説明

接触分解において炭化水素原料から軽質オレフィンを増産する方法

【課題】接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法を提供する。
【解決手段】本明細書に開示されているのは、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法である。前記方法において、効果的な分離プロセス構成及び軽質オレフィンの再循環方法は、生産性及びプロセス全体の効率を向上させ、従って、軽質オレフィン炭化水素を効果的に増産するためのみならず、プロセス全体を単純化するためにも使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法に関し、そしてより特別には、エタン、プロパン及びC4〜C5留分を再循環し、そしてC6+留分の生産経路を変更可能に調節することにより、プロセス全体において、エチレンとプロピレンの生産を増加させることができる、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
軽質オレフィン、例えばエチレンとプロピレンは、石油化学産業において広く使用されている。一般に、このような軽質オレフィンは、水蒸気の存在下におけるナフサの熱分解(スチームクラッキング)により生産される。スチームクラッキング技術における反応は、800℃〜900℃の高い反応温度にて、短い滞留時間において行われる。一般に、スチームクラッキング技術により、限定された範囲で決定された組成を有する種々のオレフィンを生産する。
スチームクラッキング技術の典型的な生産品は、エチレンとプロピレンであり、そして、プロセス環境に応じて、C4オレフィン成分が副産物として生産される。しかしながら、C4オレフィン成分は、その生産のために多段階の複雑な分離プロセスを必要とする種々の異性体からなる。また、5個又はそれより多い炭素原子を有するオレフィンは、経済的価値が少なく、それ故、水素化により、飽和炭化水素に転換される。スチームクラッキング技術において、4個又はそれより多い炭素原子からなるオレフィン成分を熱分解反応器に再循環させることは、それがプロセスの生産サイクルを短縮させるコークス問題を引き起こすので、経済的利点を伴わない。
【0003】
図1は、先行技術における、スチームクラッキング(即ち、熱分解)により、炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を生産するためのプロセスを示すプロセス図である。
図1に示すように、スチームクラッキングプロセスにおいて、一般的に、重質ナフサ原料31が、助剤として機能する水蒸気32と一緒に、高温熱分解反応器1に供給され、ここで、前記原料は、オレフィンを含む反応生成物33に転換される。反応生成物33は、急冷塔2に供給され、ここで、それは、沸点の高い順に、燃料油37、主成分としてC5+炭化水素を含む熱分解ガソリン36、反応助剤として使用された水蒸気が凝縮した希釈水35及び、主成分としてC4−炭化水素を含むガス状生成物34に、沸点に応じて一次的に分離される。ガス状生成物34は圧縮器3を通過し、そして最終的に脱メタナイザー7に供給され、この間に、それは、熱を回収するために、分離器4及び低温熱交換器5のような単位プロセスを通過する。プロセス全体において最も低い沸点を有する水素とメタンは、留分42として生産される。脱エタナイザー8において、C2留分47を頭頂部に分離し、そしてC2留分は、C2水素化反応器9を通過し、そしてC2分離器に供給され、ここで、それは、エタン49とエチレン50に分離される。エタン49は、再循環炉11で部分的に軽質オレフィンに転換され、その後、急冷塔2に再循環される。脱プロパナイザー12において、C3留分53を頭頂部に分離し、そしてC3留分は、C3水素化反応器13を通過し、そしてC3分離器14に供給され、ここで、それは、プロパン55とプロピレン56に分離される。脱ブタナイザー15において、C4留分58を頭頂部に分離し、そしてC4留分は、ブタジエン抽出ユニット16、MTBE(メチル第三ブチルエーテル)ユニット17、C3水素化反応器18及びC4分離器19を通過し、この間に、それは、ブタジエン59、イソブチレン61、1−ブテン65及びC4LPG64に、それぞれ分離される。脱ペンタナイザー20において、C5留分66を頭頂部に分離し、そしてC5留分は、C5水素化反応器21を通過し、C5LPG67を生産する。脱オクタナイザー22において、C6〜C8留分69を頭頂部に分離し、そしてC6〜C8留分は
、PGHT(熱分解ガソリン水素化処理ユニット)23を通過し、芳香族留分70を生産する。脱オクタナイザー22の底部において、C9+留分68が生産される。
【0004】
また、精油プラントにおいて高沸点留分の付加価値を高めるために使用され且つ主生産品としてガソリンを生産する流動接触分解(FCC)プロセスにより、軽質オレフィン炭化水素が副産物として生産され得る。このFCCプロセスは、蒸気で曝気するとき流体のように挙動する微細粒子状の触媒を使用する接触分解技術として、当業界では広く知られている。FCCプロセスにおいて、減圧残渣油、常圧残渣油、ガス状オイルのような、本発明で使用されるナフサ又はケロシンに比べてより重質の留分が原料として使用されており、そして軽質オレフィンよりはむしろガソリンが主に生産され、従って、軽質オレフィンは効率的に生産されない。
これらの軽質オレフィン、例えばエチレンとプロピレンを生産する典型的な化学プロセスは、スチームクラッキングプロセス、FCCプロセス及び軽質留分の接触分解用プロセスを含む。これらのプロセスからの反応生成物の典型的な組成を下記表1に示す。
