説明

接続金具ホルダー及び該接続金具ホルダーを備えた管体への接続金具取付用治具

【課題】 配管施工現場において管体に対する接続金具挿入の操作性を良好なものとする接続金具ホルダー及び該接続金具ホルダーを用いた接続金具取付用治具を提供する。
【解決手段】 管体への接続金具取付用治具の接続金具ホルダー保持部13に取り付けられる接続金具ホルダーである。接続金具Kの空洞内に挿入される端部1と、該端部1に連なり前記接続金具Kと組み合わせて用いられるナットNの空洞内に挿入される中間部2とを備えている。前記端部外周に、前記接続金具の空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる接続金具用仮止め部としてのOリング10が設けられると共に、前記中間部外周に前記ナットNの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなるナット用仮止め部としてのOリング20が設けられている。接続金具取付用治具は、このような接続金具ホルダーHを備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、給水、給湯、冷温水配管などの各種配管における管体への接続金具取付用治具に用いられる接続金具ホルダー及び該接続金具ホルダーを備えた管体への接続金具取付用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
給水、給湯、冷温水配管などの各種配管の所要箇所において、樹脂管等からなる管体が中空の接続金具を介して、所定の機器あるいは別の管体に接続される。接続金具は種々あるが、そのひとつにいわゆるタケノコ溝を有する接続金具がある。
【0003】
このような接続金具は、管体端部へ圧入されるもので、その圧入のために用いられる接続金具取付用治具として、例えば、治具本体に管体を固定し、治具本体の下方に設けられた操作レバーや後退制御レバー、ロックレバーを操作することにより、圧入杆上方の接続金具ホルダーに保持された接続金具を管体の開口端部から管体内に圧入するものとした治具が公知である(例えば、特許文献1及び2参照)。
【0004】
而して、前記圧入杆の一端に取り付けられた前記接続金具ホルダーは、治具本体に固定された管体の開口に向かって延びる棒状突部を備え、該棒状突部が接続金具の空洞に挿入されることにより、接続金具が接続金具ホルダーに保持されるものとなされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特許第2582712号公報
【特許文献2】特開2006−15471号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記の接続金具取付用治具においては、接続金具の空洞に接続金具ホルダーの棒状突部が挿入されているだけであるから、該挿入後に接続金具取付用治具を前記棒状突部が下を向くように傾けると、接続金具が棒状突部から離脱してしまうことがある。特に、接続金具がナットと組み合わされて使用されるタイプのものは、ナットが接続金具の外周で動きやすいために、接続金具からのナットの離脱が起こりやすい。
【0007】
したがって、前記接続金具の空洞への棒状突部の挿入後は、上記のような離脱を防止するために、接続金具取付用治具を前記棒状突部が水平となるように取り扱うか、あるいは接続金具やナットを手で抑えながら取付作業を行わなければならず、いささか操作性が悪いものであった。
【0008】
本発明は、このような技術的背景に鑑みてなされたもので、配管施工現場において管体に対する接続金具挿入の操作性を良好なものとする接続金具ホルダー及び該接続金具ホルダーを用いた接続金具取付用治具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するために、本発明は、下記[1]〜[6]の構成を有する。
[1] 管体保持部と接続金具ホルダー保持部とを備えた管体への接続金具取付用治具の前記接続金具ホルダー保持部に取り付けられ、接続金具の空洞内に挿入される端部外周に、前記接続金具の空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる接続金具用仮止め部が設けられていることを特徴とする接続金具ホルダー。
[2] 管体保持部と接続金具ホルダー保持部とを備えた管体への接続金具取付用治具の前記接続金具ホルダー保持部に取り付けられ、接続金具の空洞内に挿入される端部と、該端部に連なり前記接続金具と組み合わせて用いられるナットの空洞内に挿入される中間部とを備え、前記端部外周に、前記接続金具の空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる接続金具用仮止め部が設けられると共に、前記中間部外周に前記ナットの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなるナット用仮止め部が設けられていることを特徴とする接続金具ホルダー。
