明】
【0025】
1 無菌培養システム 2 アイソレータ
2b 第1開口部 3 インキュベータ
3b 第2開口部 4 接続装置
12 第1蓋体 13 第2蓋体
14 密封手段 15 蓋体結合手段
16 区画手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1開口部および該第1開口部を開閉する第1蓋体を備えた第1密閉ボックスの内部空間と、第2開口部および該第2開口部を開閉する第2蓋体を備えた第2密閉ボックスの内部空間とを、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら上記第1開口部および第2開口部を介して相互に連通させる接続装置において、
上記第1密閉ボックスまたは第2密閉ボックスの少なくともいずれか一方に設けられて、これら第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続し、かつ、上記第1蓋体と第2蓋体とを囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間を形成する密封手段と、
上記第1蓋体または第2蓋体の少なくともいずれか一方に設けられ、上記第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続した際に、上記第1蓋体および第2蓋体を一体的に結合する蓋体結合手段と、
上記除染空間に除染媒体を供給する除染媒体供給手段とを備え、
上記密封手段により第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続するとともに、上記蓋体結合手段により結合された第1蓋体および第2蓋体によって上記第1開口部および第2開口部を閉鎖した状態で、上記除染媒体供給手段によって上記除染空間を除染媒体で除染し、この状態で上記第1蓋体および第2蓋体を一体的に開放させて上記第1密閉ボックスの内部空間と第2密閉ボックスの内部空間とを連通させることを特徴とする接続装置。
【請求項2】
第1開口部および該第1開口部を開閉する第1蓋体を備えた第1密閉ボックスの内部空間と、第2開口部および該第2開口部を開閉する第2蓋体を備えた第2密閉ボックスの内部空間とを、上記第1開口部および第2開口部を介して相互に連通させた状態から、両者の外部雰囲気に対する密閉状態を維持しながら連通を解除させて接続を解除させる接続装置において、
上記第1密閉ボックスまたは第2密閉ボックスの少なくともいずれか一方に設けられて、これら第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続し、かつ、上記第1蓋体と第2蓋体とを囲んで外部雰囲気から隔離された除染空間を形成する密封手段と、
上記第1蓋体または第2蓋体の少なくともいずれか一方に設けられ、上記第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続した際に、上記第1蓋体および第2蓋体を一体的に結合する蓋体結合手段と、
上記除染空間に除染媒体を供給する除染媒体供給手段とを備え、
上記密封手段により第1密閉ボックスと第2密閉ボックスとを接続するとともに、上記蓋体結合手段により結合された第1蓋体および第2蓋体によって上記第1開口部および第2開口部を閉鎖した状態で、上記除染媒体供給手段によって上記除染空間を除染媒体で除染し、この状態で第1密閉ボックスと第2密閉ボックスの接続を解除させることを特徴とする接続装置。
【請求項3】
上記第1蓋体または第2蓋体の少なくともいずれか一方に設けられ、これら第1蓋体と第2蓋体とが上記蓋体結合手段によって結合された際に、該蓋体結合手段の周囲を覆う蓋体内部空間を形成する区画手段を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の接続装置。
【請求項4】
上記第1密閉ボックスは内部空間が無菌状態に維持されるアイソレータであり、上記第2密閉ボックスは内部空間で細胞や組織を培養するインキュベータであって、
上記インキュベータに気体を供給する配管または電力を供給する配線の接続部を上記アイソレータに設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項3に記載の接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−50289(P2011−50289A)
【公開日】平成23年3月17日(2011.3.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−201013(P2009−201013)
【出願日】平成21年8月31日(2009.8.31)
【出願人】(000253019)澁谷工業株式会社 (503)
【Fターム(参考)】