推論装置
【目的】推論診断対象が時間的に変化した場合でも、必要に応じて各ルールの確信度を修正可能にしたものである。
【構成】推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び及び推論対象の状態に関して判明した事実情報を記述した推論事例を格納する推論事例メモリと、知識ベースに格納された推論対象の個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶部と、推論事例メモリに登録されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを有効条件記憶部に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定部と、推論事例メモリに登録されている推論事例のうち事例有効判定部により有効と判断された推論事例の持つ情報をもとに確信度を修正する確信度修正部とを備える。
【構成】推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び及び推論対象の状態に関して判明した事実情報を記述した推論事例を格納する推論事例メモリと、知識ベースに格納された推論対象の個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶部と、推論事例メモリに登録されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを有効条件記憶部に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定部と、推論事例メモリに登録されている推論事例のうち事例有効判定部により有効と判断された推論事例の持つ情報をもとに確信度を修正する確信度修正部とを備える。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人口知能技術を応用した診断システム等の仮説推論システムに使われる推論規則の学習、特に確からしさを表現する数値を調整する確信度調整装置を備えた推論装置に関する。
【0002】
【従来の技術】装置やプラント等の人口的システム、生体等の自然システムにおいて、その予期される機能が発揮されない場合にその原因を究明し、適切な対策を取るという診断技術は、従来から研究開発の対象であった。
【0003】古くは、確率論を応用した解析が主流であり、理論構築が行われていた。さらには、FTA(Faut Tree Analysis,故障分析)等の実用的な手法がOR(Operations Research ,オペレーションズ・リサーチ)分野で開発されてきた。
【0004】最近では、より大規模・複雑な対象の診断システムの構築を容易にする手法ととして、AI(Artificial Intelligence ,人工知能)技術を応用した知識ベースの診断システム(診断エキスパート・システム、以下診断ESと呼ぶ)への期待が高まっている。
【0005】この診断ESにおいては、当該分野の専門化の持つ経験的知識をif-then 形式のルールとして獲得して知識ベースに格納し、汎用の推論エンジンで推論するものである。診断ルールはいくつかの事象の記述を条件部に持ち、結論部にはそれらの事象を観測することによって判明する仮説事象が記述されている。すなわち、それらの事象を因果的に惹起しうる原因事象を対応づけている。
【0006】このような診断ESが通常のESと異なる点は、ルールが理論的な演繹推論を表しているのではなく、不確実性・曖昧性を含んだ仮説推論過程となっていることである。従って、診断ESではこの不確実性・曖昧性の扱いが重要になる。即ち、その表現、推論での利用方法などである。その一手法として、不確実性の程度を数値で表現し、推論を進めながら仮説の確実度を計算する手法があり、Evidential Approach,Evidential Reasoning(定訳はないが、証拠収集型アプローチ、証拠推論と訳せる)などと呼ばれている。このようなアプローチは、依拠する意味論により、MYCIN流の確信度計算によるアプローチ、確率的アプローチ、ファジィ理論に基づくアプローチ等がある。なお、本明細書ではこのような仮説推論における数値表現を、便宜上「確信度」と呼ぶことにする。ここで、MYCIN流の確信度(certainty Factor) 計算については公知文献として原典:E.H.Shortliffe 著“Computer-based medical consuhation:MYCIN”New Y0rk:Elsevier (1976)が知られている。このMYCIN流の推論で用いるルールは、物理的な因果関係の逆方向を断片化したものである。いま、ifA−thenBについて考える。
【0007】ルールRの方向(A→B)では、「事象Aの生起を観測したときにその原因は事象Bである」ことを意味している。事例Aを引起こす原因は事象Bの他にもあるかもしれないので、ルールRは常に成立つとは限らない。そこで、ルールRが成立つ確からしさを数値表現する(x)。この数値(certainty-fact0r,CF 値、確信度)は、事象Aを引起こし得る他の原因(C,D…)と事象Bとの相対的な発生頻度に左右される。
【0008】MYCIN流の推論では、結果事象の観測によって確認された事象の確信度(証拠と呼ぶ)をルールの連鎖を通して伝搬したり、いくつかのルールによって収集したりする。このような計算により、予め列挙された原因事象の確信度を算出する。
【0009】このような数値表現によるアプローチの問題は、対象分野の専門家が数値を与えるのが困難なことである。例えば、MYCIN流の確信度計算の場合、第1に結論の確信度の値は、推論連鎖に現れた確信度から総合的に算出されるので、システム全体で整合性のとれた値を付与する必要がある。また、第2に仮説推論を診断システムに適用する場合、推論の向きは物理的な因果関係とは逆向きになり、直観的に確信度を評価しにくい。
【0010】このような問題を解決することを意図した従来技術として、帰納的仮説評価方式がある。この方式は診断対象において、過去に発生した故障・不良の事例を記録しておき、蓄積された多数の事例から確信度を帰納的に算出するものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方式には次のような2つの問題点がある。
【0012】第1に診断対象に構造的な変化が生じた場合に、過去の事例のうち、現在の推論対象の構造、機能、特性の一例を表すものとして、有効なものとそうでないものとを区別する手段がない。これは医療診断などのように推論対象の性質が急激に変化しない場合は、それほど問題とはならない。ところが、最近の診断システムの主な適用対象は、装置やプラントなどの人工的なシステムであり、技術革新によって日進月歩の改良が加えられ、急速な変貌を遂げている。
【0013】このように時間的に変化する対象の診断に確信度的アプローチを適用すると、労力をかけて確信度をチューニングし終わると、その診断知識は既に訳に立たないものとなってしまう可能性が高い。従って、このような場合、推論対象の時間的変化に追従する能力が推論システムに要求される。
【0014】また、第2の問題点としては、個々のルールに対してその条件部と結論部に対応する実情報を収集する必要がある。実際の診断システムの場合、中間事象の全てが観測可能な訳ではないため、各ルールの確信度を調整するための事例情報を、観測可能な事象から推測する機能が必要である。
【0015】本発明の第1の目的は、推論診断対象が時間的に変化した場合でも、必要に応じて各ルールの確信度を修正することにより、診断対象の時間的変化に追従させることができる推論装置を提供することにある。
【0016】また、本発明の第2の目的は、直接事実情報を獲得できない事象に対しては獲得可能情報から各ルールの確信度を推論することができる推論装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段を講じたものである。