[表1]
┌─────┬───────────┬────────┬──────────┐
│ │スチームクラッキングプ│FCCプロセスか│軽質留分の接触分解か│
│ │ロセスからの反応生成物│らの反応生成物 │らの反応生成物 │
│ │ │ │ │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│メタン │ 16.13 │ 1.2 │ 13.91 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│エチレン │ 32.05 │ 1.9 │ 20.71 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│エタン │ 2.91 │ 0.7 │ 8.93 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│プロピレン│ 16.65 │ 4.8 │ 22.06 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│プロパン │ 0.35 │ 0.7 │ 3.04 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│C4 │ 10.94 │ 9.1 │ 8.97 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│C5 │ 5.71 │ 1.1 │ 7.81 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│C6以上 │ 14.18 │ 79.6 │ 13.58 │
├─────┼───────────┼────────┼──────────┤
│その他 │ 1.08 │ 0.9 │ 0.99 │
└─────┴───────────┴────────┴──────────┘
【0005】
接触分解により炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシン原料から軽質オレフィン炭化水素を生産する、軽質留分接触分解に関連する先行技術は、下記の通りである。
米国特許第6,307,117号明細書は、接触分解生成物をH2/C3留分とC4+留分に分離する方法を開示している。また、C4+留分をC4留分、C5〜C8留分及びC9+留分に分離する方法を開示している。また、C4+留分をスチームクラッキング反応器において更に転換する方法を開示している。しかしながら、これらの方法は、接触分解反応の特性を十分に考慮して反応生成物を有効活用することができない。
米国特許第6,576,805号明細書は、接触分解におけるH2/C3留分の回収プロセスを開示しているが、しかし、反応生成物全体に対するプロセス構成を提示しておらず、そして特に、C4+留分の有効活用を提示していない。
米国特許第6,602,920号明細書は、天然ガス原料から軽質オレフィンを生産す
るために、熱分解段階、水素化段階及び接触分解段階を順次使用するプロセス構成を開示している。しかしながら、このプロセス構成は、炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシン原料を使用する本発明の接触分解プロセスに使用することはできない。
上記のように、接触分解により炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシンから軽質オレフィン炭化水素を生産する、軽質留分接触分解プロセスのための触媒開発が盛んに行われているけれども、軽質オレフィンを生産するための、効果的なプロセス構成は提示されていない。
【特許文献1】米国特許第6,307,117号明細書
【特許文献2】米国特許第6,576,805号明細書
【特許文献3】米国特許第6,602,920号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明者らは、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を生産するプロセスにおいて使用するために有効な分離プロセス構成と軽質オレフィン再循環方法を開発し、そして、開発したプロセス構成と方法を使用することにより、軽質オレフィンの生産を効果的に増加させることができた。この事実に基づいて、本発明が完成された。
従って、本発明の目的は、接触分解により炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシン原料混合物から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法であって、付加価値の低いエタンとプロパンを効果的に再循環させ、C4〜C5留分を最も経済的な方法で再循環させ、そしてC6+留分の生産経路を変更可能に調節することにより、プロセス全体におけるエチレンとプロピレンの生産を効果的に増加させることができる方法を提供することにある。
本発明の他の目的は、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法であって、分離プロセスと水素化反応を極小化することにより、プロセス全体の経済性を向上させることができる方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的及びその他の目的を達成するために、本発明は、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法であって、
