説明

揚艇装置

【課題】艦船の美観や搭載艇の揚げ降ろしの作業性を向上させつつもコストを低減でき収容レセスを小型化することが可能な揚艇装置を提供する。
【解決手段】艦船の船体Sの舷側2に設けられて艦船に搭載される搭載艇3を収容する収容レセスRに対して搭載艇3を揚げ降ろしする揚艇装置1において、上記舷側2における収容レセスRの開口部6を開閉可能であって収容レセスRの開口部6を閉塞すると舷側2の収容レセスRの開口部周囲と面一となる扉7を備え、リンク19を介してダビット4と上記扉7を連結し搭載艇3の搬出時に扉7を収容レセスRの開口部6から離脱させて開放し、搭載艇3の搬入時に収容レセスRの開口部6を扉7で閉塞する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、艦船に搭載される搭載艇を揚げ降ろしする揚艇装置に関する。
【背景技術】
【0002】
揚艇装置は、艦船の船体の舷側に開口を設けて内火艇や作業艇といった搭載艇を収容する収容レセスと称される格納スペースに設置されており、この収容レセスから搭載艇を船体外へ振り出して海面へ降下させて着水させるとともに、海面上の搭載艇を吊り揚げて収容レセス内へ収容させるものである。
【0003】
そのため、従来の揚艇装置は、収容レセスの床に揺動可能に設置されたダビット、門型フレームや、収容レセスの側壁に設置された直同型のブームを備えていて、舷側に設けた収容レセスの開口部から搭載艇をレセス外へ振り出す構造を採用している(たとえば、特許文献1,2,3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−123839号公報
【特許文献2】特開2009−61813号公報
【特許文献3】特開2006−281887号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このように搭載艇を搭載した艦船にあっては、舷側に収容レセスを備えるために開口部を設けているが、当該開口部を開放したままであると、海水が浸入して床が滑りやすくなって搭載艇の揚げ降ろしの作業に不便であり、また、艦船の美観を損ねるため、扉を設けることがある。
【0006】
舷側における収容レセスの開口部は、搭載艇を収容する関係上、幅寸法で小さくとも10数m程度もあり、扉を鋼板で構成する場合、人手で開閉することが困難であるから、必然的に扉を開閉させる駆動源を設置する必要がある。
【0007】
揚艇装置においても、ダビッドやブームを駆動するための駆動源が必要であって、一つの収容レセスに揚艇装置用と扉用の二種類の駆動源が必要となる。
【0008】
他方、近年の艦船では、省スペース化が要望されているものの、上述したように駆動源を二つも設置したのでは、収容レセスの小型化にも限界があり、また、扉と揚艇装置を含めた収容レセスに設置される設備全体のコストも高くなるという問題がある。
【0009】
そこで、本発明は、上記不具合を改善するために創案されたものであって、その目的とするところは、艦船の美観や搭載艇の揚げ降ろしの作業性を向上させつつもコストを低減でき収容レセスを小型化することが可能な揚艇装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記した目的を解決するために、本発明における課題解決手段は、艦船の船体の舷側に設けられて艦船に搭載される搭載艇を収容する収容レセスに対して搭載艇を揚げ降ろしする揚艇装置において、収容レセスに揺動自在に取付けられてワイヤロープを介して吊り下げた搭載艇を収容レセス外へ振り出し可能なダビットと、ワイヤロープを繰り出しおよび巻き上げ可能なウインチと、上記舷側における収容レセスの開口部を開閉可能であって収容レセスの開口部を閉塞すると舷側の収容レセスの開口部周囲と面一となる扉とを備え、リンクを介して上記ダビットと上記扉を連結して搭載艇の搬出時に扉を収容レセスの開口部から離脱させて開放し、搭載艇の搬入時に収容レセスの開口部を扉で閉塞することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明の揚艇装置によれば、ダビットを駆動する駆動源で扉を駆動することができるので、コストを低減でき収容レセスを小型化することができる。また、扉が舷側の収容レセスの開口部を閉じることができるので、搭載艇を使用しないときは当該開口部を閉じて必要なときだけ開口部を開放すればよいので、海水や雨水等の侵入を防ぐことができるから、収容レセスの床が海水等で濡れてしまって搭載艇の揚げ降ろし作業をしにくくなるといった問題を解消でき、かつ、扉は開口部を閉じているときには舷側の開口部の周囲と面一となるので美観が向上するだけでなく、コーナーリフレクタの問題も解消できレーダー反射断面積を低減する効果も期待することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】扉を閉めた状態における一実施の形態の揚艇装置の側面図である。
【図2】扉を開放した状態における一実施の形態の揚艇装置の側面図である。
