説明

推進部材及び推進部材を備えた水田作業機

【課題】深田又は超深田であっても無理なく走行させることができる推進部材及び推進部材を備えた水田作業機を実現する。
【解決手段】推進部材30において、車輪2に取り付けられた状態で、車輪2から内側又は外側へ延出される延出端の位置が、車輪2の内側又は外側に隣接する作業対象ラインL1,L3と略同じ位置、又は、作業対象ラインL1,L3を越える位置に設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、推進部材及び推進部材を備えた水田作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術としては、例えば特許文献1に開示されているように、車輪の外周部に、リム(特許文献1の図2の10)の幅よりも幅広の広幅ラグ(特許文献1の図2の7)を備えた水田作業機や、例えば特許文献2に開示されているように、駆動車輪(特許文献2の図2の2)に、補助車輪(特許文献2の図2の20)を備えた移植作業機が知られている。
【0003】
【特許文献1】特開平8−130945号公報(図2参照)
【特許文献2】特開平7−329503号公報(図2及び図7参照)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の水田作業機では、車輪の外周部に広幅ラグを備えることで、車輪の推進力を向上できるように構成されている。しかし、深田や超深田と称呼される、耕盤の上に粘土質の比較的高い泥土が多く堆積した圃場や耕盤が安定していない軟弱な圃場(以下、深田又は超深田と略称する)で水田作業機を走行させると、車輪が圃場に深く入り込んだ状態になり易く泥土の抵抗が大きくなって、車輪の推進力が不足して車輪が空転し易かった。そして、最悪の場合には水田作業機の走行が不能になる場合があり、水田作業機による作業が中断してしまうといった問題があった。
【0005】
特許文献2の移植作業機では、駆動車輪に補助車輪を備えることで、駆動車輪の推進力を更に向上できるように構成されている。しかし、深田又は超深田で水田作業機を走行させると、駆動後輪及び補助車輪に大量の泥土が付着して、駆動後輪及び補助車輪の回転駆動力が多く必要になり、エンジンや駆動車輪の駆動系に無理な負荷が作用し易いといった問題があった。
【0006】
本発明は、深田又は超深田であっても無理なく走行させることができる推進部材及び推進部材を備えた水田作業機を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
[I],[II]
(構成)
本発明の第1特徴は、推進部材を次のように構成することにある。
車輪の幅より幅広に設定され、車輪に取り付けられた状態で、車輪から内側又は外側へ延出される延出端の位置が、車輪の内側又は外側に隣接する作業対象ラインと略同じ位置、又は、前記作業対象ラインを越える位置に設定されている。
【0008】
本発明の第2特徴は、水田作業機を次のように構成することにある。
複数の請求項1記載の推進部材を、右及び左の車輪の外周部に備えてある。
【0009】
(作用)
本発明の第1及び第2特徴によると、推進部材の延出端を、作業対象ラインと略同じ位置又は作業対象ラインを超える位置に設定し、推進部材の長さを長く設定することで、深田又は超深田で水田作業機を走行させた場合において、車輪の推進力を向上しながら、車輪に泥土が大量に付着することを防止できると推察できる。これにより、深田又は超深田であっても無理なく水田作業機を走行させることができると考えられる。
【0010】
例えば、深田又は超深田で水田作業機を走行させた走行実験において、推進部材を上記のように構成することで、比較的無理なく水田作業機を走行させることができた。
【0011】
(発明の効果)
本発明の第1及び第2特徴によると、車輪の推進力が不足して車輪が空転し作業が中断することを防止しながら、エンジンや車輪の駆動系に無理な負荷が作用することを防止できる。
【0012】
[III],[IV]
(構成)
本発明の第3特徴は、推進部材を次のように構成することにある。
車輪の幅より幅広に設定され、車輪のスポークの位置に配設される。
【0013】
本発明の第4特徴は、水田作業機を次のように構成することにある。
複数の請求項3記載の推進部材を、右及び左の車輪の外周部に備えてある。
【0014】
(作用)
本発明の第3及び第4特徴によると、推進部材を車輪の幅(ラグを装着した車輪の場合にはラグの幅)より幅広に設定し、推進部材をスポークの位置(例えば車輪のスポークが3本であれば、3本のスポークのそれぞれの位置)に配設することで、深田又は超深田で水田作業機を走行させた場合において、車輪の推進力を向上しながら、車輪に泥土が大量に付着することを防止できると推察できる。これにより、深田又は超深田であっても無理なく水田作業機を走行させることができると考えられる。
【0015】
例えば、深田又は超深田で水田作業機を走行させた走行実験において、推進部材を上記のように構成することで、比較的無理なく水田作業機を走行させることができた。
【0016】
(発明の効果)
本発明の第3及び第4特徴によると、車輪の推進力が不足して車輪が空転し作業が中断することを防止しながら、エンジンや車輪の駆動系に無理な負荷が作用することを防止できる。
【0017】
[V],[VI]
(構成)
本発明の第5特徴は、推進部材を次のように構成することにある。
車輪のラグの幅よりも幅広に設定され、前記ラグの車輪への周方向での取付ピッチよりも長い取付ピッチで車輪に取り付けられる。
【0018】
本発明の第6特徴は、水田作業機を次のように構成することにある。
複数の請求項5記載の推進部材を、右及び左の車輪の外周部に備えてある。
【0019】
(作用)
本発明の第5及び第6特徴によると、推進部材の幅を車輪のラグの幅よりも幅広に設定し、推進部材の取付ピッチをラグの取付ピッチより長く設定することで、深田又は超深田で水田作業機を走行させた場合において、車輪の推進力を向上しながら、車輪に泥土が大量に付着することを防止できると推察できる。これにより、深田又は超深田であっても無理なく水田作業機を走行させることができると考えられる。
【0020】