[3] 管体保持部と接続金具ホルダー保持部とを備えた管体への接続金具取付用治具の前記接続金具ホルダー保持部に取り付けられ、接続金具の空洞内に挿入される端部と、該端部に連なり前記接続金具と組み合わせて用いられるナットの空洞内に挿入される中間部とを備え、該中間部外周に、前記ナットの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなるナット用仮止め部が設けられていることを特徴とする接続金具ホルダー。
[4] 前記接続金具用仮止め部が前記端部外周の周方向凹溝に嵌め込まれたOリングである前項1又は2に記載の接続金具ホルダー。
[5] 前記ナット用仮止め部が前記中間部外周の周方向凹溝に嵌め込まれたOリングである前項2又は3に記載の接続金具ホルダー。
[6] 前項1〜5のいずれかに記載の接続金具ホルダーを用いた管体への接続金具取付用治具。
【発明の効果】
【0010】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0011】
[1]の発明では、接続金具の空洞内に挿入される接続金具ホルダーの端部外周に、前記接続金具の空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる接続金具用仮止め部が設けられているので、接続金具ホルダーに保持された接続金具と接続金具用仮止め部との間に摩擦抵抗力が発生し、接続金具ホルダーの端部が下向きに傾いたり、完全に下を向いた場合にも接続金具が接続金具ホルダーから不本意に離脱することのない仮止め状態を実現できる。
【0012】
したがって、接続金具取付用治具の姿勢に気を遣ったり、片手で接続金具を抑えたりする必要がなくなるので、操作性、作業性が向上する。
【0013】
また、前記仮止め状態は、接続金具ホルダー内面と接続金具用仮止め部との間の摩擦抵抗力によって保持されているものであるから、接続金具が管体に挿入されて管体から抜け難い所期する取付状態となった後は、前記摩擦抵抗力より僅かに大きい力を加えるだけで、接続金具取付用治具の圧入杆を接続金具の管体から抜出する方向に移動させて、接続金具から前記接続ホルダーを容易に取り外すことができる。
【0014】
[2]の発明では、[1]の発明に加えて、接続金具の空洞内に挿入される端部に連なり前記接続金具と組み合わせて用いられるナットの空洞内に挿入される中間部外周に、前記ナットの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる仮止め部が設けられているので、接続金具ホルダーに保持されたナットと仮止め部との間にも摩擦抵抗力が発生し、より一層、接続金具が接続金具ホルダーから不本意に離脱することのない仮止め状態を実現でき、操作性、作業性が向上する。
【0015】
[3]の発明では、接続金具の空洞内に挿入される端部に連なり前記接続金具と組み合わせて用いられるナットの空洞内に挿入される中間部外周に、前記ナットの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる仮止め部が設けられているので、接続金具ホルダーに保持されたナットと仮止め部との間に摩擦抵抗力が発生し、接続金具が接続金具ホルダーから不本意に離脱することのない仮止め状態を実現でき、作業性が向上する。
【0016】
[4]の発明では、前記仮止め部が前記端部外周の周方向凹溝に嵌め込まれたOリングであるから、確実な仮止め状態が実現される。
【0017】
[5]の発明では、前記仮止め部が前記中間部外周の周方向凹溝に嵌め込まれたOリングであるから、確実な仮止め状態が実現される。
【0018】
[6]の発明では、管体への接続金具取付用治具が前項1〜5のいずれかに記載の接続金具ホルダーを用いたものであるから、前項1〜5のいずれかに記載の効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の接続金具ホルダーの一実施形態の全体斜視図である。
【図2】本発明の接続金具ホルダーの一実施形態の側面図である。
【図3】図2のIII−III線断面図である。
【図4】本発明の接続金具ホルダーと、接続金具取付用治具の接続金具ホルダー保持部と、接続金具及びナットとの関係を示す斜視図である。
