説明

接触器の動作状態の診断方法、および前記方法を実行する接触器

【課題】センサを必要とせずに接触器摩耗を診断する方法とそれを使用した接触器を提供する。
【解決手段】接触器は、電圧制御手段20に作用するように設計された処理ユニット2と、少なくとも1つのアクチュエーティングコイル3と、前記アクチュエーティングコイル3の少なくとも1つの電気的特性の測定手段24と、前記アクチュエーティングコイル3および前記測定手段24と並列に接続された少なくとも1つのフリーホイールダイオードD1とを備える。前記アクチュエーティングコイル3の端子L1、L2のドロップアウト電圧を固定することを含むドロップアウト指示を送信し、前記アクチュエーティングコイル3の電気的特性をドロップアウト時間の間に測定し、前記測定から少なくとも1つの特定の値を復元し、前記特定の値を、前記接触器の特定の初期動作基準値と比較し、前記接触器の摩耗の状態を診断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電圧制御手段に作用するように設計された処理ユニット(processing unit)を備える接触器(contactor)の動作状態の診断(diagnose)方法に関する。接触器はさらに、少なくとも1つのアクチュエーティングコイル(actuating coil)と、前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイルの少なくとも1つの電気的特性の測定手段と、前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイルおよび測定手段と並列に接続された少なくとも1つのフリーホイールダイオード(free-wheel diode)とを備える。
【0002】
また、本発明は、前記方法の実行(implementation)用の接触器に関する。前記接触器は、磁気ヨーク(magnetic yoke)および可動強磁性(movable ferromagnetic)コイルにより形成された磁気回路を有する電磁アクチュエータと、制御手段と、前記制御手段を介して第1および第2の電源端子(power supply terminal)に接続された少なくとも1つのアクチュエーティングコイルとを備える。処理ユニットが、電圧制御手段に作用するように設計されている。また、接触器は、前記アクチュエーティングコイルの電気的特性の測定手段を備える。少なくとも1つのフリーホイールダイオードが、前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイルおよび測定手段と並列に接続されている。
【背景技術】
【0003】
接触器の摩耗(wear)の状態を診断する方法は、しばしば、接触器の処理手段内で益々多く実行されることが望まれている。実際、接触器の寿命中に適切な保守をスケジューリングするためには、前記接触器の摩耗のレベルを知ることが非常に有用である。
【0004】
そのため、いくつかの既存の特許は、診断方法について記述している。しかしながら、これらの方法の実行は一般に、製品の工業的使用にとってはしばしば法外な追加コストをもたらす。
【0005】
US6225807で参照される特許は、接触器の残りの寿命を推定する方法について説明している。この方法は、接触器の開位相(opening phase)に対するポールばね(pole spring)の効果の減少量を決定することで、接触器の摩耗を判断することを含んでいる。ばねの効果の減少量は、2つの正確な瞬間の間の経過時間の減少量と相関があり、この2つの正確な瞬間とは、
− 可動部分(movable part)の動きが開位相において始まる瞬間、
− 電力接触(power contact)の開き(opening)が起こる瞬間、
である。
【0006】
第1の瞬間は、制御電圧の遮断(shutoff)時に生じるコイル過電圧(overvoltage)の特定により決定される。第2の瞬間は、接触器が開いているときに接触器の端子に現れる電圧により決定される。
【0007】
この方法は、ポールのレベルの電圧と開きの際の過電圧の取得を行わなければならないという欠点を呈する。これらの取得は、追加の手段の実装を必要とし、これはコストが掛かることが確認できる。
【0008】
別の特許(FR2834120)は、コイル電圧の測定と補助接触(auxiliary contact)の状態とからなされる接触クラッシュ(contact crushing)の変化の推定に基づき、寿命の終わりを診断する方法について説明している。この方法は、機械的な不具合(failure)(例えば、摩擦(friction)に関連するもの)による寿命の終わりを診断することはできない。この方法はさらに、電流(power current)の取得用の専用のセンサを必要とするという欠点を呈する。
