説明

揚げカス処理装置

【課題】揚げカスや他の異物が入り込んできたような場合であっても、スライダーの往復運動を回転撹拌アームの揺動運動に確実に変換できるようにする。
【解決手段】天ぷらカスやフライカスなどの揚げカスを圧縮して減容させるとともに含有する油を搾る装置において、往復運動―揺動運動変換手段22は、回転攪拌アームに設けられる回動軸19に、該回動軸19の軸心19Zと交差して下向き方向に揺動アーム23を突設するとともにこの揺動アーム23の先端23B側に下方に向けて開口する凹部24を設け、開口部25を介して挿入され凹部24の開口部25側と該凹部24の奥部27側間を摺動可能な摺動部材28をスライダ8と一体的に設ける。揚げカスなどが凹部24に付着しても、凹部24は下向きのため直ちに落下して摺動部材28の往復運動を揺動アーム23の揺動運動に確実に伝達することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天ぷらカス,フライカス,その他の揚げカスを、縮減するとともに含有油を分離,搾出する揚げカス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のものとして天ぷらカスやフライカスなどの揚げカスを圧縮して減容させるとともに含有する油を搾る装置であって、揚げカスの投入されるホッパーと、該ホッパーの底側から揚げカスが落下して前側に供給されて揚げカスが圧縮される室であって、圧縮されたカスの出口及び油搾出孔を有する圧縮室と、該圧縮室内で前後方向にスライドして前記揚げカスを押すスライダと、該スライダの前後方向往復駆動機構と、前記ホッパー内において揚げカス送り用の前後方向に揺動する回転撹拌アームと、前記スライダと前記回転撹拌アームとの間に介在し、前記スライダの前後往復運動を前記回転撹拌アームの揺動運動に変換する往復運動―揺動運動変換手段を備えた揚げカス処理装置が知られている。尚、前記前後方向と左右方向は単に相互に直交している方向性を説明している。
【0003】
そして、従来技術では、往復運動―揺動運動変換手段は、スライド側にラックが一体的に設けられるとともに、このラックは歯が上向きとなって前後方向に連続しており、一方回転撹拌アームを揺動するため回転撹拌アーム側に接続される回動軸の端部にピニオンが同軸状に設けられ、このピニオンはラックの上面に噛合するように載置している。
【0004】
前記従来技術においては、スライダと一体的なラックの上面に、回転撹拌アームの回動軸のピニオンが載置してラックに噛合して、スライダの後方向、前方向の往復運動を回動軸の正転、逆転の往復揺動に変換するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−13802号公報
【特許文献2】特開2010−51934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来技術においては、ラックの上面にピニオンを配置するものであり、揚げカス処理時に揚げカスがラックの上面に誤って落下したような場合には、ラックの歯とピニオンの歯との間に揚げカスが挟まれて、ラックの運動をピニオンに伝動できなくなり、この結果ホッパーに収容された揚げカス処理が開口している底側に送り込まれずに、圧縮室に供給されなくなってしまう。
【0007】
さらに、ホッパーが圧縮室上に固定されずにホッパーが載置してしまうような場合には、ラックの歯とピニオンの歯との間に揚げカスが挟まると、ホッパーが浮き上がってしまうという問題があった。
【0008】
解決しようとする問題点は、スライダの前後往復運動を回転撹拌アームの前後揺動運動に変換する往復運動―揺動運動変換手段において、揚げカスや他の異物が入り込んだ場合であっても、スライダの往復運動を回転撹拌アームの揺動運動に確実に変換できるようにする点である。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1の発明の揚げカス処理装置は、天ぷらカスやフライカスなどの揚げカスを圧縮して減容させるとともに含有する油を搾る装置であって、揚げカスの投入されるホッパーと、該ホッパーの底側から揚げカスが落下して前側に供給されて揚げカスが圧縮される室であって、圧縮されたカスの出口及び油搾出孔を有する圧縮室と、該圧縮室内で前後方向にスライドして前記揚げカスを押すスライダと、該スライダの前後方向往復駆動機構と、前記ホッパー内において揚げカス送り用の前後方向に揺動する回転撹拌アームと、前記スライダと前記回転撹拌アームとの間に介在し、前記スライダの前後往復運動を前記回転撹拌アームの前後方向の揺動運動に変換する往復運動―揺動運動変換手段を備えた揚げカス処理装置において、