例えば、深田又は超深田で水田作業機を走行させた走行実験において、推進部材を上記のように構成することで、比較的無理なく水田作業機を走行させることができた。
【0021】
(発明の効果)
本発明の第5及び第6特徴によると、車輪の推進力が不足して車輪が空転し作業が中断することを防止しながら、エンジンや車輪の駆動系に無理な負荷が作用することを防止できる。
【0022】
[VII]
(構成)
本発明の第7特徴は、本発明の第6特徴の水田作業機において、次のように構成することにある。
右及び左の車輪に備える前記推進部材の数を、それぞれ8個以下に設定してある。
【0023】
(作用)
本発明の第7特徴によると、本発明の第6特徴と同様に前項[VI]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第7特徴によると、一つの車輪に備える推進部材の数を8個以下に設定することで、深田又は超深田で水田作業機を走行させる場合における適切な数に、推進部材の数を構成でき、深田又は超深田であっても無理なく水田作業機を走行させることができると考えられる。
【0024】
(発明の効果)
本発明の第7特徴によると、本発明の第6特徴と同様に前項[VI]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第7特徴によると、車輪の推進力が不足して車輪が空転し作業が中断することを防止しながら、エンジンや車輪の駆動系に無理な負荷が作用することを防止できる。
【0025】
[VIII]
(構成)
本発明の第8特徴は、本発明の第2,第4,第6,第7特徴の水田作業機において、次のように構成することにある。
前記推進部材を、車輪の外周部に着脱可能に取り付けてある。
【0026】
(作用)
本発明の第8特徴によると、本発明の第2,第4,第6,第7特徴のいずれか一つと同様に前項[II],[IV],[VI],[VII]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第8特徴によると、深田又は超深田で水田作業機を走行させる場合には、推進部材を車輪に取り付けて、又は、圃場の条件に応じて推進部材の数を増減して、車輪の推進力を向上しながら、車輪に泥土が大量に付着することを防止して、無理なく水田作業機を走行させることができる。一方、浅田で水田作業機を走行させる場合には、推進部材を車輪から取り外して、推進部材が走行や作業の妨げになることを防止できる。
【0027】
(発明の効果)
本発明の第8特徴によると、本発明の第2,第4,第6,第7特徴のいずれか一つと同様に前項[II],[IV],[VI],[VII]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第8特徴によると、圃場の条件に応じて推進部材を着脱して、推進部材を好適に使用できる。
【0028】
[IX]
(構成)
本発明の第9特徴は、本発明の第2,第4,第6〜第8特徴の水田作業機において、次のように構成することにある。
前記推進部材を、車輪のスポークに固定してある。
【0029】
(作用)
本発明の第9特徴によると、本発明の第2,第4,第6〜第8特徴のいずれか一つと同様に前項[II],[IV],[VI]〜[VIII]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第6特徴によると、推進部材を車輪に安定して支持させることができ、水田作業機の走行中に推進部材がガタツクことを防止できる。
【0030】
(発明の効果)
本発明の第9特徴によると、本発明の第2,第4,第6〜第8特徴のいずれか一つと同様に前項[II],[IV],[VI]〜[VIII]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第6特徴によると、推進部材としての機能を安定して発揮させることができる。
【0031】
[X]
(構成)
本発明の第10特徴は、本発明の第2,第4,第6〜第9特徴の水田作業機において、次のように構成することにある。
右の車輪の外周部に備えられた前記推進部材の右側の延出端の位置を、左側に位置変更可能に構成すると共に、左の車輪の外周部に備えられた前記推進部材の左側の延出端の位置を、右側に位置変更可能に構成してある。
【0032】
(作用)
本発明の第10特徴によると、本発明の第2,第4,第6〜第9特徴のいずれか一つと同様に前項[II],[IV],[VI]〜[IX]に記載の「作用」を備えており、これに加えて以下のような「作用」を備えている。
本発明の第10特徴によると、右の車輪の推進部材の延出端の位置を左側に位置変更すると共に、左の車輪の推進部材の延出端の位置を右側に位置変更することで、左右の推進部材の両外端の幅(距離)を短く変更できる。これにより、例えば浅田で水田作業機を走行させる場合において、推進部材を車輪に付属させた状態のままで、推進部材が走行や作業の妨げになることを防止できる。
【0033】
(発明の効果)
本発明の第10特徴によると、本発明の第2,第4,第6〜第9特徴のいずれか一つと同様に前項[II],[IV],[VI]〜[IX]に記載の「発明の効果」を備えており、これに加えて以下のような「発明の効果」を備えている。
本発明の第10特徴によると、推進部材の紛失等を防止しながら、圃場の条件に応じて推進部材を位置変更して、推進部材を好適に使用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
[乗用型田植機の全体構成]
図1及び図2に基づいて水田作業機の一例としての乗用型田植機の全体構成について説明する。図1は、乗用型田植機の全体側面図であり、図2は、乗用型田植機の全体平面図である。図1及び図2に示すように、前輪1及び後輪2で支持された機体に運転部3が備えられており、機体の後部に油圧シリンダ4及び昇降リンク機構5を介して苗植付装置6が昇降駆動自在に支持されて、乗用型田植機が構成されている。
【0035】