【0018】条件部、結論部及び条件部が成立したときに結論部が成立する確からしさを数値表現した確信度からなる推論規則を格納した知識ベースと、推論対象の状態に関するデータを記録する作業データベースと、推論対象からの状態情報が入力されると前記作業データベースの内容と照合される前記知識ベースに格納された推論規則を取込んで該推論規則に沿った確信度の計算により結論となる確信度を求める推論エンジンとを備えた推論装置において、前記推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集手段と、この事例収集手段で収集された事例を格納する推論事例メモリと、前記知識ベースに格納された推論対象に関する個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶手段と、前記推論事例メモリに格納されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを前記有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例のうち前記事例有効判定手段により有効と判断された推論事例の情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例収集作成手段と、この訓練例収集作成手段で作成された訓練例集合を用いて各ルールの確信度を修正する確信度修正手段とからなる確信度調整装置を備えている。
【0019】また、上記構成に加えて前記知識ベースに格納される推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を格納した因果知識ベースと、前記推論エンジンでの推論終了後に判明した情報を取込み、前記因果知識ベースに格納された検証知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ推論知識の条件部や結論部の確信度を推論して推論事例メモリに格納する因果推論実行手段とを付加した確信度調整装置を備えている。
【0020】
【作用】このような構成の確信度調整装置を備えた推論装置にあっては、推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集して推論事例メモリに格納しておき、この推論事例メモリに格納された推論事例が、現在の推論対象の状態に照らして、その挙動の一例であるか否かを有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定し、有効と判断されるとその推論事例の持つ情報をもとに訓練例集合作成手段により個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象の訓練例を抽出・収集し、その訓練例集合を用いて各ルールの確信度が修正されるので、推論対象の特性が変化したときに過去から蓄積してきた事例のどれが有効で、どれが無効であるかを判断することが可能となる。
【0021】また、推論エンジンでの推論終了後に判明した情報を取込んで、因果知識ベースに格納された推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ推論知識の条件部や結論部の確信度を推論して推論事例メモリに格納しておくことにより、有効な事例とそうでない事例とを明確に区別することが可能となり、しかもそのための情報をユーザが個々の事例にマニュアルで記述することなく、推論終了時に自動的に記録することが可能となる。
【0022】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0023】図1は本発明による推論装置の構成例を示すものである。図1において、1は診断ルールを格納した診断知識ベース、2は診断対象の状態に関するデータを記録、管理する作業データベース、3は診断対象から観測データを取込んで診断知識ベース1より作業データベース2の内容と照合される推論規則を参照してその推論規則に沿った確信度を計算することで結論の確信度を推論し、その結果を出力するとともに作業データベース2のデータを更新する推論エンジンである。これら診断知識ベース1、作業データベース2および推論エンジン3は、通常の診断ESを構成する。
【0024】一方、4は推論エンジン3が診断対象の特定の状態に対して推論した過程に関する情報および診断対象の状態について判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集部、5はこの事例収集部4で収集された事例を格納する推論事例メモリ、6は診断対象に関する個々の知識要素に対してそれが現在の推論対象の構造、機能、特性を記述するものとして適切か否かを判断するための情報を管理する有効条件メモリである。また、7は推論事例メモリ5に登録、管理されている推論事例が現在の診断対象の構造、機能、特性に照らしてその挙動の一例とみなして妥当か否かを、有効条件メモリ6に登録、管理されている推論事例に関与した個々の知識要素に対応づけられる個々の条件を参照した上で判定する事例有効性判定部、8は推論事例メモリ5に登録、管理されている推論事例のうち事例有効判定部7により有効と判断された推論事例の持つ情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例集合作成部、9はこの訓練例集合を用いて各ルールの確信度を求め、診断知識ベース1の確信度を修正する確信度修正部である。これら事例収集部4,推論事例メモリ5、有効条件メモリ6、事例有効性判定部7、訓練例集合作成部8および確信度修正部9は確信度調整装置を構成する。次に上記のように構成された推論装置の作用を述べる。
【0025】図2は診断対象の具体例として鋼板製造装置の構成を示すもので、この鋼板製造装置は溶融工程、圧延工程、加工工程からなり、図1に示す推論装置は鋼板製造装置の故障や不具合を診断するものとする。従って、診断知識ベース1には対象装置に対して観測された事象から、その不具合を引起した原因を推定するための診断ルールが格納されている。
【0026】図3はその診断ルールをネットワーク状に表現したものを示す。図3において、ネットワークのノードは診断対象の状態を表す事象であり、それらを連結した有効リンクは診断ルールを表している。一般に診断ルールは複数の条件を持ち、論理的にはAND条件、確率的には積事象を表す。なお、AND条件の確信度はmix 演算を用いる。すなわち、cf(AandB)=mih(cf(A),cf(B))
【0027】図においては、黒四角で複数の条件を表し、また各ルールの確信度は矢印の近くに書かれている。なお、本実施例では否定条件、OR条件、負の確信度を用いない。
【0028】図4は図3に示した診断ルールの診断知識ベース1における内部表現の一部を示したものである。ここで、注意すべきことは、これらの診断ルールにはそれらが有効であるための条件が記述されていることである。例えば図4のルールR1では、マシンがMKISで、自動調整機能をOFFにしているときに限り、R1が成立することを示している。これらの条件は、事例有効性判定部7が事例の有効性を判定するために用いる。また、図5はこの診断システムの実行(不具合の入力から原因の出力まで)の一部を示した。
【0029】いま、図6のアルゴリズムに示すように推論の起動に先立って、診断実行時に観測可能な事象情報を予め入力しておき、これらの情報を推論エンジン3内部のメモリに格納しておく(ステップS1)。このような状態で推論エンジン3を起動すると診断知識ベース1より、診断ルールを取出して推論を実行する。この場合、診断ルールとしては前向きルール、すなわち因果関係方向において、結果から原因を推定するだけである。つまり、仮説を立てて特定の仮説に注目し、その仮説を支持する事象を検証するといった後ろ向き推論は行わないものを考える。
【0030】そこで、推論の動きとしてはその時点での作業データの内容にマッチする条件部を持つルールを列挙し、そのようなルールを保持しておく活性ルール集合に入れる(ステップS2)。そして、活性ルール集合にルールが残っているいるか否かを判定し(ステップS3)、ルールが残っていると判定されると、活性ルール集合から何らかの基準で一つのルールを取り出し(ステップS4)、そのルールrによって帰結される事象の確信度を計算し、作業データベース2に格納する。また、ルール集合にルールが残っていなければ、推論を停止する。