【0009】
最後に、知られた診断方法は、一般に、接触クラッシュとは関係がないが接触器の寿命の終わりを加速し得る2つの現象を考慮に入れていないため不完全である。これらの現象は、一方はパッドを突き出す(stick)頻度(frequency)および度合(intensity)であり、他方は、機械的な不具合である。パッドを突き出す頻度および度合は、一般に微細接合(microweld)と呼ばれる。機械的な不具合の意味するところは、運動機構の摩擦、摩耗、変形(deformation)などに関連する接触器の機能不全(malfunctioning)である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第6225807号公報
【特許文献2】仏国特許第2834120号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
よって、本発明の目的は、電力接触のレベルの電流センサも電圧センサも必要とせずに動作(特に接触器摩耗)を診断する方法を提供するように、先端技術(state of the technique)の欠点を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明の方法は、
アクチュエーティングコイルの端子のドロップアウト電圧(drop-out voltage)と呼ばれる電圧を固定(fix)することを含むドロップアウト指示(drop-out order)を送信し、
前記アクチュエーティングコイルの電気的特性をドロップアウト時間の間に測定し、
この測定から少なくとも1つの特定の値(specific value)を復元(reconstitute)し、
前記少なくとも1つの特定の値を、接触器の特定の初期動作基準値と比較し、
初期基準値に対する前記少なくとも1つの特定の値の位置に応じて、接触器の摩耗の状態を診断することを含む。
【0013】
本発明の発展モードによれば、ドロップアウト電圧は、フリーホイールダイオードにより固定され、アクチュエーティングコイルは、ドロップアウト時間の一部の間において“フリーホイール”モードにある。
【0014】
有利には、アクチュエーティングコイルは、ドロップアウト時間のすべての間を通じて“フリーホイール”モードにある。
【0015】
本発明の別の発展モードによれば、短絡手段(shunting means)が、アクチュエーティングコイルの端子のドロップアウト電圧を固定するようにツェナーダイオード(Zener diode)を制御(command)し、前記コイルは、ドロップアウト時間の一部の間において“ツェナー”モードにある。
【0016】
好適には、アクチュエーティングコイルは、中間ドロップアウト時間(intermediate drop-out time)の間において“ツェナー”モードにあり、中間ドロップアウト時間は、総計ドロップアウト時間(total drop-out time)よりも短い。
【0017】
本発明の方法の第1実施形態によれば、総計ドロップアウト時間の間に測定される前記アクチュエーティングコイルの前記電気的特性は、アクチュエーティングコイル内を流れる電流である。
【0018】
好適には、診断方法は、
電流の変化曲線(variation curve)上の第1の極大(local maximum)に達する時間に対応する電流の変化の曲線プロット上の少なくとも1つの特定の値を決定し、
基準値に対する第1の極大の位置(positioning)に応じて、接触器の動作状態を診断することを含む。
【0019】
有利には、この方法は、電流変化曲線上の第1の極大(B)のレベルに達した最大電流を決定することを含む。
【0020】
本発明の方法の第2実施形態によれば、ドロップアウト時間の間に測定される前記アクチュエーティングコイルの前記電気的特性は、アクチュエーティングコイルの端子(terminals)の電圧である。
【0021】
好適には、診断方法は、
電圧の変化曲線上の第1の極大に達する時間に対応する電圧の変化の曲線プロット上の少なくとも1つの特定の値を決定し、
基準値に対する第1の極大の位置に応じて、接触器の動作の状態を診断することを含む。
【0022】
本発明の接触器の処理ユニットは、
電気的特性の測定から少なくとも1つの特定の値を復元し、
前記少なくとも1つの特定の値を、接触器の特定の初期動作基準値と比較し、
基準値に対する前記少なくとも1つの特定の値の位置に応じて、接触器の動作の状態を診断する手段を備える。
【0023】
発展モードによれば、接触器は、アクチュエーティングコイルと直列に接続されたツェナーダイオードを備える。
【0024】
特定の発展モードによれば、ツェナーダイオードは、アクチュエーティングコイルおよび電流の測定手段と直列に接続されており、短絡手段が、この短絡手段が閉位置(closed position)にあるときにツェナーダイオードを短絡するように、前記ダイオードと並列に接続されている。
