接近装置
接近装置によって、医療物品が患者の身体空間の内部へ配置される。この装置には、細長い本体と針ハブとを含む針が備わっている。この医療物品は、上記針にわたって配置され、かつ、上記針にわたってスライドすることができる。この医療物品の上記針と外面との間における任意箇所には奔流空間が設けられている。この奔流空間は、上記針の穴と可変容積チャンバとに連通している。従って、この可変容積チャンバは、流体を上記奔流空間から同チャンバの中へ引き込むことができる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
この出願は、米国仮特許出願第61/113,989号(2008年11月12日に出願されたもの)および第61/114,404号(2008年11月13日に出願されたもの)に関するものであるとともに、米国特許法第119条(e)の下でのそれらの利益を主張するものであり、これらの出願のそれぞれは、それらの全体を参照することによって、この明細書に明確に組み入れられる。
【0002】
<発明の分野>
この発明は一般に、医療物品(例えば、カテーテル、カニューレ、シースなどのような)を、例えば、動脈、静脈、血管、体腔、あるいは排液部位のような身体空間の中へ導入し、かつ/または、送出するための接近装置に差し向けられている。
【背景技術】
【0003】
<関連技術の説明>
カテーテルあるいは血管シースを血管の中へ挿入するための好ましい非外科的方法には、患者の血管の中へ挿入される接近針を含むセルディンガー法(Seldinger technique)あるいは修正セルディンガー法の使用が含まれている。ガイドワイヤが、上記針を介して、かつ、血管の中へ挿入される。この針は取り外され、また、拡張器およびシースが、組み合わされてあるいは別々に上記ガイドワイヤにわたって挿入される。上記拡張器および上記シースは、次いで、いっしょにあるいは別々に、組織を通して血管の中へ短い距離だけ挿入され、その後、上記拡張器および上記ガイドワイヤは取り外されて廃棄される。カテーテルあるいは他の医療物品は次いで、上記シースを介して血管の中へ所望位置まで挿入することができ、または、上記シースは血管の中にそのまま残すこともできる。
【0004】
多くの血管接近装置が知られている。米国特許第4,241,019号、4,289,450号、4,756,230号、4,978,334号、5,124,544号、5,424,410号、5,312,355号、5,212,052号、5,558,132号、5,885,217号、6,120,460号、6,179,823号、6,210,332号、6,726,659号および7,025,746号の各公報には、そのような装置の例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの装置のどれにも、医師あるいは医療サービス提供者にとって好ましいであろう使用の容易性と安全性とが備わっていない。このため、より容易に使用することができるとともにより安全である血管接近装置、特に、血管が穿刺されたときにそれを明確かつ迅速に表示するであろう同装置、および、オーバーワイヤ式血管接近法における不慮の針刺傷と他の付随的危険性とを減少させるであろう同装置についての要望が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の実施形態には、例えば血管あるいは排液部位のような患者の身体の内部における空間の中へカテーテルあるいはシースを送出するために有用である接近装置(アクセス装置)についてのいくつかの特徴的構成が含まれている。この発明の適用範囲から逸脱することなく、そのいっそう顕著な特徴的構成が簡潔に論述される。何人も、この論述を考慮した後に、そして、とりわけ、この項の記載と組み合わせて以下の好ましい実施形態の詳細な説明の項を読み取った後に、従来の接近装置に優るいくつかの利点がこれらの実施形態の特徴的構成および様相によってどのようにしてもたらされるかを理解するであろう。
【0007】
1つの実施形態では、医療物品を身体空間の内部へ配置するための接近装置を設けることができる。この接近装置には、針と、この針の少なくとも一部にわたって配置された医療物品とが含まれていてもよい。この針には穴が含まれていてもよく、また、その穴は、この針と医療物品の外面との間の任意箇所に作り出された奔流空間に連通していてもよい。また、この奔流空間は可変容積チャンバに連通していてもよい。その結果、この可変容積チャンバは、流体を奔流空間から同チャンバの中へ引き込むことができる。
【0008】
別の実施形態では、医療物品を身体空間の内部へ配置するための別の接近装置を設けることができる。先の実施形態のように、針と医療物品と奔流空間とを設けることができる。さらに、延出状通路を、第1端部で上記奔流空間へ、かつ、第2端部で負圧要素へ連通させることができる。この負圧要素、チューブ、奔流チャンバのいずれかの中に濾過要素を配置してもよい。その結果、この濾過要素によって、上記奔流チャンバの中へ入る体液の流出を防止することができるが、上記負圧要素への空気の流出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
この明細書の中に開示された接近装置におけるこれらの、そして他の特徴的構成、様相および利点は、この発明を例示することを意図しており、かつ、限定することを意図していない好ましい諸実施形態の図面を参照して、以下に説明される。加えて、これらの図を通じて、同一の参照符号は、例示された実施形態の同一の構成要素を表示するために使用されている。例示された諸実施形態の中における同様の構成要素は、別の実施形態を表示するために、下付き数字のある同一の参照符号として、同様に表わされている。以下は、これらの図面のそれぞれについての簡単な説明である。
【0010】
【図1A】この発明によって構成された接近装置の好ましい実施形態の斜視図であり、また、針、拡張器、および医療物品と同軸に位置合わせされた事前搭載型ガイドワイヤ部分も示している。
【0011】
【図1B】図1Aに描かれた実施形態の平面図である。
【0012】
【図2A】図1Aにおける針の平面図であり、また、遠位端の近傍の窓穴も示している。
【0013】
【図2B】図1Aにおける針の側面図であり、また、近位端の近傍のフィンも示している。
【0014】
【図2C】図2Aにおける2C−2C線に沿った断面図である。
【0015】
【図2D】図2Aにおける針の一部の拡大平面図であり、また、上記窓穴も示している。
【0016】
【図2E】図2Aにおける針の針ハブの拡大平面図である。
【0017】
【図2F】図2Aにおける針の針ハブの拡大側面図である。
【0018】
【図2G】図2Aにおける針の針ハブの拡大近位端面図である。
【0019】
【図3A】図1Aにおける拡張器の平面図であり、また、遠位端の近傍の窓穴も示している。図3Aはまた、上記拡張器とシースとの間の空気を抜くためのルアー表面における長手溝も示している。
【0020】
【図3B】図3Aにおける3B−3B線に沿った断面図である。
【0021】
【図3C】図3Aにおける拡張器の一部の拡大平面図であり、また、上記窓穴および長手溝も示している。
【0022】
【図3D】図3Aにおける拡張器ハブの拡大端面図である。
【0023】
【図3E】対応するねじ山があるシースへ固定されるように構成された固定用スピンナットが含まれている拡張器ハブの別の実施形態の斜視図である。
【0024】
【図3F】図3Aにおける3F−3F線に沿った断面図であり、また、ルアー表面における周縁の周りに等間隔で配置された溝も示している。
【0025】
【図4A】図1Aにおけるシースの平面図であり、また、シースの近位端へ接続されたシースハブも示している。
【0026】
【図4B】図4Aにおける4B−4B線に沿った断面図である。
【0027】
【図4C】図4Aにおけるシースの拡大端面図である。
【0028】
【図4D】図4Aにおけるシースの近位部分の拡大斜視図である。
【0029】
【図5A】図1Aにおけるガイドワイヤ部分の斜視図であり、また、ガイドワイヤの近位端へ接続されたガイドワイヤハブも示している。
【0030】
【図5B】図5Aに描かれた実施形態のガイドワイヤ部分の平面図である。
【0031】
【図6A】図1Aにおける送路体の斜視図である。
【0032】
【図6B】図6Aにおける送路体の平面図であり、また、針を拡張器に対して固定するための固定機構も示している。
【0033】
【図6C】図6Bにおける送路体の側面図である。
【0034】
【図6D】図6Bにおける固定機構の拡大図である。
【0035】
【図6E】ガイドワイヤ部分を事前搭載状態に固定する別の固定機構の拡大図である。
【0036】
【図7A】図1Aにおける接近装置の平面図であり、また、図6Eにおける固定機構を、事前搭載状態にある送路体へ固定されたガイドワイヤ部分で示している。
【0037】
【図7B】図7Aにおける接近装置および固定機構の側面図である。
【0038】
【図7C】図7Aにおける接近装置の断面図であり、また、送路体における要素と当たり止めとの間に配置されたガイドワイヤハブも示している。
【0039】
【図7D】図7Bにおける接近装置の拡大端面図であり、また、送路体から延出しているともにガイドワイヤハブの少なくとも一部の周りから延出している2つのアームも示している。
【0040】
【図8A】図1Aに描かれた実施形態の平面図であり、患者の体内への接近装置の挿入を例示している。
【0041】
【図8B】図8Aに描かれた実施形態の拡大図であり、患者に隣接した接近装置の区域に焦点が合わされている。
【0042】
【図8C】図8Bに描かれた実施形態の一部の拡大図であり、また、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も隠れ線で示している。
【0043】
【図8D】図8Cに描かれた実施形態の一部の拡大断面図であり、また、流体が針の内側からシースと拡張器との間に形成された流路まで流れることができるように、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も示している。
【0044】
【図8E】流体が0.002インチの隙間高さ幅がある流路まで引き上げられる速度を示すグラフである。
【0045】
【図8F】流体が0.001インチの隙間高さ幅がある流路まで引き上げられる速度を示すグラフである。
【0046】
【図8G】流体が0.0005インチの隙間高さ幅がある流路まで引き上げられる速度を示すグラフである。
【0047】
【図8H】図8Cに描かれた実施形態の一部の、拡張器の中における流路の遠位にある領域に沿った拡大断面図である。
【0048】
【図8I】図8Aに描かれた実施形態の拡大図であり、針ハブが第1位置にあるときにその針ハブが拡張器ハブへ固定された区域に焦点が合わされている。
【0049】
【図8J】図8Iに描かれた実施形態の断面図である。
【0050】
【図9A】図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、針の先端から遠位方向に前進したガイドワイヤを例示している。
【0051】
【図9B】図9Aに描かれた実施形態の拡大図であり、針ハブが第1位置にあるときにガイドワイヤハブがその針ハブへ固定された区域に焦点が合わされている。
【0052】
【図9C】図9Bに描かれた実施形態の断面図である。
【0053】
【図10A】図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、図9Aに例示された位置から針本体に対して遠位に前進している拡張器およびシースを例示している。
【0054】
【図10B】図10Aに描かれた実施形態の拡大後面図であり、針ハブが第2位置にあるときにその針ハブが送路体へ固定された区域に焦点が合わされている。
【0055】
【図11A】図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、シースからのガイドワイヤ、針本体、および拡張器の取り外しを例示している。
【0056】
【図11B】図11Aに例示された実施形態の一部の拡大図であり、シースからのガイドワイヤ、針本体、および拡張器の取り外しの間に拡張器によって覆われた針の先端を示している。
【0057】
【図12A】針および拡張器における位置合わせされた開口あるいは窓穴の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0058】
【図12B】図12Aにおける13B−13B線に沿った拡大断面図であり、また、流体が針の内側からシースと拡張器との間に形成された流路まで流れることができるように、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も示している。
【0059】
【図13A】針および拡張器における位置合わせされた開口あるいは窓穴の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0060】
【図13B】図13Aにおける13B−13B線に沿った拡大断面図であり、また、流体が針の内側からシースと拡張器との間に形成された流路まで流れることができるように、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も示している。
【0061】
【図14A】拡張器とシースとの間に形成された流路の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0062】
【図14B】図14Aにおける14B−14B線に沿った断面図であり、また、シースの中へ延出している流路の深さも示している。
【0063】
【図15A】拡張器とシースとの間に形成された流路の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0064】
【図15B】図15Aにおける15B−15B線に沿った断面図であり、また、拡張器およびシースの両方の中へ延出している流路の深さも示している。
【0065】
【図16A】拡張器とシースとの間に形成された流路の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0066】
【図16B】図15Aにおける16B−16B線に沿った断面図であり、また、拡張器の中へ延出しているスプラインの形態にある、等間隔に配置された複数の流路も示している。
【0067】
【図17】接近装置の別の実施形態における拡大断面図であり、また、相異なる形状を有する拡張器とシースとの間に形成された流路も示している。
【0068】
【図18A】この発明の別の好ましい実施形態によって構成された別の接近装置の斜視図である。
【0069】
【図18B】収縮形態にある図18Aの接近装置におけるハブの拡大斜視図である。
【0070】
【図18C】拡張形態にある図18Bのハブの拡大斜視図である。
【0071】
【図19】この発明のさらに好ましい実施形態によって構成された付加的な接近装置の斜視図である。
【0072】
【図20】接近装置の付加的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
この開示によれば、医療物品(例えば、カテーテルあるいはシース)を血管あるいは排液部位へ送出するための接近装置が提供される。図1Aは、この発明の好ましい実施形態による、血管(例えば、静脈あるいは動脈)の中へ挿入されるように構成された接近装置20を示している。この接近装置は、この状況において(すなわち、血管への接近について)以下で説明されるが、この接近装置は、医療物品(例えば、カテーテルあるいはシース)を患者の身体の内部における他の箇所(例えば、排液部位)へ接近させるとともにそれをその箇所の中へ配置するためと、他の目的のため(例えば、膿瘍を排出させるため)とに使用することもできる。
【0074】
この接近装置のこの実施形態は、単一部材型で管状の典型的な医療物品を患者の内部の身体空間の中へ配置する状況で開示されている。この管状物品は、いったん配置されるとその後に、他の医療物品(例えば、カテーテル、ガイドワイヤなど)を受け入れて身体空間の中への接近をもたらすために使用することができ、かつ/または、流体を身体空間の中へ導入しあるいは流体を身体空間から除去(例えば、排出)するための通路をもたらすために使用することができる。図示された実施形態では、上記管状医療物品は、主として静脈の中への流体通路をもたらすように構成されたシースあるいはカテーテルである。しかしながら、この発明の原理は、単一部材型のシースあるいはカテーテルの配置、または、このシースあるいはカテーテルを介する医療物品のその後の挿入に限定されることがない。代わりに、当業者にとっては、この開示に照らせば、この明細書の中に開示された接近装置は、シース、流体排出チューブ、流体送出チューブ、および単一管腔あるいは複数管腔のカテーテルを患者の体内に直接配置するかあるいは別の医療物品を介して間接的に配置することに関して首尾よく利用することもできる、ということが理解されるであろう。
【0075】
例えば、この明細書の中に開示された接近装置は、静脈用中心カテーテル、周辺に挿入された中心カテーテル、血液透析用カテーテル、外科排液チューブ、剥ぎ取り用シース、多数構成部材型シース、スコープを、さらには、外部のあるいは移植型の電子装置あるいはセンサーへ接続された導線あるいはケーブルのための導線管を、直接または間接的に配置するように構成することもできるが、これらに限定されることはない。上で説明されたように、上で列挙された医療物品は、接近装置の拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の体内に直接配置することができ、あるいは、接近装置の拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の体内に配置された医療物品によって患者の体内にその後、配置することができる。
【0076】
さらに、この明細書の中に開示された実施形態は、単一の医療物品の同軸挿入に限定されることはない。例えば、2つのカテーテルを、挿入されたシースを介して患者の体内に挿入することができ、あるいは、第2のカテーテルを、挿入された第1のカテーテルを介して患者の体内に挿入することができる。さらに、管路を血管あるいは他の身体空間の中へもたらすことの他に、拡張器、針、およびガイドワイヤを介して挿入された医療物品には、その後に挿入された医療物品の管腔に加えて、管腔を形成することができる。当業者は、この明細書の中に開示された装置およびシステムのための付加的な用途を発見することもできる。従って、シースに関連した接近装置(例えば、微小穿刺のための用途)の図示および説明は、この接近装置における1つの可能な用途の単なる典型例である。
【0077】
図1Aおよび図1Bには、接近装置20の好ましい実施形態が示されている。接近装置20には、針22、拡張器24、およびシース26が備わっている。図示された実施形態では、この接近装置には、ガイドワイヤ部分28および送路体30も含まれている。図1Bにおいて最もよく認められるように、拡張器24は針22に同軸に取り付けられているのが好ましく、また、シース26は拡張器24に同軸に取り付けられている。この接近装置の諸構成要素の伸縮特性は、それらの諸構成要素を、同軸(例えば、モノレール型設計)というよりはむしろ実質的に平行に配置されたそれらの軸に配置することによって、達成することもできる。
【0078】
これらの構成要素のそれぞれには、終端部あるいは移行部(すなわち、ハブ)に管腔継手が含まれている。従って、図示された実施形態では、針22には、針ハブ34から遠位へ延出する針本体32が含まれており、拡張器24には、拡張器ハブ38から遠位へ延出する拡張器シャフト36が含まれており、また、シース26には、シースハブ42から遠位へ延出するシース本体36が含まれている。ガイドワイヤ部分28には、ガイドワイヤ44と、好ましくはガイドワイヤハブあるいはキャップ46とが備わっている。図示された実施形態では、ガイドワイヤハブ46はガイドワイヤ44の近位端に配置されているが、しかしながら、他の用途では、このハブ46は、ガイドワイヤ44の端部どうしの間のある箇所に配置されていてもよい。
【0079】
図2A−図2Gは、針22の針本体32および針ハブ34を例示しているが、これらは、接近装置20の他の構成要素とは関係なく、この接近装置の好ましい実施形態に従って構成されている。図2Aおよび図2Bにおいて最もよく認められるように、針ハブ34は針本体32の近位端に配置されている。針本体32は、針22の遠位部分50の近傍における遠位端で終わっており、また、針ハブ34は、針22の近位部分52にある。
【0080】
針本体32には、円形で一定直径の内側穴と円形で一定直径の外面とが備わった細長い管状の形状があるのが好ましい。しかしながら、他の実施形態では、針本体32には、他の穴形状および外面形状(例えば、楕円形の断面形状のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない)があってもよい。この針の内面あるいは外面には、溝あるいは流路が含まれていてもよい。これらの溝あるいは流路は、この針穴の内部における流体を、針22の構造体の周囲へあるいはその構造体へ、または針22の内部(例えば、ガイドワイヤの周囲)で案内することができる。いくつかの実施形態では、上記の溝あるいは流路は、上記拡張器に対する針22の所望方位を維持することに役立つであろう。
【0081】
針本体32には、目標とする皮下身体空間へ接近するために充分に長い長さがあり、また、その身体空間へ接近するときに必要以上の外傷を引き起こすことなく挿入力に耐えるために充分なゲージ寸法がある。多くの用途のために、この針本体には、3−20cmの長さがあり、より好ましくは3−10cmの長さがある。例えば、成人の胸郭における身体空間(例えば、血管)へ接近するために、針本体32には、7cm以上の長さがあるのが好ましく、また、9cm以上の長さがあるのがより好ましく、さらに、9−10cmの長さがあるのが最も好ましい。この針の上記寸法は、微小穿刺の用途(周辺装置IV)については、18ゲージ以下であるのが好ましく、また、18−28ゲージであるのがより好ましく、さらに、18−26ゲージであるのが最も好ましい。新生児に関する用途については、針本体32の長さおよびゲージは、著しく短くかつ小さくすべきであり、例えば、3−4cmおよび26−28ゲージであるのが好ましい。
【0082】
図2Aおよび図2Dにおいて最もよく認められるように、針本体32には、針本体32の遠位端の近傍に少なくとも1つの窓穴あるいは開口56が含まれている。この窓穴56は、針本体32の壁を貫いて延出しており、また、針本体32に関するさまざまな形状および方位を有しているが、これらについては以下で詳しく説明される。加えて、針本体32には、遠位部分50に配置された斜切先端54があってもよい。
【0083】
図2Aおよび図2Bに例示されたように、この針の針先端における上記斜切部の周辺箇所と上記開口あるいは窓穴56の周辺箇所とに位置合わせされた針ハブ34の周囲における周辺箇所に、フィン58が配置されているのが好ましい。すなわち、このフィン58は上記の斜切部および窓穴に対して割り出されている。使用の間に、医師あるいは医療サービス提供者は、上記斜切部が血管の内側にあり、また、上記窓穴が上記のシースおよび/または拡張器によって覆われているときであっても、露出したフィン58の方位に留意することで、上記斜切状針先端(および窓穴56)の方位を判定することができる。例えば、図示された実施形態では、患者から離れたフィン58の方位は、血管の内部における上記針先端の斜切上向き方位に一致している。窓穴56もまた、図2Cに認められるように、フィン58と同一の側面にある。
【0084】
フィン58には、針ハブ34を用手操作するために、握り領域もまた設けられている。例えば、医師あるいは医療サービス提供者は、人差し指および親指をフィン58の側面部に置いて、針ハブ34を拡張器24および/またはシース26に対して安定化させることができる。図示された実施形態では、上記の拡張器/シースがこの針にわたって遠位へスライドすると、針ハブ34は、第1位置121と第2位置123と(図6Aに例示された例示部分)の間における送路体30に沿って相対的にスライドする。フィン58は、挿入ステップ(以下で説明される)を実行するときに保持することができる。加えて、フィン58は、針ハブ34を安定化させるとともに拡張器ハブ38を回転させるために使用することができる。さらにまた、フィン58は、針ハブ34が送路体30に沿った任意位置に配置されるときに接近装置20を握るための補助器具として、医師あるいは医療サービス提供者によって使用することができる。
【0085】
図2Dは、針本体32における側面の開口あるいは窓穴56の拡大図である。1つ以上の窓穴56によって、針本体32の側面部を貫く通路がもたらされている。図2Dに例示された窓穴56には長円形状がある。しかしながら、側面開口56の形状は、図示された実施形態のものに限定されることがなく、また、円形、長円形、正方形、あるいは他の形状であってもよい。
【0086】
ここで、図2E−図2Gを特に参照すると、針ハブ34には、針ハブ34の近位部分および遠位部分に固定構造体が含まれているのが好ましい。これらの固定構造体は、ルアー−ねじ型の接続部あるいは他の型の接続部であってもよい。
【0087】
針ハブ34の近位部分52における上記固定構造体によって、医師あるいは医療サービス提供者は別の医療物品を針ハブ34の近位端へ固定することができる。例えば、図示された実施形態における針ハブ34には、環状のフランジあるいはリップ63が含まれている。このリップ63は、針ハブ34を対応するルアー−ナット型の固定用特徴的構成の備わった他の医療物品へ取り付けることができるように、ねじ合わされている。加えて、医師あるいは医療サービス提供者は、上記近位端における上記固定構造体へ注射器あるいは監視用備品を取り付けて、要望どおり他の処置を実行することができる。針ハブ34にはまた、特定の用途のために望ましいときには、その近位端および/または側面出入口に隔壁が含まれていてもよい。
【0088】
針ハブ34の遠位部分における上記固定構造体によれば、医師あるいは医療サービス提供者は例えば、針ハブ34が上記第1位置121にあるときには、針ハブ34と拡張器ハブ38との間における相対運動を阻止するために、針ハブ34を拡張器ハブ38へ固定することができる。図示された実施形態では、上記固定構造体には、針ハブ34の表面にラッチ要素66が含まれている。このラッチ要素66は、針ハブ34を拡張器ハブ38へ解除可能に固定する。この固定構造体によれば、医療サービス提供者は、この針を患者の体内へ前進させることができるとともに、針ハブ34、拡張器ハブ38、あるいはこれらの両方を握ることができる。要望があれば、この固定構造体は、解除することができ、上記ハブどうしの間の相対運動を可能にする。他の実施形態では、同一あるいは類似の固定構造体によって、針ハブ34を、シースハブ42のようなこの接近装置の別の部材へあるいは別の医療物品のハブへ固定することができる。さらに、いくつかの実施形態では、上記固定構造体は、ねじ山接続部、ルアー型接続部などのような他の医療用継手にも係合するように構成することができる。針ハブ34の表面における上記固定構造体は、拡張器ハブ38、シースハブ42、あるいは他の医療物品の表面におけるさまざまな固定構造体と協働するように改変することができる。別の例として、いくつかの実施形態では、上記医療物品はカテーテルであってもよい。当業界において広く理解されるように、カテーテルには、シース26および拡張器24と比較して一般にいっそう可撓性のある構造体が備わっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、カテーテルは、体腔の中へ挿入されたときに、それを貫く空いた流路を維持するために、ねじれることのない極限角度で安全に曲げることができる。さらに、いくつかの実施形態では、カテーテルには、針によって作られた穴を拡張するための、あるいは針によって支持されず、傾斜が引き起こされるときに重力に対してそれ自体を支持するための充分な構造的強度がないかもしれない。