【0031】図7は診断を実行した結果の推論過程の一例を図3のルールのネットワーク上に示したものである。ここで、[ ]内の数値は実際に観測した事象の確信度(したがって、0か1)を表し、( )内の数値は計算により算出された確信度である。この結果に対しては各事象の確信度が示される。図7において、MYCIN流の確信度計算式により事象例の確信度を求めると次の通りである。
cf(ローラ圧力小)=0.6 ×min(0,(1.0,1.0))=0.6 ×1.0 =0.6 cf(圧力センサ異常)=0.4 ×min(0,0.6)=0.4 ×0.6 =0.24 cf(電源電圧低)=x10+x11−x10x11 =0.36+0.8 −0.36×0.8 =0.872 ここで、x10=0.6 ×min(0,0.6)=0.6 ×0.6 =0.36x11=1.0 ×min(0,0.8)=1.0 ×0.8 =0.8なお、ここでルール条件部のAND条件の確信度はcf(AandB)=min (cf(A),cf(B))で計算している。
【0032】ここで、事例収集部4が起動される。診断後にさらに、炉出口温度が低く、電源電圧が低いことが確認されたとする。図8(a)は事例として獲得可能な推論過程を図3のネットワーク上に図示したもので、図8R>8(b)は得られた事例の内部表現を示すものである。「依存ルール群」の項に有効性をチェックすべきルールが記録されている。
【0033】以上は診断ESの作用であるが、かかる診断ESにおいて、推論結果は確信度の値にほかならず、各ルールに付された確信度は正確でなければならない。このようなシステムに対して本実施例では、確信度調整装置により推論対象の状態に関する過去の事例から帰納的に確信度の調整を行うものである。特に従来の方式で見逃されていた診断対象の時間的変化に対して考慮を払い、過去の事例の有効性を判定できるようにしたものであり、以下その作用について述べる。
【0034】図9は訓練例集合作成部8の処理フローの一部を示すものである。ここでは、ある特定のルール群に対して確信度修正を行うことを想定している。まず、確信度調整装置が起動されると、推論事例メモリ4に格納されている個々の事例を取込んで未処理事例があるか否かを判定し(ステップS5)、未処理事例があれば特定の事例cに注目し(ステップS6)、cに対象ルールが少なくとも一つあるか否かを判定する(ステップS7)。対象ルールが一つもなければ、次の事例に進み、事例が少なくとも一つの対象ルールを含んでいれば、次に事例有効性判定部7によりその事例cの有効性を判断する(ステップS8)。そして、その判断結果に対して事例cが有効であるか否かを判定し(ステップS9)、無効であれば次の事例に進み、有効であれば事例cから対象ルールに使える訓練例を抽出し(ステップS10)、次の事例に進む。全ての事例の処理が終了すると(ステップS5)、確信度計算のフェーズに移る(ステップS11)。
【0035】図10は事例有効性判定部6の処理フローの一部を示すものである。ここでの考え方は、事例のルールの中に1つでも有効でないものがあれば、その事例は無効とする。まず、事例cから関連知識を取出して(ステップS8−1)、未処理知識の有無を判定し(ステップS8−2)、未処理知識が無ければ、事例cは有効として終了する。また、未処理知識があればこれをkとして(ステップS8−3)、知識kの有効条件をチェックする(ステップS8−4)。そして、有効条件S8−5をチェック後、この知識kが有効であるか否かを判定し(ステップS8−5)、有効であればステップS8−2に戻って次の未処理知識の有無を判定し、無効であれば事例cは有効として終了する。
【0036】図11は一つの事例cから対象ルールに使える訓練例を抽出するための処理フローを示すものである。更新対象ルールと事例cに現れたルールが共通する場合、これをRとし(ステップS11−1)、このRに未処理rが属するかどうかを判定し(ステップS11−2)、属さなければ終了し、属していればこのrを未処理ルールとする(ステップS11−3)。次に、このルールrの条件、結論の確信度を求め、rに対する1つの訓練例tを作成する(ステップS11−4)。そして、この訓練例tを訓練例集合に追加して(S11−5)、ステップS11−2に戻り、次の更新対象ルールに対する判定を行う。
【0037】このようにして作成された訓練例集合を用いて対象ルールの確信度を計算し直すことになる。この場合、ルールの条件部、結論とも確かな情報が得られている訓練例は少ないので、確信度計算は少し工夫が必要である。そのために、まず全ての訓練例において条件部、結論とも確かな情報が得られていると仮定する。また、そのまま正事例、負事例として利用できるので、確信度が条件付き確率として与えられている場合は、訓練例をt1,… ,tn とし、正事例の個数をp、負事例の個数をnとすると、推論規則rの真偽値γは、次式で定義される。すなわち、 γ=p(p+n)
【0038】ところが、訓練例ti の条件部の真偽値をαi 、結論の真偽値をβi とすると、βi がγと同じ性質を持つ。しかし、条件の成立が不確かなので、全ての事例を同等に扱うことはできない。そこで、推論規則rの真偽値γはαi で重み付けすることにより、次式で定義することとする。すなわち、γ=Σαi βi /Σαi次に確信度調整装置の起動タイミングについて若干述べると次の通りである。
(1)手動更新起動マシンのリプレイスなど、明らかに診断過程に影響を及ぼす変化が診断対象に生じた場合、更新手続きを起動する。
(2)自動変更起動システムの診断結果と実際の検査結果と大きく異なる場合、診断システムがその知識の更新の必要性を検出し、自動的に更新手続を起動する。次に本発明の他の実施例について説明する。
【0039】図1に示す実施例では、推論事例メモリ5に直接事実情報を獲得できる事象について格納する場合を述べたが、直接事実情報が獲得できない事象に対しては図12のような構成として獲得可能情報からこれらを推論する機能を付加することにより実現できる。
【0040】図12において、図1と異なる点は診断知識ベース1に格納される推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を格納した因果知識ベース10と、推論エンジン3での推論終了後に判明した情報を取込み、因果知識ベース10に格納された検証知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ仮説推論知識の条件部や結論部の確信度を推論する因果推論実行部11とを設け、この因果推論実行部11で推論された確信度を推論事例メモリ5に格納するようにしたものであり、他の構成については図1と同じなので、ここではその説明を省略する。
【0041】上記因果推論実行部11での処理内容は、どのようなフォーマットで、どのような情報を残しておくかによって大きく異なってくる。本実施例で扱う事例とは、推論対象に関する事例と推論過程に関する事例の2つである。推論対象の事例は、推論装置に入力される事象と推論装置から出力される事象を対にしたもので、これは事例の目的が推論過程の検証にあるからである。また、診断過程の事例は、推論装置がどのような過程を経て結論を導いたかに関する情報を記録したものである。
【0042】まず、事例獲得手段の作用を図13に示すフローを参照して説明する。第1に推論終了後に判明した情報を取込んで(ステップS12)、因果推論を実行する(ステップS13)。すなわち、事後情報を因果ルールを用いて逆伝搬させ、観測事象に直接マッチしないルールに関する情報を得る。また、この実施例ではこのステップで確信度を調整するための訓練例を獲得することが可能な因果ルールを求めておく。事後情報の逆伝搬が終了すると、事例の獲得を開始する。次に事後観測事象に直接マッチしたルールを洗い出しておき、Rstart として格納する(ステップS14)。次にRstart は空であるかどうかを判定し、空でなければルールを出発点として因果ルールの連鎖を逆に辿って行く(ステップS15)。この過程で、事例を作成する前提となる知識を合わせて記録して行く。
【0043】ここで、上記事例獲得手段から呼出される因果推論実行部11の必要性と、その処理フローの一例について述べる。まず、因果推論実行部11の必要性であるが、因果推論の応用例として診断システムを考えると、通常推論の連鎖は非常に長く、その過程で現れる事象は観測不可能なものが多い。たとえば図8(a)で「板厚大」,「暗赤色」と「炉出口温度低」を結ぶリンクは事例として抽出されないことに注意されたい。これは中間事象「炉出口粘度大」の真偽を直接的に観測し得えなかったからである。