苗植付け装置6は6条植え付け仕様に構成されており、3個の伝動ケース7、伝動ケース7の後部の右及び左の横側部に回転駆動自在に支持された植付ケース8、植付ケース8の両端部に備えられた一対の植付アーム8a、3個の整地フロート9、及び苗が載置される苗のせ台10等を備えて構成されている。これにより、エンジンEから伝動軸19を介して苗植付け装置6に伝達された動力によって、苗のせ台10が左右に往復横送り駆動されるのに伴って、植付ケース8が回転駆動されて、苗のせ台10の下部から植付アーム8aが交互に苗を取り出して田面Tに植え付ける。
【0036】
左の後輪2の左右方向での位置は、最も左側の植付アーム8aと左から2番目の植付アーム8aとの左右中間部に位置するように配設されており、右の後輪2の左右方向での位置は、最も右側の植付アーム8aと右から2番目の植付アーム8aとの左右中間部に位置するように配設されている。これにより、植付ピッチPの左右中間部に後輪2を位置させることができ、後輪2で荒らされた田面Tに苗が植え付けられることを防止でき、苗の植え付け精度を向上できる(図3参照)。
【0037】
運転部3におけるフロア11の後部に運転座席12が備えられている。運転座席12の後側に、苗の植え付けに伴って田面Tに肥料を供給する施肥装置13が装備されており、施肥ホッパー13aに貯留された肥料が、所定量ずつ繰り出し部13bによって繰り出されて、ブロア13cの送風により肥料がホース13dを通って作溝具13eに供給され、作溝具13eを介して肥料が田面Tに供給されるように構成されている。
【0038】
エンジンEを覆うボンネット14がフロア11の前方に備えられており、このボンネット14の上部に、前輪1を操向操作する操縦ハンドル15が備えられている。ボンネット14の右及び左の横側部には、フロア11につながる右及び左のステップ16が備えられており、フロア11及びステップ16の両横外側には、右及び左の補助ステップ17が備えられている。
【0039】
[推進部材の詳細構造]
図1〜図6に基づいて後輪2に備えられた推進部材30の詳細構造について説明する。図3は、一部を断面で表した推進部材30と植付条(植付ピッチP)との位置関係を説明する後輪2付近の平面図である。図4は、一部を断面で表した推進部材30付近の側面図であり、図5は、図4のV−Vの位置での推進部材30付近の断面図であり、図6は、図4のVI−VIの位置での推進部材30付近の断面図である。なお、この実施形態では、専ら左の後輪2に装備された推進部材30を例に説明するが、右の後輪2に装備された推進部材30も左右の勝手が異なる以外の他の構成は同様である。
【0040】
図1〜図4に示すように、後輪2は、後輪2を連結するボス部材21と、このボス部材21に固着された複数のスポーク22と、スポーク22の先端部に固定されたリム23と、隣接するスポーク22に亘って設けられた複数の縦平板状の板状部材26とを備えて構成されている。
【0041】
機体後部の左右中央部には、後輪支持ケース18が上下揺動可能に連結されており、この後輪支持ケース18の左右両側部から左右向きの回転軸心P1を中心とした左右の支軸18aが左右両横外側に延出されている。左右の後輪2のボス部材21は、円筒状に形成されており、このボス部材21が、左右の支軸18aに着脱可能に外嵌固定されている。
【0042】
後輪2のボス部材21から放射状に複数(この実施形態では3本)のスポーク22が延出されている。後輪2のスポーク22は、周方向での所定の取付ピッチ(この実施形態では約120度の取付ピッチ)で後輪2のボス部材21から延出されている。スポーク22の先端部には、パイプ製でリング状の芯材23aが固着されており、この芯材23aにゴム材23bが被覆溶着されて、リム23が構成されている。
【0043】
リム23の外周部には、リム23の幅と略同じ幅の複数の幅狭ラグ24が、周方向に所定の取付ピッチで一体形成されている。リム23の外周部には、リム23の幅より幅広の複数(この実施形態では12個)の幅広ラグ25(ラグに相当)が、周方向に所定の取付ピッチで一体形成されている。幅広ラグ25の取付ピッチは、幅狭ラグ24の取付ピッチよりも長く設定されており、幅広ラグ25は、幅狭ラグ24の2個おきに一個ずつ配設されている。
【0044】
従って、この実施形態での後輪2の幅(最大幅)は、幅広ラグ25の幅となり、後述する推進部材30の幅は、この後輪2の幅(最大幅)より幅広に設定されている。
【0045】
リム23の内周部は、断面形状がV字状に形成されており、これにより、リム23に付着した泥土を接地面側に落とし易くしてある(図6参照)。
【0046】
図4〜図6に示すように、後輪2のスポーク22と、スポーク22の近傍に位置するリム23の幅狭ラグ24とに亘って、スポーク22と同じ約120度の周方向での取付ピッチで、推進部材30が着脱可能に固定されている。なお、推進部材30は、推進部材30のみが独立して取引可能な形態で、後輪2に着脱可能に取り付けられている。
【0047】
推進部材30は、板金製で、左右方向に長い断面円形の丸パイプ材により構成された推進部材本体31と、この推進部材本体31の左右中央部に固着された縦平板状の左右のブラケット32とを備えて構成されている。
【0048】
左右のブラケット32の内面側の幅は、幅広ラグ25以外の部分のリム23の幅と略同じか、又は、幅広ラグ25以外の部分のリム23の幅より少し広く設定されており、リム23の径方向外側から推進部材30を無理なく脱着できるように構成されている。
【0049】
左右のブラケット32には、左右方向に貫通する第1及び第2取付穴32a,32bが形成されている。左右のブラケット32をリム23に径方向での外側から挟み込んで、リム23の外周部に形成された互いに隣接する二つの幅狭ラグ24の間に、推進部材本体31を接当させる。そして、第1取付穴32aに連結ボルト33を挿入し締め付け固定すると共に、第2取付穴32bに連結ピン34を装着することで、後輪2のリム23とスポーク22との交差部に推進部材30を強固に固定できる。
【0050】
この場合、第1取付穴32aに連結ボルト33を挿入し締め付け固定すると、連結ボルト33の外周部がスポーク22の後側の外周面と接当し、第2取付穴32bに連結ピン34を装着すると、連結ピン34の外周部がスポーク22の前側の外周面と接当するように、第1及び第2取付穴32a,32bの位置が形成されている。これにより、推進部材本体31の幅狭ラグ24への接当箇所、連結ボルト33のスポーク22への接当箇所、及び連結ピン34のスポーク22への接当箇所により、安定して推進部材30を後輪2に装着することができ、推進部材30の後輪2に対するガタツキ等を効果的に防止できる。
