説明

接触型電路形成部材

【課題】電気製品の電磁波ノイズ、特に電磁波ノイズの高周波成分の強度を低減させるための電路を形成するのに適し、形状やサイズの自由度に優れて汎用性に富む接触型電路形成部材を提供する。
【解決手段】表面が導電性を有しかつ弾力性及び可撓性を有するベルト10と、このベルトを環状に保形する保形手段とを有する。保形手段が、ベルト10の端部に一体に設けられたフック部21と、ベルト10に開設されてフック部21を係止可能な係合孔部25と、を備える。ベルト10は、樹脂製プレート11の表面及び裏面のうちの少なくとも片面に導電性材料12が積層一体化されてなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接触型電路形成部材、たとえばハードディスクドライブ(HDD)のようなノイズ発生源となるアイテムの導電性外板とそのアイテムを収容しているケース側の天板やシャーシといった板金部材との両方に接触させることによって、高周波ノイズを低減させる対策を行うこと、などに使用される接触型電路形成部材に関する。
【背景技術】
【0002】
図8は従来例としてのこの種の接触型電路形成部材Aを一部破断して示した斜視図である。図9は図8の接触型電路形成部材Aの使用状態を示した概略斜視図である。図8の接触型電路形成部材Aは導電性ガスケットとして知られていて、スポンジのような樹脂発泡体でなる弾力性を備えた芯材1の周囲を、導電性を有するメッシュ材2で被覆してなる。この接触型電路形成部材Aは、図9のように、たとえばHDDのようなノイズ発生源となるアイテムの筐体を構成している導電性の外板100とそのアイテムを収容しているケース側の天板やシャーシといった板金部材200との相互間に圧縮状態で介在されていて、それらの外板100と板金部材200との両方に上記メッシュ材2が接触している。また、外板100と板金部材200との相互間の定位置に接触型電路形成部材Aを保持させるために、従来例では、図8のようにメッシュ材2の外面に粘着テープ3を貼り付けておき、その粘着テープ3を外板100又は板金部材200に貼り付けるという手法が採られていた。
【0003】
一方、ノイズの抑制や静電気の侵入防止を図ることを意図して、映像機器の映像表示部に板ばね部を接触させ、この板ばね部を経て、映像表示部が発する電磁波によって生じるノイズを制御回路基板の接地部に導くことが提案されている(たとえば、特許文献1参照)。
【0004】
また、電磁波を遮断する作用を発揮する電磁波シールド材なども提案されている(たとえば、特許文献2、特許文献3、特許文献4参照)。これらの特許文献によって提案されているものは、アイテムの導電性外板とアイテムを収容しているケース側の板金部材との相互間に圧縮状態で介在されて使用されるものではなく、ノイズ発生源となるアイテムの周囲に配備されることによって電磁波を遮断する作用を発揮するものと考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−217084号公報
【特許文献2】特開2002−26575号公報
【特許文献3】特開2003−258543号公報
【特許文献4】特開2007−27522号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、図8を参照して説明した従来例の接触型電路形成部材Aは、ノイズ低減対策のための電路を形成することに使用されているけれども、圧縮されていない自然状態での厚さや縦横のサイズが定まっている。そのため、ノイズ発生源となるアイテムの導電性外板とそのアイテムを収容しているケース側の板金部材との相互間隔の広狭に十分に対応しきれておらず、それらの相互間隔が広い箇所や狭い箇所では、自然状態での厚さやサイズがその隙間の広さに見合うものを使用することが余儀なくされていた。そのため、従来は、厚さや縦横のサイズが異なる多くの種類の接触型電路形成部材Aを管理することが要求されるという問題があった。同様の問題は、上掲の特許文献1によって提案されているような板ばね部を用いるものについても存在していた。
【0007】