【0044】このような状況において各ルールの確信度を調整するには、複数ルールの確信度をまとめて調整できる方法か、あるいは各ルールの条件部と結論の事象の確信度を推定する方法のいずれかが必要である。ここで述べる因果推論は後者を実現するものである。その理由は、診断の場合、因果推論の向きは物理的な因果関係の向きと同じなので、検証ルールは比較的容易に明確化でき、かつその確信度も比較的正確に定義できると考えられるからである。
【0045】図14に因果推論の処理フローの一例を示す。推論動作としては図6に示した推論と同じく、事象情報の一括入力と前向き推論であるが、ここではどのような因果ルールを用いたかを事例有効性判定部7のための情報とするために、因果ルールの情報を記録するステップが加わっている点が異なる。
【0046】まず、因果推論終了後に判明した事後観測事象を作業記憶である活性事象記憶AMに格納し、さらにそれらの依存知識集合を空集合としておく(ステップS16)。また、このステップで照合対象を因果推論(逆伝搬)ルールの集合Rcause のみにしておく必要がある。これは、仮説推論ルールと因果推論ルールが交互に発生し、無限ルールに陥り、根拠のない確信を集積することのないようにするためである。
【0047】ここでも、活性事象がなくなると推論は停止する(ステップS17)。活性事象が一つでもあれば、適当な基準により一つを選択し(eとする)、このeを結論に持つ診断ルール群を事例候補ルール集合Rnに格納する(ステップS18)。
【0048】次に作業記憶WMの内容にマッチする因果ルールを実行し、確信度の判明した事象を作業記憶WM及びAMに追加する(ステップS19)。ここで、確信度の逆伝搬に用いられた因果ルールを事例の有効性判断のために記録しておく(ステップS20)。最後に処理の済んだ事象は活性事例集合AMから削除し、再帰的に推論を進める(ステップS21)。
【0049】図15は因果推論で用いる因果ルールをネットワーク状に図示したものである。ここでは、図3の診断ルールと対応がとれるように名前にダッシュ(´)をつけてある。診断後に炉出口温度低などの事後観測情報が得られると、例えばR7´により、炉出口粘度大の確信度が0.9 として得られる(ただし、R7´の確信度が0.9 とする)。図16には診断結果から収集できる事例を図示してある。この図において、実線は事例を獲得可能な因果推論ルールを表し、点線はそうでないルールを表している。前者のルールの連鎖は、事後情報で検証が可能であるが、後者はそうなっていない。また、図8(a)と比較すれば分かるように、因果推論により「板厚大」、「暗赤色」と「炉出口温度低」を結ぶラインが事例として収集可能になっている。図16で炉出口粘度大の下の<0.9 >は、その確信度が因果推論で求められたことを示す。
【0050】図17は図16に示した情報から獲得された事例の内部表現である。ここで、注意されたいのは、ルールR2の依存ルール群において、R2だけでなく、R7,R7´が現れていることである。これは(炉出口温度大0.9 )を求めるのにR7´が使われており、さらにR7´とR7は密接な関連があるからである。
【0051】このような方法で事例を獲得し、確認された事実をシステムに容易に入力するマンマシン・インターフェースを装備しておくことにより、診断事例を日常業務の中で比較的容易に収集可能である。
【0052】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、推論診断対象が時間的に変化した場合でも、必要に応じて各ルールの確信度を修正することができるので、診断対象の時間的変化に追従させることができ、また直接事実情報を獲得できない事象に対しては獲得可能情報から各ルールの確信度を推論することができる確信度調整装置を備えた推論装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による推論装置の一実施例を示す構成図。
【図2】推論対象の具体例を示す鋼板製造工程図。
【図3】鋼板製造工程の推論知識の具体例を示す図。
【図4】診断知識ベースに格納された診断ルール内容の具体例を示す図。
【図5】作業データベースに格納された情報の具体例を示す図。
【図6】推論エンジンで前向き推論されるアルゴリズムを示す図。
【図7】推論エンジンでの診断過程の一例を示す図。
【図8】事例として獲得可能な推論過程とその内部表現を示す図。
【図9】訓練例集合作成部の処理の流れを示すフローチャート。
【図10】事例有効性判定部の処理の流れを示すフローチャート。
【図11】一つの事例から対象ルールに使える訓練例を抽出するための処理フローチャート。
【図12】本発明による推論装置の他の実施例を示す構成図。
【図13】事例作成処理の流れを示すフローチャート。
【図14】因果推論実行部の処理の流れを示すフローチャート。
【図15】検証知識の具体例を示す図。
【図16】診断事例をネットワークで表現した図。
【図17】診断事例の内部を表現した図。
【符号の説明】
1…診断知識ベース、2…作業データベース、3…推論エンジン、4…事例収集部、5…推論事例メモリ、6…有効条件メモリ、7…事例有効性判定部、8…訓練例集合作成部、9…確信度修正部、10…因果ルールベース、11…因果推論実行部。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、人口知能技術を応用した診断システム等の仮説推論システムに使われる推論規則の学習、特に確からしさを表現する数値を調整する確信度調整装置を備えた推論装置に関する。
【0002】
【従来の技術】装置やプラント等の人口的システム、生体等の自然システムにおいて、その予期される機能が発揮されない場合にその原因を究明し、適切な対策を取るという診断技術は、従来から研究開発の対象であった。
【0003】古くは、確率論を応用した解析が主流であり、理論構築が行われていた。さらには、FTA(Faut Tree Analysis,故障分析)等の実用的な手法がOR(Operations Research ,オペレーションズ・リサーチ)分野で開発されてきた。
【0004】最近では、より大規模・複雑な対象の診断システムの構築を容易にする手法ととして、AI(Artificial Intelligence ,人工知能)技術を応用した知識ベースの診断システム(診断エキスパート・システム、以下診断ESと呼ぶ)への期待が高まっている。
【0005】この診断ESにおいては、当該分野の専門化の持つ経験的知識をif-then 形式のルールとして獲得して知識ベースに格納し、汎用の推論エンジンで推論するものである。診断ルールはいくつかの事象の記述を条件部に持ち、結論部にはそれらの事象を観測することによって判明する仮説事象が記述されている。すなわち、それらの事象を因果的に惹起しうる原因事象を対応づけている。
【0006】このような診断ESが通常のESと異なる点は、ルールが理論的な演繹推論を表しているのではなく、不確実性・曖昧性を含んだ仮説推論過程となっていることである。従って、診断ESではこの不確実性・曖昧性の扱いが重要になる。即ち、その表現、推論での利用方法などである。その一手法として、不確実性の程度を数値で表現し、推論を進めながら仮説の確実度を計算する手法があり、Evidential Approach,Evidential Reasoning(定訳はないが、証拠収集型アプローチ、証拠推論と訳せる)などと呼ばれている。このようなアプローチは、依拠する意味論により、MYCIN流の確信度計算によるアプローチ、確率的アプローチ、ファジィ理論に基づくアプローチ等がある。なお、本明細書ではこのような仮説推論における数値表現を、便宜上「確信度」と呼ぶことにする。ここで、MYCIN流の確信度(certainty Factor) 計算については公知文献として原典:E.H.Shortliffe 著“Computer-based medical consuhation:MYCIN”New Y0rk:Elsevier (1976)が知られている。このMYCIN流の推論で用いるルールは、物理的な因果関係の逆方向を断片化したものである。いま、ifA−thenBについて考える。