前記往復運動―揺動運動変換手段は、前記回転撹拌アームに設けられる回動軸に、該回動軸の軸心方向と交差して下向き方向に揺動アームを突設するとともにこの揺動アームの先端側に下方に向けて開口する凹部を設け、前記開口部を介して挿入され前記凹部の前記開口部と該凹部の奥部側間を摺動可能な摺動部材を前記スライダと一体的に設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、凹部に揚げカスなどが付着しても揺動アームは下向きであるので、揚げカスなどは落下して、凹部と摺動部材との摺動を常時適切に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施例1を示す後側から見た全体斜視図である。
【図2】同往復運動―揺動運動変換手段の説明図である。
【図3】同往復運動―揺動運動変換手段の斜視図である。
【図4】同ホッパーの一部切り欠き平面図である。
【図5】同圧縮室の上方から見た斜視図である。
【図6】同圧縮室の下から見た斜視図ある。
【図7】同油搾出孔まわりの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明における好適な実施の形態について、添付図面を参照して説明する。尚、以下に説明する実施の形態は、特許請求の範囲に記載された本発明の内容を限定するものではない。また、以下に説明される構成の全てが、本発明の必須要件であるとは限らない。
【実施例1】
【0013】
図は実施例1を示しており、機枠1の上面に処理すべき揚げカス(図示せず)を載せる揚げカス載置面2が設けられるとともに、この揚げカス載置面2の中央にホッパー3の上面開口4が設けられている。機枠1の中段にはホッパー3から供給される揚げカスを圧縮して減容させるとともに含有する油を搾る圧搾手段5が台板6に設けられており、この圧搾手段5にはモータ7とモータ7の回転を減速するとともにモータ7の回転を後述するスライダ8の前後往復運動に変換する前後方向往復駆動機構9が設けられている。そして、機枠1の下段には圧搾手段5に圧搾されて得られた油の油回収容器10と圧搾されて残渣となった搾りカスの回収容器11が前後方向に並設されている。
【0014】
圧搾手段5は、ホッパー3から揚げカスが供給される圧縮室12と、圧縮室12内で前後方向にスライドして揚げカスを押すスライダ8とを備える。圧縮室12は前側にホッパー3の底側から揚げカスが落下して供給されて揚げカスが圧縮される室であって、前側上部にホッパー3の開口底部13が接続する接続口部14が設けられて、揚げカスがホッパー3の開口底部13、接続口部14を介して圧縮室12内に供給されるようになっている。また圧縮室12内の前側上面には下向きの突起15が左右全幅に設けられて、この突起15によって圧縮室12の揚げカス通路を狭めており、この突起15の前側に搾りカスの出口16側が設けられる。また、圧縮室12内の前後方向の中間の底部に圧搾された油の油搾出孔17が設けられている。そして、モータ7の回転力が前後方向往復駆動機構9を介してスライダ8の前後方向往復運動に変換され、スライダ8が圧縮室12内で前方向にスライドして圧縮室12内の揚げカスを圧縮し、スライダ8が圧縮室12内で図7のようにスライドして後退して、圧縮室12内に新たな揚げカスを供給することで、圧縮室12内で揚げカスが断続的に圧搾されるようになっている。そして、圧搾された油は樋(図示せず)などを介して油回収容器10に回収され、また絞りカスは回収容器11に落下して回収されるようになっている。
【0015】