【0051】
また、推進部材本体31の外周面は、二つの幅狭ラグ24の傾斜面に面で接当し、左右のブラケット32の内面は、リム23の両側面に接当するので、例えば推進部材本体31の内側端部又は外側端部に偏った荷重が作用した場合であっても、この推進部材30に作用する荷重を安定して受け止め支持することができ、推進部材30の後輪2に対するガタツキ等を効果的に防止できる。
【0052】
左右のブラケット32には、径方向での推進部材本体31の外端から径方向外側に延出された延出部32Aが形成されている。これにより、この延出部32Aを圃場の耕盤Kに少し入り込ませることで、推進部材30と圃場の耕盤Kとの間に所定の抵抗を付与できるように構成されている。
【0053】
図1に示すように、推進部材30は、後輪2の複数のスポーク22の位置に、それぞれ着脱可能に装着されている。なお、この実施形態ではスポーク22が3本の後輪2を例に示したが、スポーク22が4本以上の後輪2であってもよく、この場合、4本以上のスポーク22の位置に、推進部材30をそれぞれ配設してもよい。
【0054】
推進部材30の数は、後輪2の幅広ラグ25の数(この実施形態では12個)の3分の2以下(8個以下)の数に設定されており、この実施形態では、スポーク22の数に合わせて、幅広ラグ25の数(この実施形態では12個)の4分の1の3個に設定されている。つまり、推進部材30の数は、幅広ラグ25の数の3分の2以下が好ましく、3個又は4個が最適であるが、5個以上であってもよい(幅広ラグ25の数が異なる後輪2の場合も同様である。)。
【0055】
これにより、約120度の周方向での取付ピッチで、合計3個の推進部材30が後輪2に装着されている。ここで、支軸18aの左右向きの回転軸心P1を通る田面Tに水平な仮想線Lを設定すると、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側又は下側の一方の領域に2個の推進部材30(図1の後輪2の状態では、仮想線Lの上側に2個の推進部材30)が位置するように、推進部材30の数が設定されている。
【0056】
図3に示すように、推進部材30の推進部材本体31は、後輪2から長さW内側に延出されており、推進部材30の推進部材本体31は、後輪2から長さW外側に延出されている。推進部材30(推進部材本体31)の長さは、約500〜約600mm(ミリメートル)、又は、500mm以上で600mm以下に設定されており、植付ピッチPの2倍以下の寸法に設定されている。つまり、推進部材30の長さは、植付ピッチPの2倍以下の寸法が好ましく、約500〜約600mmとすると最適であるが、異なる寸法を採用してもよい。
【0057】
推進部材30の後輪2から内側に延出された延出端の位置は、後輪2の内側に隣接する植付条ラインL1(作業対象ラインに相当)よりも内側に設定され、後輪2の内側に隣接する植付条ラインL1とその更に内側に位置する植付条ラインL2との左右中間部に設定されている。後輪2から後輪2の内側に隣接する植付条ラインL1までの距離W1は、後輪2の内側に隣接する植付条ラインL1から推進部材30の延出端までの距離W2と略同じ距離又は同じ距離に設定されている。
【0058】
推進部材30の後輪2から外側に延出された延出端の位置は、後輪2の外側に隣接する植付条ラインL3(作業対象ラインに相当)よりも外側に設定され、後輪2の外側に隣接する植付条ラインL3とその更に外側に位置する植付条ラインL4との左右中間部に設定されている。後輪2から後輪2の外側に隣接する植付条ラインL3までの距離W1は、後輪2の外側に隣接する植付条ラインL3から推進部材30の延出端までの距離W2と略同じ距離又は同じ距離に設定されている。
【0059】
[推進部材の効果]
図1に基づいて推進部材30の効果について説明する。深田又は超深田と称呼される、例えば、図1に示すような耕盤Kの上に粘土質の比較的高い泥土Gが多く堆積した圃場や、図示しないが耕盤が安定していない軟弱な圃場等で、苗を植え付ける場合がある。この場合、後輪2が圃場に深く入り込んだ状態になり易く、泥土Gの抵抗が大きくなって後輪2の推進力が多く必要になるが、例えば推進部材30を装着していない後輪2であると、後輪2の推進力が不足して後輪2が空転し、最悪の場合には、乗用型田植機の植付走行が不能になる場合がある。
【0060】
また、後輪2の推進力を向上させるために、補助車輪(図示せず)を装着した後輪2であると、耕盤Kの上に堆積した粘土質の比較的高い泥土Gが大量に後輪2及び補助車輪に付着して、泥土Gの付着した後輪2及び補助車輪がドーナツ状になり易く、泥土Gの付着した後輪2の回転駆動力が大きくなって、エンジンEや後輪2の駆動系に無理な負荷が作用し易かった。
【0061】
図1に示すように、後輪2に推進部材30を装着すると、耕盤Kの上に粘土質の比較的高い泥土Gが多く堆積した圃場であっても、推進部材30が後輪2と泥土Gとの間の抵抗になり易くなって、後輪2の推進力を向上できると考えられる。これにより、後輪2の推進力が不足して後輪2が空転し、乗用型田植機の植付走行が不能になる事態を回避できると考えられる。
【0062】
この場合、例えば推進部材30に粘土質の比較的高い泥土Gが付着したとしても、それぞれの推進部材30が離れた位置に配設されており、推進部材30における後輪2への固定部分以外の部分が開放されているので、泥土Gが複数の推進部材30に亘って付着することを防止できると考えられる。
【0063】
また、推進部材30は断面円形に構成されているので、推進部材30の湾曲面により付着した泥土が落ち易くなって、一つの推進部材30に多量の泥土が付着することを防止できると考えられる。これにより、後輪2に大量の泥土Gが付着して、エンジンEや後輪2の駆動系に無理な負荷が作用することを防止できると考えられる。
【0064】
図示しない耕盤が安定していない軟弱な圃場で苗を植え付ける場合においても同様に、上記の推進部材30による効果が得られると考えられる。また、耕盤が安定していない軟弱な圃場においては、推進部材30により後輪2が圃場に沈没し難くなるという効果も得られると考えられる。