(a)炭化水素原料と水蒸気を接触分解炉内に供給し、該炉内で該炭化水素原料に、触媒の存在下で接触分解反応を行う段階と、
(b)前記接触分解反応に使用された前記触媒を、連続的又は周期的な再生手順により再生し、そして再生された触媒を前記接触分解炉内に再循環する段階と、
(c)前記接触分解反応の生成物を急冷し、圧縮し、そして分離することにより、水素、メタン及びC2〜C3オレフィン炭化水素をそれぞれ分離且つ回収し、そしてC2〜C3パラフィン炭化水素を含む流れとC4+炭化水素を含む流れとに分離する段階と、
(d)前記C2〜C3パラフィン炭化水素を含む流れを再循環炉内に供給し、該炉内で熱分解反応により該流れをC2〜C3オレフィン炭化水素に転換し、そして転換したC2〜C3オレフィン炭化水素を前記急冷段階に再循環する段階と、
(e)前記C4+炭化水素を含む流れの少なくとも一部を、前記接触分解反応段階、前記触媒再生段階又は両段階に再循環する段階
とを含むことからなる方法を提供する。
【0008】
本発明の方法において、前記C4+炭化水素を含む流れは、C4〜C5炭化水素を含む流れと、C6+炭化水素を含む流れに分離され得る。
前記C4〜C5炭化水素を含む流れは、前記接触分解反応段階に再循環され得る。一方、前記C6+炭化水素を含む流れの一部は、前記接触分解反応段階に再循環され、そして残部が、C6〜C8炭化水素を含む流れと、C9+炭化水素を含む流れに分離され得る。
前記C6〜C8炭化水素を含む流れの一部は、前記接触分解反応段階に再循環され得、
そして残部は、水素化脱硫により芳香族留分に転換された後、回収され得る。
一方、前記C9+炭化水素を含む流れの一部は、前記接触分解反応段階に再循環され、そして残部は、前記触媒再生段階に再循環され得る。
前記炭化水素原料は、ナフサ又はケロシンであり得る。
好ましくは、前記炭化水素原料は、30℃〜350℃の沸点を持つ炭化水素混合物である。
前記触媒は、ゼオライト化合物であり得る。
好ましくは、前記ゼオライト化合物は、ZSM−5ゼオライトである。
前記接触分解反応は、好ましくは、温度500℃〜750℃及び炭化水素原料/水蒸気の質量比0.01〜10にて行われる。
また、前記接触分解反応は、固定床反応器又は流動床反応器で行われ得る。
前記接触分解反応が固定床反応器において行われる場合、前記接触分解反応は、炭化水素原料の滞留時間0.1秒〜600秒にて行われ得る。
前記接触分解反応が流動床反応器において行われる場合、前記接触分解反応は、炭化水素原料の滞留時間0.1秒〜600秒及び触媒/炭化水素原料の質量比1〜100にて行われ得る。
【発明の効果】
【0009】
上述したように、本発明は、接触分解により炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシン原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法を提供する。本発明は、従来のスチームクラッキング技術に比べて、軽質オレフィンの生産を効果的に増加させ、そしてプロセス全体を単純化するという利点を有する。また、本発明は、先行技術において行われなかった、効果的な分離プロセス構成と軽質オレフィン再循環方法を提示し、従って、軽質オレフィンの生産を効果的に増加させる方法を提示する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図2を参照して、本発明の好ましい実施態様をより詳細に説明するが、本発明の範囲はこれに限定されない。
本発明のプロセスにおいて、炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシン原料、より好ましくは30℃〜350℃の沸点を持つ炭化水素原料が、円滑な触媒流動を維持し且つ反応性を向上させるための水蒸気82と一緒に接触分解反応器24に供給される。前記接触分解反応器24において、前記原料は、クラッキング反応により、反応生成物83に転換される。この際、水蒸気82の流れは、円滑な触媒流動を維持するための流れと、反応条件に応じて最適化される反応性を向上させるための流れの総和である。
前記触媒としては、当業界で公知のものであれば特に限定されることなく使用し得るが、しかし、ゼオライト化合物、より好ましくはZSM−5ゼオライトを使用することが好ましい。
前記接触分解反応は、反応温度、空間速度、炭化水素/水蒸気の質量比などに大きく依存する。これらの反応条件は、エネルギー消耗を極小化するため、できる限り低い温度、最適な転換率、最適なオレフィン生産、コークス生成により引き起こされる触媒失活の極小化等を考慮して決定する必要がある。
本発明の好ましい実施態様によれば、接触分解反応温度は約500℃〜750℃、好ましくは約600℃〜700℃、より好ましくは約610℃〜680℃である。また、炭化水素/水蒸気の質量比は約0.01〜10、好ましくは約0.1〜2.0、より好ましくは約0.3〜1.0である。
また、前記接触分解反応は固定床反応器又は流動床反応器で行われてもよく、炭化水素原料の滞留時間は約0.1秒〜600秒、好ましくは約0.5秒〜120秒、より好ましくは約1秒〜20秒である。
流動床反応器を使用する場合には、触媒/炭化水素原料の質量比は約1〜100、好ましくは約5〜50、より好ましくは約10〜40である。
【0011】
