説明

揚砂装置

【課題】底部に堆積した沈砂を少量の排砂水で効率よく移送することができる構造を有する沈砂貯留槽を備えた揚砂装置を提供する。
【解決手段】沈砂ピット内の沈砂を沈砂吸入管12で沈砂貯留槽14に吸引し、沈砂貯留槽に一時貯留した沈砂を排砂水に同伴させて排出する揚砂装置において、沈砂貯留槽は、沈砂ピットからの沈砂を同伴した水が流入する沈砂流入部31と、排砂水が流入する排砂水流入部32と、沈砂を排砂水と共に流出させる排砂水流出部33とを備え、排砂水流出部を円筒形に形成した沈砂貯留槽の底面中央部に開口させ、沈砂貯留槽の底面を排砂水流出部に向けて下り勾配に形成するとともに、排砂水流入部に、沈砂貯留槽内に流入する沈砂水に旋回流を形成する旋回流形成手段(エルボ32a)を設ける。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、揚砂装置に関し、詳しくは、取水設備等における沈砂池の沈砂ピットに堆積した沈砂(砂や小石等)を吸い上げて沈砂貯留槽に一時貯留してから排出する揚砂装置に関する。
【背景技術】
【0002】
取水設備や下水処理設備、ポンプ場等に設けられる沈砂池の池底に堆積した砂や小石等の沈砂を吸い上げて排出する装置として、各種構成の揚砂装置が用いられており、吸い上げた沈砂を沈砂貯留槽(レシーバタンク)に一時貯留した後、排砂水によって後段の設備、例えば沈砂分離機に送り出す構成を有するものが知られている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−242542号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、沈砂貯留槽から沈砂分離機に沈砂を移送する際に、沈砂貯留槽の底部に堆積した沈砂の状態によっては、沈砂を送り出すために大量の排砂水を必要としたり、沈砂貯留槽内に沈砂が残ってしまったりすることがあった。
【0005】
そこで本発明は、底部に堆積した沈砂を少量の排砂水で効率よく移送することができる構造を有する沈砂貯留槽を備えた揚砂装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の揚砂装置は、池底部に形成された沈砂ピット内の沈砂を、沈砂吸入管を介して沈砂ピット部分の水に同伴させて沈砂貯留槽に吸引し、該沈砂貯留槽に前記沈砂を一時貯留した後、該沈砂貯留槽に排砂水を供給して該排砂水に同伴させて沈砂貯留槽内に一時貯留した前記沈砂を沈砂貯留槽内から排出する揚砂装置において、前記沈砂貯留槽は、前記沈砂を同伴した水が流入する沈砂流入部と、前記排砂水が流入する排砂水流入部と、前記沈砂を排砂水と共に流出させる排砂水流出部とを備え、前記排砂水流出部を、円筒形に形成した前記沈砂貯留槽の底面中央部に開口させ、前記沈砂貯留槽の底面を前記排砂水流出部に向けて下り勾配に形成するとともに、前記排砂水流入部に、該排砂水流入部から沈砂貯留槽内に流入する沈砂水に旋回流を形成する旋回流形成手段を設けたことを特徴としている。
【0007】
さらに、本発明の揚砂装置は、前記沈砂貯留槽が、沈砂貯留槽内の流体を流体排出弁を介して吸引し、沈砂貯留槽内を減圧する減圧エゼクタを備え、前記沈砂流入部には、複数の沈砂ピットにそれぞれ配置されるとともに吸入弁をそれぞれ備えた複数の沈砂吸入管が並列に接続され、前記減圧エゼクタと前記排砂水流入部とに水を圧送する圧送ポンプと、該圧送ポンプと前記エゼクタとを減圧エゼクタ作動弁を介して接続した減圧エゼクタ駆動水供給経路と、前記圧送ポンプと前記排砂水流入部とを排砂水供給弁を介して接続した排砂水供給経路と、前記排砂水流出部に排砂弁を介して接続した沈砂排出経路とを備え、前記沈砂は、前記減圧エゼクタによって減圧した沈砂貯留槽内に前記沈砂ピット周辺の水に同伴されて真空吸引されることを特徴としている。
【0008】