【0025】
有利には、アクチュエータの磁気回路は、永久磁石(permanent magnet)を備える。
【0026】
その他の利点および特徴は、もっぱら非制限的な例の目的で与えられ且つ添付の図面に表された、本発明の特定の実施形態についての以下の説明からより明確に明らかになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態による診断方法の実行に適した制御および調整回路の機能的な配線図を表す。
【図2】本発明の実施形態による診断方法の実行に適した制御および調整回路の機能的な配線図を表す。
【図3】本発明の実施形態による診断方法の実行に適した制御および調整回路の機能的な配線図を表す。
【図4A】図1の制御回路を使用した本発明の第1実施形態による摩耗の診断方法の間に測定されたドロップアウト電流の変化の曲線プロットを表す。
【図4B】図2の制御回路を使用した本発明の第1実施形態による摩耗の診断方法の間に測定されたドロップアウト電流の変化の曲線プロットを表す。
【図5】新しい接触器(new contactor)および摩耗した接触器(worn contactor)についてのドロップアウト電流の理論上の変化の曲線に対応する基準値をそれぞれ表す。
【図6】様々な動作状態にある接触器の摩耗の診断方法の間に測定された電流の変化の曲線プロットを表す。
【図7】様々な動作状態にある接触器の変形例(variant)の摩耗の診断方法の間に測定された電流の変化の曲線プロットを表す。
【図8】本発明の実施形態による接触器アクチュエータの配線図を表す。
【図9】本発明の別の実施形態による接触器アクチュエータの配線図を表す。
【図10】図1の制御回路を使用した本発明の第2実施形態による摩耗の診断方法の間に測定された電圧の変化の曲線プロットを表す。
【図11】図2の制御回路を使用した本発明の第2実施形態による摩耗の診断方法の間に測定された電圧の変化の曲線プロットを表す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
本発明による接触器の動作状態の診断方法は、詳細には、磁気ヨーク4および強磁性可動部分5により形成された磁気回路を備える電磁アクチュエータを有する接触器用に設計されている(図8)。この可動部分の動きは、コイル電圧制御手段20を介して第1および第2の電源端子(supply terminal)B1、B2に接続された少なくとも1つのアクチュエーティングコイル3により制御(command)される。処理ユニット2は、(詳細には、MOSまたはIGBTトランジスタのような)コイル電圧制御手段20に作用するように設計されている。
【0029】
この接触器の動作状態の診断方法は、3つの連続したステップを含んでいる。
【0030】
第1のステップは、接触器の開指示(opening order)の検出に従ってアクチュエーティングコイル3を制御して、一方で、磁気力を低減し且つアクチュエータの可動部分5の動きを可能にするよう接触器内に蓄積された電気エネルギーを除去し、他方で、アクチュエータの可動部分5の動きを表す信号を生成する、ことを含む。前記信号は、コイルの電気的特性Kに比例する。制御手段20は、アクチュエーティングコイル3の端子L1、L2のドロップアウト電圧と呼ばれる電圧を固定することを含むドロップアウト指示を送信する。
【0031】
第2のステップは、ドロップアウト位相(drop-out phase)の間に、この信号上の複数の特定の値の取得を行うことを含む。これら特定の値は、可動部分5の動きの速さと相関がある。
【0032】
本発明の第1実施形態によれば、総計ドロップアウト時間Taの間に測定される前記アクチュエーティングコイル3の電気的特性Kは、アクチュエーティングコイル3内を流れる電流Iである。その後、診断方法の第2のステップは、アクチュエーティングコイル3内を流れる電流信号I上の複数の特定の値を決定することを含む。
【0033】
本発明の第2実施形態によれば、総計ドロップアウト時間Taの間に測定される前記アクチュエーティングコイル3の電気的特性Kは、アクチュエーティングコイルの端子の電圧Uである。その後、診断方法の第2のステップは、アクチュエーティングコイル3の端子の電圧信号U上の複数の特定の値(例えば、設定時間(set time)における電圧値など)を決定することを含む。
【0034】
第3のステップは、接触器の動作状態(詳細には、その摩耗のレベル)を決定することを可能とするこれら特定の値の処理を含む。
【0035】