一方、接触分解反応器24は、使用した触媒を触媒再生器25に供給し、そして該触媒再生器25において連続的又は周期的な手順により再生された触媒を供給される。反応生成物83は、急冷塔2に供給され、ここで、それは、沸点の高い順に、燃料油87、主成分としてC5+炭素水素を含む熱分解ガソリン86、反応助剤として使用された水蒸気が凝縮した希釈水85及び、主成分としてC4−炭化水素を含むガス状生成物84に、沸点に応じて一次的に分離される。沸点があまりに高くて経済的価値が低い燃料油87は、触媒再生器25に供給される。ガス状生成物84は圧縮器3を通過し、そして最終的に脱メタナイザー7に供給され、この間に、それは、熱を回収するために、分離器4及び低温熱交換器5のような単位プロセスを通過する。これは、プロセス全体において最も低い沸点を有する水素/メタン留分92を生産する。脱エタナイザー8において、C2留分94を頭頂部に分離し、そしてC2留分は、C2水素化反応器9を通過し、そしてC2分離器10に供給され、ここで、それは、エタン97とエチレン98に分離される。エタン97は、再循環炉11で部分的に軽質オレフィンに転換され、その後、配管99により、前記急冷塔に再循環される。脱プロパナイザー12において、C3留分101を頭頂部に分離し、そしてC3留分は、C3水素化反応器13を通過し、そしてC3分離器14に供給され、ここで、それは、プロパン103とプロピレン104に分離される。プロパン103は、再循環炉11で部分的に軽質オレフィンに転換され、そして、配管99により、急冷塔2に再循環される。脱ブタナイザー15において、C4〜C5留分106を頭頂部に分離し、そしてC4〜C5留分106は、本方法の目的により、再循環C6+留分107として、接触分解反応器24に部分的に再循環される。脱オクタナイザー22において、C6〜C8留分110を頭頂部に分離し、そしてC6〜C8留分の一部は、本方法の目的により、再循環C6〜C8留分111として、接触分解反応器24に再循環され、そして残部113は、PGHT23を通過し、芳香族留分114を生産する。脱オクタナイザー22の底部から分離されたC9+留分109の一部は、本方法の目的により、再循環C9+留分116として、接触分解反応器24に再循環され、そして残部117は、触媒再生器25に供給される。
【0012】
上記のように、本発明に従って、接触分解により炭化水素原料、好ましくはナフサ又はケロシン原料から軽質オレフィン炭化水素を生産するプロセスにおいて効果的な分離プロセス構成と軽質オレフィンの再循環方法を使用することにより、プロセス全体における軽質オレフィン生産を効果的に増加させることができる。
接触分解反応の場合、スチームクラッキングプロセスよりも多量にエタンとプロパンが生産される。従って、前記再循環炉を使用して、それらが全量再循環される場合は、エチレンとプロピレンの生産を増加させることができる。
また、接触分解反応からのブタジエンと1−ブテン(これらの化合物の分離及び生産は、経済性を低下させる。)の生産が著しく減少する。しかしながら、これらの化合物が前記接触分解反応器に再循環される場合は、エチレンとプロピレンへのそれらの転換が可能になる。本発明において、C4〜C5留分の全量を接触分解反応器24に再循環することにより、不要な分離プロセスと高価な水素化反応を取り除くことができ、プロセス全体を単純化し且つエチレンとプロピレンの生産を増加させることができる。
また、本発明において、C6〜C8留分110の一部111を接触分解反応器24に再循環させることにより、芳香族含量を調節することができ、最終的に、芳香族含量を増加させることができる。
【0013】
更に、本発明において、C9+留分109の一部分116は接触分解反応器24に再循環され、ここで、それはC6〜C8留分に転換され、その結果、芳香族の生産を増加させることができる。また、C9+留分109の残部は、前記触媒再生器に再循環されて燃料油として使用することができる。従って、本発明は、プロセス生産の調節及び製品価格の変動に対して、プロセスの生産性を極大化することができる。
また、本発明において、燃料油87は前記触媒再生器に直接しようされ、その結果、燃料油を処理するための設備を単純化し且つ経済性を増加させることが可能である。一般的なプロセスにおいて、燃料油87は、石油化学製品として経済的価値が低いため、焼却されるか、或いは加熱器の原料として使用される。しかしながら、この場合、運送及び貯蔵のための追加的費用が発生し、また燃料油87を他の留分と混合することは問題を引き起こす。
【実施例】
【0014】
本発明は下記の実施例により、より明確に理解することができるが、下記の実施例は本発明の目的を例示するに過ぎず、本発明の範囲を限定するために構成されてはいない。
比較例1
図1のプロセス構成を持つ商業プロセスにより、軽質オレフィンを生産するスチームクラッキングプロセスの性能が試験され、結果は下記の通りである。
本比較例1において使用された原料は、以下の表2に示される組成を有するナフサである。
[表2]
┌───┬───────┬───────┬───────┬──────┐
│ │n−パラフィン│i−パラフィン│ ナフテン │ 芳香族 │
├───┼───────┼───────┼───────┼──────┤
│ナフサ│ 36.2% │ 49.3% │ 11.3% │ 3.2% │
└───┴───────┴───────┴───────┴──────┘
熱分解反応器1の運転条件は、反応温度850℃、水蒸気/ナフサの質量比2及び反応滞留時間0.1秒である。
本比較例におけるプロセス全体(再循環留分を含む)の収率は以下の表3に示す。
[表3]
┌─────────────────┬─────────────────┐