【0007】ルールRの方向(A→B)では、「事象Aの生起を観測したときにその原因は事象Bである」ことを意味している。事例Aを引起こす原因は事象Bの他にもあるかもしれないので、ルールRは常に成立つとは限らない。そこで、ルールRが成立つ確からしさを数値表現する(x)。この数値(certainty-fact0r,CF 値、確信度)は、事象Aを引起こし得る他の原因(C,D…)と事象Bとの相対的な発生頻度に左右される。
【0008】MYCIN流の推論では、結果事象の観測によって確認された事象の確信度(証拠と呼ぶ)をルールの連鎖を通して伝搬したり、いくつかのルールによって収集したりする。このような計算により、予め列挙された原因事象の確信度を算出する。
【0009】このような数値表現によるアプローチの問題は、対象分野の専門家が数値を与えるのが困難なことである。例えば、MYCIN流の確信度計算の場合、第1に結論の確信度の値は、推論連鎖に現れた確信度から総合的に算出されるので、システム全体で整合性のとれた値を付与する必要がある。また、第2に仮説推論を診断システムに適用する場合、推論の向きは物理的な因果関係とは逆向きになり、直観的に確信度を評価しにくい。
【0010】このような問題を解決することを意図した従来技術として、帰納的仮説評価方式がある。この方式は診断対象において、過去に発生した故障・不良の事例を記録しておき、蓄積された多数の事例から確信度を帰納的に算出するものである。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】しかし、この方式には次のような2つの問題点がある。
【0012】第1に診断対象に構造的な変化が生じた場合に、過去の事例のうち、現在の推論対象の構造、機能、特性の一例を表すものとして、有効なものとそうでないものとを区別する手段がない。これは医療診断などのように推論対象の性質が急激に変化しない場合は、それほど問題とはならない。ところが、最近の診断システムの主な適用対象は、装置やプラントなどの人工的なシステムであり、技術革新によって日進月歩の改良が加えられ、急速な変貌を遂げている。
【0013】このように時間的に変化する対象の診断に確信度的アプローチを適用すると、労力をかけて確信度をチューニングし終わると、その診断知識は既に訳に立たないものとなってしまう可能性が高い。従って、このような場合、推論対象の時間的変化に追従する能力が推論システムに要求される。
【0014】また、第2の問題点としては、個々のルールに対してその条件部と結論部に対応する実情報を収集する必要がある。実際の診断システムの場合、中間事象の全てが観測可能な訳ではないため、各ルールの確信度を調整するための事例情報を、観測可能な事象から推測する機能が必要である。
【0015】本発明の第1の目的は、推論診断対象が時間的に変化した場合でも、必要に応じて各ルールの確信度を修正することにより、診断対象の時間的変化に追従させることができる推論装置を提供することにある。
【0016】また、本発明の第2の目的は、直接事実情報を獲得できない事象に対しては獲得可能情報から各ルールの確信度を推論することができる推論装置を提供することにある。
【0017】
【課題を解決するための手段】本発明は上記の目的を達成するため、次のような手段を講じたものである。
【0018】条件部、結論部及び条件部が成立したときに結論部が成立する確からしさを数値表現した確信度からなる推論規則を格納した知識ベースと、推論対象の状態に関するデータを記録する作業データベースと、推論対象からの状態情報が入力されると前記作業データベースの内容と照合される前記知識ベースに格納された推論規則を取込んで該推論規則に沿った確信度の計算により結論となる確信度を求める推論エンジンとを備えた推論装置において、前記推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集手段と、この事例収集手段で収集された事例を格納する推論事例メモリと、前記知識ベースに格納された推論対象に関する個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶手段と、前記推論事例メモリに格納されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを前記有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例のうち前記事例有効判定手段により有効と判断された推論事例の情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例収集作成手段と、この訓練例収集作成手段で作成された訓練例集合を用いて各ルールの確信度を修正する確信度修正手段とからなる確信度調整装置を備えている。
【0019】また、上記構成に加えて前記知識ベースに格納される推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を格納した因果知識ベースと、前記推論エンジンでの推論終了後に判明した情報を取込み、前記因果知識ベースに格納された検証知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ推論知識の条件部や結論部の確信度を推論して推論事例メモリに格納する因果推論実行手段とを付加した確信度調整装置を備えている。
【0020】
【作用】このような構成の確信度調整装置を備えた推論装置にあっては、推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集して推論事例メモリに格納しておき、この推論事例メモリに格納された推論事例が、現在の推論対象の状態に照らして、その挙動の一例であるか否かを有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定し、有効と判断されるとその推論事例の持つ情報をもとに訓練例集合作成手段により個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象の訓練例を抽出・収集し、その訓練例集合を用いて各ルールの確信度が修正されるので、推論対象の特性が変化したときに過去から蓄積してきた事例のどれが有効で、どれが無効であるかを判断することが可能となる。
【0021】また、推論エンジンでの推論終了後に判明した情報を取込んで、因果知識ベースに格納された推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ推論知識の条件部や結論部の確信度を推論して推論事例メモリに格納しておくことにより、有効な事例とそうでない事例とを明確に区別することが可能となり、しかもそのための情報をユーザが個々の事例にマニュアルで記述することなく、推論終了時に自動的に記録することが可能となる。
【0022】
【実施例】以下本発明の一実施例を図面を参照して説明する。
【0023】図1は本発明による推論装置の構成例を示すものである。図1において、1は診断ルールを格納した診断知識ベース、2は診断対象の状態に関するデータを記録、管理する作業データベース、3は診断対象から観測データを取込んで診断知識ベース1より作業データベース2の内容と照合される推論規則を参照してその推論規則に沿った確信度を計算することで結論の確信度を推論し、その結果を出力するとともに作業データベース2のデータを更新する推論エンジンである。これら診断知識ベース1、作業データベース2および推論エンジン3は、通常の診断ESを構成する。
【0024】一方、4は推論エンジン3が診断対象の特定の状態に対して推論した過程に関する情報および診断対象の状態について判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集部、5はこの事例収集部4で収集された事例を格納する推論事例メモリ、6は診断対象に関する個々の知識要素に対してそれが現在の推論対象の構造、機能、特性を記述するものとして適切か否かを判断するための情報を管理する有効条件メモリである。また、7は推論事例メモリ5に登録、管理されている推論事例が現在の診断対象の構造、機能、特性に照らしてその挙動の一例とみなして妥当か否かを、有効条件メモリ6に登録、管理されている推論事例に関与した個々の知識要素に対応づけられる個々の条件を参照した上で判定する事例有効性判定部、8は推論事例メモリ5に登録、管理されている推論事例のうち事例有効判定部7により有効と判断された推論事例の持つ情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例集合作成部、9はこの訓練例集合を用いて各ルールの確信度を求め、診断知識ベース1の確信度を修正する確信度修正部である。これら事例収集部4,推論事例メモリ5、有効条件メモリ6、事例有効性判定部7、訓練例集合作成部8および確信度修正部9は確信度調整装置を構成する。次に上記のように構成された推論装置の作用を述べる。