【0089】
以下でさらに詳しく説明されるように、ガイドワイヤ44が、針ハブ34の中空部分62を通して、針本体32を通して、さらに穿刺された血管の中へ導入されている。このガイドワイヤ44によれば、医療サービス提供者は拡張器24およびシース26を血管の中へ案内することができる。
【0090】
針ハブ34にはまた、針ハブ34が第1位置121と第2位置123との間で送路体30に沿ってスライドすることのできる2つの爪部68が備わっていてもよい。この好ましい実施形態では、針ハブ34の2つの爪部68は第1位置121と第2位置123との間における送路体30に係合しているが、他の実施形態では、針ハブ34は、第1位置121と第2位置123との間における送路体30の長さの一部にわたってだけ、送路体30に係合している。送路体30と針ハブ34との間のスライド式相互接続は、他の協働型構造体(例えば、蟻継ぎ接続部における対応する蟻ほぞおよびほぞ穴)を用いて達成することもできる。
【0091】
図3Aは、図1に描かれた実施形態の拡張器24の平面図である。図3Bは、図3Aに描かれた実施形態の拡張器24の、3B−3B線に沿った断面図である。図3Aおよび図3Bに示されたように、図示された拡張器24には、拡張器シャフト36、拡張器ハブ38、遠位領域70、および近位領域72が備わっている。図示された実施形態では、拡張器シャフト36には側面の開口あるいは窓穴74が含まれているが、しかしながら、他の実施形態では、拡張器シャフト36には、より少ないかあるいはより多い数の窓穴74が含まれていてもよい。例えば、(以下で、いっそう詳しく記載されるが、)拡張器の内部に血液奔流用のチャンバあるいは空間が配置されていて、拡張器シャフト36には窓穴74が含まれていなくてもよい。
【0092】
拡張器ハブ38には1つ以上の排出孔があってもよい。図示された実施形態では、拡張器ハブ38におけるこの排出孔は溝75によって形成されている。加えて、拡張器シャフト36には、この拡張器シャフト36の外面に形成された1つ以上の長手流路が備わっていてもよい。図示された実施形態では、この流路は開放状流路である。この開放状流路の側壁は突条76によって形成されている。図示された実施形態では、突条76に、シース26と界接する概ね平滑で円弧状の外面が画定されている。しかしながら、他の実施形態では、突条は他の形状であってもよい(例えば、いっそう顕著な頂部を画定することができる)。シース本体40の内部にいったん組み入れられると、拡張器シャフト36における上記開放状流路は、シース本体40の内径によって閉鎖される。
【0093】
図3Cは、図3Aに例示された実施形態の一部の拡大平面図である。上記のように、図示された拡張器シャフト36には、突条76どうしの間に形成された1つ以上の開口74と1つ以上の流路とが備わっている。側面の開口あるいは窓穴74によって、拡張器シャフト36の側面を通る流体通路がもたらされている。側面開口74の形状は、図示された実施形態に限定されることがなく、また、円形、長円形、正方形、あるいは他の形状であってもよい。図3Cに例示された開口あるいは窓穴74は、長円形である。
【0094】
図示された実施形態では、拡張器シャフト36における開口74は長円形であり、その主軸は、針22における長円形開口56の主軸に対して非平行である。例えば、針開口56は長手方向に延出していてもよく、また、拡張器開口74は円周方向に延出していてもよく、あるいはこれらの逆であってもよい。換言すれば、拡張器開口74の長軸は、針開口56の長軸に対して概ね垂直に配置されている。付加的な実施形態に関して以下で説明されるように、これらの開口56、76には、製造公差および回転不整合を説明するために、かなりの程度の重複を求めるのが好ましい他の形状、寸法および方位があってもよい。こういう訳で、上記窓穴の1つには、少なくとも1つの方向において、同一方向における上記窓穴の他の1つよりも大きい寸法があるのが好ましい。従って、図示された実施形態では、針窓穴56には、拡張器窓穴74の長手寸法よりも長い長手寸法がある。
【0095】
突条76どうしの間に形成された流路は、開口74まで遠いある箇所から近位方向へ延出している。図示された実施形態における突条76は、上記シースの内部における拡張器シャフト36のバランスをとるために、拡張器シャフト36に沿って、かつ、拡張器シャフト36の両側面に延出している。シースの内部における拡張器のバランスをとることによって、この拡張器は上記シースの内側周縁に等しい圧力を加えることができる。
【0096】
拡張器ハブ38には、拡張器24の近位領域72および遠位領域に、固定構造体が含まれていてもよい。それぞれの固定構造体は、ルアー型の接続部であってもよく、他の型の接続部であってもよい。図示された実施形態では、拡張器ハブ38には、第1ルアー型接続部78、第2ルアー型接続部80、リップ部77、および基部79が備わっている。第1ルアー型接続部78は、図2Eに例示された針22の表面における針ハブ34に係合している。第2ルアー型接続部80は、第1ルアー型接続部78よりも遠位に配置されている。いくつかの実施形態では、第2ルアー型接続部80(例えば、雄ルアー型スリップコネクタ)は、図1Aに例示されたシース26の表面におけるシースハブ42(例えば、雌ルアー型スリップコネクタ)に係合するように構成することができる。加えて、これらの構成要素における雄−雌ルアー型スリップコネクタは逆にすることができる。
【0097】
図3Dは、図3Aの拡張器24の拡大端面図である。図3Dに最も明確に示されたように、拡張器ハブ38には、針ハブ34が第1位置121にあるときに拡張器ハブ38を針ハブ34に固定するために、図2E−図2Fに例示された針ハブ34の表面におけるラッチ要素66に解除可能に係合する開口82がある。さらにまた、これらの拡張器ハブおよび針ハブ34における上記雄−雌ルアー型スリップコネクタは、他の実施形態では逆にすることもできる。上記針ハブが別の医療物品へ固定されている実施形態では、類似した構造体をその物品に設けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、接近装置20には拡張器24がなくてもよく、また、針ハブ34は、上記のように、拡張器ハブ38における開口82に類似した開口があるシースハブ42へ接続することができる。
【0098】
拡張器24の色は、血液あるいは他の流体とこの拡張器24との対比を促進するように選択することができる。例えば、血液の奔流の間に、血管の中における針の適切な配置を確認するために、血液は、拡張器24と上記シースとの間で流れるのが観察される。この流体が上記シースと拡張器24との間を流れるときの流体の可視性を増大させるために、シースは、流体の色と対照的な色がある拡張器24とともに、透き通った材料あるいは透明な材料から製造されているのが好ましい。例えば、拡張器24には、赤い血液に対するその対照性を促進するために、白い色を付けることができる。流体の色と望ましい対照の程度とに左右されるが、他の色の拡張器24を採用することができる。さらに、血液の奔流の領域における上記拡張器の一部だけに、相異なる色のある残り部分に対して対照的な色が付けられていてもよい。この針と拡張器24との間に形成された流路がある実施形態については、拡張器24は、医師が上記シースおよび拡張器24の双方を通して血液の奔流を観察することができるように、上記シースに類似した透き通った材料あるいは透明な材料から製造することができる。
【0099】
図3Eは、別の実施形態の拡張器ハブ38Aの拡大斜視図である。拡張器ハブ38Aは、この拡張器ハブ38Aがスピンナットあるいはカラー84をさらに含んでいる点を除いて、図3Aに例示された拡張器ハブ38に類似している。スピンナット84の近位端は、拡張器ハブ38における環状溝73の周りに回転する(図3Aを参照のこと)。環状溝73の中にいったん配置されると、スピンナット84は、環状溝73の中で遠位方向に動くのが阻止されるが、拡張器ハブ38Aの周りに自由に回転する。スピンナット84には相互係合要素があってもよく、この相互係合要素はシース26における対応相互係合要素へ固定される。図示された実施形態では、スピンナット84には、図1Aに例示されたシース26におけるシースハブ42の雄ねじに係合する雌ねじが含まれている。
【0100】
拡張器24あるいはシース26は、拡張器24とシース26との間から、かつ/または、上記針と上記拡張器との間から空気あるいは気体を逃がしあるいは排出させることのできる1つ以上の通路を、別々にあるいはともに形成することができる。この1つ以上の通路は、シース26、上記シースハブ、拡張器ハブ38の壁におけるものであってもよく、上記拡張器シャフトの露出部分におけるものであってもよく、かつ/または、拡張器24およびシース26の隣接面どうしの間に形成されていてもよい。例えば、図3Aは、拡張器24およびシース26の隣接面どうしの間に形成され、長手方向に配置されている溝75を示している。このような排出用通路はまた、迷路であってもよい。これらの隣接面によって、シース26と拡張器24との間にルアー型スリップ接続部が形成される。
【0101】
図3Fは、図3Aにおける3F−3F線に沿った断面図であり、また、ルアースリップ面の周縁の周りに、等間隔で配置されることが必要ではないが、等間隔に配置された溝75を示している。これらの溝75は、血液の奔流が生じたときに、上記拡張器とシースのような上記医療物品との間から空気を逃がすことのできるような寸法に形成されている。上記のように、上記1つ以上の通路は、表面溝75の形態にある必要はなく、また、代わりに、開口あるいは窓穴の形態にあってもよい。
【0102】
図示された実施形態では、上記1つ以上の通路によって、空気が上記シースと上記拡張器ハブとの間におけるルアー型接続部を通して通過することができる。図示された実施形態では、通路75の遠位端はルアー型接続部の遠位側面に配置されており、通路75の近位端はルアー型接続部の近位側面に配置されている。
【0103】
上記1つ以上の通路は、血液あるいは他の液体を濾過するような寸法に形成されていてもよく、あるいは、液体の通過を阻止するとともに空気の通過を可能にするフィルターあるいは他の構造体を含んでいてもよい。例えば、上記シースは、それ自体に、小さい開口、細孔あるいは多孔性材料の形態にある1つ以上の通路が含まれていてもよい。この1つ以上の通路の寸法と、流体分子および生物的特徴を備えた要素(例えば、赤血球)の予想寸法とに左右されるが、上記シースにおける1つ以上の小さい開口、細孔あるいは多孔性材料には、空気を通すことができるが血液を保持することのできる多孔排出部を形成することができる。
【0104】
突条が設けられた拡張器を製造する方法が、これから説明される。まず、1つ以上の長手溝あるいは長手流路のある長い管状体を、拡張器のその外径部(OD)の表面にあるいは拡張器の本体の内部に作るために、押出法が用いられる。この長い管状体は、単一の拡張器の必要長さを超えているが、単一の拡張器の長さよりも何倍も長い長さがあるのが好ましい。この押出法には、拡張器の内径および外径と、長手溝あるいは長手流路あるいは内側流路の深さおよび周方向長さとのための望ましい形態を反映する形態のある製造用ダイが採用されている。図1−図11の図示された実施形態では、上記の長い管状体には、上記シースの内部における上記拡張器のバランスを促進するために、同管状体の両側面に2つの長手OD流路が含まれている。しかしながら、単一の流路には、血液の奔流のための可視的標示あるいは奔流空間が設けられていてもよい。これら2つの流路は、押し出された管状体の長さに沿って延出しているのが好ましい。図示された実施形態では、拡張器とシースとの間に配置された1つ以上の流路が含まれているが、これに加えて、あるいはこれに代えて、上記針と拡張器との間に、拡張器の内部に、かつ/またはシースの内部に、1つ以上の流路を形成することができる。従って、いくつかの実施形態では、拡張器24は、流路の内部における流体の奔流を可視化するために、透き通った材料、半透明の材料、透明な材料、あるいは半不透明の材料から、一部あるいは全体が製造されている。
【0105】
図示された実施形態に戻ると、押し出された管状体は、単一の拡張器のための適切な長さに切断される。好ましい方法では、これら2つのOD流路は、切断された拡張器の全長にわたって延出している。
【0106】
その後、切断された拡張器の一方端部には、その先端を改質するために、先端処理法が採用される。切断された拡張器の一方端部は、仕上げ加工された拡張器の先端の所望形態に合致する形態があるダイ/マンドレルの中へ押し込まれる。この所望形態は、例えばシースの内径に応じて選択される。シースおよび拡張器にとっては、溝付きの拡張器とシースとの間に形成された流路の近位方向における血流を増進するために、上記先端の近傍に緊密な嵌合部あるいは封止部を形成することが望ましい。好ましくは、先端領域における拡張器の外径部は、遠位方向に向かって次第に細くなっている。
【0107】
上記のダイ/マンドレルの中において、上記先端へ熱エネルギが加えられて、そのダイ/マンドレルに合致するように上記先端が改質される。この熱エネルギは、赤外線熱源あるいはRF熱源からの放射熱を用いることが含まれる任意の公知技術によって、加えることができる。この先端処理法の一環として、先端領域における拡張器は、上記溝が実質的に除去されるように改質される。上記溝が除去されると、拡張器には、先端の近傍におけるシースとの間に、緊密な嵌合部あるいは封止部を形成することができる。これらの溝は、シース26の先端が拡張器の表面に位置する箇所の近位側面における拡張器の残り部分に沿って、維持されている。上記のダイ/マンドレルから取り外された後に、拡張器の先端部は、洗浄されるとともに、製造くずを除去するために必要に応じて切除される。
【0108】
拡張器における上記1つ以上の窓穴は、先端領域の近傍における拡張器を切り開いて作られる。それぞれの窓穴は、ドリルあるいはレーザが含まれる任意の公知手段によって切り開くことができる。さらに、窓穴について長円形形状あるいは他の形状を達成するために、切除装置は拡張器に対して動かすことができ、あるいは、拡張器は切除装置に対して動かすことができる。
【0109】
上記先端とは反対側にある拡張器の端部は、上記拡張器ハブを拡張器の上にオーバーモールドすることを促進するために、外方へ広げられてもよい。
【0110】
図4Aは、図1Aに描かれた実施形態のシース26の平面図である。図4Bは、図4Aに描かれた実施形態のシース26の、4B−4B線に沿った断面図である。図4Cは、図4Aのシース26の拡大近位端面図である。図4Dは、図4Aのシース26におけるシースハブ42の拡大斜視図である。図4A−図4Dに示されたように、シース26には、シース本体40、シースハブ42、遠位部分90、および近位領域92が備わっていてもよい。シース本体40は、透き通った材料、半透明の材料、透明な材料、あるいは半不透明の材料から、一部あるいは全部を製造することができる。シース本体40にはまた、例えば、硫酸バリウム製ストライプのような1つ以上の放射線不透過性マーカーが含まれていてもよい。好ましい実施形態では、シースには、その本体40の両側に対照的に配置されたそのような2つの放射線不透過性ストライプが含まれている。
【0111】
シース本体40は、カテーテルあるいは他の医療物品(例えば、ガイドワイヤ)がそれを通して血管の中へ挿入される単一部材のシースであってもよい。そのような実施形態では、シース本体40によって、カテーテルあるいは他の医療物品(例えば、ガイドワイヤ)の挿入のための管路が形成されている。管路を設けるのに加えて、シースあるいはシースの一部には、カテーテルの管腔に加わる管腔を形成することができる。例えば、二重カテーテルをシース本体40それ自体が第3管腔を形成しているシース本体40を介して挿入することによって、三重管腔カテーテルと同等のものを形成することができる。
【0112】
接近装置20を採用した後に血管の中へ挿入されるカテーテルあるいは医療物品の型に左右されるが、シース本体40の一部あるいは全部を除去することは有利であろう。例えば、カテーテルあるいは他の医療物品が血管の中へ挿入された後に、シース本体40の一部を分離しあるいは剥がして除去することができる。剥がし取りシースには、医師あるいは医療サービス提供者がシース本体40の一部あるいは全部を容易に除去することができるように、打ち抜き穴、鋸歯、そぎ縁、あるいは他の構造体が含まれていてもよく、あるいは、他の材料(例えば、ビスマス含有PTFE)が含まれていてもよい。
【0113】
シースハブ42には、ルアー型スリップ接続部および固定部材94が含まれていてもよい。固定部材94には、対応する構造体に噛み合うかあるいは係合する固定用あるいは取付用の構造体が備わっていてもよい。例えば、固定部材94は、拡張器ハブ38の第2ルアー型接続部80に係合するように構成することのできるルアー型接続部94であってもよい。
【0114】
シースハブ42は、図4Cおよび図4Dに最もよく認められるように、拡張器ハブ38の固定機構あるいは第2ルアー型接続部80が実質的に妨げられることなくシースハブ42の中へ入ることができるように設計されているのが好ましい。しかしながら、使用に際して、シースハブ53が拡張器シャフト36にわたる所望箇所にいったん配置されると、医師あるいは医療サービス提供者は、シースハブ42を押したり、引いたり、あるいはねじったりして、固定部材94と別の医療物品における対応コネクタとをできる限り係合解除させるかあるいは係合させることができる。例えば、固定部材94は、拡張器ハブ38およびシースハブ42が解除可能に相互接続されるように、機構的嵌合を作り出すルアー型接続部、突出状こぶ、くぼみなどであってもよい。図示された実施形態では、シースハブ42の固定部材94にはルアー型接続部が備わっている。シースハブ42は、拡張器ハブ38における対応する第2ルアー型接続部80に係合するのが好ましい。好ましいのは、上記固定箇所は、拡張器ハブ38をシースハブ42に対して引いたり、圧迫したり、押したり、あるいはねじったりすることによって、係合解除させるかあるいは係合させることができることである。
【0115】
いくつかの実施形態では、シースハブ42にはリップ95が備わっている。このリップ95は、シースハブ42を対応している固定用特徴的構成がある他の医療物品へ取り付けることができるように、ねじ切りされていてもよい。
【0116】
シースハブ42には、医師あるいは医療サービス提供者がシース26および/または接近装置20を容易に握るかあるいは用手操作することができるように、1つ以上の特徴的表面構成が備わっているのが好ましい。図示された実施形態では、シースハブ42には正方形のグリップ96および突条98が含まれている。
【0117】
付加的な実施形態では、シースハブ42には、シースハブ42を接近装置20の他の物品から容易に取り外すとともに取り除くことができるように、半径方向へ延出している翼部あるいは把手構造体が備わっている。いくつかの用途では、これらの翼部は、シースハブ42をバラバラにするためのてこ作用を医療サービス提供者に提供するような寸法に形成されている。例えば、シースハブ42には、このシースハブ42の半体どうしを接続するための薄い膜が備わっていてもよい。この膜は、医療サービス提供者が接近装置からシースハブ42を取り外すことを決定するまでシースハブ42の半体どうしを互いに離れないように維持するような寸法に形成されている。医療サービス提供者は、上記翼部を用手操作して、上記膜を破るとともにシースハブ42を取り外し可能な上記半体に分離する。
【0118】
図5Aは、図1Aに描かれた実施形態のガイドワイヤ部分28の斜視図である。図5Bは、ガイドワイヤハブ46が含まれているのが好ましい、図5Aに描かれた実施形態のガイドワイヤ部分28の平面図である。ガイドワイヤハブ46には、医師あるいは医療サービス提供者がガイドワイヤハブ46および/または接近装置20を容易に握るかあるいは用手操作することができるように、1つ以上の特徴的表面構成が備わっていてもよい。図示された実施形態では、ガイドワイヤハブ46には1つ以上の突条110が備わっている。事前搭載状態では、ガイドワイヤハブ46の外面は、このガイドワイヤハブ46が第3位置125(例えば、図6Aに例示された第3位置125)にあるときには、送路体30における固定機構130に係合している。
【0119】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ44は、引っ込められたときに自己吸引機能をもたらすように、上記針本体の内径との緊密な嵌合部を形成することができる。例えば、ガイドワイヤ44の外径は、このガイドワイヤの長さに沿って、あるいはガイドワイヤ44の一部だけに沿って上記針との緊密な嵌合部を形成するように、選定することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、上記ガイドワイヤの遠位端部分には、このガイドワイヤの他の部分に比べて減少した直径があってもよい。このような減少した直径部分の寸法は、このガイドワイヤが上記針の遠位先端を越えて前進したときであっても、流体が上記針本体における窓穴56へ移動することができるように、選定することができる。
【0121】
図6Aは、図1Aに描かれた実施形態の送路体30の斜視図である。図6Bは、図6Aに例示された送路体30の平面図である。図6Cは、図6Aに例示された送路体30の側面図である。図6A−図6Cに示されたように、図示された実施形態における送路体30には、遠位部分120、近位部分122、この送路体を拡張器ハブ38へ接続する遠位固定部材124、針ハブ34が第1位置121から第2位置123まで送路体30に沿ってスライドしたときに針ハブ34の更なる遠位移動および近位移動を阻止する固定機構128、およびガイドワイヤハブ46が事前搭載状態あるいは第3位置125にあるときにガイドワイヤハブ46を送路体30へ取り付けることのできる固定機構130が備わっている。この送路体は、ポリカーボネート材料から作られているのが好ましい。しかしながら、以下に説明するように、他の材料を用いることができる。
【0122】
送路体30には、図6Aおよび図6Bに最も明確に示されたように、幅が減少した送路体部分132がさらに含まれていてもよい。この減少した幅によって、上記針ハブを送路体30へ組み付けることが容易になる。図示された実施形態には、送路体30の遠位部分120にリブ133が含まれている。このリブ133によって、遠位固定部材124と送路体30の残り部分との間に付加的な構造的補強がもたらされている。
【0123】
図1Aに例示されたように、遠位固定部材124は、拡張器24へ接続されているとともに、送路体30が拡張器24から遠位へ延出するのが可能にされている。例えば、固定部材124は、拡張器ハブ38のリップ77と拡張器ハブ38の基部79との間で拡張器ハブ38へ接続される2つの湾曲アーム124からなっていてもよい。この固定部材124によって、拡張器ハブ38に対する送路体30の遠位方向あるいは近位方向への移動が制限されるが、この送路体30は、拡張器ハブ38の周りに自由に回転することができる。
【0124】
図6Dは、図6Bに描かれた実施形態の一部の拡大図である。示されたように、固定機構128は、第2位置123の領域における上記送路体の幅を変更することによって形成されている。例えば、図示された実施形態には、遠位方向における幅が増大している送路体部分134、幅が増大しているこの送路体部分134の遠位における幅が減少した送路体部分136、および2つのフィンガ要素138が含まれている。これら2つのフィンガ要素138は、送路体部分136の遠位端から送路体30の近位端へ向かって突出しているとともに、送路体30の長手軸から外方へ広がっている。
【0125】
図6Eは、図6Bに描かれた実施形態の一部の拡大図である。固定機構130は、上記ガイドワイヤハブが上記第3位置にあるときにそのガイドワイヤハブの一部にあるいは送路体30の一部に係合するクリップ、クラスプあるいは他の構造体によって、形成されている。いくつかのあるいはすべての係合構造体は、送路体30の部材であってもよく、上記ガイドワイヤハブの部材であってもよく、あるいは送路体30と上記ガイドワイヤハブとの間で分けられていてもよい。図示された実施形態では、固定機構130は、送路体30から延出しているとともに上記ガイドワイヤハブに係合している。固定機構130には、送路体30から突出している長方形要素140、送路体30から長方形要素140の遠位へ突出している2つの送路体アーム142、および送路体30から送路体アーム142の遠位へ突出している当たり止め144が備わっている。
【0126】
図示された実施形態では、上記針ハブと上記拡張器との間の上記固定機構は上記拡張器ハブの近位側面に存在している。しかしながら、他の実施形態では、上記固定機構は他の箇所に同様に配置することができる。例えば、上記固定機構に、固定用ヒンジによって結合されている2つの枢動レバーが含まれているときには、その固定機構は、上記針ハブに対して半径方向に配置することができる。そのような実施形態では、一方のレバーは上記拡張器へ枢動状に接続されており、他方のレバーは上記針へ枢動状に接続されている。針ハブが拡張器ハブから離れると、これらのレバーは、上記ヒンジが固定される箇所へ向かってまっすぐになる。同様の効果は、拡張器に対する針ハブの特定箇所を越える近位移動を制限し、それによって、これらの構成要素を互いに固定するつなぎ綱によって得ることができる。さらに別の実施形態では、細長い構造体が、拡張器の内部で針本体に対して平行に針ハブから延出していてもよい。針ハブが拡張器から充分な距離だけ離れていったん移動すると、固定機構の付加的構造体(例えば、移動止め)が上記細長い構造体に係合して、拡張器に対する針の更なる移動が阻止される。従って、これらの付加的な3つの実施形態によって例示されたように、針と拡張器との間で作動する上記固定機構は、拡張器ハブに対してさまざまな箇所に配置することができる。
【0127】
図7Aは、ガイドワイヤで事前搭載された、図1Aに描かれた実施形態の接近装置の拡大平面図である。図7Bは、図7Aに描かれた実施形態の側面図である。図7Cは、図7Aに描かれた実施形態の7C−7C線に沿った断面図である。図7Dは、図7Aの接近装置20の近位端面図である。この事前搭載状態では、ガイドワイヤハブ46は、このガイドワイヤハブ46が第3位置125に配置されたときに、送路体30へ固定される。この位置では、ガイドワイヤハブ46は、長方形要素140と当たり止め144との間で送路体30へ固定することができる。例えば、ガイドワイヤハブ46は、長方形要素140と当たり止め144との間で解除可能に固定することができる。加えて、送路体アーム142はガイドワイヤハブ46を送路体30へさらに固定することができる。この固定機構によれば、ガイドワイヤハブ46が第3位置125にあるときに、少なくとも遠位方向におけるガイドワイヤ44の、意図されない回転移動および軸方向移動を阻止することができる。もちろん、医療サービス提供者は、接近装置20にわたる上記ガイドワイヤの遠位移動を可能にするために、ガイドワイヤハブ46を送路体30から係合解除させてもよい。