本発明は、以上の問題に鑑みてなされたものであり、電気製品の電磁波ノイズ、特に電磁波ノイズの高周波成分の強度を低減させるための電路を形成するのに適し、しかも、ノイズ発生源となるアイテムの導電性外板とそのアイテムを収容しているケース側の板金部材との相互間隔の広狭にそれほど影響されずに使用することができるという、形状やサイズの自由度に優れて汎用性に富む接触型電路形成部材を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る接触型電路形成部材は、ノイズ発生源となるアイテムの導電性外板と上記アイテムを収容しているケース側の板金部材との相互間に圧縮状態で介在されて、それらの外板と板金部材との両方に接触する接触型電路形成部材であって、表面が導電性を有しかつ弾力性及び可撓性を有するベルトと、このベルトを環状に保形する保形手段と、を有する。
【0009】
この構成の接触型電路形成部材は、保形手段でベルトを環状に保形することが可能である。そしてベルトが弾力性及び可撓性を有しているので、環状に保形されたベルトを、アイテムの導電性外板とケース側の板金部材との相互間に圧縮状態で介在させて、その表面を外板と板金部材との両方に接触させ、外板と板金部材とを短絡させる電路を形成させることが可能である。また、環状に保形されたベルトのサイズ、たとえば直径などは、ベルトの当初長さを十分に長く形成しておくことによって、アイテムの導電性外板とケース側の板金部材との相互間隔の広さに見合うように種々変更することが可能である。また、環状に保形されたベルトは、そのベルトの径方向での圧縮度合(変形度合)を変更することによって幅寸法を変更することが可能である。したがって、形状やサイズの自由度に優れて汎用性に富む接触型電路形成部材が得られる。
【0010】
本発明では、上記保形手段が、上記ベルトの端部に一体に設けられたフック部と、上記ベルトに開設されて上記フック部を係止可能な係合孔部と、を備えている、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、保形手段が別部品を構成しないので部品の増加を回避することができるという利点があるだけでなく、ベルトを丸めてフック部を係合孔部に係止させるだけの簡単な手順を行うだけでベルトを環状に保形することができるという利点もある。
【0011】
本発明では、上記ベルトの長手方向複数箇所に細長の上記係合孔部が具備されていることが望ましい。この構成であれば、フックを係止させる係合孔部を適切に選定するだけで、環状に保形したベルトのサイズを変更することが可能になる。しかも、上記のように環状に保形されたベルトの径方向での圧縮度合(変形度合)を変更することによって幅寸法も容易に変更することが可能であるので、形状やサイズの自由度がさらに向上し、汎用性が格段に向上する。
【0012】
本発明では、上記係合孔部が、上記外板又は上記板金部材に具備された舌片状の板片部を挿入可能な長さを有していることが望ましい。この構成であれば、外板又は上記板金部材の板片部を係合孔部に挿入することによって、当該接触型電路形成部材を定位置に保持させることが可能になる。そのため、粘着テープなどを用いて位置保持することの必要性がなくなる。
【0013】
本発明において、上記ベルトは、樹脂製プレートの表面及び裏面のうちの少なくとも片面に導電性材料が積層されてなる、という構成を採用することが可能である。この構成であれば、樹脂製プレートが弾力性を発揮して、導電性材料を上記外板又は上記板金部材に確実に接触させることが可能になる。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、電気製品の電磁波ノイズの高周波成分の強度を低減させるための電路を形成するのに適する接触型電路形成部材を提供することが可能になる。また、ノイズ発生源となるアイテムの導電性外板とそのアイテムを収容しているケース側の板金部材との相互間隔の広狭にそれほど影響されずに使用することができるという、形状やサイズの自由度に優れて汎用性に富む接触型電路形成部材を提供することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明に係る接触型電路形成部材を一部破断して示した側面図である。
【図2】(A)(B)は環状に保形された接触型電路形成部材を例示した平面図である。
【図3】使用状態の平面図である。
【図4】他の使用状態の平面図である。
【図5】さらに他の使用状態の概略斜視図である。
【図6】2本のベルトの連結構造を示した概略斜視図である。
【図7】ベルトの積層構造を例示した説明図である。
【図8】接触型電路形成部材の従来例を一部破断して示した斜視図である。