【0025】図2は診断対象の具体例として鋼板製造装置の構成を示すもので、この鋼板製造装置は溶融工程、圧延工程、加工工程からなり、図1に示す推論装置は鋼板製造装置の故障や不具合を診断するものとする。従って、診断知識ベース1には対象装置に対して観測された事象から、その不具合を引起した原因を推定するための診断ルールが格納されている。
【0026】図3はその診断ルールをネットワーク状に表現したものを示す。図3において、ネットワークのノードは診断対象の状態を表す事象であり、それらを連結した有効リンクは診断ルールを表している。一般に診断ルールは複数の条件を持ち、論理的にはAND条件、確率的には積事象を表す。なお、AND条件の確信度はmix 演算を用いる。すなわち、cf(AandB)=mih(cf(A),cf(B))
【0027】図においては、黒四角で複数の条件を表し、また各ルールの確信度は矢印の近くに書かれている。なお、本実施例では否定条件、OR条件、負の確信度を用いない。
【0028】図4は図3に示した診断ルールの診断知識ベース1における内部表現の一部を示したものである。ここで、注意すべきことは、これらの診断ルールにはそれらが有効であるための条件が記述されていることである。例えば図4のルールR1では、マシンがMKISで、自動調整機能をOFFにしているときに限り、R1が成立することを示している。これらの条件は、事例有効性判定部7が事例の有効性を判定するために用いる。また、図5はこの診断システムの実行(不具合の入力から原因の出力まで)の一部を示した。
【0029】いま、図6のアルゴリズムに示すように推論の起動に先立って、診断実行時に観測可能な事象情報を予め入力しておき、これらの情報を推論エンジン3内部のメモリに格納しておく(ステップS1)。このような状態で推論エンジン3を起動すると診断知識ベース1より、診断ルールを取出して推論を実行する。この場合、診断ルールとしては前向きルール、すなわち因果関係方向において、結果から原因を推定するだけである。つまり、仮説を立てて特定の仮説に注目し、その仮説を支持する事象を検証するといった後ろ向き推論は行わないものを考える。
【0030】そこで、推論の動きとしてはその時点での作業データの内容にマッチする条件部を持つルールを列挙し、そのようなルールを保持しておく活性ルール集合に入れる(ステップS2)。そして、活性ルール集合にルールが残っているいるか否かを判定し(ステップS3)、ルールが残っていると判定されると、活性ルール集合から何らかの基準で一つのルールを取り出し(ステップS4)、そのルールrによって帰結される事象の確信度を計算し、作業データベース2に格納する。また、ルール集合にルールが残っていなければ、推論を停止する。
【0031】図7は診断を実行した結果の推論過程の一例を図3のルールのネットワーク上に示したものである。ここで、[ ]内の数値は実際に観測した事象の確信度(したがって、0か1)を表し、( )内の数値は計算により算出された確信度である。この結果に対しては各事象の確信度が示される。図7において、MYCIN流の確信度計算式により事象例の確信度を求めると次の通りである。
cf(ローラ圧力小)=0.6 ×min(0,(1.0,1.0))=0.6 ×1.0 =0.6 cf(圧力センサ異常)=0.4 ×min(0,0.6)=0.4 ×0.6 =0.24 cf(電源電圧低)=x10+x11−x10x11 =0.36+0.8 −0.36×0.8 =0.872 ここで、x10=0.6 ×min(0,0.6)=0.6 ×0.6 =0.36x11=1.0 ×min(0,0.8)=1.0 ×0.8 =0.8なお、ここでルール条件部のAND条件の確信度はcf(AandB)=min (cf(A),cf(B))で計算している。
【0032】ここで、事例収集部4が起動される。診断後にさらに、炉出口温度が低く、電源電圧が低いことが確認されたとする。図8(a)は事例として獲得可能な推論過程を図3のネットワーク上に図示したもので、図8R>8(b)は得られた事例の内部表現を示すものである。「依存ルール群」の項に有効性をチェックすべきルールが記録されている。
【0033】以上は診断ESの作用であるが、かかる診断ESにおいて、推論結果は確信度の値にほかならず、各ルールに付された確信度は正確でなければならない。このようなシステムに対して本実施例では、確信度調整装置により推論対象の状態に関する過去の事例から帰納的に確信度の調整を行うものである。特に従来の方式で見逃されていた診断対象の時間的変化に対して考慮を払い、過去の事例の有効性を判定できるようにしたものであり、以下その作用について述べる。
【0034】図9は訓練例集合作成部8の処理フローの一部を示すものである。ここでは、ある特定のルール群に対して確信度修正を行うことを想定している。まず、確信度調整装置が起動されると、推論事例メモリ4に格納されている個々の事例を取込んで未処理事例があるか否かを判定し(ステップS5)、未処理事例があれば特定の事例cに注目し(ステップS6)、cに対象ルールが少なくとも一つあるか否かを判定する(ステップS7)。対象ルールが一つもなければ、次の事例に進み、事例が少なくとも一つの対象ルールを含んでいれば、次に事例有効性判定部7によりその事例cの有効性を判断する(ステップS8)。そして、その判断結果に対して事例cが有効であるか否かを判定し(ステップS9)、無効であれば次の事例に進み、有効であれば事例cから対象ルールに使える訓練例を抽出し(ステップS10)、次の事例に進む。全ての事例の処理が終了すると(ステップS5)、確信度計算のフェーズに移る(ステップS11)。
【0035】図10は事例有効性判定部6の処理フローの一部を示すものである。ここでの考え方は、事例のルールの中に1つでも有効でないものがあれば、その事例は無効とする。まず、事例cから関連知識を取出して(ステップS8−1)、未処理知識の有無を判定し(ステップS8−2)、未処理知識が無ければ、事例cは有効として終了する。また、未処理知識があればこれをkとして(ステップS8−3)、知識kの有効条件をチェックする(ステップS8−4)。そして、有効条件S8−5をチェック後、この知識kが有効であるか否かを判定し(ステップS8−5)、有効であればステップS8−2に戻って次の未処理知識の有無を判定し、無効であれば事例cは有効として終了する。
【0036】図11は一つの事例cから対象ルールに使える訓練例を抽出するための処理フローを示すものである。更新対象ルールと事例cに現れたルールが共通する場合、これをRとし(ステップS11−1)、このRに未処理rが属するかどうかを判定し(ステップS11−2)、属さなければ終了し、属していればこのrを未処理ルールとする(ステップS11−3)。次に、このルールrの条件、結論の確信度を求め、rに対する1つの訓練例tを作成する(ステップS11−4)。そして、この訓練例tを訓練例集合に追加して(S11−5)、ステップS11−2に戻り、次の更新対象ルールに対する判定を行う。
【0037】このようにして作成された訓練例集合を用いて対象ルールの確信度を計算し直すことになる。この場合、ルールの条件部、結論とも確かな情報が得られている訓練例は少ないので、確信度計算は少し工夫が必要である。そのために、まず全ての訓練例において条件部、結論とも確かな情報が得られていると仮定する。また、そのまま正事例、負事例として利用できるので、確信度が条件付き確率として与えられている場合は、訓練例をt1,… ,tn とし、正事例の個数をp、負事例の個数をnとすると、推論規則rの真偽値γは、次式で定義される。すなわち、 γ=p(p+n)
【0038】ところが、訓練例ti の条件部の真偽値をαi 、結論の真偽値をβi とすると、βi がγと同じ性質を持つ。しかし、条件の成立が不確かなので、全ての事例を同等に扱うことはできない。そこで、推論規則rの真偽値γはαi で重み付けすることにより、次式で定義することとする。すなわち、γ=Σαi βi /Σαi次に確信度調整装置の起動タイミングについて若干述べると次の通りである。