【0128】
図7A−図7Cに例示された事前搭載状態では、針ハブ34は、この針ハブ34が第1位置121にあるときに、拡張器ハブ38へ固定される。好ましいのは、この固定位置において、針および拡張器における上記開口あるいは上記窓穴が互いに整合されているか、あるいは位置合わせされていることである。針22および拡張器24が固定されると、意図されない互いに対する回転移動および軸方向移動が少なくともいくらか阻止される。針34に対する上記拡張器ハブの意図されない回転を阻止することによって、上記の窓穴あるいは開口は、それらの全体位置合わせが維持される。
【0129】
この事前搭載状態では、拡張器ハブ38はシースハブ42へ固定されている。これによって、拡張器24とシース26との間における意図されない回転移動および軸方向移動が少なくともいくらか阻止される。シースハブ42および拡張器24にルアー型スリップ接続部だけがあるときには、拡張器24およびシースハブ42は互いに対して回転することができる。
【0130】
図8Aは、図1Aに描かれた実施形態の平面図であって、接近装置20を使用する1つの方法の操作ステップを例示している。図8Aには、静脈のような血管148の中へ挿入された接近装置20の針本体32が描かれている。記載されたこの方法は血管接近法に言及しているが、接近装置20は、患者の身体の内部における他の箇所(例えば、膿瘍の排出のための箇所)に接近して、その中にカテーテルあるいはシースを配置するためと、他の目的のためとに使用することもできる。
【0131】
図8Bは、図8Aに例示された実施形態の、8B−8B線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図8Cは、図8Bに描かれた実施形態の、8C−8C線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図8Dは、図8Cに描かれた実施形態の、8D−8D線に沿った拡大断面図である。
【0132】
上記のように、針本体32には、その側壁に1つ以上の側面開口56がある。拡張器シャフト36には、1つ以上の側面開口74がある。これらの側面開口56、74には、同一のあるいは相異なる形状および縦横比があってもよい。図示された実施形態では、針本体32における側面開口56には、拡張器シャフト36における側面開口74とは異なる縦横比がある。針本体32における側面開口56は一方方向(例えば、針本体32の長手軸に対して実質的に平行である方向)に長くされている。拡張器シャフト36における側面開口74は異なった方向(例えば、拡張器シャフト36の円周に沿った方向)に長くされている。針本体32および拡張器シャフト36に偏位した細長い開口56、74があるので、針本体32および拡張器シャフト36における開口56、74が充分に位置合わせされ、それによって、血液が針側面開口56および拡張器側面開口57を通して流れる可能性が増大する。図8A−Dは、対応する側面開口の1組だけの間における整合を例示している。これらの側面開口の他の組もまた、針本体32と拡張器シャフト36との相対的方位に左右されるが、位置合わせしあるいは位置合わせ解除することができる。
【0133】
図示された実施形態では、拡張器シャフト36は、針本体32と拡張器シャフト36との間における環状空間150を最小限にするために、同軸に配置されている。拡張器シャフト36の内面152は、それが可能であるものの、針本体32の外面154に直接接している必要はない。好ましいのは、この実施形態において、針本体32の外面154と拡張器シャフト36の内面152との間における環状空間150が最小限にされていて、拡張器シャフト36と針本体32との間における環状空間150の中への血液あるいはその成分(あるいは他の体液)の流れが阻止されることである。好都合なことに、この特徴的構成によって、多数の外面への血液の接触が最小限にされるとともに、汚染、感染、および凝固のおそれが減少する。
【0134】
図8Aに例示されたように、拡張器シャフト36は、針本体32に設けられた1つの側面開口56の少なくとも一部が拡張器シャフト36における1つの側面開口74に回転状に位置合わせされるように、針本体32に同軸に取り付けられている。好ましいのは、針本体32および拡張器シャフト36が回転位置合わせを維持しており、それによって、血液が針側面開口56および拡張器側面開口74を通して流れることである。
【0135】
先に記載されたように、シース本体40は、透き通った材料、半不透明の材料、半透明の材料、あるいは透明の材料から、一部あるいは全体が製造されているのが好ましく、それによって、血液が、(1)針側面開口56を通して、(2)拡張器側面開口74を通して、また(3)流路156の中へ流れるときに、医師あるいは医療サービス提供者はその血液を見ることができる。いくつかの態様では、流路156は、拡張器シャフト36とシース本体40との間に形成されており、また、拡張器シャフト36における1つ以上の突条76によって画定されている。いくつかの態様では、流路156は、拡張器シャフト36の壁の内部に形成されており、その拡張器シャフト36は透明材料から構成されているのが好ましい。血液によって、医師あるいは医療サービス提供者は、針本体32の斜切先端54が血管148を穿刺したことを知らされる。
【0136】
いくつかの実施形態では、針本体32および拡張器シャフト36(両方)には、多数の側面開口があり、ここで、これらの側面開口のいくつかあるいは全部は回転状に位置合わせすることができる。
【0137】
流路156には、シース26の長さとほとんど同一の広がりのある軸方向長さがある。他の実施形態では、流路156は、この細長い流路156より著しく短くてもよい。例えば、流路156は、シース26の遠位部分、中間部分および/または近位部分の内部に配置されていてもよいが、これらに限定されることはない。代わりに、流路156は、シース26の軸方向長さに沿った直線形状、曲線形状あるいはらせん形状であってもよく、または、そのような形状の複数のものによって形成されていてもよい。流路156にはさまざまな深さおよびスパン角があってもよい。流路156の深さは、ほとんど0に近い値から0.010インチまでの範囲にあってもよい。好ましいのは、流路156に約0.0005インチ−約0.003インチの深さがあることである。いっそう好ましいのは、流路156に約0.001インチ−約0.002インチの深さがあることである。流路156には、拡張器24の軸に対して約30度−約210度以上の、しかし好ましくは360度よりも小さいスパン角Φがあってもよい。いっそう好ましいのは、流路156に約60−150度のスパン角Φがあることである。これらの深さおよびスパン角Φは、流体(例えば、全血)が流路156に入るときに流路156の内部に生じる毛管作用を最適化するように選定することができ、また、体腔における予想圧力とその液体の粘度とに基づいてさらに選定することもできる。
【0138】
図8E−図8Gは、上記スパン角が120度であり、接触角(θ)が5度であり、周方向長さ(H)が60度で0.64mmであるときに、流体がどれほど迅速に流路156の表面まで引き上げられるかを例示する試験データのグラフである。それぞれのグラフにおいて、充満長さ(mm)がy軸にプロットされ、また、時間(秒)がx軸にプロットされている。これらの試験は、末梢血管が受ける圧力に類似した流体力学上の圧力で実行された。図8Eは、流体が0.002インチの隙間高さ幅のある流路156まで引き上げられる速度を例示しており、図8Fは、流体が0.001インチの隙間高さ幅のある流路156まで引き上げられる速度を例示しており、また、図8Gは、流体が0.0005インチの隙間高さ幅のある流路156まで引き上げられる速度を例示している。図8E−Gに示されたように、流体は、0.0005インチの隙間高さ幅のある流路において最も速く引き上げられ、次が0.001インチの隙間高さ幅のある流路において速く、次が0.002インチの隙間高さ幅のある流路において速く引き上げられる。
【0139】
上記の流路156の形状およびその結果としての毛管作用は、全血とは異なる粘度がある他の流体(例えば、白血球、膿汁、尿、血漿)に対するものとして全血で使用するために最適化された。しかしながら、流路156の形状は、開示された形状に限定されることがなく、また、膿汁のような他の液体を排出するために最適化することができる。さらに、上記の流路156の形状は、血管における圧力によって毛管作用とその結果としての血液奔流とが促進される末梢に位置する血管のためと、上記圧力が低い領域に位置する血管のためとに最適化された。例えば、身体の胸郭領域では、静脈における予想圧力は、患者が呼吸するときの末梢に位置する静脈におけるそれよりも低いであろう。身体の他の領域における接近装置20の使用のために寸法の異なる流路は、血管あるいは体腔の内部における予想圧力を考慮に入れて採用することができる。
【0140】
加えて、拡張器シャフト36の外面160および/またはシース本体40の内面158は、流路156の内部における毛管作用を促進しあるいは増大させる物質で被覆することができる。例えば、親水性物質を用いて、拡張器シャフト36の外面160および/またはシース本体40の内面158を被覆して、毛管作用を増大させることができる。同様に、これらの構成要素の一方あるいは両方は親水性物質から作ることができる。親水性物質は、シース26を患者の体内へ容易に挿入するための潤滑剤として作用させるために、シース26の外面に塗布することができる。他の潤滑剤あるいは潤滑性コーティングをシース26の外面に使用することができ、あるいは、同シースの少なくとも外面を潤滑性物質から形成することができる。加えて、シース26は、接近装置20の臨床的用途を増大させるために、そのシースから溶出する物質(例えば、ヘパリン)で被覆するかあるいは形成することができる。
【0141】
図8Hは、図8Cに描かれた実施形態の、8H−8H線に沿った断面図である。図示された接近装置20のこの領域では、シース本体40は、シース本体40と拡張器シャフト36との間の環状空間157を最小限にするとともにシース本体40と拡張器シャフト36との相対移動を可能にするために、同軸に配置されている。シース本体40の内面158は、それが可能であるものの、拡張器シャフト36の外面160に直接接している必要はない。拡張器シャフト36の外面160とシース本体40の内面158との間の環状界接部157は、血液あるいはその成分(あるいは他の体液)が拡張器シャフト36における開口74から遠位方向へ流れるのを阻止するために、この領域で減少していてもよい。
【0142】
図8Iは、図8Aに例示された実施形態の、8I−8I線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図8Jは、図8Iに描かれた実施形態の断面図である。図8Iおよび図8Jは、針ハブ34が第1位置121にあるときに拡張器ハブ38へ固定された針ハブ34を例示している。拡張器シャフト36は、この拡張器シャフト36の中空部分84を針本体32に滑り嵌めるとともに拡張器ハブ38を針ハブ34へ取り外し可能に固定することによって、同軸に取り付けることができる。拡張器ハブ38の近位端86は、針ハブ34に機械的に嵌まるとともにそれと相互接続されるように構成されている。
【0143】
拡張器シャフト36は、この拡張器シャフト36が針本体32に対する同軸位置へ取り付けることができるとともに同軸位置から取り外すことができるように、あるいは、針本体32が拡張器シャフト36に対する同軸位置へ取り付けることができるとともに同軸位置から取り外すことができるように、針本体32へ取り外し可能に取り付けることができる。この固定機構によれば、針ハブ34が上記第1位置にあるときに、針22と拡張器24との間における意図されない回転移動および軸方向移動を少なくともいくらか阻止することができる。示されたように、針ハブ34には、拡張器ハブ38のルアー型接続部78へ固定されるルアー型接続部64があってもよい。さらにまた、針ハブ34には、拡張器ハブ38における開口82へ固定されるラッチ要素66がさらにあってもよい。
【0144】
加えて、図8Iおよび図8Jは、接近装置20が血管148の中へ挿入されたときにシースハブ42に係合した拡張器ハブ38を例示している。好ましいのは、シースハブ42の近位端86が、拡張器ハブ38に機械的に嵌まるとともにそれに取り外し可能に係合するように構成されていることである。示されたように、拡張器ハブ38の中におけるルアー型接続部80は、上記シースハブの固定部材94に係合することができる。その結果による摩擦嵌めによって、接近装置20が血管148の中へ挿入されたときに、拡張器24とシース26との間の意図されない回転移動および軸方向移動を少なくともいくらか阻止することができる。
【0145】
図9Aは、図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、接近装置20のさらに別の操作ステップを例示している。図9Aは、遠位方向に血管148の中まで前進した接近装置20のガイドワイヤ44を例示している。このことは、ガイドワイヤハブ46を第3位置125から遠位方向に前進させることによって達成することができる。ガイドワイヤハブ46はその後、針ハブ34が第1位置121にあるときに針ハブ34へ固定される。
【0146】
図9Bは、図9Aに例示された実施形態の、9B−9B線によって囲まれた部分の拡大側面図である。図9Cは、図9Bに描かれた実施形態の断面図である。図9Cは、ガイドワイヤハブ46と針ハブ34との間の固定機構を例示している。好ましいのは、ガイドワイヤハブ46が針ハブ34に機械的に嵌められているとともにそれに取り外し可能にあるいは不可逆的に相互接続されていることである。示されたように、ガイドワイヤハブ46には、このガイドワイヤハブ46の内面にこぶ162が含まれている。このガイドワイヤハブのこぶ162は、このこぶ162が針ハブ34の上記リップにおけるねじ付き溝の内部に固定されるまで、ガイドワイヤハブ46を遠位方向に前進させることによって、針ハブ34の上へ固定することができる。他の実施形態では、ガイドワイヤハブ46は、対応するねじ付き要素を介して針ハブ34へ固定することができる。
【0147】
図10Aは、図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、接近装置20のさらに別の操作ステップを例示している。図10Aは、血管148の中へ遠位方向に前進された拡張器シャフト36およびシース本体40を描いている。このことは、拡張器ハブ38を針ハブ34から取り外して、拡張器24およびシース26を上記のガイドワイヤおよび針に沿って針ハブ34に対して遠位方向に前進させることによって、達成することができる。図10Aはさらに、拡張器24およびシース26に対する針22およびガイドワイヤ部分28の近位方向への動きを例示している。針ハブ34は、この針ハブ34が第2位置123に到達したときに送路体30へ固定されるであろう。
【0148】
図10Bは、図10Aに描かれた実施形態の、10B−10B線によって囲まれた部分の拡大後面図である。図10Bに描かれたように、針ハブ34は、第2位置123において固定機構128を介して送路体30の上に固定される。針ハブ爪部68は、送路体フィンガ138を覆って近位方向にスライドし、また、この爪部68は、送路体フィンガ138と増大している幅の送路体部分134との間の箇所の中へ固定することができる。これによって、針ハブ34が第2位置123にあるときに、針本体32の少なくとも遠位方向への軸方向移動が阻止され、また、より好ましくは、実質的に不可逆的に防止される。図示された実施形態では、固定機構128によれば、針ハブ34がいったん係合すると、近位方向かあるいは遠位方向かのいずれか一方へ移動するのが不可逆的に防止される。さらにまた、針22の遠位先端54は、針ハブ34が第2位置123にあるときに、その遠位先端54をさやに納めるために、拡張器24の中へ引き込まれる。従って、この固定機構128によれば、拡張器シャフト36が使用の間に針本体32にわたっていったん前進すると、針本体32の遠位部分50に配置された斜切先端54が拡張器シャフト36の遠位端を越えて前進するのが阻止される。従って、拡張器シャフト36によって、針本体32の鋭利な斜切先端54がさやに納められて、不慮の針刺傷の発生が阻止される。
【0149】
図11Aは、図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、接近装置20の最終操作ステップを例示している。図11Aは、血管148の内部に適切に挿入されたシース本体40を残して、その血管からガイドワイヤ44および拡張器シャフト36を取り外すことを例示している。図11Bは、図11Aに例示された実施形態の、11B−11B線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図11Bに明確に示されたように、拡張器シャフト36の遠位端およびガイドワイヤ44は針本体32の鋭利な斜切先端54を越えて延出していて、不慮の針刺傷の発生が阻止される。
【0150】
上記のように、針本体32および拡張器シャフト36の中に相異なる縦横比の開口56、74があることによって、針本体32および拡張器シャフト36における開口56,74が位置合わせされて、血液が実質的に妨げられることなく、針側面開口56および拡張器側面開口74を通して流れる可能性が増大する。
【0151】
以下のいくつかの実施形態では、1つの実施形態からの構造であって、別の実施形態からの構造に類似している構造は、それぞれの実施形態に特有の添字を含む同一の基礎参照符号(32、32A、32B、など)を共有している。図12Aは、図8Bおよび図8Cに例示された針本体32および拡張器シャフト36における開口56、74の別の実施形態の平面図である。図12Bは、図12Aに描かれた実施形態の、12B−12B線に沿った拡大断面図である。図12Aおよび図12Bには、長円形の開口56Aがある針本体32Aおよび円形の開口74Aがある拡張器シャフト36Aが描かれている。他の実施形態では、針には円形開口があってもよく、拡張器には長円形開口があってもよい。これらの実施形態によれば、血液が針側面開口56Aおよび拡張器側面開口74Aを通して流れるように、開口56A、74Aが少なくとも実質的に位置合わせされる可能性が増大する。
【0152】
図13Aは、図8Bおよび図8Cに例示された針本体32および拡張器シャフト36における開口56、74の別の実施形態の平面図である。図13Bは、図13Aに描かれた実施形態の、13B−13B線に沿った拡大断面図である。図13Aおよび図13Bには、円形開口56Bがある針本体32Bと、この針本体32Bにおける円形開口56Bよりも大きい円形開口74Bがある拡張器シャフト36Bとが描かれている。他の実施形態では、拡張器における開口は針における開口より小さくてもよい。これらの実施形態によれば、血液が針側面開口56Bおよび拡張器側面開口74Bを通して流れるように、開口56B、74Bが少なくとも実質的に位置合わせされる可能性もまた増大する。
【0153】
上記のように、拡張器シャフト36には、シース本体40と拡張器シャフト36との間に管路あるいは流路を形成し、それによって、針本体32の斜切先端54が血管を適切に穿刺した後に医師あるいは医療サービス提供者が血液を観察することができるようにするために、突条76どうしの間に形成された1つ以上の流路156があってもよく、または、上記流路は、上記突条なしに、しかし、さまざまな可能な構成の軸方向くぼみを押出成形することによって、あるいは上記拡張器シャフトや上記針本体の内部に充分に閉じ込められた流路を形成することによって、形成されてもよい。
【0154】
図14Aは、図8Cに描かれた突条76の別の実施形態の平面図である。図14Bは、図8Dに描かれた突条76の別の実施形態の拡大断面図である。図14Aおよび図14Bには、シース本体40Cと拡張器シャフト36Cとの間に少なくとも1つの流路156Cを形成する、シース本体40Cの内面158Cにおける2つの突条76Cが描かれている。
【0155】
図15Aは、図8Cに描かれた突条76の別の実施形態の平面図である。図15Bは、図8Dに描かれた突条76の別の実施形態の拡大断面図である。図15Aおよび図15Bには、シース本体40Dと拡張器シャフト36Dとの間に流路156Dを形成するために組み合わされる、シース本体40Dの内面158Dにおける2つの突条76Dと、拡張器シャフト36Dの外面160Dにおける2つの突条76Eとが描かれている。例えば、所望の流路深さが約0.001インチであるときには、シース本体40Dの内面158Dにおける2つの突条76Dはそれぞれ、約0.0005インチの高さであり、また、拡張器シャフト36Dの外面160Dにおける2つの突条76Eはそれぞれ、約0.0005インチの高さである。
【0156】
図16Aは、図8Cに描かれた突条76の別の実施形態の平面図である。図16Bは、図8Dに描かれた突条76の別の実施形態の拡大断面図である。図16Aおよび図16Bには、拡張器シャフト36Eの外面160Eにおける多くの突条が描かれている。隣接するこれらの突条どうしの間はスプライン76Fである。これらのスプライン76Fによって、シース本体40と拡張器シャフト36Eとの間に複数の流路156Eが形成されている。これらの流路156Eの1つ以上には、同一のスパン角Φがあってもよく、相異なるスパン角Φがあってもよい。図示された実施形態では、流路156Eには、120度および23度のスパン角Φがある。別の実施形態では、1つの突条76は、拡張器の外面の周りにおける、その長さに沿ったらせん状のものであってもよい。
【0157】
図17は、接近装置の別の実施形態における拡大断面図であり、また、相異なる形状を有する医療物品あるいはシース本体40Fと拡張器シャフト36Fとの間に形成された流路156Fを示している。図示された実施形態では、拡張器シャフト36Fの外面に長円形形状があり、シース本体40Fの内面に円形形状がある。長円形の拡張器シャフト36Fと、隣接する円形のシース本体40Fとによって、シース本体40Fと拡張器シャフト36Fとの間に、1つ以上の流路あるいは隙間156Fが形成されている。もちろん、シース本体40Fおよび拡張器シャフト36Fの形状は、円形および長円形に限定されることはなく、また、シース本体40Fおよび拡張器シャフト36Fの隣接領域における相異なる形状の他のあらゆる組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、拡張器シャフト36Fの外面は長円形であり、シース本体あるいは医療物品40Fの内面は円形である。いくつかの態様では、拡張器シャフト36Fの外面は円形であり、医療物品40Fの内面は正方形である。隙間あるいは流路156Fは、長手軸に追従するものであってもよく、その長手軸に沿ったらせん状通路、その長手軸に沿った直線状通路、あるいはこの接近装置に沿った他の通路に追従するものであってもよい。いくつかの態様では、上記直線状通路は上記長手軸に対して平行である。隙間あるいは流路156Fの深さは、この隙間あるいは流路156Fの長さの少なくとも一部に沿って変化してもよい。
【0158】
他の実施形態では、流路156は、上記シースの内面に1つの完全な突条を設けるとともに、上記拡張器の外面に1つの完全な突条を設けることによって、形成することができる。他の実施形態では、上記シースの内面に、流路156の長さの50%にわたって延出する2つの突条があり、かつ、上記拡張器の外面に、流路156の残り50%にわたって延出する2つの突条があってもよい。
【0159】
図18Aは、接近装置20’の別の好ましい実施形態の斜視図である。図示されたように、シースハブ42’には、可撓性中空体200のような可変容積空間が含まれている。他の実施形態では、可撓性中空体のようなこの可変容積空間は、拡張器ハブ38あるいは針ハブ34のような別のハブの表面に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、この明細書に記載されたように、拡張器シャフトとシース本体との間に空間を作り出すために用いられたものに類似した方法で、奔流用のチャンバあるいは空間を拡張器シャフトと針本体との間に設けることができる。針本体と拡張器シャフトとの間における空間のいくつかの例には、国際公開番号WO2009/114837(2009年9月17日に発行され、かつ、参照によってその全体がこの明細書の中に組み入れられた)の図18A−図18Cおよび関連本文が含まれている。同様に、いくつかの実施形態では、上記拡張器がないとき、あるいは、上記シースもまたそれ自体の拡張器として機能するときなどに、奔流用のチャンバあるいは空間を針本体とシース本体との間に設けることができる。さらに一般的には、奔流用のチャンバあるいは空間を、上記針本体の外面と上記針本体へ直接あるいは間接的に取り付けられた医療物品の内面との間の任意部分に設けることができる。可撓性中空体200には、上記空間の内部の容積を変更するような少なくとも1つの可撓壁があるが、上記可変容積空間は、互いに対して移動する2つ以上の構成要素(例えば、ピストン−シリンダ構成体)の間に画定することができる。
【0160】
図18Bおよび図18Cに描かれたように、可撓性中空体200には半球の形状があってもよいが、他の実施形態では、それには、概ね長方形、ピラミッド形状、あるいはその他の形状のような異なった形状があってもよい。描かれた可撓性中空体200は、シースハブ42’から側方へ延出しているとともに、そのシースハブにおけるハブ開口205に通じている。このハブ開口205は、可撓性中空体200を、この明細書に記載されたようなシース本体40と拡張器シャフト36との間における上記流路あるいは概ね環状の空間のような流体奔流空間に連通させることができる。他の実施形態では、同様の可撓性中空体を、例えば、拡張器ハブ38あるいは上記針ハブの表面に配置することができるとともに、拡張器シャフト36と針本体32との間の環状空間あるいは流路に連通させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、奔流空間を針本体32と拡張器シャフト36との間に配置することができるとともに、この明細書に記載されたような可撓性中空体をそれに連通させることができる。そのような実施形態では、拡張器シャフト36における側面窓穴は、実質的に同様な機能を維持しながら、省略することができる。さらに別の実施形態では、可撓性中空体200は、この明細書に記載された他の空間、または、上記針先端に直接あるいは間接的に連通している同様の空間のいずれにも、連通させることができる。上記可変容積チャンバは、上記ハブどうしの間に、あるいは上記ハブの前方に配置することもできる。
【0161】
図18Bに描かれたように、可撓性中空体200は、初めは収縮されている。典型的には、人間の手が、可撓性中空体200を押し下げて、それを圧迫位置に保持することによって、あるいは他のいくつかの手段によって、その中空体を収縮状態に保持することができる。しかしながら、他の実施形態では、それは、接近装置20’の他のグリップ部分と一体化された機械的収縮機構によって、収縮状態に保持することができる。いくつかの好ましい実施形態では、可撓性中空体200は、接近装置20’をシースハブ42’で保持する手によってもまた、その可撓性中空体が収縮するように、配置しかつ構成することができる。同様に、可撓性中空体200が拡張器ハブかあるいは針ハブの表面にある実施形態では、その可撓性中空体は、上記ハブでこの装置を保持する手によってもまた、その可撓性中空体が収縮するように、構成することができる。