【0065】
なお、深田又は超深田で水田作業機を走行させた走行実験において、後輪2に推進部材30を装着することで、上記効果が得られて比較的無理なく水田作業機を走行させることが確認できた。
【0066】
以上により、深田や超深田と称呼される圃場であっても、無理なく乗用型田植機を走行させて苗の植付作業の作業性を向上できると共に、エンジンE等の馬力ロスを低減することができ、乗用型田植機の燃費を改善できる。
【0067】
[発明の実施の第1別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]における推進部材30の構造、及び後輪2への取付構造に代えて、異なる推進部材30の構造、及び異なる後輪2への取付構造を採用してもよい。この別実施形態では、その一例を、図7及び図8に基づいて説明する。図7は、この別実施形態での推進部材40,50付近の側面図であり、図8は、この別実施形態での推進部材60,70付近の側面図である。
【0068】
図7(a)に示すように、推進部材40は、板金製で、左右方向に長い断面円形の丸パイプ材により構成された推進部材本体41と、この推進部材本体41の左右中央部に固着された縦平板状の左右のブラケット42とを備えて構成されている。推進部材40は、後輪2のリム23とスポーク22との交差部に、連結ボルト43及び連結ピン44で着脱可能に固定されている。推進部材40には、前述の[発明を実施するための最良の形態]における延出部32Aが設けられておらず、丸パイプ材により構成された湾曲面が推進部材40の全長に亘って圃場の耕盤Kに接当するように構成されている。
【0069】
図7(b)に示すように、推進部材50は、板金製で、左右方向に長い断面円形の丸パイプ材により構成された推進部材本体51と、この推進部材本体51の左右中央部に固着された縦平板状の左右のブラケット52とを備えて構成されている。後輪2のスポーク22には、左右の縦平板状の固定ブラケット56が固定されており、この固定ブラケット56に、推進部材50の左右のブラケット52が複数の連結ボルト53で着脱可能に固定されている。これにより、推進部材50が後輪2のスポーク22に着脱可能に固定されている。この場合、図示しないが、推進部材本体51をリム23の径方向での外側に配設する構成を採用してもよい。
【0070】
図8(a)に示すように、推進部材60は、板金製で、左右方向に長い断面円形の丸パイプ材により構成された推進部材本体61と、この推進部材本体61の左右中央部に固着された縦平板状の左右のブラケット62とを備えて構成されている。推進部材本体61はリム23の径方向での内側に配設され、左右のブラケット62がリム23の径方向での外側で連結ボルト63により固定されている。これにより、推進部材60が後輪2のリム23とスポーク22との交差部に着脱可能に固定されている。
【0071】
図8(b)に示すように、推進部材70は、板金製で、左右方向に長い断面円形の丸パイプ材により構成された推進部材本体71と、この推進部材本体71の左右中央部に固着された縦平板状の左右のブラケット72とを備えて構成されている。推進部材本体71はリム23の径方向での内側に配設され、左右のブラケット72が連結ボルト72でスポーク22に固定されている。これにより、推進部材70が後輪2のスポーク22に着脱可能に固定されている。
【0072】
スポーク22にはストッパ部材22aが固定されており、スポーク22の径方向での外端部分のゴム材23bとストッパ部材22aとの間にブラケット72が挟まれて、推進部材70の径方向での移動が規制されるように構成されている。なお、推進部材70をスポーク22に固定する場合、スポーク22に対する推進部材70の径方向での移動及びスポーク22の外周方向での推進部材70の回転を規制する手段として異なる構成を採用してもよい。
【0073】
なお、前述の[発明を実施するための最良の形態]及びこの別実施形態では、スポーク22とリム23との交差部、又はスポーク22に推進部材30〜70を固定した例を示したが、異なる位置に固定部材82を固定してもよく、例えば、交差部以外の位置のリム23に推進部材30〜70を固定してもよい。
【0074】
[発明の実施の第2別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、及び[発明の実施の第1別形態]においては、推進部材30〜70を後輪2に着脱可能に固定した例を示したが、図9及び図10に示すような推進部材80,90を構成してもよい。図9及び図10は、この別実施形態での推進部材80,90付近の詳細図であり、図9(a)及び図10(a)は、推進部材80,90付近の側面図であり、図9(b)及び図10(b)は、推進部材80,90付近の縦断背面図である。
【0075】
図9に示すように、推進部材80は、板金製で、スポーク22とリム23の芯材23aとの交差部に固定された左右に長い円筒状の固定部材82と、この固定部材82に左右スライド自在に内嵌された左右に長い丸棒で構成された推進部材本体81とを備えて構成されている。推進部材本体81には、複数の取付穴81aが形成されており、複数の取付穴81aのいずれか一つと固定部材82とに亘って連結ボルト83を挿入し、連結ボルト83を締め付け固定することで、推進部材本体81を固定部材82(後輪2)に固定できる。
【0076】
この場合、連結ボルト83を取り外して、固定部材82に対する推進部材本体81の位置を変更することで、後輪2から外側に突出する推進部材本体81の長さを段階的に長く又は短く変更調節することができ、後輪2から内側に突出する推進部材本体81の長さを段階的に短く又は長く変更調節できる。これにより、推進部材本体81の後輪2に対する左右方向での位置が、段階的に位置変更可能に構成されている。
【0077】
ここで、例えば推進部材本体81の最も外側の取付穴81aの位置で、推進部材本体81を固定部材82に固定することで、推進部材本体81の外側の延出端の位置を内側に位置変更して、推進部材本体81をコンパクトに内側に格納できる。また、例えば後輪2から内側又は外側に延出する推進部材本体81の長さを変更調節することで、圃場の条件(例えば耕盤Kの深さ等)に応じて推進部材本体81の内側又は外側への突出長さを変更できる。