(1)手動更新起動マシンのリプレイスなど、明らかに診断過程に影響を及ぼす変化が診断対象に生じた場合、更新手続きを起動する。
(2)自動変更起動システムの診断結果と実際の検査結果と大きく異なる場合、診断システムがその知識の更新の必要性を検出し、自動的に更新手続を起動する。次に本発明の他の実施例について説明する。
【0039】図1に示す実施例では、推論事例メモリ5に直接事実情報を獲得できる事象について格納する場合を述べたが、直接事実情報が獲得できない事象に対しては図12のような構成として獲得可能情報からこれらを推論する機能を付加することにより実現できる。
【0040】図12において、図1と異なる点は診断知識ベース1に格納される推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を格納した因果知識ベース10と、推論エンジン3での推論終了後に判明した情報を取込み、因果知識ベース10に格納された検証知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ仮説推論知識の条件部や結論部の確信度を推論する因果推論実行部11とを設け、この因果推論実行部11で推論された確信度を推論事例メモリ5に格納するようにしたものであり、他の構成については図1と同じなので、ここではその説明を省略する。
【0041】上記因果推論実行部11での処理内容は、どのようなフォーマットで、どのような情報を残しておくかによって大きく異なってくる。本実施例で扱う事例とは、推論対象に関する事例と推論過程に関する事例の2つである。推論対象の事例は、推論装置に入力される事象と推論装置から出力される事象を対にしたもので、これは事例の目的が推論過程の検証にあるからである。また、診断過程の事例は、推論装置がどのような過程を経て結論を導いたかに関する情報を記録したものである。
【0042】まず、事例獲得手段の作用を図13に示すフローを参照して説明する。第1に推論終了後に判明した情報を取込んで(ステップS12)、因果推論を実行する(ステップS13)。すなわち、事後情報を因果ルールを用いて逆伝搬させ、観測事象に直接マッチしないルールに関する情報を得る。また、この実施例ではこのステップで確信度を調整するための訓練例を獲得することが可能な因果ルールを求めておく。事後情報の逆伝搬が終了すると、事例の獲得を開始する。次に事後観測事象に直接マッチしたルールを洗い出しておき、Rstart として格納する(ステップS14)。次にRstart は空であるかどうかを判定し、空でなければルールを出発点として因果ルールの連鎖を逆に辿って行く(ステップS15)。この過程で、事例を作成する前提となる知識を合わせて記録して行く。
【0043】ここで、上記事例獲得手段から呼出される因果推論実行部11の必要性と、その処理フローの一例について述べる。まず、因果推論実行部11の必要性であるが、因果推論の応用例として診断システムを考えると、通常推論の連鎖は非常に長く、その過程で現れる事象は観測不可能なものが多い。たとえば図8(a)で「板厚大」,「暗赤色」と「炉出口温度低」を結ぶリンクは事例として抽出されないことに注意されたい。これは中間事象「炉出口粘度大」の真偽を直接的に観測し得えなかったからである。
【0044】このような状況において各ルールの確信度を調整するには、複数ルールの確信度をまとめて調整できる方法か、あるいは各ルールの条件部と結論の事象の確信度を推定する方法のいずれかが必要である。ここで述べる因果推論は後者を実現するものである。その理由は、診断の場合、因果推論の向きは物理的な因果関係の向きと同じなので、検証ルールは比較的容易に明確化でき、かつその確信度も比較的正確に定義できると考えられるからである。
【0045】図14に因果推論の処理フローの一例を示す。推論動作としては図6に示した推論と同じく、事象情報の一括入力と前向き推論であるが、ここではどのような因果ルールを用いたかを事例有効性判定部7のための情報とするために、因果ルールの情報を記録するステップが加わっている点が異なる。
【0046】まず、因果推論終了後に判明した事後観測事象を作業記憶である活性事象記憶AMに格納し、さらにそれらの依存知識集合を空集合としておく(ステップS16)。また、このステップで照合対象を因果推論(逆伝搬)ルールの集合Rcause のみにしておく必要がある。これは、仮説推論ルールと因果推論ルールが交互に発生し、無限ルールに陥り、根拠のない確信を集積することのないようにするためである。
【0047】ここでも、活性事象がなくなると推論は停止する(ステップS17)。活性事象が一つでもあれば、適当な基準により一つを選択し(eとする)、このeを結論に持つ診断ルール群を事例候補ルール集合Rnに格納する(ステップS18)。
【0048】次に作業記憶WMの内容にマッチする因果ルールを実行し、確信度の判明した事象を作業記憶WM及びAMに追加する(ステップS19)。ここで、確信度の逆伝搬に用いられた因果ルールを事例の有効性判断のために記録しておく(ステップS20)。最後に処理の済んだ事象は活性事例集合AMから削除し、再帰的に推論を進める(ステップS21)。
【0049】図15は因果推論で用いる因果ルールをネットワーク状に図示したものである。ここでは、図3の診断ルールと対応がとれるように名前にダッシュ(´)をつけてある。診断後に炉出口温度低などの事後観測情報が得られると、例えばR7´により、炉出口粘度大の確信度が0.9 として得られる(ただし、R7´の確信度が0.9 とする)。図16には診断結果から収集できる事例を図示してある。この図において、実線は事例を獲得可能な因果推論ルールを表し、点線はそうでないルールを表している。前者のルールの連鎖は、事後情報で検証が可能であるが、後者はそうなっていない。また、図8(a)と比較すれば分かるように、因果推論により「板厚大」、「暗赤色」と「炉出口温度低」を結ぶラインが事例として収集可能になっている。図16で炉出口粘度大の下の<0.9 >は、その確信度が因果推論で求められたことを示す。
【0050】図17は図16に示した情報から獲得された事例の内部表現である。ここで、注意されたいのは、ルールR2の依存ルール群において、R2だけでなく、R7,R7´が現れていることである。これは(炉出口温度大0.9 )を求めるのにR7´が使われており、さらにR7´とR7は密接な関連があるからである。
【0051】このような方法で事例を獲得し、確認された事実をシステムに容易に入力するマンマシン・インターフェースを装備しておくことにより、診断事例を日常業務の中で比較的容易に収集可能である。
【0052】
【発明の効果】以上述べたように本発明によれば、推論診断対象が時間的に変化した場合でも、必要に応じて各ルールの確信度を修正することができるので、診断対象の時間的変化に追従させることができ、また直接事実情報を獲得できない事象に対しては獲得可能情報から各ルールの確信度を推論することができる確信度調整装置を備えた推論装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による推論装置の一実施例を示す構成図。
【図2】推論対象の具体例を示す鋼板製造工程図。
【図3】鋼板製造工程の推論知識の具体例を示す図。
【図4】診断知識ベースに格納された診断ルール内容の具体例を示す図。
【図5】作業データベースに格納された情報の具体例を示す図。
【図6】推論エンジンで前向き推論されるアルゴリズムを示す図。
【図7】推論エンジンでの診断過程の一例を示す図。
【図8】事例として獲得可能な推論過程とその内部表現を示す図。
【図9】訓練例集合作成部の処理の流れを示すフローチャート。
【図10】事例有効性判定部の処理の流れを示すフローチャート。
【図11】一つの事例から対象ルールに使える訓練例を抽出するための処理フローチャート。
【図12】本発明による推論装置の他の実施例を示す構成図。
【図13】事例作成処理の流れを示すフローチャート。
【図14】因果推論実行部の処理の流れを示すフローチャート。
【図15】検証知識の具体例を示す図。
【図16】診断事例をネットワークで表現した図。
【図17】診断事例の内部を表現した図。
【符号の説明】