【0162】
可撓性中空体200は、患者の体内に入ると、解放されて、自由に拡張することができる(図18Cに描かれたように)。この目的を達成するために、可撓性中空体200は、解放されたときのこの拡張装置へ、自然に向かうかあるいは強制的に向けられる。患者の体外では、これによって、描かれた実施形態の可撓性中空体200は、針本体32を通過する空気で満たされるであろう。しかしながら、可撓性中空体200が患者の体内にある間に収縮状態で解放されたときに、針32が静脈のような身体空間を満たした流体の中に入ると、解放されたこの中空体によって作られた負圧によって、体液の取り込みが促進されるが、このことは以下でさらに説明される。
【0163】
血液奔流のような体液の取り込みは、接近装置20’に関連した摩擦抵抗と接近装置20’の内側の圧力とによって、加速されるかあるいは阻止されることがある。さらに、取り込みは、関連流体の圧力とともに増大することがある。いくつかの実施形態では、収縮した可撓性中空体200からの上記抵抗および負圧は、その可撓性中空体が血管の中へ入ったときにはそれが満たされるが、一般的な包囲体内組織の中ではそれが満たされないように、選定することができる。負圧の付加によって、中心静脈のようなより低い圧力環境からでも、体液の取り込みを促進することができる。代わりの実施形態では、もたらされる負圧は、より高い血圧があり、従って、より小さい負圧を利用することのできる動脈のような他の血管からの取り込みを指示するように、選定することができる。以下でさらに説明されるように、いくつかの実施形態では、術者は、もたらされる負圧の大きさを手術中に選定することができる。
【0164】
上記負圧を維持するために、上記可変容積チャンバおよびそれが連通する上記空間は、周囲雰囲気から封止することができる。例えば、シースハブ42’は、O−リング、ボドック(Bodok)シール、ガスケットのような封止材料、あるいは他の柔軟な非多孔性材料を含んでいてもよく、または、これらに係合してもよい。従って、この封止部材によれば、シースハブ42’と拡張器ハブのような接近装置20’の別の部品との間における気体の透過を阻止することができる。他の実施形態では、封止部材は、この明細書に記載された他の部品どうしの間に設けることができる。さらに、いくつかの実施形態では、封止部材は、シース本体40、拡張器シャフト36、および/または針本体32の間に設けることができる。例えば、シース本体40および拡張器シャフト36は、少なくとも1つの部分では、同シース本体が同拡張器シャフトの表面に取り付けられるときに封止部を作り出すような寸法に作ることができる。同様に、拡張器シャフト36および針本体32は、少なくとも1つの部分では、同拡張器シャフトが同シース本体に取り付けられるときに封止部を作り出すような寸法に作ることができる。
【0165】
従って、手術において、可撓性中空体200は、患者の体外で初めは収縮させることができる。接近装置20’が患者の体内に入ると、可撓性中空体200は解放されて、流体を接近装置20’の中へ引き込む傾向のある負圧が作られる。可撓性中空体200は、血管の中に入ると、血液が接近装置20’の中へ引き込まれるように、また、その血液によって空気が可撓性中空体200の中へ押しのけられるように、拡張することができる。可撓性中空体200からの付加された負圧によって、接近装置20’の中への血液の取り込みが加速される。接近装置20’に例えば透明なシースが含まれているときには、接近装置20’の術者は、静脈進入のより迅速な表示を受けることができる。
【0166】
図19は、この発明によって構成された接近装置の別の好ましい実施形態の斜視図である。図示されたように、シースハブ42’へ直接接続された可撓性中空体200の代わりに、シースハブ42’’を、ポンプ215まで延びているチューブ210へ取り付けることができる。このチューブ210は、一方向バルブ220を介してシースハブ42’へ接続することができる(例えば、患者の体内への空気の注入を防止するために)。同様に、ポンプ215は、一方向バルブ225を介して周囲空気に連通することができる。従って、ポンプ215によって、可撓性中空体200に関して記載されたものと同様の負圧がもたらされる。加えて、チューブ210は、拡張器ハブあるいは針ハブに関してのように、可撓性中空体200に関して論述されたように、接近装置20’’の他の部分へ接続することができる。いくつかの実施形態では、負圧は、ポンプ215に代えて、あるいはポンプ215に加えて、注射器によってもたらすことができる。上で論述したように、さまざまな封止部材には、バルブ220、225のような接近装置20’’が含まれていてもよい。
【0167】
図18における実施形態と図19における実施形態とを組み合わせてもよいということは、この明細書における記載から明らかであろう。例えば、いくつかの実施形態では、可撓性中空体200およびポンプ215を組み合わせて、増大した負圧を作り出すことができる。他の実施形態には、同一あるいは相異なる型の多数の可変容積チャンバが含まれていてもよい。好都合なことに、多数のチャンバが備わったそれらの実施形態では、術者は、特定のチャンバ組を収縮させることで、加える負圧の程度を選定することができる。例えば、1つの実施形態では、2つのチャンバに、関連した相異なる負圧をもたらすことができる。より大きいチャンバは、静脈のような低圧血管の中への進入の表示を術者が望むときには、収縮させることができ、また、より小さいチャンバは、動脈のような高圧血管のために意図することができる。これに加えて、あるいはこれに代えて、チャンバは、新生児の動脈あるいは静脈に必要である負圧のために構成することができる。さらに別の実施形態では、多数のチャンバは、組み合わされた負圧をもたらすために、一度に稼働することができる。とりわけ、いくつかの実施形態では、いずれのチャンバも稼働させないという付加的選択肢を発動させるために、上記高圧血管からの体液取り込みのための負圧は必要ないであろう。
【0168】
いくつかの好ましい実施形態では、採用された可変容積チャンバの合計最大容積は、それらが連通する上記空間の容積に劣るものではない。例えば、単一の可変容積チャンバだけがある実施形態では、そのチャンバの最大容積は、それが連通する奔流空間の容積よりも大きいかあるいはその容積に等しいであろう。2つの可変容積チャンバが使用されるときには、それらの最大容積の合計は、上記奔流空間の容積よりも大きいかあるいはその容積に等しいであろう。同様の調整を多数の奔流空間のためにもたらすことができる。さらに、この明細書における記載は一般に、空気で満たされるようなチャンバの特徴を表しているが、それらのチャンバは体液で満たされるものでもよく、一例の実施形態には、上記奔流空間の容積よりも大きいチャンバの容積がある。
【0169】
図20は、接近装置の別の実施形態の斜視図である。図示されたように、この接近装置には、他の実施形態における上記のそれらに類似した針22とガイドワイヤ44とが備わっている。さらに、この接近装置には、拡張器24に概ね類似した構造のあるカテーテル300が含まれている。さらに、このカテーテル300には、シースに関して上で論述されたように、部分的に半透明あるいは透明である細長い本体があってもよい。さらに、このカテーテルには、上記針における対応する固定構造体に取り外し可能に固定されるように構成された固定構造体の備わったハブが含まれていてもよい。これらの固定構造体は、図2E、図2F、図2G、図3B、および図3Dに描かれたように、上記針を上記拡張器へ接続するための上記のそれらに類似していてもよい。上記カテーテルと上記針との間における上記固定構造体によれば、それらどうしの間の意図的でない全相対移動を防止することができ、また、必要であれば、上記針を上記カテーテルに対してスライドさせることができるようにするために、上記針を取り外すことができる。
【0170】
奔流空間は、針22とカテーテル300の本体の外面との間に配置することができ、また、奔流空間は、上記針の内部における体液が同空間の中へ流入することができるように、かつ、その体液を上記カテーテル本体の半透明部分あるいは透明部分を通して見ることができるように、上記針本体の内部に連通することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、固定構造体は、ルアー型固定接続体、ねじ付き固定構造体、取り外し可能な固定構造体、あるいはこれらのいくつかの組み合わせである。好ましいのは、いくつかの実施形態において、1つの固定構造体が医療装置継手で固定することができるように、かつ、別の固定構造体が上記針固定構造体で固定することができるように、複数の固定構造体をカテーテル300のハブに設けることができることである。
【0172】
さらに、図20の実施形態をこの明細書に記載された他の実施形態に組み合わせることができる(上記他の実施形態どうしを互いに組み合わせることができるように)ということは、この明細書における記載から明らかであろう。例えば、図20の実施形態には、負圧要素あるいは可変容積チャンバもまた含まれていてもよい。
【0173】
さらに別の実施形態では、接近装置による体液の取り込みをさらに加速するために、界面活性剤を用意することができる。この界面活性剤は体液に接している任意の表面に適用することができる。従って、例えば、図18Aの実施形態では、界面活性剤は、針本体、拡張器シャフト、シース本体、および/またはシースハブのいずれか1つに適用することができる。
【0174】
付加的な実施形態では、周囲雰囲気への空気の流出を可能にするとともに流体の流出を阻止することは望ましいであろう。そのような実施形態では、多孔性膜のような濾過部材、充分に小さい細孔、あるいは他の要素を接近装置20’へ設けることができる。例えば、空気が可撓性中空体200あるいはポンプ215の中へ入り込むことができるものの、血液のような体液の通過が阻止されるように、多孔性膜をハブ開口205にわたって設けることができる。他の実施形態では、そのような濾過部材は、チューブ215の内部に、バルブ220、225に、あるいは流体を見ることのできる奔流空間の内部に、配置することができる。
【0175】
この明細書に記載された実施形態は、常用の生体適合性材料から構成されている。例えば、上記針は、セラミック、硬質ポリマー、または、ステンレス鋼、ニチノールなどのような金属から構成されているのが好ましい。他の諸要素は、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマー、およびパーフルオロ(エチレン−プロピレン)コポリマーのようなコポリマー、ポリウレタンのポリマーあるいはコポリマーのような適切な高分子材料から形成することができる。
【0176】
上記のように、この発明による接近装置は、カテーテルを患者の体内における他の箇所に配置するために使用することができる。従って、例えば、この接近装置は、膿瘍から流体を排出するために、胸腔から空気を排出するために、また、腹腔へ接近するために、さまざまなカテーテルとして、あるいはさまざまなカテーテルとともに使用することができるが、これらに限定されることはない。そのような用途では、体液は、上記針が適切に配置された時点を表示するための観察空間の中へ流入する。
【0177】
この発明はいくつかの好ましい実施形態および実施例の状況において開示されてきたが、当業者は、この発明が、特に開示された実施形態を越えて他の代わりの実施形態まで拡張され、かつ/または、この発明、明らかな修正例およびその均等物の使用に拡張される、ことを理解するであろう。加えて、この発明の多くの変形例が示されるとともに詳細に記載されてきたが、当業者にとっては、この発明の適用範囲内にある他の修正例が、この開示に基づいて容易に明らかになるであろう。これらの実施形態の特定の特徴的構成および様相のさまざまな組み合わせあるいは部分組み合わせは、行うことができるとともに、この発明の適用範囲内に依然として属している、ということも予想される。従って、開示されたこの発明のさまざまな態様を形成するためには、開示された実施形態のさまざまな特徴的構成および様相を互いに組み合わせたり、あるいは互いに置き換えたりすることができる、ということを理解すべきである。従って、この明細書に開示されたこの発明の適用範囲は、上記の特定の開示実施形態によって限定されるべきでなく、この開示およびそれに従う特許請求の範囲の正しい読み取りによってのみ決定すべきである、ということが意図されている。
【技術分野】
【0001】
<関連出願への相互参照>
この出願は、米国仮特許出願第61/113,989号(2008年11月12日に出願されたもの)および第61/114,404号(2008年11月13日に出願されたもの)に関するものであるとともに、米国特許法第119条(e)の下でのそれらの利益を主張するものであり、これらの出願のそれぞれは、それらの全体を参照することによって、この明細書に明確に組み入れられる。
【0002】
<発明の分野>
この発明は一般に、医療物品(例えば、カテーテル、カニューレ、シースなどのような)を、例えば、動脈、静脈、血管、体腔、あるいは排液部位のような身体空間の中へ導入し、かつ/または、送出するための接近装置に差し向けられている。
【背景技術】
【0003】
<関連技術の説明>
カテーテルあるいは血管シースを血管の中へ挿入するための好ましい非外科的方法には、患者の血管の中へ挿入される接近針を含むセルディンガー法(Seldinger technique)あるいは修正セルディンガー法の使用が含まれている。ガイドワイヤが、上記針を介して、かつ、血管の中へ挿入される。この針は取り外され、また、拡張器およびシースが、組み合わされてあるいは別々に上記ガイドワイヤにわたって挿入される。上記拡張器および上記シースは、次いで、いっしょにあるいは別々に、組織を通して血管の中へ短い距離だけ挿入され、その後、上記拡張器および上記ガイドワイヤは取り外されて廃棄される。カテーテルあるいは他の医療物品は次いで、上記シースを介して血管の中へ所望位置まで挿入することができ、または、上記シースは血管の中にそのまま残すこともできる。
【0004】
多くの血管接近装置が知られている。米国特許第4,241,019号、4,289,450号、4,756,230号、4,978,334号、5,124,544号、5,424,410号、5,312,355号、5,212,052号、5,558,132号、5,885,217号、6,120,460号、6,179,823号、6,210,332号、6,726,659号および7,025,746号の各公報には、そのような装置の例が開示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これらの装置のどれにも、医師あるいは医療サービス提供者にとって好ましいであろう使用の容易性と安全性とが備わっていない。このため、より容易に使用することができるとともにより安全である血管接近装置、特に、血管が穿刺されたときにそれを明確かつ迅速に表示するであろう同装置、および、オーバーワイヤ式血管接近法における不慮の針刺傷と他の付随的危険性とを減少させるであろう同装置についての要望が存在している。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明の実施形態には、例えば血管あるいは排液部位のような患者の身体の内部における空間の中へカテーテルあるいはシースを送出するために有用である接近装置(アクセス装置)についてのいくつかの特徴的構成が含まれている。この発明の適用範囲から逸脱することなく、そのいっそう顕著な特徴的構成が簡潔に論述される。何人も、この論述を考慮した後に、そして、とりわけ、この項の記載と組み合わせて以下の好ましい実施形態の詳細な説明の項を読み取った後に、従来の接近装置に優るいくつかの利点がこれらの実施形態の特徴的構成および様相によってどのようにしてもたらされるかを理解するであろう。
【0007】
1つの実施形態では、医療物品を身体空間の内部へ配置するための接近装置を設けることができる。この接近装置には、針と、この針の少なくとも一部にわたって配置された医療物品とが含まれていてもよい。この針には穴が含まれていてもよく、また、その穴は、この針と医療物品の外面との間の任意箇所に作り出された奔流空間に連通していてもよい。また、この奔流空間は可変容積チャンバに連通していてもよい。その結果、この可変容積チャンバは、流体を奔流空間から同チャンバの中へ引き込むことができる。
【0008】
別の実施形態では、医療物品を身体空間の内部へ配置するための別の接近装置を設けることができる。先の実施形態のように、針と医療物品と奔流空間とを設けることができる。さらに、延出状通路を、第1端部で上記奔流空間へ、かつ、第2端部で負圧要素へ連通させることができる。この負圧要素、チューブ、奔流チャンバのいずれかの中に濾過要素を配置してもよい。その結果、この濾過要素によって、上記奔流チャンバの中へ入る体液の流出を防止することができるが、上記負圧要素への空気の流出が可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
この明細書の中に開示された接近装置におけるこれらの、そして他の特徴的構成、様相および利点は、この発明を例示することを意図しており、かつ、限定することを意図していない好ましい諸実施形態の図面を参照して、以下に説明される。加えて、これらの図を通じて、同一の参照符号は、例示された実施形態の同一の構成要素を表示するために使用されている。例示された諸実施形態の中における同様の構成要素は、別の実施形態を表示するために、下付き数字のある同一の参照符号として、同様に表わされている。以下は、これらの図面のそれぞれについての簡単な説明である。
【0010】
【図1A】この発明によって構成された接近装置の好ましい実施形態の斜視図であり、また、針、拡張器、および医療物品と同軸に位置合わせされた事前搭載型ガイドワイヤ部分も示している。
【0011】
【図1B】図1Aに描かれた実施形態の平面図である。
【0012】
【図2A】図1Aにおける針の平面図であり、また、遠位端の近傍の窓穴も示している。
【0013】
【図2B】図1Aにおける針の側面図であり、また、近位端の近傍のフィンも示している。
【0014】
【図2C】図2Aにおける2C−2C線に沿った断面図である。
【0015】
【図2D】図2Aにおける針の一部の拡大平面図であり、また、上記窓穴も示している。
【0016】
【図2E】図2Aにおける針の針ハブの拡大平面図である。
【0017】
【図2F】図2Aにおける針の針ハブの拡大側面図である。
【0018】
【図2G】図2Aにおける針の針ハブの拡大近位端面図である。
【0019】
【図3A】図1Aにおける拡張器の平面図であり、また、遠位端の近傍の窓穴も示している。図3Aはまた、上記拡張器とシースとの間の空気を抜くためのルアー表面における長手溝も示している。
【0020】
【図3B】図3Aにおける3B−3B線に沿った断面図である。
【0021】
【図3C】図3Aにおける拡張器の一部の拡大平面図であり、また、上記窓穴および長手溝も示している。
【0022】
【図3D】図3Aにおける拡張器ハブの拡大端面図である。
【0023】
【図3E】対応するねじ山があるシースへ固定されるように構成された固定用スピンナットが含まれている拡張器ハブの別の実施形態の斜視図である。
【0024】
【図3F】図3Aにおける3F−3F線に沿った断面図であり、また、ルアー表面における周縁の周りに等間隔で配置された溝も示している。
【0025】
【図4A】図1Aにおけるシースの平面図であり、また、シースの近位端へ接続されたシースハブも示している。
【0026】
【図4B】図4Aにおける4B−4B線に沿った断面図である。
【0027】
【図4C】図4Aにおけるシースの拡大端面図である。
【0028】
【図4D】図4Aにおけるシースの近位部分の拡大斜視図である。
【0029】
【図5A】図1Aにおけるガイドワイヤ部分の斜視図であり、また、ガイドワイヤの近位端へ接続されたガイドワイヤハブも示している。
【0030】
【図5B】図5Aに描かれた実施形態のガイドワイヤ部分の平面図である。
【0031】
【図6A】図1Aにおける送路体の斜視図である。
【0032】
【図6B】図6Aにおける送路体の平面図であり、また、針を拡張器に対して固定するための固定機構も示している。
【0033】
【図6C】図6Bにおける送路体の側面図である。
【0034】
【図6D】図6Bにおける固定機構の拡大図である。
【0035】
【図6E】ガイドワイヤ部分を事前搭載状態に固定する別の固定機構の拡大図である。
【0036】
【図7A】図1Aにおける接近装置の平面図であり、また、図6Eにおける固定機構を、事前搭載状態にある送路体へ固定されたガイドワイヤ部分で示している。
【0037】
【図7B】図7Aにおける接近装置および固定機構の側面図である。
【0038】
【図7C】図7Aにおける接近装置の断面図であり、また、送路体における要素と当たり止めとの間に配置されたガイドワイヤハブも示している。
【0039】
【図7D】図7Bにおける接近装置の拡大端面図であり、また、送路体から延出しているともにガイドワイヤハブの少なくとも一部の周りから延出している2つのアームも示している。
【0040】
【図8A】図1Aに描かれた実施形態の平面図であり、患者の体内への接近装置の挿入を例示している。
【0041】
【図8B】図8Aに描かれた実施形態の拡大図であり、患者に隣接した接近装置の区域に焦点が合わされている。
【0042】
【図8C】図8Bに描かれた実施形態の一部の拡大図であり、また、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も隠れ線で示している。
【0043】
【図8D】図8Cに描かれた実施形態の一部の拡大断面図であり、また、流体が針の内側からシースと拡張器との間に形成された流路まで流れることができるように、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も示している。
【0044】
【図8E】流体が0.002インチの隙間高さ幅がある流路まで引き上げられる速度を示すグラフである。
【0045】
【図8F】流体が0.001インチの隙間高さ幅がある流路まで引き上げられる速度を示すグラフである。
【0046】
【図8G】流体が0.0005インチの隙間高さ幅がある流路まで引き上げられる速度を示すグラフである。
【0047】
【図8H】図8Cに描かれた実施形態の一部の、拡張器の中における流路の遠位にある領域に沿った拡大断面図である。
【0048】
【図8I】図8Aに描かれた実施形態の拡大図であり、針ハブが第1位置にあるときにその針ハブが拡張器ハブへ固定された区域に焦点が合わされている。
【0049】
【図8J】図8Iに描かれた実施形態の断面図である。
【0050】
【図9A】図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、針の先端から遠位方向に前進したガイドワイヤを例示している。
【0051】
【図9B】図9Aに描かれた実施形態の拡大図であり、針ハブが第1位置にあるときにガイドワイヤハブがその針ハブへ固定された区域に焦点が合わされている。
【0052】
【図9C】図9Bに描かれた実施形態の断面図である。
【0053】
【図10A】図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、図9Aに例示された位置から針本体に対して遠位に前進している拡張器およびシースを例示している。
【0054】
【図10B】図10Aに描かれた実施形態の拡大後面図であり、針ハブが第2位置にあるときにその針ハブが送路体へ固定された区域に焦点が合わされている。
【0055】
【図11A】図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、シースからのガイドワイヤ、針本体、および拡張器の取り外しを例示している。
【0056】
【図11B】図11Aに例示された実施形態の一部の拡大図であり、シースからのガイドワイヤ、針本体、および拡張器の取り外しの間に拡張器によって覆われた針の先端を示している。
【0057】
【図12A】針および拡張器における位置合わせされた開口あるいは窓穴の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0058】
【図12B】図12Aにおける13B−13B線に沿った拡大断面図であり、また、流体が針の内側からシースと拡張器との間に形成された流路まで流れることができるように、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も示している。
【0059】
【図13A】針および拡張器における位置合わせされた開口あるいは窓穴の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0060】
【図13B】図13Aにおける13B−13B線に沿った拡大断面図であり、また、流体が針の内側からシースと拡張器との間に形成された流路まで流れることができるように、拡張器の開口あるいは窓穴に位置合わせされた針の開口あるいは窓穴も示している。
【0061】
【図14A】拡張器とシースとの間に形成された流路の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0062】
【図14B】図14Aにおける14B−14B線に沿った断面図であり、また、シースの中へ延出している流路の深さも示している。
【0063】
【図15A】拡張器とシースとの間に形成された流路の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0064】
【図15B】図15Aにおける15B−15B線に沿った断面図であり、また、拡張器およびシースの両方の中へ延出している流路の深さも示している。
【0065】
【図16A】拡張器とシースとの間に形成された流路の別の実施形態を例示する拡大平面図である。
【0066】
【図16B】図15Aにおける16B−16B線に沿った断面図であり、また、拡張器の中へ延出しているスプラインの形態にある、等間隔に配置された複数の流路も示している。
【0067】
【図17】接近装置の別の実施形態における拡大断面図であり、また、相異なる形状を有する拡張器とシースとの間に形成された流路も示している。
【0068】
【図18A】この発明の別の好ましい実施形態によって構成された別の接近装置の斜視図である。
【0069】
【図18B】収縮形態にある図18Aの接近装置におけるハブの拡大斜視図である。
【0070】
【図18C】拡張形態にある図18Bのハブの拡大斜視図である。
【0071】
【図19】この発明のさらに好ましい実施形態によって構成された付加的な接近装置の斜視図である。
【0072】
【図20】接近装置の付加的な実施形態の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0073】