また、前記沈砂貯留槽の底部に、前記排砂水流入部から沈砂貯留槽内に流入する沈砂水の流れ方向と同じ方向に補助排砂水を流入させる補助排砂水流入部が設けられていること、前記排砂水流出部に、前記沈砂貯留槽内の排砂水を吸引するための排砂促進部材が設けられていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明の揚砂装置によれば、排砂水流入部から沈砂貯留槽内に流入する沈砂水が沈砂貯留槽内で旋回流を形成するので、沈砂貯留槽の底部に堆積した沈砂を排砂水流出部から確実に排出することができる。また、圧送ポンプから供給する水で作動する減圧エゼクタを使用して真空状態とした沈砂貯留槽内に沈砂ピットの沈砂を吸入することにより、装置構成の簡略化を図ることができる。さらに、補助排砂水流入部を設けて補助排砂水を沈砂貯留槽の底部に流入させることにより、沈砂貯留槽の底部に堆積した沈砂をより確実に排出することができる。加えて、排砂水流出部に排砂促進部材を設けることにより、沈砂貯留槽内からの沈砂の排出を促進することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の一形態例を示す揚砂装置における沈砂貯留槽の概略正面図である。
【図2】沈砂貯留槽の概略断面平面図である。
【図3】揚砂装置の全体構成を示す系統図である。
【図4】揚砂装置における沈砂貯留槽の減圧操作時の状態を示す系統図である。
【図5】同じく沈砂吸上操作時の状態を示す系統図である。
【図6】同じく排砂操作時の状態を示す揚砂装置の系統図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
まず、図3に示すように、本形態例に示す揚砂装置11は、沈砂池の底部に形成された複数の沈砂ピット(図示せず)内の沈砂を、各沈砂ピットにそれぞれ配置された沈砂吸入管12にて吸い込んで揚砂するもので、各沈砂吸入管12は、吸入弁13を介して一つの沈砂貯留槽14に並列にそれぞれ接続されている。沈砂貯留槽14には、排砂水供給弁15を備えた排砂水供給経路16を介して貯水槽17内の水を圧送するための圧送ポンプ18,18が接続されるとともに、排砂弁19を備えた沈砂排出経路20が接続され、さらに、流体排出弁21を介して沈砂貯留槽14内の流体、通常は空気を吸引する減圧エゼクタ22が接続されている。また、減圧エゼクタ22は、減圧エゼクタ作動弁23を備えた減圧エゼクタ駆動水供給経路24を介して前記圧送ポンプ18,18に接続されている。
【0012】
図1及び図2に示すように、前記沈砂貯留槽14は、軸線を鉛直方向に向けた円筒状胴部14aの上下を天板14b及び底板14cにて閉塞した密閉構造を有しており、底板14cには、中央部に向かう下り勾配が形成されている。円筒状胴部14aには、前記複数の沈砂吸入管12が接続される沈砂流入部31と、前記排砂水供給経路16が接続される排砂水流入部32とが設けられている。また、底板14cの下り勾配最下端の中央部には、前記沈砂排出経路20が接続される排砂水流出部33が設けられ、底板14cの周縁部には、前記排砂水供給経路16から分岐した補助排砂水経路25が接続される複数の補助排砂水流入部34が設けられている。さらに、天板14bの中央部には、前記減圧エゼクタ22が接続される減圧エゼクタ接続部35が設けられている。また、前記排砂水供給経路16からは、前記補助排砂水経路25と砂移送水経路26とが分岐しており、砂移送水経路26には、沈砂貯留槽14内の排砂水をエゼクタ効果によって吸引することにより、排砂水流出部33からの沈砂の排出を促進するとともに、排砂水流出部33から排出された沈砂を前記沈砂排出経路20に送出するための排砂促進部材27が設けられている。
【0013】
排砂水流入部32には、排砂水供給経路16から供給される排砂水が沈砂貯留槽14の内部で旋回流を形成するための旋回流形成手段として、エルボ32aが設けられている。
【0014】
このエルボ32aの形状や軸線の方向は、沈砂貯留槽14の内部で排砂水が旋回流を形成可能に設定されている。例えば、エルボ32aの出口側の軸線を沈砂貯留槽14の半径方向に対して適度な角度で横向きとし、エルボ32aから沈砂貯留槽14内に流入する排砂水を円筒状胴部14aの内周面に沿う方向の流れとし、沈砂貯留槽14の内部で旋回流を形成させるようにしている。同様に、補助排砂水流入部34も、底板14cの上面に沿って排砂水流入部32からの排砂水と同じ方向に流れる旋回流を発生するように形成されている。