1…診断知識ベース、2…作業データベース、3…推論エンジン、4…事例収集部、5…推論事例メモリ、6…有効条件メモリ、7…事例有効性判定部、8…訓練例集合作成部、9…確信度修正部、10…因果ルールベース、11…因果推論実行部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】 条件部、結論部及び条件部が成立したときに結論部が成立する確からしさを数値表現した確信度からなる推論規則を格納した知識ベースと、推論対象の状態に関するデータを記録する作業データベースと、推論対象からの状態情報が入力されると前記作業データベースの内容と照合される前記知識ベースに格納された推論規則を取込んで該推論規則に沿った確信度の計算により結論となる確信度を求める推論エンジンとを備えた推論装置において、前記推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集手段と、この事例収集手段で収集された事例を格納する推論事例メモリと、前記知識ベースに格納された推論対象に関する個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを前記有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例のうち前記事例有効判定手段により有効と判断された推論事例の情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例集合作成手段と、この訓練例集合作成手段で作成された訓練例集合を用いて各ルールの確信度を修正する確信度修正手段とからなる確信度調整装置を備えたことを特徴とする推論装置。
【請求項2】 条件部、結論部及び条件部が成立したときに結論部が成立する確からしさを数値表現した確信度からなる推論規則を格納した知識ベースと、推論対象の状態に関するデータを記録する作業データベースと、推論対象からの状態情報が入力されると前記作業データベースの内容と照合される前記知識ベースに格納された推論規則を取込んで該推論規則に沿った確信度の計算により結論となる確信度を求める推論エンジンとを備えた推論装置において、前記知識ベースに格納される推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を格納した因果知識ベースと、前記推論エンジンでの推論終了後に判明した情報を取込み、前記因果知識ベースに格納された検証知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ推論知識の条件部や結論部の確信度を推論する因果推論実行手段と、この因果推論実行部で推論された確信度および前記推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集手段と、この事例収集手段で収集された事例を格納する推論事例メモリと、前記知識ベースに格納された推論対象に関する個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを前記有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例のうち前記事例有効判定手段により有効と判断された推論事例の情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例集合作成手段と、この訓練例集合作成手段で作成された訓練例集合を用いて各ルールの確信度を修正する確信度修正手段とからなる確信度調整装置を備えたことを特徴とする推論装置。
【請求項1】 条件部、結論部及び条件部が成立したときに結論部が成立する確からしさを数値表現した確信度からなる推論規則を格納した知識ベースと、推論対象の状態に関するデータを記録する作業データベースと、推論対象からの状態情報が入力されると前記作業データベースの内容と照合される前記知識ベースに格納された推論規則を取込んで該推論規則に沿った確信度の計算により結論となる確信度を求める推論エンジンとを備えた推論装置において、前記推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集手段と、この事例収集手段で収集された事例を格納する推論事例メモリと、前記知識ベースに格納された推論対象に関する個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを前記有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例のうち前記事例有効判定手段により有効と判断された推論事例の情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例集合作成手段と、この訓練例集合作成手段で作成された訓練例集合を用いて各ルールの確信度を修正する確信度修正手段とからなる確信度調整装置を備えたことを特徴とする推論装置。
【請求項2】 条件部、結論部及び条件部が成立したときに結論部が成立する確からしさを数値表現した確信度からなる推論規則を格納した知識ベースと、推論対象の状態に関するデータを記録する作業データベースと、推論対象からの状態情報が入力されると前記作業データベースの内容と照合される前記知識ベースに格納された推論規則を取込んで該推論規則に沿った確信度の計算により結論となる確信度を求める推論エンジンとを備えた推論装置において、前記知識ベースに格納される推論知識と逆向きの推論を可能とする検証推論知識を格納した因果知識ベースと、前記推論エンジンでの推論終了後に判明した情報を取込み、前記因果知識ベースに格納された検証知識を参照して直接的に事実情報を知り得ない条件部や結論部を持つ推論知識の条件部や結論部の確信度を推論する因果推論実行手段と、この因果推論実行部で推論された確信度および前記推論エンジンより得られる推論対象の特定の状態に対する推論過程に関する情報及び推論対象の状態に関して判明した事実に関する情報を記述した推論事例を収集する事例収集手段と、この事例収集手段で収集された事例を格納する推論事例メモリと、前記知識ベースに格納された推論対象に関する個々の知識情報が現在の推論対象の状態を記述するものとして適切であるか否かを判定するための情報を管理する有効条件記憶手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例が現在の推論対象の状態に照らしてその挙動の一例であるか否かを前記有効条件記憶手段に登録されている個々の有効条件を参照して判定する事例有効判定手段と、前記推論事例メモリに登録されている推論事例のうち前記事例有効判定手段により有効と判断された推論事例の情報をもとに個々の推論規則に対する条件事象・帰結事象のペア(訓練例)を抽出・収集する訓練例集合作成手段と、この訓練例集合作成手段で作成された訓練例集合を用いて各ルールの確信度を修正する確信度修正手段とからなる確信度調整装置を備えたことを特徴とする推論装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図15】
【図6】
【図16】
【図8】
【図17】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図7】
【図15】
【図6】
【図16】
【図8】
【図17】
【図9】
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【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開平5−324327
【公開日】平成5年(1993)12月7日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−132486
【出願日】平成4年(1992)5月25日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【公開日】平成5年(1993)12月7日
【国際特許分類】
【出願日】平成4年(1992)5月25日
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
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