本発明の第1実施形態によれば、本方法の過程で測定される電気的特性Kが制御コイル内を流れる電流である場合には、接触器は、アクチュエーティングコイル3内を流れる電流24の測定手段24を備えている(図1)。前記手段は、アクチュエーティングコイル3と直列に接続された抵抗分路(resistive shunt)を備えることができる。最後に、フリーホイールダイオードD1は、前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイル3および電流Iの測定手段24により形成されたアセンブリと並列に接続されている。
【0036】
第1実施形態による診断方法の第1のステップでは、制御手段20は、アクチュエーティングコイル3の端子L1、L2のドロップアウト電圧と呼ばれる電圧を固定することを含むドロップアウト指示を送信する。図4Aに示すように、ドロップアウト電圧は、フリーホイールダイオードD1により固定される。コイルはその後、ドロップアウト時間Taの間において“フリーホイール”モードにある。コイル内で生じる電流は、アクチュエータの可動部分5の動きの速さを表す。
【0037】
代替的な実施形態によれば、ツェナーダイオードDzが、有利には、アクチュエーティングコイル3と直列に接続され得る。図2によれば、ツェナーダイオードDzは、好適には、アクチュエーティングコイル3および電流Iの測定手段24と直列に挿入される。前記ダイオードに並列に接続された短絡手段21は、短絡手段21が閉位置にあるときに前記ツェナーダイオードを短絡するように設計されている。図4Bに示す診断方法の第1のステップでは、制御手段20は、アクチュエーティングコイル3の端子L1、L2のドロップアウト電圧と呼ばれる電圧を固定するドロップアウト指示を送信する。“短絡”手段21は開位置(open position)にあり、ドロップアウト電圧は“ツェナー”ダイオードDzにより固定される。コイルはその後“ツェナー”モードとなる。“ツェナー”ダイオードDzにより固定されたドロップアウト電圧は、総計ドロップアウト時間Taを通じて、またはドロップアウト時間の一部の間のみにおいて印加され得る。例えば、図4Bに示すように、制御手段20は、中間ドロップアウト時間T1の間においてアクチュエーティングコイル3を“ツェナー”モードに置き、その後、測定期間T2の間において前記コイルを“フリーホイール”モードに置く。このように、ドロップアウト時間のすべてまたは一部の間においてコイルを“ツェナー”モードに置くことは、接触器の開時間(opening time)を短縮することを可能とする。ドロップアウト時間Taのすべての間においてコイルを“ツェナー”モードに置くことは、接触器の開時間の最大限の短縮をもたらす。
【0038】
示していない代替的な実施形態によれば、制御手段20は、中間ドロップアウト時間の間においてアクチュエーティングコイル3を“フリーホイール”モードに置き、その後、前記コイルを“ツェナー”モードに置く。
【0039】
この第1実施形態による診断方法の第2のステップは、アクチュエーティングコイル3内を流れるドロップアウト電流Iの変化曲線Siの1つ以上の特定の値を決定することを含んでいる。
【0040】
これらの1つまたは複数の特定の値は、例えば、
− 設定時間に測定された1つ以上の電流値、または
− 設定時間域にわたって測定された電流値の積分(integration)、または
− 最大(maximum)または最小(minimum)となり得る極(extremum)に関し、1つ以上の極値(local extremum value)、
から決定可能である。
【0041】
図4A、図4Bに観察されるように、いくつか極点(local extremum point)A、Bが電流変化曲線Si上に観察できる。特に、第1の極大Bは、アクチュエータの可動部分5の動き位相(movement phase)内のコイル電流により達した最大電流Imaxを決定(fix)する。また、この第1の極大Bは、制御手段20により送信されたコマンドと前記最大電流Imaxの発生とを分離する最大時間Timaxを定める(define)ことを可能とする。第1の極小Aは、アクチュエータコア5の動き始めにほぼ対応している。図6に示すように、第1の太線の曲線Si1は、新しいアクチュエータの変化曲線に相当する。第2の破線の曲線Si2は、摩耗したアクチュエータの変化曲線に相当する。
【0042】
図9に示すように、少なくとも1つの磁石を統合(integrate)したアクチュエータの特定の実施形態では、第2の極大Cが電流変化曲線Si上に観測できる(図7)。第1および第2の極大B、Cは、アクチュエータの可動部分5の動き位相内のコイル電流により達した最大電流Imax1、Imax2を決定する。その結果、前記極大B、Cは、制御手段20からのコマンドと前記最大電流ImaxおよびImax2とを分離する最大時間Timax1、Timax2を定めることを可能とする。その後、これらの特定の値は、アクチュエータの動きの速さを示す。図7に示すように、第1の太線の曲線Si1は、新しい接触器の変化曲線に相当する。第2の破線の曲線Si2は、摩耗した接触器の変化曲線に相当する。