この開示によれば、医療物品(例えば、カテーテルあるいはシース)を血管あるいは排液部位へ送出するための接近装置が提供される。図1Aは、この発明の好ましい実施形態による、血管(例えば、静脈あるいは動脈)の中へ挿入されるように構成された接近装置20を示している。この接近装置は、この状況において(すなわち、血管への接近について)以下で説明されるが、この接近装置は、医療物品(例えば、カテーテルあるいはシース)を患者の身体の内部における他の箇所(例えば、排液部位)へ接近させるとともにそれをその箇所の中へ配置するためと、他の目的のため(例えば、膿瘍を排出させるため)とに使用することもできる。
【0074】
この接近装置のこの実施形態は、単一部材型で管状の典型的な医療物品を患者の内部の身体空間の中へ配置する状況で開示されている。この管状物品は、いったん配置されるとその後に、他の医療物品(例えば、カテーテル、ガイドワイヤなど)を受け入れて身体空間の中への接近をもたらすために使用することができ、かつ/または、流体を身体空間の中へ導入しあるいは流体を身体空間から除去(例えば、排出)するための通路をもたらすために使用することができる。図示された実施形態では、上記管状医療物品は、主として静脈の中への流体通路をもたらすように構成されたシースあるいはカテーテルである。しかしながら、この発明の原理は、単一部材型のシースあるいはカテーテルの配置、または、このシースあるいはカテーテルを介する医療物品のその後の挿入に限定されることがない。代わりに、当業者にとっては、この開示に照らせば、この明細書の中に開示された接近装置は、シース、流体排出チューブ、流体送出チューブ、および単一管腔あるいは複数管腔のカテーテルを患者の体内に直接配置するかあるいは別の医療物品を介して間接的に配置することに関して首尾よく利用することもできる、ということが理解されるであろう。
【0075】
例えば、この明細書の中に開示された接近装置は、静脈用中心カテーテル、周辺に挿入された中心カテーテル、血液透析用カテーテル、外科排液チューブ、剥ぎ取り用シース、多数構成部材型シース、スコープを、さらには、外部のあるいは移植型の電子装置あるいはセンサーへ接続された導線あるいはケーブルのための導線管を、直接または間接的に配置するように構成することもできるが、これらに限定されることはない。上で説明されたように、上で列挙された医療物品は、接近装置の拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の体内に直接配置することができ、あるいは、接近装置の拡張器、針、およびガイドワイヤを介して患者の体内に配置された医療物品によって患者の体内にその後、配置することができる。
【0076】
さらに、この明細書の中に開示された実施形態は、単一の医療物品の同軸挿入に限定されることはない。例えば、2つのカテーテルを、挿入されたシースを介して患者の体内に挿入することができ、あるいは、第2のカテーテルを、挿入された第1のカテーテルを介して患者の体内に挿入することができる。さらに、管路を血管あるいは他の身体空間の中へもたらすことの他に、拡張器、針、およびガイドワイヤを介して挿入された医療物品には、その後に挿入された医療物品の管腔に加えて、管腔を形成することができる。当業者は、この明細書の中に開示された装置およびシステムのための付加的な用途を発見することもできる。従って、シースに関連した接近装置(例えば、微小穿刺のための用途)の図示および説明は、この接近装置における1つの可能な用途の単なる典型例である。
【0077】
図1Aおよび図1Bには、接近装置20の好ましい実施形態が示されている。接近装置20には、針22、拡張器24、およびシース26が備わっている。図示された実施形態では、この接近装置には、ガイドワイヤ部分28および送路体30も含まれている。図1Bにおいて最もよく認められるように、拡張器24は針22に同軸に取り付けられているのが好ましく、また、シース26は拡張器24に同軸に取り付けられている。この接近装置の諸構成要素の伸縮特性は、それらの諸構成要素を、同軸(例えば、モノレール型設計)というよりはむしろ実質的に平行に配置されたそれらの軸に配置することによって、達成することもできる。
【0078】
これらの構成要素のそれぞれには、終端部あるいは移行部(すなわち、ハブ)に管腔継手が含まれている。従って、図示された実施形態では、針22には、針ハブ34から遠位へ延出する針本体32が含まれており、拡張器24には、拡張器ハブ38から遠位へ延出する拡張器シャフト36が含まれており、また、シース26には、シースハブ42から遠位へ延出するシース本体36が含まれている。ガイドワイヤ部分28には、ガイドワイヤ44と、好ましくはガイドワイヤハブあるいはキャップ46とが備わっている。図示された実施形態では、ガイドワイヤハブ46はガイドワイヤ44の近位端に配置されているが、しかしながら、他の用途では、このハブ46は、ガイドワイヤ44の端部どうしの間のある箇所に配置されていてもよい。
【0079】
図2A−図2Gは、針22の針本体32および針ハブ34を例示しているが、これらは、接近装置20の他の構成要素とは関係なく、この接近装置の好ましい実施形態に従って構成されている。図2Aおよび図2Bにおいて最もよく認められるように、針ハブ34は針本体32の近位端に配置されている。針本体32は、針22の遠位部分50の近傍における遠位端で終わっており、また、針ハブ34は、針22の近位部分52にある。
【0080】
針本体32には、円形で一定直径の内側穴と円形で一定直径の外面とが備わった細長い管状の形状があるのが好ましい。しかしながら、他の実施形態では、針本体32には、他の穴形状および外面形状(例えば、楕円形の断面形状のようなものが挙げられるが、これに限定されるものではない)があってもよい。この針の内面あるいは外面には、溝あるいは流路が含まれていてもよい。これらの溝あるいは流路は、この針穴の内部における流体を、針22の構造体の周囲へあるいはその構造体へ、または針22の内部(例えば、ガイドワイヤの周囲)で案内することができる。いくつかの実施形態では、上記の溝あるいは流路は、上記拡張器に対する針22の所望方位を維持することに役立つであろう。
【0081】
針本体32には、目標とする皮下身体空間へ接近するために充分に長い長さがあり、また、その身体空間へ接近するときに必要以上の外傷を引き起こすことなく挿入力に耐えるために充分なゲージ寸法がある。多くの用途のために、この針本体には、3−20cmの長さがあり、より好ましくは3−10cmの長さがある。例えば、成人の胸郭における身体空間(例えば、血管)へ接近するために、針本体32には、7cm以上の長さがあるのが好ましく、また、9cm以上の長さがあるのがより好ましく、さらに、9−10cmの長さがあるのが最も好ましい。この針の上記寸法は、微小穿刺の用途(周辺装置IV)については、18ゲージ以下であるのが好ましく、また、18−28ゲージであるのがより好ましく、さらに、18−26ゲージであるのが最も好ましい。新生児に関する用途については、針本体32の長さおよびゲージは、著しく短くかつ小さくすべきであり、例えば、3−4cmおよび26−28ゲージであるのが好ましい。
【0082】
図2Aおよび図2Dにおいて最もよく認められるように、針本体32には、針本体32の遠位端の近傍に少なくとも1つの窓穴あるいは開口56が含まれている。この窓穴56は、針本体32の壁を貫いて延出しており、また、針本体32に関するさまざまな形状および方位を有しているが、これらについては以下で詳しく説明される。加えて、針本体32には、遠位部分50に配置された斜切先端54があってもよい。
【0083】
図2Aおよび図2Bに例示されたように、この針の針先端における上記斜切部の周辺箇所と上記開口あるいは窓穴56の周辺箇所とに位置合わせされた針ハブ34の周囲における周辺箇所に、フィン58が配置されているのが好ましい。すなわち、このフィン58は上記の斜切部および窓穴に対して割り出されている。使用の間に、医師あるいは医療サービス提供者は、上記斜切部が血管の内側にあり、また、上記窓穴が上記のシースおよび/または拡張器によって覆われているときであっても、露出したフィン58の方位に留意することで、上記斜切状針先端(および窓穴56)の方位を判定することができる。例えば、図示された実施形態では、患者から離れたフィン58の方位は、血管の内部における上記針先端の斜切上向き方位に一致している。窓穴56もまた、図2Cに認められるように、フィン58と同一の側面にある。
【0084】
フィン58には、針ハブ34を用手操作するために、握り領域もまた設けられている。例えば、医師あるいは医療サービス提供者は、人差し指および親指をフィン58の側面部に置いて、針ハブ34を拡張器24および/またはシース26に対して安定化させることができる。図示された実施形態では、上記の拡張器/シースがこの針にわたって遠位へスライドすると、針ハブ34は、第1位置121と第2位置123と(図6Aに例示された例示部分)の間における送路体30に沿って相対的にスライドする。フィン58は、挿入ステップ(以下で説明される)を実行するときに保持することができる。加えて、フィン58は、針ハブ34を安定化させるとともに拡張器ハブ38を回転させるために使用することができる。さらにまた、フィン58は、針ハブ34が送路体30に沿った任意位置に配置されるときに接近装置20を握るための補助器具として、医師あるいは医療サービス提供者によって使用することができる。
【0085】
図2Dは、針本体32における側面の開口あるいは窓穴56の拡大図である。1つ以上の窓穴56によって、針本体32の側面部を貫く通路がもたらされている。図2Dに例示された窓穴56には長円形状がある。しかしながら、側面開口56の形状は、図示された実施形態のものに限定されることがなく、また、円形、長円形、正方形、あるいは他の形状であってもよい。
【0086】
ここで、図2E−図2Gを特に参照すると、針ハブ34には、針ハブ34の近位部分および遠位部分に固定構造体が含まれているのが好ましい。これらの固定構造体は、ルアー−ねじ型の接続部あるいは他の型の接続部であってもよい。
【0087】
針ハブ34の近位部分52における上記固定構造体によって、医師あるいは医療サービス提供者は別の医療物品を針ハブ34の近位端へ固定することができる。例えば、図示された実施形態における針ハブ34には、環状のフランジあるいはリップ63が含まれている。このリップ63は、針ハブ34を対応するルアー−ナット型の固定用特徴的構成の備わった他の医療物品へ取り付けることができるように、ねじ合わされている。加えて、医師あるいは医療サービス提供者は、上記近位端における上記固定構造体へ注射器あるいは監視用備品を取り付けて、要望どおり他の処置を実行することができる。針ハブ34にはまた、特定の用途のために望ましいときには、その近位端および/または側面出入口に隔壁が含まれていてもよい。
【0088】
針ハブ34の遠位部分における上記固定構造体によれば、医師あるいは医療サービス提供者は例えば、針ハブ34が上記第1位置121にあるときには、針ハブ34と拡張器ハブ38との間における相対運動を阻止するために、針ハブ34を拡張器ハブ38へ固定することができる。図示された実施形態では、上記固定構造体には、針ハブ34の表面にラッチ要素66が含まれている。このラッチ要素66は、針ハブ34を拡張器ハブ38へ解除可能に固定する。この固定構造体によれば、医療サービス提供者は、この針を患者の体内へ前進させることができるとともに、針ハブ34、拡張器ハブ38、あるいはこれらの両方を握ることができる。要望があれば、この固定構造体は、解除することができ、上記ハブどうしの間の相対運動を可能にする。他の実施形態では、同一あるいは類似の固定構造体によって、針ハブ34を、シースハブ42のようなこの接近装置の別の部材へあるいは別の医療物品のハブへ固定することができる。さらに、いくつかの実施形態では、上記固定構造体は、ねじ山接続部、ルアー型接続部などのような他の医療用継手にも係合するように構成することができる。針ハブ34の表面における上記固定構造体は、拡張器ハブ38、シースハブ42、あるいは他の医療物品の表面におけるさまざまな固定構造体と協働するように改変することができる。別の例として、いくつかの実施形態では、上記医療物品はカテーテルであってもよい。当業界において広く理解されるように、カテーテルには、シース26および拡張器24と比較して一般にいっそう可撓性のある構造体が備わっていてもよい。例えば、いくつかの実施形態では、カテーテルは、体腔の中へ挿入されたときに、それを貫く空いた流路を維持するために、ねじれることのない極限角度で安全に曲げることができる。さらに、いくつかの実施形態では、カテーテルには、針によって作られた穴を拡張するための、あるいは針によって支持されず、傾斜が引き起こされるときに重力に対してそれ自体を支持するための充分な構造的強度がないかもしれない。
【0089】
以下でさらに詳しく説明されるように、ガイドワイヤ44が、針ハブ34の中空部分62を通して、針本体32を通して、さらに穿刺された血管の中へ導入されている。このガイドワイヤ44によれば、医療サービス提供者は拡張器24およびシース26を血管の中へ案内することができる。
【0090】
針ハブ34にはまた、針ハブ34が第1位置121と第2位置123との間で送路体30に沿ってスライドすることのできる2つの爪部68が備わっていてもよい。この好ましい実施形態では、針ハブ34の2つの爪部68は第1位置121と第2位置123との間における送路体30に係合しているが、他の実施形態では、針ハブ34は、第1位置121と第2位置123との間における送路体30の長さの一部にわたってだけ、送路体30に係合している。送路体30と針ハブ34との間のスライド式相互接続は、他の協働型構造体(例えば、蟻継ぎ接続部における対応する蟻ほぞおよびほぞ穴)を用いて達成することもできる。
【0091】
図3Aは、図1に描かれた実施形態の拡張器24の平面図である。図3Bは、図3Aに描かれた実施形態の拡張器24の、3B−3B線に沿った断面図である。図3Aおよび図3Bに示されたように、図示された拡張器24には、拡張器シャフト36、拡張器ハブ38、遠位領域70、および近位領域72が備わっている。図示された実施形態では、拡張器シャフト36には側面の開口あるいは窓穴74が含まれているが、しかしながら、他の実施形態では、拡張器シャフト36には、より少ないかあるいはより多い数の窓穴74が含まれていてもよい。例えば、(以下で、いっそう詳しく記載されるが、)拡張器の内部に血液奔流用のチャンバあるいは空間が配置されていて、拡張器シャフト36には窓穴74が含まれていなくてもよい。
【0092】
拡張器ハブ38には1つ以上の排出孔があってもよい。図示された実施形態では、拡張器ハブ38におけるこの排出孔は溝75によって形成されている。加えて、拡張器シャフト36には、この拡張器シャフト36の外面に形成された1つ以上の長手流路が備わっていてもよい。図示された実施形態では、この流路は開放状流路である。この開放状流路の側壁は突条76によって形成されている。図示された実施形態では、突条76に、シース26と界接する概ね平滑で円弧状の外面が画定されている。しかしながら、他の実施形態では、突条は他の形状であってもよい(例えば、いっそう顕著な頂部を画定することができる)。シース本体40の内部にいったん組み入れられると、拡張器シャフト36における上記開放状流路は、シース本体40の内径によって閉鎖される。
【0093】
図3Cは、図3Aに例示された実施形態の一部の拡大平面図である。上記のように、図示された拡張器シャフト36には、突条76どうしの間に形成された1つ以上の開口74と1つ以上の流路とが備わっている。側面の開口あるいは窓穴74によって、拡張器シャフト36の側面を通る流体通路がもたらされている。側面開口74の形状は、図示された実施形態に限定されることがなく、また、円形、長円形、正方形、あるいは他の形状であってもよい。図3Cに例示された開口あるいは窓穴74は、長円形である。
【0094】
図示された実施形態では、拡張器シャフト36における開口74は長円形であり、その主軸は、針22における長円形開口56の主軸に対して非平行である。例えば、針開口56は長手方向に延出していてもよく、また、拡張器開口74は円周方向に延出していてもよく、あるいはこれらの逆であってもよい。換言すれば、拡張器開口74の長軸は、針開口56の長軸に対して概ね垂直に配置されている。付加的な実施形態に関して以下で説明されるように、これらの開口56、76には、製造公差および回転不整合を説明するために、かなりの程度の重複を求めるのが好ましい他の形状、寸法および方位があってもよい。こういう訳で、上記窓穴の1つには、少なくとも1つの方向において、同一方向における上記窓穴の他の1つよりも大きい寸法があるのが好ましい。従って、図示された実施形態では、針窓穴56には、拡張器窓穴74の長手寸法よりも長い長手寸法がある。
【0095】
突条76どうしの間に形成された流路は、開口74まで遠いある箇所から近位方向へ延出している。図示された実施形態における突条76は、上記シースの内部における拡張器シャフト36のバランスをとるために、拡張器シャフト36に沿って、かつ、拡張器シャフト36の両側面に延出している。シースの内部における拡張器のバランスをとることによって、この拡張器は上記シースの内側周縁に等しい圧力を加えることができる。
【0096】
拡張器ハブ38には、拡張器24の近位領域72および遠位領域に、固定構造体が含まれていてもよい。それぞれの固定構造体は、ルアー型の接続部であってもよく、他の型の接続部であってもよい。図示された実施形態では、拡張器ハブ38には、第1ルアー型接続部78、第2ルアー型接続部80、リップ部77、および基部79が備わっている。第1ルアー型接続部78は、図2Eに例示された針22の表面における針ハブ34に係合している。第2ルアー型接続部80は、第1ルアー型接続部78よりも遠位に配置されている。いくつかの実施形態では、第2ルアー型接続部80(例えば、雄ルアー型スリップコネクタ)は、図1Aに例示されたシース26の表面におけるシースハブ42(例えば、雌ルアー型スリップコネクタ)に係合するように構成することができる。加えて、これらの構成要素における雄−雌ルアー型スリップコネクタは逆にすることができる。
【0097】
図3Dは、図3Aの拡張器24の拡大端面図である。図3Dに最も明確に示されたように、拡張器ハブ38には、針ハブ34が第1位置121にあるときに拡張器ハブ38を針ハブ34に固定するために、図2E−図2Fに例示された針ハブ34の表面におけるラッチ要素66に解除可能に係合する開口82がある。さらにまた、これらの拡張器ハブおよび針ハブ34における上記雄−雌ルアー型スリップコネクタは、他の実施形態では逆にすることもできる。上記針ハブが別の医療物品へ固定されている実施形態では、類似した構造体をその物品に設けることができる。例えば、いくつかの実施形態では、接近装置20には拡張器24がなくてもよく、また、針ハブ34は、上記のように、拡張器ハブ38における開口82に類似した開口があるシースハブ42へ接続することができる。
【0098】
拡張器24の色は、血液あるいは他の流体とこの拡張器24との対比を促進するように選択することができる。例えば、血液の奔流の間に、血管の中における針の適切な配置を確認するために、血液は、拡張器24と上記シースとの間で流れるのが観察される。この流体が上記シースと拡張器24との間を流れるときの流体の可視性を増大させるために、シースは、流体の色と対照的な色がある拡張器24とともに、透き通った材料あるいは透明な材料から製造されているのが好ましい。例えば、拡張器24には、赤い血液に対するその対照性を促進するために、白い色を付けることができる。流体の色と望ましい対照の程度とに左右されるが、他の色の拡張器24を採用することができる。さらに、血液の奔流の領域における上記拡張器の一部だけに、相異なる色のある残り部分に対して対照的な色が付けられていてもよい。この針と拡張器24との間に形成された流路がある実施形態については、拡張器24は、医師が上記シースおよび拡張器24の双方を通して血液の奔流を観察することができるように、上記シースに類似した透き通った材料あるいは透明な材料から製造することができる。
【0099】
図3Eは、別の実施形態の拡張器ハブ38Aの拡大斜視図である。拡張器ハブ38Aは、この拡張器ハブ38Aがスピンナットあるいはカラー84をさらに含んでいる点を除いて、図3Aに例示された拡張器ハブ38に類似している。スピンナット84の近位端は、拡張器ハブ38における環状溝73の周りに回転する(図3Aを参照のこと)。環状溝73の中にいったん配置されると、スピンナット84は、環状溝73の中で遠位方向に動くのが阻止されるが、拡張器ハブ38Aの周りに自由に回転する。スピンナット84には相互係合要素があってもよく、この相互係合要素はシース26における対応相互係合要素へ固定される。図示された実施形態では、スピンナット84には、図1Aに例示されたシース26におけるシースハブ42の雄ねじに係合する雌ねじが含まれている。
【0100】
拡張器24あるいはシース26は、拡張器24とシース26との間から、かつ/または、上記針と上記拡張器との間から空気あるいは気体を逃がしあるいは排出させることのできる1つ以上の通路を、別々にあるいはともに形成することができる。この1つ以上の通路は、シース26、上記シースハブ、拡張器ハブ38の壁におけるものであってもよく、上記拡張器シャフトの露出部分におけるものであってもよく、かつ/または、拡張器24およびシース26の隣接面どうしの間に形成されていてもよい。例えば、図3Aは、拡張器24およびシース26の隣接面どうしの間に形成され、長手方向に配置されている溝75を示している。このような排出用通路はまた、迷路であってもよい。これらの隣接面によって、シース26と拡張器24との間にルアー型スリップ接続部が形成される。
【0101】
図3Fは、図3Aにおける3F−3F線に沿った断面図であり、また、ルアースリップ面の周縁の周りに、等間隔で配置されることが必要ではないが、等間隔に配置された溝75を示している。これらの溝75は、血液の奔流が生じたときに、上記拡張器とシースのような上記医療物品との間から空気を逃がすことのできるような寸法に形成されている。上記のように、上記1つ以上の通路は、表面溝75の形態にある必要はなく、また、代わりに、開口あるいは窓穴の形態にあってもよい。
【0102】
図示された実施形態では、上記1つ以上の通路によって、空気が上記シースと上記拡張器ハブとの間におけるルアー型接続部を通して通過することができる。図示された実施形態では、通路75の遠位端はルアー型接続部の遠位側面に配置されており、通路75の近位端はルアー型接続部の近位側面に配置されている。
【0103】
上記1つ以上の通路は、血液あるいは他の液体を濾過するような寸法に形成されていてもよく、あるいは、液体の通過を阻止するとともに空気の通過を可能にするフィルターあるいは他の構造体を含んでいてもよい。例えば、上記シースは、それ自体に、小さい開口、細孔あるいは多孔性材料の形態にある1つ以上の通路が含まれていてもよい。この1つ以上の通路の寸法と、流体分子および生物的特徴を備えた要素(例えば、赤血球)の予想寸法とに左右されるが、上記シースにおける1つ以上の小さい開口、細孔あるいは多孔性材料には、空気を通すことができるが血液を保持することのできる多孔排出部を形成することができる。
【0104】
突条が設けられた拡張器を製造する方法が、これから説明される。まず、1つ以上の長手溝あるいは長手流路のある長い管状体を、拡張器のその外径部(OD)の表面にあるいは拡張器の本体の内部に作るために、押出法が用いられる。この長い管状体は、単一の拡張器の必要長さを超えているが、単一の拡張器の長さよりも何倍も長い長さがあるのが好ましい。この押出法には、拡張器の内径および外径と、長手溝あるいは長手流路あるいは内側流路の深さおよび周方向長さとのための望ましい形態を反映する形態のある製造用ダイが採用されている。図1−図11の図示された実施形態では、上記の長い管状体には、上記シースの内部における上記拡張器のバランスを促進するために、同管状体の両側面に2つの長手OD流路が含まれている。しかしながら、単一の流路には、血液の奔流のための可視的標示あるいは奔流空間が設けられていてもよい。これら2つの流路は、押し出された管状体の長さに沿って延出しているのが好ましい。図示された実施形態では、拡張器とシースとの間に配置された1つ以上の流路が含まれているが、これに加えて、あるいはこれに代えて、上記針と拡張器との間に、拡張器の内部に、かつ/またはシースの内部に、1つ以上の流路を形成することができる。従って、いくつかの実施形態では、拡張器24は、流路の内部における流体の奔流を可視化するために、透き通った材料、半透明の材料、透明な材料、あるいは半不透明の材料から、一部あるいは全体が製造されている。
【0105】
図示された実施形態に戻ると、押し出された管状体は、単一の拡張器のための適切な長さに切断される。好ましい方法では、これら2つのOD流路は、切断された拡張器の全長にわたって延出している。
【0106】
その後、切断された拡張器の一方端部には、その先端を改質するために、先端処理法が採用される。切断された拡張器の一方端部は、仕上げ加工された拡張器の先端の所望形態に合致する形態があるダイ/マンドレルの中へ押し込まれる。この所望形態は、例えばシースの内径に応じて選択される。シースおよび拡張器にとっては、溝付きの拡張器とシースとの間に形成された流路の近位方向における血流を増進するために、上記先端の近傍に緊密な嵌合部あるいは封止部を形成することが望ましい。好ましくは、先端領域における拡張器の外径部は、遠位方向に向かって次第に細くなっている。
【0107】
上記のダイ/マンドレルの中において、上記先端へ熱エネルギが加えられて、そのダイ/マンドレルに合致するように上記先端が改質される。この熱エネルギは、赤外線熱源あるいはRF熱源からの放射熱を用いることが含まれる任意の公知技術によって、加えることができる。この先端処理法の一環として、先端領域における拡張器は、上記溝が実質的に除去されるように改質される。上記溝が除去されると、拡張器には、先端の近傍におけるシースとの間に、緊密な嵌合部あるいは封止部を形成することができる。これらの溝は、シース26の先端が拡張器の表面に位置する箇所の近位側面における拡張器の残り部分に沿って、維持されている。上記のダイ/マンドレルから取り外された後に、拡張器の先端部は、洗浄されるとともに、製造くずを除去するために必要に応じて切除される。
【0108】
拡張器における上記1つ以上の窓穴は、先端領域の近傍における拡張器を切り開いて作られる。それぞれの窓穴は、ドリルあるいはレーザが含まれる任意の公知手段によって切り開くことができる。さらに、窓穴について長円形形状あるいは他の形状を達成するために、切除装置は拡張器に対して動かすことができ、あるいは、拡張器は切除装置に対して動かすことができる。
【0109】
上記先端とは反対側にある拡張器の端部は、上記拡張器ハブを拡張器の上にオーバーモールドすることを促進するために、外方へ広げられてもよい。
【0110】
図4Aは、図1Aに描かれた実施形態のシース26の平面図である。図4Bは、図4Aに描かれた実施形態のシース26の、4B−4B線に沿った断面図である。図4Cは、図4Aのシース26の拡大近位端面図である。図4Dは、図4Aのシース26におけるシースハブ42の拡大斜視図である。図4A−図4Dに示されたように、シース26には、シース本体40、シースハブ42、遠位部分90、および近位領域92が備わっていてもよい。シース本体40は、透き通った材料、半透明の材料、透明な材料、あるいは半不透明の材料から、一部あるいは全部を製造することができる。シース本体40にはまた、例えば、硫酸バリウム製ストライプのような1つ以上の放射線不透過性マーカーが含まれていてもよい。好ましい実施形態では、シースには、その本体40の両側に対照的に配置されたそのような2つの放射線不透過性ストライプが含まれている。