前記ホッパー3内に設けられホッパー3に収容された揚げカスを攪拌して、揚げカスをスムースに開口底部13、接続口部14に落し込むための回転攪拌アーム18は、ホッパー3の開口底部13よりやや上方に配置されるもので、ホッパー3内で軸心19Zの方向が左右方向に水平に設けられた回動軸19に、該回動軸19の長手方向と直交する方向に放射状となって突設するアーム本体20と、このアーム本体20に固定した左右方向の小突起21とを備えており、回動軸19の長手方向(軸心19Zの方向)、すなわち左右方向の一側19Aはホッパー3の一側面を貫通して、ホッパー3の一側面の外側に一体的に設けられたブラケットなどと称する一側支持部材3Aに軸受3Bを介して回動自在に支持されている。一方、回動軸19の他側はホッパー3の他側面或いは他側面の外側に一体的に設けられた他側支持部材(図示せず)に回動自在に設けられている。
【0016】
そして、外側に突設した一側19Aの端とスライダ8との間に、スライダ8の前後往復運動を回転攪拌アーム18の前後揺動運動に変換する往復運動―揺動運動変換手段22が介在する。この変換手段22においては、回動軸19の外側に突設した一側19Aの端に揺動アーム23の基端23Aが固定されるとともに、この揺動アーム23の先端23Bは下向きに配置されている。
【0017】
前記揺動アーム23は、回動軸19の軸心19Zを揺動中心として先端23Bを常時下向き状態で前後方向に揺動するものであり、この揺動アーム23の左右方向の厚みは比較的薄く下向きに細長い板状部材によって形成されており、揺動アーム23の先端23Bは回動軸19の軸心19Zを通って直交する長手方向中心線23Cと直交して、その先端23Bの縁に軸心19Z、すなわち揺動中心側に向けて凹部24が切り欠き状に形成されている。この凹部24は開口部25を下向きとするとともに両辺部26を間隔をおいて前後方向に配置したものであり、奥部27はアーチ状の円弧部となっている。
【0018】
そして、スライダ8の後側であって左右方向に幅大に形成されたその一側に、凹部24に摺動自在に嵌合或いは遊嵌する摺動部材28を一体的に固定する。この摺動部材28はスライダ8の前後往復運動に伴って、該スライダ8と一体となって水平状態を保って前後方向に往復運動するものであって、揺動アーム23が揺動されることで摺動部材28は開口部25側と奥部27側間を往復摺動可能なように設けられている。この摺動部材28は側面が円形であって、その水平な軸心28Zは左右方向に向けられており、水平短円柱、短円管或いはローラなどにより形成されている。そして、その円状外径Dは凹部24の両辺部26間の幅Wに等しいか小さく形成されている(D=W,D<W)。実施例では摺動部材28はスライダ8よりやや上方となって前方に突設するブラケットなどより形成される支持部材29を介在して配置されており、支持部材29の内側、すなわち左右方向の他側に片持ち状となって、そして摺動部材28が凹部24内に常時摺動可能に設けられている。実施例では支持部材29の内側に固定具30によって軸受31が固定されており、この軸受31に摺動部材28が回動自在に設けられている。尚、摺動部材28は支持部材29に対して回動可能ではなく固定されていてもよく、また摺動部材28は直接的にスライダ8に設けられていてもよい。さらに、支持部材29が往復運動時に水平状態を保持できるように台板6の上面などに支持部材29の下面を摺動自在に支持するような回動ローラのような摺動支持部材を設けてもよい。
【0019】
次に前記構成についてその作用を説明する。ホッパー3の圧搾手段5への取り付けは、開口底部13を接続口部14に連通するようにホッパー3を圧縮室12上に載置する。この際、図2に示すように摺動部材28の上方から下向きになっている揺動アーム23の凹部24を被せるように嵌合させて、ホッパー3の設置を完了させる。そして、モータ7を始動すると、前後方向往復駆動機構9によってスライダ8が圧縮室12を前後方向に往復運動し、またこのスライダ8の前後方向の往復運動が支持部材29を介して摺動部材28に伝達されて、台板6上を摺動部材28は前後方向に水平方向を保って往復運動する。このように往復運動する摺動部材28が図2に示す一点鎖線のように前方に移動すると、摺動部材28が嵌合状態を保ったまま揺動アーム23を前方に押し出し、このため回動軸19、ひいては回転攪拌アーム18を時計方向回りに回動する。次にスライダ8が後方に移動して摺動部材28が図2に示す実線のように後方に移動すると、摺動部材28が嵌合状態を保ったまま揺動アーム23を後方に引き込み、このため回動軸19、ひいては回転攪拌アーム18を反時計方向回りに回動する。このように回動軸19、ひいては回転攪拌アーム18はスライダ8が前後方向に往復運動することで、回動軸19、ひいては回転攪拌アーム18が連続して揺動できるようになっている。