【0043】
有利な方法では、観測される特定の最大電流値は、この外部パラメータに関連する測定バイアスを防ぐように、且つこれらの特定の値の使用をより精密にすることを可能として、温度補償することが可能である。
【0044】
この第1実施形態による診断方法の第3のステップは、特定の値を使用して、これにより動作の状態を決定することを可能とすることを含んでいる。
【0045】
最小および最大基準値は、好適には、工業的ばらつき(industrial dispersion)を考慮に入れて各接触器について定められる。これらの基準値は、各特定の値について、一方では、耐久性(tolerancing)に由来する新しい基準値の限界(limit)を用いて新しい状態閾値を決定することを可能とし、他方では、耐久性に由来する摩耗した基準値の限界を用いて摩耗した状態閾値を決定することを可能とする。図5に示す例の実施形態のように、新しい接触器のドロップアウト位相の間の電流の変化曲線を表す第1の基準値G1は、新しい状態の閾値の値IamaxおよびTamaxを決定することを可能とする。摩耗した接触器のドロップアウト位相の間の電流の変化曲線を表す第2の基準値G2は、摩耗した状態の閾値の値IbmaxおよびTbmaxを決定することを可能とする。最大ばらつきは、好適には、各接触器の基準値により、各特定の値について、その工業的ばらつきを考慮に入れて定められる。その後、これらの基準値は、接触器の様々な構成要素(constituent)の自然変化(natural variation)に対応する最大ばらつきを、各特定の値について決定することを可能とする。図5に示す例の実施形態のように、新しい接触器のドロップアウト位相の間の電流の変化曲線を表す基準値G1は、特定の値ImaxのばらつきDmaxを定めることを可能とする。
【0046】
さらに、特定の値の使用を、測定を妨げ得るパラメータに対する敏感性がより少ないものとするため、有利には、先行する連続した動作(previous consecutive operations)の設定数(set number)に記録された複数の特定の値の変動平均(sliding average)を求める(make)ことができる。その結果、先行する連続した動作の設定数に記録され且つ平均化された各特定の値は、その後、基準値により定められた閾値の値と比較される。新しい閾値および摩耗した閾値の値に対する特定の値の位置は、動作の状態についての情報を与える。その後、先行する連続した動作の設定数に記録された各特定の値について、先行する動作に記録された最大値と最小値との間の差に対応するその変動範囲(sliding range)を計算することができる。異常な動作状態は、変動範囲が、各特定の値について、基準値により定められた最大ばらつきよりも大きい場合に診断される。
【0047】
本発明の第2実施形態によれば、本方法の過程で測定される電気的特性Kが制御コイルの端子の電圧Uである場合には、接触器は、接触器の動作位相の間におけるアクチュエーティングコイル3の電圧の測定手段25を備えている(図2)。
【0048】
電圧の変化を制限しないよう十分に高い値のツェナーダイオードDzが、アクチュエーティングコイル3と直列に接続されており、前記ツェナーダイオードは、短絡手段21により短絡することができる。“短絡”手段21は開位置にあり、ドロップアウト電圧は“ツェナー”ダイオードDzにより固定される。コイルはその後“ツェナー”モードとなる。最後に、フリーホイールダイオードD1が、前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイル3およびツェナーダイオードDzにより形成されたアセンブリと並列に接続されており、それ自身が短絡手段21と並列に接続されている。有利な方法では、図2に示すように、コイル電圧の測定手段25は、コイルの第1の端子L2の電位を測定することにより実現可能であり、この電位は、処理ユニット2の入力電圧範囲に調整されるように、抵抗分割ブリッジ(resistive divider bridge)を介して処理ユニット2に伝送(transmit)することができる。この実施形態の接触器の開位相およびこの実施形態のレイアウトでは、コイルの第2の端子L1で測定される電位は、回路のグラウンドB2に対応し、知られたダイオード電圧降下(diode voltage drop)を与える(give)又は得る(take)。その結果、コイル電圧は、コイルの第2の端子L1の電位に対応し、ダイオード電圧降下を与える又は得る。これは、その取得を非常に簡単なものとする。
【0049】