【0111】
シース本体40は、カテーテルあるいは他の医療物品(例えば、ガイドワイヤ)がそれを通して血管の中へ挿入される単一部材のシースであってもよい。そのような実施形態では、シース本体40によって、カテーテルあるいは他の医療物品(例えば、ガイドワイヤ)の挿入のための管路が形成されている。管路を設けるのに加えて、シースあるいはシースの一部には、カテーテルの管腔に加わる管腔を形成することができる。例えば、二重カテーテルをシース本体40それ自体が第3管腔を形成しているシース本体40を介して挿入することによって、三重管腔カテーテルと同等のものを形成することができる。
【0112】
接近装置20を採用した後に血管の中へ挿入されるカテーテルあるいは医療物品の型に左右されるが、シース本体40の一部あるいは全部を除去することは有利であろう。例えば、カテーテルあるいは他の医療物品が血管の中へ挿入された後に、シース本体40の一部を分離しあるいは剥がして除去することができる。剥がし取りシースには、医師あるいは医療サービス提供者がシース本体40の一部あるいは全部を容易に除去することができるように、打ち抜き穴、鋸歯、そぎ縁、あるいは他の構造体が含まれていてもよく、あるいは、他の材料(例えば、ビスマス含有PTFE)が含まれていてもよい。
【0113】
シースハブ42には、ルアー型スリップ接続部および固定部材94が含まれていてもよい。固定部材94には、対応する構造体に噛み合うかあるいは係合する固定用あるいは取付用の構造体が備わっていてもよい。例えば、固定部材94は、拡張器ハブ38の第2ルアー型接続部80に係合するように構成することのできるルアー型接続部94であってもよい。
【0114】
シースハブ42は、図4Cおよび図4Dに最もよく認められるように、拡張器ハブ38の固定機構あるいは第2ルアー型接続部80が実質的に妨げられることなくシースハブ42の中へ入ることができるように設計されているのが好ましい。しかしながら、使用に際して、シースハブ53が拡張器シャフト36にわたる所望箇所にいったん配置されると、医師あるいは医療サービス提供者は、シースハブ42を押したり、引いたり、あるいはねじったりして、固定部材94と別の医療物品における対応コネクタとをできる限り係合解除させるかあるいは係合させることができる。例えば、固定部材94は、拡張器ハブ38およびシースハブ42が解除可能に相互接続されるように、機構的嵌合を作り出すルアー型接続部、突出状こぶ、くぼみなどであってもよい。図示された実施形態では、シースハブ42の固定部材94にはルアー型接続部が備わっている。シースハブ42は、拡張器ハブ38における対応する第2ルアー型接続部80に係合するのが好ましい。好ましいのは、上記固定箇所は、拡張器ハブ38をシースハブ42に対して引いたり、圧迫したり、押したり、あるいはねじったりすることによって、係合解除させるかあるいは係合させることができることである。
【0115】
いくつかの実施形態では、シースハブ42にはリップ95が備わっている。このリップ95は、シースハブ42を対応している固定用特徴的構成がある他の医療物品へ取り付けることができるように、ねじ切りされていてもよい。
【0116】
シースハブ42には、医師あるいは医療サービス提供者がシース26および/または接近装置20を容易に握るかあるいは用手操作することができるように、1つ以上の特徴的表面構成が備わっているのが好ましい。図示された実施形態では、シースハブ42には正方形のグリップ96および突条98が含まれている。
【0117】
付加的な実施形態では、シースハブ42には、シースハブ42を接近装置20の他の物品から容易に取り外すとともに取り除くことができるように、半径方向へ延出している翼部あるいは把手構造体が備わっている。いくつかの用途では、これらの翼部は、シースハブ42をバラバラにするためのてこ作用を医療サービス提供者に提供するような寸法に形成されている。例えば、シースハブ42には、このシースハブ42の半体どうしを接続するための薄い膜が備わっていてもよい。この膜は、医療サービス提供者が接近装置からシースハブ42を取り外すことを決定するまでシースハブ42の半体どうしを互いに離れないように維持するような寸法に形成されている。医療サービス提供者は、上記翼部を用手操作して、上記膜を破るとともにシースハブ42を取り外し可能な上記半体に分離する。
【0118】
図5Aは、図1Aに描かれた実施形態のガイドワイヤ部分28の斜視図である。図5Bは、ガイドワイヤハブ46が含まれているのが好ましい、図5Aに描かれた実施形態のガイドワイヤ部分28の平面図である。ガイドワイヤハブ46には、医師あるいは医療サービス提供者がガイドワイヤハブ46および/または接近装置20を容易に握るかあるいは用手操作することができるように、1つ以上の特徴的表面構成が備わっていてもよい。図示された実施形態では、ガイドワイヤハブ46には1つ以上の突条110が備わっている。事前搭載状態では、ガイドワイヤハブ46の外面は、このガイドワイヤハブ46が第3位置125(例えば、図6Aに例示された第3位置125)にあるときには、送路体30における固定機構130に係合している。
【0119】
いくつかの実施形態では、ガイドワイヤ44は、引っ込められたときに自己吸引機能をもたらすように、上記針本体の内径との緊密な嵌合部を形成することができる。例えば、ガイドワイヤ44の外径は、このガイドワイヤの長さに沿って、あるいはガイドワイヤ44の一部だけに沿って上記針との緊密な嵌合部を形成するように、選定することができる。
【0120】
いくつかの実施形態では、上記ガイドワイヤの遠位端部分には、このガイドワイヤの他の部分に比べて減少した直径があってもよい。このような減少した直径部分の寸法は、このガイドワイヤが上記針の遠位先端を越えて前進したときであっても、流体が上記針本体における窓穴56へ移動することができるように、選定することができる。
【0121】
図6Aは、図1Aに描かれた実施形態の送路体30の斜視図である。図6Bは、図6Aに例示された送路体30の平面図である。図6Cは、図6Aに例示された送路体30の側面図である。図6A−図6Cに示されたように、図示された実施形態における送路体30には、遠位部分120、近位部分122、この送路体を拡張器ハブ38へ接続する遠位固定部材124、針ハブ34が第1位置121から第2位置123まで送路体30に沿ってスライドしたときに針ハブ34の更なる遠位移動および近位移動を阻止する固定機構128、およびガイドワイヤハブ46が事前搭載状態あるいは第3位置125にあるときにガイドワイヤハブ46を送路体30へ取り付けることのできる固定機構130が備わっている。この送路体は、ポリカーボネート材料から作られているのが好ましい。しかしながら、以下に説明するように、他の材料を用いることができる。
【0122】
送路体30には、図6Aおよび図6Bに最も明確に示されたように、幅が減少した送路体部分132がさらに含まれていてもよい。この減少した幅によって、上記針ハブを送路体30へ組み付けることが容易になる。図示された実施形態には、送路体30の遠位部分120にリブ133が含まれている。このリブ133によって、遠位固定部材124と送路体30の残り部分との間に付加的な構造的補強がもたらされている。
【0123】
図1Aに例示されたように、遠位固定部材124は、拡張器24へ接続されているとともに、送路体30が拡張器24から遠位へ延出するのが可能にされている。例えば、固定部材124は、拡張器ハブ38のリップ77と拡張器ハブ38の基部79との間で拡張器ハブ38へ接続される2つの湾曲アーム124からなっていてもよい。この固定部材124によって、拡張器ハブ38に対する送路体30の遠位方向あるいは近位方向への移動が制限されるが、この送路体30は、拡張器ハブ38の周りに自由に回転することができる。
【0124】
図6Dは、図6Bに描かれた実施形態の一部の拡大図である。示されたように、固定機構128は、第2位置123の領域における上記送路体の幅を変更することによって形成されている。例えば、図示された実施形態には、遠位方向における幅が増大している送路体部分134、幅が増大しているこの送路体部分134の遠位における幅が減少した送路体部分136、および2つのフィンガ要素138が含まれている。これら2つのフィンガ要素138は、送路体部分136の遠位端から送路体30の近位端へ向かって突出しているとともに、送路体30の長手軸から外方へ広がっている。
【0125】
図6Eは、図6Bに描かれた実施形態の一部の拡大図である。固定機構130は、上記ガイドワイヤハブが上記第3位置にあるときにそのガイドワイヤハブの一部にあるいは送路体30の一部に係合するクリップ、クラスプあるいは他の構造体によって、形成されている。いくつかのあるいはすべての係合構造体は、送路体30の部材であってもよく、上記ガイドワイヤハブの部材であってもよく、あるいは送路体30と上記ガイドワイヤハブとの間で分けられていてもよい。図示された実施形態では、固定機構130は、送路体30から延出しているとともに上記ガイドワイヤハブに係合している。固定機構130には、送路体30から突出している長方形要素140、送路体30から長方形要素140の遠位へ突出している2つの送路体アーム142、および送路体30から送路体アーム142の遠位へ突出している当たり止め144が備わっている。
【0126】
図示された実施形態では、上記針ハブと上記拡張器との間の上記固定機構は上記拡張器ハブの近位側面に存在している。しかしながら、他の実施形態では、上記固定機構は他の箇所に同様に配置することができる。例えば、上記固定機構に、固定用ヒンジによって結合されている2つの枢動レバーが含まれているときには、その固定機構は、上記針ハブに対して半径方向に配置することができる。そのような実施形態では、一方のレバーは上記拡張器へ枢動状に接続されており、他方のレバーは上記針へ枢動状に接続されている。針ハブが拡張器ハブから離れると、これらのレバーは、上記ヒンジが固定される箇所へ向かってまっすぐになる。同様の効果は、拡張器に対する針ハブの特定箇所を越える近位移動を制限し、それによって、これらの構成要素を互いに固定するつなぎ綱によって得ることができる。さらに別の実施形態では、細長い構造体が、拡張器の内部で針本体に対して平行に針ハブから延出していてもよい。針ハブが拡張器から充分な距離だけ離れていったん移動すると、固定機構の付加的構造体(例えば、移動止め)が上記細長い構造体に係合して、拡張器に対する針の更なる移動が阻止される。従って、これらの付加的な3つの実施形態によって例示されたように、針と拡張器との間で作動する上記固定機構は、拡張器ハブに対してさまざまな箇所に配置することができる。
【0127】
図7Aは、ガイドワイヤで事前搭載された、図1Aに描かれた実施形態の接近装置の拡大平面図である。図7Bは、図7Aに描かれた実施形態の側面図である。図7Cは、図7Aに描かれた実施形態の7C−7C線に沿った断面図である。図7Dは、図7Aの接近装置20の近位端面図である。この事前搭載状態では、ガイドワイヤハブ46は、このガイドワイヤハブ46が第3位置125に配置されたときに、送路体30へ固定される。この位置では、ガイドワイヤハブ46は、長方形要素140と当たり止め144との間で送路体30へ固定することができる。例えば、ガイドワイヤハブ46は、長方形要素140と当たり止め144との間で解除可能に固定することができる。加えて、送路体アーム142はガイドワイヤハブ46を送路体30へさらに固定することができる。この固定機構によれば、ガイドワイヤハブ46が第3位置125にあるときに、少なくとも遠位方向におけるガイドワイヤ44の、意図されない回転移動および軸方向移動を阻止することができる。もちろん、医療サービス提供者は、接近装置20にわたる上記ガイドワイヤの遠位移動を可能にするために、ガイドワイヤハブ46を送路体30から係合解除させてもよい。
【0128】
図7A−図7Cに例示された事前搭載状態では、針ハブ34は、この針ハブ34が第1位置121にあるときに、拡張器ハブ38へ固定される。好ましいのは、この固定位置において、針および拡張器における上記開口あるいは上記窓穴が互いに整合されているか、あるいは位置合わせされていることである。針22および拡張器24が固定されると、意図されない互いに対する回転移動および軸方向移動が少なくともいくらか阻止される。針34に対する上記拡張器ハブの意図されない回転を阻止することによって、上記の窓穴あるいは開口は、それらの全体位置合わせが維持される。
【0129】
この事前搭載状態では、拡張器ハブ38はシースハブ42へ固定されている。これによって、拡張器24とシース26との間における意図されない回転移動および軸方向移動が少なくともいくらか阻止される。シースハブ42および拡張器24にルアー型スリップ接続部だけがあるときには、拡張器24およびシースハブ42は互いに対して回転することができる。
【0130】
図8Aは、図1Aに描かれた実施形態の平面図であって、接近装置20を使用する1つの方法の操作ステップを例示している。図8Aには、静脈のような血管148の中へ挿入された接近装置20の針本体32が描かれている。記載されたこの方法は血管接近法に言及しているが、接近装置20は、患者の身体の内部における他の箇所(例えば、膿瘍の排出のための箇所)に接近して、その中にカテーテルあるいはシースを配置するためと、他の目的のためとに使用することもできる。
【0131】
図8Bは、図8Aに例示された実施形態の、8B−8B線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図8Cは、図8Bに描かれた実施形態の、8C−8C線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図8Dは、図8Cに描かれた実施形態の、8D−8D線に沿った拡大断面図である。
【0132】
上記のように、針本体32には、その側壁に1つ以上の側面開口56がある。拡張器シャフト36には、1つ以上の側面開口74がある。これらの側面開口56、74には、同一のあるいは相異なる形状および縦横比があってもよい。図示された実施形態では、針本体32における側面開口56には、拡張器シャフト36における側面開口74とは異なる縦横比がある。針本体32における側面開口56は一方方向(例えば、針本体32の長手軸に対して実質的に平行である方向)に長くされている。拡張器シャフト36における側面開口74は異なった方向(例えば、拡張器シャフト36の円周に沿った方向)に長くされている。針本体32および拡張器シャフト36に偏位した細長い開口56、74があるので、針本体32および拡張器シャフト36における開口56、74が充分に位置合わせされ、それによって、血液が針側面開口56および拡張器側面開口57を通して流れる可能性が増大する。図8A−Dは、対応する側面開口の1組だけの間における整合を例示している。これらの側面開口の他の組もまた、針本体32と拡張器シャフト36との相対的方位に左右されるが、位置合わせしあるいは位置合わせ解除することができる。
【0133】
図示された実施形態では、拡張器シャフト36は、針本体32と拡張器シャフト36との間における環状空間150を最小限にするために、同軸に配置されている。拡張器シャフト36の内面152は、それが可能であるものの、針本体32の外面154に直接接している必要はない。好ましいのは、この実施形態において、針本体32の外面154と拡張器シャフト36の内面152との間における環状空間150が最小限にされていて、拡張器シャフト36と針本体32との間における環状空間150の中への血液あるいはその成分(あるいは他の体液)の流れが阻止されることである。好都合なことに、この特徴的構成によって、多数の外面への血液の接触が最小限にされるとともに、汚染、感染、および凝固のおそれが減少する。
【0134】
図8Aに例示されたように、拡張器シャフト36は、針本体32に設けられた1つの側面開口56の少なくとも一部が拡張器シャフト36における1つの側面開口74に回転状に位置合わせされるように、針本体32に同軸に取り付けられている。好ましいのは、針本体32および拡張器シャフト36が回転位置合わせを維持しており、それによって、血液が針側面開口56および拡張器側面開口74を通して流れることである。
【0135】
先に記載されたように、シース本体40は、透き通った材料、半不透明の材料、半透明の材料、あるいは透明の材料から、一部あるいは全体が製造されているのが好ましく、それによって、血液が、(1)針側面開口56を通して、(2)拡張器側面開口74を通して、また(3)流路156の中へ流れるときに、医師あるいは医療サービス提供者はその血液を見ることができる。いくつかの態様では、流路156は、拡張器シャフト36とシース本体40との間に形成されており、また、拡張器シャフト36における1つ以上の突条76によって画定されている。いくつかの態様では、流路156は、拡張器シャフト36の壁の内部に形成されており、その拡張器シャフト36は透明材料から構成されているのが好ましい。血液によって、医師あるいは医療サービス提供者は、針本体32の斜切先端54が血管148を穿刺したことを知らされる。
【0136】
いくつかの実施形態では、針本体32および拡張器シャフト36(両方)には、多数の側面開口があり、ここで、これらの側面開口のいくつかあるいは全部は回転状に位置合わせすることができる。
【0137】
流路156には、シース26の長さとほとんど同一の広がりのある軸方向長さがある。他の実施形態では、流路156は、この細長い流路156より著しく短くてもよい。例えば、流路156は、シース26の遠位部分、中間部分および/または近位部分の内部に配置されていてもよいが、これらに限定されることはない。代わりに、流路156は、シース26の軸方向長さに沿った直線形状、曲線形状あるいはらせん形状であってもよく、または、そのような形状の複数のものによって形成されていてもよい。流路156にはさまざまな深さおよびスパン角があってもよい。流路156の深さは、ほとんど0に近い値から0.010インチまでの範囲にあってもよい。好ましいのは、流路156に約0.0005インチ−約0.003インチの深さがあることである。いっそう好ましいのは、流路156に約0.001インチ−約0.002インチの深さがあることである。流路156には、拡張器24の軸に対して約30度−約210度以上の、しかし好ましくは360度よりも小さいスパン角Φがあってもよい。いっそう好ましいのは、流路156に約60−150度のスパン角Φがあることである。これらの深さおよびスパン角Φは、流体(例えば、全血)が流路156に入るときに流路156の内部に生じる毛管作用を最適化するように選定することができ、また、体腔における予想圧力とその液体の粘度とに基づいてさらに選定することもできる。
【0138】
図8E−図8Gは、上記スパン角が120度であり、接触角(θ)が5度であり、周方向長さ(H)が60度で0.64mmであるときに、流体がどれほど迅速に流路156の表面まで引き上げられるかを例示する試験データのグラフである。それぞれのグラフにおいて、充満長さ(mm)がy軸にプロットされ、また、時間(秒)がx軸にプロットされている。これらの試験は、末梢血管が受ける圧力に類似した流体力学上の圧力で実行された。図8Eは、流体が0.002インチの隙間高さ幅のある流路156まで引き上げられる速度を例示しており、図8Fは、流体が0.001インチの隙間高さ幅のある流路156まで引き上げられる速度を例示しており、また、図8Gは、流体が0.0005インチの隙間高さ幅のある流路156まで引き上げられる速度を例示している。図8E−Gに示されたように、流体は、0.0005インチの隙間高さ幅のある流路において最も速く引き上げられ、次が0.001インチの隙間高さ幅のある流路において速く、次が0.002インチの隙間高さ幅のある流路において速く引き上げられる。
【0139】
上記の流路156の形状およびその結果としての毛管作用は、全血とは異なる粘度がある他の流体(例えば、白血球、膿汁、尿、血漿)に対するものとして全血で使用するために最適化された。しかしながら、流路156の形状は、開示された形状に限定されることがなく、また、膿汁のような他の液体を排出するために最適化することができる。さらに、上記の流路156の形状は、血管における圧力によって毛管作用とその結果としての血液奔流とが促進される末梢に位置する血管のためと、上記圧力が低い領域に位置する血管のためとに最適化された。例えば、身体の胸郭領域では、静脈における予想圧力は、患者が呼吸するときの末梢に位置する静脈におけるそれよりも低いであろう。身体の他の領域における接近装置20の使用のために寸法の異なる流路は、血管あるいは体腔の内部における予想圧力を考慮に入れて採用することができる。
【0140】
加えて、拡張器シャフト36の外面160および/またはシース本体40の内面158は、流路156の内部における毛管作用を促進しあるいは増大させる物質で被覆することができる。例えば、親水性物質を用いて、拡張器シャフト36の外面160および/またはシース本体40の内面158を被覆して、毛管作用を増大させることができる。同様に、これらの構成要素の一方あるいは両方は親水性物質から作ることができる。親水性物質は、シース26を患者の体内へ容易に挿入するための潤滑剤として作用させるために、シース26の外面に塗布することができる。他の潤滑剤あるいは潤滑性コーティングをシース26の外面に使用することができ、あるいは、同シースの少なくとも外面を潤滑性物質から形成することができる。加えて、シース26は、接近装置20の臨床的用途を増大させるために、そのシースから溶出する物質(例えば、ヘパリン)で被覆するかあるいは形成することができる。
【0141】
図8Hは、図8Cに描かれた実施形態の、8H−8H線に沿った断面図である。図示された接近装置20のこの領域では、シース本体40は、シース本体40と拡張器シャフト36との間の環状空間157を最小限にするとともにシース本体40と拡張器シャフト36との相対移動を可能にするために、同軸に配置されている。シース本体40の内面158は、それが可能であるものの、拡張器シャフト36の外面160に直接接している必要はない。拡張器シャフト36の外面160とシース本体40の内面158との間の環状界接部157は、血液あるいはその成分(あるいは他の体液)が拡張器シャフト36における開口74から遠位方向へ流れるのを阻止するために、この領域で減少していてもよい。
【0142】
図8Iは、図8Aに例示された実施形態の、8I−8I線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図8Jは、図8Iに描かれた実施形態の断面図である。図8Iおよび図8Jは、針ハブ34が第1位置121にあるときに拡張器ハブ38へ固定された針ハブ34を例示している。拡張器シャフト36は、この拡張器シャフト36の中空部分84を針本体32に滑り嵌めるとともに拡張器ハブ38を針ハブ34へ取り外し可能に固定することによって、同軸に取り付けることができる。拡張器ハブ38の近位端86は、針ハブ34に機械的に嵌まるとともにそれと相互接続されるように構成されている。
【0143】
拡張器シャフト36は、この拡張器シャフト36が針本体32に対する同軸位置へ取り付けることができるとともに同軸位置から取り外すことができるように、あるいは、針本体32が拡張器シャフト36に対する同軸位置へ取り付けることができるとともに同軸位置から取り外すことができるように、針本体32へ取り外し可能に取り付けることができる。この固定機構によれば、針ハブ34が上記第1位置にあるときに、針22と拡張器24との間における意図されない回転移動および軸方向移動を少なくともいくらか阻止することができる。示されたように、針ハブ34には、拡張器ハブ38のルアー型接続部78へ固定されるルアー型接続部64があってもよい。さらにまた、針ハブ34には、拡張器ハブ38における開口82へ固定されるラッチ要素66がさらにあってもよい。
【0144】
加えて、図8Iおよび図8Jは、接近装置20が血管148の中へ挿入されたときにシースハブ42に係合した拡張器ハブ38を例示している。好ましいのは、シースハブ42の近位端86が、拡張器ハブ38に機械的に嵌まるとともにそれに取り外し可能に係合するように構成されていることである。示されたように、拡張器ハブ38の中におけるルアー型接続部80は、上記シースハブの固定部材94に係合することができる。その結果による摩擦嵌めによって、接近装置20が血管148の中へ挿入されたときに、拡張器24とシース26との間の意図されない回転移動および軸方向移動を少なくともいくらか阻止することができる。
【0145】
図9Aは、図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、接近装置20のさらに別の操作ステップを例示している。図9Aは、遠位方向に血管148の中まで前進した接近装置20のガイドワイヤ44を例示している。このことは、ガイドワイヤハブ46を第3位置125から遠位方向に前進させることによって達成することができる。ガイドワイヤハブ46はその後、針ハブ34が第1位置121にあるときに針ハブ34へ固定される。
【0146】
図9Bは、図9Aに例示された実施形態の、9B−9B線によって囲まれた部分の拡大側面図である。図9Cは、図9Bに描かれた実施形態の断面図である。図9Cは、ガイドワイヤハブ46と針ハブ34との間の固定機構を例示している。好ましいのは、ガイドワイヤハブ46が針ハブ34に機械的に嵌められているとともにそれに取り外し可能にあるいは不可逆的に相互接続されていることである。示されたように、ガイドワイヤハブ46には、このガイドワイヤハブ46の内面にこぶ162が含まれている。このガイドワイヤハブのこぶ162は、このこぶ162が針ハブ34の上記リップにおけるねじ付き溝の内部に固定されるまで、ガイドワイヤハブ46を遠位方向に前進させることによって、針ハブ34の上へ固定することができる。他の実施形態では、ガイドワイヤハブ46は、対応するねじ付き要素を介して針ハブ34へ固定することができる。
【0147】
図10Aは、図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、接近装置20のさらに別の操作ステップを例示している。図10Aは、血管148の中へ遠位方向に前進された拡張器シャフト36およびシース本体40を描いている。このことは、拡張器ハブ38を針ハブ34から取り外して、拡張器24およびシース26を上記のガイドワイヤおよび針に沿って針ハブ34に対して遠位方向に前進させることによって、達成することができる。図10Aはさらに、拡張器24およびシース26に対する針22およびガイドワイヤ部分28の近位方向への動きを例示している。針ハブ34は、この針ハブ34が第2位置123に到達したときに送路体30へ固定されるであろう。
【0148】