【0020】
次に、揚げカス載置面2に揚げカスを載せると、この揚げカスは上面開口4よりホッパー3内に落し込まれ、この落し込まれた揚げカスは回転攪拌アーム18によって撹拌されて順次開口底部13、接続口部14を介して圧縮室12内に供給される。そして、圧縮室12内に供給された揚げカスはスライダ8が往復運動することで、揚げカスを突起15側に押し込んで揚げカスを圧搾して油を回収する。
【0021】
このような、揚げカスの圧搾途中において、揚げカスが凹部24に入り込んでも凹部24は開口部25が下向きとなっているので、直ちに落下して、内側に溜まるようなことはない。このためスライダ8の連続する往復運動を、摺動部材28、摺動部材28に嵌合する凹部24を有する揺動アーム23を介して連続する揺動運動に変換でき、常時回転攪拌アーム18が連続して揺動することで、揚げカスを連続して圧縮室12に供給することができる。
【0022】
以上のように、前記実施例では、往復運動―揺動運動変換手段22は、回転攪拌アーム18に設けられる回動軸19に、該回動軸19の長手方向と交差して下向き方向に揺動アーム23を突設するとともにこの揺動アーム23の下端側に下方に向けて開口する凹部24を設け、開口部25を介して挿入され凹部24の開口部25側と該凹部24の奥部27側間を摺動可能な摺動部材28をスライダ8と一体的に設けたことで、揚げカスなどが凹部24などに付着しても、揺動アーム23が下向きのために揚げカスなどは落下してしまい、揚げカスなどで阻害されずに揺動アーム23を揺動して、揚げカスを連続して圧縮室12に供給することができる。
【0023】
また、ホッパー3を圧縮室12に上方から載置するようにホッパー3を降下させる際に、開口部25が下向きの凹部24を摺動部材28の上方から被せるようにして両者を嵌合でき、逆にホッパー3を圧縮室12より上方に持ち上げる際に、下向きの凹部24が摺動部材28より抜き出て両者の嵌合状態を解除することができ、ホッパー3の圧縮室12への着脱と同時に揺動アーム23の凹部24と摺動部材28との嵌合、嵌合解除を簡単に行うことができる。
【産業上の利用可能性】
【0024】
以上のように本発明に係る揚げカス処理装置は、各種の用途に適用できる。
【符号の説明】
【0025】
3 ホッパー
8 スライダ
9 前後方向往復駆動機構
12 圧縮室
16 出口
17 油搾出孔
18 回転攪拌アーム
19 回動軸
22 往復運動―揺動運動変換手段
23 揺動アーム
23B 先端
24 凹部
25 開口部
27 奥部
28 摺動部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
天ぷらカスやフライカスなどの揚げカスを圧縮して減容させるとともに含有する油を搾る装置であって、揚げカスの投入されるホッパーと、該ホッパーの底側から揚げカスが落下して前側に供給されて揚げカスが圧縮される室であって、圧縮されたカスの出口及び油搾出孔を有する圧縮室と、該圧縮室内で前後方向にスライドして前記揚げカスを押すスライダと、該スライダの前後方向往復駆動機構と、前記ホッパー内において揚げカス送り用の前後方向に揺動する回転撹拌アームと、前記スライダと前記回転撹拌アームとの間に介在し、前記スライダの前後往復運動を前記回転撹拌アームの前後方向の揺動運動に変換する往復運動―揺動運動変換手段を備えた揚げカス処理装置において、
前記往復運動―揺動運動変換手段は、前記回転撹拌アームに設けられる回動軸に、該回動軸の軸心方向と交差して下向き方向に揺動アームを突設するとともにこの揺動アームの先端側に下方に向けて開口する凹部を設け、前記開口部を介して挿入され前記凹部の前記開口部と該凹部の奥部側間を摺動可能な摺動部材を前記スライダと一体的に設けたことを特徴とする揚げカス処理装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2012−250162(P2012−250162A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123758(P2011−123758)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(392017141)株式会社ハイサーブウエノ (4)
【Fターム(参考)】