【図5】本発明の接続金具ホルダーに保持された接続金具が、管体に挿入される前の状態を示す側面図である。
【図6】接続金具が管体に所期する状態に挿入された直後の側面図である。
【図7】図6のVII−VII線断面図である。
【図8】管体に所期する状態に挿入された接続金具から接続金具ホルダーを取り外した状態の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明に係る接続金具ホルダーH及び該接続金具ホルダーHを備えた管体Pへの接続金具取付用治具Jの一実施形態を、図面を参照しながら具体的に説明する。
【0021】
この実施形態の接続金具ホルダーHは、図に示すように、後述するナットNと組み合わせて用いられるタイプの接続金具用に好適なものである。
【0022】
すなわち、一端に接続金具Kの空洞9内に挿入される円筒状に形成された端部1と、該端部1に連なり前記端部1より径大であって前記ナットNの空洞29内に挿入される円筒状の中間部2とを備えている。
【0023】
また、前記中間部2に連なり該中間部2より径小であって後述の治具Jの接続金具ホルダー保持部13に嵌め込まれる円筒状の段部3と、該段部3の中心部から突出した雄ねじ部4とを備え、該雄ねじ部4にねじ合わされる雌ねじ5によって接続金具ホルダーHは、後述の接続金具取付用治具Jの接続金具ホルダー保持部13に着脱自在に固定されるものである。
【0024】
前記端部1の外周には、周方向に設けられた凹溝1aに弾性材からなるOリング10が嵌め込まれ、該Oリング10が前記接続金具Kの空洞9内面に径方向に圧接する接続金具用仮止め部としての機能を奏するものとなされている。
【0025】
また、前記中間部2の外周には、周方向に設けられた凹溝2aに弾性材からなるOリング20が嵌め込まれ、該Oリング20が前記ナットNの空洞29内面に径方向に圧接するナット用仮止め部としての機能を奏するものとなされている。
【0026】
この接続金具ホルダーHが取り付けられる接続金具取付用治具Jは、図5等に示すように、把持部11と、管体保持部12と、接続金具ホルダー保持部13と、圧入杆14と、操作レバー15等を備えている。
【0027】
前記接続金具ホルダー保持部13は、圧入杆14の一端に直立し、図4に示すように上端部に接続金具ホルダーHの段部3を受けるU字状の受け部13aを備えている。該U字状受け部13aは、下部から上部に行くに従って少しずつ拡開しており、接続金具ホルダーHの取り外し、取り替えが行い易くなされている。
【0028】
なお、この実施形態の接続金具取付用治具Jは、従来公知のものであるので、その構造上の詳細な説明は省略するが、操作レバー15を操作することによって、前記接続金具ホルダー保持部13に保持された接続金具ホルダーH及び該接続金具ホルダーHに保持された接続金具Kを、管体Pに近づけるように圧入杆14を移動させ、管体Pの開口に圧入するものとなされているものである。
【0029】
この実施形態の接続金具ホルダーHに支持される接続金具Kは、図4に示すように、両端が開口した中空のものであっていわゆるタケノコ溝部31とフランジ部32とを備え、該フランジ部32の外径より小径の貫通孔35を有するナットNと組み合わせて用いられる管体継手として用いられるものである。
【0030】
上記構成を有する接続金具ホルダーHを用いた管体Pに対する接続金具Kの取り付け手順について説明すると、先ず始めに、接続金具ホルダーHの段部3を、接続金具ホルダー保持部13の底部に載置した後、ホルダー保持部13から水平方向に突出した雄ねじ部4に雌ねじ5を強く締め合わせて、接続金具ホルダーHを接続金具ホルダー保持部13に固定する。
【0031】
次に、接続金具Kを接続金具ホルダー保持部13に固定された接続金具ホルダーHに近づけ、接続金具Kの空洞9内に接続金具ホルダーHの端部1を挿入した後、ナットNを接続金具Kに挿通し、ナットNの空洞19内に接続金具ホルダーHの中間部2を挿入する。
【0032】
この挿入により、前記端部1のOリング10が接続金具Kの空洞9内面に径方向に圧接すると共に、前記中間部2のOリング20がナットNの空洞29内面に径方向に圧接することにより、接続金具KとナットNとが接続金具ホルダーHから不本意に離脱することのない仮止め状態を実現させる。
【0033】
なお、上記説明では、先に接続金具ホルダーHを接続金具ホルダー保持部13に固定しておいてから、接続金具K及びナットNとを接続金具ホルダーHに仮止めしているが、先に接続金具K及びナットNを接続金具ホルダーHに仮止めし、接続ホルダーHを接続金具K及びナットNごと接続金具ホルダー保持部13に固定しても良い。
【0034】