【0015】
以下、このように形成した揚砂装置11を用いて沈砂ピットに堆積した沈砂を吸い上げて排出する手順を、図4乃至図6を参照して説明する。なお、図4乃至図6では、揚砂手順の説明に必要な経路のみを図示しており、図3に示した揚砂装置と同じ構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。また、各図において、黒く塗りつぶした弁は閉状態である。
【0016】
まず、図4に示すように、前記減圧エゼクタ作動弁23と前記流体排出弁21とを開いて他の弁を閉じた状態とし、前記圧送ポンプ18から減圧エゼクタ駆動水供給経路24を通して前記減圧エゼクタ22に減圧エゼクタ駆動水を圧送し、減圧エゼクタ22を作動させて前記沈砂貯留槽14内の空気を流体排出弁21を介して吸引し、流体排出管28に前記空気を同伴した減圧エゼクタ駆動水を排出することによって沈砂貯留槽14内を減圧して真空状態とする。
【0017】
沈砂貯留槽14内を十分に減圧した後、図5に示すように、何れか一つの吸入弁13を開き、一つの沈砂ピットに堆積した沈砂を、沈砂ピット部分の水と共に沈砂吸入管12に吸入し、沈砂を水に同伴させて沈砂貯留槽14内に吸い上げる。このとき、沈砂貯留槽14内があらかじめ十分に減圧された状態で吸入弁13を全開状態にすることにより、沈砂貯留槽14内と沈砂ピットとの圧力差を十分に大きくすることができ、強い吸引力で沈砂を水に同伴させて沈砂貯留槽14に吸い上げることができる。これにより、比較的大きな砂利、小石等も確実に沈砂貯留槽14内に吸い上げることが可能となる。また、圧送ポンプ18及び減圧エゼクタ22は、減圧操作で沈砂貯留槽14を十分に減圧できればよいことから、圧送ポンプ18や減圧エゼクタ22として小型のものを用いることができ、従来の揚砂ポンプに比べてコストや消費エネルギーを大幅に低減することができる。
【0018】
沈砂貯留槽14内に沈砂を吸い上げた後、沈砂貯留槽14内に貯留された沈砂を排出するため、図6に示すように、排砂水供給弁15と排砂弁19とを開き、他の弁を閉じた状態で圧送ポンプ18を作動させ、圧送ポンプ18から排砂水供給経路16を介して沈砂貯留槽14内に沈砂排出用の排砂水を供給し、沈砂貯留槽14内の沈砂を排砂水に同伴させて排砂水流出部33から沈砂排出経路20を介して排出し、後段に設けた沈砂分離器などに送出する。
【0019】
このとき、排砂水供給経路16から排砂水流入部32を介して流入する排砂水が沈砂貯留槽14内で旋回流を形成することから、沈砂貯留槽14の底板14cの上に堆積した沈砂を、排砂水流出部33から確実に流出させることができ、少ない水量で沈砂貯留槽14内に一時貯留した沈砂を効率よく排出することができる。さらに、排砂水の一部を補助排砂水経路25を介して補助排砂水流入部34から補助排砂水として沈砂貯留槽14内に流入させ、底板14cの上に旋回流を形成することにより、底板14cの上に堆積した沈砂をより確実に排砂水流出部33から流出させることができる。また、排砂水の更に一部を砂移送水経路26から排砂促進部材27に供給し、排砂促進部材27のエゼクタ効果によって排砂水流出部33から沈砂を吸引することにより、排砂水流出部33からの沈砂の排出を促進することができるとともに、排出された沈砂を沈砂排出経路20へ効果的に送り出すことができるので排砂水流出部33や沈砂排出経路20が沈砂で閉塞することを防止できる。
【0020】
一つの沈砂ピットの揚砂を行った後は、図4乃至図6に示す手順を他の沈砂ピットに対して繰り返せばよく、複数の沈砂ピットに対して、沈砂貯留槽14の減圧、沈砂貯留槽14への沈砂の吸い上げ、沈砂貯留槽14からの沈砂の排出を順次行うことにより、各沈砂ピットから沈砂を排出することができる。また、減圧エゼクタ22の駆動水として使用した水は、沈砂池内の排水とは別の水であり、沈砂を全く含まない水であるから、図4及び図5に破線で示すような循環経路29を介して貯水槽17に戻すことにより、減圧エゼクタ22の駆動水として再利用することができる。
【0021】