【図9】図8の接触型電路形成部材の使用状態を示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1は本発明に係る接触型電路形成部材Aを一部破断して示した側面図である。また、図2(A)(B)は環状に保形された接触型電路形成部材Aを例示した平面図、図3及び図4は使用状態の平面図、図5はさらに他の使用状態の概略斜視図、図6は2つの接触型電路形成部材A,Aの連結構造を示した概略斜視図である。図7はベルト10の積層構造を例示した説明図である。
【0017】
この実施形態の接触型電路形成部材Aは、表面が導電性を有しかつ弾力性及び可撓性を有するベルト10を備えている。図10に示したように、ベルト10は、弾力性と可撓性とを有する樹脂製プレート11の表面及び裏面に導電性材料12,12を積層一体化してなる。樹脂製プレート11を形成している樹脂材料には、ポリカーボネートフィルム、ポリエチレンテレフタレート、ポリエステル、ポリエチレン、ポリプロピレンなどを採用することが可能である。また、導電性材料12には、銀などの金属とフィラーとの混在材料のほか、従来例で説明したメッシュ材などを使用することが可能である。
【0018】
保形手段は、ベルト10の長手方向の両端部のそれぞれに一体に設けられたフック部21,21と、ベルト10に開設された横長矩形の係合孔部25とを備えてなる。この実施形態のように、保形手段をベルト10に設けたフック部21と係合孔部25とによって構成しておくと、保形手段を別部品として管理する必要がなくなるという利点がある。
【0019】
また、この実施形態では、保形手段を構成している係合孔部25を、ベルト10の長手方向複数箇所に開設してある。そのため、1つのフック部21と1つの係合孔部25とを選定し、選定したフック部21を係合孔部25に係止させると、ベルト10が環状に曲がって保形され、そのような保形状態では、ベルト10の弾力性によってそのベルト10が拡がり方向に弾発付勢された状態を維持している。
【0020】
図例のフック部21では、ベルト10の端部から突出させた幅狭の首部22に、その幅方向両側に張り出した係止片23を一体に形成してなる。そして、首部22の横幅を上記係合孔部25の横幅(横方向長さ)よりも少し短くし、その反面で、係止片23の横幅を上記係合孔部25の横幅よりも長くしてある。したがって、フック部21を係合孔部25に係止させるときには、フック部21の係止片23を変形させて係合孔部25に挿通させた後、その係止片23を元の形状に復帰させて、係止片23を係合孔部25の口縁に係合させる。
【0021】
図2(A)は、図1を参照して説明した接触型電路形成部材Aのベルト10を円環状に保形した事例を示していて、このものでは、ベルト10の一端側のフック部21を他端に近い箇所の係合孔部25(図1参照)に係合させることによって1つの円環部30を形成している。同図(B)は、ベルト10の一端側及び他端側のフック部21を、中間部の別々の係合孔部25(図1参照)に係合させることによって2つの円環部30,30を形成した事例である。ベルト10は図2(A)(B)に示したもの以外の形状にも保形することが可能である。たとえば、渦巻き状の円環状に保形することもできる。また、保形は、円環状に限らず、ベルト10を適所で折り曲げることによって三角形、四角形などの多角形環状に保形することも可能である。
【0022】
接触型電路形成部材Aは環状に保形して使用される。図3の使用状態は、図2(A)に示した円環状の接触型電路形成部材Aを、ノイズ発生源となるアイテム、たとえばHDDの導電性外板100とアイテムを収容しているケース側の板金部材200との相互間に押し込んで押し潰した圧縮状態で縦向きに介在したものである。これによると、接触型電路形成部材Aがベルト10の復元力によって導電性外板100板金部材200との両方に弾接する。そのため、接触型電路形成部材Aによって形成される電路によって外板100と板金部材200とが短絡し、ノイズ、特に高周波ノイズの発生が低減される。
【0023】
また、図4の使用状態は、図2(B)に示した接触型電路形成部材Aを、HDDの導電性外板100とケース側の板金部材200との相互間に上記接触型電路形成部材Aを押し込んで押し潰した圧縮状態で縦向きに介在したものである。これによっても、接触型電路形成部材Aがベルト10の復元力によって導電性外板100板金部材200との両方に弾接する。そのため、接触型電路形成部材Aによって形成される電路によって外板100と板金部材200とが短絡し、ノイズ、特に高周波ノイズの発生が低減される。
【0024】
図3又は図4の使用状態を採用する場合、接触型電路形成部材Aの位置ずれを防ぐためには、接触型電路形成部材Aと外板100又は板金部材200とを粘着テープで貼り付けておけばよい。