図10Bは、図10Aに描かれた実施形態の、10B−10B線によって囲まれた部分の拡大後面図である。図10Bに描かれたように、針ハブ34は、第2位置123において固定機構128を介して送路体30の上に固定される。針ハブ爪部68は、送路体フィンガ138を覆って近位方向にスライドし、また、この爪部68は、送路体フィンガ138と増大している幅の送路体部分134との間の箇所の中へ固定することができる。これによって、針ハブ34が第2位置123にあるときに、針本体32の少なくとも遠位方向への軸方向移動が阻止され、また、より好ましくは、実質的に不可逆的に防止される。図示された実施形態では、固定機構128によれば、針ハブ34がいったん係合すると、近位方向かあるいは遠位方向かのいずれか一方へ移動するのが不可逆的に防止される。さらにまた、針22の遠位先端54は、針ハブ34が第2位置123にあるときに、その遠位先端54をさやに納めるために、拡張器24の中へ引き込まれる。従って、この固定機構128によれば、拡張器シャフト36が使用の間に針本体32にわたっていったん前進すると、針本体32の遠位部分50に配置された斜切先端54が拡張器シャフト36の遠位端を越えて前進するのが阻止される。従って、拡張器シャフト36によって、針本体32の鋭利な斜切先端54がさやに納められて、不慮の針刺傷の発生が阻止される。
【0149】
図11Aは、図1Aに描かれた実施形態の側面図であり、接近装置20の最終操作ステップを例示している。図11Aは、血管148の内部に適切に挿入されたシース本体40を残して、その血管からガイドワイヤ44および拡張器シャフト36を取り外すことを例示している。図11Bは、図11Aに例示された実施形態の、11B−11B線によって囲まれた部分の拡大平面図である。図11Bに明確に示されたように、拡張器シャフト36の遠位端およびガイドワイヤ44は針本体32の鋭利な斜切先端54を越えて延出していて、不慮の針刺傷の発生が阻止される。
【0150】
上記のように、針本体32および拡張器シャフト36の中に相異なる縦横比の開口56、74があることによって、針本体32および拡張器シャフト36における開口56,74が位置合わせされて、血液が実質的に妨げられることなく、針側面開口56および拡張器側面開口74を通して流れる可能性が増大する。
【0151】
以下のいくつかの実施形態では、1つの実施形態からの構造であって、別の実施形態からの構造に類似している構造は、それぞれの実施形態に特有の添字を含む同一の基礎参照符号(32、32A、32B、など)を共有している。図12Aは、図8Bおよび図8Cに例示された針本体32および拡張器シャフト36における開口56、74の別の実施形態の平面図である。図12Bは、図12Aに描かれた実施形態の、12B−12B線に沿った拡大断面図である。図12Aおよび図12Bには、長円形の開口56Aがある針本体32Aおよび円形の開口74Aがある拡張器シャフト36Aが描かれている。他の実施形態では、針には円形開口があってもよく、拡張器には長円形開口があってもよい。これらの実施形態によれば、血液が針側面開口56Aおよび拡張器側面開口74Aを通して流れるように、開口56A、74Aが少なくとも実質的に位置合わせされる可能性が増大する。
【0152】
図13Aは、図8Bおよび図8Cに例示された針本体32および拡張器シャフト36における開口56、74の別の実施形態の平面図である。図13Bは、図13Aに描かれた実施形態の、13B−13B線に沿った拡大断面図である。図13Aおよび図13Bには、円形開口56Bがある針本体32Bと、この針本体32Bにおける円形開口56Bよりも大きい円形開口74Bがある拡張器シャフト36Bとが描かれている。他の実施形態では、拡張器における開口は針における開口より小さくてもよい。これらの実施形態によれば、血液が針側面開口56Bおよび拡張器側面開口74Bを通して流れるように、開口56B、74Bが少なくとも実質的に位置合わせされる可能性もまた増大する。
【0153】
上記のように、拡張器シャフト36には、シース本体40と拡張器シャフト36との間に管路あるいは流路を形成し、それによって、針本体32の斜切先端54が血管を適切に穿刺した後に医師あるいは医療サービス提供者が血液を観察することができるようにするために、突条76どうしの間に形成された1つ以上の流路156があってもよく、または、上記流路は、上記突条なしに、しかし、さまざまな可能な構成の軸方向くぼみを押出成形することによって、あるいは上記拡張器シャフトや上記針本体の内部に充分に閉じ込められた流路を形成することによって、形成されてもよい。
【0154】
図14Aは、図8Cに描かれた突条76の別の実施形態の平面図である。図14Bは、図8Dに描かれた突条76の別の実施形態の拡大断面図である。図14Aおよび図14Bには、シース本体40Cと拡張器シャフト36Cとの間に少なくとも1つの流路156Cを形成する、シース本体40Cの内面158Cにおける2つの突条76Cが描かれている。
【0155】
図15Aは、図8Cに描かれた突条76の別の実施形態の平面図である。図15Bは、図8Dに描かれた突条76の別の実施形態の拡大断面図である。図15Aおよび図15Bには、シース本体40Dと拡張器シャフト36Dとの間に流路156Dを形成するために組み合わされる、シース本体40Dの内面158Dにおける2つの突条76Dと、拡張器シャフト36Dの外面160Dにおける2つの突条76Eとが描かれている。例えば、所望の流路深さが約0.001インチであるときには、シース本体40Dの内面158Dにおける2つの突条76Dはそれぞれ、約0.0005インチの高さであり、また、拡張器シャフト36Dの外面160Dにおける2つの突条76Eはそれぞれ、約0.0005インチの高さである。
【0156】
図16Aは、図8Cに描かれた突条76の別の実施形態の平面図である。図16Bは、図8Dに描かれた突条76の別の実施形態の拡大断面図である。図16Aおよび図16Bには、拡張器シャフト36Eの外面160Eにおける多くの突条が描かれている。隣接するこれらの突条どうしの間はスプライン76Fである。これらのスプライン76Fによって、シース本体40と拡張器シャフト36Eとの間に複数の流路156Eが形成されている。これらの流路156Eの1つ以上には、同一のスパン角Φがあってもよく、相異なるスパン角Φがあってもよい。図示された実施形態では、流路156Eには、120度および23度のスパン角Φがある。別の実施形態では、1つの突条76は、拡張器の外面の周りにおける、その長さに沿ったらせん状のものであってもよい。
【0157】
図17は、接近装置の別の実施形態における拡大断面図であり、また、相異なる形状を有する医療物品あるいはシース本体40Fと拡張器シャフト36Fとの間に形成された流路156Fを示している。図示された実施形態では、拡張器シャフト36Fの外面に長円形形状があり、シース本体40Fの内面に円形形状がある。長円形の拡張器シャフト36Fと、隣接する円形のシース本体40Fとによって、シース本体40Fと拡張器シャフト36Fとの間に、1つ以上の流路あるいは隙間156Fが形成されている。もちろん、シース本体40Fおよび拡張器シャフト36Fの形状は、円形および長円形に限定されることはなく、また、シース本体40Fおよび拡張器シャフト36Fの隣接領域における相異なる形状の他のあらゆる組み合わせを含むことができる。いくつかの態様では、拡張器シャフト36Fの外面は長円形であり、シース本体あるいは医療物品40Fの内面は円形である。いくつかの態様では、拡張器シャフト36Fの外面は円形であり、医療物品40Fの内面は正方形である。隙間あるいは流路156Fは、長手軸に追従するものであってもよく、その長手軸に沿ったらせん状通路、その長手軸に沿った直線状通路、あるいはこの接近装置に沿った他の通路に追従するものであってもよい。いくつかの態様では、上記直線状通路は上記長手軸に対して平行である。隙間あるいは流路156Fの深さは、この隙間あるいは流路156Fの長さの少なくとも一部に沿って変化してもよい。
【0158】
他の実施形態では、流路156は、上記シースの内面に1つの完全な突条を設けるとともに、上記拡張器の外面に1つの完全な突条を設けることによって、形成することができる。他の実施形態では、上記シースの内面に、流路156の長さの50%にわたって延出する2つの突条があり、かつ、上記拡張器の外面に、流路156の残り50%にわたって延出する2つの突条があってもよい。
【0159】
図18Aは、接近装置20’の別の好ましい実施形態の斜視図である。図示されたように、シースハブ42’には、可撓性中空体200のような可変容積空間が含まれている。他の実施形態では、可撓性中空体のようなこの可変容積空間は、拡張器ハブ38あるいは針ハブ34のような別のハブの表面に配置することができる。例えば、いくつかの実施形態では、この明細書に記載されたように、拡張器シャフトとシース本体との間に空間を作り出すために用いられたものに類似した方法で、奔流用のチャンバあるいは空間を拡張器シャフトと針本体との間に設けることができる。針本体と拡張器シャフトとの間における空間のいくつかの例には、国際公開番号WO2009/114837(2009年9月17日に発行され、かつ、参照によってその全体がこの明細書の中に組み入れられた)の図18A−図18Cおよび関連本文が含まれている。同様に、いくつかの実施形態では、上記拡張器がないとき、あるいは、上記シースもまたそれ自体の拡張器として機能するときなどに、奔流用のチャンバあるいは空間を針本体とシース本体との間に設けることができる。さらに一般的には、奔流用のチャンバあるいは空間を、上記針本体の外面と上記針本体へ直接あるいは間接的に取り付けられた医療物品の内面との間の任意部分に設けることができる。可撓性中空体200には、上記空間の内部の容積を変更するような少なくとも1つの可撓壁があるが、上記可変容積空間は、互いに対して移動する2つ以上の構成要素(例えば、ピストン−シリンダ構成体)の間に画定することができる。
【0160】
図18Bおよび図18Cに描かれたように、可撓性中空体200には半球の形状があってもよいが、他の実施形態では、それには、概ね長方形、ピラミッド形状、あるいはその他の形状のような異なった形状があってもよい。描かれた可撓性中空体200は、シースハブ42’から側方へ延出しているとともに、そのシースハブにおけるハブ開口205に通じている。このハブ開口205は、可撓性中空体200を、この明細書に記載されたようなシース本体40と拡張器シャフト36との間における上記流路あるいは概ね環状の空間のような流体奔流空間に連通させることができる。他の実施形態では、同様の可撓性中空体を、例えば、拡張器ハブ38あるいは上記針ハブの表面に配置することができるとともに、拡張器シャフト36と針本体32との間の環状空間あるいは流路に連通させることができる。例えば、いくつかの実施形態では、奔流空間を針本体32と拡張器シャフト36との間に配置することができるとともに、この明細書に記載されたような可撓性中空体をそれに連通させることができる。そのような実施形態では、拡張器シャフト36における側面窓穴は、実質的に同様な機能を維持しながら、省略することができる。さらに別の実施形態では、可撓性中空体200は、この明細書に記載された他の空間、または、上記針先端に直接あるいは間接的に連通している同様の空間のいずれにも、連通させることができる。上記可変容積チャンバは、上記ハブどうしの間に、あるいは上記ハブの前方に配置することもできる。
【0161】
図18Bに描かれたように、可撓性中空体200は、初めは収縮されている。典型的には、人間の手が、可撓性中空体200を押し下げて、それを圧迫位置に保持することによって、あるいは他のいくつかの手段によって、その中空体を収縮状態に保持することができる。しかしながら、他の実施形態では、それは、接近装置20’の他のグリップ部分と一体化された機械的収縮機構によって、収縮状態に保持することができる。いくつかの好ましい実施形態では、可撓性中空体200は、接近装置20’をシースハブ42’で保持する手によってもまた、その可撓性中空体が収縮するように、配置しかつ構成することができる。同様に、可撓性中空体200が拡張器ハブかあるいは針ハブの表面にある実施形態では、その可撓性中空体は、上記ハブでこの装置を保持する手によってもまた、その可撓性中空体が収縮するように、構成することができる。
【0162】
可撓性中空体200は、患者の体内に入ると、解放されて、自由に拡張することができる(図18Cに描かれたように)。この目的を達成するために、可撓性中空体200は、解放されたときのこの拡張装置へ、自然に向かうかあるいは強制的に向けられる。患者の体外では、これによって、描かれた実施形態の可撓性中空体200は、針本体32を通過する空気で満たされるであろう。しかしながら、可撓性中空体200が患者の体内にある間に収縮状態で解放されたときに、針32が静脈のような身体空間を満たした流体の中に入ると、解放されたこの中空体によって作られた負圧によって、体液の取り込みが促進されるが、このことは以下でさらに説明される。
【0163】
血液奔流のような体液の取り込みは、接近装置20’に関連した摩擦抵抗と接近装置20’の内側の圧力とによって、加速されるかあるいは阻止されることがある。さらに、取り込みは、関連流体の圧力とともに増大することがある。いくつかの実施形態では、収縮した可撓性中空体200からの上記抵抗および負圧は、その可撓性中空体が血管の中へ入ったときにはそれが満たされるが、一般的な包囲体内組織の中ではそれが満たされないように、選定することができる。負圧の付加によって、中心静脈のようなより低い圧力環境からでも、体液の取り込みを促進することができる。代わりの実施形態では、もたらされる負圧は、より高い血圧があり、従って、より小さい負圧を利用することのできる動脈のような他の血管からの取り込みを指示するように、選定することができる。以下でさらに説明されるように、いくつかの実施形態では、術者は、もたらされる負圧の大きさを手術中に選定することができる。
【0164】
上記負圧を維持するために、上記可変容積チャンバおよびそれが連通する上記空間は、周囲雰囲気から封止することができる。例えば、シースハブ42’は、O−リング、ボドック(Bodok)シール、ガスケットのような封止材料、あるいは他の柔軟な非多孔性材料を含んでいてもよく、または、これらに係合してもよい。従って、この封止部材によれば、シースハブ42’と拡張器ハブのような接近装置20’の別の部品との間における気体の透過を阻止することができる。他の実施形態では、封止部材は、この明細書に記載された他の部品どうしの間に設けることができる。さらに、いくつかの実施形態では、封止部材は、シース本体40、拡張器シャフト36、および/または針本体32の間に設けることができる。例えば、シース本体40および拡張器シャフト36は、少なくとも1つの部分では、同シース本体が同拡張器シャフトの表面に取り付けられるときに封止部を作り出すような寸法に作ることができる。同様に、拡張器シャフト36および針本体32は、少なくとも1つの部分では、同拡張器シャフトが同シース本体に取り付けられるときに封止部を作り出すような寸法に作ることができる。
【0165】
従って、手術において、可撓性中空体200は、患者の体外で初めは収縮させることができる。接近装置20’が患者の体内に入ると、可撓性中空体200は解放されて、流体を接近装置20’の中へ引き込む傾向のある負圧が作られる。可撓性中空体200は、血管の中に入ると、血液が接近装置20’の中へ引き込まれるように、また、その血液によって空気が可撓性中空体200の中へ押しのけられるように、拡張することができる。可撓性中空体200からの付加された負圧によって、接近装置20’の中への血液の取り込みが加速される。接近装置20’に例えば透明なシースが含まれているときには、接近装置20’の術者は、静脈進入のより迅速な表示を受けることができる。
【0166】
図19は、この発明によって構成された接近装置の別の好ましい実施形態の斜視図である。図示されたように、シースハブ42’へ直接接続された可撓性中空体200の代わりに、シースハブ42’’を、ポンプ215まで延びているチューブ210へ取り付けることができる。このチューブ210は、一方向バルブ220を介してシースハブ42’へ接続することができる(例えば、患者の体内への空気の注入を防止するために)。同様に、ポンプ215は、一方向バルブ225を介して周囲空気に連通することができる。従って、ポンプ215によって、可撓性中空体200に関して記載されたものと同様の負圧がもたらされる。加えて、チューブ210は、拡張器ハブあるいは針ハブに関してのように、可撓性中空体200に関して論述されたように、接近装置20’’の他の部分へ接続することができる。いくつかの実施形態では、負圧は、ポンプ215に代えて、あるいはポンプ215に加えて、注射器によってもたらすことができる。上で論述したように、さまざまな封止部材には、バルブ220、225のような接近装置20’’が含まれていてもよい。
【0167】
図18における実施形態と図19における実施形態とを組み合わせてもよいということは、この明細書における記載から明らかであろう。例えば、いくつかの実施形態では、可撓性中空体200およびポンプ215を組み合わせて、増大した負圧を作り出すことができる。他の実施形態には、同一あるいは相異なる型の多数の可変容積チャンバが含まれていてもよい。好都合なことに、多数のチャンバが備わったそれらの実施形態では、術者は、特定のチャンバ組を収縮させることで、加える負圧の程度を選定することができる。例えば、1つの実施形態では、2つのチャンバに、関連した相異なる負圧をもたらすことができる。より大きいチャンバは、静脈のような低圧血管の中への進入の表示を術者が望むときには、収縮させることができ、また、より小さいチャンバは、動脈のような高圧血管のために意図することができる。これに加えて、あるいはこれに代えて、チャンバは、新生児の動脈あるいは静脈に必要である負圧のために構成することができる。さらに別の実施形態では、多数のチャンバは、組み合わされた負圧をもたらすために、一度に稼働することができる。とりわけ、いくつかの実施形態では、いずれのチャンバも稼働させないという付加的選択肢を発動させるために、上記高圧血管からの体液取り込みのための負圧は必要ないであろう。
【0168】
いくつかの好ましい実施形態では、採用された可変容積チャンバの合計最大容積は、それらが連通する上記空間の容積に劣るものではない。例えば、単一の可変容積チャンバだけがある実施形態では、そのチャンバの最大容積は、それが連通する奔流空間の容積よりも大きいかあるいはその容積に等しいであろう。2つの可変容積チャンバが使用されるときには、それらの最大容積の合計は、上記奔流空間の容積よりも大きいかあるいはその容積に等しいであろう。同様の調整を多数の奔流空間のためにもたらすことができる。さらに、この明細書における記載は一般に、空気で満たされるようなチャンバの特徴を表しているが、それらのチャンバは体液で満たされるものでもよく、一例の実施形態には、上記奔流空間の容積よりも大きいチャンバの容積がある。
【0169】
図20は、接近装置の別の実施形態の斜視図である。図示されたように、この接近装置には、他の実施形態における上記のそれらに類似した針22とガイドワイヤ44とが備わっている。さらに、この接近装置には、拡張器24に概ね類似した構造のあるカテーテル300が含まれている。さらに、このカテーテル300には、シースに関して上で論述されたように、部分的に半透明あるいは透明である細長い本体があってもよい。さらに、このカテーテルには、上記針における対応する固定構造体に取り外し可能に固定されるように構成された固定構造体の備わったハブが含まれていてもよい。これらの固定構造体は、図2E、図2F、図2G、図3B、および図3Dに描かれたように、上記針を上記拡張器へ接続するための上記のそれらに類似していてもよい。上記カテーテルと上記針との間における上記固定構造体によれば、それらどうしの間の意図的でない全相対移動を防止することができ、また、必要であれば、上記針を上記カテーテルに対してスライドさせることができるようにするために、上記針を取り外すことができる。
【0170】
奔流空間は、針22とカテーテル300の本体の外面との間に配置することができ、また、奔流空間は、上記針の内部における体液が同空間の中へ流入することができるように、かつ、その体液を上記カテーテル本体の半透明部分あるいは透明部分を通して見ることができるように、上記針本体の内部に連通することができる。
【0171】
いくつかの実施形態では、固定構造体は、ルアー型固定接続体、ねじ付き固定構造体、取り外し可能な固定構造体、あるいはこれらのいくつかの組み合わせである。好ましいのは、いくつかの実施形態において、1つの固定構造体が医療装置継手で固定することができるように、かつ、別の固定構造体が上記針固定構造体で固定することができるように、複数の固定構造体をカテーテル300のハブに設けることができることである。
【0172】
さらに、図20の実施形態をこの明細書に記載された他の実施形態に組み合わせることができる(上記他の実施形態どうしを互いに組み合わせることができるように)ということは、この明細書における記載から明らかであろう。例えば、図20の実施形態には、負圧要素あるいは可変容積チャンバもまた含まれていてもよい。
【0173】
さらに別の実施形態では、接近装置による体液の取り込みをさらに加速するために、界面活性剤を用意することができる。この界面活性剤は体液に接している任意の表面に適用することができる。従って、例えば、図18Aの実施形態では、界面活性剤は、針本体、拡張器シャフト、シース本体、および/またはシースハブのいずれか1つに適用することができる。
【0174】
付加的な実施形態では、周囲雰囲気への空気の流出を可能にするとともに流体の流出を阻止することは望ましいであろう。そのような実施形態では、多孔性膜のような濾過部材、充分に小さい細孔、あるいは他の要素を接近装置20’へ設けることができる。例えば、空気が可撓性中空体200あるいはポンプ215の中へ入り込むことができるものの、血液のような体液の通過が阻止されるように、多孔性膜をハブ開口205にわたって設けることができる。他の実施形態では、そのような濾過部材は、チューブ215の内部に、バルブ220、225に、あるいは流体を見ることのできる奔流空間の内部に、配置することができる。
【0175】
この明細書に記載された実施形態は、常用の生体適合性材料から構成されている。例えば、上記針は、セラミック、硬質ポリマー、または、ステンレス鋼、ニチノールなどのような金属から構成されているのが好ましい。他の諸要素は、ポリカーボネート、ナイロン、ポリエチレン、高密度ポリエチレン、ポリプロピレン、フルオロポリマー、およびパーフルオロ(エチレン−プロピレン)コポリマーのようなコポリマー、ポリウレタンのポリマーあるいはコポリマーのような適切な高分子材料から形成することができる。
【0176】
上記のように、この発明による接近装置は、カテーテルを患者の体内における他の箇所に配置するために使用することができる。従って、例えば、この接近装置は、膿瘍から流体を排出するために、胸腔から空気を排出するために、また、腹腔へ接近するために、さまざまなカテーテルとして、あるいはさまざまなカテーテルとともに使用することができるが、これらに限定されることはない。そのような用途では、体液は、上記針が適切に配置された時点を表示するための観察空間の中へ流入する。
【0177】
この発明はいくつかの好ましい実施形態および実施例の状況において開示されてきたが、当業者は、この発明が、特に開示された実施形態を越えて他の代わりの実施形態まで拡張され、かつ/または、この発明、明らかな修正例およびその均等物の使用に拡張される、ことを理解するであろう。加えて、この発明の多くの変形例が示されるとともに詳細に記載されてきたが、当業者にとっては、この発明の適用範囲内にある他の修正例が、この開示に基づいて容易に明らかになるであろう。これらの実施形態の特定の特徴的構成および様相のさまざまな組み合わせあるいは部分組み合わせは、行うことができるとともに、この発明の適用範囲内に依然として属している、ということも予想される。従って、開示されたこの発明のさまざまな態様を形成するためには、開示された実施形態のさまざまな特徴的構成および様相を互いに組み合わせたり、あるいは互いに置き換えたりすることができる、ということを理解すべきである。従って、この明細書に開示されたこの発明の適用範囲は、上記の特定の開示実施形態によって限定されるべきでなく、この開示およびそれに従う特許請求の範囲の正しい読み取りによってのみ決定すべきである、ということが意図されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
穴が構成されている針、
この針の少なくとも一部にわたって配置され、かつ、外面が構成されている医療物品、
前記針と前記医療物品の前記外面との間に配置され、前記針の前記穴に連通している奔流空間、および
前記奔流空間から流体を引き込むように前記奔流空間に連通している可変容積チャンバ
を備えてなる、医療物品を身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項2】
その表面に前記医療物品が取り付けられるハブをさらに備えている、請求項1に記載の接近装置。
【請求項3】
前記可変容積チャンバは、前記ハブにおける窓穴を通して前記奔流空間に連通しており、この窓穴は、前記可変容積チャンバによって封止される、請求項2に記載の接近装置。
【請求項4】
前記医療物品は拡張器である、請求項1に記載の接近装置。
【請求項5】
前記医療物品はシースである、請求項1に記載の接近装置。
【請求項6】
前記シースの表面に取り付けられたシースハブをさらに備え、かつ、前記可変容積チャンバは、拡張器ハブを介して前記奔流空間に連通している、請求項5に記載の接近装置。
【請求項7】
拡張器をさらに備えている、請求項5に記載の接近装置。
【請求項8】
前記拡張器の表面に取り付けられた拡張器ハブをさらに備え、かつ、前記可変容積チャンバは、この拡張器ハブを介して前記奔流空間に連通している、請求項4および7のいずれかに記載の接近装置。
【請求項9】
前記奔流空間は、前記針と前記拡張器との間に設置されている、請求項4および7のいずれかに記載の接近装置。
【請求項10】
前記奔流空間は、前記拡張器と前記シースとの間に設置されている、請求項7に記載の接近装置。
【請求項11】
前記可変容積チャンバは、前記奔流空間に直接、連通している、請求項1から10のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項12】
前記可変容積チャンバは、変形可能な壁を備えている、請求項1から11のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項13】
前記可変容積チャンバは、ピストン−シリンダ組立体を備えている、請求項1から12のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項14】
前記針は、側面窓穴を含んでおり、前記奔流空間は、この側面窓穴を通して前記針の前記穴に連通している、請求項1から13のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項15】
前記可変容積チャンバは、拡張位置へ向けて偏倚されており、前記チャンバは、この拡張位置においてより大きい容積を有している、請求項1から14のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項16】
前記可変容積チャンバは、静脈、動脈、および体腔からなる群から選択された体腔から体液を引き出すために充分な負圧をもたらす、請求項1から15のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項17】
前記可変容積チャンバと周囲雰囲気との間における気体の移動を阻止する封止部材をさらに備えている、請求項1から16のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項18】