なお、沈砂貯留槽における排砂水流出部は、旋回流の中心部で、槽底部の最深部に設ける必要があるが、他の排砂水流入部は沈砂貯留槽内に旋回流を形成可能な位置、沈砂流入部は沈砂を同伴した水が沈砂貯留槽内に流入可能な位置、補助排砂水流入部は沈砂貯留槽の底部に旋回流を形成可能な位置、減圧エゼクタ接続部は沈砂貯留槽内の空気を排気可能な位置であれば、それぞれ任意の位置に設けることが可能である。また、旋回流形成手段は、旋回流を形成可能な状態に配置したガイド板であってもよく、排砂水供給経路を構成する配管を円筒状胴部の接線方向に接続してもよい。また、各種揚砂ポンプを使用した揚砂装置に前記構成の沈砂貯留槽を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0022】
11…揚砂装置、12…沈砂吸入管、13…吸入弁、14…沈砂貯留槽、14a…円筒状胴部、14b…天板、14c…底板、15…排砂水供給弁、16…排砂水供給経路、17…貯水槽、18…圧送ポンプ、19…排砂弁、20…沈砂排出経路、21…流体排出弁、22…減圧エゼクタ、23…減圧エゼクタ作動弁、24…減圧エゼクタ駆動水供給経路、25…補助排砂水経路、26…砂移送水経路、27…排砂促進部材、28…流体排出管、29…循環経路、31…沈砂流入部、32…排砂水流入部、32a…エルボ、33…排砂水流出部、34…補助排砂水流入部、35…減圧エゼクタ接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
池底部に形成された沈砂ピット内の沈砂を、沈砂吸入管を介して沈砂ピット部分の水に同伴させて沈砂貯留槽に吸引し、該沈砂貯留槽に前記沈砂を一時貯留した後、該沈砂貯留槽に排砂水を供給して該排砂水に同伴させて沈砂貯留槽内に一時貯留した前記沈砂を沈砂貯留槽内から排出する揚砂装置において、前記沈砂貯留槽は、前記沈砂を同伴した水が流入する沈砂流入部と、前記排砂水が流入する排砂水流入部と、前記沈砂を排砂水と共に流出させる排砂水流出部とを備え、前記排砂水流出部を、円筒形に形成した前記沈砂貯留槽の底面中央部に開口させ、前記沈砂貯留槽の底面を前記排砂水流出部に向けて下り勾配に形成するとともに、前記排砂水流入部に、該排砂水流入部から沈砂貯留槽内に流入する沈砂水に旋回流を形成する旋回流形成手段を設けたことを特徴とする揚砂装置。
【請求項2】
前記沈砂貯留槽は、沈砂貯留槽内の流体を流体排出弁を介して吸引し、沈砂貯留槽内を減圧する減圧エゼクタを備え、前記沈砂流入部には、複数の沈砂ピットにそれぞれ配置されるとともに吸入弁をそれぞれ備えた複数の沈砂吸入管が並列に接続され、前記減圧エゼクタと前記排砂水流入部とに水を圧送する圧送ポンプと、該圧送ポンプと前記エゼクタとを減圧エゼクタ作動弁を介して接続した減圧エゼクタ駆動水供給経路と、前記圧送ポンプと前記排砂水流入部とを排砂水供給弁を介して接続した排砂水供給経路と、前記排砂水流出部に排砂弁を介して接続した沈砂排出経路とを備え、前記沈砂は、前記減圧エゼクタによって減圧した沈砂貯留槽内に前記沈砂ピット周辺の水に同伴されて真空吸引されることを特徴とする請求項1記載の揚砂装置。
【請求項3】
前記沈砂貯留槽の底部に、前記排砂水流入部から沈砂貯留槽内に流入する沈砂水の流れ方向と同じ方向に補助排砂水を流入させる補助排砂水流入部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の揚砂装置。
【請求項4】
前記排砂水流出部に、前記沈砂貯留槽内の排砂水を吸引するための排砂促進部材が設けられていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項記載の揚砂装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−154154(P2012−154154A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−16879(P2011−16879)
【出願日】平成23年1月28日(2011.1.28)
【出願人】(390014074)前澤工業株式会社 (134)