この第2実施形態の診断方法の第1のステップでは、制御手段20は、アクチュエーティングコイル3の端子のドロップアウト電圧と呼ばれる電圧を固定するドロップアウト指示を送信する。“遮断”手段21は開位置にあり、ドロップアウト電圧は“ツェナー”ダイオードDzにより固定される。コイルはその後“ツェナー”モードとなる。“ツェナー”ダイオードDzにより固定されるドロップアウト電圧は、ドロップアウト時間Taを通じて印加される。測定手段25により測定される電圧は、アクチュエータの可動部分5の動きの速さを表す。第2実施形態は、動作状態の診断に使用可能な信号を得ることを可能にすると同時に、接触器の開時間の最大限の短縮をもたらすという利点を有する。
【0050】
この第2実施形態の診断方法の第2のステップは、アクチュエーティングコイル3の端子の電圧変化の曲線上の1つ以上の特定の値を決定することを含んでいる。これらの1つまたは複数の特定の値は、例えば、
− 設定時間に測定された1つ以上の電圧値、または
− 設定時間域にわたって測定された電圧値の積分、または
− 最大または最小となり得る極に関し、1つ以上の極値、
から決定可能である。
【0051】
コイル電圧を使用する利点は、コイル電流の使用とは反対に、この信号が温度とは無関係であることであり、これは、この外部パラメータによる測定バイアスを最小化する。
【0052】
特定の実施形態によれば、この第1実施形態による診断方法の第2のステップは、アクチュエーティングコイル3の端子のドロップアウト電圧Uの変化曲線Su上の1つ以上の特定の値を決定することを含んでいる。図10に観察されるように、いくつかの極点A’、B’が電圧変化曲線Su上に観察できる。特に、第1の極小B’は、制御手段20により送信されたコマンドと前記極小B’の発生とを分離する最大時間を定めることを可能とする。第1の極大A’は、アクチュエータコア5の動き始めにほぼ対応している。図10に示すように、第1の太線の曲線プロットSu1は、新しいアクチュエータの変化曲線に相当する。第2の破線の曲線プロットSu2は、摩耗したアクチュエータの変化曲線に相当する。
【0053】
図9に示すように、少なくとも1つの磁石を統合した接触器アクチュエータの特定の実施形態では、第2の極小C’が電圧変化曲線Su上に観測できる(図11)。第1および第2の極小B’、C’は、アクチュエータの可動部分5の動き位相内におけるコイルの端子の最小電圧を決定する。その後、これらの特定の値は、アクチュエータの動きの速さを示す。図11に示すように、第1の太線の曲線プロットSu1は、新しい接触器の電圧の変化曲線に相当する。第2の破線の曲線プロットSu2は、摩耗した接触器の変化曲線に相当する。
【0054】
この第2実施形態による診断方法の第3のステップは、特定の値を使用して、これにより動作の状態を決定することを可能とすることを含んでいる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触器の動作状態の診断方法であって、
前記接触器は、
電圧制御手段(20)に作用するように設計された処理ユニット(2)と、
少なくとも1つのアクチュエーティングコイル(3)と、
前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイル(3)の少なくとも1つの電気的特性(K)の測定手段(24、25)と、
前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイル(3)および前記測定手段(24、25)と並列に接続された少なくとも1つのフリーホイールダイオード(D1)とを備え、
前記方法は、
前記アクチュエーティングコイル(3)の端子(L1、L2)のドロップアウト電圧と呼ばれる電圧を固定することを含むドロップアウト指示を送信し、
前記アクチュエーティングコイル(3)の電気的特性(K)をドロップアウト時間(Ta)の間に測定し、
前記測定から少なくとも1つの特定の値を復元し、
前記少なくとも1つの特定の値を、前記接触器の特定の初期動作基準値と比較し、
前記初期基準値(G1、G2)に対する前記少なくとも1つの特定の値の位置に応じて、前記接触器の摩耗の状態を診断する、
ことを含むことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ドロップアウト電圧は、前記フリーホイールダイオード(D1)により固定され、前記アクチュエーティングコイル(3)は、前記ドロップアウト時間(Ta)の一部の間において“フリーホイール”モードにある、ことを特徴とする請求項1に記載の診断方法。
【請求項3】
前記アクチュエーティングコイル(3)は、前記ドロップアウト時間(Ta)のすべての間を通じて“フリーホイール”モードにある、ことを特徴とする請求項2に記載の診断方法。
【請求項4】