【0078】
なお、この別実施形態では、スポーク22とリム23の芯材23aとの交差部に固定部材82を設けた例を示したが、異なる位置に固定部材82を配設してもよく、例えば、スポーク22の位置や、交差部以外のリム23の位置に固定部材82を配設してもよい。また、図示しないが、後輪2から内側又は外側に突出する推進部材本体81の長さを無段階で変更調節できるように、推進部材80を構成してもよい。
【0079】
図10に示すように、推進部材90は、板金製で、スポーク22の径方向での外側の端部に固定された側面視で断面形状がアングル状のブラケット92と、このブラケット92に連結ボルト93を介して揺動自在に支持された内側及び外側の推進部材本体91とを備えて構成されている。
【0080】
これにより、内側及び外側の推進部材本体91が、田面Tに沿って倒伏した使用姿勢(図10の実線での姿勢)と、スポーク22に沿って起立し格納した格納姿勢(図10の2点鎖線での姿勢)とに姿勢変更可能に構成されている。この場合、図示しないが、格納姿勢での推進部材91を、側面視又は背面視でスポーク22と重なる位置に配設してもよい。
【0081】
連結ボルト93を緩めて、格納姿勢での推進部材本体91を揺動倒伏させると、ブラケット92に固定された下部ストッパ92aに推進部材本体91が接当し位置決めされる。この状態で、連結ボルト93を締め付けることで、使用姿勢での推進部材本体91を保持できる。一方、連結ボルト93を緩めて、使用姿勢での推進部材本体91を起立揺動させると、ブラケット92に固定された上部ストッパ92bに推進部材本体91が接当し位置決めされる。この状態で、連結ボルト93を締め付けることで、格納姿勢での推進部材本体91を保持できる。
【0082】
これにより、推進部材本体91を格納姿勢に姿勢変更することで、推進部材本体91の延出端の位置を後輪2側に位置変更して、推進部材本体91を後輪2側にコンパクトに格納することができ、推進部材本体91が保管や運搬等の妨げになり難くなる。
【0083】
なお、推進部材本体91を格納姿勢及び使用姿勢に姿勢変更する構成として異なる構成を採用してもよく、図示しないが、例えば推進部材本体91をブラケット92に抜き差し式に固定するように構成してもよい。
【0084】
[発明の実施の第3別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、及び[発明の実施の第2別形態]においては、推進部材30〜90を後輪2とは別部品で構成した例を示したが、図11に示すように、推進部材100を後輪2に一体的に装備する構成を採用してもよい。図11は、この別実施形態での後輪2の詳細図であり、図11(a)は、後輪2の斜視図であり、図11(b)は、後輪2の側面図である。
【0085】
図11に示すように、リム23の外周部には、リム23より幅広の複数の幅広ラグ25(この実施形態では9個)が、周方向に所定の取付ピッチで一体形成されている。リム23の外周部には、幅広ラグ25の幅より更に幅広の複数の推進用ラグ100が、周方向に所定の取付ピッチで一体形成されている。推進用ラグ100の取付ピッチは、幅広ラグ25の取付ピッチよりも長く設定されており、推進用ラグ100は、幅広ラグ25の3個おきに一個ずつ配設されている。
【0086】
図11(a)に示すように、推進用ラグ100は、リム23の芯材23aに固着された板金製で板状のラグ用芯材101と、このラグ用芯材101に被覆溶着されたラグ用ゴム材102とを備えて構成されており、ラグ用ゴム材102は、リム23の芯材23aにラグ用芯材101を固着した状態で、リム23のゴム材23bと共に被覆溶着されている。これにより、スポーク22の近傍の位置に推進用ラグ100が後輪2に一体的に形成されて、推進用ラグ100が推進部材として機能するように構成されている。
【0087】
この別実施形態のように、推進用ラグ100が推進部材として機能するように構成した場合には、推進部材として機能する幅広の推進用ラグ100を装備した後輪2と、推進用ラグ100を装備していない通常の後輪2とを、支軸18aに着脱して交換することで、深田又は超深田において推進用ラグ100を形成した後輪2で無理なく苗の植付作業を行うことができると共に、浅田では通常の後輪2で支障なく苗の植付作業を行うことができる。
【0088】
[発明の実施の第4別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、及び[発明の実施の第3別形態]においては、後輪2から内側に延出した推進部材30〜100の長さWと、後輪2から外側に延出した推進部材30〜100の長さWとを同じ長さに設定した例を示したが、図12及び図13に示すような推進部材30〜100の内側及び外側に延出する長さを設定してもよい。図12は、この別実施形態での後輪2の縦断背面図であり、図13は、この別実施形態での後輪2の概略平面図である。なお、図12及び図13においては、推進部材30を例に説明するが、推進部材40〜100においても同様に適用できる。
【0089】
図12(a)に示すように、後輪2から外側にのみ推進部材30を延出してもよい。この場合、図示しないが、後輪2から内側にのみ推進部材30を延出する構成を採用してもよい。
【0090】
図12(b)に示すように、後輪2から外側に延出する推進部材30の部分の長さを、後輪2から内側に延出する推進部材30の部分の長さより長く設定してもよい。この場合、図示しないが、後輪2から内側に延出する推進部材30の部分の長さを、後輪2から外側に延出する推進部材30の部分の長さより長く設定してもよい。
【0091】
図13(a)に示すように、複数の推進部材30の長さを、長短に設定し、長さの長い推進部材30と、長さの短い推進部材30とを、交互に千鳥状に配設してもよい。この場合、一つの後輪2に備える推進部材30の全数が偶数であれば、長さの長い推進部材30の数と長さの短い推進部材30の数を同じ数に設定してもよく、一つの後輪2に備える推進部材30の全数が奇数であれば、長さの長い推進部材30の数と長さの短い推進部材30の数とを異なる数に設定してもよい。
【0092】