シースハブが前記封止部材を備え、かつ、前記封止部材は、シースハブと拡張器ハブとの間における気体の移動を阻止する、請求項17に記載の接近装置。
【請求項19】
前記封止部材は、O−リング、ボドックシール、およびガスケットからなる群から選択されている、請求項18に記載の接近装置。
【請求項20】
前記奔流空間に連通する複数の可変容積チャンバを備えている、請求項1から19のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項21】
採用された1つあるいは複数の可変容積チャンバの合計最大容積は、前記奔流空間の容積に劣るものではない、請求項1から20のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項22】
穴が構成されている針、
この針の少なくとも一部にわたって配置され、かつ、外面が構成されている医療物品、
前記針と前記医療物品の前記外面との間に配置され、前記針の前記穴に連通している奔流空間、
第1端部で前記奔流空間に連通し、かつ、第2端部をさらに備えている延出状通路、
チューブの第2端部に連通する負圧要素、および
前記負圧要素、前記通路、あるいは前記奔流空間の少なくとも1つに設けられ、空気の移行を可能にするが体液の移行を阻止する濾過部材
を備えてなる、医療物品を身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項23】
その表面に前記医療物品が取り付けられるハブをさらに備え、前記延出状通路は、前記ハブを介して前記奔流空間に連通している、請求項22に記載の接近装置。
【請求項24】
前記医療物品は拡張器である、請求項22および23のいずれかに記載の接近装置。
【請求項25】
前記医療物品はシースである、請求項22および23のいずれかに記載の接近装置。
【請求項26】
前記負圧要素は注射器からなっている、請求項22から25のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項27】
前記負圧要素はポンプからなっている、請求項22から26のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項28】
前記濾過要素は多孔性膜からなっている、請求項22から27のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項29】
前記延出状通路はチューブである、請求項22から28のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項30】
前記負圧要素と前記奔流空間との間に配置された一方向バルブをさらに備えている、請求項22から29のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項31】
前記負圧要素と周囲雰囲気との間に配置された一方向バルブをさらに備えている、請求項22から30のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項32】
前記一方向バルブは、前記負圧要素と周囲雰囲気との間の直接連通を可能にする、請求項31に記載の接近装置。
【請求項33】
複数の負圧要素を備えている、請求項22から32のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項34】
前記針と前記医療物品との間における固定構造体をさらに備えている、請求項22から33のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項35】
接近装置を体腔の中へ挿入するステップであって、該接近装置が、針、医療物品、この針とこの医療物品の外面との間に配置された奔流空間、およびこの奔流空間に連通する可変容積チャンバを備えてなり、ここで、該可変容積チャンバが、収縮された低容積位置にあるステップ、
体液を前記体腔から前記奔流空間の中へ引き込むのに充分である負圧を該可変容積チャンバの中に作り出すために、該可変容積チャンバの容積を拡張するステップ、および
前記奔流空間における前記体液を該接近装置の外側から観察するステップ
を含んでいる、体腔へ接近する方法。
【請求項36】
該可変容積チャンバの容積を拡張する前記ステップは、該可変容積チャンバを解放することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
容積を拡張する前記ステップは、該可変容積チャンバの解放時に該可変容積チャンバを自動的に拡張させることをさらに含んでいる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記針と前記医療物品との間における相対移動を阻止するために、前記針を前記医療物品へ固定するステップ、および
前記針を前記医療物品から固定解除するステップ
をさらに含んでいる、請求項35から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
遠位端のある細長い針本体、この針本体から延出しているハブ、およびこのハブの表面に配置された固定構造体を備えている針、および
前記針本体の表面に配置され、前記針本体に対して可動であるカテーテル
を備えてなり、
前記カテーテルは、可撓性カテーテル本体と、前記針と前記カテーテルとの間の相対移動を阻止するために、前記針の固定構造体に相互係合するように構成された固定構造体とからなり、前記カテーテルの固定構造体は、さらに医療用継手にも相互係合するように構成されており、
前記針と前記カテーテルとの間に拡張器がない、
カテーテルを身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項40】
前記固定構造体は、前記のカテーテルと針とが隣接しているときに、そのカテーテルと針との間の相対移動を防止する、請求項39に記載の接近装置。
【請求項41】
前記カテーテルは、体腔の中に挿入されたときに、それを貫く空いた流路を維持するために、ねじれることのない極限角度で安全に曲げることができるように構成されている、請求項39および40のいずれかに記載の接近装置。
【請求項42】
前記カテーテルは、前記針によって作り出された穴を拡張するための充分な構造的強度を有していない、請求項39から41のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項43】
前記カテーテルは、自立型のものではなく、かつ、前記針によって支持されていないときには、重力のもとで実質的に下方へ傾斜する、請求項39から42のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項44】
遠位端のある細長い針本体、この針本体から延出しているハブ、およびこのハブの表面に配置された固定構造体を備えている針、
前記針本体の表面に少なくとも部分的に配置され、かつ、少なくとも部分的に半透明あるいは透明である細長いカテーテル本体、およびこのカテーテル本体から延出しているハブを備えているカテーテルであって、そのハブは、前記針とこのカテーテルとの間の意図的でない全相対移動を防止するために、前記針の固定構造体に取り外し可能に固定されるように構成された、かつ、前記針の固定構造体から取り外して、前記針をこのカテーテルに対してスライドさせることができるように構成された固定構造体を含んでいるカテーテル、
前記針と前記カテーテル本体の外面との間に配置された奔流空間であって、前記針本体の内部における体液が、この空間の中へ流入するように、かつ、前記カテーテル本体の半透明あるいは透明の部分を通して見えるように、前記針本体の内側に連通している奔流空間、および
前記針の中へ事前搭載され、前記針本体の長さよりも長い長さを有しているとともに、前記針本体を介してスライドすることのできるガイドワイヤ
を備えてなる、カテーテルを身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項45】
前記カテーテルハブの固定構造体は、医療物品の表面におけるルアー型固定接続体継手に係合するように構成されている、請求項44に記載の接近装置。
【請求項46】
前記カテーテルハブの固定構造体は、ねじ山を含んでいる、請求項44および45のいずれかに記載の接近装置。
【請求項47】
前記カテーテルハブの固定構造体は、医療用継手に取り外し可能に固定されるようにさらに構成されている、請求項44から46のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項48】
前記カテーテルハブの固定構造体は、第1固定構造体要素と第2固定構造体要素とを備え、該第1固定構造体要素が、医療装置継手に取り外し可能に固定されるように構成され、該第2固定構造体要素が、前記針の固定構造体に取り外し可能に固定されるように構成されている、請求項44から47のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項49】
前記カテーテルハブの固定構造体と前記針ハブの固定構造体とは、前記カテーテルハブが前記針ハブに隣接して配置されたときに相互接続される、請求項44から48のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項50】
前記カテーテルは、ねじれることなく鋭角で曲がるように構成されている、請求項44から49のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項51】
前記カテーテルは、前記針によって作り出された穴を拡張するための充分な軸方向構造的強度を有していない、請求項44から50のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項52】
前記カテーテルは、自立型のものではなく、かつ、前記針によって支持されていないときには、重力のもとで実質的に下方へ傾斜する、請求項44から51のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項53】
前記奔流空間に連通している負圧要素を付加的に備えている、請求項44から52のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項54】
前記ガイドワイヤは、近位端と遠位端とを含んでおり、該遠位端が、前記針本体の内部に配置され、該近位端が、前記針の外側に配置されたこのガイドワイヤの遠位部分を前記針の軸から離れるように曲げることができるようにして、前記針ハブから外して廃棄することのできるものである、請求項44から53のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項1】
穴が構成されている針、
この針の少なくとも一部にわたって配置され、かつ、外面が構成されている医療物品、
前記針と前記医療物品の前記外面との間に配置され、前記針の前記穴に連通している奔流空間、および
前記奔流空間から流体を引き込むように前記奔流空間に連通している可変容積チャンバ
を備えてなる、医療物品を身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項2】
その表面に前記医療物品が取り付けられるハブをさらに備えている、請求項1に記載の接近装置。
【請求項3】
前記可変容積チャンバは、前記ハブにおける窓穴を通して前記奔流空間に連通しており、この窓穴は、前記可変容積チャンバによって封止される、請求項2に記載の接近装置。
【請求項4】
前記医療物品は拡張器である、請求項1に記載の接近装置。
【請求項5】
前記医療物品はシースである、請求項1に記載の接近装置。
【請求項6】
前記シースの表面に取り付けられたシースハブをさらに備え、かつ、前記可変容積チャンバは、拡張器ハブを介して前記奔流空間に連通している、請求項5に記載の接近装置。
【請求項7】
拡張器をさらに備えている、請求項5に記載の接近装置。
【請求項8】
前記拡張器の表面に取り付けられた拡張器ハブをさらに備え、かつ、前記可変容積チャンバは、この拡張器ハブを介して前記奔流空間に連通している、請求項4および7のいずれかに記載の接近装置。
【請求項9】
前記奔流空間は、前記針と前記拡張器との間に設置されている、請求項4および7のいずれかに記載の接近装置。
【請求項10】
前記奔流空間は、前記拡張器と前記シースとの間に設置されている、請求項7に記載の接近装置。
【請求項11】
前記可変容積チャンバは、前記奔流空間に直接、連通している、請求項1から10のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項12】
前記可変容積チャンバは、変形可能な壁を備えている、請求項1から11のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項13】
前記可変容積チャンバは、ピストン−シリンダ組立体を備えている、請求項1から12のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項14】
前記針は、側面窓穴を含んでおり、前記奔流空間は、この側面窓穴を通して前記針の前記穴に連通している、請求項1から13のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項15】
前記可変容積チャンバは、拡張位置へ向けて偏倚されており、前記チャンバは、この拡張位置においてより大きい容積を有している、請求項1から14のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項16】
前記可変容積チャンバは、静脈、動脈、および体腔からなる群から選択された体腔から体液を引き出すために充分な負圧をもたらす、請求項1から15のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項17】
前記可変容積チャンバと周囲雰囲気との間における気体の移動を阻止する封止部材をさらに備えている、請求項1から16のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項18】
シースハブが前記封止部材を備え、かつ、前記封止部材は、シースハブと拡張器ハブとの間における気体の移動を阻止する、請求項17に記載の接近装置。
【請求項19】
前記封止部材は、O−リング、ボドックシール、およびガスケットからなる群から選択されている、請求項18に記載の接近装置。
【請求項20】
前記奔流空間に連通する複数の可変容積チャンバを備えている、請求項1から19のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項21】
採用された1つあるいは複数の可変容積チャンバの合計最大容積は、前記奔流空間の容積に劣るものではない、請求項1から20のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項22】
穴が構成されている針、
この針の少なくとも一部にわたって配置され、かつ、外面が構成されている医療物品、
前記針と前記医療物品の前記外面との間に配置され、前記針の前記穴に連通している奔流空間、
第1端部で前記奔流空間に連通し、かつ、第2端部をさらに備えている延出状通路、
チューブの第2端部に連通する負圧要素、および
前記負圧要素、前記通路、あるいは前記奔流空間の少なくとも1つに設けられ、空気の移行を可能にするが体液の移行を阻止する濾過部材
を備えてなる、医療物品を身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項23】
その表面に前記医療物品が取り付けられるハブをさらに備え、前記延出状通路は、前記ハブを介して前記奔流空間に連通している、請求項22に記載の接近装置。
【請求項24】
前記医療物品は拡張器である、請求項22および23のいずれかに記載の接近装置。
【請求項25】
前記医療物品はシースである、請求項22および23のいずれかに記載の接近装置。
【請求項26】
前記負圧要素は注射器からなっている、請求項22から25のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項27】
前記負圧要素はポンプからなっている、請求項22から26のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項28】
前記濾過要素は多孔性膜からなっている、請求項22から27のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項29】
前記延出状通路はチューブである、請求項22から28のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項30】
前記負圧要素と前記奔流空間との間に配置された一方向バルブをさらに備えている、請求項22から29のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項31】
前記負圧要素と周囲雰囲気との間に配置された一方向バルブをさらに備えている、請求項22から30のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項32】
前記一方向バルブは、前記負圧要素と周囲雰囲気との間の直接連通を可能にする、請求項31に記載の接近装置。
【請求項33】
複数の負圧要素を備えている、請求項22から32のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項34】
前記針と前記医療物品との間における固定構造体をさらに備えている、請求項22から33のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項35】
接近装置を体腔の中へ挿入するステップであって、該接近装置が、針、医療物品、この針とこの医療物品の外面との間に配置された奔流空間、およびこの奔流空間に連通する可変容積チャンバを備えてなり、ここで、該可変容積チャンバが、収縮された低容積位置にあるステップ、
体液を前記体腔から前記奔流空間の中へ引き込むのに充分である負圧を該可変容積チャンバの中に作り出すために、該可変容積チャンバの容積を拡張するステップ、および
前記奔流空間における前記体液を該接近装置の外側から観察するステップ
を含んでいる、体腔へ接近する方法。
【請求項36】
該可変容積チャンバの容積を拡張する前記ステップは、該可変容積チャンバを解放することを含む、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
容積を拡張する前記ステップは、該可変容積チャンバの解放時に該可変容積チャンバを自動的に拡張させることをさらに含んでいる、請求項36に記載の方法。
【請求項38】
前記針と前記医療物品との間における相対移動を阻止するために、前記針を前記医療物品へ固定するステップ、および
前記針を前記医療物品から固定解除するステップ
をさらに含んでいる、請求項35から37のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
遠位端のある細長い針本体、この針本体から延出しているハブ、およびこのハブの表面に配置された固定構造体を備えている針、および
前記針本体の表面に配置され、前記針本体に対して可動であるカテーテル
を備えてなり、
前記カテーテルは、可撓性カテーテル本体と、前記針と前記カテーテルとの間の相対移動を阻止するために、前記針の固定構造体に相互係合するように構成された固定構造体とからなり、前記カテーテルの固定構造体は、さらに医療用継手にも相互係合するように構成されており、
前記針と前記カテーテルとの間に拡張器がない、
カテーテルを身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項40】
前記固定構造体は、前記のカテーテルと針とが隣接しているときに、そのカテーテルと針との間の相対移動を防止する、請求項39に記載の接近装置。
【請求項41】
前記カテーテルは、体腔の中に挿入されたときに、それを貫く空いた流路を維持するために、ねじれることのない極限角度で安全に曲げることができるように構成されている、請求項39および40のいずれかに記載の接近装置。
【請求項42】
前記カテーテルは、前記針によって作り出された穴を拡張するための充分な構造的強度を有していない、請求項39から41のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項43】
前記カテーテルは、自立型のものではなく、かつ、前記針によって支持されていないときには、重力のもとで実質的に下方へ傾斜する、請求項39から42のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項44】
遠位端のある細長い針本体、この針本体から延出しているハブ、およびこのハブの表面に配置された固定構造体を備えている針、
前記針本体の表面に少なくとも部分的に配置され、かつ、少なくとも部分的に半透明あるいは透明である細長いカテーテル本体、およびこのカテーテル本体から延出しているハブを備えているカテーテルであって、そのハブは、前記針とこのカテーテルとの間の意図的でない全相対移動を防止するために、前記針の固定構造体に取り外し可能に固定されるように構成された、かつ、前記針の固定構造体から取り外して、前記針をこのカテーテルに対してスライドさせることができるように構成された固定構造体を含んでいるカテーテル、
前記針と前記カテーテル本体の外面との間に配置された奔流空間であって、前記針本体の内部における体液が、この空間の中へ流入するように、かつ、前記カテーテル本体の半透明あるいは透明の部分を通して見えるように、前記針本体の内側に連通している奔流空間、および
前記針の中へ事前搭載され、前記針本体の長さよりも長い長さを有しているとともに、前記針本体を介してスライドすることのできるガイドワイヤ
を備えてなる、カテーテルを身体空間の内部に配置するための接近装置。
【請求項45】
前記カテーテルハブの固定構造体は、医療物品の表面におけるルアー型固定接続体継手に係合するように構成されている、請求項44に記載の接近装置。
【請求項46】
前記カテーテルハブの固定構造体は、ねじ山を含んでいる、請求項44および45のいずれかに記載の接近装置。
【請求項47】
前記カテーテルハブの固定構造体は、医療用継手に取り外し可能に固定されるようにさらに構成されている、請求項44から46のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項48】
前記カテーテルハブの固定構造体は、第1固定構造体要素と第2固定構造体要素とを備え、該第1固定構造体要素が、医療装置継手に取り外し可能に固定されるように構成され、該第2固定構造体要素が、前記針の固定構造体に取り外し可能に固定されるように構成されている、請求項44から47のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項49】
前記カテーテルハブの固定構造体と前記針ハブの固定構造体とは、前記カテーテルハブが前記針ハブに隣接して配置されたときに相互接続される、請求項44から48のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項50】
前記カテーテルは、ねじれることなく鋭角で曲がるように構成されている、請求項44から49のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項51】
前記カテーテルは、前記針によって作り出された穴を拡張するための充分な軸方向構造的強度を有していない、請求項44から50のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項52】
前記カテーテルは、自立型のものではなく、かつ、前記針によって支持されていないときには、重力のもとで実質的に下方へ傾斜する、請求項44から51のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項53】
前記奔流空間に連通している負圧要素を付加的に備えている、請求項44から52のいずれか1項に記載の接近装置。
【請求項54】
前記ガイドワイヤは、近位端と遠位端とを含んでおり、該遠位端が、前記針本体の内部に配置され、該近位端が、前記針の外側に配置されたこのガイドワイヤの遠位部分を前記針の軸から離れるように曲げることができるようにして、前記針ハブから外して廃棄することのできるものである、請求項44から53のいずれか1項に記載の接近装置。
【図1B】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8H】
【図8I】
【図8J】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図1A】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図18A】
【図20】
【図2A】
【図2B】
【図2C】
【図2D】
【図2E】
【図2F】
【図2G】
【図3A】
【図3B】
【図3C】
【図3D】
【図3E】
【図3F】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5A】
【図5B】
【図6A】
【図6B】
【図6C】
【図6D】
【図6E】
【図7A】
【図7B】
【図7C】
【図7D】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図8H】
【図8I】
【図8J】
【図9A】
【図9B】
【図9C】
【図10A】
【図10B】
【図11A】
【図11B】
【図12A】
【図12B】
【図13A】
【図13B】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図16A】
【図16B】
【図17】
【図18B】
【図18C】
【図19】
【図1A】
【図8E】
【図8F】
【図8G】
【図18A】
【図20】
【公表番号】特表2012−508616(P2012−508616A)
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−536480(P2011−536480)
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/064261
【国際公開番号】WO2010/056906
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(507324142)アクセス サイエンティフィック、インク. (7)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2009/064261
【国際公開番号】WO2010/056906
【国際公開日】平成22年5月20日(2010.5.20)
【出願人】(507324142)アクセス サイエンティフィック、インク. (7)
【Fターム(参考)】
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