│ │ 反応生成物の組成(質量%) │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ メタン │ 14.2 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エチレン │ 32.8 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エタン │ 0.5 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロピレン │ 17.8 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロパン │ 1.5 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C4 │ 10.0 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C5 │ 4.3 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C6以上 │ 14.5 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ その他 │ 4.4 │
└─────────────────┴─────────────────┘
【0015】
比較例2
軽質オレフィンを生産する接触分解反応の性能を試験するために、比較例1に記載された原料と同じ原料を使用して、触媒反応器で試験を行った。
前記触媒反応器は、液体射出ポンプにより原料が供給され、そして前記反応器の外部の電気式加熱器が、反応温度を調節するために使用された。反応生成物は、各相の質量と成分が定量的に分析され得るように、液相と気相に分離された。
本比較例において、HZSM−5触媒が使用され、そして反応は675℃で行われた。反応生成物に対する分析結果を以下の表4に示す。
[表4]
┌─────────────────┬─────────────────┐
│ │ 反応生成物の組成(質量%) │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ メタン │ 13.91 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エチレン │ 20.71 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エタン │ 8.93 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロピレン │ 22.06 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロパン │ 3.04 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C4 │ 8.97 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C5 │ 7.81 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C6以上 │ 13.58 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ その他 │ 0.99 │
└─────────────────┴─────────────────┘
表4より、接触分解反応の特徴を示すかなりの量のエタンとプロパンが生成され、そしてC4〜C5留分もかなり生成されたことが分かる。
【0016】
比較例3
再循環留分の効果を試験するために、比較例2の反応生成物を分離して、表5に示される組成を有するC4〜C5留分を生産し、そして比較例2に記載されたように触媒反応を行った。
[表5]
┌─────┬───────┬───────┬─────┬────┬───┐
│ │n−パラフィン│i−パラフィン│オレフィン│ナフテン│芳香族│
├─────┼───────┼───────┼─────┼────┼───┤
│C4〜C5│ 16.8% │ 15.7% │65.6%│1.9%│0% │
│留分 │ │ │ │ │ │
└─────┴───────┴───────┴─────┴────┴───┘
比較例2と同一の触媒及び反応条件下で得られた反応生成物に対する分析結果を以下の表6に示す。
[表6]
┌─────────────────┬─────────────────┐
│ │ 反応生成物の組成(質量%) │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ メタン │ 8.3 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エチレン │ 25.0 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エタン │ 5.9 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロピレン │ 25.4 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロパン │ 4.3 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C4 │ 13.8 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C5 │ 5.7 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C6以上 │ 10.58 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ その他 │ 1.02 │