而して、図5に示す状態から、操作レバー15を操作して圧入杆14を矢印Y1方向に移動させて、接続金具Kを管体Pの開口端部に圧入すると、管体Pの開口端部に接続金具Kが固定される。図6及び図7は、その圧入状態を示すもので、接続金具Kのタケノコ溝部31の頂部が管体Pの内面に食い込んでおり、強固な固定状態が実現されている。
【0035】
この図6及び図7の状態から、操作レバー15と圧入杆14との所定の関係を解除した後、圧入杆14を図6に示す矢印Y2の方向に移動させると、移動開始当初は、前記端部1のOリング10及び前記中間部2のOリング20の摩擦抵抗力により、少し抵抗を受けるが、それに抗してさらに圧入杆14を前記方向に移動させると、管体Pに圧入固定された接続金具K及び接続金具Kと組み合わされたナットNから、接続金具ホルダーHを離脱させることができる。
【0036】
その後、管体Pを管体保持部12から外すことによって、接続金具Kの管体Pへの取り付けが完了する。
【0037】
而して、接続金具Kに組み合わされたナットNを介して管体Pを所定の機器又は別の管体に接続するのである。
【0038】
なお、上記実施形態においては、接続金具ホルダーHが、接続金具用仮止め部とナット用仮止め部の両方を備えているが、接続金具KがナットNと組み合わされて使用されるものであれば、ナット用仮止め部のみを備えているものであっても良い。
【0039】
また、接続金具がナットと組み合わされて使用されるタイプではなく、別の管体の端部の雌ねじ部にねじ合わされる雄ねじ部を備えたタイプである場合は、接続金具用仮止め部のみを備えたもので良いことは言うまでもない。
【0040】
さらに、上記実施形態においては、仮止め部に弾性材からなるOリングが用いられているが、仮止め部はOリングに限定されるものでない。
【0041】
また、接続金具ホルダーが雄ねじ部を除いてゴムから形成され、全体の形状が実施形態のものと同様であって端部及び中間部の各々の周方向に突条の仮止め部が一体的に突設されているものとしても良い。
【符号の説明】
【0042】
H・・・接続金具ホルダー
J・・・接続金具取付用治具
K・・・接続金具
N・・・ナット
P・・・管体
1・・・端部
1a・・・凹溝
2・・・中間部
2a・・・凹溝
9・・・接続金具の空洞
10・・・Oリング(接続金具用仮止め部)
12・・・管体保持部
13・・・接続金具ホルダー保持部
20・・・Oリング(ナット用仮止め部)
29・・・ナットの空洞

【特許請求の範囲】
【請求項1】
管体保持部と接続金具ホルダー保持部とを備えた管体への接続金具取付用治具の前記接続金具ホルダー保持部に取り付けられ、接続金具の空洞内に挿入される端部外周に、前記接続金具の空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる接続金具用仮止め部が設けられていることを特徴とする接続金具ホルダー。
【請求項2】
管体保持部と接続金具ホルダー保持部とを備えた管体への接続金具取付用治具の前記接続金具ホルダー保持部に取り付けられ、接続金具の空洞内に挿入される端部と、該端部に連なり前記接続金具と組み合わせて用いられるナットの空洞内に挿入される中間部とを備え、前記端部外周に、前記接続金具の空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなる接続金具用仮止め部が設けられると共に、前記中間部外周に前記ナットの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなるナット用仮止め部が設けられていることを特徴とする接続金具ホルダー。
【請求項3】
管体保持部と接続金具ホルダー保持部とを備えた管体への接続金具取付用治具の前記接続金具ホルダー保持部に取り付けられ、接続金具の空洞内に挿入される端部と、該端部に連なり前記接続金具と組み合わせて用いられるナットの空洞内に挿入される中間部とを備え、該中間部外周に、前記ナットの空洞内面に径方向に圧接する弾性材からなるナット用仮止め部が設けられていることを特徴とする接続金具ホルダー。
【請求項4】
前記接続金具用仮止め部が前記端部外周の周方向凹溝に嵌め込まれたOリングである請求項1又は2に記載の接続金具ホルダー。
【請求項5】
前記ナット用仮止め部が前記中間部外周の周方向凹溝に嵌め込まれたOリングである請求項2又は3に記載の接続金具ホルダー。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれかに記載の接続金具ホルダーを備えた管体への接続金具取付用治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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