説明

揚水ポンプ

【課題】エネルギーコスト及び炭酸ガス発生量を低減できる建築物屋上緑化及び壁面緑化用水輸送手段を提供することを目的とした。
【解決手段】空気の揚力を利用することで消費エネルギーが少なく、炭酸ガス発生がほとんどない建築物屋上緑化及び壁面緑化用水輸送手段を得ることができた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水を低位置から高位置まで移送する揚水ポンプ、より詳細には建築物の屋上緑化及び壁面緑化用に利用する揚水ポンプに関する。
本発明は他に地面より下方にある井戸水を地上まで揚水するポンプに関する。
更には海水を用いた魚介類、魚介類の容器、魚介類の処理設備或いは処理室の洗浄に利用される海水の揚水ポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
現在水の移送に用いられるポンプは主として電力により駆動され、極く小さいものから大きいものまで各種の分野で利用されている。
しかし、電力はエネルギーコストが高価であり、特に垂直方向に低所から高所に水を移送する場合にはポンプ能力を大にするか、或いは多段にすることが必要とされ、固定費及び運転コストが無視できない。
一方、発電方法を考えると原子力発電は安全性の議論が盛んになされている状況であり、火力発電は化石燃料に起因する炭酸ガスの発生、地球規模での温暖化の問題で深刻な課題を抱えている。
また都会を中心に高層建築物が増大しており、冷暖房で多大のエネルギーを消耗するばかりでなく、環境温度の上昇に悪影響を与えている。この建築物の屋上緑化或いは壁面緑化は冷暖房エネルギーの低減に寄与することが期待されているが、そのために必要な水の移送手段は水道水の利用のみであり、コスト的な問題が残されていた。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明では前記の問題点を考慮し、エネルギーコストを低減でき、且つ炭酸ガス排出量を少なくすることで地球温暖化を抑制に寄与可能な、揚水ポンプの提供及びそれを利用して建築物屋上緑化及び壁面緑化を容易にすることを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明では上記課題を解決するために、化石燃料を使用せず、自然エネルギーを利用した、より詳細には自然エネルギーの中でも従来実用化が皆無であった空気の揚力を利用した揚水ポンプを用い上記課題の解決を図った。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、空気の揚力を利用したことで、空気の供給以外には一切のエネルギーを必要とせずに水を高位置に移送できる。移送できる高さも移送する水の水量、空気塊の容量及び導管径を適切に調整することにより数メートルから数十メートルまで可能である。
自然エネルギーの有効利用により大幅にエネルギーコストを低減でき、同時に化石燃料の使用量削減、炭酸ガス排出量削減に寄与できる。エアポンプの電源を太陽電池或いは風力発電とすることにより化石燃料使用量は限りなく零に近づけることが可能である。
またこの移送水を利用した屋上緑化或いは壁面緑化は建築物外面の温度上昇を抑制でき、冷暖房のエネルギー塞源にも寄与できる。
最近の建築物は高層建築が増えているが、本発明の空気の揚力を利用した方法では重力が作用している生活空間内ではほとんど制限なしに利用できる自然エネルギーであり、移送する高さが高いほど電力コストとの差が顕著に現れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
図1〜図3に本発明の装置の概要を示す。
先ず電源Eの電力でエアポンプFを作動し、空気貯蔵室Cの底部から空気を供給する。電源Eは特に制約はなく利用できるが、太陽電池、風力発電装置がより好ましい。
所定の空気量が空気貯蔵室Cに蓄えられた時点で電磁式弁Gを開放する。弁Gは解放時開口部が全開するバタフライ弁或いは蝶番式弁である。弁Gを通過した空気塊Jは水貯蔵室Bの水の大部分及び連絡空間Dの水の一部Iを該空気塊の上方に伴いながら導管Aを上昇する。
弁Gは直後に再度閉じられ、空気貯蔵室Cには再び空気が集積されていく。水貯蔵室Bには一定方向(L方向)にしか開かない弁Hを通り、外界水Nから水が水貯蔵室B及び連絡空間D中に充填される。
空気貯蔵室Cの低部には少なくとも1個以上の開口部Mが備えられており、外界水Nと通じている。
タンクT中の外界水Nの水面Sは少なくとも該水貯蔵室Bが浸漬するに十分な高さにある。
空気貯蔵室C及び水貯蔵室Bは角柱或いは円柱であり、空気貯蔵室Cの断面積は水貯蔵室Bのそれの2倍以上である。連絡空間Dは角錐台形或いは円錐台形であり、空気が残存しない傾斜面の壁を有している。
本装置のエアポンプFは空気貯蔵室Cの底部へ空気を加圧無しに導入するだけでよく、大きな負荷が掛からないため小型で、出力の小さなもので十分対応できることも特徴である。