【図3】一実施の形態における揚艇装置の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の揚艇装置1は、図1から図3に示すように、艦船の船体Sの舷側2に設けられて艦船に搭載される搭載艇3を収容する収容レセスRに設置されており、収容レセスRに揺動自在に取付けられてワイヤロープWを介して搭載艇を吊り下げた搭載艇3を収容レセスR外へ振り出し可能なダビット4と、ワイヤロープWを繰り出しおよび巻き上げ可能なウインチ5と、上記舷側2における収容レセスRの開口部6を開閉する扉7とを備えて構成されており、ダビット4とウインチ5を駆動して収容レセスRに対して搭載艇3を海面へ降下させて着水させることができるとともに、逆に、海面に着水している搭載艇3を収容レセスR内へ収容することができるようになっている。
【0014】
以下、各部について詳細に説明する。収容レセスRは、艦船の船体Sの側面である舷側2に矩形の開口を設けて船体S内に設けられた外部アクセス可能とした搭載艇3を格納する格納室である。
【0015】
この収容レセスRは、床10と、艦船の前後方向に沿う側壁11と、天井12とを備えており、床10には、搭載艇3を載置する載置台9が設置されている。また、収容レセスRの開口部6における開口縁6aは、収容レセスR側へ窪んでおり、この開口縁6aの全周に亘ってシール部材8が装着されている。なお、シール部材8は、シールに好適であればよく、たとえば、ゴム等で形成されている。
【0016】
また、収容レセスRの床10には、揺動可能にダビット4が取付けられている。このダビット4は、収容レセスRの床10に揺動自在に取付けた一対のアーム14,14と、これらアーム14,14同士を連結するとともにワイヤロープW,Wを介して搭載艇3を吊り下げる梁15と、アーム14,14を揺動駆動させる駆動源としての一対の油圧シリンダ16,16とを備えている。
【0017】
アーム14,14は、この場合、搭載艇3を抱え込むように彎曲しており、基端が収容レセスRの床10にヒンジ結合されて収容レセスRに対して揺動可能に取付けられ、図1中反時計周りにアーム14,14を収容レセスRの外方へ傾けることで、図2に示すように、アーム14,14の先端側を収容レセスR外へ突出させることができるようになっている。
【0018】
また、梁15は、アーム14,14の先端同士を連結しており、油圧シリンダ16によって駆動した際にアーム14,14が同期して回転駆動されるようになっている。
【0019】
そして、アーム14,14の先端には、シーブ17,18が回転自在に取付けてあり、当該シーブ17,18からワイヤロープW,Wの一端を垂らして搭載艇3を吊り下げることができるようになっている。
【0020】
これらワイヤロープW,Wの他端は、ダビット4の側方に配置されたウインチ5に接続してあって、当該ウインチ5でワイヤロープW,Wを巻き上げると搭載艇3を梁15側へ向けて吊り上げ、反対に、当該ウインチ5でワイヤロープW,Wを繰り出すと梁15から搭載艇3を降下させることができるようになっている。なお、ウインチ5とシーブ17,18との間には、適宜、図示しないシーブが設けられており、搭載船3とワイヤロープW,Wとが干渉しないように配慮されている。
【0021】
この実施の形態では、アーム14,14を単一の梁15で連結する構造となっているが、別途、補強梁を設けてアーム14,14を連結するようにしてもよい。
【0022】
また、油圧シリンダ16,16は、それぞれ収容レセスRの床10と各アーム14との間にヒンジ結合されており、同期して伸縮するようになっていて、各アーム14を駆動することができるようになっている。具体的には、油圧シリンダ16,16が最収縮状態であると、アーム14,14が収容レセスR内に引き込まれた状態とされて梁15が搭載艇3を載置台9の真上へ配置される図1の収容位置にダビット4を位置決めることができ、油圧シリンダ16が最伸長状態となると、アーム14,14が図1の状態から反時計周りに回転して搭載艇3を収容レセスR外方向へ振り出して収容レセスRから外へ搬出し海面の上方へ配置させる図2の揚げ降ろし位置に移行することができるようになっている。すなわち、ダビット4は、油圧シリンダ16の駆動することで、搭載艇3を収容レセスR内へ搬入および収容レセスR外へ搬出することができるようになっている。
【0023】
したがって、搭載艇3を載置台9から海面へ着水させるには、載置台9に載置された搭載艇3をウインチ5でワイヤロープW、Wを少々巻き上げて載置台9から吊り上げた後、アーム14,14を収容レセスRから外方へ突出させる方向、へ回転させることで搭載艇3を海面上方へ配置させ、ウインチ5を駆動させてワイヤロープW,Wを繰り出せばよく、そうすることで、搭載艇3を降下させて海面へ着水させることができる。また、反対に、海面上の搭載艇3を載置台9へ載置させるには、アーム14,14を収容レセスRから外へ突出させる揚げ降ろし位置まで移動させ、ワイヤロープW,Wを繰り出して搭載艇3をワイヤロープW,Wの先端に設けた図示しないフックで吊った後、ウインチ5でワイヤロープW,Wを巻き上げて搭載艇3を離水させて載置台9より少々上の高さまで吊り上げる。そして、アーム14,14を図2の状態から時計回りに回転させて図1に示す収容位置まで駆動して搭載艇3を載置台9の上方へ移動させ、再度、ウインチ5を駆動して搭載艇3を降下させることで載置台9へ載置することができる。
【0024】