【0025】
図5の使用状態は、円環状に保形した接触型電路形成部材Aを、アイテムとしてのHDDの導電性外板100とアイテムを収容しているケース側の板金部材200との間に押し込んで押し潰した圧縮状態で横向きに介在させてあると共に、接触型電路形成部材Aに備わっている係合孔部25の1つに板金部材200の舌片状の板片部201を差し込むことによって、その接触型電路形成部材Aを板片部201に保持させている。この構成であると、接触型電路形成部材Aによって形成される電路によって外板100と板金部材200とが短絡し、ノイズ、特に高周波ノイズの発生が低減されることは勿論、係合孔部25の1つに板金部材200の舌片状の板片部201を差し込んでいることによって、接触型電路形成部材Aの位置ずれが防止される。そのため、接触型電路形成部材Aと外板100又は板金部材200の板片部201とを粘着テープで貼り付ける必要がなくなる。
【0026】
実施形態の接触型電路形成部材Aは、その長さが、ベルト10の長さによって定まる。そのため、環状に保形した場合の直径サイズなどが、使用場所によっては不足するという事態の起こる可能性がある。その場合、この実施形態では、2本又はそれよ多い本数のベルト10を連結して使用することが可能になる利便性がある。2本のベルト10を連結する際には、図6のようにフック部21と係合孔部25を利用する。具体的には、一方側のベルト10の1つの係合孔部25を選定し、その係合孔部25に、他方側のベルト10のフック部21を差し込んで係合させる。
【0027】
以上説明したように、この実施形態の接触型電路形成部材Aは、ノイズ発生源となるアイテムの導電性外板100とアイテムを収容しているケース側の板金部材200又は板片部201との相互間の隙間を広さに見合って、その形状の外形サイズを自由に変更することが可能である。そのため、この実施形態の接触型電路形成部材Aは、形状やサイズの自由度に優れて汎用性に富むものであるということが云える。
上記した実施形態では、ベルト10が樹脂製プレート11の両面に導電性材料12,12を積層一体化することによって構成されているけれども、この点は、樹脂製プレートの片面だけに導電性材料を積層一体化することによって構成しておいてもよい。ただし、このものでは、導電性材料が外面側に配置されるように環状に保形することが要求される。
【0028】
ノイズ発生源となるアイテムには、実施形態で説明したHDDのほか、その他の各種電気電子部品があり、アイテムの導電性外板には、HDDの筐体のほか、その筐体に切り起こした板片、他の電気電子部品の導電性ケース、電磁波シールド板、などがある。また、アイテムを収容しているケース側の板金部材には、ケース自体を形成している板金製のボトムシャーシ、トップカバーなどが含まれる。
【符号の説明】
【0029】
A 接触型電路形成部材
10 ベルト
11 樹脂製プレート
12 導電性材料
21 フック部(保形手段)
22 係合孔部(保形手段)
100 導電性外板
200 板金部材
201 板片部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ノイズ発生源となるアイテムの導電性外板と上記アイテムを収容しているケース側の板金部材との相互間に圧縮状態で介在されて、それらの外板と板金部材との両方に接触する接触型電路形成部材であって、
表面が導電性を有しかつ弾力性及び可撓性を有するベルトと、このベルトを環状に保形する保形手段と、を有する接触型電路形成部材。
【請求項2】
上記保形手段が、上記ベルトの端部に一体に設けられたフック部と、上記ベルトに開設されて上記フック部を係止可能な係合孔部と、を備えている請求項1に記載した接触型電路形成部材。
【請求項3】
上記ベルトの長手方向複数箇所に細長の上記係合孔部が具備されている請求項2に記載した接触型電路形成部材。
【請求項4】
上記係合孔部が、上記外板又は上記板金部材に具備された舌片状の板片部を挿入可能な長さを有している請求項2又は請求項3に記載した接触型電路形成部材。
【請求項5】
上記ベルトは、樹脂製プレートの表面及び裏面のうちの少なくとも片面に導電性材料が積層されてなる請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載した接触型電路形成部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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