導管Aを上昇した水はその出口で直に、或いは受け器Oに一端蓄えられた後に建築物の屋上緑化或いは壁面緑化用に供される。
ここでタンクTを地下に水面を有する井戸に置き換えれば井戸水の汲み上げ用とすることができ、材料をプラスチック等耐食性の材料にすれば腐食無しに海水も取り扱うことができ、その場合も構造が単純であるため低コストで装置を製造できる。
【実施例】
本発明の実施例を説明する。
【実施例1】
【0007】
図1に示す装置をタンクT中に配置し、固定後水貯蔵室Bが水面より下方に位置するまでタンクT中に水を供給し、水貯蔵室B及び連絡空間D内に水を充満させた。
次いでエアポンプFを用い、100ml/分の速度で空気を空気貯蔵室Cに供給した。バタフライ弁G(開口時の口径50mmΦ)は空気の高さPが100mmで開くよう設定した。
空気貯蔵室Cに空気が約2000ml供給されるとバタフライ弁Gが開き、空気貯蔵室Cの空気は空気塊Jとなって連絡空間Dを経て、水貯蔵室Bへ上昇した。空気塊Jはそのまま水貯蔵室B中の水Iを上方に保持し、導管Aを上昇して3000mm上方に位置した出口から受け器Oへ水を移送した。
この時の1回当たりの水輸送量は約250mlであった。即ち、この水250mlは約2000mlの空気の揚力のみの作用で、約3000mm輸送された。
【実施例2】
【0008】
エアポンプFによる空気供給量を50ml/分の速度とした以外は実施例1と同様に操作した。空気貯蔵室Cに空気が約2000ml貯蔵されるまでの時間が約2倍になったが、水は上方に移送され、排出された。その水量は約250ml/1回であった。
【実施例3】
【0009】
導管Aを長さ10mの軟質ビニル管とした以外は実施例1と同様に操作した。水は実施例1同様瞬時に上昇し、10m上方の出口から排出された。水量は約250ml/1回であった。
【比較例1】
【0010】
実施例1において、バタフライ弁Gを取り外した以外は実施例1と同様にしてエアポンプFにより空気を供給した。供給された空気はそのまま細かい気泡となり上方に上昇するだけであり、水は移送できなかった。
【比較例2】
【0011】
電磁式バタフライ弁Gを空気の高さPが20mmのとき開くよう設定した以外は実施例1と同様に操作した。空気塊Jは水を完全に捕捉できず、水は上方へいく手前で全て落下した。
このことは一定の水量を上方へ移送するためには少なくとも一定の纏まった空気塊Jを形成する空気量を必要とすることを示している。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】 本発明の装置の一実施例の概略説明図である。
【図2】 本発明の空気塊が水を押し上げる初期段階のイメージ図である。
【図3】 本発明の空気塊が導管中で水を押し上げているイメージ図である。
【符号の説明】
【0013】
A ペン状構造体の軸
B コイル状端部
C 変形可能なキャップ状端部
D 金属粒子
E 中空部分
F コイルの伸縮方向
G 弁
H 水導入弁
I 輸送される水
J 空気塊
K 空気塊の上昇方向
L 水貯蔵室への水の流れ
M 空気貯蔵室の開口部
N タンク中の外界水
O 受け器
P 空気貯蔵室に貯蔵された空気の高さ
S タンク中の水面
T タンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水を空気の揚力を利用して低位置から高位置まで移送する手段であって、水タンクの水面以下に配置した移送する水の貯蔵室、その下方に設けた連絡空間と空気貯蔵室及び空気貯蔵室の上方に供えられた電磁式バタフライ弁或いは蝶番弁から構成され、空気貯蔵室に連続的或いは断続的に注入した少なくとも水貯蔵室の容積の5倍以上の貯蔵空気を断続的に該バタフライ弁或いは蝶番弁を介して連絡空間及び水貯蔵室へ導入し、集積した空気塊で水貯蔵室の水を建築物屋上まで移送することを特徴とする屋上緑化及び壁面緑化用揚水ポンプ。
【請求項2】
弁の開口面の面積が水貯蔵室の底面面積と同等或いはそれ以上であることを特徴とする請求項1記載の屋上緑化及び壁面緑化用揚水ポンプ。
【請求項3】
電磁式バタフライ弁或いは蝶番弁は空気貯蔵室の空気高さで自動的に開閉することを特徴とする請求項1、2記載の屋上緑化及び壁面緑化用揚水ポンプ。
【請求項4】
構成部材が有機樹脂及び/或いは耐食性材料であることを特徴とする請求項1〜3記載の屋上緑化及び壁面緑化用揚水ポンプ。
【請求項5】
用途が緑化用以外の井戸水の揚水用であることを特徴とする請求項1〜4記載の揚水ポンプ。
【請求項6】
用途が緑化用以外の魚介類、魚介類の容器、魚介類の処理設備或いは魚介類の処理室の洗浄であり、水が海水であることを特徴とする請求項1〜4記載の揚水ポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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