つづいて、扉7は、開口部6と同じ形状とされ、上部が船体Sにヒンジ結合されるとともに、左右がリンク19,19を介してそれぞれアーム14,14に連結されている。詳しくは、リンク19は、アーム14と扉7の双方にヒンジ結合されていて、油圧シリンダ16,16を駆動してアーム14を収容位置から揚げ降ろし位置へ移行させる際に、油圧シリンダ16,16のアーム14を駆動する力でリンク19を介して扉7を押して、開口部6を閉じている扉7を船体Sのヒンジ部を中心として開き方向へ回転させて、開口部6を開放することができるようになっている。反対に、油圧シリンダ16,16を駆動してアーム14を揚げ降ろし位置から収容位置へ移行させる際には、油圧シリンダ16,16のアーム14を駆動する力がリンク19を介して扉7に伝達されて、開口部6を開放している扉7を船体Sのヒンジ部を中心として閉じ方向へ回転させて、開口部6を閉塞することができるようになっている。
【0025】
また、この扉7は、上記舷側2における収容レセスRの開口部6を開閉可能であって収容レセスRの開口部6を閉塞すると舷側2の収容レセスRの開口部周囲と面一となるようになっている。さらに、扉7は、図1に示すように、収容レセスRの開口部6を閉塞すると、扉7の収容レセスR側の面の縁が開口部6の開口縁6aに装着したシール部材8に密着して、収容レセスR内への海水や雨水等の浸入を防止することができるようになっている。なお、シール部材8は、扉7の収容レセスR側の面の縁に装着するようにしてもよい。
【0026】
このように、本実施の形態の揚艇装置1にあっては、ダビット4を駆動する駆動源で扉7を駆動することができるので、コストを低減でき収容レセスRを小型化することができる。また、扉7が舷側2の収容レセスRの開口部を閉じることができるので、搭載艇3を使用しないときは当該開口部6を閉じて必要なときだけ開口部6を開放すればよいので、海水や雨水等の侵入を防ぐことができるから、収容レセスRの床10が海水等で濡れてしまって搭載艇3の揚げ降ろし作業をしにくくなるといった問題を解消でき、かつ、扉7は開口部6を閉じているときには舷側2の開口部6の周囲と面一となるので美観が向上するだけでなく、コーナーリフレクタの問題も解消できレーダー反射断面積を低減する効果も期待することができる。
【0027】
また、扉7は、単に収容レセスRの開口部6を開閉するに過ぎず、扉7が駆動源やその他の揚艇装置1を構成する部材を支持するための強度部材として機能する必要が無いので、扉7が軽量ですみ、駆動源の高出力化を招くことも無い。
【0028】
なお、ダビット4の駆動に際して油圧シリンダ16,16を利用しているが、電動や他の流体を用いた直動型のアクチュエータを用いてもよく、床10とアーム14との間に介装するのではなく、側面とアーム14との間に介装するようにしてもよい。
【0029】
また、この実施の形態の場合、アーム14,14およびリンク19が搭載艇3と干渉しないように彎曲した形状とされているが、搭載艇3の前後に隙間をあけてアームを設置する場合、搭載艇3との干渉の虞が無いので直線状のアームとリンクを用いることができる。
【0030】
また、開口部6および扉7の形状は、ともに矩形に限定されるものではなく、収容レセスRの開口部6と扉7の形状を一致させてあればよい。
【0031】
以上、本発明の実施の形態について説明を終えるが、本発明の範囲は図示されまたは説明された詳細そのものには限定されない。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、艦船に搭載される搭載艇の揚げ降ろしをする揚艇装置に利用可能である。
【符号の説明】
【0033】
1 揚艇装置
2 舷側
3 搭載艇
4,ダビット
5,ウインチ
6 収容レセスの開口部
6a 開口縁
7 扉
8,シール部材
9 載置台
10 収容レセスにおける床
11 収容レセスにおける側壁
12 収容レセスにおける天井
14 アーム
15 梁
16 駆動源としての油圧シリンダ
17,18 シーブ
19 リンク
R 収容レセス
S 船体
W ワイヤロープ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
艦船の船体の舷側に設けられて艦船に搭載される搭載艇を収容する収容レセスに対して搭載艇を揚げ降ろしする揚艇装置において、収容レセスに揺動自在に取付けられてワイヤロープを介して吊り下げた搭載艇を収容レセス外へ振り出し可能なダビットと、ワイヤロープを繰り出しおよび巻き上げ可能なウインチと、上記舷側における収容レセスの開口部を開閉可能であって収容レセスの開口部を閉塞すると舷側の収容レセスの開口部周囲と面一となる扉とを備え、リンクを介して上記ダビットと上記扉を連結して搭載艇の搬出時に扉を収容レセスの開口部から離脱させて開放し、搭載艇の搬入時に収容レセスの開口部を扉で閉塞することを特徴とする揚艇装置。
【請求項2】
ダビットは、収容レセスの床に揺動自在に取付けられてワイヤロープを介して搭載艇を吊り下げる一対のアームと、これらアーム同士を連結する梁と、アームを揺動駆動させる駆動源とを備えたことを特徴とする揚艇装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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