短絡手段(21)が、前記アクチュエーティングコイル(3)の端子(L1、L2)の前記ドロップアウト電圧を固定するようにツェナーダイオード(Dz)を制御し、前記コイルは、前記ドロップアウト時間(Ta)の一部の間において“ツェナー”モードにある、ことを特徴とする請求項1または2に記載の診断方法。
【請求項5】
前記アクチュエーティングコイル(3)は、中間ドロップアウト時間(T1)の間において“ツェナー”モードにあり、前記中間ドロップアウト時間(T1)は、前記総計ドロップアウト時間(Ta)よりも短い、ことを特徴とする請求項4に記載の診断方法。
【請求項6】
総計ドロップアウト時間(Ta)の間に測定される前記アクチュエーティングコイル(3)の前記電気的特性(K)は、前記アクチュエーティングコイル(3)内を流れる電流(I)である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の診断方法。
【請求項7】
前記電流(I)の変化曲線(Si)上の第1の極大(B)に達する時間(Tmax)に対応する前記変化曲線(Si)上の少なくとも1つの特定の値を決定し、
基準値(G1、G2)に対する前記第1の極大(B)の位置に応じて、前記接触器の動作の状態を診断する、
ことを含むことを特徴とする請求項6に記載の診断方法。
【請求項8】
前記電流変化曲線(Si)上の前記第1の極大(B)のレベルに達した最大電流(Imax)を決定する、ことを含むことを特徴とする請求項7に記載の診断方法。
【請求項9】
総計ドロップアウト時間(Ta)の間に測定される前記アクチュエーティングコイル(3)の前記電気的特性(K)は、前記アクチュエーティングコイル(3)の端子の電圧(U)である、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載の診断方法。
【請求項10】
前記電圧(U)の変化曲線(Su)上の第1の極小(B’)に達する時間(Tmax)に対応する前記変化曲線(Si)上の少なくとも1つの特定の値を決定し、
基準値(G1、G2)に対する前記第1の極小(B’)の位置に応じて、前記接触器の動作の状態を診断する、
ことを含むことを特徴とする請求項9に記載の診断方法。
【請求項11】
請求項1から10のいずれか1項に記載の診断方法の実行用の接触器であって、
磁気ヨーク(4)および可動強磁性コア(5)により形成された磁気回路を有する電磁アクチュエータと、
制御手段(20)と、
前記制御手段(20)を介して第1および第2の電源端子(B1、B2)に接続された少なくとも1つのアクチュエーティングコイル(3)と、
前記電圧制御手段(20)に作用するように設計された処理ユニット(2)と、
前記アクチュエーティングコイル(3)の電気的特性(K)の測定手段(24、25)であって、少なくとも1つのフリーホイールダイオード(D1)が、前記少なくとも1つのアクチュエーティングコイル(3)および前記測定手段(24、25)と並列に接続されている、測定手段(24、25)とを備え、
前記処理ユニット(2)は、
前記電気的特性(K)の測定から少なくとも1つの特定の値を復元する復元手段と、
前記少なくとも1つの特定の値を、前記接触器の特定の初期動作基準値と比較する比較手段と、
基準値に対する前記少なくとも1つの特定の値の位置に応じて、前記接触器の動作の状態を診断する診断手段と、
を備えることを特徴とする接触器。
【請求項12】
前記アクチュエーティングコイル(3)と直列に接続されたツェナーダイオード(Dz)を備えることを特徴とする請求項11に記載の接触器。
【請求項13】
前記ツェナーダイオード(Dz)は、前記アクチュエーティングコイル(3)および前記電流(I)の測定手段(24)と直列に接続されており、短絡手段(21)が、前記短絡手段が閉位置にあるときに前記ツェナーダイオード(Dz)を短絡するように、前記ダイオードと並列に接続されている、ことを特徴とする請求項12に記載の接触器。
【請求項14】
前記アクチュエータの前記磁気回路は、永久磁石(6)を備えることを特徴とする請求項11から13のいずれか1項に記載の接触器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4A】
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【図4B】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−89603(P2013−89603A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2012−231987(P2012−231987)
【出願日】平成24年10月19日(2012.10.19)
【出願人】(594083128)シュネーデル、エレクトリック、インダストリーズ、エスアーエス (52)
【氏名又は名称原語表記】SCHNEIDER ELECTRIC INDUSTRIES SAS