└─────────────────┴─────────────────┘
本比較例の結果より、C4〜C5留分が再循環される場合、エチレンとプロピレンが効果的に生産され得ることが分かる。
【0017】
実施例1
比較例3の結果を使用して、本発明によるプロセス全体の性能を試験した。プロセス全体の性能はコンピューターシミュレーションを使用して試験した。また、原料としてエタンとプロパンを使用する再循環炉の性能は、既存プロセスデーターを使用して試験し、以下の表7に示す結果が得られた。
[表7]
┌─────┬───────────────┬───────────────┐
│ │原料としてエタンを使用する再循│原料としてプロパンを使用する再│
│ │環炉からの反応生成物の組成(質│循環炉からの反応生成物の組成(│
│ │量%) │質量%) │ ├─────┼───────────────┼───────────────┤
│メタン │ 4.2 │ 18.9 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│エチレン │ 51.9 │ 35.6 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│エタン │ 34.5 │ 2.8 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│プロピレン│ 1.2 │ 16.7 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│プロパン │ 0.1 │ 16.3 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│C4 │ 2.3 │ 3.7 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│C5 │ 0.3 │ 1.1 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│C6以上 │ 1.1 │ 1.6 │
├─────┼───────────────┼───────────────┤
│その他 │ 4.4 │ 3.3 │
└─────┴───────────────┴───────────────┘
プロセス全体の収率を以下の表8に示す。
[表8]
┌─────────────────┬─────────────────┐
│ │ プロセス全体の収率(質量%) │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ メタン │ 17.3 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エチレン │ 34.7 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ エタン │ 0.0 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロピレン │ 24.6 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ プロパン │ 0.0 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C4 │ 0.0 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C5 │ 0.0 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ C6以上 │ 20.5 │
├─────────────────┼─────────────────┤
│ その他 │ 2.9 │
└─────────────────┴─────────────────┘
表8より、エチレンとプロピレンの生産収率は59.3質量%であり、これは、比較例1の一般なスチームクラッキングプロセスにおける50.6質量%より非常に高いことが分かる。この結果は、エタンとプロパンを効率的に再循環炉に再循環させ、そしてC4〜C5留分を接触分解反応器に再循環させることにより得られた。
【産業上の利用可能性】
【0018】
上記のように、本発明は、接触分解により炭化水素原料、より好ましくはナフサ又はケロシン原料から、接触分解により軽質オレフィン炭化水素を生産する方法であって、付加価値の低いエタンとプロパンを効果的に再循環させ、C4〜C5留分を最も経済的な方法で再循環させ、そしてC6+留分の生産経路を変更可能に調節することにより、プロセス全体におけるエチレンとプロピレンの生産を効果的に増加させることができる方法を提供する。
また、本発明によれば、分離プロセスと水素化プロセスを極小化し、プロセス全体の経済性を増加せしめる。
本発明の好ましい実施態様が説明の目的で記載されたけれども、当業者は、特許請求の範囲に開示された本発明の範囲及び精神から逸脱することなく、簡単な変更、追加及び置換が可能であることを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1は、先行技術における、熱分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を生産するための一実施態様を示すプロセス図である。