図13(b)に示すように、後輪2から外側に長く延出した推進部材30と、後輪2から内側に長く延出した推進部材30とを、交互に千鳥状に配設してもよい。この場合、一つの後輪2に備える推進部材30の全数が偶数であれば、外側に延出した推進部材30の数と内側に延出した推進部材30の数を同じ数に設定してもよく、一つの後輪2に備える推進部材30の全数が奇数であれば、外側に延出した推進部材30の数と内側に延出した推進部材30の数とを異なる数に設定してもよい。
【0093】
[発明の実施の第5別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、及び[発明の実施の第4別形態]においては、約120度の取付ピッチで3個の推進部材30〜100を後輪2に装着した例を示したが、図14に示すように、異なる取付ピッチで8個以下の推進部材30〜100を後輪2に装着する構成を採用してもよい。図14は、この別実施形態での推進部材30の配置を示す概略側面図である。なお、図14においては、推進部材30を例に説明するが、推進部材40〜100においても同様に適用できる。
【0094】
図14(a)に示すように、約180度の取付ピッチで、合計2個の推進部材30を後輪2に装着する構成を採用してもよい。この場合、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側及び下側の領域に1個の推進部材30が位置することになる。
【0095】
図14(b)に示すように、約90度の取付ピッチで、合計4個の推進部材30を後輪2に装着する構成を採用してもよい。この場合、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側及び下側の領域に2個の推進部材30が位置することになる。
【0096】
図14(c)に示すように、約60度の取付ピッチで、合計6個の推進部材30を後輪2に装着する構成を採用してもよい。この場合、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側及び下側の領域に3個の推進部材30が位置することになる。
【0097】
図14(d)に示すように、約45度の取付ピッチで、合計8個の推進部材30を後輪2に装着する構成を採用してもよい。この場合、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側及び下側の領域に4個の推進部材30が位置することになる。
【0098】
なお、図示しないが、約72度の取付ピッチで、合計5個の推進部材30を後輪2に装着する構成を採用してもよく、この場合、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側又は下側の一方の領域に3個の推進部材30が位置することになる。また、図示しないが、約51度の取付ピッチで、合計7個の推進部材30を後輪2に装着する構成を採用してもよく、この場合、仮想線L上に推進部材30が位置しない状態で、仮想線Lの上側又は下側の一方の領域に4個の推進部材30が位置することになる。
【0099】
[発明の実施の第6別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、及び[発明の実施の第5別形態]においては、水田作業機として乗用型田植機を例に示したが、乗用型直播機(乗用型播種機)においても同様に適用できる。図15は、この別実施形態での乗用型直播機の全体側面図であり、図16は、この別実施形態での播種ピッチPの位置関係を説明する平面図である。
【0100】
図15及び図16に示すように、乗用型直播機は、前述の施肥装置13付きの乗用型田植機を乗用型直播機として転用したものであり、昇降リンク機構5の後部に、苗植付装置6に代えて、6条播種仕様の播種装置200が連結されている。
【0101】
昇降リンク機構5の後部に横長のフレーム部材201が前後向きの軸心周りでローリング自在に連結支持されており、このフレーム部材201の左右両側部から支柱202が立設されている。支柱202の上下中央部には、3個のホッパ203が並列支持されている。各ホッパ203は、2条単位に構成されており、各ホッパ203の下部に2条分の繰出し機構204がそれぞれ装備されている。
【0102】
繰出し機構204は、クランク機構205を介して伝動軸19と連動連結されており、伝動軸19からの回転駆動力により繰出し機構204の繰出しロール(図示せず)が間欠的にピッチ送り回転駆動されるように構成されている。
【0103】
フレーム部材201の左右両側部及び左右中央部には、支持フレーム206を介して3個の整地フロート207が支持されており、各整地フロート207には、左右一対の作溝器208が取り付けられている。作溝器208と繰出し機構204とが供給ホース209を介して接続されており、繰出し機構204で所定量ずつ間欠的に繰り出された種籾が、作溝器208によって田面Tに形成された埋設溝に、1株分ずつ所定の播種ピッチPで播かれるように構成されている。
【0104】
左右の後輪2には、それぞれ約120度の取付ピッチで合計3個の推進部材30が着脱自在に固定されている。推進部材30の後輪2から内側に延出された延出端の位置は、後輪2の内側に隣接する播種ラインL1(作業対象ラインに相当)と、その更に内側に位置する播種ラインL2との左右中間部に設定されており、推進部材30の後輪2から外側に延出された延出端の位置は、後輪2の外側に隣接する播種ラインL3(作業対象ラインに相当)と、その更に外側に位置する播種ライン(図示せず)との左右中間部に設定されている。
【0105】
なお、この別実施形態では、後輪2に推進部材30を装備した例を示したが、後輪2に推進部材40〜100を装備する構成を採用してもよい。また、図示しないが、乗用型田植機を転用した乗用型直播機を例に示したが、専用の乗用型直播機においても同様に適用できる。
【0106】
[発明の実施の第7別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第5別形態]、及び[発明の実施の第6別形態]においては、推進部材本体31,41,51,61,71,91を丸パイプ材で構成し、前述の[発明の実施の第4別形態]においては、推進部材本体81を丸棒で構成した例を示したが、推進部材本体31,41,51,61,71,91を丸棒で構成してもよく、推進部材本体81を丸パイプ材で構成してもよい。
【0107】
また、推進部材本体31〜91の材料として異なる断面形状の材料を採用してもよい。具体的には、例えば、中空の材料であれば、角パイプ材を採用してもよく、中実の材料であれば、角材を採用してもよい。また、アングル材、チャンネル材、フラットバー等を採用してもよく、平板(鋼板)を折り曲げ又はプレス成形したもの等を採用してもよい。
【0108】
また、推進部材本体31〜91の材質として異なる材質を採用してもよく、例えば鉄以外の異なる金属、木材、樹脂、硬質のゴム材、又はこれらの組み合わせを採用してもよい。
【0109】
また、推進部材を連結ボルトや連結ピンによって後輪2に固定する構成に代えて、例えば、推進部材をロック金具等(図示せず)により簡易に後輪2に着脱可能に固定する構成を採用してよく、例えば、推進部材(推進部材本体)を溶接等により恒久的に後輪2に固定する構成を採用してもよい。推進部材(推進部材本体)を溶接等により恒久的に固定した場合には、前述の[発明の実施の第3別形態]と同様に、推進部材を装備した後輪2と推進部材を装備していない通常の後輪2とを着脱交換するように構成してもよい。
【0110】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、及び[発明の実施の第6別形態]においては、推進部材30〜100を後輪2に装備した例を示したが、推進部材30〜100を前輪1に装備する構成を採用してのよく、推進部材30〜100を前輪1及び後輪2の両方に装備する構成を採用してもよい。
【0111】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、及び[発明の実施の第6別形態]においては、幅広ラグ25を備えた後輪2に推進部材30〜100を装備した例を示したが、幅広ラグ25を備えていない後輪2に推進部材30〜100を装備する構成を採用してもよい。この場合、リム23の幅が車輪2の幅(最大幅)となる。
【0112】
[発明の実施の第8別形態]
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、[発明の実施の第6別形態]、及び[発明の実施の第7別形態]においては、6条植え付け仕様の乗用型田植機及び6条播種仕様の乗用型直播機を例に示したが、異なる植え付け条仕様の乗用型田植機及び異なる播種条仕様の乗用型直播機においても同様に適用できる。
【0113】
前述の[発明を実施するための最良の形態]、[発明の実施の第1別形態]、[発明の実施の第2別形態]、[発明の実施の第3別形態]、[発明の実施の第4別形態]、[発明の実施の第5別形態]、[発明の実施の第6別形態]、及び[発明の実施の第7別形態]においては、水田作業機として乗用型田植機及び乗用型直播機を例に示したが、歩行型田植機又は歩行型直播機においても同様に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】乗用型田植機の全体側面図
【図2】乗用型田植機の全体平面図
【図3】推進部材と植付条との位置関係を説明する後輪付近の平面図
【図4】推進部材付近の側面図
【図5】推進部材付近の断面図
【図6】推進部材付近の断面図
【図7】発明の実施の第1別形態での推進部材付近の側面図
【図8】発明の実施の第1別形態での推進部材付近の側面図
【図9】発明の実施の第2別形態での推進部材付近の詳細図
【図10】発明の実施の第2別形態での推進部材付近の詳細図
【図11】発明の実施の第3別形態での後輪の詳細図
【図12】発明の実施の第4別形態での後輪の縦断背面図
【図13】発明の実施の第4別形態での後輪の概略平面図
【図14】発明の実施の第5別形態での推進部材の配置を示す概略側面図
【図15】発明の実施の第6別形態での乗用型直播機の全体側面図
【図16】発明の実施の第6別形態での播種ピッチの位置関係を説明する平面図
【符号の説明】
【0115】
2 後輪(車輪)
22 スポーク
23 リム
25 幅広ラグ(ラグ)
30 推進部材
L1 植付条ライン(作業対象ライン)
L3 植付条ライン(作業対象ライン)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪の幅より幅広に設定され、
車輪に取り付けられた状態で、車輪から内側又は外側へ延出される延出端の位置が、車輪の内側又は外側に隣接する作業対象ラインと略同じ位置、又は、前記作業対象ラインを越える位置に設定されている推進部材。
【請求項2】
複数の請求項1記載の推進部材を、右及び左の車輪の外周部に備えてある水田作業機。
【請求項3】
車輪の幅より幅広に設定され、
車輪のスポークの位置に配設される推進部材。
【請求項4】
複数の請求項3記載の推進部材を、右及び左の車輪の外周部に備えてある水田作業機。
【請求項5】
車輪のラグの幅よりも幅広に設定され、
前記ラグの車輪への周方向での取付ピッチよりも長い取付ピッチで車輪に取り付けられる推進部材。
【請求項6】
複数の請求項5記載の推進部材を、右及び左の車輪の外周部に備えてある水田作業機。
【請求項7】
右及び左の車輪に備える前記推進部材の数を、それぞれ8個以下に設定してある請求項6記載の水田作業機。
【請求項8】
前記推進部材を、車輪の外周部に着脱可能に取り付けてある請求項2,4,6,7のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項9】
前記推進部材を、車輪のスポークに固定してある請求項2,4,6〜8のいずれか一項に記載の水田作業機。
【請求項10】
右の車輪の外周部に備えられた前記推進部材の右側の延出端の位置を、左側に位置変更可能に構成すると共に、左の車輪の外周部に備えられた前記推進部材の左側の延出端の位置を、右側に位置変更可能に構成してある請求項2,4,6〜9のいずれか一項に記載の水田作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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