【図2】図2は、本発明における、接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を生産するための一実施態様を示すプロセス図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解により炭化水素原料から軽質オレフィン炭化水素を増産する方法であって、
(a)炭化水素原料と水蒸気を接触分解炉内に供給し、該炉内で該炭化水素原料に、触媒の存在下で接触分解反応を行う段階と、
(b)前記接触分解反応に使用された前記触媒を、連続的又は周期的な再生手順により再生し、そして再生された触媒を前記接触分解炉内に再循環する段階と、
(c)前記接触分解反応の生成物を急冷し、圧縮し、そして分離することにより、水素、メタン及びC2〜C3オレフィン炭化水素をそれぞれ分離且つ回収し、そしてC2〜C3パラフィン炭化水素を含む流れとC4+炭化水素を含む流れとに分離する段階と、
(d)前記C2〜C3パラフィン炭化水素を含む流れを再循環炉内に供給し、該炉内で熱分解反応により該流れをC2〜C3オレフィン炭化水素に転換し、そして転換したC2〜C3オレフィン炭化水素を前記急冷段階に再循環する段階と、
(e)前記C4+炭化水素を含む流れの少なくとも一部を、前記接触分解反応段階、前記触媒再生段階又は両段階に再循環する段階
とを含むことからなる方法。
【請求項2】
前記C4+炭化水素を含む流れが、C4〜C5炭化水素を含む流れと、C6+炭化水素を含む流れに分離される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記C4〜C5炭化水素を含む流れが、前記接触分解反応段階に再循環される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記C6+炭化水素を含む流れの一部が、前記接触分解反応段階に再循環され、そして残部が、C6〜C8炭化水素を含む流れと、C9+炭化水素を含む流れに分離される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記C6〜C8炭化水素を含む流れの一部が、前記接触分解反応段階に再循環され、そして残部が、水素化脱硫により芳香族留分に転換された後、回収される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記C9+炭化水素を含む流れの一部が、前記接触分解反応段階に再循環され、そして残部が、前記触媒再生段階に再循環される、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
前記炭化水素原料が、ナフサ又はケロシンである、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記炭化水素原料が、30℃〜350℃の沸点を有する炭化水素混合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記触媒が、ゼオライト化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記ゼオライト化合物が、ZSM−5ゼオライトである、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記接触分解反応が、反応温度500℃〜750℃及び炭化水素原料/水蒸気の質量比0.01〜10にて行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記接触分解反応が、固定床反応器又は流動床反応器で行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記接触分解反応が固定床反応器において行われる場合、前記接触分解反応が、炭化水
素原料の滞留時間0.1秒〜600秒にて行われる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記接触分解反応が流動床反応器において行われる場合、前記接触分解反応が、炭化水素原料の滞留時間0.1秒〜600秒及び触媒/炭化水素原料の質量比1〜100にて行われる、請求項12に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−511657(P2009−511657A)
【公表日】平成21年3月19日(2009.3.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−534432(P2008−534432)
【出願日】平成18年5月19日(2006.5.19)
【国際出願番号】PCT/KR2006/001880
【国際公開番号】WO2007/043738
【国際公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【出願人】(507268341)エスケー エナジー 株式会社 (57)
【氏名又は名称原語表記】SK ENERGY CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】99, Seorin−dong, Jongro−gu, Seoul, 110−110 Republic of Korea
【Fターム(参考)】